JP5497062B2 - 硬質被膜、および硬質被膜被覆工具 - Google Patents

硬質被膜、および硬質被膜被覆工具 Download PDF

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Description

本発明は硬質被膜に係り、特に、耐摩耗性および耐熱性に優れた硬質被膜に関するものである。
高速度工具鋼や超硬合金等の工具母材などの所定の部材の表面に硬質被膜を設けることが広く行われている。そして、例えば高硬度被削材の高速加工においては、被膜の耐熱性(高温での耐酸化性)が大変重要で、工具寿命に大きく影響する。このような耐熱性に優れた硬質被膜としては、例えばTiAlN系やAlCrN系の被膜が従来から知られている(例えば特許文献1〜5参照)。
特開2007−15106号公報 特開2007−119795号公報 特開2007−2332号公報 特開2006−307323号公報 特開2004−130514号公報
しかしながら、切削加工の更なる高速化や高能率化で切れ刃が一層高温となる過酷な加工条件で使用される場合があり、硬質被膜に関しても更なる耐熱性の向上が求められている。また、環境問題から切削油剤の使用量の低減が求められているが、切削油剤の使用量を低減すると工具が高温になり易く、この点からも硬質被膜の耐熱性の向上が要求される。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、一層優れた耐熱性が得られる硬質被膜を提供することにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、所定の部材の表面上に設けられる耐摩耗性および耐熱性に優れた硬質被膜であって、(a) Ala Crb (SiC) c αd N〔但し、αは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、B、C、Si、Yの中の1種類以上の元素であり、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0.35≦a≦0.76、0.12≦b≦0.43、0.05≦c≦0.20、0≦d≦0.20の範囲内であり、且つAlに対するCrの原子比の割合b/aは0.25≦b/a≦0.67の範囲内でアルミニウムリッチであり、a+b+c+d=1である〕から成り、最表面に設けられる第1被膜を備えているとともに、(b) 総膜厚Ttotal は0.5〜15μmの範囲内で、前記第1被膜の膜厚T1、または第1被膜と同じ被膜成分を有する他の被膜部分を備えている場合はその他の被膜部分を含めた膜厚が、総膜厚Ttotal の20%以上であることを特徴とする。
第2発明は、第1発明の硬質被膜において、(a) 前記第1被膜が前記所定の部材の表面上に直接設けられ、その第1被膜のみにて構成されており、(b) その第1被膜の膜厚T1が総膜厚Ttotal であることを特徴とする。
第3発明は、第1発明の硬質被膜において、前記所定の部材と前記第1被膜との間であってその所定の部材の表面上には、Tie Alf Crg βh N〔但し、βは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Ti、Crを除く)、B、C、Si、Yの中の1種類以上の元素であり、e、f、g、hはそれぞれ原子比で、0≦e≦0.64、0.32≦f≦0.81、0≦g≦0.40、0≦h≦0.20の範囲内であり、且つeとgは同時に0にはならず、e+f+g+h=1である〕から成る第2被膜が設けられていることを特徴とする。
第4発明は、第3発明の硬質被膜において、(a) 前記第1被膜は前記第2被膜の上に直接設けられ、それ等の第1被膜および第2被膜のみにて構成されており、(b) 前記第1被膜の膜厚T1が総膜厚Ttotal の20%以上であることを特徴とする。
第5発明は、第3発明の硬質被膜において、前記第1被膜と前記第2被膜との間には、それ等の第1被膜および第2被膜と同じ被膜成分の被膜が交互に積層された交互層または第1被膜および第2被膜が混ざった被膜成分の混合層にて構成されている中間層が設けられていることを特徴とする。
第6発明は硬質被膜被覆工具に関するもので、第1発明〜第5発明の何れかの硬質被膜で工具母材の表面が被覆されていることを特徴とする。
第1発明の硬質被膜によれば、Alに対するCrの原子比の割合b/aが0.25≦b/a≦0.67の範囲内のアルミニウムリッチのAlCrN系の被膜に、SiC(炭化珪素)が0.05〜0.20の原子比で添加されたAla Crb (SiC) c αd Nから成る第1被膜が、少なくとも最表面に設けられるとともに、その第1被膜の膜厚T1、または第1被膜と同じ被膜成分を有する他の被膜部分を備えている場合はその他の被膜部分を含めた膜厚が、総膜厚Ttotal の20%以上であるため、所定の耐摩耗性を確保しつつ一層優れた耐熱性(高温での耐酸化性)が得られるようになる。これにより、例えば切込み量が大きい高負荷切削等の高能率加工や、高硬度材に対する高速切削加工など切れ刃が高温になる過酷な条件下での切削加工が可能になり、或いはそのような切削加工での工具寿命が向上するとともに、切削油剤の使用量を低減することが可能となる。
