JP5464292B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも操舵トルクに基づいてトルク指令値を演算するトルク指令値演算手段と、ステアリング機構に与える操舵補助力を発生する電動モータと、前記トルク指令値に基づいて電動モータを制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
従来、ステアリング装置として運転者がステアリングホイールを操舵する操舵トルクに応じて電動モータを駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が普及している。
この種の電動パワーステアリング装置では、搭載対象車両が大型化することにより、電動パワーステアリング装置の高出力化が進み、モータトルクが増大すると共に大電流化が加速している。
このように、電動パワーステアリング装置の高出力化が進むと、電動パワーステアリング装置を停止させた状態での手動操舵時に必要な操舵トルクが大きくなって、操舵が困難となる状況となっている。
従来、操舵トルクセンサ等の異常が発生した場合、電動パワーステアリング装置を停止させて安全を確保するようにしていたが、手動操舵に必要な操舵トルクが大きくなりすぎて操舵が困難となっているので、操舵トルクセンサ等の異常が発生した場合でも電動モータを駆動制御して操舵補助力の発生を継続することが望まれている。
このため、従来、操舵トルクセンサが故障した場合に、操舵トルク推定手段で車速信号と操舵角信号とに基づいて操舵トルクを推定し、推定した操舵トルクに基づいて電動機の駆動制御をするようにした電動パワーステアリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許第3390333号公報(第1頁、図2)
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、車速信号と操舵角信号とに基づいて操舵トルクを推定し、推定した操舵トルクに基づいて電動モータの駆動制御をするので、推定した操舵トルクで運転者の手放しなどの操舵状態を正しく認識することができず、ステアリングホイールが勝手に切込んでしまうなど運転者の意に反する操舵状態となって、ただでさえ操舵トルクセンサの故障により電動パワーステアリング装置の異常を表す警報ランプが点灯して運転者に不安感を与えている状態なので、運転者により大きな違和感を与えるという未解決の課題がある。
しかも、操舵トルクの推定に、路面からの反力を考慮していないため、路面摩擦係数が低い路面等のトルク推定モデルで考慮されていない状態に陥ると、正しくトルクを推定することができなくなるという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、路面から実際に発生した反力を考慮して操舵補助力の発生を継続することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて第1のトルク指令値を演算する第1のトルク指令値演算手段と、前記ステアリング機構に与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記トルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵トルク検出手段の異常を検出するトルク検出部異常検出手段と、
車両の左右の車輪回転速度を検出する車輪回転速度検出手段と、
該車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて第2のトルク指令値を演算する第2のトルク指令値演算手段と、
前記トルク検出部異常検出手段で前記トルク検出手段の異常を検出したときに、前記第1のトルク指令値演算手段に代えて、前記第2のトルク指令値演算手段を選択して前記モータ制御手段に第2のトルク指令値を出力する異常時切換手段とを備え、
前記第2のトルク指令値演算手段は、前記車輪回転速度に基づいて前記ステアリング機構に路面側から伝達されるセルフアライニングトルクを推定するセルフアライニングトルク推定手段と、該セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルクにゲインを乗算して前記第2のトルク指令値を演算するゲイン調整手段とを備え、
前記セルフアライニング推定手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した前記左右の車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて、車速に応じた左右の車輪回転速度差ΔVwを算出し、前記左右の車輪回転速度差ΔVwをもとに、セルフアライニングトルク算出マップを参照してセルフアライニングトルクSATiを算出するものであり、
前記セルフアライニングトルク算出マップは、前記左右の車輪回転速度差ΔVwが零である状態では、セルフアライニングトルクSATが“0”であり、前記左右の車輪回転速度差ΔVwが正値となると、セルフアライニングトルクSATが増加し、その後前記左右の車輪回転速度差ΔVwが所定値ΔVw1以上となると、前記左右の車輪回転速度差ΔVwの増加に応じてセルフアライニングトルクSATの増加率が徐々に低下する特性線に設定され、一方、前記左右の車輪回転速度差ΔVwが負値となると、セルフアライニングトルクSATが“0”より左右の車輪回転速度差ΔVwが所定値−ΔVw1となるまでは減少し、前記左右の車輪回転速度差ΔVwが所定値−ΔVw1を越えるとセルフアライニングトルクSATの減少率が徐々に減少する特性曲線に設定されていることを特徴としている。
また、請求項2に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記左右の車輪回転速度差ΔVwは、下記(1)式により求められることを特徴としている。
ΔVw=(VwL−VwR)/{(VwL+VwR)/2}・・・(1)
さらに、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記ゲイン調整手段は、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報に基づいて、前記車輪回転速度検出手段で検出した左右の車輪回転速度に基づいて算出した車速及び車速検出手段で検出した車速の一方に基づいて、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報と前記車輪回転速度検出手段で検出した左右の車輪回転速度と基づいて、あるいは前記車輪回転速度検出手段で検出した左右の車輪回転速度に基づいて調整ゲインを算出し、算出された前記調整ゲインを前記セルフアライニングトルクに乗算して前記第2のトルク指令値を演算することを特徴としている。
本発明によれば、第2のトルク指令値演算手段で、車輪回転速度に基づいてトルク指令値を演算するので、操舵トルク検出手段の異常を検出したときに、路面状況を考慮した正確なトルク検出値を求めることができ、操舵トルク検出手段の故障後も操舵補助制御を運転者に違和感を与えることなく継続することができるという効果が得られる。
本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。 本発明に係るコントローラの具体例を示すブロック図である。 コントローラを構成するセルフアライニングトルク推定部の具体的構成を示すブロック図である。 セルフアライニングトルク初期推定値算出マップを示す特性線図である。 マイクロコンピュータで実行するトルクセンサ異常検出処理手順の一例を示すフローチャートである。 マイクロコンピュータで実行する操舵補助制御処理手順の一例を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態を示すコントローラの具体例を示すブロック図である。 操舵状態感応ゲイン設定部の具体的構成を示すブロック図である。 操舵状態感応ゲイン設定部に適用する操舵状態感応ゲイン算出マップを示す特性線図である。 車速感応ゲイン設定部に適用する車速感応ゲイン算出マップを示す特性線図である。 セルフアライニングトルクゲイン設定部の具体的構成を示すブロック図である。 図11のセルフアライニングトルク演算部の具体的構成を示すブロック図である。 図11のゲイン算出部に適用するセルフアライニングトルクゲイン算出マップを示す特性線図である。 駆動輪スリップゲイン設定部の具体的構成を示すブロック図である。 駆動輪スリップゲイン設定部に適用する駆動輪スリップゲイン算出マップを示す特性線図である。 トルク制限値設定部に適用する車速制限値算出マップ及びモータ角速度制限値算出マップを示す特性線図である。 左側車輪のタイヤ径が大きい場合の車輪車両挙動を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態のマイクロコンピュータで実行する操舵補助制御処理手順の一例を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施形態を示すセルフアライニングトルク推定部の具体的構成を示すブロック図である。 実際のセルフアライニングトルクに対するセルフアライニングトルク初期推定値のヒステリシス特性を示す特性線図である。 本発明の第4の実施形態を示すコントローラのブロック図である。 第4の実施形態におけるセルフアライニングトルク推定部の具体例を示すブロック図である。 車両横滑り角算出マップを示す特性線図である。 セルフアライニングトルク初期推定値算出マップを示す特性線図である。 第3の実施形態を第2の実施形態に適用した場合の全体構成図である。 第4の実施形態を第2の実施形態に適用した場合の全体構成図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に一実施形態を示す概略構成図であって、図中、SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、2つのヨーク4a,4bとこれらを連結する十字連結部4cとで構成されるユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5に伝達され、さらに、2つのヨーク6a,6bとこれらを連結する十字連結部6cとで構成されるユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構8で車両幅方向の直進運動に変換されて左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって転舵輪WL,WRを転舵させる。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速機構11と、この減速機構11に連結された操舵補助力を発生する電動機としての例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
