JP5504415B2 - 溶解性の改善された仕切り用可食性フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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しかし、喫食前に、その仕切り材を取り除くことを要し、手や服を汚す原因となったり、廃棄によってゴミを増加し環境へ負荷をかける等の種々の問題が発生する。
また、調理時に1食毎の計量が不要で且つ簡便性に優れているため、乾麺類を1食分毎にプラスチック製フィルムや紙等を利用して結束した商品が知られている。結束に使用しているプラスチックや紙のテープは調理前に外さなければならず、ゴミとして廃棄することになる。更に、結束用に使用しているテープを外す際に乾麺を折ってしまったり、お湯へ投入する前にばらばらになって逆に手間となる等の問題も発生する。
かかる可食性フィルムとしては、オブラートフィルム、プルランフィルム、アルギン酸フィルム及びゼラチンフィルムが提案されている(下記特許文献1参照)。
また、その他可食性フィルムとしては、熱水に溶解して使用する事を目的としたカラギナンフィルムが提案されている(下記特許文献2参照)。
この様に、オブラートフィルム、プルランフィルム、アルギン酸フィルム、ゼラチンフィルムは、冷水可溶タイプのフィルムであるため、耐湿度性に劣る。従って、オブラートフィルム等の冷水可溶タイプのフィルムを結束テープに用いた場合、かかる結束テープを使用した商品を高湿度下で連続的に生産することは困難であった。
一方、カラギナンフィルムは、冷水に溶解せず熱水に溶解するため、加熱を施すチルド食品の仕切り材として使用できる可能性を有している。
しかし、本発明者の検討によれば、従来のカラギナンフィルムは、熱水での溶解性が完全ではなく、塩類の多いスープ等の水溶液では溶け残りが見られるなどの問題が生じている。このため、従来のカラギナンフィルムを、塩類の多いスープ等が用いられるカップ製品の仕切り材として使用すると、電子レンジ等で調理したとき、カラギナンフィルムの溶け残りが見られる。
また、カラギナンフィルムは、オブラート等の冷水可溶タイプの可食性フィルムに比較して引張強度に優れ、耐湿性にも優れているため、麺の結束テープとして使用できる可能性を有している。
しかし、従来のカラギナンフィルムは、上述した如く、熱水での即溶性を有していないため、お湯の中で麺がすぐにバラけることができず、麺同士が接着してしまうと言う現象が見られた。
そこで、本発明は、冷水・熱湯に対する溶解性等に問題があった従来の可食性フィルムの課題を解決し、冷水・熱湯に対する溶解性等が改善された仕切り用可食性フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
先ず、従来のフィルムが熱湯中で直ちに溶解しない現象は、フィルムを形成する高分子鎖が高度に絡み合って高次構造を形成しており、フィルム内に水分が容易に侵入できないことにあり、フィルムの製造の際に、高分子鎖の絡み合いの程度を調整してフィルム化できれば、熱湯中で直ちに溶解できるフィルムを得ることができるものと考えて検討した。
その結果、ゲル化能を有するハイドロコロイドを支持体上に流延してフィルムを製造する際に、フィルム内の水分の除去速度と高分子鎖の絡み合いとに関係があり、支持体上に流延して製膜したフィルム内の水分の除去速度を制御することによって、得られたフィルム内の高分子鎖の絡み合いの程度を制御できることを見出した。
[A]前記可食性フィルムを20℃の水中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムはフィルム状形態を保持しつつ吸水してゲル化される。
[B]前記可食性フィルムを70℃の熱湯中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムは熱湯中に完全に溶解される。
また、本発明者等は、前記課題を解決する手段として、紅藻類から抽出されたゲル化能を有するハイドロコロイドを主成分とする原液を支持体上に流延して、調理時に加熱処理される食品を仕切る仕切り用可食性フィルムを製造する際に、前記支持体上の可食性フィルムを両面側から加熱して、表面を膠状にすることなく前記可食性フィルム中の水分を除去できるように、前記可食性フィルムの表面と接触する支持体及び雰囲気の温度を、前記原液の凝固点以上に加熱して乾燥して(好ましくは5℃以上、さらに好ましくは10℃以上に加熱して乾燥する)、下記[A]及び[B]の熱特性を同時に満足する可食性フィルムを得ることを特徴とする仕切り用可食性フィルムの製造方法を提供できる。
