以下、図面を参照して、本発明に係るクリップ補強金具について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、実施形態に係るクリップ補強部材を施工した天井下地部材を示した図であり、図2は、実施形態に係るクリップ補強部材を施工する前の天井下地部材を示した図である。
図1及び図2に示すように、天井下地部材1は、天井材(不図示)を上方から支持するものであり、建物の躯体に吊り下げられた吊ボルト2と、吊ボルト2に固定されたハンガ3と、ハンガ3に保持された野縁受け4と、野縁受け4の下方に配置されて天井材が取り付けられる野縁5(5a,5b)と、野縁受け4と野縁5とを直交方向に交差させて連結するクリップ6(6a,6b)と、クリップ6による野縁受け4と野縁5との連結を補強するクリップ補強金具7(7a,7b)と、を主構成要素としている。
野縁受け4は、ステンレスやアルミなどの金属材で長尺に形成されて、水平方向に延在している。野縁受け4は、側方に開放された断面コ字状に形成されており、鉛直面と平行に配置された平板状の側板部41と、側板部41の上端縁及び下端縁から水平方向に略直角に屈曲されて水平面と平行に配置された平板状の上板部42及び下板部43と、を備えている。なお、野縁受け4は、側方に開放されている側が腹側となり、この腹側の反対側であって側板部41が配置される側が背側となる。
野縁5は、ステンレスやアルミなどの金属材で長尺に形成されて、野縁受け4と直交する方向に延在している。野縁5は、上方に開放された断面略C字状に形成されており、水平面と平行に配置された平板状の底板部51と、底板部51の両端縁から鉛直方向上方に略直角に屈曲されて鉛直面と平行に配置された平板状の一対の側板部52と、この対向する一対の側板部52から水平方向内側に略直角に屈曲された一対のリップ部53と、を備えている。
リップ部53は、クリップ6やクリップ補強金具7を係止する係止部として機能するものである。リップ部53は、湾曲面状に形成されており、側板部52から水平方向内側に突出した先端が鉛直方向下方に折り返されている。なお、リップ部53は、必ずしも湾曲する必要は無く、係止部として機能すれば如何なる形状であっても良い。そして、一対のリップ部53は互いに離間しており、リップ部53との間に開口54が形成されている。
このように構成される野縁5は、天井材の間仕切り箇所に配置されるダブル野縁5aと、このダブル野縁5aの間に1又は複数本配置されるシングル野縁5bとの2種類で構成されている。例えば、ダブル野縁5aは、1820mm間隔で配置され、シングル野縁5bは、ダブル野縁5aの間に364mm間隔で4本配置される。このため、ダブル野縁5aの底板部51は、シングル野縁5bの底板部51の約2倍の幅に形成されて剛性が高められている。なお、ダブル野縁5aとシングル野縁5bとは底板部51の幅が異なる他は基本的に同一形状であるため、特に指定する場合を除き、ダブル野縁5aとシングル野縁5bとを合わせて単に野縁5として説明する。
クリップ6は、野縁受け4とダブル野縁5aとを連結するダブルクリップ6aと、野縁受け4とシングル野縁5bとを連結するシングルクリップ6bとの2種類で構成されている。このため、ダブルクリップ6aは、ダブル野縁5aの幅に合わせて幅広に形成されており、シングルクリップ6bは、シングル野縁5bの幅に合わせて幅狭に形成されている。なお、ダブルクリップ6aとシングルクリップ6bとは幅が異なる他は基本的に同一形状であるため、特に指定する場合を除き、ダブルクリップ6aとシングルクリップ6bとを合わせて単にクリップ6として説明する。
図3は、クリップの形状を示した図であり、(a)は施工前のクリップ、(b)は施工後のクリップをそれぞれ示している。図4は、野縁受けの背側からクリップを取り付けて野縁受けと野縁とを連結した状態を示した図であり、(a)は正面図、(b)は側面図をそれぞれ示している。図5は、野縁受けの腹側からクリップを取り付けて野縁受けと野縁とを連結した状態を示した図であり、(a)は正面図、(b)は側面図をそれぞれ示している。なお、図3は、シングルクリップ6bを示しており、図4及び図5は、野縁受け4とシングル野縁5bとをシングルクリップ6bで連結する場合を示している。
