JP4771223B2 - 耐久性に優れた硬質材料被覆塑性加工用金型 - Google Patents

耐久性に優れた硬質材料被覆塑性加工用金型 Download PDF

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Description

本発明は、鍛造、プレス加工等に使用され耐摩耗性が必要とされる塑性加工用金型に関するものである。
従来、鍛造、プレス加工といった塑性加工には、冷間ダイス鋼、熱間ダイス鋼、高速度鋼、および超硬合金等の金属・鋼を母材とする金型が用いられてきた。上記加工方法は、室温付近で加工を行う冷間加工と、被加工材が400℃以上に加熱される温間加工や熱間加工(以下温熱間加工とも記す)に分類され、いずれの金型も作業面には耐摩耗性が要求される。
近年では、被加工材の高強度化、製品の高精度化、ならびに成形サイクルの高速化により、金型表面への負荷が増大しており、TiCやTiNと言った硬質材料を化学蒸着法(以下CVD法とも記す)によって作業面に被覆した金型が急速に増加してきた。しかしながら、金型への要求特性は耐摩耗性のみに留まらず、金型自体の高精度化が要求されるようになったため、被覆温度が1000℃以上のCVD法では、被覆時に金型の変形が大きくなることや、鋼系型材の場合では、被覆後に行う焼入れ焼戻しと言った熱処理で発生する熱処理歪みが問題となり、十分に要求を満たすことができなくなった。
このような背景から、型材の焼戻し温度以下で被覆できる物理蒸着法(以下PVD法とも記す)の適用が増加している。例えば、冷間加工においては、特定成分範囲の金型母材に窒化処理を施した後、PVD法にてTiNの被覆層を適用する手法(特許文献1)、PVD法にて金型表面にV系の窒化物、炭化物、炭窒化物を被覆する手法(特許文献2)が提案されている。また、熱間加工においては、PVD法の前処理を規定し、窒化処理後にCrNもしくはTiAlNを被覆する手法(特許文献3,4)、AlおよびWを含有したCrAlWN皮膜を被覆する手法(特許文献5)が提案されている。
特開昭58−31066号公報 特開2002−371352号公報 特開平11−92909号公報 特開2003−245738号公報 特開2005−8920号公報
CVD法で被覆されるTiCやTiNは、高硬度かつ被覆層としては比較的厚い約10μmの層厚であることから、被覆層の特性としては十分であるものの、被覆温度が高いことによる金型の変形等で、金型の精度が満足できない。一方、特許文献1〜5に提案されているPVD法による被覆層では、金型の精度は満足できるものの、CVD法に比べ、被覆層の密着性が劣ることから、層厚を厚くし十分な耐久性を付与しようとすると、被覆層の剥離が発生しやすくなるため、年々過酷化する鍛造およびプレス金型の使用環境に対しては、被覆層としての機能は十分に要求を満たすことができなくなった。
本発明は、冷間ならびに温熱間における鍛造およびプレス加工といった金属の塑性加工に使用され、耐摩耗性が必要とされる金型において、上記の問題を解消した硬質材料被覆塑性加工用金型を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の用途であるようなPVD法による硬質材料被覆塑性加工用金型における摩耗進行の機構に着目し、上記金型の作業面に適用する被覆層の、密着性と耐摩耗性に及ぼす被覆層の組成、層構造ならびに成膜条件の影響について詳細な検討を行った。
その結果、母材表面から被加工材に接する作業面にかけて役割を担う被覆層を、その硬さ分布によって分類のされる複合層とし、更にはそれら層間の厚さ関係をも調整することで、鍛造およびプレス加工用硬質材料被覆塑性加工用金型として極めて良好な耐摩耗性が得られることを見いだした。この結果により、例えば冷間および温熱間を問わず、塑性加工用金型において、十分な耐久性を付与しようと被覆層の層厚を厚くしても、被覆層が剥離することなく機能するため、硬質材料被覆塑性加工用金型として著しく寿命が向上するということを確認した。
