JP2526661B2 - フルオロアルキルビニル化合物の製造法 - Google Patents

フルオロアルキルビニル化合物の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、フルオロアルキルビニル化合物の製造法に
関する。
[従来の技術] 従来、ビニルハライドの還元脱ハロゲン反応によりビ
ニル化合物を合成する場合、目的の反応のみを選択的に
行える金属試薬、例えば水素リチウム[ジャーナル・オ
ブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(J.Am.C
hem.Soc.),1973,95,6452−4参照]、金属ナトリウム
[ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサ
イエティ(J.Am.Chem.Soc.),1968,90,3549参照]、お
よびグリニヤル試薬[ジャーナル・オブ・オーガノメタ
リック・ケミストリー(J.Orgmetal.Chem.),1976,113,
107−113参照]などが用いられている。しかし、これら
物質は、高反応性であり危険を伴う点と廃棄物処理の点
から、工業的に好ましいものではない。
これに対して、パラジウム触媒を使用し、水素による
反応を行なうことが考えられる(米国特許第2,697,124
号参照)。米国特許第2,697,124号においては、使用原
料は飽和フルオロハロゲン化炭素であり、また、選択的
にただ一種類のみの生成物を期待しているものではな
い。
ビニルハライドを原料とし、パラジウム触媒を使用し
た場合、通常、2重結合への水素付加反応が選択的に起
こることが知られている[イズベスチア・アカデミ・ナ
ウク・エスエスエスアール・セリヤ・キミチェスカヤ
(Izv.Akad.NaakSSSR,Ser.Khim.),1983,(12),2775−
81参照]。
そのため、2重結合への水素付加反応を押さえ、還元
脱ハロゲン反応の選択性を増すため、気相接触反応によ
る方法が提案されている(米国特許第2,802,887号およ
び特公昭第46−2324号公報参照)。しかし、米国特許第
2,802,887号および特公昭第46−2324号公報において
は、原料はCClF=CF2であり、目的物は三フッ化エチレ
ン(CHF=CF2)に限っている。また、副反応、例えば水
素の2重結合への付加反応を制御するために、接触時間
および温度などの反応条件を厳密に制御する必要があ
る。加えて、反応条件の制御が充分であっても、目的物
の収率は低い。
[発明が解決しようとする課題] 本発明の目的は、危険な高反応性試薬の使用および反
応条件の精密な制御を必要とせず、収率が高いフルオロ
アルキルビニル化合物の製造法を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明の要旨は、一般式: RfCF=CHX (I) または RfCF=CX2 (II) [式中、Rfは炭素数1〜10のフルオロアルキル基、Xは
塩素、臭素またはヨウ素を示す。] で表わされるフルオロアルキルビニルハライドを触媒存
在下、水素と反応させることからなる、 一般式: RfCF=CH2 (III) [式中、Rfは前記と同意義。] で表わされるフルオロアルキルビニル化合物の製造法に
存する。
フルオロアルキルビニルハライドのフルオロアルキル
基Rfは、直鎖あるいは分岐状のいずれのものであっても
よい。Rf基に含有されるフッ素原子数は、通常、Rf基の
炭素数以上、好ましくは炭素数の2倍以上である。Rf基
は、例えば、CF3−、CF3(CF2−、CF3(CF2
−、HCF2−、H(CF2−、(CF3)、CFCF2−等で
ある。
フルオロアルキルビニルハライド(I)の具体例は、 H(CF23CF=CHCl、 H(CF23CF=CHIおよび CF3CF=CHCl であり、 フルオロアルキルビニルハライド(II)の具体例は、 H(CF23CF=CCl2、 H(CF23CF=CI2および CF3CF=CCl2 である。
水素の量は、フルオロアルキルビニルハライド1モル
に対して通常0.1〜10モル、好ましくは0.5〜1.5モルで
ある。
触媒は、パラジウムであることが好ましく、通常、活
性炭の担体に担持させたものである。担持触媒の量は、
フルオロアルキルビニルハライド1重量部に対して0.01
〜0.1重量部である。
反応において、媒体を使用してもしなくてもどちらで
もよいが、媒体を使用することが好ましい。媒体は、通
常、水であるが、あるいはアルコールなどの有機溶媒で
あってもよい。媒体の量は、フルオロアルキルビニルハ
ライドの0.3〜20倍容量である。
反応系中に生成するハロゲン化水素を除くため、塩基
性物質、例えば、苛性ソーダ、苛性カリ、アミン類等を
使用してもよい。
本発明の方法は、通常、回分式または流通式、好まし
くは回分式で行う。回分式において、水素の供給は反応
中の吹き込みあるいは反応前の加圧状態での仕込みによ
って行える。水素は、窒素等の不活性ガスで希釈しても
よい。反応温度は、通常5〜200℃、好ましくは10〜150
℃である。反応圧力は、通常0.5〜50気圧、好ましくは
1〜10気圧である。反応時間は、流通式において1〜30
秒、回分式において1〜30時間である。
反応器の材質は、通常のものが使用でき、例えばガラ
ス、鉄、ニッケル、あるいはこれらを主成分とする合金
等が挙げられる。
生成物の回収および未反応物の分離は通常の方法が採
用できる。例えば、反応後、分留した有機物層を、残存
する酸分を除くため水洗し、分留により生成物および未
反応物を分離回収することができる。
