JP7070220B2 - 2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンの製造方法、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンの製造方法、2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの製造方法、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法 - Google Patents

2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンの製造方法、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンの製造方法、2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの製造方法、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンの製造方法、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンの製造方法、2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの製造方法、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法に関する。
1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(CHCl=CF-CHF。HCFO-1233yd。以下、1233ydとも記す。)は、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパンや1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパンに代わる、地球温暖化係数(GWP)の小さい化合物であり、各種用途(例えば、洗浄剤、冷媒、熱媒体、発泡剤、溶剤)に適用可能である。
なお、本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。また、略称として、ハイフン(-)より後ろの数字およびアルファベット小文字部分だけ(例えば、「HCFO-1233yd」においては「1233yd」)を用いる場合がある。
1233ydの製造例としては、特許文献1において、3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパンを脱フッ化水素反応させる方法が開示されている。
国際公開第2016/136744号
一方で、特許文献1に記載の方法では、1233ydが得られるものの、1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピンなどの不純物の生成量が多いという問題があり、新たな製造方法の開発が求められていた
本発明者らは、1233ydの合成方法を検討したところ、合成中間体として、2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペン(CHF-CCl=CH。1242xf)が有用であることを知見した。
本発明は、1242xfを効率よく製造し得る、1242xfの製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できるのを見出した。
(1) 後述する式(1)で表される化合物を水素還元反応させて2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンを製造する、2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンの製造方法。
(2) 触媒の存在下にて反応を行う、(1)に記載の製造方法。
(3) 50℃以上の条件下にて反応を行う、(1)または(2)に記載の製造方法。
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の製造方法にて製造された2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンとフッ化水素とを反応させて、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンを得ることを特徴とする、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンの製造方法。
(5) (4)に記載の製造方法にて製造された2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンを脱塩化水素反応させて2,3,3-トリフルオロプロペンを得ることを特徴とする、2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
(6) (5)に記載の製造方法にて製造された2,3,3-トリフルオロプロペンと塩素とを反応させて、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンを得ることを特徴とする、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの製造方法。
(7) (6)に記載の製造方法にて製造された1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンを脱塩化水素反応させて1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンを得ることを特徴とする、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
本発明によれば、1242xfを効率よく製造し得る、1242xfの製造方法を提供できる。
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
1233ydは二重結合上の置換基の位置により、幾何異性体であるZ体とE体が存在する。本明細書中では特に断らずに化合物名や化合物の略称を用いた場合には、Z体およびE体から選ばれる少なくとも1種を示し、より具体的には、Z体もしくはE体、または、Z体とE体の任意の割合の混合物を示す。化合物名や化合物の略称の後ろに(E)または(Z)を付した場合には、それぞれの化合物の(E)体または(Z)体を示す。例えば、1233yd(Z)はZ体を示し、1233yd(E)はE体を示す。
本発明の1242xfの製造方法は、式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」とも記す。)を水素還元して1242xfを製造する方法である。つまり、化合物1と水素とを反応させる方法である。
式(1) CHF-CCl=CClX
Xは、水素原子または塩素原子を表す。