すなわち、本発明の第1発明は、金属を母材とする金型の、その少なくとも作業面に物理蒸着法による被覆層を有した金型であって、該被覆層は、最表層にa層、母材直上にc層、a層とc層の間にb層の少なくとも3層が被覆されており、硬さ記号HV0.025による各層の硬さが、
2500>(a層の硬さ)>1000、
3500>(b層の硬さ)>2300、
2500>(c層の硬さ)>1000かつ、
(500+a層の硬さ)<(b層の硬さ)、
(500+c層の硬さ)<(b層の硬さ)であり、
層厚にてb層<c層であり、被覆層の層厚の合計が5〜15μmであることを特徴とする耐久性に優れた硬質材料被覆塑性加工用金型である。
なお、本発明の上記最表層であるa層ならびに母材直上のc層は、金属元素部分がTiもしくはCrを主体とする窒化物、炭化物、炭窒化物のいずれかからなり、最表層a層と母材直上のc層の間に被覆するb層は、金属元素部分がTi、Cr、Alから選んだ1種もしくは2種以上を主体とする窒化物、炭化物、炭窒化物のいずれかであることが望ましい。
そして、最表層であるa層の層厚が1〜5μm、b層の層厚は1〜5μm、母材直上であるc層の層厚が2〜7μmであることが望ましい。
更に、被覆層が形成された母材は、その母材最表面から25μmの深さにおける硬さが、母材最表面から500μmの深さにおける硬さに比べ、硬さ記号HV0.2にて100以上高いことが望ましい。
従来の物理蒸着法によってTiN、VCN、CrN、TiAlN、CrAlWNが被覆された金型は、近年における使用環境の過酷化に対し、十分な寿命が得られなくなってきた。本発明の表面被覆層構造を適用した金型を使用することにより、金型作業面の耐摩耗性を改善できるため、塑性加工用金型の寿命を飛躍的に向上させることが可能である。
金型の作業面に被覆される硬質材料は、最表層の硬さや耐酸化性の特性だけに注視して検討すればよいものではなく、母材との密着性も当然に考慮したトータル的な特性の検討が必要である。そこで本発明においては、要求特性を、最大限に付与できるための複合被覆層としている。そして、本発明の被覆層は、鍛造およびプレス加工用金型に十分な耐摩耗性を付与するため、各層の硬さの関係が極めて重要である。
本発明者らの検討結果によると、最表層のa層、母材直上のc層、a層とc層の間に存在するb層といったように、金型作業面には少なくとも3層が、物理蒸着法で被覆されるものである。そして、その3層の境界は、各々が有する硬さ特性によって分類がされるものであって、各層の硬さは硬さ記号HV0.025で、
2500>(a層の硬さ)>1000、
3500>(b層の硬さ)>2300、
2500>(c層の硬さ)>1000かつ、
(500+a層の硬さ)<(b層の硬さ)、
(500+c層の硬さ)<(b層の硬さ)
となる構造にすることが極めて重要であると確認された。なお、硬さ記号HV0.025とは、JIS−Z−2244で指定のされるビッカース硬さ試験方法においての、試験荷重0.2452Nによる硬さ値である。
硬質材料は、比較的軟質な物質ほど、被加工材への攻撃性が低く、使用時の衝撃による被覆層中のクラックも発生し難い。そして、更に物理蒸着法の場合は、被覆物質の密着性も良好となる。そのため、最表層には、ある程度の硬さは必要でありながらも、比較的軟質な物質のa層を適用することは、被加工材への攻撃性が低下、つまり被覆層が被加工材を引掻くことで発生する初期の突発的なカジリが抑制できる。また、クラックの発生しづらい軟質の物質で被覆層を覆ってしまう構造となるため、クラックを起点としたカジリや剥離が抑えられ、結果として被覆層全体の密着性が向上することとなる。このとき、同様にある程度の硬さは必要でありながらも、母材直上のc層へも軟質な物質を適用する理由は、母材である金型材と被覆層の本質的な密着性を向上させるためである。
一方、b層は、硬さ2300HV0.025を越える比較的硬質な物質であり、耐摩耗性を向上させることを目的とし被覆されるが、上述の軟質物質とは逆に、高硬度な物質ほど密着性に劣る。このとき、b層を、軟質なa層とc層で挟み込むことで、b層は容易に剥離しなくなることが認められ、更に塑性加工用金型の摩耗が激しい部位においては、最表層のa層が優先的に摩耗するが、その下から硬質のb層が出現するため、必要な部位において被覆層が耐摩耗性を向上させる機能を発揮すると確認された。