また、αが0.20以下の原子比で添加される場合は、一層優れた耐熱性が得られるようになる。これにより、例えば高速切削穴明け加工など刃先が局部的(ドリルのコーナーなど)に長い時間高温に晒される条件下において、優れた耐摩耗性、耐熱性が得られるようになり、耐久性(工具寿命)が向上する。すなわち、切れ刃に略均等に負荷が作用するエンドミル等においては、αの添加による明確な耐久性向上効果は認められなかったが、ドリルによる高速穴明け加工では、α添加無しの場合に比較して耐久性が更に向上した。
第3発明は、所定の部材の表面上に強靱で付着力に優れたTie Alf Crg βh Nの第2被膜が設けられる場合で、硬質被膜の付着力が向上するとともに、第1被膜の被膜成分を有する部分の膜厚は総膜厚Ttotal の20%以上であるため、その第1被膜の被膜成分による耐熱性の向上効果が適切に得られる。これにより、例えば50HRC以上の高硬度被削材にドライ加工(エアブロー)で高速切削加工を行う場合でも被膜剥離が抑制され、優れた耐摩耗性および耐熱性が適切に得られるようになる。また、この第2被膜についても、βが0.20以下の原子比で添加されることにより、一層優れた耐熱性が得られるようになる。例えば、TiAl化合物において、Tiの酸化がAlの酸化より速いため耐酸化性が悪い場合があるが、βを添加することでTi酸化物の酸素空孔濃度が減少し、その成長速度が小さくなることが期待できる。その結果均一なAl酸化物層が出来やすくなり、耐酸化性を得ることが可能となる。
第5発明は、第1被膜と第2被膜との間に、それ等の第1被膜および第2被膜と同じ被膜成分の被膜が交互に積層された交互層または第1被膜および第2被膜が混ざった被膜成分の混合層にて構成されている中間層が設けられている場合で、第1被膜の密着性が更に向上するとともに被膜全体の靱性が向上する。これにより、難削材(硬くてねばい材料)の加工に対しても表層剥離が抑制され、長時間安定した加工性能が得られるようになって工具寿命が向上する。
第6発明は硬質被膜被覆工具に関するもので、第1発明〜第5発明の何れかの硬質被膜で工具母材の表面が被覆されている場合であり、実質的に第1発明〜第5発明の硬質被膜と同様の作用効果が得られる。
本発明が適用されたボールエンドミルを示す図で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は先端側から見た拡大底面図、(c) は硬質被膜が設けられた刃部の表面近傍の拡大断面図である。 AlCr(SiC)NとAlCrSiCNとの相違を説明する図で、(a) はAlCr(SiC)Nの原子構造の概念図、(b) はAlCrSiCNの原子構造の概念図、(c) はAlCrSiCNのSiの挙動を説明する図である。 SiCを化合物として含有しているSiC含有品と、SiCを化合物として含有していないSiC非含有品とについて、XPSによる測定結果を比較して示す図である。 本発明の他の実施例を説明する図で、(a) 、(b) 共に図1の(c) に相当する断面図である。 本発明の更に別の実施例を説明する図で、(a) 、(b) 共に図1の(c) に相当する断面図である。 本発明品および従来品を含む複数種類の試験品について耐久性試験を行なう際の試験条件を説明する図である。 図6の耐久性試験で用いた試験品の被膜組成や膜厚を具体的に示すとともに、図6の耐久性試験や耐熱性試験等の試験結果を説明する図である。 本発明品および従来品を含む複数種類の試験品について、図6とは異なる耐久性試験を行なう際の試験条件を説明する図である。 図8の耐久性試験で用いた試験品の被膜組成や膜厚を具体的に示す図である。 図9の試験品について図8の耐久性試験や耐熱性試験等の試験結果を説明する図である。 図9の試験品No30、No49、No50、No56、No59と同じ硬質被膜で被覆されたドリルの耐久性試験を行なう際の試験条件を説明する図である。 図11の耐久性試験の試験結果を説明する図である。
本発明は、エンドミルやタップ、ドリルなどの回転切削工具の他、バイト等の非回転式の切削工具、或いは転造工具など、種々の加工工具の表面に設けられる硬質被膜に好適に適用されるが、半導体装置等の表面保護膜など加工工具以外の部材の表面に設けられる硬質被膜にも適用できる。硬質被膜被覆工具の工具母材としては、超硬合金や高速度工具鋼、合金工具鋼、サーメット、セラミックス、多結晶ダイヤモンド(PCD)、単結晶ダイヤモンド、多結晶CBN、単結晶CBNが好適に用いられるが、他の工具材料を採用することもできる。
