JP5303920B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
また、このような電動パワーステアリング装置において、操舵性能の向上やコーナリング時の車両の挙動を安定させるために、車両に取り付けられた車輪を中立に戻そうとするトルクであるセルフアライニングトルクを求めて操舵制御に用いたもの、さらにタイヤのグリップ状態を考慮して操舵制御を行うようにしたもの等も提案されている。
また、タイヤのグリップ力が限界に近づくと、電流指令値を減少させるように補正することで操舵反力を大きくし、運転者の切増し操舵を抑制するようにしているので、タイヤのグリップ力が限界に近づいて操舵反力が小さくなる際に、制御特性によっては、タイヤのグリップ限界を感知できるような熟練運転者にとってはタイヤのグリップ限界を感知しにくく、効果的に切増し操舵を抑制できない。
タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度を検出するグリップロス度検出手段と、前記操舵補助電流指令値に対してアクティブリターン補償を行うことで、ハンドルを中立に戻すハンドル戻し制御を行うアクティブリターン補償手段と、前記グリップロス度検出手段で検出したグリップロス度に基づいて前記アクティブリターン補償手段のアクティブリターン補償値を補正する補償値補正手段とを備え、前記補償値補正手段は、前記グリップロス度が第1の閾値よりも大きく且つ第2の閾値以下であるときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値を減少補正するように構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項4に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1又は2に係る発明において、前記補償値補正手段は、前記グリップロス度が前記第2の閾値を超えているときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値に1を超えるゲインを乗算して増加補正するように構成されていることを特徴としている。
さらに、タイヤのグリップ力が限界に近づいて、グリップロス度が所定範囲以上になったときに、アクティブリターン補償値を増加補正することにより、操舵反力を増加させて運転者の切増し操舵を抑制することができるという効果が得られる。
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図であって、図中、符号SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aと、この入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ機構8を介して左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって左右の転舵輪WL,WRを転舵させる。ここで、ステアリングギヤ機構8は、ギヤハウジング8a内に、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8bとこのピニオン8bに噛合するラック軸8cとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8bに伝達された回転運動をラック軸8cで車幅方向の直進運動に変換して、タイロッド9に伝達する。
また、減速機11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内には、操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を磁気変化や抵抗変化として検出し、それを電気信号に変換するように構成されている。
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図4に示して説明する。
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) + T(s) − J・αm(s) − Fr・sign(ωm(s)) …(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ωm、モータ角加速度αm、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを検出することができる。SAT検出部35は、このセルフアライニングトルク検出値をSATdとして出力する。ここで、アシストトルクTmは操舵補助電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助電流指令値Irefを適用する。
ここで、SAT推定部41でセルフアライニングトルク推定値SATpを推定する原理は、以下の通りである。
図5では、タイヤが接地面全体において発生する横力はトレッド部の横方向への変形面積(斜線部)となり、セルフアライニングトルクSATがスリップ角を減少させる方向に働く様子を示している。また、図6は、横力の着力点(接地面の中心点)がタイヤの中心線より後方にあることを示している。そして、ニューマチックトレールとキャスタトレールとの加算値がトレールとなる。
なお、重心から後輪までの距離をL2(固定値)、車両重量をm、横加速度をGy、車両慣性モーメントをMo、ヨーレートγの微分値をdγ/dt、ホイールベースをLとしたとき、横力Fyは次式(4)により算出することができる。
Fy=(L2・m・Gy+Mo・dγ/dt)/L ……(4)
一方、図7は横力FyとセルフアライニングトルクSATの特性をスリップ角に対して示す特性図であり、横力FyとSATとはスリップ角に対して非線形な特性となっている。そして、SATは横力Fy×トレールεnであり、キャスタトレールは固定値であることから、セルフアライニングトルクSATの横力Fyに対する非線形特性はニューマチックトレールの変化を直接表すことになる。また、セルフアライニングトルクSATの横力に対する特性は、図6における滑り域が増大し、ニューマチックトレールが減少することによって生じる。
この(5)式で算出されるgがグリップロス度であり、このグリップロス度gにより車両におけるタイヤのグリップ力が失われた度合を推定することができる。