図3〜図5に示すように、クリップ6は、ステンレスやアルミなどの金属材で形成されており、野縁受け4と野縁受け4の下方に配置された野縁5とを直交方向に連結するものである。このクリップ6は、野縁受け4の側方に配置される胴部61と、胴部61の下部に形成されて野縁5に係止される野縁係止部62と、胴部61の上部に形成されて野縁受け4に係止される上部係止部63と、を備えている。
胴部61は、野縁受け4の側方であって、野縁受け4の背側又は腹側の何れかに配置される部位である。胴部61は、鉛直面と平行に配置された略平板状に形成されており、リブなどの補強加工が施されている。胴部61の上部は、野縁5の幅と略同じ幅となっているが、胴部61の下部は、野縁5の開口54に嵌め込めるように、野縁5の開口54の幅と略同じ幅、又は開口54の幅よりも狭い幅となっている。
野縁係止部62は、野縁5の開口54から野縁5の内部に嵌め込まれてリップ部53に係止される部位である。野縁係止部62は、リップ部53に係止されるように、胴部61の下端部から水平方向両側に突出しており、その先端部が鉛直方向上方に拡幅して野縁受け4側に折り返されている。このため、野縁5の開口54から野縁係止部62を野縁5の内部に入り込ませて、リップ部53を野縁係止部62に嵌め合わせることで、野縁係止部62をリップ部53に係止することが可能となっている。そして、野縁係止部62は、野縁受け4側に折り返されているため、野縁係止部62とリップ部53とは広い面積で係止される。
上部係止部63は、野縁受け4の上板部42に回り込んで野縁受け4に係止される部位である。上部係止部63は、胴部61の上端縁から野縁受け4側に略直角に屈曲されて野縁受け4の上板部42に当接される上板部64と、上板部64の先端縁から略直角に屈曲される上部係止片65と、を備えている。なお、図3の(a)及び(b)に示すように、上部係止片65は上板部64に対して屈曲可能となっている。
そして、野縁受け4の背側からクリップ6を取り付ける場合は、図4に示すように、上部係止片65を野縁受け4における上板部42の先端縁から内側に折り返して上板部42に引っ掛けることで、上部係止部63が野縁受け4に係止される。一方、野縁受け4の腹側からクリップ6を取り付ける場合は、図5に示すように、上部係止片65を野縁受け4における上板部42の先端縁から鉛直方向下方に折り返して側板部41に当接させることで、上部係止部63が野縁受け4に係止される。
クリップ補強金具7は、ダブルクリップ6aを補強するダブルクリップ補強金具7aと、シングルクリップ6bを補強するシングルクリップ補強金具7bとの2種類で構成されている。このため、ダブルクリップ補強金具7aは、ダブルクリップ6aの幅に合わせて幅広に形成されており、シングルクリップ補強金具7bは、シングルクリップ6bの幅に合わせて幅狭に形成されている。なお、ダブルクリップ補強金具7aとシングルクリップ補強金具7bとは幅が異なる他は基本的に同一形状であるため、特に指定する場合を除き、ダブルクリップ補強金具7aとシングルクリップ補強金具7bとを合わせて単にクリップ補強金具7として説明する。
図6は、ダブルクリップ補強金具を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は背面図をそれぞれ示している。図7は、シングルクリップ補強金具を示した図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は背面図をそれぞれ示している。図6及び図7に示すように、クリップ補強金具7は、ステンレスやアルミなどの金属材で形成されており、野縁受け4の側方に配置される胴部71と、胴部71の下部に形成されて野縁5に係止される野縁係止部72と、胴部71の上部に形成されてクリップ6の上面に被さる上板部73と、を備えている。
胴部71は、野縁受け4の背側及び野縁受け4の腹側のうちクリップ6の胴部61の反対側に配置される部位である。胴部71は、鉛直面と平行な略平板状に形成されている。なお、胴部71には、リブなどの補強加工が施されてもよい。胴部71の上部は、野縁5の幅と略同じ幅となっているが、胴部71の下部は、野縁5の開口54に嵌め込めるように、開口54の幅と略同じ幅、又は開口54の幅よりも狭い幅となっている。