また、減速機構11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内に操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を非接触の磁気センサで検出するように構成されている。
そして、操舵トルクセンサ14から出力される操舵トルク検出値Tは、図2に示すように、コントローラ15に入力される。このコントローラ15には、操舵トルクセンサ14からのトルク検出値Tの他に車速センサ16で検出した車速Vs、電動モータ12に流れるモータ電流Iu〜Iw及びレゾルバ、エンコーダ等で構成される回転角センサ17で検出した電動モータ12の回転角θ及び車輪回転速度センサ18L,18Rで検出した車両の左右の車輪回転速度VwL及びVwRも入力される。
コントローラ15では操舵トルクセンサ14が正常である状態では、入力されるトルク検出値T及び車速検出値Vsに応じた操舵補助力を電動モータ12で発生させる電流指令値としての第1の操舵補助トルク指令値Iref1を算出し、算出した操舵補助トルク指令値Iref1に対して回転角θに基づいて算出するモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいて各種補償処理を行ってから電動モータ12を駆動制御する。また、操舵トルクセンサ14が異常であるときには、左右の従動輪の車輪回転速度VwL及VwRに基づいて第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出し、この第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて電動モータ12を駆動制御する。
すなわち、コントローラ15は、図2に示すように、回転角センサ17で検出したモータ回転角θに基づいてモータ角速度ω及びモータ角加速度αを演算する回転情報演算部20と、操舵補助トルク指令値を演算する操舵補助トルク指令値演算部21と、この操舵補助トルク指令値演算部21で演算したトルク指令値Irefを補償するトルク指令値補償部22と、この指令値補償部22で補償された補償後操舵補助トルク指令値Iref′の最大電流を制限する電流制限部23と、この電流制限部23で電流制限された補償後操舵補助トルク指令値Iref″に基づいてモータ電流を生成して電動モータ12を駆動制御するモータ駆動回路24とで構成されている。
回転情報演算部20は、回転角センサ17で検出されるモータ回転角θを微分してモータ角速度ωを算出するモータ角速度演算部201と、このモータ角速度演算部201で算出されたモータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出するモータ角加速度演算部202とを備えている。
操舵補助トルク指令値演算部21は、操舵トルクセンサ14から入力される操舵トルクTと車速センサ16から入力される車速Vsとに基づいて第1の操舵補助トルク指令値Iref1を演算する第1の操舵補助トルク指令値演算部31と、左右の車輪回転速度を検出する車輪回転速度センサ18から入力される車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて第2の操舵補助トルク指令値Iref2を演算する第2の操舵補助トルク指令値演算部32と、操舵トルクセンサ14の異常を検出するトルクセンサ異常検出部33と、該トルクセンサ異常検出部33から出力される異常検出信号に基づいて前記第1の操舵補助トルク指令値演算部31及び第2の操舵補助トルク指令値演算部32の何れかを選択する異常時切換手段としての指令値選択部34と、指令値選択部34で選択した指令値の急激な変化を抑制するレートリミット35とを備えている。
第1の操舵補助トルク指令値演算部31は、操舵トルクT及び車速Vsをもとに図2中に示す操舵補助トルク指令値算出マップを参照して電流指令値でなる操舵補助トルク指令値Irefbを算出するトルク指令値算出部311と、このトルク指令値算出部311から出力される操舵補助トルク指令値Irefbの位相補償を行って位相補償値Irefb′を算出する位相補償部312と、操舵トルクセンサ14から入力される操舵トルクTに基づいてステアリング中立付近の制御の応答性を高め、滑らかでスムーズな操舵を実現するように、操舵トルクTを微分演算処理してアシスト特性不感帯での安定性確保、静摩擦の補償を行うセンタ応答性改善指令値Irを算出するセンタ応答性改善部313と、位相補償部312の位相補償出力とセンタ応答性改善部313のセンタ応答性改善指令値Irとを加算して第1の操舵補助トルク指令値Iref1を算出する加算器314とを備えている。
ここで、トルク指令値算出部311で参照する操舵補助トルク指令値算出マップは、図2中に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助トルク指令値Irefbをとると共に、車速Vsをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成されている。
第2のトルク指令値演算部32は、ステアリング機構に路面から伝達されるセルフアライニングトルクを推定するセルフアライニングトルク推定手段としてのセルフアライニングトルク推定部32Aと、このセルフアライニングトルク推定部321で推定したセルフアライニングトルクSATに“1”未満のゲインで増幅して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出するゲイン調整手段としての増幅部32Bとで構成されている。
セルフアライニングトルク推定部32Aは、図3に示すように、車輪回転速度センサ18L及び18Rから入力される車輪回転速度VwL及びVwRに基づいてセルフアライニングトルク初期推定値SATiを推定するセルフアライニングトルク(SAT)初期推定部321と、このセルフアライニングトルク推定部321で推定したセルフアライニングトルク初期推定値SATiのノイズを除去するローパスフィルタ322と、車輪回転速度センサ18L及び18Rから入力される車輪回転速度VwL及びVwRを加算する加算器323と、車輪回転速度VwL及びVwRの加算値の1/2を算出して車速相当値Vs′を算出する平均値算出部324と、この平均値算出部324で算出した車速相当値Vs′に基づいてローパスフィルタ322から出力されるノイズ除去されたセルフアライニングトルク初期推定値SAT′の位相補正を行ってセルフアライニングトルク推定値SATを算出する位相補正部325とを備えている。
ここで、セルフアライニングトルク初期推定部321では、車輪回転速度センサ18L及び18Rで検出された車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて下記(1)式の演算を行って、車速に応じた左右の車輪回転速度差ΔVwを算出する。
ΔVw=(VwL−VwR)/{(VwL+VwR)/2} …………(1)
次いで、左右の車輪回転速度差ΔVwをもとに、図4に示すセルフアライニングトルク算出マップを参照してセルフアライニングトルクSATiを算出する。
このセルフアライニングトルク算出マップは、図4に示すように、左右車輪回転速度差ΔVwが零である状態即ち直進走行状態では、セルフアライニングトルクSATが“0”であり、これより左右の車輪回転速度差ΔVwが正値即ち右旋回状態となると、セルフアライニングトルクSATが増加し、その後左右の車輪回転速度差ΔVwが所定値ΔVw1以上となると、左右車輪回転速度差ΔVの増加に応じてセルフアライニングトルクSATの増加率が徐々に低下する特性線に設定され、同様に、左右の車輪回転速度差ΔVwが負値になると、セルフアライニングトルクSATが“0”より左右車輪回転速度差ΔVwが所定値−ΔVw1となるまでは減少し、左右車輪回転速度差ΔVwが所定値−ΔVw1を越えるとセルフアライニングトルクSATの減少率が徐々に減少する特性曲線に設定されている。
また、トルクセンサ異常検出部33は、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTが入力され、この操舵トルクTが車両の走行時に所定時間以上変化しない状態が継続した場合、操舵トルクTが予め設定した天絡による異常設定値を超えた状態が所定時間以上継続した場合、操舵トルクTが予め設定した地絡による異常閾値未満の状態を所定時間以上継続した場合等の操舵トルクセンサ異常検出条件を満足した場合に、異常検出信号Saを例えば論理値“1”に設定し、上記操舵トルクセンサ異常検出条件を満足していないときに異常検出信号Saを論理値“0”に設定する。
さらに、指令値選択部34は、トルクセンサ異常検出部33から出力される異常検出信号Saが論理値“0”であるときに、前述した第1のトルク指令値演算部31で演算した第1の操舵補助トルク指令値Iref1を選択し、異常検出信号Saが論理値“1”であるときに、前述した第2のトルク指令値演算部32で演算した第2の操舵補助トルク指令値Iref2を選択し、選択した第1のトルク指令値Iref1又は第2のトルク指令値Iref2をトルク指令値Irefとしてレートリミッタ35でトルク指令値Irefの急激な変化を抑制してから後述する加算器46に出力する。
指令値補償部22は、回転情報演算部20のモータ角速度演算部201で演算されたモータ角速度ωに基づいてヨーレートの収斂性を補償する収斂性補償部43と、回転情報演算部20のモータ角加速度演算部202で演算されたモータ角加速度αに基づいて電動モータ12の慣性により発生するトルク相当分を補償して慣性感又は制御応答性の悪化を防止する慣性補償部44とを少なくとも有する。
ここで、収斂性補償部43は、モータ角速度演算部201で算出されたモータ角速度ωが入力され、車両のヨーの収斂性を改善するためにステアリングホイール1が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、モータ角速度ωに収斂性制御ゲインKcを乗じて収斂性補償値Icを算出する。
そして、慣性補償部44で算出された慣性補償値Iiと収斂性補償部43で算出された収斂性補償値Icとが加算器45で加算されて指令補償値Icomが算出され、この指令補償値Icomが加算器46で前述した操舵補助トルク指令値演算部21から出力される操舵補助トルク指令値Irefに加算されて補償後操舵補助トルク指令値Iref′が算出され、この補償後操舵補助トルク指令値Iref′が電流制限部23に出力される。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、操舵トルクセンサ14が正常状態であるものとすると、トルク指令値演算部21に設けられたトルクセンサ異常検出部33において操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTがトルクセンサ異常検出条件を満足しないことにより、論理値“0”の異常検出信号Saが指令値選択部34に出力される。このため、指令値選択部34で第1の操舵補助トルク指令値演算部31が選択されて、この第1の操舵補助トルク指令値演算部31から出力される第1の操舵補助トルク指令値Iref1が操舵補助トルク指令値Irefとして加算器46に出力される。