各層の厚みに関しては、硬質なb層をc層より厚くすると、上記のような硬さの関係であっても、各層が持つ特性のバランスが崩れ、b層の密着性が低下する。そのため、b層とc層の層厚は、b層<c層の関係である。また、被覆層全体の膜厚は、5μm未満であると、塑性加工用金型として十分な耐摩耗性が得られなくなり、また15μmを越えて被覆すると密着性が極端に低下するため、被覆層の層厚は合計が5〜15μmとする。更には7〜12μmとすることが良い。
本発明の塑性加工用金型の被覆方法については、物理蒸着法を規定している。これは、硬質材料を被覆する母材への熱影響、金型に発生する熱歪みや変形等を抑制する目的であり、例えば母材である冷間ダイス鋼、熱間ダイス鋼もしくは高速度鋼等の焼戻し温度以下で成膜でき、皮膜に圧縮応力を残留させることができるためである。物理蒸着法の種類については特に限定を設けないが、アークイオンプレーティング法もしくはスパッタリング法といった、被覆母材側にBias電圧を印可する物理蒸着法であることが望ましい。
母材の金属材質については、特段に定めるものではなく、例えば上記の通りの、冷間ダイス鋼、熱間ダイス鋼、高速度鋼および超硬合金が使用できる。これについては、JIS等による規格金属種(鋼種)を含め、従来金型への使用が可能な鋼種として提案のされてきた改良金属種も適用できる。
本発明の塑性加工用金型の作業面においては、その形成した被覆層の最表層であるa層ならびに母材直上のc層は、b層との硬さならびに層厚の関係を満足していれば良い。しかしながら、a層ならびにc層は、塑性加工用金型の用途に応じて、その金属元素部分がTiもしくはCrを主体とする窒化物、炭化物、炭窒化物のいずれかであることが望ましい。なお、その主体とすることについては、窒素・炭素を除いた、金属(半金属を含む)組成部のみの割合で、TiもしくはCrが70(原子%)以上、更には90(原子%)以上とすることが良い(実質100(原子%)を含む)。
また、本発明の塑性加工用金型の作業面において、a層とc層の間に被覆される、b層は、その金属元素部分がTi、Cr、Alから選んだ1種もしくは2種以上を主体とする窒化物、炭化物、炭窒化物のいずれかであることが望ましい。なお、その主体とすることについては、上記のa,c層に同様であり、70(原子%)以上、更には90(原子%)以上とすることが良い(実質100(原子%)を含む)。そして、このとき、a層ならびにc層との硬さの関係を満足するために、例えばa層およびc層がTiNである場合は、TiNに比べ硬質であるTiAlN系の硬質材料をb層に選択し、各層の硬さの関係を満足するTiとAlの成分比もしくは成膜条件を用いて被覆するか、TiCやTiCNといったTiNに比べ硬質の炭化物もしくは炭窒化物を同じく各層の硬さの関係を満足する成膜条件で被覆する必要がある。
なお、本発明のa層、b層、c層は、それぞれの層が同金属系化合物であることが、各層間の密着性の面で、更に望ましい。例えばCr系窒化物の場合は、a層がCrN、b層がCrAlN、c層がCrNのような構成が望ましい。
上記は一例として挙げたが、a層およびc層のそれぞれは、その金属元素部分がTiもしくはCrを主体とするも、必要に応じてIVa、Va、VIa属ならびにAl,Si、B等の、他の金属(半金属)元素を、b層においても、その金属元素部分がTi、Cr、Alから選んだ1種もしくは2種以上を主体とするも、必要に応じてIVa、Va、VIa属ならびにSi、B等の、他の金属(半金属)元素を、各層において10原子%以下微量添加してもよい。
次に、本発明の被覆層を構成する、それぞれの層の厚さについて述べる。本発明の最表層であるa層は、その層厚が1〜5μmであることが望ましい。層厚が1μm未満であると、耐摩耗性が十分でなく早期に滅失してしまい、a層の役割の1つである初期の突発的なカジリを抑制する効果が得られない場合がある。逆に5μmを越えて被覆すると、使用条件によっては、早期に剥離してしまう場合がある。よって、本発明の作業面にある被覆層のうちの、最表層であるa層の層厚は、1〜5μmであることが望ましい。
