JP5477290B2 - 含水素フルオロオレフィン化合物の製造方法 - Google Patents

含水素フルオロオレフィン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体装置の製造分野において有用なエッチング、CVD等のプラズマ反応用ガス、含フッ素ポリマーの原料であるモノマー、あるいは、含フッ素医薬中間体、ハイドロフルオロカーボン系溶剤の原料として有用な含水素フルオロオレフィン化合物の製造方法に関する。
含水素フルオロオレフィン化合物としては炭素数4〜6の化合物が良く知られている。炭素数4〜6の含水素フルオロオレフィン化合物の中で、不飽和の含水素フルオロオレフィン化合物である1H,2H−ヘキサフルオロシクロペンテンを製造する方法が、特許文献1に提案されている。具体的には、1,2−ジハロゲノヘキサフルオロシクロペンテンを出発原料にして、銅、鉄、クロムまたはニッケルを主成分とする触媒下に水素ガスにより還元することにより、1H,2H−ヘキサフルオロシクロペンテンを主生成物として得る方法が開示されている。
一方、飽和の含水素フルオロオレフィン化合物である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタンを製造する方法としては、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを出発原料にして、パラジウムなどを有する担持型触媒存在下、水素により還元する方法が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
また、非特許文献1においてはヘキサフルオロシクロブテンを金属水素化物で処理することにより、1H−ペンタフルオロシクロブテンが得られている。
非特許文献2においてはジクロロヘキサフルオロシクロブタンを水素化リチウムアルミニウムヒドリドにより還元させて得られるヘキサフルオロシクロブタンを、アルカリ処理を施すことにより1H−ペンタフルオロシクロブテンを得ている。
日本国公開特許公報「特開2000−86548号公報(公開日:2000年3月28日)」 日本国公開特許公報「特開2000−226346号公報(公開日:2000年8月15日)」(米国特許第6166276号明細書) 日本国公開特許公報「特開2000−247912号公報(公開日:2000年9月12日)」
G. Fuller et al.,Journal of Chemical Society,3198(1961) M. W. Buxton et al.,Journal of Chemical Society,1177(1954)
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、不飽和の炭素数4〜6の含水素フルオロオレフィン化合物である1H−ポリフルオロシクロアルケン化合物を選択率良く、工業的に製造を可能にする方法を提供することにある。とりわけ本発明の反応においては、少なくともパラジウムを含む触媒の存在下に、水素と接触させることにより望ましくない生成物の副生を抑制しながら、1H−ポリフルオロシクロアルケン化合物を収率良く製造することができる。
前述の特許文献1に記載の方法においては、銅又はニッケルを含む触媒を用いて1H,2H−ヘキサフルオロシクロペンテンを製造した例はあるが、銅又はニッケルを含む触媒を用いると耐熱性に劣るため、触媒自体が耐久性に乏しく、長期の連続反応には向かないという問題がある。
また特許文献2および3は、パラジウムを含む触媒を用いてハロゲンを水素原子に置換するものではあるが、特許文献2においては、触媒の金属量が多いため、飽和体であるヘプタフルオロシクロペンタンが主生成物として得られ、また特許文献2においては、触媒の金属量を抑えているものの、原料に対する水素の割合が高すぎるため、やはり飽和体であるヘプタフルオロシクロペンタンが主生成物として得られてしまう。
また、非特許文献1においては原料に用いるヘキサフルオロシクロブテンがガス状化合物のため、その取り扱いが難しく、溶媒中に溶解させる際に極低温に冷却させる必要があり、工業的に量産には不向きである。非特許文献2においてもヘキサフルオロブタンをアルカリ処理するだけであるので操作は簡便であるが、原料と目的物であるペンタフルオロシクロブテンとの沸点差がほとんど無いがために精製が極めて困難であることから生産性に劣る。
本発明者らは上記課題を解決するために、不飽和の含フッ素ハロゲン化合物を、パラジウム担持量が0.1〜2.5重量%である担持型パラジウム触媒の存在下に、前記不飽和の含フッ素ハロゲン化合物に対し0.1〜3モル当量の水素と気相で接触させると、不飽和の含水素フルオロオレフィン化合物を選択性良く、特に、望ましくない飽和体の副生を抑制しながら製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、パラジウムは地殻内存在量が少なく高価であることから、より生産性を向上させるため、さらなる検討を行った結果、触媒に用いるパラジウムとビスマスの重量比を最適化し、触媒調製時に、200〜350℃の範囲で触媒を水素還元処理すると、パラジウムの担持量を抑えた触媒でも、不飽和の含フッ素ハロゲン化合物から、飽和体の生成を抑制しながら含水素フルオロオレフィン化合物を高選択的に、且つ、より原料転化率よく製造できることを見出した。