野縁係止部72は、野縁5の開口54から野縁5の内部に嵌め込まれてリップ部53に係止される部位である。野縁係止部72は、胴部71の下端縁から野縁受け4の反対側に略直角に屈曲されて水平方向に延びている。この野縁係止部72は、水平面と平行に配置された平板状のベース板部74と、ベース板部74の両端縁に形成されて鉛直方向下方に向けて窪む一対の凹面部75と、各凹面部75の先端縁に形成されて水平方向に広がりながら鉛直方向上方に向けて立ち上がる一対の立ち上がり部76と、を備えている。なお、ダブルクリップ補強金具7aのベース板部74には、リブなどの補強加工が施されている。
ベース板部74の幅は、野縁5の開口54の幅よりも僅かに狭い寸法となっている。一対の凹面部75の離間距離は、一対のリップ部53の先端の離間距離と略同じ寸法となっている。一対の立ち上がり部76の外寸は、野縁5における一対の側板部52の内寸よりも狭い寸法となっている。これにより、野縁5の開口54から野縁係止部72を野縁5の内部に入り込ませて、リップ部53を凹面部75に嵌め合わせることで、野縁係止部72をリップ部53に係止することが可能となっている。
上板部73は、クリップ6の上板部42(クリップ6の上面)に被さる部位である。上板部73は、胴部71の上端縁から野縁受け4側に略直角に屈曲されて水平面と平行に配置された平板状に形成されている。このため、クリップ補強金具7は、胴部71に対して野縁係止部72と上板部73とが逆方向に延びる断面略Z字状に形成されている。そして、上板部73には、クリップ6に係止される弾性係止片77が形成されている。
弾性係止片77は、上板部73の一部を打ち抜くことで上板部73に片持ち支持されており、上板部73から胴部71に向けて斜め下方、すなわち、上板部73の先端側から基端側に向けて斜め下方に延びている。弾性係止片77は、上板部73の先端側に配置される基端部が上板部73に接続されており、上板部73の基端側に配置される先端部が自由端となって下方に屈曲されている。弾性係止片77の自由端と胴部71との離間距離Lは、クリップ6の上板部64の長さl(図4及び図5参照)と同じ寸法、又は、クリップ6の上板部64の長さlよりも僅かに長い寸法となっている。
このため、クリップ補強金具7を上板部73の先端側からクリップ6に押し込むと、弾性係止片77が鉛直方向上方に押し上げられて、クリップ6が弾性係止片77と胴部71との間に嵌め込まれ、弾性係止片77がクリップ6の胴部61に係止される。なお、クリップ6にクリップ補強金具7を嵌め込んだときに、上板部73の先端部がクリップ6から突出するように、上板部64は長さlよりも長い寸法となっている。
なお、弾性係止片77の数はクリップ補強金具7の幅などに応じて適宜選択されるが、本実施形態では、シングルクリップ補強金具7bに対してダブルクリップ補強金具7aが幅広となっているため、シングルクリップ補強金具7bには1個の弾性係止片77を形成し、ダブルクリップ補強金具7aには2個の弾性係止片77を形成する。
次に、図8〜図10を参照して、クリップ6にクリップ補強金具7を嵌め込む方法について説明する。図8は、クリップにクリップ補強金具を嵌め込む方法を説明するための図である。図9は、野縁受けの背側に取り付けたクリップにクリップ補強金具を嵌め込んだ状態を示した図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図をそれぞれ示している。図10は、野縁受けの腹側に取り付けたクリップにクリップ補強金具を嵌め込んだ状態を示した図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図をそれぞれ示している。なお、図8では、野縁受け4の背側に取り付けたシングルクリップ6bにシングルクリップ補強金具7bを嵌め込む場合を示している。