本発明の製造方法において、上記化合物1を原料とする。化合物1は、公知の方法により合成できる。CFCCl=CHClの製造方法の具体例としては、1,1-ジクロロ-2,3-ジフルオロシクロプロパンを熱分解して副生成物として得る方法が挙げられる(Journal of Fluorine Chemistry,Volume15,Issue6,Pages 497-509,Journal,1980)。
本発明の製造方法における、化合物1の水素還元反応は、液相反応および気相反応のいずれでもよい。液相反応とは、液体状態の化合物1を水素還元反応させることをいう。また、気相反応とは、気体状態の化合物1を水素還元反応させることをいう。
上記反応(液相反応、気相反応)において、使用される化合物1に対する使用される水素のモル比(水素のモル量/化合物1のモル量)は、1242xfの収率および選択率の点から、0.1~10が好ましく、0.5~2.0がより好ましい。
上記反応は、バッチ式で行ってもよいし、半連続式、連続流通式で行ってもよい。
反応器の材質の具体例としては、ガラス、鉄、ニッケル、ステンレス鋼が挙げられる。
上記反応における好適態様の1つとしては、触媒存在下にて上記反応を行う態様が挙げられる。触媒存在下での反応は、気相反応および液相反応のいずれでも行うことができる。
触媒は、化合物1の水素還元反応を効率よく進めることが可能な触媒であればよく、例えば、金属触媒が挙げられる。
金属触媒としては、鉄、ルテニウム、オスミウムなどの8族元素、コバルト、ロジウム、イリジウムなどの9族元素、および、ニッケル、パラジウム、白金などの10族元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含む触媒が好ましい。これらの元素は、1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
8~10族元素の中では、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウムなどの白金族元素を含む触媒が好ましく、パラジウムを含む触媒(以下、単に「パラジウム触媒」とも記す。)がより好ましい。
パラジウム触媒は、担体に担持して用いることが好ましい。パラジウム触媒は、パラジウム単体のみならず、パラジウム合金であってもよい。また、パラジウムと他の金属との混合物を担持させた触媒や、パラジウムと他の金属とを担体に別々に担持させた複合触媒であってもよい。パラジウム合金としては、パラジウム/白金合金やパラジウム/ロジウム合金などが挙げられる。
触媒としては、パラジウムやパラジウム合金のみを担体に担持させた触媒、パラジウムとパラジウム以外の他の金属とを担体に担持させた触媒が好ましい。
パラジウム以外の他の金属の具体例としては、第8族元素(鉄、ルテニウム、オスミウムなど)、第9族元素(コバルト、ロジウム、イリジウムなど)、第10族元素(ニッケル、白金など)が挙げられる。
他の金属は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他の金属の割合は、パラジウム100質量部に対して、0.01~50質量部が好ましい。
担体の具体例としては、活性炭、金属酸化物(アルミナ、ジルコニア、シリカなど)が挙げられ、活性、耐久性、反応選択性の点から、活性炭が好ましい。
活性炭の具体例としては、植物原料(木材、木炭、果実殻、ヤシ殻など)から得られた活性炭、鉱物質原料(泥炭、亜炭、石炭など)から得られた活性炭が挙げられ、触媒耐久性の点から、植物原料から得られた活性炭が好ましく、ヤシ殻活性炭がより好ましい。
活性炭の形状の具体例としては、長さ2~10m程度の成形炭、4~50メッシュ程度の破砕炭、粒状炭が挙げられ、活性の点から、4~20メッシュの破砕炭、長さ2~5mmの成形炭が好ましい。
パラジウムの担持量は、活性炭100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~1質量部がより好ましい。
触媒を用いた気相反応の具体的な手順としては、ガス状態に加熱された原料である化合物1と水素とを反応器内に連続的に供給して、反応器に充填された上記触媒と、ガス状態の化合物1および水素とを接触させて、1242xfを得る手順が挙げられる。
なお、副生物の抑制や触媒失活の抑制に有効である点から、反応においてNなどの不活性ガスを用いてもよい。
気相反応における反応温度は、反応活性および1242xfの選択率の点から、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましく、400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。
気相反応における反応系の圧力は、0~0.2MPaであることが好ましい。
気相反応における反応時間は、反応収率および製造効率の点から、1~6000秒間が好ましく、10~1500秒間がより好ましい。なお、反応時間は、反応器内での原料の滞留時間を意味する。
また、金属触媒を用いた液相反応の具体的な手順としては、化合物1および水素の一方と触媒との混合物が液体状態として存在する反応器内に、連続的または非連続的に化合物1および水素の他方を供給し、反応によって生成する1242xfを反応器内から連続または非連続的に抜き出す手順が挙げられる。
液相反応における反応温度は、反応収率および1242xfの選択率の点から、20℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
液相反応における反応時間は、反応収率および製造効率の点から、0.5~50時間が好ましく、1~10時間がより好ましい。なお、反応時間は、反応器内での原料の滞留時間を意味する。
液相反応は、必要に応じて、溶媒の存在下にて実施してもよい。溶媒としては、水素に不活性な化合物であればよく、例えば水等が挙げられる。
化合物1と水素との反応により、目的物である1242xfの他に3,3-ジフルオロプロペン(HFO-1252zf)、2-クロロ-1,1-ジフルオロプロパン(HCFC-262db)、1,1-ジフルオロプロパン(HFC-272fb)等が副生物として得られる。上記反応により得られた生成物を、後述の253bbの製造原料としてそのまま用いてもよく、蒸留等の公知の方法により精製された1242xfを後述の253bbの製造原料として用いてもよい。1242xfを精製後の残液には、通常未反応の化合物1が含まれているため、1242xfの製造原料として再利用することが好ましい。その際には、1242xf精製後の残液をそのまま用いてもよい。1242xf精製後の残液には、1252zf、262db、272fb、1242xf等が含まれる。
製造された1242xfは、1233ydの合成中間体として有用である。以下、1242xfを用いて1233ydを合成するまでの方法を詳述する。
まず、1242xfとフッ化水素とを反応させて、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパン(CHFCClFCH。253bb)が得られる(以下スキーム参照)。
Figure 0007070220000001