〔課題を解決するための手段〕
かくして本発明によれば、式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物を、パラジウム担持量が0.1〜2.5重量%である担持型パラジウム触媒の存在下に、式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物に対し0.1〜3モル当量の水素と気相で接触させて、式(2)で示される含水素フルオロオレフィン化合物を得る製造方法が提供される。
Figure 0005477290
ただし、式(1)中、nは0〜3である整数であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
Figure 0005477290
ただし、式(2)中、nは0〜3である整数である。
さらに、前記担持型パラジウム触媒が、パラジウムとビスマスとの重量比がBi/Pd=0.4〜1.0の範囲であり、且つ、200〜350℃の温度範囲で水素還元処理された触媒であることがより好ましい。
さらに、含フッ素ハロゲン化合物を水素に気相で接触させるときの温度が150℃以上であることがより好ましい。
特に、前記式(2)で示される含水素フルオロオレフィン化合物が1H−ペンタフルオロシクロブテン又は1H−ヘプタフルオロシクロペンテンであるときに本発明の製造方法は好適に採用される。
本発明の製造方法は、前記式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物を、パラジウム担持量が0.1〜2.5重量%である担持型パラジウム触媒の存在下に、式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物に対し0.1〜3モル当量の水素と気相で接触させる方法である。
原料として用いる含フッ素ハロゲン化合物は、式(1)に示すように、Xが塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である含フッ素シクロオレフィン化合物が使用される。例えば、1−クロロトリフルオロシクロプロペン、1−ブロモトリフルオロシクロプロペン、1−ヨードトリフルオロシクロプロペンなどの炭素数3の化合物、1−クロロペンタフルオロシクロブテン、1−ブロモペンタフルオロシクロブテン、1−ヨードペンタフルオロシクロブテンなどの炭素数4の化合物、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン、1−ブロモヘプタフルオロシクロペンテン、1−ヨードヘプタフルオロシクロペンテンなどの炭素数5の化合物、1−クロロノナフルオロシクロヘキセン、1−ブロモノナフルオロシクロヘキセン、1−ヨードノナフルオロシクロヘキセンなどの炭素数6の化合物が挙げられる。これらの中でも、1−クロロペンタフルオロシクロブテン、1−ブロモペンタフルオロシクロブテン、1−ヨードペンタフルオロシクロブテンなどの炭素数4の化合物、1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン、1−ブロモヘプタフルオロシクロペンテン、1−ヨードヘプタフルオロシクロペンテンなどの炭素数5の化合物がより好ましい。
原料として用いる含フッ素ハロゲン化合物は、例えば、米国特許第3024290号公報、米国特許第3567788号公報あるいは、ソビエト連邦特許第383367号公報に記載された方法等に従って製造することができる。これらは、1,2−ジハロゲノテトラフルオロシクロブテン、1,2−ジハロゲノヘキサフルオロシクロペンテン等を出発原料に、フッ化カリウム、あるいはフッ化セシウム等の金属フッ化物と接触させて製造するものである。また、米国特許第4814522号公報に記載された方法のように、パーフルオロシクロオレフィンとクロロフルオロアルケン類を触媒存在下に塩素−フッ素のハロゲン交換により製造することも可能である。
本発明において得られる含水素フルオロオレフィン化合物は式(2)に示されるように、オレフィン部位に水素を持つ化合物である。その具体例としては、1H−トリフルオロシクロプロペン、1H−ペンタフルオロシクロブテン、1H−ヘプタフルオロシクロペンテン、1H−ノナフルオロシクロへキセンが挙げられ、これらの中でも、1H−ペンタフルオロシクロブテン、1H−ヘプタフルオロシクロペンテンがより好ましい。
本発明で用いる水素化反応の触媒は少なくともパラジウムを含むことを特徴とする。パラジウムは担体に担持させた状態で用いる。担体の好適な例としては、活性炭、アルミナ、シリカ、ジルコニア、あるいはチタニア、及びこれらの表面をフッ素化するなど表面処理したものが挙げられ、活性炭及びアルミナが水素化効率のよさから特に好ましい。