このとき、車両がステアリングホイール1を直進状態の中立位置として停車しているものとする。この状態でステアリングホイール1が操舵されていない場合には、操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTが“0”であり、車速Vsも“0”であるので、第1の操舵補助トルク指令値演算部31のトルク指令値算出部311で操舵トルクT及び車速Vsをもとに操舵補助トルク指令値算出マップを参照したときに操舵補助トルク指令値Irefbが“0”となり、第1の操舵補助トルク指令値Iref1も“0”となる。
このとき、電動モータ12も停止しているため、回転情報演算部20のモータ角速度演算部201で演算されるモータ角速度ω及びモータ角加速度演算部202で演算されるモータ角加速度αが共に“0”であるので、収斂性補償部43で算出される収斂性補償値Ic及び慣性補償部44で算出される慣性補償値Iiも“0”となるため、指令補償値Icomも“0”となり、加算器46から出力される補償後操舵補助トルク指令値Iref′も“0”となる。
このため、電流制限部23から出力される補償後操舵補助トルク指令値Iref″も“0”となり、モータ駆動回路24から出力されるモータ駆動電流も“0”を継続して電動モータ12が停止状態を継続する。
この車両の停車状態で、ステアリングホイール1を操舵して所謂据え切りを行うと、これに応じて操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTが比較的大きな値となることにより、第1の操舵補助トルク指令値演算部31で算出される操舵補助トルク指令値Iref1が操舵トルクTに応じて急増する。
この状態でも電動モータ12が停止しているので、モータ角速度ω及びモータ角加速度αも“0”を継続し、指令値補償部22の収斂性補償部43で算出される収斂性補償値Ic及び慣性補償部44で算出される慣性補償値Iiも“0”を維持し、指令補償値Icomも“0”となる。
このため、加算器46から操舵補助トルク指令値Irefがそのまま電流制限部23に供給され、この電流制限部23から最大値が制限された補償後操舵補助トルク指令値Iref″がモータ駆動回路24に出力される。
したがって、モータ駆動回路24から補償後操舵補助トルク指令値Iref″に応じたモータ駆動電流が電動モータ12に出力されて、この電動モータ12が回転駆動され、操舵トルクTに応じた操舵補助力を発生する。
この電動モータ12で発生された操舵補助力は、減速機構11を介してステアリングホイール1からの操舵力が伝達されたステアリングシャフト2に伝達されることにより、操舵力及び操舵補助力がステアリングギヤ機構8で車幅方向の直線運動に変換されてタイロッド9を介して左右の転舵輪WL,WRが転舵されて、軽い操舵トルクで転舵輪WL,WRを転舵することができる。
そして、電動モータ12が駆動制御されることにより、回転情報演算部20のモータ角速度演算部201で演算されるモータ角速度ω及びモータ角加速度演算部202で演算されるモータ角加速度αが増加する。これにより、指令値補償部22で収斂性補償値Ic及び慣性補償値Iiが算出され、これらが加算されて指令補償値Icomが算出され、これが加算器46に供給されることにより、操舵補助トルク指令値Irefに指令補償値Icomが加算されて補償後操舵補助トルク指令値Iref′が算出される。このように、指令値補償部22で指令値補償処理が行われると共に、第1の操舵補助トルク指令値演算部31のセンタ応答性改善部313で、操舵トルクTを微分演算処理してアシスト特性不感帯での安定性確保、静摩擦の補償を行い、位相補償部312で第1の操舵補助トルク指令値Iref1に対して位相補償を行う。
また、車両を発進させた場合には、車速センサ16で検出する車速Vsの増加に応じて、第1の操舵補助トルク指令値演算部31におけるトルク指令値算出部311で算出される操舵補助トルク指令値Irefbが減少することにより、車両の走行状態に応じた最適な操舵補助トルク指令値Iref1が設定されて、車両の走行状態に応じた最適な操舵補助制御が行われる。
ところが、車両の走行中に、操舵トルクセンサ14が異常状態となって、トルクセンサ異常検出部33で、操舵トルクTが操舵トルクセンサ異常検出条件を満足する状態となると、このトルクセンサ異常検出部33から論理値“1”の異常検出信号Saが指令値選択部34に出力されることにより、この指令値選択部34で上述した第1の操舵補助トルク指令値演算部31に代えて第2の操舵補助トルク指令値演算部32が選択される。
このとき、第2の操舵補助トルク指令値演算部32では、左右の車輪WL及びWRの車輪回転速度VwL及びVwRを車輪回転速度センサ18L及び18Rで検出し、検出した車輪回転速度VwL及びVwRがセルフアライニングトルク推定部32Aに供給される。このため、セルフアライニングトルク推定部32Aの平均値算出部324で車速相当値Vs′が算出されるとともに、セルフアライニングトルク初期推定部321で、左右の車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて前記(1)式の演算を行なって車輪回転速度差ΔVwを算出し、算出した車輪回転速度差ΔVwをもとに図4のセルフアライニングトルク算出マップを参照してセルフアライニングトルク初期推定値SATiを推定する。
そして、推定したセルフアライニングトルク初期推定値SATiに対してローパスフィルタ322でローパスフィルタ処理されることにより、ノイズが除去されたセルフアライニングトルク初期推定値SATi′が得られ、このセルフアライニングトルク初期推定値SATi′に位相補正部325で車速相当値Vs′によって位相補正を行なうことにより、セルフアライニングトルク推定値を演算し、さらにゲインKを乗算して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。
この車両の走行中で、直進走行状態にあるときには、前記(1)式で算出される車輪回転速度差ΔVwが“0”であることからセルフアライニングトルク初期推定値SATiも“0”となって、電動モータ12は停止状態を維持する。
しかしながら、直進走行状態からステアリングホイール1を操舵して旋回走行状態に移行すると、その旋回走行状態の旋回半径に応じて左右の車輪回転速度VwL及びVwRに差を生じる。このため、車輪回転速度差ΔVwは、車速Vsが低い状態では、分子となる左右の車輪回転速度VwL及びVwRの差が極めて小さいことから比較的小さな値となって、セルフアライニングトルク初期推定部321で図4のセルフアライニングトルク初期推定値算出マップを参照して算出されるセルフアライニングトルク初期推定値SATiが比較的小さい値となる。このセルフアライニングトルク初期推定値SATiがローパスフィルタ322でローパス処理され、位相補正部325で車速相当値Vs′による位相補正が行なわれることにより、車両走行時にステアリングギヤ機構8のラック軸に路面から入力されるセルフアライニングトルクSATを正確に推定することができる。
そして、この推定されたセルフアライニングトルク推定値SATを増幅部32Bで増幅することにより、セルフアライニングトルクSATを考慮した第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出し、これが指令値選択部34を介し、レートリミッタ35を介して加算器46に供給されるので、この加算器46で指令補償値Icomを加算した補償後操舵補助トルク指令値Iref′を電流制限部23に供給し、この最大電流が制限された補償後補助トルク指令値Iref″をモータ駆動回路24に供給することにより、このモータ駆動回路24でセルフアライニングトルクSATを考慮した操舵補助力を発生させ、操舵補助制御を継続することができる。
また、車両の車速Vsが速い場合には、左右の車輪回転速度VwL及びVwRの差が大きな値となることから、前記(1)式で算出される車輪回転速度差ΔVwが大きな値となり、これに応じて、セルフアライニングトルク初期推定部321で図4のセルフアライニングトルク初期推定値算出マップを参照して算出されるセルフアライニングトルク初期推定値SATiが比較的大きい値となる。このセルフアライニングトルク初期推定値SATiがローパスフィルタ322でローパス処理され、位相補正部325で車速相当値Vs′による位相補正が行なわれることにより、車両走行時にステアリングギヤ機構8のラック軸に路面から入力されるセルフアライニングトルクSATを正確に推定することができる。
そして、この推定されたセルフアライニングトルク推定値SATを増幅部32Bで増幅することにより、セルフアライニングトルクSATを考慮した第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出し、これが指令値選択部34を介し、レートリミッタ35を介して加算器46に供給される。したがって、モータ駆動回路24で、セルフアライニングトルクSATを考慮した操舵補助力を発生させ、操舵補助制御を継続することができる。
このように上記実施形態によると、操舵トルクセンサ14が異常状態となったときに、セルフアライニングトルク推定部32Aで路面からの反力を推定して、反力に応じて必要な第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出し、この第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて電動モータ12を駆動制御するので、電動モータ12で路面からの反力に応じた操舵補助力を発生することができ、操舵トルクセンサ14が異常となった後も操舵に必要な操舵補助制御を継続することができる。したがって、路面からの反力を考慮しているので、路面摩擦係数が低い降雨路、凍結路、積雪路等を走行する場合でも、操舵角φの変化に応じて最適な操舵補助力を発生させることができる。
また、他のアンチロックブレーキシステムに使用される車輪回転速度センサ18L及び18Rを使用してセルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出するので、部品点数の増加を抑制して、コストを低減することができる。
さらにまた、上記第1の実施形態においては、コントローラ15をハードウェアで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、マイクロコンピュータを適用して、回転情報演算部20、操舵補助トルク指令値演算部21、指令値補償部22、電流制限部23、モータ駆動回路の機能をソフトウェアで処理することもできる。この場合の処理としては、マイクロコンピュータで図5に示す操舵トルクセンサ異常検出処理及び図6に示す操舵補助制御処理を実行するようにすればよい。