硬質被膜の形成手段としては、アークイオンプレーティング法やスパッタリング法、PLD(Puls LASER Deposition )法等のPVD法(物理蒸着法)が好適に用いられる。硬質被膜を構成するAl、Cr、Ti、SiC(炭化珪素)、α、β等については、それ等の単独の金属や合金等をターゲットとして用いて成膜処理を行うこともできるが、Ala Crb 、Ala Crb αd 、Tie Alf 、Tie Alf Crg 、Tie Alf βh 、Tie Alf Crg βh の合金等をターゲットとして用いて成膜処理を行うこともできる。N(窒素)については、反応ガスの供給で添加することができる。α、βの選択肢であるC(炭素)については、反応ガス(炭化水素ガスなど)の供給、或いは固体ターゲット(Cターゲット、C含有ターゲット)により添加できる。なお、第1被膜の構成要素である括弧書きの「(SiC)」は、炭化珪素という化合物の形で第1被膜内に存在していることを意味する。
硬質被膜被覆工具は、例えば高速や高負荷での乾式切削加工、高硬度被削材に対する高速切削加工など切れ刃が高温となる加工条件で使用する場合に好適に用いられ、優れた耐久性(工具寿命)が得られるようになるが、耐摩耗性や耐熱性がそれ程要求されない加工条件下、例えば切削油剤を用いた切削加工等で使用することも勿論可能である。
第1被膜のαおよび第2被膜のβは、何れもその原子比d、hが0を含んでおり、任意に添加されるもので、第1被膜はAla Crb (SiC)c N〔但し、a+b+c=1〕であっても良いし、第2被膜はTie Alf Crg N〔但し、e+f+g=1〕であっても良い。α或いはβを添加する場合、原子比a〜dは、a+b+c+d=1の関係となるように定められ、原子比e〜hは、e+f+g+h=1の関係となるように定められる。αおよびβを共に添加する場合、α=βであっても良いし、α≠βであっても良い。
第2被膜のTiおよびCrの原子比e、gは0を含んでいるが、それ等の原子比eおよびgが同時に0となることはなく、少なくともTiおよびCrの何れか一方を含んで構成される。TiおよびCrの両方を所定の原子比で含有していても良い。言い換えれば、第2被膜としてはTiAlCrβNの他、TiAlβN、或いはAlCrβNを用いることができる。
硬質被膜の総膜厚Ttotal は0.5μm〜15μmの範囲内であるが、0.5μm未満の場合は硬質被膜としての性能が十分に得られず、15μmを超えると切削工具の刃先が丸くなるなどして工具性能が損なわれる可能性がある。また、この総膜厚Ttotal に対して第1被膜および第1被膜と同じ被膜成分を有する他の被膜部分を含めた膜厚が20%未満であると、その第1被膜の被膜成分による耐熱性の向上効果が十分に得られないため、20%以上に設定される。第1被膜と同じ被膜成分を有する他の被膜部分とは、例えば第1被膜と同じ被膜成分の被膜と他の被膜とが交互に積層された交互層、或いは第1被膜の被膜成分と他の被膜成分とが混ざった混合層などを含む趣旨で、交互層の場合は第1被膜と同じ被膜成分の被膜部分の合計膜厚を含み、混合層の場合はその全膜厚を含む。なお、最表面に位置する第1被膜の膜厚T1だけで総膜厚Ttotal の20%以上となるようにすることが一層望ましい。
第3発明では所定の部材と第1被膜との間に第2被膜が設けられ、第5発明では、その第2被膜と第1被膜との間に更に中間層が設けられるが、第1発明の実施に際しては、少なくとも第1被膜が最表面に位置するように設けられれば良く、第2発明のように第1被膜のみで硬質被膜を構成することもできるし、第2被膜とは成分が異なる他の下地層が所定の部材と第1被膜との間に設けられても良い。また、所定の部材と第1被膜との間に、上記第2被膜や中間層とは異なる2種類以上の被膜を設けることも可能で、硬質被膜の総膜厚Ttotal に対して第1被膜およびその第1被膜と同じ被膜成分を有する部分の合計膜厚が20%以上であることを条件として種々の態様が可能である。第3発明の実施に際しては、第2被膜および第1被膜と同じ被膜成分の被膜を交互に積層した多層構造の硬質被膜を採用することもできる。その場合は、第1被膜と同じ被膜成分の被膜の合計膜厚に第1被膜の膜厚T1を加算した膜厚が総膜厚Ttotal の20%以上になるようにすれば良い。