本発明の反応形態では気相で水素ガスと接触させるので、粒状のものが好ましい。担体の平均粒径はほとんど反応に影響を及ぼさないが、気相での流動性を確保する観点から、例えば、0.1〜10mm、好ましくは2〜5mmのものが好適に採用される。
担体に用いられる活性炭としては、木材、木炭、椰子殻炭、椰子核炭、素灰などを原料とする植物質系、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭などを原料とする石炭系、石油残渣系、硫酸スラッジ、オイルカーボンなどを原料とする石油系あるいは合成樹脂を原料とするものなどがある。このような活性炭は各種のものが市販されているのでそれらのうちから選んで使用すればよい。
アルミナについても特に限定されないが、一般的にはアルミニウム塩水溶液からアンモニアなどの塩基性物質を用いて生じさせた沈殿を成型・脱水させて得られるアルミナであり、通常、触媒担体用あるいは乾燥用として市販されているγ−アルミナを好ましく採用することができる。
パラジウムの担持量は0.1〜2.5重量%、好ましくは0.2〜2重量%である。担持量が多くなると触媒の活性が高すぎるため、炭素−ハロゲン(フッ素を除く)結合の水素化分解以外に、炭素−炭素二重結合の水素化反応を誘発し、望ましくない生成物が副生する傾向にある。逆に担持量が少ないと、水素化反応の効率が低下するので好ましくない。
また、触媒の活性を調整するために、上記パラジウム触媒に第2成分となる金属を添加し、合金化して使用しても構わない。第2成分となる金属は、銀、銅、金、亜鉛、テルル、亜塩、クロム、モリブデン、タリウム、スズ、ビスマス、鉛、ルテニウム、白金、ロジウム等から選択される。これらは2種以上を混合して添加されても構わない。これら添加金属成分の量はパラジウム100重量部に対し、例えば、0.01〜500重量部、好ましくは0.1〜300重量部、より好ましくは0.1〜50重量部である。
上記の水素化触媒は、例えば、硝酸パラジウム及び塩化パラジウム塩等の金属塩の水溶液と、添加金属塩の水溶液を所望の割合、濃度で混合した後、担体をその水溶液に含浸させ、次いで乾燥し、さらに、例えば100℃〜600℃の高温で処理することにより調製される。この時、必要に応じて水素等の還元性物質を供給しながら行うこともできる。
本発明の製造方法では、前記式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物を、水素と接触させて式(2)で示される化合物を製造する方法において、前記担持型パラジウム触媒が、担体に担持されたパラジウムとビスマスの重量比がBi/Pd=0.4〜1.0であり、且つ、200℃〜350℃の温度範囲で水素還元処理された触媒であることがより好ましい。
前記担持型パラジウム触媒が、パラジウムとビスマスとを含む場合、パラジウムとビスマスとは、合金化された状態で担体に担持させて用いることが好ましい。担体の好適な例としては、活性炭、アルミナ、シリカ、ジルコニア、あるいはチタニア、及びこれらの表面をフッ素化するなど表面処理したものが挙げられ、活性炭及びアルミナが水素化効率のよさから特に好ましい。
前記担持型パラジウム触媒が、パラジウムとビスマスとを含む場合、パラジウムの担持量は、通常0.1〜2.5重量%、好ましくは0.2〜2重量%である。担持量が多くなると触媒の活性が高すぎるため、炭素−ハロゲン(フッ素を除く)結合の水素化分解以外に、炭素−炭素二重結合の水素化反応を誘発し、望ましくない生成物が副生する傾向にある。逆に担持量が少ないと、水素化反応の効率が低下するので好ましくない。
前記担持型パラジウム触媒が、パラジウムとビスマスとを含む場合、ビスマスの使用量はパラジウムに対して重量比で、Bi/Pd=0.4〜1.0、好ましくは0.4〜0.8となるように調製する。ビスマスの使用量がこの範囲であれば、容易に触媒活性を良好な状態に調整できる。
前記の水素化触媒、即ち、パラジウムとビスマスとを含む前記担持型パラジウム触媒は、例えば、硝酸パラジウム又は塩化パラジウム塩等の金属塩の水溶液と、硝酸ビスマス等のビスマス塩の水溶液を所望の割合、濃度で混合した後、担体をその水溶液に含浸させ、次いで乾燥し、さらに、例えば、200℃〜350℃、好ましくは250〜350℃、より好ましくは250〜300℃の温度範囲で水素を供給しながら調製される。この時、水素と接触させる温度を200℃以上とすることで、オレフィンへの水素添加反応を抑制することができ、選択性を向上させ、一方、温度を350℃以下とすることでパラジウム金属のシンタリング(焼結)を抑制し、良好な活性の触媒を得ることができ、原料転化率を向上させることができる。上記の温度範囲で水素還元処理を行うと、パラジウムが担体に均一に分散した状態でビスマスと合金化されると考えられるので、原料の転化率を高く維持しながら、且つ、目的物を選択率良く製造することが可能となる。