[A]前記可食性フィルムを20℃の水中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムはフィルム状形態を保持しつつ吸水してゲル化される。
[B]前記可食性フィルムを70℃の熱湯中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムは熱湯中に完全に溶解される。
ゲル可能を有するハイドロコロイドを主成分とする原液から水分を除去する速度は、表面を膠状にしないことなどを勘案して、好ましくは15分以内、さらに好ましくは5分以内が望ましい。
紅藻類から抽出されたゲル化能を有するハイドロコロイドとしては、寒天又はカラギナンを好適に用いることができる。
また、得られた可食性フィルムを、調理時に加熱処理される食品を仕切る仕切り用可食性フィルムとして用いることによって、電子レンジによる加熱処理の際に、仕切り用可食性フィルムが完全に溶解して消滅し、食品同士を初めて接触できる。
このため、得られた可食性フィルムは、その高分子鎖の絡み合いの程度を抑制でき、20℃の水中に1分間浸漬しても、フィルム状形態を保持しつつ吸水してゲル化されるものの、70℃の熱湯中に1分間浸漬したとき、熱湯中に完全に溶解される。
従って、かかる可食性フィルムを、食品を仕切る仕切り用可食性フィルムとして用いることができる。
この可食性フィルムは、下記[A]及び[B]の熱特性を同時に満足するものである。
[A]可食性フィルムを20℃の水中に1分間浸漬したとき、可食性フィルムはフィルム状形態を保持しつつ吸水してゲル化される。
[B]可食性フィルムを70℃の熱湯中に1分間浸漬したとき、可食性フィルムは熱湯中に完全に溶解される。
一方、かかるチルド食品としてのカップ麺を電子レンジによって加熱すると、麺とスープとの仕切り用可食性フィルムは、スープ等が70℃以上に加熱されたとき、仕切り用可食性フィルムは完全に溶解される。このため、スープと麺とが初めて接触し、良好な見栄えと風味とを呈することができる。
一方、結束用可食性フィルムで結束された乾麺を熱湯水中に投入した場合には、結束用可食性フィルムは迅速に溶解され、熱湯水中で麺がバラバラとなって麺同士が接合されて「だま」を形成することなく麺を茹で上げることができる。
この「ゲル化能を有するハイドロコロイド」としては、紅藻類から抽出されたハイドロコロイド、特に紅藻類から抽出された寒天、κ-カラギナン、ファーセレランを含有するハイドロコロイドを好適に用いることができる。
かかるゲル化能を有するハイドロコロイドを主成分とする原液には、増量や可塑性の向上を図るべく、ゲル化能を有さないハイドロコロイドや乳化剤、多価アルコール、無機物等その他の成分を添加してもよいが、ゲル化能を有するハイドロコロイドの添加量を超えないように調整する。
この様に、原液を支持体上に流延して成膜した可食性フィルムの両面側から加熱することによって、可食性フィルム中の水分を迅速に除去して乾燥でき、可食性フィルムの高分子鎖の絡み合い程度を抑制できる。
ここで、支持体上の可食性フィルムの一面側を加熱、具体的には支持体又は雰囲気の一方を加熱して乾燥した場合には、可食性フィルムの非加熱面が膠状となって、可食性フィルム中の水分の迅速除去できず、得られた可食性フィルムは高分子鎖が充分に絡み合う高次構造が完了したものとなる。
また、原液の凝固点は、原液を採取した試験管を傾斜したとき、原液が試験管と共に傾斜しなくなる温度である。かかる原液の凝固点は、ゲル化能を有するハイドロコロイドの種類や濃度によって異なり、実験的に求めておくことが好ましい。
このような溶解性の改善された可食性フィルムは、現在プラスチック製フィルムを使用している製品のフィルムの代替として使用することが可能であり、具体的には、チルド流通されるカップ製品の仕切り材や冷凍食品の仕切り材、乾麺類等の結束テープ、粉末状食品素材の包装材、液状又は半液状食品素材の包装材、油性食品素材の包装材などへの使用が可能となる。
次いで、このハイドロコロイドを、裏面にヒータが設けられた支持体表面上に流延して得た可食性フィルムを、ヒータによって支持体を90℃に加熱しつつ、内部が90℃に加熱された乾燥器内に支持体ごと挿入して乾燥を施した。