第5発明の中間層は、第1被膜および第2被膜と同じ被膜成分の被膜が交互に積層された交互層または第1被膜および第2被膜が混ざった被膜成分の混合層にて構成されているが、交互層は少なくとも第1被膜および第2被膜と同じ被膜成分の被膜が1周期積層されれば良いとともに、両者の膜厚は同じであっても異なっていても良いなど、積層周期数や個々の膜厚等は適宜設定される。混合層は、第1被膜および第2被膜の成分を総て含んでいるもので、第1被膜および第2被膜の成膜処理で使用するターゲットおよび反応ガス等を総て用いることによって形成できる。この中間層の膜厚は、中間層のうち第1被膜の被膜成分を有する部分の膜厚(混合層の場合は全膜厚で、交互層の場合は第1被膜と同じ被膜成分の被膜の合計膜厚)と第1被膜の膜厚T1とを合わせた膜厚が総膜厚Ttotal の20%以上となるように適宜設定されるが、最表面の第1被膜の膜厚T1だけで総膜厚Ttotal の20%以上になるようにしても良い。上記混合層または他の被膜を介在させながら第1被膜および第2被膜と同じ被膜成分の被膜を交互に1周期以上積層した多層構造の交互層を中間層として採用することもできる。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された硬質被膜被覆工具の一例であるボールエンドミル10を説明する図で、(a) は軸心と直角方向から見た正面図、(b) は先端側((a) の図の右方向)から見た拡大底面図であり、超硬合金或いは高速度工具鋼にて構成されている工具母材12にはシャンクに連続して刃部14が一体に設けられている。刃部14には、切れ刃として一対の外周刃16およびボール刃18が軸心に対して対称的に設けられており、軸心まわりに回転駆動されることによりそれ等の外周刃16およびボール刃18によって切削加工が行われるとともに、その刃部14の表面には硬質被膜20がコーティングされている。図1(a) の斜線部は硬質被膜20を表しており、図1の(c) は、硬質被膜20がコーティングされた刃部14の表面近傍の断面図である。ボールエンドミル10は回転切削工具で、工具母材12は硬質被膜20が設けられる所定の部材に相当する。
図1(c) から明らかなように、硬質被膜20は、工具母材12の表面上に直接設けられた第1被膜22のみから成る単層の被膜である。この第1被膜22は、Ala Crb (SiC) c αd N〔但し、αは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、B、C、Si、Yの中の1種類以上の元素であり、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0.35≦a≦0.76、0.12≦b≦0.43、0.05≦c≦0.20、0≦d≦0.20の範囲内であり、且つAlに対するCrの原子比の割合b/aは0.25≦b/a≦0.67の範囲内でアルミニウムリッチであり、a+b+c+d=1である〕にて構成されており、本実施例ではアークイオンプレーティング装置を用いて、所定のターゲットおよび反応ガスにより成膜されている。また、この第1被膜22の膜厚T1、すなわち硬質被膜20の総膜厚Ttotal は、0.5〜15μmの範囲内である。
図7に示す試験品No05、No06、No08〜No11、No13、No15〜No22、No24、No25に示す硬質被膜は、本実施例の硬質被膜20の具体例である。
ここで、第1被膜22の構成要素である「(SiC)」は、炭化珪素という化合物の形で第1被膜22内に存在していることを意味し、このSiC(炭化珪素)が0.05〜0.20の原子比で添加されることにより、所定の耐摩耗性を確保しつつ優れた耐熱性(高温での耐酸化性)が得られるようになる。図2の(a) は、本実施例の第1被膜22においてαの原子比d=0の場合、すなわちAlCr(SiC)Nの原子構造を示す概念図で、SiCは化合物の形で存在している。これに対し、単にAlCrSiCNと言った場合は、図2の(b) に示すようにSiとCとが別個に存在している。そして、このようにSiとCとが別個に存在しているAlCrSiCNにおいては、Siが酸素と結合し易いため、図2の(c) に示すように酸素が豊富な表面にSiが集まり、Siが酸素と結合して酸化珪素が表面に形成されることにより、優れた耐酸化性(耐熱性)が得られるようになる。
しかしながら、被膜中からSiが抜けるため、被膜中のSiの密度が低下し、耐摩耗性が損なわれる。これに対し、AlCr(SiC)Nの場合は、SiCという化合物の形で存在しているため、酸素との結合性は低く、且つ、Siの表面への原子移動も生じないため、所定の耐摩耗性を維持しつつ耐酸化性を向上させることができる。因に、被膜中のSiCの有無は、XPS(X-ray Photoelectron Spectrometry; X線光電子分光法)による測定結果から判断できる。図3は、SiCを化合物として含有している場合(SiC含有品)と、SiCを化合物として含有していない場合(SiC非含有品)とについて、XPSによる測定結果を比較して示す図で、SiC含有品では282eV付近にピークが発生し、このピークの有無からSiCを化合物の形で含んでいるか否かを判断できる。
