JP6616066B2 - 調理済み麺状食品、それに用いる可食性フィルム及び調理済み麺状食品の喫食方法 - Google Patents
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Description
これに対し、スープをゼラチン等でゼリー状に固めて、汁もれを抑え、且つ麺が汁を吸うのを防ぐことが考えられるが、ゼリー状に固めたスープでも麺が直接接触していると、麺が吸水し、スープの色が移ってしまう。また、冷凍保存の場合には、スープをゼリー状に固めることなく冷凍スープとするが、同様に保存中に麺が吸水し変色してしまう。このため、スープをゼリー化又は冷凍して、さらにその上にプラスチックフィルムを挟んで、麺をのせた中華麺、うどん、蕎麦、パスタなどの調理済み食品が提供されている。さらに、麺にのせる具材も麺に味移りするため、プラスチックフィルムを間に挟んでいる。
さらに、アルギン酸フィルム(特許文献3参照)、ペクチンフィルム(特許文献4参照)、寒天フィルム(特許文献5参照)などの可食性フィルムが提案されている。
(多糖類)
本発明において、可食性フィルムに使用する主たる多糖類は、ミネラル類(塩類)との反応性がない又は非常に少ない多糖類である、澱粉、化工澱粉、寒天、プルラン、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、タマリンドガム、アラビアガムより選ばれる一以上の成分である。これらの多糖類は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの一般的に食品に含まれている塩類との反応性がないか又は非常に少なく、スープに使われる通常の塩類濃度の範囲でスープの塩類と接しても、反応して凝固温度が喫食に影響するほど高くなったり、粘性が上がることはない。さらに、冷めてきたときにも喫食に影響するほど粘度が上がることがないためである。
さらに、スープの溶液粘性を上げないためには、粘性が発現する成分については低分子量のものが好ましく、低粘度澱粉、低粘度化工澱粉、低強度寒天、低粘度グアーガム、低粘度ローカストビーンガム、低粘度タラガム、低粘度カシアガム、低粘度タマリンドガムより選ばれる少なくとも一以上の多糖類を組み合わせて使用することが好ましい。具体的に、好ましい分子量としては、重量平均分子量Mwが100000以下である。
また、化工澱粉は、一般に販売されているものであれば特に限定はなく、酸処理澱粉、酸化澱粉、酢酸澱粉、カルボキシメチル澱粉、ヒドリキシエチル澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、リン酸澱粉などが挙げられるが、特にヒドロキシプロピル化澱粉が好ましい。
上記多糖類は、乾燥状態の可食性フィルム中、60重量%以上含まれているが、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。なお、本発明において多糖類含量とは、フィルム構成成分中の多糖類の割合であり、(フィルム中の多糖類重量/フィルム構成成分の重量)×100(%)で示される。フィルム中の多糖類の重量%はフィルムの構造に関与し物性を決めるものであるが、後述するデキストリン類は、単なる賦形剤(増量剤)であるため、フィルム構成成分には含まれないものとする。
ここで、乾燥状態の可食性フィルムとは、水分量が30重量%以下のフィルムをいう。
可食性フィルムには、上記成分のほかに、添加物として乳化剤、油脂成分等を添加することができる。乳化剤としては、特に限定されず、グリセリン脂肪酸エステル、シュガーエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等、通常使用されているものであればよい。また、耐水性を上げるために、少量の油脂成分を添加してもよい。
本発明の可食性フィルムにおいて、フィルムに含まれる多糖類は、調味液部分に対する使用濃度が、0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%、特に好ましくは0.1〜0.5重量%となるように設計し、製造されることが好ましい。0.05重量%より少ないと、フィルムが小さすぎたり薄すぎて破壊したりしてセパレートとしての効果がない。また、1.5重量%より多いと、フィルムが大きすぎて加熱後に溶け残りがあったり、厚すぎて溶解が悪かったり、溶解してもスープにとろみがでてしまうなどの問題が生じてしまう。