まず、図8(a)に示すように、クリップ補強金具7の野縁係止部72を野縁5の開口54から野縁5の内部に挿入する。このとき、野縁係止部72の幅は開口54の幅よりも広いため、クリップ補強金具7を野縁5の延在方向に対して傾けた状態で野縁係止部72を開口54に挿入する。そして、クリップ補強金具7の傾きを元に戻して、野縁係止部72の凹面部75にリップ部53の先端を嵌め合わせるように野縁係止部72をリップ部53に係止する。
次に、野縁係止部72がリップ部53に係止されている係止位置を軸として、クリップ補強金具7が野縁受け4に近接する方向にクリップ補強金具7を回動させる。すると、図8(b)に示すように、クリップ補強金具7の上板部73から弾性係止片77が斜め下方に延びているため、この弾性係止片77がクリップ6に当接する。
そこで、図8(c)に示すように、更にクリップ補強金具7を回動させると、弾性係止片77がクリップ6で押し上げられてクリップ6の上板部64の上面を進み、クリップ補強金具7の回転が進む。
そして、図8(d)に示すように、弾性係止片77がクリップ6を越えるまでクリップ補強金具7を回動させると、クリップ6の上面から開放された弾性係止片77がスプリングバックにより元の状態に押し下げられ、上板部73が上板部64の上面に被さるとともに、弾性係止片77の先端がクリップ6の胴部61に引っ掛かる。
これにより、図9及び図10に示すように、クリップ補強金具7の上板部73と野縁係止部72との間にクリップ6、野縁受け4及び野縁5のリップ部53が挟み込まれると共に、クリップ補強金具7の弾性係止片77と胴部71との間にクリップ6及び野縁受け4が挟み込まれるため、クリップ6、野縁受け4及び野縁5が水平方向及び垂直方向に互いに強固に連結される。
このように、本実施形態に係るクリップ補強金具7によれば、野縁係止部72を野縁5の内部に入り込ませてリップ部53に係止してクリップ補強金具7をクリップ6に嵌め込むという単純な動作により、クリップ6、野縁受け4及び野縁5を強固に連結することができるため、水平方向及び垂直方向の耐震性を向上させつつ、作業性がよく低コストでクリップ6による野縁受け4と野縁5との連結を補強することができる。また、クリップ6自体の形状を変える必要が無く、クリップ6で野縁受け4と野縁5とを連結した状態でクリップ補強金具7を嵌め込むことができるため、リフォームや補強工事などにおいてもクリップ6を補強することができる。
また、クリップ補強金具7を単純な形状とすることができるため、クリップ補強金具7を厚くして天井下地部材1の更なる強度向上を図ることができる。そして、リップ部53に対する係止はクリップ6とクリップ補強金具7の2部材で行うため、リップ部53に作用する荷重が分散してリップ部53が捲れ上がるのを抑制することができる。しかも、野縁係止部62が野縁受け4の反対側に略直角に屈曲されて水平方向に延びることで、野縁係止部72とリップ部53とが広い面積で係止されるため、リップ部53の捲れ上がりを更に抑制することができる。
また、野縁係止部72と上板部73とを互いに逆方向に延ばすことで、クリップ補強金具7が断面略Z字状となるため、野縁係止部72がリップ部53に係止される係止位置を軸として回動させることで、クリップ補強金具7をクリップに嵌め込むことができる。
そして、上板部73をクリップ6から突出させることで、クリップ補強金具7をクリップに嵌め込んだ状態で上板部73に手を引っ掛けることができるため、クリップ補強金具7を取り外す際の作業性を向上させることができる。なお、この場合、クリップ6から突出する上板部73の部分を屈曲させるなどして、持ち易くしてもよい。
また、弾性係止片77は、上板部73の一部を打ち抜くという簡易な加工方法で形成することができるため、クリップ補強金具7の製造コストを低減することができる。
なお、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ダブルクリップ補強金具7aに2個の弾性係止片77を形成し、シングルクリップ補強金具7bに1個の弾性係止片77を形成するものとして説明したが、更に多くの弾性係止片を形成してもよい。
