JP6478331B2 - 硬質バナジウム系複合被覆治工具 - Google Patents

硬質バナジウム系複合被覆治工具 Download PDF

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Description

本発明は硬質バナジウム系複合被覆治工具に係り、特に、冷間加工で使用される金型、ウェット環境で使用される切削工具などに好適な治工具に関する。
成形金型や切削工具といった治工具類は高い耐摩耗性が要求され、その表面改質技術として、浸炭、窒化処理や、熱反応析出拡散法(TRD法:Thermal Reactive Deposition and Diffusion)、化学的気相蒸着法(CVD法:Chemical Vapour Deposion)、物理的気相蒸着法(PVD法:Physical Vapour Deposion)などが採用されている。これによって、母材表面の高硬度化によって、耐摩耗性が改善され、治工具類の寿命延長が可能になった。
冷間加工用金型は、冷間工具鋼、熱間工具鋼、高速度鋼、超硬合金などで製作されるが、熱間加工に比較して高い寸法精度が求められるため、TRD法、CVD法のような1000°C近い高温処理は好ましくない。そして、現在、冷間加工に対する寸法精度の要求はますます厳しくなりつつある。
一方、500°C程度の低温処理が可能なPVD法は寸法精度の点で有利であり、特に、その中のイオンプレーティング法は、密着性を確保しつつ硬質被膜を母材表面に生成し得るので、現在、主流となっている。
イオンプレーティング法で生成される硬質被膜としては、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)、または、これらをベースとして更に添加元素を加えた窒化物、炭窒化物系被膜が一般的であるが、TRD法で使われるバナジウム炭化物もPVD法によって成膜されるようになった。
特許文献1のバナジウム系被膜の成膜方法では、バナジウムを蒸発源として、窒素ガス、炭化水素ガスを注入するイオンプレーティング法によって、基材(母材)側から、被膜最外表層に向かって窒化バナジウム(VN)、炭窒化バナジウム(VCN)、炭化バナジウム(VC)を順に積層し、各層の膜種によって注入ガス量、ガス圧を調節している。
しかし、この成膜方法によって生成された積層構造は、被膜硬度を高めたときに、VC膜の特徴である低摩擦係数が維持されず、摩擦係数が高まり、成形金型や切削工具において被加工材の凝着やかじりが生じることがあった。
そして、発明者の検討の結果、VN膜、VCN膜、VC膜の積層複合被膜では、金型における充分な成形性能、切削工具における充分な切削性能を発現できないことがあきらかとなった。
すなわち、特許文献1のバナジウム系被膜の成膜方法では、耐久性を充分高めることができなかった。
特許3909658号
本発明はこのような従来の問題を解消すべく創案されたもので、イオンプレーティング法によって耐久性に優れたバナジウム系複合被膜を形成し、硬質バナジウム系複合被覆治工具の限界寿命を延長することを目的とする。
前記目的を達成するために、
本発明に係る硬質バナジウム系複合被覆治工具は、
母材表面上に、PVD法により形成された、窒化バナジウム膜の第1層と、
前記第1層上に、PVD法により形成された、炭窒化バナジウム膜の第2層であって、元素V、C、Nの原子組成比を
Figure 0006478331
とするとき、a、bの原子比が
Figure 0006478331
Figure 0006478331
である第2層と、
前記第2層上に、PVD法により形成された、炭化バナジウム膜の第3層であって、元素Cの原子組成比をYとするとき、
Figure 0006478331
であって、残部が元素Vである第3層と、
前記第3層上に、PVD法により形成された、炭化バナジウム膜の第4層であって、元素Cの原子組成比をXとするとき、
Figure 0006478331