ここで、操舵トルクセンサ異常検出処理は、図5に示すように、所定時間(例えば1msec)毎にタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS1で、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTを読込み、次いでステップS2に移行して、読込んだ操舵トルクTが前述したトルクセンサ異常検出部33に設定されたトルクセンサ異常検出条件を満足するか否かを判定し、トルクセンサ異常検出条件を満足しない場合には、操舵トルクセンサ14が正常であると判断してステップS3に移行し、トルクセンサ異常フラグFaを操舵トルクセンサ14が正常であることを表す“0”にリセットしてからタイマ割込処理を終了し、トルクセンサ異常検出条件を満足した場合には、操舵トルクセンサ14が異常であると判断してステップS4に移行し、トルクセンサ異常フラグFaを操舵トルクセンサ14が異常であることを表す“1”にセットしてからタイマ割込処理を終了する。
また、操舵補助制御処理は、図6に示すように、所定時間(例えば1msec)毎にタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS11で、操舵トルクセンサ14、車速センサ16、回転角センサ17、車輪回転速度センサ18L,18R等の各種センサの検出値を読込み、次いでステップS12に移行して、図5のトルクセンサ異常検出処理で設定されたセンサ異常フラグFaが“1”にセットされているか否かを判定し、センサ異常フラグFaが“0”にリセットされているときにはステップS13に移行する。このステップS13では、操舵トルクTをもとに前述した操舵補助トルク指令値算出マップを参照して操舵補助トルク指令値Irefbを算出してからステップS14に移行する。
このステップS14では、算出した操舵補助トルク指令値Irefbに対して位相補償処理を行って位相補償後操舵補助トルク指令値Irefb′を算出し、次いでステップS15に移行して、操舵トルクTを微分してセンタ応答性改善指令値Irを算出し、次いでステップS16に移行して、位相補償後操舵補助トルク指令値Irefb′にセンタ応答性改善指令値Irを加算して第1の操舵補助トルク指令値Iref1(=Irefb′+Ir)を算出し、これを操舵補助トルク指令値IrefとしてRAM等の記憶装置のトルク指令値記憶領域に更新記憶してから後述するステップS19に移行する。
一方、前記ステップS12の判定結果が、センサ異常フラグFaが“1”にセットされているときには、操舵トルクセンサ14が異常であると判断してステップS17に移行し、車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて前記(1)式の車輪回転速度差ΔVwを算出する。そして、算出した車輪回転速度差ΔVwに基づいて図4に示すセルフアライニングトルク算出マップを参照して、セルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出し、このセルフアライニングトルク初推定値SATiをローパスフィルタ処理及び位相補正処理してセルフアライニングトルク推定値SATを算出する。次いで、ステップS18に移行して、算出したセルフアライニングトルク推定値SATに“1”未満のゲインKを乗算して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出し、これを操舵補助トルク指令値Irefとして前述したRAM等の記憶装置のトルク指令値記憶領域に更新記憶してからステップS19に移行する。
また、ステップS19では、モータ回転角θを微分してモータ角速度ωを算出し、次いでステップS20に移行して、モータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出し、次いでステップS21に移行して、収斂性補償部43と同様にモータ角速度ωに車速Vsに応じて設定された補償係数Kcを乗算して収斂性補償値Icを算出してからステップS22に移行する。
このステップS22では、慣性補償部44と同様に、モータ角加速度αに基づいて慣性補償値Iiを算出し、次いでステップS23に移行して、RAM等の記憶装置のトルク指令値記憶領域に記憶された操舵補助トルク指令値IrefにステップS21及びS22で算出した収斂性補償値Ic及び慣性補償値Iiを加算して補償後操舵補助トルク指令値Iref′を算出してからステップS24に移行する。
このステップS24では、算出した補償後操舵補助トルク指令値Iref′に対して最大値制限処理を行なって制限後トルク補助指令値Iref″を算出し、次いでステップS25に移行して、算出した制限後トルク補助指令値Iref″をモータ駆動回路24に出力して、電動モータ12を駆動する。
この図5の処理がトルク検出部異常検出手段に対応し、図6の処理において、ステップS12の処理が異常時切換手段に対応し、ステップS13〜S16の処理が第1のトルク指令値演算手段に対応し、ステップS17及びS18の処理が第2のトルク指令値演算手段に対応し、ステップS19〜S25の処理がモータ制御手段に対応している。
このように、マイクロコンピュータで、図5のトルクセンサ異常検出処理及び図6の操舵補助制御処理を実行することにより、前述した実施形態と同様に操舵トルクセンサ14が正常であるときには図6の操舵補助制御処理におけるステップS13〜S16の処理を実行して、第1の操舵補助トルク指令値Iref1を算出する。また、操舵トルクセンサ14が異常であるときには図6の操舵補助制御処理におけるステップS17及びS18の処理を実行して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出することにより、ステアリングギヤ機構8のラック軸に入力される路面からの反力でなるセルフアライニングトルクSATを推定し、推定したセルフアライニングトルクSATに“1”未満のゲインKを乗算して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。
このため、操舵トルクセンサ14が正常である場合には第1の操舵補助トルク指令値Iref1に基づいて電動モータ12が駆動制御されて、正確な操舵補助制御を行い、操舵トルクセンサ14に異常が発生した場合には、車輪回転速度VwL及びVwRに基づいてセルフアライニングトルクSATを推定し、推定したセルフアライニングトルクSATに“1”未満のゲインKを乗算して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。このため、操舵トルクセンサ14が正常な状態から異常な状態となった場合にも、第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて路面反力を考慮した最適な操舵補助制御を継続することができる。
次に、本発明の第2の実施形態を図7〜図13について説明する。
この第2の実施形態では、第2の操舵補助トルク指令値演算部32のゲイン調整手段となる増幅器32Bに代えて複数の調整部を有するゲイン調整部を適用するようにしたものである。 なお、この第2の実施形態では、回転センサ17を含んで回転情報演算部20が構成され、車輪回転速度センサ18が前輪の左右輪の車輪速度VwFL,VwFR及び後輪の左右輪の車輪速度VwRL,VwRRを検出し、左側の車輪速度VwFL及びVwRLの平均値を左側車輪速度VwLとし、右側の車輪速度VwFR及びVwRRの平均値を右側車輪速度VwRとしている。
この第2の実施形態では、図7に示すように、第2の操舵補助トルク指令値演算部32が、上述した図3の構成を有するセルフアライニングトルク推定部32Aと、このセルフアライニングトルク推定部32Aで推定したセルフアライニングトルクSATにゲインを乗算して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出するゲイン調整手段としてのゲイン調整部32Cと、ゲイン調整部32Cでゲイン調整されたセルフアライニングトルクを制限するトルク制限手段としてのトルク制限部32Dとで構成されている。
ゲイン調整部32Cは、操舵状態ゲイン調整部36、車速ゲイン調整部37、セルフアライニングトルクゲイン調整部38、及び駆動輪スリップゲイン調整部39を有する。
操舵状態ゲイン調整部36は、セルフアライニングトルク推定部32Aから出力されるセルフアライニングトルク推定値SAT及びモータ角速度演算部201で算出されたモータ角速度ωが入力されて、これらに基づいて切増し状態、切戻し状態及び保舵状態の何れの操舵状態かを検出し、検出した操舵状態に応じた操舵状態ゲインK0を設定する操舵状態ゲイン設定部36Aと、この操舵状態ゲイン設定部36Aで設定された操舵状態ゲインK0をセルフアライニングトルク推定部32Aから出力されるセルフアライニングトルク推定値SATに乗算してゲイン倍出力Iref3を出力するゲイン乗算部36Bとで構成されている。
ここで、操舵状態ゲイン設定部36Aの具体的構成は、図8に示すように、セルフアライニングトルク推定値SATとモータ角速度ωとが入力されて、切増し状態、切戻し状態及び保舵状態を判定する操舵状態判定部361と、この操舵状態判定部361の判定結果とモータ角速度ωとに基づいて操舵状態ゲインK0を算出する操舵状態ゲイン算出部362とを有する。
操舵状態判定部361は、セルフアライニングトルク推定値SATの符号とモータ角速度ωの符号が一致するときに切増し状態であると判定し、セルフアライニングトルク推定値SATの符号とモータ加速度ωの符号が不一致であるときに切戻し状態であると判定し、モータ角速度ωの絶対値|ω|が設定値ωt以下であるときには保舵状態であると判定する。
操舵状態ゲイン算出部362は、入力される操舵状態及びモータ角速度ωに基づいて図9に示す操舵状態ゲイン算出マップを参照して操舵状態ゲインK0を算出する。操舵状態ゲイン算出マップは、図9に示すように、操舵状態が保舵状態であるときには、モータ角速度ωの値にかかわらず所定ゲインK0hを維持するように特性線Lhが設定され、操舵状態が切増し状態であるときには、モータ角速度ωが零から所定値ω1迄の間で所定ゲインK0hより大きいな値の所定ゲインK0iを維持し、モータ角速度ωが所定値ω1を超えるとモータ角速度ωの増加に伴ってゲインが比較的大きな勾配で増加するように特性線Liが設定され、操舵状態が切戻し状態であるときには、モータ角速度ωが零から所定値ω1迄の間で所定ゲインK0hより小さな値の所定ゲインK0dを維持し、モータ角速度ωが所定値ω1を超えるとモータ角速度ωの増加に伴ってゲインが比較的小さな勾配で減少するように特性線Ldが設定されている。
また、車速ゲイン調整部37は、車速感応ゲインK1を算出する車速ゲイン算出部37Aと、この車速ゲイン設定値部37Aで設定された車速感応ゲインK1を操舵状態ゲイン調整部36から出力されるゲイン倍出力Iref3に車速感応ゲインK1を乗算してゲイン倍出力Iref4を出力するゲイン乗算部37Bとで構成されている。