上記1242xfとフッ化水素との反応は、液相反応および気相反応のいずれでもよい。なお、液相反応とは、液体状態の1242xfをフッ化水素と反応させることをいう。また、気相反応とは、気体状態の1242xfをフッ化水素と反応させることをいう。
上記反応(液相反応、気相反応)において、使用される1242xfに対する使用されるフッ化水素のモル比(フッ化水素のモル量/1242xfのモル量)は、反応収率および製造効率の点から、0.5~100が好ましく、1~50がより好ましい。
液相反応の際には、必要に応じて、触媒存在下にて上記反応を実施してもよい。
触媒の具体例としては、アンチモン、スズ、タリウム、鉄、チタン、タンタルなどの金属ハロゲン化物が挙げられる。より具体的には、SbCl、SbCl、SbF、SnCl、TiCl、FeClが挙げられる。
液相反応の手順としては、フッ化水素および1242xfの一方と触媒との混合物が液体状態として存在する反応器内に、連続的または非連続的にフッ化水素および1242xfの他方を供給し、反応によって生成する253bbを反応器内から連続または非連続的に抜き出す手順が挙げられる。
液相反応における反応温度は、反応収率および253bbの選択率の点から、20~200℃が好ましく、30~150℃がより好ましい。
液相反応における反応時間は、反応収率および製造効率の点から、0.5~50時間が好ましく、1~10時間がより好ましい。
液相反応における反応系の圧力は、反応収率および装置コストの点から、0.1~3.0MPaが好ましく、0.2~2.0MPaがより好ましい。
液相反応は、必要に応じて、溶媒の存在下にて実施してもよい。
気相反応の際にも、必要に応じて、触媒存在下にて上記反応を実施してもよい。
触媒の具体例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、クロミアなどの金属酸化物触媒や、アンチモン、スズ、タリウム、鉄、チタン、タンタルなどの金属ハロゲン化物や、活性炭や金属酸化物などの単体にアンチモン、スズ、タリウム、鉄、チタン、タンタルなどの金属ハロゲン化物を担持した触媒が挙げられる。
気相反応の手順としては、ガス状態に加熱された原料である1242xfとフッ化水素とを反応器内に連続的に供給して、反応器に充填された上記触媒と、ガス状態の1242xfおよびフッ化水素とを接触させて、253bbを得る手順が挙げられる。
なお、副生物の抑制や触媒失活の抑制に有効である点から、反応においてNなどの不活性ガスを用いてもよい。
気相反応における反応温度は、反応活性および253bbの選択率の点から、50~700℃が好ましく、50~600℃がより好ましく、50~400℃がさらに好ましく、100~300℃が特に好ましい。
なお、気相反応の場合、原料である1242xfをプレヒートした後、反応に供してもよい。プレヒートの温度は、原料を効率的に気化する点から、80~400℃が好ましく、150~400℃がより好ましい。
気相反応における反応時間は、反応収率および製造効率の点から、1~6000秒間が好ましく、60~1500秒間がより好ましい。なお、気相反応の反応時間は、反応器内での原料の滞留時間を意味する。
上記反応(液相反応、気相反応)において、使用される1242xfに対する使用される触媒のモル比(触媒のモル量/1242xfのモル量)は、反応収率および253bbの選択率の点から、0.0001~1.0が好ましく、0.001~0.1がより好ましい。
次に、253bbを脱塩化水素反応させて、2,3,3-トリフルオロプロペン(CHFCF=CH。1243yf)が得られる(以下スキーム参照)。
Figure 0007070220000002
上記253bbの脱塩化水素反応は、液相反応および気相反応のいずれでもよい。なお、液相反応とは、液体状態の253bbを脱塩化水素反応させることをいう。また、気相反応とは、気体状態の253bbを脱塩化水素反応させることをいう。
脱塩化水素反応の好適態様の1つとしては、塩基存在下にて253bbを脱塩化水素反応させる態様が挙げられる。塩基存在下での脱塩化水素反応は、気相反応および液相反応のいずれでも行うことができる。
塩基は、脱塩化水素反応が実行可能な塩基であればよく、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩が挙げられる。
なお、塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
金属水酸化物の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが挙げられる。
金属酸化物の具体例としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。アルカリ金属酸化物の具体例としては、酸化ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属酸化物の具体例としては、酸化カルシウムが挙げられる。
金属炭化塩の具体例としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、または、フランシウムの炭酸塩が挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、または、ラジウムの炭酸塩が挙げられる。
塩基としては、水に対する溶解度が大きく取扱いが容易であり、かつ、反応性が高い点から、金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムがより好ましい。
塩基の使用量は、反応収率および1243yfの選択率の点から、253bbの1モルに対して、0.5~10モルが好ましく、0.5~5.0モルがより好ましく、0.8~3.0モルがさらに好ましい。
253bbと塩基との反応温度は、反応活性および1243yfの選択率の点から、0~100℃が好ましく、10~80℃がより好ましく、15~70℃がさらに好ましい。
253bbと塩基との反応時間は、バッチ式の場合には0.5~50時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。連続式の場合には、0.5~6000秒間が好ましく、1~1500秒間がより好ましい。なお、連続式の場合の反応時間は、反応器内での原料の滞留時間を意味する。
上記塩基を用いると、253bbの脱塩化水素反応が起こる。塩基が反応に関与するためには、253bbと塩基とを物理的に接触させる必要がある。
253bbと塩基とを接触させる方法としては、溶媒に溶解した塩基(すなわち、塩基溶液)と253bb(好ましくは、液体状態の253bb)とを接触させる方法、および、固体状態(好ましくは、粉末状態)の塩基と253bb(好ましくは、気体状態の253bb)とを接触させる方法が挙げられ、反応時間、反応収率、および、1243yfの選択率の点から、前者の方法が好ましい。
塩基溶液を調製するために用いる溶媒としては、所定量の塩基を溶解でき、かつ、脱塩素水素反応に寄与しない溶媒であればよく、水が好ましい。つまり、塩基溶液としては、塩基水溶液が好ましい。