また、上記実施形態では、クリップ補強金具7の上板部73の一部を打ち抜くことで弾性係止片77を形成するものとして説明したが、例えば、図11に示すクリップ補強金具9のように、上板部93の先端を屈曲して、胴部71に向けて斜め下方に折り返すことで弾性係止片97を形成するものとしてもよい。このように、上板部93の先端を屈曲するという簡易な加工方法でも弾性係止片97を形成することができるため、クリップ補強金具9の製造コストを低減することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
[実験条件]
まず、本実施例の実験条件について説明する。
本実施例では、2001年3月24日の芸予地震にて体育館の天井が落下したことを受け、図12に示すような体育館モデルを作成した。図12では、便宜上、体育館の構造物のうち屋根の梁のみを表示しているが、実際には、体育館の全構造部材をモデル化したものを作成した。なお、この体育館モデルでは、張間方向をx方向、桁行方向をy方向、垂直(上下)方向をz方向とする。
次に、体育館モデルから垂直振動が顕著に増幅される屋根の中央領域α(図12参照)を切り出し、この体育館モデルに芸予地震で計測された地震動の入力波(図13参照)を入力した際の中央領域αの応答波をシミュレーションした。なお、中央領域αは、y方向両端部が梁に固定された領域とした。図13は、入力波である芸予地震の地震動を示した図であり、(a)はx方向における地震動の入力加速度、(b)はy方向における地震動の入力加速度、(c)はz方向における地震動の入力加速度をそれぞれ示している。図14は、屋根(中央領域α)の応答波を示した図であり、(a)はx方向における屋根応答加速度、(b)はy方向における屋根応答加速度、(c)はz方向における屋根応答加速度をそれぞれ示している。
次に、中央領域αの模擬天井を実施例1〜5及び比較例1〜5として作成し、実施例1〜5及び比較例1〜5の各模擬天井を鉄骨で構成される枠体に固定し、模擬地震を発生させる振動台にこの枠体を載置した。枠体は、鉄骨を用いて、x方向の長さが6250mm、y方向の長さが6250mm、z方向の高さが3550mmの直方体とした。そして、実施例1〜5及び比較例1〜5の各模擬天井をx方向における両端部を拘束して枠体に固定した。
なお、実際の天井は傾斜しているが、本発明者らが別の実験を行ったところ、天井を斜めに設置した場合と天井を水平に設置した場合とでは、天井に作用する振動の大きさに大きな違いが生じなかったため、本実施例では、実施例1〜5及び比較例1〜5の各模擬天井を水平に設置した。
次に、上述した応答波の32%及び16%の振動台入力波を振動台に入力し、クリップやハンガなどの状態変化について観察した。なお、中央領域αにおけるy方向成分の応答波が高精度に再現できないため、本実施例では、図15に示すように、振動台入力波を、応答波のx方向成分及びz方向成分のみとした。図15は、応答波の32%の振動台入力波を示しており、(a)はx方向における振動台入力波の入力加速度、(b)はz方向における振動台入力波の入力加速度をそれぞれ示している。
[実施例1・比較例1]
図16は、実施例1及び比較例1の模擬天井を示す立面図、図17は、実施例1及び比較例1の模擬天井を示す平面図である。
図16に示すように、実施例1及び比較例1の各模擬天井は、建物の躯体となる枠体から800mmの長さに吊り下げられたフラット天井とした。そして、図17に示すように、実施例1の模擬天井E1と比較例1の模擬天井F1とを水平方向に2枚併設した。
実施例1及び比較例1の各模擬天井E1,F1は、x方向の長さが5000mmでy方向の長さが2700mmの大きさとなっており、それぞれ24個の吊ボルト2及びハンガ3で4本の野縁受け4を保持し、20個のダブルクリップ6aで5本のダブル野縁5aを野縁受け4に連結し、40個のシングルクリップ6bで10本のシングル野縁5bを野縁受け4に連結し、天井材Aを2枚積層して野縁5にビス留めした。なお、各天井材Aには9.5mm厚の石膏ボードを使用した。そして、実施例1の模擬天井E1には、全てのダブルクリップ6aにダブルクリップ補強金具7aを取り付け、全てのシングルクリップ6bにシングルクリップ補強金具7bを取り付けた。なお、比較例1の模擬天井F1には、クリップ補強金具を取り付けなかった。
