JP5489066B2 - 膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材 - Google Patents

膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材 Download PDF

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Description

本発明は、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材に関する。具体的には、耐熱性能に優れた膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた医療用・工業用分離装置の繊維結束用途に用いられる、所望される硬度と伸びが同時に得られ、かつ、相溶性にも優れる、中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材として適用可能なポリウレタン樹脂形成性組成物、及び該形成性組成物を用いた中空或いは平膜状繊維分離膜用膜シール材に関する。
一般に、中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュールを集束した端部を接着固定する膜シール材として、常温での可撓性、接着性、及び耐薬品性に優れているポリウレタン樹脂を用いることが、広く知られている。
このようなポリウレタン樹脂として、例えば、イソシアネート成分として、液状化ジフェニルメタンジイソシアネートとヒマシ油またはヒマシ油誘導体ポリオールとから得られたイソシアネート基末端プレポリマーをポリオールで硬化させて得られるポリウレタン樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
近年、このような用途に用いられるポリウレタン樹脂に対して、膜モジュールとしての耐久性を向上させる、換言すれば、中空或いは平膜状繊維分離膜とシール材との界面にかかる負荷を軽減して中空或いは平膜状繊維分離膜の切れを防止するとの観点から、中空或いは平膜状繊維分離膜モジュール用膜シール材には様々な硬度範囲における柔軟性、並びに、高伸度化が求められるようになってきている。特に、分離膜として中空状繊維分離膜を用いる場合においては、このような性能の要求が高まっている。
従来の中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材に用いられているポリウレタン樹脂では、この中空或いは平膜状繊維分離膜とシール材との界面にかかる負荷の軽減が難しいという問題があり、解決が望まれている。
特開昭53−98398号公報
本発明の目的は、前記のような背景に基づいた課題、即ち、様々な硬度範囲における柔軟性、並びに、高伸度化を付与することが可能な、中空或いは平膜状繊維分離膜を固定する膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することにある。
本発明の目的はまた、前記のような背景に基づいた課題、即ち、中空或いは平膜状繊維分離膜とシール材との界面にかかる負荷を軽減して中空或いは平膜状繊維分離膜の破損を防止することが可能な、中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材を提供することにある。
本発明者は上記一連の問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、イソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とから成る膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物において、ポリオール成分(B)として特定のポリオール成分を用いることにより、上記一連の問題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は次の(1)〜(3)のとおりである。
(1) イソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)とからなる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物において、ポリオール成分(B)が、分子量50〜200の低分子グリコールを含有せず、かつ炭素数10以下のジオール成分(b−1)とヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸(b−2)とからなるジオール変性ヒマシ油(B−1)を用いることを特徴とする、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
(2) 炭素数10以下のジオール成分(b−1)が、分岐鎖を有さない直鎖の炭素数6以下のジオールであることを特徴とする、(1)に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
(3) (1)または(2)に記載の形成性組成物を用いることを特徴とする、中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材。
本発明による膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いることで、特に、様々な硬度範囲における柔軟性、並びに、高伸度化を付与することが可能となった。併せて、本発明による膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は常温(例えば25℃)において液状である。この優れた効果は、近年において所望される中空繊維分離膜または平膜状繊維分離膜を用いた医療用、工業用流体分離装置の結束材(即ち、膜モジュール用のシール材)として、極めて好適に使用することができる。
本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、イソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)とからなり、該ポリオール成分(B)として、炭素数10以下のジオール成分(b−1)とヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸(b−2)とからなるジオール変性ヒマシ油(B−1)を用いることを特徴とする。