塩基溶液中における塩基の濃度は、塩基溶液全質量に対して、10~50質量%が好ましい。塩基の濃度が10質量%以上であれば、十分な反応速度が得られやすく、2層分離により目的物を分離しやすい。塩基の濃度が50質量%以下であれば、塩基が十分に溶解されやすく、金属塩が析出しにくいため、工業的なプロセスにおいて有利である。塩基溶液中における塩基の濃度は、塩基溶液全質量に対して、20~40質量%がより好ましい。
脱塩化水素反応は、反応速度を上げるために、相間移動触媒の存在下で行うのが好ましい。
相間移動触媒の具体例としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩、スルホニウム塩、クラウンエーテルが挙げられ、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩、スルホニウム塩が好ましく、第4級アンモニウム塩がより好ましい。
第4級アンモニウム塩としては、下式(i)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007070220000003
式(i)中、R11~R14は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基、または、反応に不活性な官能基が結合した1価の炭化水素基を表し、Y は、陰イオンを表す。
11~R14は、それぞれ同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
上記1価の炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基が挙げられ、アルキル基、アリール基が好ましい。上記1価の炭化水素基の炭素数は、4~100が好ましく、6~30がより好ましい。
上記反応に不活性な官能基が結合した1価の炭化水素基中の上記反応に不活性な官能基の具体例としては、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ニトリル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシル基が挙げられる。
式(i)における第4級アンモニウム(R11121314)の具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ-n-プロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、メチルトリ-n-オクチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、セチルベンジルジメチルアンモニウム、セチルピリジニウム、n-ドデシルピリジニウム、フェニルトリメチルアンモニウム、フェニルトリエチルアンモニウム、N-ベンジルピコリニウム、ペンタメトニウム、ヘキサメトニウムが挙げられる。
の具体例としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンが挙げられ、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオンが好ましく、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオンがより好ましく、塩素イオン、臭素イオンがさらに好ましい。
式(i)で表される化合物としては、汎用性および反応性の点から、下記第4級アンモニウム(R11121314)と、下記Y との組合せが好ましい。
第4級アンモニウム(R11121314):テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ-n-プロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、メチルトリ-n-オクチルアンモニウム。
:フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、水酸化物イオン。
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド(TOMAC)が挙げられる。
第4級ホスホニウム塩としては、下式(ii)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007070220000004
式(ii)中、R21~R24は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を表し、Y は、陰イオンを表す。
21~R24は、それぞれ同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
上記1価の炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基が挙げられ、アルキル基、アリール基が好ましい。
上記式(ii)における第4級ホスホニウム(R21222324)の具体例としては、テトラエチルホスホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウム、エチルトリ-n-オクチルホスホニウム、セチルトリエチルホスホニウム、セチルトリ-n-ブチルホスホニウム、n-ブチルトリフェニルホスホニウム、n-アミルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムが挙げられる。
の具体例としては、塩素イオン、フッ素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオンが挙げられ、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンが好ましい。
第4級アルソニウム塩としては、下式(iii)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007070220000005
式(iii)中、R31~R34は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を表し、Y は、陰イオンを表す。
式(iii)中のR31~R34で表される1価の炭化水素基の具体例は、式(ii)中のR21~R24で表される1価の炭化水素基の具体例と同じである。
式(iii)中のY で表される陰イオンの具体例は、式(ii)中のY で表される陰イオンの具体例と同じである。
第4級アルソニウム塩の具体例としては、トリフェニルメチルアルソニウムフロライド、テトラフェニルアルソニウムフロライド、トリフェニルメチルアルソニウムクロライド、テトラフェニルアルソニウムクロライド、テトラフェニルアルソニウムブロマイドが挙げられる。
スルホニウム塩としては、下式(iv)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0007070220000006
式(iv)中、R41~R43は、それぞれ独立して、1価の炭化水素基を表し、Y は、陰イオンを表す。