また、最表層であるa層と母材直上層c層の間に被覆されるb層は、層厚が1〜5μmであることが望ましい。層厚が1μm未満であると、b層の被覆の目的である耐摩耗性が十分でないことがあり、逆に5μmを越えて被覆すると密着性が乏しくなり、早期に剥離する場合がある。よって、本発明のb層は、層厚が1〜5μmであることが望ましい。
そして、本発明の母材直上層であるc層は、その層厚が2〜7μmであることが望ましい。使用条件によっては、層厚が2μm未満であると、薄すぎるため母材との密着性が十分に得られ難い。逆に、7μmを越えて被覆すると、その密着性を向上させる効果は変わらないばかりか、使用条件によっては、早期に剥離してしまう場合がある。よって、本発明の母材直上層であるc層の層厚は、2〜7μmであることが望ましい。
更に本発明の金型は、より耐摩耗性の向上を目的にして、被覆層が形成された母材は、その最表面から25μmの深さにおける硬さが、該最表面から500μmの深さにおける硬さに比べ、JIS−Z−2244に定義されるビッカース硬さで100HV0.2以上高いことが望ましい。硬さ記号HV0.2とは、ビッカース硬さ試験方法においての、試験荷重1.961Nによる硬さ値である。具体例としては、窒化処理、浸炭処理等と言った拡散を利用した表面硬化処理を予め適用することが望ましい。この時、窒化処理で形成される白層と呼ばれる窒化物層や、浸炭で認められる炭化物層と言った化合物層は、母材直上のc層の密着性を低下させる原因となるため、処理条件の制御により形成させないようにするか、あるいは研磨等により除去することが望ましい。
次に実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定を受けるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更が可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
(実施例1)
JISに規定される高速度鋼SKH51を用意し、真空中1180℃の加熱保持より窒素ガス冷却により焼入れ後、540〜580℃での焼戻しにより64HRCに調質した。その後、厚み5mm、一辺が30mmの板状テストピースの加工を行った。そして、これらのテストピースを母材とし、PVD法による被覆を行った。
被覆方法は、アークイオンプレーティング装置を用い、まずは圧力0.5PaのAr雰囲気中で、母材に−400VのBias電圧を印可し、60分の熱フィラメントによるプラズマクリーニングを行った。そして、この後、金属成分の蒸発源である各種金属製ターゲットならびに反応ガスとしてNガスをベースに、必要に応じCHガスを用い、母材温度500℃、反応ガス圧力3.0Pa、−50VのBias電圧にて成膜を行った。
なお、上記のPVD被覆処理の前には、母材への窒化層形成を適用したサンプルについては、該PVD処理前の母材に、次に示す条件にてイオン窒化処理を施した。つまり、PVD被覆前に、流量比5%N(残H)雰囲気中で、500℃、5時間保持の条件でイオン窒化処理を施した後、それぞれの試験面を研磨によって仕上げた。そして、仕上げ後の母材表面に対し、上述の条件にてPVD法による被覆を行った。
得られたテストピースについて、その被覆面の各層に関する層厚の測定ならびに硬さ試験、ロックウェル硬さ試験を応用した密着性評価試験を実施した。各評価試験方法を以下に示す。
(1)層厚の測定
被覆層の断面が出る様、厚み方向にテストピースを切断後、樹脂に埋め込み組織観察用に研磨を実施し、光学顕微鏡(倍率1000倍)にて各層の層厚を測定した。
(2)硬さ試験