車速ゲイン算出部37Aは、入力される車速Vsに基づいて図10に示す車速感応ゲイン算出マップを参照して車速感応ゲインK1を算出する。ここで、車速感応ゲイン算出マップは、図10に示すように、車速Vsが零から所定値Vs1迄の間では所定値Kvを維持し、車速Vsが所定値Vs1を超えると、車速Vsの増加に応じて比較的大きな勾配でゲインが減少し、車速Vsが所定値Vs1より大きい所定値Vs2を超えると、車速Vsの増加に応じて比較的小さな勾配でゲインが減少するように特性線Lvが設定されている。
セルフアライニングトルクゲイン調整部38は、セルフアライニングトルク演算値SAToを算出して補正ゲインK2を設定するセルフアライニングトルクゲイン設定部38Aと、このセルフアライニングトルクゲイン設定部38Aで設定されたセルフアライニングトルクゲインK2をゲイン倍出力Iref4に乗算するゲイン乗算部38Bとで構成されている。
セルフアライニングトルクゲイン設定部38Aは、図11に示すように、4輪車輪速センサ18から入力される4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRとモータ角度θとに基づいて車両モデルを用いてセルフアライニングトルク演算値SAToを算出するセルフアライニングトルク演算部381と、前述したセルフアライニングトルク推定部32で推定したセルフアライニングトルク推定値SATからセルフアライニングトルク演算部381で算出したセルフアライニングトルク演算値SAToを減算する減算器382と、この減算器382の減算出力を絶対値化してセルフアライニングトルク偏差ΔSAT(=|SAT−SATo|)を算出する絶対値演算部383と、この絶対値演算部383で算出したセルフアライニングトルク偏差ΔSATに基づいて図12に示すセルフアライニングトルクゲイン算出マップを参照してセルフアライニングトルクゲインK2を算出するゲイン算出部384とを備えている。
ここで、セルフアライニングトルク演算部381は、4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRの平均値を車速Vとして算出すると共に、モータ角度θを推定操舵角θとして、車両諸元定数を下記(2)式で表される車両モデルとなる車両横方向の運動方程式(状態方程式)に代入し、下記(3)式で表されるセルフアライニングトルク演算値算出式(出力式)を用いることで、セルフアライニングトルク演算値SAToを算出する。
Figure 0005464292
車両諸元定数
m:車両質量
I:車両慣性モーメント
lf:車両重心点と前軸間の距離
lr:車両重心点と後軸間の距離
Kf:前輪タイヤのコーナリングパワー
Kr:後輪タイヤのコーナリングパワー
V:車速
N:オーバーオール舵角比
θ:推定操舵角
δf:実舵角(δf=θ/N)
β:車両重心点の横滑り角
γ:ヨーレート
ε:トレール
Figure 0005464292
上記演算を行うために、セルフアライニングトルク演算部381の具体的構成は、図12に示すように構成されている。
すなわち、推定操舵角としてのモータ角度θが1/Nを乗算する乗算器381aに入力されて実舵角δfを算出する。この乗算器381aから出力される実舵角δfが、前述した(2)式の係数b11を乗算する乗算器381bに供給され、この乗算器381bの出力が加算器381cに供給される。この加算器381cの加算出力は積分器381dに入力されて積分されることにより、車両重心点の横滑り角βを算出し、算出された車両重心点の横滑り角βが前記(3)式の係数C11を乗算する乗算器381eに供給されるとともに、前記(2)式の係数a11を乗算する乗算器381f及び前記(2)式の係数a21を乗算する乗算器381gに供給される。そして、乗算器381f及び後述する乗算器381nの乗算出力が加算器381cに供給されて、乗算器381bの乗算出力に加算されることにより、横滑り角速度β′が算出される。この横滑り角速度β′が積分器381dで積分されて横滑り角度βが算出される。
一方、乗算器381aから出力される実舵角δfが、前記(2)式の係数b21を乗算する乗算器381hに供給され、この乗算器381hから出力される乗算出力が加算器381iに供給され、この加算器381iの加算出力が積分器381jに供給されて積分されることにより、ヨーレートγが算出される。そして、算出されたヨーレートγが前記(3)式の係数c12を乗算する乗算器381kに供給されるとともに、前記(2)式の係数a22を乗算する乗算器381m及び前記(2)式の係数a12を乗算する乗算器381nに供給される。
そして、乗算器381mの乗算出力及び前述した乗算器381gの乗算出力が加算器381iに供給されて、乗算器381hの乗算出力に加算されてヨー角加速度γ′が算出され、このヨー角加速度γ′が積分器381jで積分されてヨーレートγが算出される。
さらに、乗算器381aから出力される実舵角δfが、前記(3)式の係数d11を乗算する乗算器381oに供給され、この乗算器381oから出力される乗算出力と、前述した乗算器381e及び381kから出力される乗算出力とが加算器381pで加算されてセルフアライニングトルク演算値SAToが算出される。
また、ゲイン算出部384では、絶対値演算部383から出力されるセルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|をもとに図13に示すセルフアライニングトルクゲイン算出マップを参照してセルフアライニングトルクゲインK2を算出する。
ここで、セルフアライニングトルクゲイン算出マップは、図13に示すように、セルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|が0から設定値ΔSAT1迄の間ではセルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|の増加に応じて比較的緩やかな勾配でセルフアライニングトルクゲインK2が減少し、セルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|が設定値ΔSAT1を超えて設定値ΔSAT2に達するまでの間は比較的急な勾配でセルフアライニングトルクゲインK2が減少し、設定値SAT2を超えると、セルフアライニングトルク偏差の絶対値|ΔSAT|の増加に応じて比較的緩やかな勾配でセルフアライニングトルクゲインK2が減少するように特性線Lsが設定されている。
駆動輪スリップゲイン調整部39は、車輪速センサ18で検出された車輪速度VwL及びVwRに基づいて駆動輪スリップゲインK3を設定する駆動輪スリップゲイン設定部39Aと、この駆動輪スリップゲイン設定部39Aで設定された駆動輪スリップゲインK3をゲイン倍出力Iref5に乗算するゲイン乗算部39Bとで構成されている。
駆動輪スリップゲイン設定部39Aは、図14に示すように、車輪速センサ18で検出された前輪の左右車輪速度VwFL及びVwFRと後輪の左右車輪速度VwRL及びVwRRが入力され、前輪の左右車輪速度VwFL及びVwFRを加算する加算部391と、この加算部391の加算出力に2分の1を乗算して前輪平均値VwFを算出する乗算器392と、後輪の左右車輪速度VwRL及びVwRRを加算する加算部393と、この加算部393の加算出力に2分の1を乗算して後輪平均値VwRを算出する乗算器394と、乗算器392から出力される前輪平均値VwFから乗算部394から出力される後輪平均値VwRを減算して駆動輪車輪速偏差ΔVwを算出する減算部395と、この減算部395から出力される駆動輪車輪速偏差ΔVwを絶対値化する絶対値回路396と、この絶対値回路396から出力される駆動輪車輪速偏差の絶対値|ΔVw|に基づいて駆動輪スリップ感応ゲインK4を算出するゲイン算出部397とを備えている。
ここで、ゲイン算出部397は、入力される駆動輪車輪速偏差ΔVwの絶対値|ΔVw|に基づいて図13に示す駆動輪スリップ感応ゲイン算出マップを参照して駆動輪スリップ感応ゲインK3を算出する。この駆動輪スリップ感応ゲイン算出マップは、図15に示すように、駆動輪車輪速偏差ΔVwの絶対値|ΔVw|が0から増加するに応じて駆動輪スリップゲインK3が徐々に減少するように二次曲線でなる特性線Lwが設定されている。
また、トルク制限部32Dは、トルク制限値設定部40と、このトルク制限値設定部40で設定されたトルク制限値Tlimでゲイン倍出力Iref6を制限して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を出力するリミッタ部41とを備えている。
トルク制限値設定部40は、車速Vs及びモータ角速度ωが入力され、車速Vsに基づいて図16(a)に示す車速制限値算出マップを参照して車速制限値Limvを算出すると共に、モータ角速度ωに基づいて図16(b)に示すモータ角速度制限値算出マップを参照してモータ角速度制限値Limmを算出し、車速制限値Limv及びモータ角速度制限値Limmを比較して何れか小さい値を制限値Limとしてリミッタ部41に出力する。
ここで、車速制限値算出マップは、図16(a)に示すように、車速Vsが零から所定値Vs3に達するまでの間は最大制限値Limmaxを維持し、車速Vsが所定値Vs3を超えると車速Vsの増加に応じて緩やかな円弧を描きながら車速制限値Limvが減少する特性線Lv1が設定されている。
また、モータ角速度制限値算出マップは、図16(b)に示すように、モータ角速度ωが零から運転者の操舵又は路面反力によって発生する設定角速度ω2に達する迄の間は最大制限値Limmaxを維持し、モータ角速度ωが設定角速度ω2を超えると、モータ角速度ωの増加に伴って比較的大きな勾配でモータ角速度制限値Limmが減少する特性線Lωが設定されている。
次に、上記第2の実施形態の動作を説明する。
操舵トルクセンサ14が正常である場合には、前述した第1の実施形態と同様に、トルクセンサ異常検出部33で論理値“0”の異常検出信号Saが指令値選択部34に出力される。このため、指令値選択部34で第1の操舵補助トルク指令値演算部31が選択されて、この第1の操舵補助トルク指令値演算部31から出力される第1の操舵補助トルク指令値Iref1が操舵補助トルク指令値Irefとして加算器46に出力される。このため、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTに応じた操舵補助制御が行われて、電動モータ12から操舵トルクTに応じた操舵補助力が発生され、これが減速機構11を介してステアリングホイール1からの操舵力が伝達されたステアリングシャフト2に伝達されることにより、操舵力及び操舵補助力がステアリングギヤ機構8で車幅方向の直線運動に変換されてタイロッド9を介して左右の転舵輪WL,WRが転舵されて、軽い操舵トルクで転舵輪WL,WRを転舵することができる。