式(iv)中のR41~R43で表される1価の炭化水素基の具体例は、式(ii)中のR21~R24で表される1価の炭化水素基の具体例と同じである。
式(iv)中のY で表される陰イオンの具体例は、式(ii)中のY で表される陰イオンの具体例と同じである。
スルホニウム塩の具体例としては、ジ-n-ブチルメチルスルホニウムアイオダイド、トリ-n-ブチルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジヘキシルメチルスルホニウムアイオダイド、ジシクロヘキシルメチルスルホニウムアイオダイド、ドデシルメチルエチルスルホニウムクロライド、トリス(ジエチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケートが挙げられる。
クラウンエーテルの具体例としては、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6が挙げられる。
上記した相間移動触媒のうち、工業的入手の容易さ、価格、扱いやすさ、反応性の点から、TBAC、TBAB、TOMACが好ましい。
相間移動触媒の使用量は、253bbの100質量部に対して、0.001~10質量部が好ましく、0.05~5.0質量部がより好ましい。
また、反応系が、水相と有機相とに分離する場合は、相間移動触媒の代わりに、水溶性有機溶媒を反応系中に存在させて、有機相と、塩基を含む水相とを相溶化させてもよく、相間移動触媒と水溶性有機溶媒とを併用してもよい。
水溶性有機溶媒の具体例としては、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、t-ブタノールが挙げられる。
上記反応は、バッチ式で行ってもよいし、半連続式、連続流通式で行ってもよい。
反応器の材質の具体例としては、ガラス、鉄、ニッケル、ステンレス鋼が挙げられる。
塩基存在下にて253bbを脱塩化水素反応させる態様を液相反応で実施した場合は、反応終了後に反応液を放置して、有機相と水相とに分離させてもよい。通常、有機相に1243yfが含まれており、有機相の回収により、1243yfを含む生成物を容易に回収できる。
脱塩化水素反応の他の好適態様の1つとしては、活性炭または金属触媒の存在下にて253bbを脱塩化水素反応させる態様が挙げられる。活性炭または金属触媒の存在下での脱塩化水素反応は、気相反応で行うことができる。
活性炭の比表面積は、反応変換率の向上および副生物の抑制の点から、10~3000m/gが好ましく、20~2500m/gがより好ましく、50~2000m/gがさらに好ましい。活性炭の比表面積は、BET法に準拠した方法で測定される。
活性炭の具体例としては、木炭、石炭、ヤシ殻などから調製された活性炭が挙げられる。より具体的には、長さ2~5mm程度の成形炭、4~50メッシュ程度の破砕炭、粒状炭、粉末炭が挙げられる。
活性炭は、反応に用いる前に充分に乾燥させるのが好ましい。活性炭中の水分量は、活性炭と水分との総量を100質量%とした場合に、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
金属触媒の具体例としては、0価の鉄、0価のコバルト、0価のニッケル、0価のパラジウム、酸化クロム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化ニッケル、フッ化酸化アルミニウム、フッ化酸化クロム、フッ化酸化マグネシウム、酸化フッ化ランタン、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物が挙げられる。
本実施態様においては、活性炭またはアルカリ土類金属フッ化物を用いるのが好ましく、活性炭、BaF2、SrF2、CaF2を用いるのがより好ましい。
活性炭または金属触媒を用いると、253bbの脱塩化水素反応が起こる。活性炭または金属触媒が反応に関与するためには、253bbと活性炭または金属触媒とを物理的に接触させる必要がある。
253bbと活性炭または金属触媒とを接触させる方法としては、活性炭または金属触媒と、気体状態の253bbとを接触させる方法が挙げられる。
具体的な手順としては、ガス状態の253bbを反応器内に連続的に供給して、反応器に充填された活性炭または金属触媒とガス状態の253bbとを接触させて、1243yfを得る手順が挙げられる。生成物を反応器内の気相から回収する場合は、冷却にて生成物を冷却する。必要に応じて、生成物を脱酸塔に通して、塩化水素を取り除く。
なお、副生物の抑制や触媒失活の抑制に有効である点から、反応においてNなどの不活性ガスを用いてもよい。
接触温度(反応温度)は、反応活性および1243yfの選択率の点から、200~700℃が好ましく、350~450℃がより好ましい。
なお、原料である253bbをプレヒートした後、反応に供してもよい。プレヒートの温度は、原料を効率的に気化する点から、80~400℃が好ましい。
接触時間(反応時間)は、反応率や転化率の点から、0.5~1000秒間が好ましく、1~100秒間がより好ましい。
次に、1243yfと塩素とを反応させて、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパン(CHF-CClF-CHCl。243ba)が得られる(以下スキーム)参照)。
Figure 0007070220000007
上記1243yfと塩素との反応は、液相反応および気相反応のいずれでもよい。なお、液相反応とは、液体状態の1243yfと塩素とを反応させることをいう。また、気相反応とは、気体状態の1243yfと塩素とを反応させることをいう。
上記反応(液相反応、気相反応)において、使用される1243yfに対する使用される塩素のモル比(塩素のモル量/1243yfのモル量)は、反応収率および243baの選択率の点から、0.1~10が好ましく、0.5~5がより好ましい。
上記反応は、必要に応じて、光照射下にて行ってもよい。
光照射の際の光の具体例としては、可視光が挙げられる。可視光とは、短波長限界が360~400nm、長波長限界が760~830nmである光である。照射に用いる光の波長は、400~750nmが好ましく、420nm~730nmがより好ましい。
上記光を照射する光源の具体例としては、蛍光灯、白熱灯、LEDライトが挙げられる。蛍光灯や白熱灯から得られる光に含まれる波長400nm未満の光は、フィルタを用いて除いてもよい。
上記反応は、必要に応じて、溶媒の存在下にて実施してもよい。溶媒としては、例えば四塩化炭素、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(R113)、CF(CFCF(ただし、式中nは、3~6の整数を表す。)で表される炭素数5~8の直鎖パーフルオロアルキル化合物、ヘキサクロロアセトンなどのパーハロ化合物が挙げられる。
光を照射する方法としては、反応系に光を照射できる方法であればよい。
反応温度は、反応収率および243baの選択率の点から、-20~50℃が好ましく、-10~30℃がより好ましい。