であって、残部が元素Vである第4層と、
を備え、
前記第1層のナノインデンター硬さによるビッカース換算値が1500〜2000、前記第2層のナノインデンター硬さによるビッカース換算値が2500〜3000、前記第3層及び第4層のナノインデンター硬さによるビッカース換算値が1900〜2400であり、かつ第2層よりも低硬度であり、
前記第2層は、
Figure 0006478331
または
Figure 0006478331
の少なくとも一方に起因する六方晶に配向し、前記第3層は、
Figure 0006478331
に起因する六方晶に配向していることを特徴とする硬質バナジウム系複合被膜が被覆される。
本発明によれば、バナジウム系複合被膜を治工具類に施すことで治工具の限界寿命の延長を図ることが可能になる。
本発明に係る硬質バナジウム系複合被覆治工具の実施例における硬質バナジウム系複合被膜の構成を示す表1である。 表1の硬質バナジウム系複合被膜における第1層の形成条件を示す表2である。 表1の硬質バナジウム系複合被膜における第2層の形成条件を示す表3である。 表1の硬質バナジウム系複合被膜における第3層、第4層の形成条件を示す表4である。 表1の硬質バナジウム系複合被膜の構成を決定するための表5である。 表1の実施例と、比較例による冷間圧延鋼板の深絞り加工を行った試験結果を示すグラフである。 表1の実施例と、比較例によるSUS304の深絞り加工を行った試験結果を示すグラフである。 表1の実施例と、比較例によるドリル切削試験を行った結果を示す表6およびグラフである。 図6、図7の深絞り加工の試験のための装置を示す正面図である。 図9の装置に使用したダイスを示す平面図である。 図10のダイスを示す縦断面図である。 図11の部分拡大図である。
次に本発明に係る硬質バナジウム系複合被覆治工具の好適な実施例を、図面を参照しつつ説明する。
硬質バナジウム系複合被覆治工具は母材表面に硬質バナジウム系複合被膜をPVD法により形成したもので、バナジウム系複合被膜は、母材表面から最外表層に向かって、第1層のVN(窒化バナジウム)膜、第2層のVCN(炭窒化バナジウム)膜、第3層および第4層のVC(炭化バナジウム)膜からなり、各層の仕様は図1の表1のとおりである。
表1には、各層の原子組成比、結晶性、ナノインデータ硬さのビッカース換算値(以下、単に「硬度」という。)を示す。
硬質バナジウム系複合被膜の第1層(VN膜)は、ナノインデータ硬さのビッカース換算値が1500〜2000である。
第2層(VCN膜)は原子組成比が、V:0.5〜0.7、C:0.1〜0.3、N:残部、結晶性が六方晶であり、硬度2500〜3000である。
第3層(VC膜)は原子組成比が、C:0.2〜0.4、:残部、結晶性が六方晶であり、硬度1900〜2400である。
第4層(VC膜)は原子組成比が、C:0.4〜0.6、:残部、硬度1900〜2400である。
第1層〜第4層およびその比較例は、溶融蒸発型イオンプレーティング装置を用いてPVD法により超硬合金製テストピースに成膜した。そして、その硬度、密着性(硬度試験の際に生じるクラックを評価して判定する。)を、ロックウェル硬度計を用いた密着性と被膜のナノインデンター硬さによるビッカース換算値を評価した結果である。このナノインデンター硬さは、ナノインデンテーション法により測定される。具体的には、測定装置としてCSM Instrument社(スイス)製の製品名ナノハードネステスターを用い、測定条件を荷重5mNに調整して測定した。
硬質バナジウム系複合被膜の第1層を形成する条件を決定するための試験結果の代表的データを図2の表2に示す。表2には、試験されたVN膜VN−1〜VN−5について、PVD法のバイアス電圧、密着性、硬度を示す。
VN膜は、バイアス電圧の上昇に従って硬度が上昇し、VN−1〜VN−5に対してバイアス電圧を15V、30V、50V、70V、150Vと上昇させると、硬度は1233、1558、1759、1996、2522と増大し、VN−1〜VN−3はクラックが生じなかったが、VN−4で僅かなクラックが生じ、VN−5でクラックが発生した。以上のデータおよび、その他の試験結果を加味して評価した結果、表1の硬度範囲が設定された。