<イソシアネート成分(A)>
本発明においては、イソシアネート成分(A)は特に限定されず、1分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物であれば、いずれも使用することが可能である。1分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート、MDI、パラフェニレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4´,4"−トリイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−および1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−および2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,3−および−1,4−フェニルジイソシアネート、ペルヒドロ−2,4´−および−4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族系または脂環族系イソシアネート、あるいはこれら一連のイソシアネートの一部をイソシアヌレート変性、ビウレット変性、アロファネート変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、カルボジイミド変性、オキサゾリドン変性、アミド変性、イミド変性したもの等が挙げられる。
本発明においては、1分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物として、芳香族系イソシアネートあるいは芳香族系イソシアネートの一部をイソシアヌレート変性、ビウレット変性、アロファネート変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、カルボジイミド変性、オキサゾリドン変性、アミド変性、イミド変性したものを使用するのが好ましく、MDIあるいはMDIの一部をイソシアヌレート変性、ビウレット変性、アロファネート変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、カルボジイミド変性、オキサゾリドン変性、アミド変性、イミド変性したものを使用するのがより好ましい。中でも、作業環境に優れ、且つ、得られる膜シール材に要求される物性として好適なものが得られる等の観点から、MDIあるいはMDIの一部をカルボジイミド変性したものを使用するのがより好ましい。
本発明においてはさらに、イソシアネート成分(A)として、作業環境に優れ、得られる膜シール材に要求される物性として好適なものが得られ、且つ、膜シール材の生産性にも優れる等の観点から、これら一連の1分子中にイソシアネート基を2個以上含む化合物と、活性水素を2個以上有する化合物とを反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマーを使用するのが好ましい。
該イソシアネート基末端プレポリマーは、イソシアネート基と活性水素基の当量比が1.1〜100.0、好ましくは3.0〜90.0、中でも、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から5.0〜80.0の範囲で反応させて得ることが好ましい。なお、該イソシアネート基末端プレポリマーを得るための反応は、通常行われるウレタン化反応を用いることができる。該イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜28質量%、中でも、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から10〜26質量%であることが好ましい。
活性水素を2個以上有する化合物としては、例えば、低分子グリコール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール(後記するジオール変性ヒマシ油(B−1)を除く)、ポリオレフィン系ポリオール等があげられる。これらは、単独もしくは2種類以上の混合物として使用することができる。
低分子グリコールとしては、例えば、2価のもの、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールAなど、また、3〜8価のもの、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。低分子グリコールの分子量は50〜200である。
ポリエーテル系ポリオールとしては、上記低分子ポリオールのアルキレンオキシド(炭素数2〜4個のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物、およびアルキレンオキサイドの開環重合物があげられ、具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、PTMG、またはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物であるチップドエーテル等が挙げられる。ポリエーテル系ポリオールの分子量は200〜7000である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーを得るうえでポリエーテル系ポリオールを用いる場合、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から、分子量は500〜5000であることが好ましい。