そして、各模擬天井E1,F1のx方向における両端部を枠体に固定された拘束材に拘束し、各模擬天井E1,F1のy方向における端部と枠体との間に75mmのクリアランスを設け、実施例1の模擬天井E1と比較例1の模擬天井F1との間に400mmのクリアランスを設けた。
[実施例2・比較例2]
図18は、実施例2及び比較例2の模擬天井を示す立面図、図19は、実施例2及び比較例2の模擬天井を示す平面図である。
図18に示すように、実施例2及び比較例2の各模擬天井は、建物の躯体となる枠体から1500mmの長さに吊り下げられたフラット天井とし、懐に斜め振れ止め(ブレース)Bを取り付けた。そして、図19に示すように、実施例2の模擬天井E2と比較例2の模擬天井F2とを水平方向に2枚併設した。
実施例2及び比較例2の各模擬天井E2,F2は、x方向の長さが5000mmでy方向の長さが2700mmとなっており、それぞれ24個の吊ボルト2及びハンガ3で4本の野縁受け4を保持し、4本のブレースBを吊ボルト2に連結して斜め振れ止めを行い、20個のダブルクリップ6aで5本のダブル野縁5aを野縁受け4に連結し、40個のシングルクリップ6bで10本のシングル野縁5bを野縁受け4に連結し、天井材Aを2枚積層して野縁5にビス留めした。なお、各天井材Aには9.5mm厚の石膏ボードを使用した。そして、実施例2の模擬天井E2には、全てのダブルクリップ6aにダブルクリップ補強金具7aを取り付け、全てのシングルクリップ6bにシングルクリップ補強金具7bを取り付けた。なお、比較例2の模擬天井F2には、クリップ補強金具を取り付けなかった。
そして、各模擬天井E2,F2のx方向における両端部を枠体に固定された拘束材に拘束し、各模擬天井E2,F2のy方向における端部と枠体との間に75mmのクリアランスを設け、実施例2の模擬天井E2と比較例2の模擬天井F2との間に400mmのクリアランスを設けた。
[実施例3・比較例3]
図20は、実施例3及び比較例3の模擬天井を示す立面図、図21は、実施例3及び比較例3の模擬天井を示す平面図である。
図20に示すように、実施例3及び比較例3の各模擬天井は、建物の躯体となる枠体から800mmの長さに吊り下げられたフラット天井と、このフラット天井から半径3000mmの円弧状に湾曲して枠体の下方2400mmの位置まで下る湾曲天井と、で構成し、湾曲天井の懐に水平振れ止め(水平ブレース)Bと斜め振れ止め(ブレース)Cとを取り付けた。そして、図21に示すように、実施例3の模擬天井E3と比較例3の模擬天井F3とを水平方向に2枚併設した。
実施例3及び比較例3の各模擬天井E3,F3は、x方向の長さが5000mmでy方向の長さが2700mmとなっており、それぞれ28個の吊ボルト2及びハンガ3で4本の野縁受け4を保持し、水平ブレースCで1500mm以上となる吊ボルト2を2段に分割し、2本のブレースBを吊ボルト2に連結して斜め振れ止めを行い、28個のダブルクリップ6aで7本のダブル野縁5aを野縁受け4に連結し、44個のシングルクリップ6bで11本のシングル野縁5bを野縁受け4に連結し、天井材Aを2枚積層して野縁5にビス留めした。なお、各天井材Aには9.5mm厚の石膏ボードを使用した。そして、実施例3の模擬天井E3には、全てのダブルクリップ6aにダブルクリップ補強金具7aを取り付け、全てのシングルクリップ6bにシングルクリップ補強金具7bを取り付けた。なお、比較例3の模擬天井F3には、クリップ補強金具を取り付けなかった。
そして、各模擬天井E3,F3のx方向における両端部を枠体に固定された拘束材に拘束し、各模擬天井E3,F3のy方向における端部と枠体との間に75mmのクリアランスを設け、実施例3の模擬天井E3と比較例3の模擬天井F3との間に400mmのクリアランスを設けた。
[実施例4・比較例4]
図22は、実施例4及び比較例4の模擬天井を示す立面図、図23は、実施例4及び比較例4の模擬天井を示す平面図である。
図22に示すように、実施例4及び比較例4の各模擬天井は、建物の躯体となる枠体から2400mmの長さに吊り下げられたフラット天井とし、フラット天井の懐に水平振れ止め(水平ブレース)Bと斜め振れ止め(ブレース)Cとを取り付けた。そして、図23に示すように、実施例4の模擬天井E4と比較例4の模擬天井F4とを水平方向に2枚併設した。