層厚を測定したテストピースと同じものを使用し、マイクロビッカース試験機(ミツトヨ製HM−115)にて各層断面の硬さを測定した。なお、PVD被覆前の母材に窒化処理を施したテストピースについては、その窒化処理−研磨仕上げ後の表面より25μmの深さにおける硬さが、全テストピースにて、その500μmの深さにおける硬さより100HV0.2以上に硬化されていることを確認済みである。
(3)密着性評価試験
ロックウェル硬さ試験機(ミツトヨ製AR−10)にて被覆面(30mm×30mm)にCスケールで圧痕をつけ、その部分を光学顕微鏡にて観察し、図1に示す基準で圧痕の周囲に発生する剥離を評価した。
表1に本発明例および比較例に関する被覆層の詳細(金属(半金属)組成部に付されている下付き係数は原子比)と、各種評価の結果を示す。なお、従来例においては、本発明の被覆層の構成を満たさないことから、その成膜された最表層、母材直上層、中間層の定義がし難いため表2に示す。

表1に示す通り、本発明例は被覆層の構成が本発明の規定範囲を満足しているため、層厚が厚いにも係わらず、いずれも密着性が著しく優れていることがわかる。図2,3はそれぞれ、本発明例No.3およびNo.4の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。他の本発明例に比べて、その有する被覆層が厚い本発明例No.4であっても、十分に優れた密着性を達成している。
一方、比較例ならびに従来例の評価結果については、比較例No.11は、各層の硬さに関しては本発明を満足するが、b層ならびにc層が厚すぎるため、密着性が著しく劣る。比較例No.12、15については、各層の硬さの関係が本発明を満足しておらず、母材直上および最表層に比較的硬質な層を被覆したことで、硬さのバランスが崩れてしまい密着性に劣る結果となった。比較例No.13、14は、他の比較例に比べると密着性は良好であるが、c層の層厚がb層よりも薄いため、密着性は本発明例より劣る結果となった。図4に、比較例No.13の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)の顕微鏡写真を示しておく。
また、基本的な被覆構造からして異なる従来例No.21、23は、本発明のような層厚が比較的厚い領域では密着性が著しく劣る。図5は、従来例No.23の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。比較的軟質なCrNを被覆した従来例No.22は層厚が厚くとも密着性に優れるが、硬さが著しく低いため、金型へ適用した場合は、早期の摩耗が予想される。
(実施例2)
次に、表1中の本発明例No.3、No.8、表2中の従来例No.23と同等の表面被覆層構成である、SKH51(硬さ64HRC)製カップ成形用冷間鍛造金型を作製して、実金型における寿命で評価を行った。
まず、焼鈍状態にて鍛造金型近似形状に粗加工し、真空中1180℃の加熱保持より窒素ガス冷却により焼入れ後、540〜580℃での焼戻しにより64HRCに調質した。その後、仕上げ加工を行い、それぞれ、被覆処理前のイオン窒化処理を実施するものについてはそれを行ってから、(実施例1)と同様の条件でPVD法による成膜を施した。
上記にて作製された金型は、直径30mm、高さ250mmの寸法で、その先端部にカップ成型用金型の加工が施されている。そして、被加工材にS50Cを用い、冷間鍛造を行った。表3に各金型の寿命を示す。
本発明を適用した冷間鍛造金型は、従来例適用の金型に比べて、その寿命は3倍以上に向上した。最終的に本発明適用の金型は、摩耗により寿命となったが、従来例適用の金型は、先端部で早期に被覆層が剥離し焼付きが発生した後、折損によって寿命となった。以上のように、本発明を冷間鍛造金型に適用することで、金型の寿命は飛躍的に向上することが確認された。
(実施例3)
次に、表1中の本発明例No.4、No.5、表2中の従来例No.22と同等の表面被覆層構成である、カップ成型用温間鍛造パンチを作製し、実金型における寿命で評価を行った。
まず、表4に示す化学成分の高速度鋼ベースの靭性改良材を母材として、金型近似形状に粗加工し、1080℃の油焼入れを行い、600℃の焼戻しにより56HRCに調質した。その後、仕上げ加工を行い、それぞれ実施例1と同様の条件で窒化処理ならびにPVD法による成膜を施した。