ポリエステル系ポリオールとしては、ポリカルボン酸(脂肪族飽和もしくは不飽和ポリカルボン酸、アゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、リシノール酸、2量化リノール酸および/または芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)とポリオール(上記低分子ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオール)との縮合重合により得られるポリオールが挙げられる。ポリエステル系ポリオールの分子量は200〜5000である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーを得るうえでポリエステル系ポリオールを用いる場合、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から、分子量は500〜3000であることが好ましい。
ポリラクトン系ポリオールとしては、グリコール類やトリオール類の重合開始剤に、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン等、および/またはβ−メチル−δ−バレロラクトン等を有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物化物等の触媒の存在下で付加重合させたポリオールが挙げられる。ポリラクトン系ポリオールの分子量は200〜5000である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーを得るうえでポリラクトン系ポリオールを用いる場合、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から、分子量は500〜3000であることが好ましい。
ヒマシ油系ポリオール(後記するジオール変性ヒマシ油(B−1)を除く)としては、ヒマシ油脂肪酸とポリオール(上記低分子ポリオール及び/又はポリエーテルポリオール)との反応により得られる線状または分岐状ポリエステル、例えばヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、モノグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとのモノ、ジ、またはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノ、ジ、またはトリエステル等が挙げられる。ヒマシ油系ポリオールの分子量は300〜4000である。なお、イソシアネート基末端プレポリマーを得るうえでヒマシ油系ポリオールを用いる場合、膜シール材の製造時に於いて成形加工性に優れるとの観点から、分子量は500〜3000であることが好ましい。
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエンもしくはブタジエンとスチレンあるいはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したポリブタジエン系ポリオールが挙げられる。
その他、末端にカルボキシル基および/またはOH基を有するポリエステルにアルキレンオキシド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールも挙げられる。
本発明においては、イソシアネート成分(A)として上記のイソシアネート基末端プレポリマーを用いる場合、該イソシアネート基末端プレポリマーを得るための活性水素を2個以上有する化合物、即ちポリオール成分(B)として、ポリエーテル系ポリオール及び/又はヒマシ油系ポリオール(後記するジオール変性ヒマシ油(B−1)を除く)を選択することが好ましい。中でも、作業環境に優れ、得られる膜シール材に要求される物性として好適なものが得られ、且つ、膜シール材の生産性にも優れる等の観点から、ヒマシ油系ポリオール(後記するジオール変性ヒマシ油(B−1)を除く)を選択することがより好ましい。
<ポリオール成分(B)>
本発明においては、本発明の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を構成するポリオール成分(B)として、炭素数10以下のジオール成分(b−1)とヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸(b−2)とからなる、例えばエステル交換反応等により得られるジオール変性ヒマシ油(B−1)を用いることを特徴とする。
本発明における最大の特徴はこの点にある。即ち、該ジオール変性ヒマシ油(B−1)を選択して用いることで、様々な硬度範囲(好ましくは、膜シール材におけるショアD硬度(10秒値)が50以上)における柔軟性、並びに、高伸度化(好ましくは、膜シール材における破断伸びが120%以上)を付与することが可能な膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することが可能となり、ひいては、中空糸と膜シール材との界面にかかる負荷を軽減して、中空糸の切れを防止することが可能な中空或いは平膜状繊維分離膜モジュール用膜シール材を提供することが可能になる。
前記のジオール変性ヒマシ油(B−1)の原料となる炭素数10以下(好ましくは、炭素数6以下)のジオール成分(b−1)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサングリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。本発明においては、これらのうち、本発明において所望される性能、即ち、様々な硬度範囲における柔軟性、並びに、高伸度化を付与できる中空或いは平膜状繊維分離膜モジュール用膜シール材を提供することができるとの観点から、分岐鎖を有さない直鎖の炭素数10以下のジオール成分をジオール変性ヒマシ油(B−1)の原料として用いるのが好ましい。
前記のジオール変性ヒマシ油(B−1)の原料となるヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸(b−2)には、ヒマシ油やヒマシ油脂肪酸に水素を導入して飽和化させた水素添加ヒマシ油や水素添加ヒマシ油脂肪酸も含まれる。
本発明においては、該ジオール変性ヒマシ油(B−1)の平均官能基数は2.0〜2.5の範囲内であることが好ましく、中でも、本発明において所望される性能、即ち、様々な硬度範囲における柔軟性、並びに、高伸度化を付与できる中空或いは平膜状繊維分離膜モジュール用膜シール材を提供することができるとの観点から、平均官能基数が2.0〜2.1であることがより好ましい。