次いで、このハイドロコロイドを、裏面にヒータが設けられた支持体表面上に流延して得た可食性フィルムを、ヒータによって支持体を90℃に加熱しつつ、内部が90℃に加熱された乾燥器内に支持体ごと挿入して乾燥を施した。
また、カラギナンを用いたハイドロコロイドを原液とする比較例2の可食性フィルムを20℃の水に浸漬し、フィルム自重の10倍量の水を吸収するまでの時間を測定したところ、50秒であった。更に、フィルム自重の10倍量の水を吸収したフィルム状ゲルの強度を測定したところ、5.2Nであった。
この様に、実施例2の可食性フィルムでは、比較例2の可食性フィルムに比較して、水の吸収速度が速く、且つフィルム状ゲルの強度も低かった。このことは、実施例1の可食性フィルムは、比較例2の可食性フィルムよりも高分子鎖の結合が不完全であることを示している。
チルド状態で48時間保存した後に、可食性フィルムが存在していた実施例1,2及び比較例1,2のカップ麺を電子レンジ(600W)で4分間加熱して、可食性フィルムの状態を観察し、その結果を下記の表3に併せて示す。
また、実施例1,2の可食性フィルムは、電子レンジによってカップ麺を加熱したとき、完全に溶解している。このため、実施例1,2の可食性フィルムは、チルド食品としてのカップ麺のスープと麺との仕切り用として適している。
他方、比較例1,2の可食性フィルムは、いずれも電子レンジによってカップ麺を加熱したときでも、一部は溶解せず残留している。このため、チルド食品としてのカップ麺のスープと麺との仕切り用としては不適当である。
一方、比較例3の可食性フィルムのいずれも、ゲル化されたスープ及び麺からの水分を吸収して、一部が溶解又は完全に溶解しており、カップ麺のスープと麺との仕切り用としては使用できなかった。
また、実施例1,2の結束用可食性フィルムは、乾麺と共に熱湯水に投入されたとき、直ちに溶解するため、麺がバラバラとなって均一に茹上がる。このため、実施例1,2の結束用可食性フィルムは、乾麺の結束用として適している。
他方、比較例1,2の可食性フィルムは、乾麺と共に熱湯水に投入されたとき、直ちに溶解せず麺が結束されており、一部が「だま」となる。このため、比較例1,2の結束用可食性フィルムは、結束した状態の乾麺を熱湯に挿入する結束用可食性フィルムとしては不適当である。
一方、比較例3の結束用可食性フィルムのいずれも、乾麺を結束したとき、フィルム破断が発生し、乾麺の結束用としては使用できなかった。
Claims (4)
- 紅藻類から抽出されたゲル化能を有するハイドロコロイドを主成分とする原液が膠状にさせることなく凝固点以上の温度で乾燥されて成る、調理時に加熱処理される食品を仕切る仕切り用可食性フィルムであって、下記[A]及び[B]の熱特性を同時に満足することを特徴とする仕切り用可食性フィルム。
[A]前記可食性フィルムを20℃の水中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムはフィルム状形態を保持しつつ吸水してゲル化される。
[B]前記可食性フィルムを70℃の熱湯中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムは熱湯中に完全に溶解される。 - 前記紅藻類から抽出されたゲル化能を有するハイドロコロイドが、寒天又はカラギナンである請求項1記載の可食性フィルム。
- 紅藻類から抽出されたゲル化能を有するハイドロコロイドを主成分とする原液を支持体上に流延して、調理時に加熱処理される食品を仕切る仕切り用可食性フィルムを製造する際に、
前記支持体上の可食性フィルムを両面側から加熱して、表面を膠状にすることなく前記可食性フィルム中の水分を除去できるように、前記可食性フィルムの表面と接触する支持体及び雰囲気の温度を、前記原液の凝固点以上に加熱して乾燥して、下記[A]及び[B]の熱特性を同時に満足する可食性フィルムを得ることを特徴とする仕切り用可食性フィルムの製造方法。
[A]前記可食性フィルムを20℃の水中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムはフィルム状形態を保持しつつ吸水してゲル化される。
[B]前記可食性フィルムを70℃の熱湯中に1分間浸漬したとき、前記可食性フィルムは熱湯中に完全に溶解される。 - 前記紅藻類から抽出されたゲル化能を有するハイドロコロイドとして、寒天又はカラギナンを用いる請求項3記載の可食性フィルムの製造方法。
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