このような本実施例のボールエンドミル10の硬質被膜20は、Alに対するCrの原子比の割合b/aが0.25≦b/a≦0.67の範囲内のアルミニウムリッチのAlCrN系の被膜に、SiC(炭化珪素)が0.05〜0.20の原子比で添加されたAla Crb (SiC) c αd Nから成る第1被膜22によって構成されているため、所定の耐摩耗性を確保しつつ一層優れた耐熱性(高温での耐酸化性)が得られるようになる。これにより、例えば切込み量が大きい高負荷切削等の高能率加工や、高硬度材に対する高速切削加工など切れ刃が高温になる過酷な条件下での切削加工が可能になり、或いはそのような切削加工での工具寿命が向上するとともに、切削油剤の使用量を低減することが可能となる。
また、αが0.20以下の原子比で添加される場合(例えば図7の試験品No15〜No18、No24、No25)は、一層優れた耐熱性が得られるようになる。これにより、例えば高速切削穴明け加工など刃先が局部的(ドリルのコーナーなど)に長い時間高温に晒される条件下において、優れた耐摩耗性、耐熱性が得られるようになり、耐久性(工具寿命)が向上する。なお、本実施例のボールエンドミル10のようにボール刃18に略均等に負荷が作用する場合は、αの添加による明確な耐久性向上効果は認められなかった。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例1と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図4の(a) の硬質被膜30は、前記工具母材12と第1被膜22との間に第2被膜32が介在させられている。この第2被膜32は、Tie Alf Crg βh N〔但し、βは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Ti、Crを除く)、B、C、Si、Yの中の1種類以上の元素であり、e、f、g、hはそれぞれ原子比で、0≦e≦0.64、0.32≦f≦0.81、0≦g≦0.40、0≦h≦0.20の範囲内であり、且つeとgは同時に0にはならず、e+f+g+h=1である〕にて構成されており、第1被膜22と同様にアークイオンプレーティング装置を用いて、所定のターゲットおよび反応ガスにより成膜されている。この場合の硬質被膜30の総膜厚Ttotal は、前記硬質被膜20と同じく0.5〜15μmの範囲内であり、第1被膜22の膜厚T1は総膜厚Ttotal の20%以上で、残りが第2被膜32の膜厚となる。
図9に示す試験品No28、No29、No32〜No36、No38〜No46、No48〜No52、No54、No56〜No58に示す硬質被膜は、本実施例の硬質被膜30の具体例である。
このような本実施例の硬質被膜30においては、工具母材12と第1被膜22との間に強靱で付着力に優れたTie Alf Crg βh Nから成る第2被膜32が設けられているため、硬質被膜30の付着力が向上するとともに、第1被膜22の膜厚T1は総膜厚Ttotal の20%以上であるため、その第1被膜22による耐熱性の向上効果が適切に得られる。これにより、例えば50HRC以上の高硬度被削材にドライ加工(エアブロー)で高速切削加工を行う場合でも被膜剥離が抑制され、優れた耐摩耗性および耐熱性が適切に得られるようになる。また、この第2被膜32についても、βが0.20以下の原子比で添加されることにより、一層優れた耐熱性が得られるようになる。
図4の(b) の硬質被膜34は、上記第1被膜22と第2被膜32との間にそれ等と被膜成分が等しい一対の被膜23、33が交互に1周期以上(実施例は複数周期)積層された多層構造の被膜で、実質的に最表面が第1被膜22になるように第2被膜32および第1被膜22を交互に工具母材12上に積層したものである。この硬質被膜34の総膜厚Ttotal は0.5〜15μmの範囲内で、第1被膜22の被膜成分と等しい複数の被膜23の合計膜厚に第1被膜22の膜厚T1を加えた膜厚が総膜厚Ttotal の20%以上となるように各膜厚が定められる。図では、被膜22、23、32、33の各膜厚が互いに略同じであるが、第1被膜22の膜厚T1を他の被膜23、32、33の膜厚よりも大きくするなど適宜設定できる。
このような本実施例の硬質被膜34においても、工具母材12上に第2被膜32が設けられているため、前記硬質被膜30と同様の作用効果が得られる。また、この硬質被膜34は、第1被膜22と第2被膜32との間にそれ等と被膜成分が等しい一対の被膜23、33が交互に1周期以上積層された多層構造であるため、第1被膜22の密着性が更に向上するとともに硬質被膜34全体の靱性が向上する。第1被膜22の被膜成分と等しい複数の被膜23の合計膜厚に第1被膜22の膜厚T1を加えた膜厚が総膜厚Ttotal の20%以上であるため、その第1被膜22の被膜成分による耐熱性の向上効果が適切に得られる。第1被膜22および第2被膜32と被膜成分が等しい一対の被膜23、33が交互に1周期以上積層された多層構造の被膜部分は中間層(この実施例では交互層)に相当する。