反応時間は、反応収率および製造効率の点から、0.5~50時間が好ましく、1~10時間がより好ましい。
次に、243baと脱塩化水素反応させて、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(CHF-CF=CHCl。1233yd)が得られる(以下スキーム参照)。
Figure 0007070220000008
上記243baの脱塩化水素反応は、液相反応および気相反応のいずれでもよい。なお、液相反応とは、液体状態の243baを脱塩化水素反応させることをいう。また、気相反応とは、気体状態の243baを脱塩化水素反応させることをいう。
243baの脱塩化水素反応の手順としては、上述した253bbを脱塩化水素反応の手順が挙げられる。具体的には、243baの脱塩化水素反応の手順としては、上述した253bbの脱塩化水素反応の説明の253bbを243baの読み替えた手順が挙げられる。
上記手順によって、1233ydが生成物として得られる。得られる1233ydは、上述したように、1233yd(Z)単独であってもよく、1233yd(E)単独であってもよく、1233yd(Z)と1233yd(E)との混合物であってよい。
得られる1233ydが1233yd(Z)と1233yd(E)との混合物である場合、1233yd(E)の質量に対する、1233yd(Z)の質量の比(1233yd(Z)/1233yd(E))は、2以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、15以上が特に好ましい。上記比の上限は、通常、100である。
1233yd(Z)は1233yd(E)よりも化学的安定性が高いため、1233yd(Z)の質量の比(1233yd(Z)/1233yd(E))が上記下限値以上であれば、各種用途(例えば、洗浄剤、冷媒、熱媒体、発泡剤、溶媒)において使用しやすい。
得られた生成物中には、目的物である1233yd以外に、不純物が含まれ得る。
不純物の具体例としては、未反応の243ba、1233ydがさらに脱弗化水素して生成する1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン、243baが脱フッ化水素して生成する1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペンが挙げられる。
生成物中における1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペンの含有量は、精製効率の点から、生成物全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。上記含有量の下限は、通常、0である。
生成物に不純物が含まれる場合、得られた生成物から、1233ydを分離する処理を実施してもよい。より具体的には、得られた生成物を蒸留して、1233ydを主成分とする留分を得る処理を実施してもよい。なお、ここで「1233ydを主成分」とは、留分中で1233ydの質量が最も多いことを意味し、留分全質量に対して1233ydの含有量が、90質量%以上が好ましく、95質量%がより好ましい。
1233ydと原料である243baとの沸点の差が40~50℃と大きいため、蒸留によって1233ydと243baとを容易に分離できる。一方で、特許文献1に記載の3-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(CHFCFCHCl。HCFC-244ca)を原料として1233ydを得る方法においては、244caと1233ydとの沸点の差が極めて小さいため、生成物中に未反応の244caが残存する際に、両者の分離が困難である。
なお、未反応の243baは、再度原料として再利用できる。その際、生成物から1233ydを分離した後の粗液をそのまま使用してもよいし、粗液から未反応の243baを精製して用いてもよい。
蒸留操作では、充填塔または棚段塔などの蒸留装置できる。なお、複数の不純物から目的化合物である1233ydを効率よく精製、回収するために、例えば、多段蒸留が好ましい。多段蒸留を用いる場合は、その理論段数は30段以上が好ましい。
蒸留操作の際の温度(例えば、蒸留釜の温度)としては、エネルギーコストの点から、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。なお、蒸留操作の際の温度は、1233yd(E)の沸点である48℃以上が好ましい。
以下に、例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(ガスクロマトグラフの条件)
以下の各種化合物の製造において、得られた生成物の組成分析はガスクロマトグラフ(GC)を用いて行った。カラムはDB-1301(長さ60m×内径250μm×厚み1μm、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。
(例1:1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペンから1242xfを合成する方法)
内径1/2インチ、長さ100cmのインコネル600製U字型反応管に、触媒として、ヤシ殻活性炭に対して0.5質量%のパラジウムを担持させた触媒(50mL)を充填し、窒素ガス(150NmL/min)を流しながら、200℃まで昇温した。反応管内を大気圧に維持しながら、反応管通過後の粗ガス中の水分が20ppm以下になるまで触媒を乾燥した。触媒の乾燥終了後、反応管を200℃に加熱し、ガス化させた1,2-ジクロロ-3,3-ジフルオロプロペン(CHF-CCl=CHCl。1232xd)(62.0NmL/min)と、水素(62.0NmL/min)と、窒素(124.0NmL/min)とを供給し、大気圧下で反応させた。反応粗ガスは10質量%水酸化ナトリウム水溶液に流通した。3時間経過後、10質量%水酸化カリウム水溶液中に分離した有機層を回収し、ガスクロマトグラフを用いて、回収した有機層を分析した結果を表1に示す。
表1中、H/1232xd[モル比]は、1232xdの使用量に対する、水素の使用量のモル比を表す。
1232xd転化率は、反応に使用した原料(1232xd)のモル量に対する、反応で消費された原料のモル量の割合(単位:%)を表す。
1242xf選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の1242xfの生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
1252xf選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の1252xf(CHFCH=CH)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
262db選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の262db(CHFCHClCH)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