一方、車両の走行中に、操舵トルクセンサ14が異常状態となって、トルクセンサ異常検出部33で、操舵トルクTが操舵トルクセンサ異常検出条件を満足する状態となると、このトルクセンサ異常検出部33から論理値“1”の異常検出信号Saが指令値選択部34に出力されることにより、この指令値選択部34で上述した第1の操舵補助トルク指令値演算部31に代えて第2の操舵補助トルク指令値演算部32が選択される。
この第2の操舵補助トルク指令値演算部32では、セルフアライニングトルク推定部32で、前述した第1の実施形態と同様に、車輪速センサ18から出力される左右の車輪速度VwL及びVwRに基づいてセルフアライニングトルク推定値SATが算出される。そして、算出されたセルフアライニングトルク推定値SATに対して、ゲイン調整部32Cで各種ゲイン調整が行われる。
すなわち、操舵状態ゲイン調整部36では、ステアリングホイール1の操舵状態が切増し状態、切戻し状態及び保舵状態の何れであるかを判定する。この場合の判定は、セルフアライニングトルク推定地SATの符号とモータ角速度ωの符号とが一致するか否かで切増し状態であるか切戻し状態であるかを判定し、モータ角速度ωの絶対値|ω|が設定角速度ωt以下であるときに保舵状態であると判定する。
そして、判定された操舵状態に応じて図9の特性線Li、Ld及びLhの何れかが選択され、選択された特性線に基づいてモータ角速度ωから操舵状態感応ゲインK0が設定される。このため、ステアリングホイール1の操舵状態が保舵状態であるときには操舵状態感応ゲインK0が所定値K0hを維持することにより、保舵状態に応じた中立値の操舵状態ゲインK0を設定することができる。このため、操舵状態ゲインK0がセルフアライニングトルク推定部32Aから出力されるセルフアライニングトルク推定値SATに操舵状態ゲインKOを乗算して保舵状態に最適なゲイン倍出力Iref3を得ることができる。
一方、上記操舵状態での車速Vsに基づいて車速感応ゲイン設定部37Aで図10に示す車速感応ゲイン設定マップを参照して車速感応ゲインK1が設定され、設定された車速感応ゲインK1がゲイン乗算部37Bでゲイン倍出力Iref3に乗算されてゲイン倍出力Iref4(=Iref3*K1)が算出され、このゲイン倍出力Iref4が出力される。
すなわち、車速Vsが設定車速Vs1より小さい場合には、比較的大きな車速感応ゲインK1が設定されることにより、据え切り時等の大きな操舵補助力を発生する第2の操舵補助力を発生させる第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出することができる。
また、車速Vsが設定車速Vs1を超えている場合には、車速Vsの増加に応じて車速感応ゲインK1が比較的大きな減少率で減少することになり、車速Vsが設定車速Vs2を超える場合には、車速Vsの増加に応じて比較的小さな減少率で減少することになり、車速Vsに応じてセルフアライニングトルク推定値SATが最適化されて第2の操舵補助トルク指令値Iref2が算出され、操舵フィーリングを向上させることができる。
また、セルフアライニングトルクゲイン設定部38Aでは、セルフアライニングトルク演算部381で、モータ角度θ及び4輪の車輪速VwFL〜VwRRに基づいて車両モデルを利用してセルフアライニングトルク演算値SAToを算出する。そして、減算器382で、算出したセルフアライニングトルク演算値SAToとセルフアライニングトルク推定部32Aで推定したセルフアライニングトルク推定値SATとの偏差ΔSATを算出し、算出した偏差ΔSATを絶対値演算部383で絶対値化して絶対値|ΔSAT|を算出する。そして、ゲイン算出部384で、算出した絶対値|ΔSAT|に基づいて図13に示すセルフアライニングトルクゲイン算出マップを参照してセルフアライニングトルクゲインK2を算出する。
そして、算出したセルフアライニングトルクゲインK2がゲイン乗算部38Bでゲイン乗算部37Bから出力されるゲイン倍出力Iref4に乗算されてゲイン倍出力Iref5(=Iref4*K2)を算出し、このゲイン倍出力Iref5が出力される。
このため、何れかのタイヤがパンクして応急タイヤを装着したり、タイヤの空気圧のバラツキが生じたり、左右輪の摩耗度合いが異なることにより、左右輪でタイヤ外径が異なる場合や、左右の一方側が雪路、凍結路、轍、水溜まり等の低摩擦係数路面となり、他方側が乾燥路面等の高摩擦係数路面となる所謂スプリットμ路を走行する場合では車両の左右で車輪速度差を生じることになる。
このように、車両の左右で車輪速度差を生じた場合、例えば図17に示すように、車両の左輪側のタイヤ外径が右輪側のタイヤ外径より大きい場合には、車両に矢印Aで示すように時計方向のヨー運動を生じることから、車両を直進走行させるには、ステアリングホイール1を矢印Bで示すように、左操舵して保舵トルクを与える必要がある。
しかしながら、車両左側の車輪速度VwLが右側の車輪速度VwRに比較して速いので、セルフアライニングトルク推定部32Aでは、右旋回状態と誤判断することになり、右旋回走行を補助するようなセルフアライニングトルク推定値SATが算出される。このため、このセルフアライニングトルク推定値SATを第2の操舵補助トルク指令値Iref2とした場合には、電動モータ12で、右操舵を補助する逆方向の操舵補助力が発生される制御異常状態となってしまう。
このとき、セルフアライニングトルクゲイン設定部38Aでは、モータ角度θ及び4輪の車輪速度VwFL〜VwRRに基づいて車両モデルを利用してセルフアライニングトルク演算値SAToを算出する。このセルフアライニングトルク演算値SAToはモータ角θが“0”であるので、図12に示すセルフアライニングトルク演算部381の乗算器381aで算出される実舵角δfも“0”となる。このように実舵角Δfが“0”となるため、セルフアライニングトルク演算部381で算出されるセルフアライニングトルク演算値SAToも“0”となり、減算器382から出力されるセルフアライニングトルク推定値SATとの間の偏差ΔSATが増加し、絶対値演算部383で演算される絶対値|ΔSAT|が増加することになる。このため、図13を参照して算出されるセルフアライニングトルクゲインK2が偏差ΔSATの絶対値|ΔSAT|の増加に応じて減少する。
したがって、ゲイン乗算部38Bで、ゲイン乗算部37Bから出力されるゲイン倍出力Iref4にセルフアライニングトルクゲインK2が乗算されるので、ゲイン乗算部38Bから出力されるゲイン倍出力Iref5が減少することになり、結果的に第2の操舵補助トルク指令値Iref2が減少し、電動モータ12で発生する逆方向の操舵補助力が抑制される。
一方、例えば左輪側が、低摩擦係数路面で、右輪側が高摩擦係数路面であるスプリットμ路を走行する場合には、上記タイヤ外径が異なる場合と同様に、左輪側の駆動輪の車輪速度が増加することにより、左輪の車輪速度VwLが右輪の車輪速度VwRに比較して速くなる。しかしながら、このスプリットμ路の走行状態では、右輪側の駆動輪のグリップ力が左輪側の駆動輪のグリップ力に比べて大きくなるので、車両に反時計方向のヨー運動が発生する。このため、車両を直進走行させるには、運転者がステアリングホイール1を右操舵して保舵トルクを発生させることになる。
このとき、セルフアライニングトルク推定部32Aで推定されるセルフアライニングトルク推定値SATは、左輪の車輪速度VwLが右輪の車輪速度VwRよりも速いので、右旋回状態と判断されて、運転者の保舵トルクを補助する方向となる。
このため、セルフアライニングトルク推定値SATを抑制する必要はないことになるが、左輪側の駆動輪が低摩擦係数路面を走行するので、車輪速度が急増することになり、左右の車輪速度差ΔVwが急増して、この分セルフアライニングトルク推定値SATも実際のセルフアライニングトルクより大きな値となる。したがって、そのままでは第2の操舵補助トルク指令値Iref2が大きな値となって、電動モータ12で発生する操舵補助力が過多となるセルフステア状態となる。
この場合には、セルフアライニングトルクゲイン算出部38Aで算出されるセルフアライニングトルク推定値SATとセルフアライニングトルク演算値SAToとの偏差ΔSATの絶対値|ΔSAT|が大きな値となる。この結果、ゲイン算出部384で、図13を参照して算出されるセルフアライニングトルクゲインK2がより小さい値となって、このセルフアライニングトルクゲインK2がゲイン乗算部38Bでゲイン倍出力Iref4に乗算されてゲイン倍出力Iref5(=Iref4*K2)が算出される。これによって、第2の操舵補助トルク指令値Iref2が減少されて、保舵トルクに見合う値に調整される。この結果、電動モータ12で発生する操舵補助力がセルフステアを抑制して適正値に制御される。したがって、運転者に違和感を与えることなく、適正な操舵補助制御を行うことができる。
また、発進時に、駆動輪スリップを生じると、駆動輪の車輪速度が増加することにより、左右の車輪速度VwL,VwRも増加する。このため、前述した(1)式で算出される左右の車輪回転速度差ΔVwが実際の車輪回転速度差より大きくなって、図4に示すセルフアライニングトルク算出マップを参照して算出されるセルフアライニングトルク推定値SATが実際のセルフアライニングトルクより大きな値に設定されることがある。この場合には、第2の操舵補助トルク指令値Iref2も増加することから、電動モータ12で運転者の意図しない操舵補助力を発生するセルフステア状態となる。
このため、駆動輪スリップゲイン設定部39Aで、駆動輪スリップ率を算出し、算出した駆動輪スリップ率に基づいて図15に示す駆動輪スリップゲイン算出マップを参照することにより、駆動輪スリップ率が増加するにつれて減少する駆動輪スリップゲインK3を算出し、算出した駆動輪スリップゲインK3をゲイン乗算器39Bでゲイン倍出力Iref5に乗算することによりゲイン倍出力Iref6(=Iref5*K3)を算出することにより、駆動輪スリップによるセルフステア状態を抑制する。
さらに、車速Vs及びモータ角速度ωがトルク制限部32Dのトルク制限値設定部40に入力されることにより、車速Vsに基づいて図16(a)の車速制限値算出マップを参照して車速Vsが高い領域でセルフステアによる制御出力や制御異常出力の出力を制限する車速制限値Limvを算出すると共に、モータ角速度ωに基づいて図16(b)のモータ角速度制限値算出マップを参照してモータ角速度ωが運転者の操舵又は路面反力よって発生する速度以上となったときに、セルフステアによる制御出力や制御異常出力の出力を制限するモータ角速度制限値Limmを算出する。
したがって、車速Vsが高い領域では車速制限値Limvが小さい値となることにより、第2の操舵補助トルク指令値Iref2が車速制限値Limvに制限され、電動モータ12で発生する操舵補助力も小さい値に制限される。同様に、モータ角速度ωが運転者の操舵や路面反力によって発生する速度ω2以上となるとモータ角速度制限値Limmがモータ角速度ωの増加に応じて徐々に小さい値となることにより、第2の操舵補助トルク指令値Iref2がモータ角速度制限値Limmに制限され、電動モータ12で発生する操舵補助力が制限される。この結果、高車速領域やモータ角速度ωが速い領域では制御異常出力状態である可能性が高いので第2の操舵補助トルク指令値Iref2を制限することにより、制御出力異常を抑制することができる。