本発明の水素化反応の形態としては回分(バッチ)反応、または、原料を連続的に反応器へ供給し、反応生成物を連続的に反応器から抜き出す気相流通反応が採用される。また、本反応ではハロゲン化水素が発生するため、反応器の腐食を回避する観点から、気相流通反応が好適である。使用する反応器に格別な制限はないが、一般的には、回分反応の場合は圧力容器であり、気相流通反応の場合は、カスケード式反応器などの直列に連結した1本以上の反応器である。
含フッ素ハロゲン化合物を水素に気相で接触させるときの温度、即ち、水素化反応時の温度の下限は、通常反応する原料が気化する温度、好ましくは150℃、より好ましくは200℃である。水素化反応時の温度の上限は、例えば、450℃、より好ましくは300℃である。原料と水素との接触時間は、気相流通反応の場合には、例えば、0.1〜300秒、特には0.5〜30秒であり、回分反応(バッチ)の場合には、例えば、0.1〜15時間、好ましくは1〜10時間である。
原料である含フッ素ハロゲン化合物に接触させる水素量は、原料に対して0.1〜3モル当量、好ましくは1〜3モル当量、より好ましくは1.5〜3モル当量である。水素の量が多すぎると、炭素−ハロゲン(フッ素を除く)結合の水素化分解以外に、炭素−炭素二重結合の水素化反応を誘発し、望ましくない生成物が副生する傾向にある。逆に水素量が少ないと、水素化反応の効率が低下するので好ましくない。換言すれば、水素量が原料に対して0.1モル当量以上、3モル当量以下であることにより、望ましくない生成物の副生を抑え、且つ、水素化反応の効率を向上させることができる。
水素化反応の際には発熱を抑制する目的で、希釈剤として不活性ガスを混合しても構わない。希釈ガスとしては、窒素、希ガス、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンから適宜選択して使用することができる。
本反応では炭素−ハロゲン結合の水素化分解に伴い発生する塩化水素などのハロゲン化水素を、反応生成物と一緒に水と接触させることにより除去することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によってその範囲を限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
以下において採用した分析条件は下記の通りである。
ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)
装置:アジレント社製ガスクロマトグラフ質量分析計「HP6890」
カラム:ジーエルサイエンス社製Inert Cap1(登録商標)、長さ60m、内径250μm、膜厚1.50μm
インジェクション温度:150℃
ディテクター温度:250℃
キャリアーガス:窒素(53.0mL/分)
メイクアップガス:窒素(30mL/分)、水素(50mL/分)、空気(400mL/分)
スプリット比:100/1
昇温プログラム:(1)40℃で20分保持し、次いで(2)40℃/分で昇温し、その後(3)250℃で5.25分保持する。
検出器:FID
[触媒調製例1]
ナス型フラスコに活性炭(武田薬品工業社製、製品名「粒状白鷺G2X−4/6」)を100部秤取り、そこに約20%硝酸水溶液を約150部添加して、一晩放置した。別途、ビーカー内で硝酸ビスマス(III)五水和物を0.928部と約30%硝酸水溶液200部を混合し、湯浴中で完全に溶解した。また、別に塩化パラジウム(II)3.33部を24%塩酸50部に溶解し、塩化パラジウム塩酸水溶液を調製した。こうして調製した硝酸ビスマス水溶液と塩化パラジウム溶液を混合した後、混合溶液を活性炭の入った上記フラスコに添加し、2日間室温で静置した。
2日間静置した金属含浸活性炭をろ過分離後、ロータリーエバポレーターにてバス温を150℃まで上げて減圧乾燥させた。次いで、乾燥させた金属含浸活性炭を反応管(1インチ×300mm)に充填し、窒素を200ml/minの流量で流しながら、150℃から300℃まで50℃刻みに昇温して焼成した。300℃で1時間焼成後、窒素を水素に切り替え、300ml/minの流量で流しながら還元を行い、触媒を調製した。パラジウム、ビスマスの担持量はそれぞれ活性炭重量の2%、0.2%である。
[触媒調製例2]
調製例1と同様にしてパラジウムとビスマスがそれぞれ活性炭重量の4.5%、0.5%である触媒を調製した。
[実施例1]