272fb選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の272fb(CHFCHCH)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
その他選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の上記成分(1242xf、1252zf、262db、272fb)以外の他の成分の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
Figure 0007070220000009
(例2:1242xfから253bbを合成する方法)
撹拌機を設置した内容積200mLのハステロイ製オートクレーブに例1で得られた1242xf(30.1g)と五塩化アンチモン(5.53g)を仕込み、液体窒素浴で冷却した。次いで、オートクレーブ内に減圧下でフッ化水素を67.9g導入した後、内温を50℃から60℃に保ち、内圧0.5MPaで5時間撹拌した。反応終了後、オートクレーブの内温を室温に戻してから、気相部出口のバルブを開放して、反応生成粗ガスを取り出し、これを10質量%水酸化カリウム水溶液中に流通させた。その後、10質量%水酸化カリウム水溶液中に分離した有機層を回収し、ガスクロマトグラフを用いて、回収した有機層を分析した結果を表2に示す。
表2中、HF/1240xf[モル比]は、1242xfの使用量に対する、フッ化水素の使用量のモル比を表す。
SbCl/1242xf[モル比]は、1242xfの使用量に対する、SbClの使用量のモル比を表す。
1242xf転化率は、反応に使用した原料(1242xf)のモル量に対する、反応で消費された原料のモル量の割合(単位:%)を表す。
253bb選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の253bbの生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
254cb選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の254cb(CHFCFCH)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
252ab選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の252ab(CHFCClCH)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
251ab選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の251ab(CHClFCClCH)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
250ab選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の250ab(CHClCClCH)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
その他選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の上記成分(253b、254cb、252ab、251ab、250ab)以外の他の成分の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
Figure 0007070220000010
(例3:253bbから1243yfを合成する方法)
内径1/4インチ、長さ60cmのインコネル600製の気相反応容器に触媒として破砕状活性炭触媒(16mL)を充填し、窒素ガス(40NmL/min)を流しながら400℃まで昇温した。気相反応器内を大気圧に維持しながら、気相反応器通過後の粗ガス中の水分が20ppm以下になるまで触媒を乾燥した。触媒の乾燥終了後、反応器を400℃に加熱し、例2で得られた253bb(45.1mg/min)を80℃に維持した予備加熱器を経由して供給した。
上記気相反応器に供給された253bbは、気相反応器を通過(通過時間:1秒)しながら反応温度400℃の条件下、活性炭触媒に接触することで脱塩酸されて、1243yfとなり、この1243yfを含む反応生成粗ガスを上記気相反応器の取出口から回収した。ガスクロマトグラフを用いて、回収した反応生成粗ガスを分析した結果を表3に示す。
表3中、253bb転化率は、反応に使用した原料(253bb)のモル量に対する、反応で消費された原料のモル量の割合(単位:%)を表す。
1243yf選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の1243yfの生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
その他選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の上記成分(1243yf)以外の他の成分の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
Figure 0007070220000011
(例4:253bbから1243yfを合成する方法)
撹拌機、コンデンサーを設置した内容積200mLのハステロイ製オートクレーブに、例3で得られた253bb(29.7g)と、TBAC(0.891g)と、25%水酸化カリウム(KOH)水溶液(101.6g)とを仕込んだ後、反応温度を65℃から70℃に維持し、14時間撹拌したところで内圧は1.1MPaとなった。コンデンサーの上部から生成物を抜き出し、モレキュラーシーブ3Aを通すことで乾燥し、-78℃に冷却したSUS304製シリンダー中に捕集した有機物を、ガスクロマトグラフを用いて分析した結果を表4に示す。
表4中、TBAC/253bb[質量比]は、253bbの使用量に対する、TBACの使用量の質量比を表す。
KOH/253bb[モル比]は、253bbの使用量に対する、KOHの使用量のモル比を表す。
253bb転化率は、反応に使用した原料(253bb)のモル量に対する、反応で消費された原料のモル量の割合(単位:%)を表す。
1243yf選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の1243yfの生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
1242xf選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の1242xfの生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
その他選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の上記成分(1243yf、1242xf)以外の他の成分の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