硬度増大にともなって、母材に対する密着性、靭性が低下し、硬度が2000を超えると密着性、靭性の低下により、クラックが生じることが判明した。また、直上に位置する第2層(VCN膜)との硬度ギャップが大きいと層間剥離を生じる可能性が高いため、硬度1233のVN−1も排除すべきである。
以上から、バイアス電圧は、30〜70Vが好ましく、特に50Vが望ましいと判断できる。
第1層は、複合被膜において密着性、耐久性を大きく左右する層であり、その密着性、耐久性は、その硬度に依存する。
図3における表3は、第1層と同様のイオンプレーティング装置によって、第1層上に積層せずに、第2層と同一組成のVCN膜単層膜を形成して試験した結果を示す。表3には、試験されたVCN膜VCN−1〜VCN−8について、PVD法のバイアス電圧、原子組成比、結晶性、密着性、硬度を示す。
なお、結晶性については、EPMA(電子線プローブマイクロアナライザー)による被膜組成評価、XRD(X線回折)による評価を行った。硬度については、ナノハードネステスターによる評価を実施し、密着性については、ロックウェル硬度計によって評価した。
第2層でクラックが生じなかったVCN−3〜VCN−5は、原子組成比がV:0.60〜0.64、C:0.12〜0.25であり、その他の試験結果を加味して評価した結果、V:0.5〜0.7、C:0.1〜0.3が許容範囲となる。このとき、バイアス電圧は80V〜120Vであり、対応する硬度は、2864、2649、2915であった。すなわち、バイアス電圧100のときに、硬度が最低となり、密着性、靭性が高くなる。そして、他の試験結果を加味して評価した結果、硬度の許容範囲は、2500〜3000となる。VCN−3〜VCN−5の結晶性をEPMA、XRDで評価したところ、
Figure 0006478331
および
Figure 0006478331
に起因した六方晶に配向していることが判明した。一方、VCN−1は
Figure 0006478331
に起因した立方晶、VCN−2は
Figure 0006478331
のみに起因した六方晶、
VCN−7、VCN−8はVNに起因した立方晶に配向している。VCN−7、VCN−8は、バイアス電圧100に対して、組成比をV>0.7、V<0.5に変化させたとき、硬度上昇によるクラックが生じた例である。
以上の結果から、VCN膜は、元素V、C、Nによる組成を、
Figure 0006478331
とするとき、a、bの原子比が
Figure 0006478331
Figure 0006478331
のとき、
Figure 0006478331
または
Figure 0006478331
の少なくとも一方に起因した六方晶に配向し、バイアス電圧100Vのときに、最低硬度の最適条件となる。
図4における表4のVC3−1〜VC3−7は、第1層、第2層と同様のイオンプレーティング装置によって、第2層上に積層せずに、第3層と同一組成のVC膜単層膜を形成して試験した結果を示す。第2層と同様、形成されたVC膜単層膜について、EPMAによる被膜組成評価、XRDによる結晶性評価、ナノハードネステスターによる硬度評価、ロックウェル硬度計による密着性評価を実施した。
第3層でクラックが生じなかったVC3−2〜VC3−4は、原子組成比がC:0.25〜0.40であり、その他の試験結果を加味して評価した結果、C:0.2〜0.4が許容範囲となる。このときバイアス電圧は80V〜120Vであり、対応する硬度は、1905、1995、2319であり、他の試験結果を加味して評価した結果、硬度1900〜2400が許容範囲となる。
VC3−2〜VC3−4の結晶性をEPMA、CRDで評価したところ、
Figure 0006478331