図5の(a) の硬質被膜40は、前記実施例2の硬質被膜30の第1被膜22と第2被膜32との間に更に中間層42を設けた場合である。この中間層42は、第1被膜22および第2被膜32と同じ被膜成分の被膜が交互に積層された交互層または第1被膜22および第2被膜32が混ざった被膜成分の混合層で、本実施例では中間層42として混合層が設けられている。この混合層は、第1被膜22および第2被膜32の成分を総て含んでいるもので、第1被膜22および第2被膜32の成膜処理で使用するターゲットおよび反応ガス等を総て用いることによって形成されており、第2被膜32の成膜処理に続いて連続して中間層42を形成し、更に第1被膜22を連続して形成することができる。この硬質被膜40の総膜厚Ttotal は0.5〜15μmの範囲内で、第1被膜22と中間層(混合層の場合)42とを合わせた膜厚T2は総膜厚Ttotal の20%以上で、残りが第2被膜32の膜厚である。中間層42の膜厚は、膜厚T2が総膜厚Ttotal の20%以上となるように適宜設定されるが、最表面の第1被膜22の膜厚T1だけで総膜厚Ttotal の20%以上になるようにしても良い。
図9に示す各試験品の中、「膜厚(μm)」の項目の「中間」の項目に数値(膜厚)が記載されている試験品No47、No53、No55、No59〜No61に示す硬質被膜は、本実施例の硬質被膜40の具体例である。これ等の実施例では、中間層42の膜厚が、何れも第1被膜22および第2被膜32の何れの膜厚よりも小さい。
このような本実施例の硬質被膜40においては、第1被膜22と第2被膜32との間に、それ等の第1被膜22および第2被膜32と同じ被膜成分の被膜が交互に積層された交互層または第1被膜22および第2被膜32が混ざった被膜成分の混合層から成る中間層42が設けられているため、第1被膜22の密着性が更に向上するとともに硬質被膜40全体の靱性が向上する。また、その中間層(混合層の場合)42と第1被膜22とを合わせた膜厚T2は総膜厚Ttotal の20%以上であるため、その第1被膜22の被膜成分による耐熱性の向上効果が適切に得られる。中間層42が交互層の場合は、第1被膜22と同じ被膜成分の被膜部分の合計膜厚に第1被膜22の膜厚T1を加えた膜厚が総膜厚Ttotal の20%以上とされれば良い。これにより、難削材(硬くてねばい材料)の加工に対しても表層剥離が抑制され、長時間安定した加工性能が得られるようになって工具寿命が向上する。
図5の(b) の硬質被膜44は、第1被膜22と第2被膜32との間にそれ等と被膜成分が等しい一対の被膜23、33を上記中間層42を挟むようにして交互に1周期以上(実施例は複数周期)積層した多層構造の被膜で、実質的に最表面が第1被膜22になるように中間層42を介在させながら第2被膜32と第1被膜22とを交互に工具母材12上に積層したものである。この硬質被膜44の総膜厚Ttotal は0.5〜15μmの範囲内で、第1被膜22の被膜成分と等しい複数の被膜23および混合層から成る中間層42の合計膜厚に第1被膜22の膜厚T1を加えた膜厚が総膜厚Ttotal の20%以上となるように各膜厚が定められる。図では、被膜22、23、32、33、42の各膜厚が互いに略同じであるが、第1被膜22の膜厚T1を他の被膜23、32、33、42の膜厚よりも大きくするなど適宜設定できる。本実施例でも、一対の被膜23、33の間に中間層42が設けられるため、前記硬質被膜40と同様の作用効果が得られるのに加えて、それ等の被膜23、33が中間層42を挟んで交互に1周期以上積層された多層構造であるため、密着性および靱性が一層向上する。このように第1被膜22および第2被膜32と同じ被膜成分の一対の被膜23、33を、中間層42を挟むようにして交互に1周期以上積層した多層構造の被膜も交互層の一態様である。
試験結果1
次に、工具母材が溶製ハイス(高速度工具鋼)で直径が10mmの2枚刃のスクエアエンドミルについて、図7に示すように第1被膜22の単層から成る前記実施例1の硬質被膜20が設けられた本発明品を含む複数種類の試験品No01〜No26を用意し、被膜硬さ(HV0.025)を測定するとともに、耐熱性試験および耐久性試験を行った結果を説明する。被膜硬さは3000未満をNG(不合格)とする。耐熱性試験は、試験品を大気圧・空気雰囲気中で1000℃に1時間晒した際の酸化層厚さを測定した。硬質被膜が総て酸化した全酸化は勿論、酸化層厚さが0.7μm以上の場合はNGとする。また、耐久性試験は、図6に示す試験条件で炭素鋼(JISで規定のS50C)に対して側面切削加工を行い、切れ刃の逃げ面摩耗幅が0.2mmになるまでの切削距離を求め、その切削距離が10m未満の場合をNGとする。