Figure 0007070220000012
(例5:1243yfから243baを合成する方法)
容積1Lのガラスフラスコを反応器に、溶媒としてCCl(107g)を仕込み、0℃に冷却した。LEDランプ(三菱電機社製、電球型:LHT15D-G-E39、出力15W)からの可視光を照射しながら、1243yf(20.0g/min)と、塩素ガス(Cl)(10.7g/min)を反応器内に供給した。5時間反応を継続し、1243yfの100g、塩素ガスの53.5gが供給されたことを確認した後、1243yfおよび塩素ガスの供給を停止した。
反応終了後、得られた反応液を20質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、次いで分液操作を行った。静置後、分離した下層から回収した243baを含む有機物を、ガスクロマトグラフを用いて分析した結果を表5に示す。
表5中、Cl/1243yf[モル比]は、1243yfの使用量に対する、塩素ガスの使用量のモル比を表す。
1243yf転化率は、反応に使用した原料(1243yf)のモル量に対する、反応で消費された原料のモル量の割合(単位:%)を表す。
243ba選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の243baの生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
その他選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の上記成分(243ba)以外の他の成分の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
Figure 0007070220000013
(例6:243baから1233ydを合成する方法)
撹拌機、ジムロート冷却器を設置した0.5リットル四つ口フラスコに、原料として243ba(101.2g)と、TBAC(1.01g)とを入れ、フラスコを50℃に加熱した。反応温度を50℃に維持し、40質量%KOH水溶液(127.5g)を30分かけて滴下した。その後、1時間撹拌を続け、有機層を回収した。なお、反応時間は、上記滴下に要した時間と滴下後撹拌を行った時間の合計時間、すなわち1.5時間である。
回収した有機層を水洗した後、ガスクロマトグラフを用いて分析した結果を表6に示す。
表6中、TBAC/243ba[質量比]は、243baの使用量に対する、TBACの使用量の質量比を表す。
KOH/243ba[モル比]は、243baの使用モル量に対する、KOHの使用モル量のモル比を表す。
243ba転化率は、反応に使用した原料(243ba)のモル量に対する、反応で消費された原料のモル量の割合(単位:%)を表す。
1233yd(Z)選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の1233yd(Z)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
1233yd(E)選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の1233yd(E)の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピンの生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
その他選択率は、反応で消費された原料のモル量に対する、生成物中の上記成分(1233yd(Z)、1233yd(E)、1-クロロ-3,3-ジフルオロプロピン)以外の他の成分の生成量(モル量)の割合(単位:%)を表す。
Figure 0007070220000014

Claims (6)

  1. 式(1)で表される化合物を水素還元反応させて2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンを製造し、製造された2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンとフッ化水素とを反応させて、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンを得ることを特徴とする、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンの製造方法。
    式(1) CHF-CCl=CClX
    Xは、水素原子または塩素原子を表す。
  2. 触媒の存在下にて前記水素還元反応を行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 50℃以上の条件下にて前記水素還元反応を行う、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法にて製造された2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンを脱塩化水素反応させて2,3,3-トリフルオロプロペンを得ることを特徴とする、2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
  5. 請求項に記載の製造方法にて製造された2,3,3-トリフルオロプロペンと塩素とを反応させて、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンを得ることを特徴とする、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの製造方法。
  6. 請求項に記載の製造方法にて製造された1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンを脱塩化水素反応させて1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンを得ることを特徴とする、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法。
JP2018148484A 2018-08-07 2018-08-07 2-クロロ-3,3-ジフルオロプロペンの製造方法、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロパンの製造方法、2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法、1,2-ジクロロ-2,3,3-トリフルオロプロパンの製造方法、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペンの製造方法 Active JP7070220B2 (ja)

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