に起因した六方晶に配向していることが判明した。一方、VC3−1は、VCに起因した立方晶、VC3−5〜VC3−7は、VCに起因した立方晶に配向している。VC3−5は、バイアス電圧150Vで硬度が2664と高く、VC3−6、VC3−7は、バイアス電圧100Vでありながら組成をC:0.82、0.58と変化させ、硬度が2890、2371に増大したものである。VC3−5、VC3−6、VC3−7はVCに起因した立方晶に配向している。
このように、
Figure 0006478331
または
Figure 0006478331
に起因した六方晶に配向した炭窒化バナジウムの第2層の上に、
Figure 0006478331
に起因した六方晶に配向している第3層の炭化バナジウム膜を介在させることによって、外部からの負荷を緩衝することができ、硬質バナジウム系複合被膜の耐久性を向上させる。
図4における表4のVC4−1〜VC4−7は、第1層、第2層と同様のイオンプレーティング装置によって、第3層上に積層せずに、第4層と同一組成のVC膜単層膜を形成して試験した結果を示す。第2層と同様、形成されたVC膜単層膜について、EPMAによる被膜組成評価、XRDによる結晶性評価、ナノハードネステスターによる硬度評価、ロックウェル硬度計による密着性評価を実施した。
第4層でクラックが生じなかったVC4−2〜VC4−4は、原子組成比がC:0.43〜0.59であり、その他の試験結果を加味して評価した結果、C:0.4〜0.6が許容範囲となる。このときバイアス電圧は30V〜70Vであり、対応する硬度は、2133、2319、2391であり、他の試験結果を加味して評価した結果、硬度1900〜2400が許容範囲となる。
VC4−2からVC4−4の結晶性をEPMA、CRDで評価したところ、VCに起因した立方晶に配向していることが判明した。
一方、VC4−1は低バイアス電圧15V時、C:0.62、硬度1890、VC4−5は、高バイアス電圧150V時、C:0.39、硬度2751となり、クラックを生じた。適正バイアス電圧の中央値50Vにおいて、組成を変化させたVC4−6,VC4−7は、VC4−6で、C:0.29、硬度3161、VC4−7でC:0.62、硬度2413となり、大きなクラックを生じた。
各層の被膜組成比及び成膜条件であるバイアス電圧は、第1層のVN膜については30〜70V、第2層のVCN膜については80〜120V、第3層のVC膜については80〜120V、第4層のVC膜については30〜70Vとしたときに、最適な成膜が行われた。
また、第3層のVC膜は、
Figure 0006478331
Figure 0006478331
第4層のVC膜は、
Figure 0006478331
Figure 0006478331
以上の適正な成膜条件で形成された第1層〜第4層よりなる硬質バナジウム系複合被覆は、耐久性に優れるばかりでなく、摩擦係数も低く抑えられる。
特に、硬質バナジウム系複合被膜を、溶融蒸発型イオンプレーティング装置で形成したときは、ドロップレットが生成されず、極めて滑らかに仕上がるため、第4層VC膜の低摩擦係数を効果的に機能させて潤滑性を付与することが可能となる。
同じPVD法であっても、アークイオンプレーティング装置を使用すると、未蒸発、未反応の金属ドロップレットが生成され表面が粗くなりやすい。
溶融蒸発型イオンプレーティング装置を用いて先述の成膜方法で超硬合金製テストピース、冷間工具鋼SKD11製絞りダイス、高速度鋼(SKH51)製の直径6mmストレートドリルに硬質バナジウム系複合被膜を成膜し、それぞれボールオンディスク試験による摩擦係数を、深絞り性能、切削性能を評価した結果を図5の表5、図6、図7に示す。
ボールオンディスク試験は、具体的には、測定装置として、CSM Instrument社(スイス)製の「トライボメーター」を用い、SUJ2製ボールを用いて荷重5N、回転速度10cm/sec、回転半径3mm、走行距離1000m、ドライ環境で評価した。