本発明において、フィルムの大きさは、上記スープ溶液に対するフィルム濃度に影響する要因のひとつであるが、麺状食品においては、スープと麺の接触面より広く敷かれ、麺部分と調味液部分がセパレートしていればよい。フィルムが大きすぎてスープの面よりはみ出しすぎると、その部分が溶解不良を起こしたり、または使用濃度が高くなってしまいとろみが出てしまうため好ましくない。
本発明においては、フィルムに含まれる多糖類の調味液部分に対する濃度を規定し、更にフィルムの膜厚を規定することにより、全ての調理済み麺状食品用セパレートフィルムの特性を満たすことを見出した。膜厚が厚すぎるとフィルム強度が上がるが、使用濃度が高くなり凝固点や液粘性に影響してしまう。
フィルムの膜厚は、スープ溶液に対するフィルム濃度の影響の要因のひとつである。膜厚は、膜厚計(TECLOCK社製など)を使用して測定することができる。フィルム膜厚は、10〜320μmであり、20〜200μmがより好ましく、20〜100μmが特に好ましい。320μmより厚いと、加熱によるフィルムの溶解が悪く溶け残りが生じたり、溶解したとしてもスープにとろみが生じてしまう。10μmより薄いと、フィルム強度が得られず麺を乗せたときに破壊してしまったり、物流途中で破壊してしまいセパレートとしての機能を有しない場合があり好ましくない。膜厚は、多糖類の溶液を支持体に均一に流延する際、液量を調整することにより調整することができる。つまり、厚く流延すれば厚いフィルムができ、薄く流延すれば薄いフィルムができる。
本発明に係る調理済み麺状食品は、麺部分と調味液部分とが、上記可食性フィルムによって分離されている。
麺部分は、中華麺、うどん、そば、パスタ、そうめん等、通常市販されている麺であれば特に限定はされない。
本発明において、調味液部分には、50重量%以上の水分が含まれている必要がある。調味液部分は、具体的には、中華麺の調味液、うどん、そば、そうめんのつゆ、パスタソースなど一般的に使用される調味液などが挙げられる。なお、本発明においては、パスタソースなどのあらかじめ調味液部分に具材を含んでいる場合には、目開き500μmの篩で除けるような具材を除いたものを調味液部分と定義する。
本発明の調理済み麺状食品においては、流通時などは調味液部分が冷凍又はゲル化剤により固形化されており、喫食直前に各種加熱調理器、具体的には、電子レンジ、蒸し器、オーブンレンジ、過熱水蒸気を使用した加熱器、赤外線を使用した加熱器、電熱線を使用した加熱器、熱風を使用した加熱器など一般的に使用されている加熱調理器などで加熱される。
加熱時間は、それぞれの調理器具により異なるが、一般的には30秒〜5分程度であり、加熱温度は、喫食に適する温度であればよいが、一般的には品温で60〜100℃程度なることが好ましい。
上記加熱により、調理済み麺状食品の品温が60℃以上になれば、可食性フィルムが調味液部分に溶解するため、プラスチックフィルムのように喫食時にフィルムを取り除く必要がなくなる。
本発明においては、可食性フィルム溶解後の調理済み麺状食品を冷めて喫食する目安として、官能検査の結果から、わずかに温かく飲むことができるスープ温度を40℃として評価した。可食性フィルム溶解後、40℃に冷却した調味液部分の粘度は、1〜300mPa・sに抑制されており、粘度5〜150mPa・sがより好ましい。なお、このときの粘度は、粘度の増加が300mPa・s以下に抑えられていることを意味し、可食性フィルム溶解前の粘度以下にまで粘度が低下することを意図しているものではない。本発明の組成によれば、全て好ましいスープ粘度を維持することができる。
寒天:伊那寒天UP−37(伊那食品工業社製)
低強度寒天1:ウルトラ寒天AX−100(伊那食品工業社製)
低強度寒天2:ウルトラ寒天イーナ(伊那食品工業社製)
カラギナン1:イナゲルE−150(伊那食品工業社製)
カラギナン2:イナゲルV−120(伊那食品工業社製)