実施例4及び比較例4の各模擬天井E4,F4は、x方向の長さが5000mmでy方向の長さが2700mmとなっており、それぞれ24個の吊ボルト2及びハンガ3で4本の野縁受け4を保持し、水平ブレースCで1500mm以上となる吊ボルト2を2段に分割し、8本のブレースBを各段の吊ボルト2に連結して斜め振れ止めを行い、20個のダブルクリップ6aで5本のダブル野縁5aを野縁受け4に連結し、40個のシングルクリップ6bで10本のシングル野縁5bを野縁受け4に連結し、天井材Aを2枚積層して野縁5にビス留めした。なお、各天井材Aには9.5mm厚の石膏ボードを使用した。そして、実施例4の模擬天井E4には、全てのダブルクリップ6aにダブルクリップ補強金具7aを取り付け、全てのシングルクリップ6bにシングルクリップ補強金具7bを取り付けた。なお、比較例4の模擬天井F4には、クリップ補強金具を取り付けなかった。
そして、各模擬天井E4,F4のx方向における両端部を枠体に固定された拘束材に拘束し、各模擬天井E4,F4のy方向における端部と枠体との間に75mmのクリアランスを設け、実施例4の模擬天井E4と比較例4の模擬天井F4との間に400mmのクリアランスを設けた。
[実施例5・比較例5]
図24は、実施例5及び比較例5の模擬天井を示す立面図、図25は、実施例5の模擬天井を示す平面図、図26は、比較例5の模擬天井を示す平面図である。
図24に示すように、実施例5及び比較例5の各模擬天井は、建物の躯体となる枠体から1500mmの長さに吊り下げられたフラット天井とした。そして、図25及び図26に示すように、実施例5の模擬天井E5及び比較例5の模擬天井F5は、実施例1〜4及び比較例1〜4よりも大きいものを採用したため、1の枠体には1の模擬天井のみを固定し、模擬天井E5と模擬天井F5とを別々に枠体に固定した。
実施例5及び比較例5の各模擬天井E5,F5は、x方向の長さが5000mmでy方向の長さが5000mmの大きさとなっており、それぞれ36個の吊ボルト2及びハンガ3で6本の野縁受け4を保持し、30個のダブルクリップ6aで5本のダブル野縁5aを野縁受け4に連結し、60個のシングルクリップ6bで10本のシングル野縁5bを野縁受け4に連結し、天井材Aを4枚積層して野縁5にビス留めした。なお、各天井材Aには9.5mm厚の石膏ボードを使用した。そして、図25に示すように、実施例5の模擬天井E5には、全てのダブルクリップ6aにダブルクリップ補強金具7aを取り付け、全てのシングルクリップ6bにシングルクリップ補強金具7bを取り付けた。なお、図26に示すように、比較例5の模擬天井F5には、クリップ補強金具を取り付けなかった。
そして、各模擬天井E5,F5の全端部と枠体との間に475mmのクリアランスを設けた。
[実験結果]
次に、実施例1〜5及び比較例1〜5の各模擬天井が設置された枠体を振動台に載置し、実施例1〜4及び比較例1〜4については、応答波の32%の振動台入力波を振動台に入力し、実施例5及び比較例5については、応答波の16%の振動台入力波を振動台に入力した。そして、それぞれ、振動台入力波の入力前後でのクリップやハンガなどの状態変化について観察した。
図27は、実験結果を示す図表であり、(a)は比較例、(b)は実施例をそれぞれ示す。図27に示すように、比較例1では、クリップ6が23個外れ、ハンガ3が5個開いたのに対し、実施例1では、特に被害は無かった。比較例2では、クリップ6が22個外れ、ハンガ3が4個開き、天井材Aの石膏ボードに割れが発生したのに対し、実施例2では、特に被害は無かった。比較例3では、クリップ6が11個外れ、水平ブレースCが外れたのに対し、実施例3では、クリップ補強金具7が1個外れ、水平ブレースCが外れたものの、特に大きな被害は無かった。比較例4では、クリップ6が20個外れ、ハンガ3が5個開いたのに対し、実施例4では、特に被害は無かった。比較例5では、クリップ6が36個外れたのに対し、実施例5では、特に被害は無かった。
これらの実験の結果から、クリップ補強金具7を取り付けることで、クリップ6の外れやハンガ3の開きが顕著に抑制され、天井下地部材1の水平方向及び垂直方向の耐震性が向上することが証明された。