図7の試験品No01〜No03は、SiCを含んでいないAlCrN系の硬質被膜の従来品で、試験品No05、No06、No08〜No11、No13、No15〜No22、No24、No25は本発明品、残りの試験品No04、No07、No12、No14、No23、No26は、被膜組成の原子比やCr/Al比(=b/a)、総膜厚Ttotal が本発明の要件を満たしていない比較品(NG品)である。図7の「硬質被膜」および「総膜厚」の項目で網掛け(散点)を付した欄は本発明の要件から外れている項目であり、「被膜硬さ」、「酸化層厚さ」、および「切削距離」の項目で網掛け(散点)を付した欄はNGを表している。なお、図7の「硬質被膜」の欄の被膜組成は、原子比を%で記載したものである。また、N(窒素)について記載していないが、総ての試験品の硬質被膜はN(窒素)を含有する窒化物である。
図7の試験結果から明らかなように、本発明品(試験品No05、No06、No08〜No11、No13、No15〜No22、No24、No25)は、被膜硬さが何れも3000以上であり、従来品(試験品No01〜No03)に比較して優れた被膜硬さが得られる。耐熱性試験による酸化層厚さは、本発明品(試験品No05、No06、No08〜No11、No13、No15〜No22、No24、No25)は何れも0.6μm以下で合格要件(0.7μm未満)を満たしているが、特に、αを含有している試験品No15〜No18、No24、No25は酸化層厚さが0.3μm未満で、一層優れた耐熱性が得られる。また、耐久性試験による逃げ面摩耗幅が0.2mmの切削距離は、本発明品(試験品No05、No06、No08〜No11、No13、No15〜No22、No24、No25)は何れも10m以上で合格要件を満たしているのに対し、従来品(試験品No01〜No03)および比較品(試験品No04、No07、No12、No14、No23、No26)は何れも10m未満で、本発明品によれば優れた耐久性が得られる。
試験結果2
図9および図10は、工具母材が超硬合金製で直径が6mm(先端R=3mm)の2枚刃のボールエンドミルについて、第1被膜22および第2被膜32から成る前記実施例2の硬質被膜30、或いはそれ等の第1被膜22と第2被膜32との間に中間層42が設けられた前記実施例4の硬質被膜40が設けられた本発明品を含む複数種類の試験品No27〜No61を用意し、被膜硬さ(HV0.025)を測定するとともに、耐熱性試験および耐久性試験を行った結果を説明する図である。被膜硬さは3000未満をNG(不合格)とする。耐熱性試験は、前記図7の場合と同じで、試験品を大気圧・空気雰囲気中で1000℃に1時間晒した際の酸化層厚さを測定した。硬質被膜が総て酸化した全酸化は勿論、酸化層厚さが0.7μm以上の場合はNGとする。また、耐久性試験は、図8に示す試験条件で高硬度の合金工具鋼〔JISで規定のSKD61(50HRC)〕に対してエアブローによる乾式切削加工(ピック加工)を行い、切れ刃の逃げ面摩耗幅が0.1mmになるまでの切削距離を求め、その切削距離が850m未満の場合をNGとする。
図9の試験品No27は、第1被膜がSiCを含んでいないAlCrN系の硬質被膜から成る従来品で、試験品No30、No31、No37は総膜厚Ttotal やその総膜厚Ttotal に対する第1被膜の膜厚T1の割合が本発明の要件を満たしていない比較品(NG品)である。残りの試験品No28、No29、No32〜No36、No38〜No61は本発明品で、その中の試験品No28、No29、No32〜No36、No38〜No46、No48〜No52、No54、No56〜No58は中間層42を備えていない硬質被膜30の具体例で、試験品No47、No53、No55、No59〜No61は中間層42を有する硬質被膜40の具体例である。図9の「第1被膜」および「膜厚」の項目で網掛け(散点)を付した欄は本発明の要件から外れている項目であり、図10の「被膜硬さ」、「酸化層厚さ」、および「切削距離」の項目で網掛け(散点)を付した欄はNGを表している。なお、図9の「硬質被膜」の欄の被膜組成は、原子比を%で記載したものである。また、N(窒素)について記載していないが、総ての試験品の硬質被膜はN(窒素)を含有する窒化物である。
図10の試験結果から明らかなように、本発明品(試験品No28、No29、No32〜No36、No38〜No61)は、被膜硬さが何れも3000以上であり、従来品(試験品No27)に比較して優れた被膜硬さが得られる。耐熱性試験による酸化層厚さは、本発明品(試験品No28、No29、No32〜No36、No38〜No61)は何れも0.4μm以下で合格要件(0.7μm未満)を十分に満たしているが、特に、第1被膜がαを含有している試験品No46〜No52、No54〜No58は酸化層厚さが0.3μm未満で、一層優れた耐熱性が得られる。また、耐久性試験による逃げ面摩耗幅が0.1mmの切削距離は、本発明品(試験品No28、No29、No32〜No36、No38〜No61)は何れも850m以上で合格要件を満たしているのに対し、従来品(試験品No27)および比較品(試験品No30、No31)は何れも850m未満で、本発明品によれば優れた耐久性が得られる。なお、この試験結果からは、中間層42の有無による顕著な差異は認められなかった。また、総膜厚Ttotal が18.5μmの試験品No37の比較品は、被膜剥離により被膜硬さの測定や耐熱性試験、耐久性試験を適切に行うことができなかった。