[発明の効果] 本発明の方法によれば、反応条件の精密な制御の必要
なく、フルオロアルキルビニル化合物が良好な収率で得
られる。
[発明の好ましい態様] 以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に
説明する。
実施例1 撹拌機および温度計を備えた50mlフラスコに、H(CF
23CF=CHCl4.61g(0.02モル)、0.5%パラジウム−カ
ーボン担持触媒0.3g、KOH1.12g(0.02モル)および水5m
lを仕込み、内部を水素で置換した後、室温(25℃)で
ガスビューレットにより1気圧に保った水素ガスを通
じ、6時間反応した。水素は反応系に520cc吸収され
た。反内後、有機物層をガスクロマトグラフィー(Pora
pak Type Q)で分析したところ、転化率は85.0mol%
で、H(CF23CF=CH2の選択率は95.9mol%であった。
副生物はH(CF23CHFCH3であった。
実施例2 撹拌機および温度計を備えた50mlフラスコに、H(CF
23CF=CHCl4.61g(0.02モル)、5%パラジウム−カ
ーボン担持触媒0.3g、KOH1.12g(0.02モル)および水5m
lを仕込み、内部を水素で置換した後、室温(25℃)で
ガスビューレットにより1気圧に保った水素ガスを通
じ、9時間反応した。水素は480cc吸収された。反応
後、有機物層をガスクロマトグラフィー(Porapak Type
Q)で分析したところ、転化率は73.4mol%で、H(C
F23CF=CH2の選択率は90.2molであった。副生物はH
(CF23CHFCH3であった。
実施例3 撹拌機および温度計を備えた50mlフラスコに、H(CF
23CF=CCl245mol%とH(CF23CF=CHCl55mol%の混
合物4.92g(0.02モル)、0.5%パラジウム−カーボン担
持触媒0.3g、KOH1.63g(0.03モル)および水5mlを仕込
み、内部を水素で置換した後、室温(25℃)でガスビュ
ーレットにより1気圧に保った水素ガスを通じ、10時間
反応した。水素は780cc吸収された。反応後、有機物層
をガスクロマトダラフィー(Porapak Type Q)で分析し
たところ、転化率は81.0mol%で、H(CF23CF=CH2
選択率は93.2mol%であった。副生物はH(CF23CHFCH
3であった。
実施例4 撹拌機および温度計を備えた50mlフラスコに、H(CF
23CF=CHI(ビニル体)75mol%とH(CF24CH2I(飽
和体)25mol%の混合率8.72g(ビニル体0.02モル)、0.
5%パラジウム−カーボン担持触媒0.3g、KOH1.12g(0.0
2モル)および水5mlを仕込んだ。内部を水素で置換した
後、室温(25℃)でガスビューレットにより1気圧に保
った水素ガスを通じ、10時間反応した。水素は510cc吸
収された。反応後、有機物層をガスクロマトグラフィー
(Porapak Type Q)で分析したところ、飽和体は反応せ
ず、ビニル体の転化率は79.0mol%で、H(CF23CF=C
H2の選択率は87.5mol%であった。副生物はH(CF23C
HFCH3であった。
実施例5 内径19mm、長さ650mmのステンレス製反応管に0.5%パ
ラジウム−カーボン担持触媒45gを充填したところ、充
填長は約400mmとなった。これを150℃に加熱して、H
(CF23CF=CHClと水素とをモル比1:1で接触時間が約1
5.0秒となるように供給して、反応させた。反応生成物
をドライアイスとメタノールの混合物により冷却された
コールド・トラップで補集し、苛性ソーダ水溶液で洗浄
した。有機物層を、ガススロマトグラフィー(Porapak
Type Q)で分析したところ、転化率は73.7mol%で、H
(CF23CF=CH2の選択率は88.6mol%であった。副生物
は、H(CF23CHFCH3であった。
比較例1 撹拌機および温度計を備えた200mlオートクレーブ
に、CClF=CF22.33g(0.02モル)、0.5%パラジウム−
カーボン担持触媒0.3g、KOH1.12g(0.02モル)および水
5mlを仕込み、室温(25℃)に保った。このときのオー
トクレーブの内圧は6.5気圧であった。そのまま水素ガ
スで9気圧まで加圧し、2時間反応した。反応後、オー
トクレーブ内ガスをガスクロマトグラフィー(Porapak
Type Q)で分析したところ、転化率は61.5mol%で、CHF
=CF2の選択率は30.2mol%であった。副生物はCH2FCHF2
およびCH3CHF2であった。
以上のように、実施例1〜5においてはフルオロビニ
ルの収率が高いが、一方、比較例1においては収率は低
い。これは、本発明において原料ビニル化合物がRf基を
含有するのに対して、比較例1において原料ビニル化合
物がRf基を含有せず、置換される塩素と結合する炭素が
フッ素に結合しているためであると考えられる。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式: RfCF=CHX (I) または RfCF=CX2 (II) [式中、Rfは炭素数1〜10のフルオロアルキル基、Xは
    塩素、臭素またはヨウ素を示す。] で表わされるフルオロアルキルビニルハライドを触媒存
    在下、水素と反応させることからなる、 一般式: RfCF=CH2 (III) [式中、Rfは前記と同意義。] で表わされるフルオロアルキルビニル化合物の製造法。
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