なお、上記第2の実施形態においては、コントローラ15をハードウェアで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、マイクロコンピュータを適用して、回転情報演算部20、操舵補助トルク指令値演算部21、指令値補償部22、電流制限部23、モータ駆動回路の機能をソフトウェアで処理することもできる。この場合の処理としては、マイクロコンピュータで図5に示す操舵トルクセンサ異常検出処理及び図18に示す操舵補助制御処理を実行するようにすればよい。
ここで、操舵補助制御処理は、図18に示すように、所定時間(例えば1msec)毎にタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS31で、操舵トルクセンサ14、車速センサ16、回転角センサ17、車輪回転速度センサ18L,18R等の各種センサの検出値を読込み、次いでステップS32に移行して、モータ回転角θを微分してモータ角速度ωを算出し、次いでステップS33に移行して、モータ角速度ωを微分してモータ角速度αを算出してからステップS34に移行する。
このステップS34では、図5のトルクセンサ異常検出処理で設定されたセンサ異常フラグFaが“1”にセットされているか否かを判定し、センサ異常フラグFaが“0”にリセットされているときにはステップS35〜S38に移行する。
これらステップS35〜ステップS38では、前述した第1の実施形態における図6のステップS13〜ステップS16と同様の処理を行って第1の操舵補助トルク指令値Iref1を算出し、算出した第1の操舵補助トルク指令値Iref1を操舵補助トルク指令値Irefとして所定の指令値記憶領域に更新記憶してからステップS50に移行する。
また、上記ステップS34の判定結果が、センサ異常フラグFaが“1”にセットされているときには、操舵トルクセンサ14が異常であると判断してステップS39に移行し、前述した第1の実施形態におけるステップS17と同様の処理を行ってセルフアライニングトルク推定値SATを算出する。
次いで、ステップS40に移行して、算出したセルフアライニングトルク推定値SATとモータ角速度ωとに基づいて切増し状態、切戻し状態及び保舵状態の何れの操舵状態であるかを判定し、判定された操舵状態に応じて図9の操舵状態感応ゲイン算出マップを参照して操舵状態感応ゲインK0を算出する。
次いで、ステップS41に移行して、算出した操舵状態感応ゲインK0を前記ステップS39で算出したセルフアライニングトルク推定値SATに乗算してゲイン倍出力Iref3(=SAT*K0)を算出する。
次いで、ステップS42に移行して、車速Vsに基づいて図10に示す車速感応ゲイン算出マップを参照して車速感応ゲインK1を算出し、次いでステップS43に移行して、算出した車速感応ゲインK1をゲイン倍出力Iref3に乗算してゲイン倍出力Iref4(=Iref3*K1)を算出する。
次いで、ステップS44に移行して、4輪の車輪速度VwFL〜VwRRとモータ角度θとに基づいて車両モデルを利用して前述した(2)及び(3)式の演算を行ってセルフアライニングトルク演算値SAToを算出し、算出したセルフアライニングトルク演算値SAToと前記ステップS39で算出したセルフアライニングトルク推定値SATとの偏差ΔSATを算出し、算出した偏差ΔSATの絶対値|ΔSAT|に基づいて図13に示すセルフアライニングトルクゲイン算出マップを参照してセルフアライニングトルクゲインK2を算出する。
次いで、ステップS45に移行して、算出したセルフアライニングトルクゲインK2をゲイン倍出力Iref4に乗算してゲイン倍出力Iref5(=Iref4*K2)を算出する。
次いで、ステップS46に移行して、4輪車輪速度VwFL〜VwRRに基づいて前述した駆動輪スリップ率ΔVwを算出し、その絶対値|ΔVw|に基づいて図15の駆動輪スリップゲイン算出マップを参照して駆動輪スリップゲインK3を算出する。
次いで、ステップS47に移行して、算出した駆動輪スリップゲインK3をゲイン倍出力Iref5に乗算してゲイン倍出力Iref6(=Iref5*K3)を算出する。
次いで、ステップS48に移行して、車速Vsに基づいて図16(a)に示す車速制限値算出マップを参照して車速制限値Limvを算出すると共に、モータ角速度ωに基づいて図16(b)に示すモータ角速度制限値算出マップを参照してモータ角速度制限値Limmを算出し、算出した車速制限値Limv及びモータ角速度制限値Limmのうち何れか小さい値を制限値Limとして設定する。
次いで、ステップS49に移行して、設定された制限値Limでゲイン倍出力Iref6を制限して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出し、算出した第2の操舵補助トルク指令値Iref2を操舵補助トルク指令値Irefとして所定の指令値記憶領域に更新記憶してからステップS50に移行する。
このステップS50では、モータ角速度ωに収斂性ゲインKcを乗算して収斂性補償値Ic(=Kc*ω)を算出し、次いでステップS51に移行して、モータ角加速度αに基づいて慣性補償値Tiを算出する。
次いで、ステップS52に移行して、指令値記憶領域に記憶されている操舵補助トルク指令値Irefに収斂性補償値Ic及び慣性補償値Iiを加算して補償後操舵補助トルク指令値Iref′を算出する。
次いで、ステップS53に移行して、算出した補償後操舵補助トルク指令値Iref′を最大電流制限処理して、制限後操舵補助トルク指令値Iref″を算出し、次いでステップS54に移行して、算出した制限後操舵補助トルク指令値Iref″をモータ愚答回路24に出力して、電動モータ12を駆動してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
この図6の処理において、ステップS34の処理が異常時切換手段に対応し、ステップS35〜S38の処理が第1のトルク指令値演算手段に対応し、ステップS39〜S49の処理が第2のトルク指令値演算手段に対応し、このうちステップS40〜S49の処理がゲイン調整手段に対応し、S50〜S54の処理がモータ制御手段に対応している。
このように、マイクロコンピュータで、図5のトルクセンサ異常検出処理及び図18の操舵補助制御処理を実行することにより、前述した第2の実施形態と同様に操舵トルクセンサ14が正常であるときには図18の操舵補助制御処理におけるステップS35〜S38の処理を実行して、第1の操舵補助トルク指令値Iref1を算出する。また、操舵トルクセンサ14が異常であるときには図18の操舵補助制御処理におけるステップS39〜S49の処理を実行して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出することにより、ステアリングギヤ機構8のラック軸に入力される路面からの反力でなるセルフアライニングトルクSATを推定し、推定したセルフアライニングトルクSATに種々のゲイン調整を行って第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。
このため、操舵トルクセンサ14が正常である場合には第1の操舵補助トルク指令値Iref1に基づいて電動モータ12が駆動制御されて、正確な操舵補助制御を行い、操舵トルクセンサ14に異常が発生した場合には、車輪回転速度VwL及びVwRに基づいてセルフアライニングトルクSATを推定し、推定したセルフアライニングトルクSATにゲイン調整を行って第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。このため、操舵トルクセンサ14が正常な状態から異常な状態となった場合にも、第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて路面反力を考慮し、さらに車両の操舵状態や走行状態に応じたゲイン調整を行ってより最適な操舵補助制御を継続することができる。
また、上記第2の実施形態においては、車速ゲイン調整、操舵状態ゲイン調整、セルフアライニングトルクゲイン調整及び駆動輪スリップゲイン調整を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、必要に応じて上記各調整の何れか1つを選択するか又は複数を選択して組み合わせるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、車速感応ゲイン調整部37で車速Vsに基づいて車速感応ゲインK1を算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、4輪の車輪速VwFL〜VwRRの平均値又は従動輪の車輪速の平均値を車速として適用するようにしても良い。
次に、本発明の第3の実施形態を図19及び図20について説明する。
この第3の実施形態では、前述した第1及び第2の実施形態におけるセルフアライニングトルク初期推定部321で推定したセルフアライニングトルク初期推定値SATiに対してモータ角速度ωに基づく角速度補正値で補正するようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、回転情報演算部20で演算されたモータ角速度ωを角速度ゲインKhysが設定された増幅器326に供給してヒステリシス補正値Ahysを算出し、算出したヒステリシス補正値Ahysをセルフアライニングトルク初期推定部321及びローパスフィルタ322間に介装した加算器327に供給して、セルフアライニングトルク初期推定値SATiのヒステリシス特性を補正する。
前述した第1及び第2の実施形態では、実際に車両に生じるセルフアライニングトルクSATとセルフアライニングトルク初期推定部321で推定したセルフアライニングトルク初期推定値SATiとの関係は、図20で破線図示のように、比較的大きなヒステリシス特性を有することになる。このため、上記第2の実施形態では、モータ角速度ωに基づいてヒステリシス補正値Ahysを算出し、このヒステリシス補正値Ahysをセルフアライニングトルク初期推定値SATiに加算するので、ヒステリシス特性がモータ角速度すなわち舵角速度に応じて補正されることにより、図20で実線図示のようにヒステリシス特性の幅を狭くしてより正確なセルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出することができる。
次に、本発明の第4の実施形態を図21〜図24に基づいて説明する。
この第4の実施形態では、セルフアライニングトルク推定値を車輪回転速度VwL及びVwRから直接的に算出する場合に代えて、車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて車両横滑り角βを推定し、推定した車両横滑り角βに基づいてセルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出するようにしたものである。