水素化触媒として、パラジウム担持量が2%、担体が炭素である担持型パラジウム触媒(2%Pd/C、NEケムキャット社製)0.25gを3/8インチ×20cmのSUS316製反応管に充填し、窒素100ml/minで30分、次いで、水素200ml/minを導入しながら200℃まで昇温した。反応管が設定温度に到達したら、水素導入量を49ml/min(原料に対する水素の量=2モル当量)に設定し、原料である1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを、ポンプを使って、13g/hの速度で反応管の上部より気化させながら供給を行い、8時間反応を行った。反応管から出てくるガスは水中にバブリングさせて副生塩化水素を除去し、続いてエタノール/ドライアイス浴に浸したガラス製トラップに補集した。内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、目的物である1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(沸点46℃;表1中は「7F−CPE」)が49.8%、原料である1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン(沸点56℃)が31.6%、副生成物である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(沸点82℃;表1中は「7F−CPA」)が18.0%と、1,3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点74℃;表1中は「6F−CPE」)が0.1%と、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロペンタン(沸点88℃;表1中は「6F−CPA」))が0%とその他の化合物が0.5%とが含まれていた。尚、本実施例において各生成物の割合(%)は、ガスクロマトグラフィーのピーク面積から算出される、各ピークの面積%である。結果を表1に示す。
[実施例2〜6、比較例1〜3]
触媒の種類と量、水素量、及び反応温度を表1に示す通りに変更した以外は実施例1と同様にして反応させ、分析を行った。結果を表1に示す。
Figure 0005477290
これらの結果から、目的物である1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロペンテンが選択的に得られることが判った。尚、目的物である1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロペンテンと原料及び副生成物は精密蒸留によって分離することが可能である。
[実施例7]
水素化触媒として、触媒調製例1で作成したパラジウム−ビスマス合金触媒0.5gを3/8インチ×20cmのSUS316製反応管に充填し、窒素100ml/minで30分、次いで、水素200ml/minを導入しながら200℃まで昇温した。反応管が設定温度に到達したら、水素導入量を49ml/min(2mol)に設定し、原料である1−クロロペンタフルオロシクロブテンを、ポンプを使って、10g/hの速度で反応管の上部より気化させながら供給を行い、8時間反応を行った。反応管から出てくるガスは水中にバブリングさせて副生塩化水素を除去し、続いてエタノール/ドライアイス浴に浸したガラス製トラップに補集した。内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、目的物である1,3,3,4,4−ペンタフルオロシクロブテン(沸点26℃)が54.8%、原料である1−クロロペンタフルオロシクロブテン(沸点33℃)が26.4%、副生成物である1,1,2,2,3−ペンタフルオロシクロブタン(沸点51℃)が17.8%及び3,3,4,4−テトラフルオロシクロブテン(沸点50℃)が0.8%含まれていた。
[触媒8の調製]
ナス型フラスコに活性炭(武田薬品工業社製、製品名「粒状白鷺G2X−4/6」)を100部秤取り、そこに約20%硝酸水溶液を約150部添加して、一晩放置した。別途、ビーカー内で硝酸ビスマス(III)五水和物を1.856部と約30%硝酸水溶液200部を混合し、湯浴中で完全に溶解した。また、別に塩化パラジウム(II)0.83部を24%塩酸50部に溶解し、塩化パラジウム塩酸水溶液を調製した。こうして調製した硝酸ビスマス水溶液と塩化パラジウム溶液を混合した後、混合溶液を活性炭の入った上記フラスコに添加し、2日間室温で静置した。
2日間静置した金属含浸活性炭をろ過分離後、ロータリーエバポレーターにてバス温を150℃まで上げて減圧乾燥させた。次いで、乾燥させた金属含浸活性炭を反応管(1インチ×300mm)に充填し、窒素を200ml/分の流量で流しながら、150℃から300℃まで50℃刻みに昇温して焼成した。300℃で1時間焼成後、窒素を水素に切り替え、300ml/分の流量で流しながら還元を行い、触媒を調製した。パラジウムと、ビスマスとの担持量はそれぞれ活性炭重量の0.5%、0.4%である。
[触媒9、10および11の調製]
硝酸ビスマス五水和物と、塩化パラジウムの量を調整した以外は触媒8の調製と同様にしてパラジウムとビスマスがそれぞれ活性炭に対して、表2の重量比の触媒を調製した。
Figure 0005477290
[触媒12の調製]
金属含浸活性炭を300℃で1時間焼成後、反応管の温度を250℃まで下げてから、窒素を水素に切り替えたこと以外は触媒8と同様にして触媒12を調製した。触媒12のパラジウム、ビスマスの担持量はそれぞれ活性炭重量の0.5%、0.4%である。
[触媒13の調製]