また、該ジオール変性ヒマシ油(B−1)の平均水酸基価は100〜420(mgKOH/g)の範囲内であることが好ましく、中でも、本発明において所望される性能、即ち、様々な硬度範囲における柔軟性、並びに、高伸度化を付与できる中空或いは平膜状繊維分離膜モジュール用膜シール材を提供することができるとの観点、また、本発明における膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を構成するポリオール成分(B)の相溶性にも優れるとの観点から、150〜350(mgKOH/g)の範囲内であることがより好ましい。
本発明においては、ポリオール成分(B)として、該ジオール変性ヒマシ油(B−1)以外の活性水素基含有化合物を、該ジオール変性ヒマシ油(B−1)と併用することができる。
この、該ジオール変性ヒマシ油(B−1)と併用可能な活性水素基含有化合物としては、前述の低分子グリコールを除く、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等、イソシアネート成分(A)として上記のイソシアネート基末端プレポリマーを得る際に用いられる活性水素を2個以上有する化合物が挙げられる。
この、該ジオール変性ヒマシ油(B−1)と併用可能な活性水素基含有化合物としては、また、短鎖グリコール、低分子ポリアミン、または、低分子アミノアルコール(例えば、アミノ化合物のオキシアルキル化誘導体であるN,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシエチル]エチレンジアミン等の、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイドもしくはエチレンオキサイド付加物、モノ、ジおよびトリエタノールアミン、N−メチル−N,N´−ジエタノールアミン等)等といったアミン系化合物も挙げることができる。
<膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物>
本発明における膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物としては、ポリイソシアネート成分(A)に於けるイソシアネート基とポリオール成分(B)に於ける活性水素基との当量比が、イソシアネート基/活性水素基で0.8〜1.6の範囲内、中でも0.9〜1.2の範囲内となるようにするのが好ましい。
なお、本発明においては、必要に応じて、ポリオール中の活性水素含有基と有機ポリイソシアネート中のイソシアネート基の反応を促進させる有機スズ化合物などの金属化合物系触媒やトリエチレンジアミン(TEDA)、テトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHMDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ビスジメチルアミノエチルエーテル(BDMAEA)などの3級アミン触媒等、公知のウレタン化触媒を使用することができる。
<中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材>
本発明における膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いて中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材を得る場合、該組成物を室温下で反応させるか、又はゲル化時間の短縮や混合粘度の低下を図るべく、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)を各々30〜60℃に加温して反応させても良い。
本発明における膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を用いて得られる中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材は、本発明において所望される性能、即ち、様々な硬度範囲における柔軟性、並びに、高伸度化を併せて付与できることから、中空或いは平膜状繊維分離膜とシール材との界面にかかる負荷を軽減して中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュールにおける膜の破損(具体的には、中空糸の切れ等)を防止できるといった優れた性能を具備することができる。
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらの例に何ら限定して解釈されるものではない。
主剤製造例1<ポリイソシアネート成分「A−1」の製造>:
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、MDI(1)を233g、MDI(3)を593gを仕込み、撹拌を開始した。液温度を50℃としたところで、ポリオール(1)を174g仕込み、窒素雰囲気下、70℃で3時間混合撹拌しながら反応させて、本発明のポリイソシアネート成分(A)に相当するイソシアネート基末端プレポリマー「A−1」を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は22.7質量%、25℃に於ける粘度は330mPa・sであった。
主剤製造例2<ポリイソシアネート成分「A−2」の製造>:
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、MDI(1)を254g、MDI(2)を488gを各々仕込み、撹拌を開始した。液温度を50℃としたところで、ポリオール(2)を233g仕込み、窒素雰囲気下、70℃で3時間混合撹拌しながら反応させた。この工程が終了した後、さらにMDI(4)を25gを仕込み、70℃で1時間混合撹拌を行い、本発明のポリイソシアネート成分(A)に相当するイソシアネート基末端プレポリマー「A−2」を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は22.2質量%、25℃に於ける粘度は250mPa・sであった。