すなわち、第4の実施形態では、図21に示すように、セルフアライニングトルク推定部32Aに車輪回転速度VwL及びVwRの他にモータ回転角θ及びモータ角速度ωが供給されている。そして、セルフアライニングトルク推定値部32Aが図22に示す構成を有する。
このセルフアライニングトルク推定部32Aは、左右の車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて車両横滑り角βを推定する横滑り角推定部328と、モータ回転角θが入力されて角度変化量Δθを算出する角度変化量演算部329と、この角度変化量演算部329で演算された角度変化量Δθが入力される滑り角補正ゲインKslpが設定された増幅器330と、この増幅器330で算出した滑り角補正値Aslpを横滑り角推定部328で推定した横滑り角βに加算してタイヤ捩じり量による補正を行なう加算器331と、前述した第2の実施形態と同様の増幅器326及び加算器327とを備えている。
ここで、横滑り角推定部328は、第1の実施形態で前述した(1)式の演算を行なって車輪回転速度差ΔVwを算出し、算出した車輪回転速度差ΔVwをもとに図23に示す車両横滑り角算出マップを参照して車両横滑り角βを推定する。車両横滑り角算出マップは、図23に示すように、横軸に車輪回転速度差ΔVwをとり、縦軸に車両横滑り角βをとった実車の測定値から求められる特性線図で表され、車輪回転速度差ΔVwがゼロ近傍であるときには、比較的緩やかな勾配となり、これより車輪回転速度差ΔVwが大きくなると比較的急峻な勾配となる特性曲線Lが設定されている。
一方、セルフアライニングトルク初期推定部321では車両横滑り角βをもとに図24に示すセルフアライニングトルク初期推定値算出マップを参照してセルフアライニングトルク初期推定値SATiを推定する。このセルフアライニングトルク初期推定値算出マップは、図24に示すように、横軸に車両横滑り角βをとり、縦軸にセルフアライニングトルク初期推定値SATiをとった実車の測定値から求められる特性線図で表され、車速相当値Vs′をパラメータとして車速相当値Vs′が大きな値となるに応じて傾斜角が大きくなる線形区間Lsとこの線形区間Lsの両端から延長する飽和区間Laとでなる特性線が設定されている。
この第3の実施形態によると、第2の操舵補助トルク指令値演算部32を構成するセルフアライニングトルク推定部32Aで、従動輪の左右の車輪回転速度VwL及びVwRの車輪回転速度差ΔVwをもとに、図23に示す車両横滑り角算出マップを参照して、車両横滑り角βを算出し、算出した車両横滑り角βを、モータ回転角θの角度変化量Δθに基づく滑り角補正値Aslpで補正することにより、タイヤの捩じり量による誤差分を補正して車両横滑り角βの推定精度を高めることができる。
そして、セルフアライニングトルク初期推定部321で、推定した横滑り角βをもとに図24に示すセルフアライニングトルク初期推定値算出マップを参照してセルフアライニングトルク初期推定値SATiを推定し、このとき車速相当値Vs′に応じた傾きの特性線を選択することにより、車速相当値Vs′に応じた最適なセルフアライニングトルク初期推定値SATiを推定することができる。
そして、推定したセルフアライニングトルク初期推定値SATiを前述した第3の実施形態と同様にモータ角速度ωに基づくヒステリシス補正値Ahysで補正することにより、ヒステリシス特性を補正してより正確なセルフアライニングトルク初期推定値SATiを推定することができ、このセルフアライニングトルク初期推定値SATiに“1”以下のゲインKを乗じて第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出するので、高精度の補助操舵トルク指令値Iref2を算出することができる。
なお、上記第4の実施形態においては、セルフアライニングトルク初期推定部321に車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて算出した車速相当値Vs′を供給する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車速センサ16で検出した車速Vsをセルフアライニングトルク初期推定部321に供給するようにしてもよい。
同様に、上記第1〜第4の実施形態においては、セルフアライニングトルク推定部32Aを構成する位相補正部325に車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて算出した車速相当値Vs′を供給する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車速センサ16で検出した車速Vsを供給するようにしてもよい。
また、上記第3の実施形態及び第4の実施形態を前述した第2の実施形態に適用した場合の全体構成図は、図25及び図26に示すようになり、セルフアライニングトルク推定部32Aの入力を変更すれば良いものである。
SM…ステアリング機構、1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、2a…入力軸、2b…出力軸、3…ステアリングコラム、4,6…ユニバーサルジョイント、5…中間シャフト、8…ステアリングギヤ機構、9…タイロッド、WL,WR…転舵輪、10…操舵補助機構、11…減速機構、12…電動モータ、14…操舵トルクセンサ、15…コントローラ、16…車速センサ16…回転角センサ、18L,18R…車輪回転速度センサ、20…回転情報演算部、201…モータ角速度演算部、212…モータ角加速度演算部、21…操舵補助トルク指令値演算部、22…指令値補償部、23…電流制限部、24…モータ駆動回路、31…第1の操舵補助トルク指令値演算部、311…トルク指令値算出部、312…位相補償部、313…センタ応答性改善部、314…加算器、32…第2の操舵補助トルク指令値演算部、32A…セルフアライニングトルク推定部、32B…増幅部、32C…ゲイン調整部、32D…トルク制限部、321…セルフアライニングトルク初期推定部、322…ローバスフィルタ、324…平均値演算部、325…位相補正部、326…増幅器、327…加算器、328…横滑り角推定部、329…角度変化量演算部、330…増幅器、33…トルクセンサ異常検出部、34…指令値選択部、36…操舵状態ゲイン調整部、37…車速感応ゲイン調整部、38…セルフアライニングトルクゲイン調整部、38A…セルフアライニングトルクゲイン設定部、38B…ゲイン乗算部、381…セルフアライニングトルク演算部、382…減算器、383…絶対値演算部、384…ゲイン算出部、39…駆動輪スリップゲイン調整部、40…トルク制限値設定部、41…リミッタ部、43…収斂性補償部、44…慣性補償部、45,46…加算器

Claims (3)

  1. ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて第1のトルク指令値を演算する第1のトルク指令値演算手段と、前記ステアリング機構に与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記トルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
    前記操舵トルク検出手段の異常を検出するトルク検出部異常検出手段と、
    車両の左右の車輪回転速度を検出する車輪回転速度検出手段と、
    該車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて第2のトルク指令値を演算する第2のトルク指令値演算手段と、
    前記トルク検出部異常検出手段で前記トルク検出手段の異常を検出したときに、前記第1のトルク指令値演算手段に代えて、前記第2のトルク指令値演算手段を選択して前記モータ制御手段に第2のトルク指令値を出力する異常時切換手段とを備え、
    前記第2のトルク指令値演算手段は、前記車輪回転速度に基づいて前記ステアリング機構に路面側から伝達されるセルフアライニングトルクを推定するセルフアライニングトルク推定手段と、該セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルクにゲインを乗算して前記第2のトルク指令値を演算するゲイン調整手段とを備え、
    前記セルフアライニング推定手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した前記左右の車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて、車速に応じた左右の車輪回転速度差ΔVwを算出し、前記左右の車輪回転速度差ΔVwをもとに、セルフアライニングトルク算出マップを参照してセルフアライニングトルクSATiを算出するものであり、
    前記セルフアライニングトルク算出マップは、前記左右の車輪回転速度差ΔVwが零である状態では、セルフアライニングトルクSATが“0”であり、前記左右の車輪回転速度差ΔVwが正値となると、セルフアライニングトルクSATが増加し、その後前記左右の車輪回転速度差ΔVwが所定値ΔVw1以上となると、前記左右の車輪回転速度差ΔVwの増加に応じてセルフアライニングトルクSATの増加率が徐々に低下する特性線に設定され、一方、前記左右の車輪回転速度差ΔVwが負値となると、セルフアライニングトルクSATが“0”より左右の車輪回転速度差ΔVwが所定値−ΔVw1となるまでは減少し、前記左右の車輪回転速度差ΔVwが所定値−ΔVw1を越えるとセルフアライニングトルクSATの減少率が徐々に減少する特性曲線に設定されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記左右の車輪回転速度差ΔVwは、下記(1)式により求められることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
    ΔVw=(VwL−VwR)/{(VwL+VwR)/2}・・・(1)
  3. 前記ゲイン調整手段は、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報に基づいて、前記車輪回転速度検出手段で検出した左右の車輪回転速度に基づいて算出した車速及び車速検出手段で検出した車速の一方に基づいて、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報と前記車輪回転速度検出手段で検出した左右の車輪回転速度と基づいて、あるいは前記車輪回転速度検出手段で検出した左右の車輪回転速度に基づいて調整ゲインを算出し、算出された前記調整ゲインを前記セルフアライニングトルクに乗算して前記第2のトルク指令値を演算することを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
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