試験結果3
図12は、工具母材が超硬合金製で直径が6mmの超硬ドリルについて、前記図9の試験品No30、No49、No50、No56、およびNo59と同じ硬質被膜が設けられた5本の試験品を用意し、図11に示す試験条件で炭素鋼(JISで規定のS50C)に対してミスト給油による高速切削穴明け加工を行い、耐久性試験を行った結果を説明する図である。耐久性試験は、切れ刃の逃げ面摩耗幅が0.2mmになるまでの加工穴数を求め、その加工穴数が4000穴未満の場合をNGとする。図12の試験品No30は、第1被膜の膜厚T1が総膜厚Ttotal の20%未満の比較品で、他の試験品No49、No50、No56、およびNo59は本発明品である。図12の「加工穴数」の項目で網掛け(散点)を付した欄はNGを表している。
図12の試験結果から明らかなように、本発明品(試験品No49、No50、No56、No59)は、何れも5000穴以上の穴明け加工が可能であったのに対し、試験品No30の比較品は2000穴で、本発明品によれば耐久性が大幅に向上する。特に、第1被膜がαを含有している試験品No49、No50、No56は加工穴数が6000以上であるのに対し、第1被膜がαを含有していない試験品No59は5010穴であり、第1被膜にαが添加されることにより加工穴数が大幅に増加した。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
10:ボールエンドミル(硬質被膜被覆工具) 12:工具母材(所定の部材) 20、30、34、40、44:硬質被膜 22:第1被膜 23:第1被膜と同じ被膜成分の被膜 32:第2被膜 33:第2被膜と同じ被膜成分の被膜 42:中間層 Ttotal :総膜厚 T1:第1被膜の膜厚 T2:第1被膜+中間層の膜厚

Claims (6)

  1. 所定の部材の表面上に設けられる耐摩耗性および耐熱性に優れた硬質被膜であって、
    Ala Crb (SiC)c αd N〔但し、αは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Crを除く)、B、C、Si、Yの中の1種類以上の元素であり、a、b、c、dはそれぞれ原子比で、0.35≦a≦0.76、0.12≦b≦0.43、0.05≦c≦0.20、0≦d≦0.20の範囲内であり、且つAlに対するCrの原子比の割合b/aは0.25≦b/a≦0.67の範囲内でアルミニウムリッチであり、a+b+c+d=1である〕から成り、最表面に設けられる第1被膜を備えているとともに、
    総膜厚Ttotal は0.5〜15μmの範囲内で、前記第1被膜の膜厚T1、または該第1被膜と同じ被膜成分を有する他の被膜部分を備えている場合は該他の被膜部分を含めた膜厚が、総膜厚Ttotal の20%以上である
    ことを特徴とする硬質被膜。
  2. 前記第1被膜が前記所定の部材の表面上に直接設けられ、該第1被膜のみにて構成されており、
    該第1被膜の膜厚T1が総膜厚Ttotal である
    ことを特徴とする請求項1に記載の硬質被膜。
  3. 前記所定の部材と前記第1被膜との間であって該所定の部材の表面上には、Tie Alf Crg βh N〔但し、βは元素の周期表のIVa族、Va族、VIa族(Ti、Crを除く)、B、C、Si、Yの中の1種類以上の元素であり、e、f、g、hはそれぞれ原子比で、0≦e≦0.64、0.32≦f≦0.81、0≦g≦0.40、0≦h≦0.20の範囲内であり、且つeとgは同時に0にはならず、e+f+g+h=1である〕から成る第2被膜が設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の硬質被膜。
  4. 前記第1被膜は前記第2被膜の上に直接設けられ、該第1被膜および該第2被膜のみにて構成されており、
    前記第1被膜の膜厚T1が総膜厚Ttotal の20%以上である
    ことを特徴とする請求項3に記載の硬質被膜。
  5. 前記第1被膜と前記第2被膜との間には、該第1被膜および該第2被膜と同じ被膜成分の被膜が交互に積層された交互層または該第1被膜および該第2被膜が混ざった被膜成分の混合層にて構成されている中間層が設けられている
    ことを特徴とする請求項3に記載の硬質被膜。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の硬質被膜で工具母材の表面が被覆されていることを特徴とする硬質被膜被覆工具。
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