主剤製造例3<ポリイソシアネート成分「A−3」の製造>:
温度計、攪拌機、窒素シール管、冷却管を備えた2Lサイズの4つ口フラスコの内部を窒素置換した。これに、MDI(1)を182g、MDI(3)を638gを仕込み、撹拌を開始した。液温度を50℃としたところで、ポリオール(3)を180g仕込み、窒素雰囲気下、70℃で3時間混合撹拌しながら反応させて、本発明のポリイソシアネート成分(A)に相当するイソシアネート基末端プレポリマー「A−3」を得た。該プレポリマーのイソシアネート基含有量は23.0質量%、25℃に於ける粘度は200mPa・sであった。
前記一連の主剤の製造例における記載(使用原料)の詳細は、各々、以下のとおりである。
<MDI(1)>:
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、商品名「ミリオネートMT(日本ポリウレタン工業(株)製)」、イソシアネート基含有量=33.6(質量%)。
<MDI(2)>:
上記MDI(1)をカルボジイミド変性したもの、商品名「ミリオネートMTL(日本ポリウレタン工業(株)製)」、イソシアネート基含有量=29.0(質量%)。
<MDI(3)>:
上記MDI(1)をカルボジイミド変性したもの、商品名「ミリオネートMTL−C(日本ポリウレタン工業(株)製)」、イソシアネート基含有量=28.6(質量%)。
<MDI(4)>:
ポリメリックMDI、商品名「ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業(株)製)」、イソシアネート基含有量=31.0(質量%)。
<POLY−1>:
ヒマシ油、商品名「URIC H−30(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.7、平均水酸基価=160(mgKOH/g)。
<POLY−2>:
グリセリンを開始剤としてエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダムに付加重合させて得られるポリエーテルポリオール、商品名「サンニックス GL−3000(三洋化成工業(株)製)」、平均官能基数=3、平均水酸基価=56(mgKOH/g)。
<POLY−3>:
ヒマシ油のポリプロピレングリコール変性体、商品名「#1944U(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.0、平均水酸基価=115(mgKOH/g)。
硬化剤調製例1〜15<ポリオール成分「R−1」〜「R−15」の調製>:
表1に示す配合比に従って、各々の原料を仕込み、攪拌並びに均一混合を行って、硬化剤(ポリオール成分(B))としての「R−1」〜「R−15」を各々得た。
各々の硬化剤における水酸基価、25℃における粘度、並びに25℃雰囲気下で24時間静置した後の液状(相分離の有無)について、各々確認を行った。結果を表1に併せて示す。
なお、表1に示すとおり、相分離の有無については目視確認による評価を行った。結果、「R−4」と「R−5」が「×」(相分離が見られる)との評価であった以外は、全て「○」(相分離または液の濁りが見受けられず良好である)との評価であった。
Figure 0005489066
表1における記載(使用原料)の詳細は、各々、以下のとおりである。
<POLY−1>:
ヒマシ油、商品名「URIC H−30(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.7、平均水酸基価=160(mgKOH/g)。
<POLY−4(本発明の(B−1)に相当)>:
エチレングリコール変性ヒマシ油、商品名「#1161X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.0、平均水酸基価=260(mgKOH/g)。
<POLY−5(本発明の(B−1)に相当)>:
1,3−プロパンジオール変性ヒマシ油、商品名「#2213U(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.0、平均水酸基価=280(mgKOH/g)。
<POLY−6(本発明の(B−1)に相当)>:
1,4−ブタンジオール変性ヒマシ油、商品名「#1163X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.0、平均水酸基価=250(mgKOH/g)。
<POLY−7>:
部分脱水ヒマシ油、商品名「#1740U(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=2.0、平均水酸基価=119(mgKOH/g)。
<POLY−8>:
トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、商品名「#1296X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=3.0、平均水酸基価=270(mgKOH/g)。
<POLY−9>:
トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、商品名「#1297X(伊藤製油(株)製)」、平均官能基数=3.0、平均水酸基価=340(mgKOH/g)。
<POLY−10>:
N,N,N´,N´−テトラキス[2−ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、官能基数=4.0、水酸基価=760(mgKOH/g)。
<POLY−11>:
1,4−ブタンジオール、官能基数=2.0、水酸基価=1245(mgKOH/g)。
<POLY−12>:
エチレングリコール、官能基数=2.0、水酸基価=1808(mgKOH/g)。
<POLY−13>:
ポリエチレングリコール、商品名「PEG−200(三洋化成工業(株)製)」、平均官能基数=2.0、平均水酸基価=561(mgKOH/g)。
<POLY−14>:
ポリエチレングリコール、商品名「PEG−600(三洋化成工業(株)製)」、平均官能基数=2.0、平均水酸基価=187(mgKOH/g)。
<オレイン酸>:
オレイン酸、平均官能基数=0、平均水酸基価=0(mgKOH/g)。