図5における表5は、硬質バナジウム系複合被覆の各層を(VN−3、VCN−4、VC3−3、VC4−3)、(VN−2、VCN−3、VC3−3、VC4−3)、(VN−3、VCN−5、VC3−2、VC4−4)、(VN−2、VCN−4、VC3−4、VC4−2)の各組み合わせとした実施例(以上を発明例1、2、3、4と呼ぶ。)と、4層各層を(VN−1、VCN−4、VC3−3、VC4−3)、(VN−3、VCN−2、VC3−3、VC4−3)、(VN−3、VCN−4、VC3−6、VC4−3)、(VN−3、VCN−4、VC3−3、VC4−6)とした比較例1〜4、3層各層を(VN−3、VC3−3、VC4−3)、(VN−3、VCN−4、VC4−3)とした比較例5、6、2層各層を(VC3−3、VC4−3)とした比較例7とを、摩擦係数、耐久性(限界寿命)について比較している。
摩擦係数は、発明例1〜4では0.28〜0.34であり、比較例1〜7では0.44〜0.68であった。すなわち、発明例1〜4は比較例1〜7に比較して摩擦が軽減され、安定している。比較例1、3、4は走行初期に層間で被膜が剥がれ落ち、摩擦係数が高くなった。このため、比較例1、3、4は著しく耐久性に欠けると判断し、深絞り性能、切削性能の評価を中止した。比較例2は層間の被膜剥がれは生じなかったが、摩擦係数は0.5を超えた。比較例5、7は摩擦係数は比較的低かった。比較例6は初期からかじるような摩擦挙動を示したが、剥がれることなく1000m走行した。
比較例1はVN−1が非常に硬いため、負荷を緩衝することができず、剥がれを誘発した。比較例3はVC3−6がその直下の層の結晶性に倣わないため、VC3−6を起点に層間で剥がれが生じた。比較例4は、VC4−6が3000を越える高硬度のため、せん断応力が大きくなり、摩擦係数が高まり、剥がれが生じた。
比較例5、7の摩擦係数が低いのは、VC3−3、VC4−3が効果的に機能した結果であり、比較例6は第3層(VC膜)が介在しない構成のため、第4層のVC4−3が磨滅したときに、第2層(VCN膜)が露出して、結果的に摩擦係数が増大した。
また、比較例2は、第2層が硬度の許容範囲2500〜3000を超えるVCN−2であるために、本発明の条件を満足しない。
以上の結果から、本実施例の積層複合被膜は、最外表層のVC4−2、VC4−3、VC4−4が低摩擦性能を発揮するためには、第1層のVN−2、VN−3、第2層のVCN−3、VCN−4、VCNー5、第3層のVC3−2、VC3−3、VC3−4が介在することが必須であることが確認された。
以下に図9〜図12の深絞りプレス試験の評価事例を挙げる。
溶融蒸発型イオンプレーティング装置を用いた成膜方法で冷間工具鋼SKD11製絞りダイスに硬質バナジウム系複合被膜を成膜した冷間圧延鋼板(SPCC)及びステンレス鋼(SUS304)のブランク材140を、完全脱脂状態での深絞り試験を行った。なお、図中、100はパンチ、120はブランクホルダ、160はダイスホルダ、162はダイス、C4はダイスのR部であり、dはダイス内径の勾配である。
それぞれの材料に対して100ショット定数加工したときのパンチ100に掛かる加工力の挙動から絞り性を評価した。評価したのは表5における発明例1〜4のほか、比較例2、5、6、7の5種類で、加工力の平均値は表5に、加工力の挙動は図6、7に示す。
図6、7から、発明例1は加工力が低く安定している。早期にダイス162のR部C4に冷間圧延鋼板が摩擦凝着したために比較例6は3ショット、比較例2は21ショットで試験を中断せざるを得なかった。比較例7に関しては定数加工100ショットまで加工できたものの、加工力が上下に大きく変動しており、凝着と凝着物の外れが繰り返し生じていることがわかる。比較例1は比較的低い加工力を示しているが、ところどころで凝着物の影響が挙動に現れている。
図6、7から本発明は加工力が極めて低いことがわかる。一方、ダイスのR部C4にステンレス鋼が早期に摩擦凝着したために比較例2、比較例6はそれぞれ6ショットで試験を中断せざるを得なかった。比較例5、比較例7は100ショットまで加工できたものの、全体的に加工力が高く、加工力が上下に暴れていることが確認された。