上記にて作製された金型は、直径110mm、高さ300mmの寸法で、その先端部にカップ成型用パンチの加工が施されている。そして、鍛造プレスを用い、850℃に加熱したS45Cワークを温間鍛造成形した。表5に各パンチの寿命を示す。
本発明を適用したパンチは、従来例適用のパンチに比べて、工具寿命は2倍以上に向上した。また、本発明適用のパンチは、いずれも摩耗による損傷で寿命となったが、従来例適用のパンチは、早期にパンチ先端曲面部にかじりを発生した後、局部的にえぐれたように損傷が進行し寿命となった。以上のように、本発明を温間鍛造用パンチに適用することで、パンチの寿命は飛躍的に向上することが確認された。
本発明は冷間ならびに温熱間における鍛造およびプレス加工といった金属の塑性加工に使用され、耐摩耗性が必要とされる硬質材料被覆塑性加工用金型について述べたものであるが、その密着性および耐摩耗性を考慮すると、使用条件によっては、鉄系に限らず、チタニウム、アルミニウム、ならびにそれらの合金の塑性加工にも適用が可能である。また本発明の硬質材料被覆塑性加工用金型は、ダイカストおよび鋳造に使用される金型、もしくは鋳抜きピンや、ダイカストの射出機に使用されるピストンリング等の、溶融金属に接して使用される鋳造用部材としても、転用が可能である。
実施例で用いた、ロックウェル硬さ試験機を応用した密着性評価試験の、剥離発生状況の評価基準を示す図である。 本発明例No.3の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。 本発明例No.4の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。 比較例No.13の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。 従来例No.23の密着性評価試験結果(ロックウェル圧痕周辺の状態)を示した顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. 金属を母材とする金型の、その少なくとも作業面に物理蒸着法による被覆層を有した金型であって、該被覆層は、最表層にa層、母材直上にc層、a層とc層の間にb層の少なくとも3層が被覆されており、硬さ記号HV0.025による各層の硬さが、
    2500>(a層の硬さ)>1000、
    3500>(b層の硬さ)>2300、
    2500>(c層の硬さ)>1000かつ、
    (500+a層の硬さ)<(b層の硬さ)、
    (500+c層の硬さ)<(b層の硬さ)であり、
    層厚にてb層<c層であり、被覆層の層厚の合計が5〜15μmであることを特徴とする耐久性に優れた硬質材料被覆塑性加工用金型。
  2. 該a層ならびに該c層は、金属元素部分がTiもしくはCrを主体とする窒化物、炭化物、炭窒化物のいずれかとし、該b層は、金属元素部分がTi、Cr、Alから選んだ1種もしくは2種以上を主体とする窒化物、炭化物、炭窒化物のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の耐久性に優れた硬質材料被覆塑性加工用金型。
  3. 該a層の層厚が1〜5μm、該b層の層厚が1〜5μm、該c層の層厚が2〜7μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の耐久性に優れた硬質材料被覆塑性加工用金型。
  4. 被覆層が形成された母材は、その最表面から25μmの深さにおける硬さが、該最表面から500μmの深さにおける硬さに比べ、硬さ記号HV0.2にて100以上高いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の耐久性に優れた硬質材料被覆塑性加工用金型。
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