<実施例1〜11、比較例1〜6>
主剤(ポリイソシアネート成分)として「A−1」〜「A−3」、並びに、硬化剤(ポリオール成分)として「R−1」〜「R−15」を、表2の組み合わせで、液温35℃、イソシアネート基/活性水素基=1.00(当量比)になるように主剤と硬化剤を混合して、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を得た。
<硬化物の硬度の評価>
主剤と硬化剤からなる表2に示す組み合わせによる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物について、各々、減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、ステンレス製金型(100mm×100mm×8mm)に仕込んだ。これを25℃で7日間静置キュアした後に脱型し、硬化物を得た。得られた硬化物について、25℃に於けるショアD硬度を測定した。結果を表2に示す。
<硬化物の引張強度と破断伸びの評価>
主剤と硬化剤からなる表2に示す組み合わせによる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物について、各々、減圧脱泡(10〜20kPaで3分間)した後、ステンレス製(105mm×75mm×2mm)に仕込んだ。これを25℃で7日間静置キュアした後に脱型し、硬化物を得た。得られた硬化物について、打ち抜き機でJIS K7312記載の4号形ダンベル状試験片を作製した。25℃に温調された室で2時間静置した後、引張強度、破断伸びを測定した。結果を表2に示す。
<混合初期粘度の評価>
主剤と硬化剤からなる表2に示す組み合わせによる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物について、各々、液温25℃、イソシアネート基/活性水素基=1.00(当量比)になるように主剤と硬化剤を混合して、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を得た段階における粘度を測定した。結果を表2に示す。
なお、相分離が見られた「R−4」と「R−5」については、この評価は行っていない。
<ポットライフの評価>
主剤と硬化剤からなる表2に示す組み合わせによる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物について、各々、液温25℃、イソシアネート基/活性水素基=1.00(当量比)になるように主剤と硬化剤を各々均一混合(主剤と硬化剤との合計=100g)した後、25℃雰囲気下で、回転粘度計(B型、4号ローター)を用いて粘度上昇を追跡し、主剤と硬化剤との混合を開始した時点から、組成物の粘度が50000mPa・sに到達するまでの時間を、ポットライフとした。結果を表2に示す。
なお、相分離が見られた「R−4」と「R−5」については、この評価は行っていない。

Figure 0005489066
実施例:表2に示す主剤と硬化剤の組み合わせのうち、実施例の組み合わせによる組成物を用い、ポリスルホン中空糸9000本を束ねた集束体の両端部における中空糸膜相互間、および集束体を挿入したカートリッジケース(内径15.4cm、PVC製)と集束体との間を、90分、35℃の遠心接着により膜シールした。さらに、このカートリッジケースをハウジング内にシール材を介して着脱自在に収納して中空糸型膜モジュールを形成した。これを、最高水圧200kPaで温度50℃の水の濾過運転と逆圧濾過を50000サイクル繰り返し行った。結果、膜シール材部分や中空糸膜に破損は生じなかった。
比較例7:
表1に示す主剤と硬化剤の組み合わせのうち、比較例3の組み合わせによる組成物を用いた以外は、前記の実施例12と同様にして中空糸型膜モジュールを形成し、前記の実施例12と同様に濾過運転と逆圧濾過を50000サイクル繰り返し行った。結果、中空糸膜の破損(切れ)が生じた。
本発明における中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材は、前記のとおり、様々な硬度範囲における柔軟性、並びに、高伸度化を併せ有することから、中空或いは平膜状繊維分離膜とシール材との界面にかかる負荷を軽減して中空糸の切れを防止できるといった優れた性能を具備することができる。従って、中空或いは平膜状繊維分離膜を用いた医療用、工業用分離装置における中空或いは平膜状繊維分離膜の結束材として好適に使用することが可能である。これらの医療用、工業用分離装置としては、具体的には、血漿分離器、人工肺、人工腎臓、人工肝臓、家庭用・工業用水処理装置等が挙げられる。
なお、本発明における膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、その属性としての各種物性、例えば硬度、引張り強さ、接着性等に優れていることから、各種の産業用シール材、例えば電気用、自動車用、建築用、土木用シール材或いは各種の緩衝材として、また製紙、製鉄、印刷等の工業用ロール、紙送りロール等のOA機器部品を得るための組成物としても用いることが可能である。

Claims (3)

  1. イソシアネート成分(A)と、ポリオール成分(B)とからなる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物において、ポリオール成分(B)が、分子量50〜200の低分子グリコールを含有せず、かつ炭素数10以下のジオール成分(b−1)とヒマシ油及び/又はヒマシ油脂肪酸(b−2)とからなるジオール変性ヒマシ油(B−1)を用いることを特徴とする、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
  2. 炭素数10以下のジオール成分(b−1)が、分岐鎖を有さない直鎖の炭素数6以下のジオールであることを特徴とする、請求項1に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
  3. 請求項1又は2に記載の形成性組成物を用いることを特徴とする、中空或いは平膜状繊維分離膜を用いたモジュール用膜シール材。
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