以上の結果から、本発明であるバナジウム系複合被膜はSPCC、SUS304、いずれの材料に対しても、低い加工力で絞ることが可能であり、結果的に被加工材が凝着しにくいことが推測できる。
溶融蒸発型イオンプレーティング装置を用いて先述の成膜方法で高速度鋼(SKH51)製直径6mmストレートドリルにバナジウム系複合被膜を成膜し、穴明け加工ができなくなったときの限界寿命で切削性能を評価した結果を、図8のグラフおよび同図の表6に示す。
ドリル切削条件は被削材SCM440C(硬さ28HRC)、周速40.7m/min、送り速度:200m/min、送り0.09mm/rev、止まり穴15mmを水溶性切削液を用いた環境で穴明け加工した。
図8から本発明は加工初期の異音がなく、最も穴明け加工数を伸ばすことができた。比較例2は早期に焼き付き15穴で加工が終了となった。比較例5、比較例6、比較例7は加工初期化から削るときの音が大きく、早期に加工不能となった。
比較例2は極めて高硬度なVCN―1が介在することでVN−3との硬さギャップが大きく、結果的に切削加工時の負荷を緩衝できず、層間剥離を発生して早期に寿命を迎えた。比較例2はVC3−3が介在しないため、VCN−3とVC3−3との界面層間剥がれが発生した。比較例3はVN−3、VCN−3といった強固な下地層が設けられていないため、VC3−3、VC4−3の低摩擦係数を示す被膜の特徴を充分に発揮することができなかった。
以上の結果から、本発明の硬質バナジウム系複合被膜は最適化が図られたVN−3やVCN−3といった被膜の介在が切削性能に好影響を与えることが確認された。
以上の実施例では、治工具について硬質バナジウム系複合被膜を形成したが、本発明に係る硬質バナジウム系複合被膜を、耐摩耗性が要求される機械部品、例えば、軸受その他の摺動機械部品に適用し得ることはいうまでもない。
100 パンチ
120 ブランクホルダ
140 ブランク材
160 ダイスホルダ
162 ダイス
C4 ダイスのR部
d ダイス内径の勾配

Claims (1)

  1. 母材表面上に、PVD法により形成された、窒化バナジウム膜の第1層と、
    前記第1層上に、PVD法により形成された、炭窒化バナジウム膜の第2層であって、元素V、C、Nの原子組成比を
    Figure 0006478331
    とするとき、a、bの原子比が
    Figure 0006478331
    Figure 0006478331
    である第2層と、
    前記第2層上に、PVD法により形成された、炭化バナジウム膜の第3層であって、元素Cの原子組成比をYとするとき、
    Figure 0006478331
    であって、残部が元素Vである第3層と、
    前記第3層上に、PVD法により形成された、炭化バナジウム膜の第4層であって、元素Cの原子組成比をXとするとき、
    Figure 0006478331
    であって、残部が元素Vである第4層と、
    を備え、
    前記第1層のナノインデンター硬さによるビッカース換算値が1500〜2000、前記第2層のナノインデンター硬さによるビッカース換算値が2500〜3000、前記第3層及び第4層のナノインデンター硬さによるビッカース換算値が1900〜2400で、かつ第2層よりも低硬度であり、
    前記第2層は、
    Figure 0006478331
    または
    Figure 0006478331
    の少なくとも一方に起因する六方晶に配向し、前記第3層は、
    Figure 0006478331
    に起因する六方晶に配向していることを特徴とする硬質バナジウム系複合被膜が被覆されたことを特徴とする硬質バナジウム系複合被覆治工具。
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