グアーガム:イナゲルGR−15(伊那食品工業社製)
低粘度グアーガム:イナゲルGR−15L(伊那食品工業社製)
ローカストビーンガム:イナゲルL−85(伊那食品工業社製)
低粘度ローカストビーンガム:イナゲルL−85L(伊那食品工業社製)
タラガム:タラガムA(伊那食品工業社製)
低粘度タラガム:タラガムAL(伊那食品工業社製)
ペクチン:イナゲルJP−10(伊那食品工業社製)
低粘度ペクチン:イナゲルJP−10L(伊那食品工業社製)
キサンタンガム:ケルトロール(CPケルコ社製)
低粘度キサンタンガム:イナゲルV−10L(伊那食品工業社製)
アルギン酸ナトリウム:イナゲルGS−70(伊那食品工業社製)
低粘度アルギン酸ナトリウム:イナゲルGS−80(伊那食品工業社製)
タマリンドガム:イナゲルV−250(伊那食品工業社製)
低粘度タマリンドガム:イナゲルV−250L(伊那食品工業社製)
ジェランガム:ケルコゲル(CPケルコ社製)
ネーティブジェランガム:LT−100(CPケルコ社製)
低粘度ネーティブジェランガム:LT−100L(伊那食品工業社製)
アラビアガム:アラビアガムA(伊那食品工業社製)
澱粉1:スタビローズ1000(松谷化学工業社製)
澱粉2:MKK−100(松谷化学工業社製)
澱粉3:ゆり8(松谷化学工業社製)
澱粉4:コーンスターチ(日本食品化工社製)
澱粉5:ファリネックスCA(松谷化学工業社製)
澱粉6:ファリネックスVA−70T(松谷化学工業社製)
澱粉7:スタビローズK(松谷化学工業社製)
ゼラチン:イナゲルA−81P(伊那食品工業社製)
デキストリン:パインデックス#4(松谷化学工業社製)ただし、本発明においては、増量剤として使用し、フィルム構成成分としては扱わない。
グリセリン:坂本薬品工業社製
1.フィルムの膜厚
作製したフィルムの4角および中心の計5箇所を膜厚計(TECLOCK社製)を使用して測定し、平均を膜厚(μm)とした。
A:フィルム強度があり破れや破損が生じない。
B:フィルム強度がなく破れが生じてしまい使用が困難である。
A:フィルムは充分な強度を有し破れなど確認されない。
B:極一部の破れが確認されたが強度的には問題ない程度である。
C:強度不足によるフィルムの破れが確認される。
A:調味液と麺が混ざることなくフィルムにより分離されている。
B:極一部調味液が麺に染み出している箇所があるが問題ない程度である。
C:フィルムが溶解または崩壊し一部調味液が麺に含浸している。
A:フィルムは完全に溶解し調味液と麺は混ざりあっている。
B:フィルムは極わずか溶解せずに残存しているが、調味液と麺は違和感なく混ざりあっており問題ない程度である。
C:調味液と麺は混ざりあっているが未溶解フィルムが多くあり外観に違和感がある。
D:フィルムの溶解が悪く調味液と麺の混ざりが悪い。
A:粘度や曳糸性がなく、フィルムを使用しない場合の調味液の物性であった。
B:フィルムを使用しない場合の調味液に比べ若干粘性を感じるが問題ない程度であった。
C:フィルムを使用しない場合の調味液に比べ粘性や曳糸性があり、口腔内でべとつき美味しさが減少した。
D:調味液の一部がゲル化していて違和感があった。
調理済み麺状食品を加熱後、40℃まで冷却した後の調味液粘度を測定した(B型粘度計、回転数60rpm、1号ローターを基本的に使用しスケールオーバーの場合は2号ローター、さらには3号ローターを使用した)。
(実施例1〜21,比較例1〜13)
表1,2に示した配合にて調理済み麺状食品に使用するセパレート用フィルムを作製した。具体的には、水に多糖類、グリセリンを分散させた後、95℃に加温して溶解させた。この溶液を、支持体表面上に均一に流延した。これを内部が90℃に加熱された乾燥機に支持体ごと挿入してほとんど乾燥させた。この状態で支持体から剥がし、10cm×10cmに切断後、さらに100℃で6時間以上乾燥し恒量になった時点のフィルムの重量をフィルム1枚の重量とした。これらのフィルムを冷凍された調味液200gと冷凍された麺(中華そば)100gの間に麺がはみ出さないように入れて冷凍状態(−20℃)で30日間保管した。保管の状態を観察後、電子レンジ(600W)で5分間加熱調理を行い(品温75℃)、フィルムの状態と40℃における調味液の粘度を測定した。なお、使用した冷凍前の調味液の40℃の粘度は、31mPa・sであった。さらに、調味液の食感(10人のパネラー)を調べた。結果は表3に示す。