水素と接触させる時の温度を150℃に設定した以外は触媒12と同様にして触媒13を調製した。触媒13のパラジウムとビスマスの担持量は、それぞれ活性炭量の0.5%と0.4%である。
[触媒14の調製]
金属含浸活性炭を、300℃で1時間焼成後、反応管の温度を450℃に上げてから、窒素を水素に切り替えたこと以外は、触媒8と同様にして触媒14を調製した。触媒14のパラジウムとビスマスの担持量はそれぞれ0.5%と0.4%である。
[実施例8]
水素化触媒として、3gの触媒8を3/8インチ×20cmのSUS316製反応管に充填し、窒素100ml/分で30分、次いで、水素200ml/分を導入しながら200℃まで昇温した。反応管が設定温度に到達したら、水素導入量を63ml/分(原料に対する水素の量=2.5モル当量)に設定し、原料である1−クロロヘプタフルオロシクロペンテンを、ポンプを使って、13g/hの速度で反応管の上部より気化させながら供給を行い、8時間反応を行った。反応管から出てくるガスは水中にバブリングさせて副生塩化水素を除去し、続いてエタノール/ドライアイス浴に浸したガラス製トラップに補集した。内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、目的物である1,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロシクロペンテン(沸点46℃;表3中は「7F−CPE」)が68.74%、原料である1−クロロヘプタフルオロシクロペンテン(沸点56℃)が10.12、副生成物である1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン(沸点82℃;表3中は「7F−CPA」)が7.46%と、1,3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロシクロペンテン(沸点74℃;表3中は「6F−CPE」)が5.91%と、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロシクロペンタン(沸点88℃;表3中は「6F−CPA」))が5.0%とその他の化合物が2.77%とが含まれていた。尚、本実施例において各生成物の割合(%)は、ガスクロマトグラフィーのピーク面積から算出される、各ピークの面積%である。結果を表3に示す。
[実施例9〜11、比較例4〜6]
触媒の種類と量、水素量、及び反応温度を表3に示す通りに変更した以外は実施例8と同様にして反応させ、分析を行った。結果を表3に示す。
Figure 0005477290
これらの結果から、本発明によれば目的物が選択的に得られることが分かる。尚、目的物と原料及び副生成物は精密蒸留によって分離することが可能である。
一方、パラジウムとビスマスとの重量比がBi/Pd=0.4〜1.0の範囲から外れ、且つパラジウムの担持量が多すぎる場合、前記式(1)で表される含フッ素ハロゲン化合物の還元反応が進行しやすく、アルキル化合物が比較的生成しやすいことが判った(比較例4)。
また、パラジウムとビスマスとの重量比がBi/Pd=0.4〜1.0の範囲内であっても、触媒の還元温度が低すぎる場合はアルキル化合物が生成しやすいことが判った(比較例5)。触媒還元温度が高すぎると、パラジウム金属のシンタリング(焼結)により、活性炭上の細孔が閉塞し、有効な表面積が減少すると考えられるため、原料転化率の低下を招いた(比較例6)。
本発明に係る製造方法は、半導体装置の製造分野に適用できる。

Claims (3)

  1. 式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物を、パラジウム担持量が0.1〜2.5重量%である担持型パラジウム触媒であって、パラジウムとビスマスとの重量比がBi/Pd=0.4〜1.0の範囲であり、且つ、200〜350℃の温度範囲で水素還元処理された触媒の存在下に、式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物に対し0.1〜3モル当量の水素に気相で接触させて、式(2)で示される含水素フルオロオレフィン化合物を得る製造方法。
    Figure 0005477290
    ただし、式(1)中、nは0〜3である整数であり、Xは塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
    Figure 0005477290
    ただし、式(2)中、nは0〜3である整数である。
  2. 含フッ素ハロゲン化合物を水素に気相で接触させるときの温度が150℃以上である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記式(2)で示される含水素フルオロオレフィン化合物が1H−ペンタフルオロシクロブテン又は1H−ヘプタフルオロシクロペンテンである、請求項1記載の製造方法。
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