表4に示した配合にて、調理済み麺状食品に使用するセパレート用フィルムを作製した。具体的には、水に多糖類、グリセリンを分散させた後、95℃に加温して溶解させた。この溶液を、支持体表面上に均一に流延後室温にてゲル化させた。これを内部が90℃に加熱された乾燥機に支持体ごと挿入してほとんど乾燥させた。この状態で支持体から剥がし、10cm×10cmに切断後、さらに100℃で6時間以上乾燥し恒量になった時点のフィルムの重量をフィルム1枚の重量とした。これらのフィルムを冷凍された調味液200gと冷凍された麺(うどん)100gの間に麺がはみ出さないように入れて冷凍状態(−20℃)で30日間保管した。保管の状態を観察後、電子レンジ(600W)で5分間加熱調理を行い(品温75℃)、フィルムの状態と40℃における調味液の粘度を測定した。なお、使用した冷凍前の調味液の40℃の粘度は、30mPa・sであった。実験例1と同様にして物性を評価し結果を表5に記載した。
実施例24の配合、製法にてフィルムを作製した。ただしフィルムの厚さは表6に示したように作製した。これらのフィルムを冷凍された調味液200gと冷凍された麺(うどん)100gの間に麺がはみ出さないように入れて冷凍状態(−20℃)で30日間保管した。保管の状態を観察後、電子レンジ(600W)で5分間加熱調理を行い(品温75℃)、フィルムの状態と40℃における調味液の粘度を測定した。実験例1と同様にして物性を評価し結果を表7に記載した。
表8,9に示した配合にて実験例1と同様な方法にて調理済み麺状食品に使用するセパレート用フィルムを作製し、同様に評価した。ただし、使用した冷凍前の調味液の40℃の粘度は、6mPa・sのものを使用した。結果を表10に示した。
表11に示した配合にて麺用調味液を作製した。具体的には、水にゼラチンを入れ70℃で溶解させこれに5倍濃縮された麺つゆを加え10℃で冷却し麺つゆのゲルを作製した。10℃にてこのゲル200gを容器に入れた。このときの離水量は5gであった。実施例2で作製した10cm×10cmのフィルムをゲルの上に乗せ、さらにはみ出さないように、茹でて湯切り後10℃に冷却したそうめん100gを乗せて4℃(冷蔵)で1日放置した。保管の状態を観察後、電子レンジ(600W)で3分間調理を行い(品温75℃)、フィルムの状態と40℃における調味液の粘度を測定した。なお、使用したゲル化前の調味液の40℃の粘度は、15mPa・sであった。さらに、調味液の食感(10人のパネラー)を調べた。結果は表12に示す。
Claims (2)
- 麺部分と調味液部分とが厚さ10〜320μmの可食性フィルムによって分離され、該調味液部分が冷凍又はゲル化剤により20℃以下で固形化された調理済み麺状食品であって、
前記可食性フィルムには、澱粉、化工澱粉、寒天、プルラン、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、タマリンドガム、アラビアガムのうち少なくとも一以上の多糖類が60重量%以上、及び可塑剤が含まれ、
前記可食性フィルムに含まれる多糖類が、前記調味液部分に対して0.05〜1.5重量%であり、
前記可塑剤は、乾燥状態の前記可食性フィルム中、0.5〜30重量%となるように添加されたグリセリンであり、
前記可食性フィルムは、加熱により前記調味液部分に溶解し、
可食性フィルム溶解前の調味液部分の40℃における粘度が1〜200mPa・sであり、可食性フィルムを加熱溶解後、再び40℃に冷却された調味液部分の粘度が1〜300mPa・sであることを特徴とする調理済み麺状食品。 - 請求項1記載の調理済み麺状食品の喫食方法であって、
加熱により、前記可食性フィルムを前記調味液部分に溶解させ、
該可食性フィルムを加熱溶解後、40℃に冷却された調味液部分の粘度を1〜300mPa・sに抑制することを特徴とする調理済み麺状食品の喫食方法。
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