図8は、セルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルク推定値SATp(トレールεn×横力Fy)とを比較して示す特性図であり、スリップ角が大きくなるにしたがって、セルフアライニングトルクSATが失われる様子を示しており、上記(5)式から算出されるセルフアライニングトルク検出値SATdとセルフアライニングトルク推定値SATpとの差をグリップロス度g(図中網かけ部)として示している。
ここで、ゲイン算出マップは、図9に示すように、グリップロス度gが正値である場合には、グリップロス度gが0から第1の閾値Th1までの間で補償ゲインKが“1”となり、グリップロス度gが第1の閾値Th1を超えると補償ゲインKが“1”からグリップロス度gの増加に応じて減少し、第1の閾値Th1より僅かに大きい閾値Th1′で補償ゲインKが“1”より小さい所定値Kaに達し、その後、グリップロス度gが第2の閾値Th2に達するまでは補償ゲインKが所定値Kaを維持し、グリップロス度gが第2の閾値Th2を超えるとグリップロス度gの増加に応じて比較的急な傾きで補償ゲインKが“1”を超えて増加するように特性線が設定されている。
なお、舵角速度ωhは、角速度演算部31で演算したモータ角速度ωm、或いは舵角速度センサを設け、その舵角速度センサの検出値を利用することもできる。
このアクティブリターン補償部40は、操舵補助電流指令値Irefに対して印加するハンドル戻し制御信号として、アクティブリターン補償値HRを出力するものである。
この図10に示すように、アクティブリターン補償部40は、操舵角δに基づいて所定関数でハンドル戻し基本電流値Irを出力するハンドル戻し基本電流回路40aと、車速Vxを入力して所定関数により車速Vxに応じた車速感応ゲインGvを出力する車速感応ゲイン出力回路40bと、舵角速度ωhを入力して所定関数により舵角速度ωhに応じた舵角速度感応ゲインGωを出力する舵角速度感応ゲイン出力回路40cと、ハンドル戻し基本電流回路40aからのハンドル戻し基本電流値Irとゲイン回路40bからの車速感応ゲインGvとを乗算し、その結果Irvを出力する乗算器40dと、乗算器40dからの出力Irvと舵角速度感応ゲインGωとを乗算し、アクティブリターン補償値HRを出力する乗算器40eとで構成されている。
これにより、低速走行時にはアクティブリターン補償値HRを比較的大きく算出して、ハンドル戻りを確実に行うと共に、高い舵角速度でハンドルが戻される際にはアクティブリターン補償値HRを比較的小さく算出して、収斂性への悪影響を排除するなど、確実なハンドル戻しと収斂性制御とのバランスを考慮したハンドル戻し制御を行うことができる。
この2相/3相変換部26では、入力されるd軸電流指令値Idref及びq軸電流指令値Iqrefを電気角変換部30から入力される電気角θeに基づいて2相/3相変換して3相モータ電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefを算出し、算出したモータ電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefをモータ電流制御部27に出力する。
まず、トルクセンサ14からの操舵トルクT、車速センサ16からの車速Vx、回転センサ17からのモータ回転角θm、操舵角センサ18からの操舵角δ、ヨーレートセンサ42からのヨーレートγ、横加速度センサ43からの横加速度Gyを読込む(ステップS1)。
さらに、ヨーレートγ、横加速度Gyをもとに、前記(4)式の演算を行って横力Fyを算出し、算出した横力Fyとトレールεnとに基づいて前記(3)式の演算を行うことにより、セルフアライニングトルク推定値SATpを推定し(ステップS5)、セルフアライニングトルク検出値SATd及びセルフアライニングトルク推定値SATpの偏差からグリップロス度gを検出する(ステップS6)。
そして、算出した補償後操舵補助電流指令値Iref′に基づいてd軸電流指令値Idrefを算出すると共に、q軸電流指令値Iqrefを算出し(ステップS13)、次いでd軸電流指令値Idref及びq軸電流指令値Iqrefを電気角θeに基づいて2相/3相変換して3相モータ電流Iaref、Ibref及びIcrefを算出する(ステップS14)。
これにより、インバータ74から3相のモータ駆動電流Ia、Ib及びIcが電動モータ12に出力され、電動モータ12が駆動制御されることにより、操舵トルクT及び車速Vxに応じた最適な操舵補助力を発生し、この操舵補助力を、減速機11を介してステアリングシャフト2に伝達する。
このため、アクティブリターン補償値HRが減少補正されて補正アクティブリターン補償値HR′となるので、アクティブリターン補償が抑制されることになり、操舵反力を減少させて、運転者にタイヤのグリップ力が失われ始めている状態を確実に感知させることができる。
したがって、乗算器52の出力である補正アクティブリターン補償値HR′は、補正前のアクティブリターン補償値HRより大きな値となる。その結果、操舵反力を増加させることになり、運転者のステアリングホイールの切増し操舵を抑制させることができるので、グリップ力が失われることにより車両挙動が不安定となることを抑制することができる。
また、上述のようにグリップロス度が不感帯幅内の値である場合には、アクティブリターン補償値の補正は行わないので、グリップロスが発生していないか比較的グリップロスが小さく悪影響を及ぼすことのない状況であるにも関わらず操舵補助力が抑制され、十分な操舵補助力を発生されないことに起因して運転者に違和感を与えることを回避することができる。
なお、上記実施形態においては、補償ゲイン算出部51でグリップロス度gに基づいて補償ゲインKを算出する補償ゲイン算出マップの特性線を、図9に示すように線形に設定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車両特性に合わせて設定してもよい。例えば、閾値Th1´から閾値Th2までの間の特性を所定値で固定しないようにしたり、ゲインを負にするなど、特性線自体を非線形に設定したりしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、ヨーレートγ、横加速度Gy及び車両運動モデルに基づいて横力Fyを推定し、この横力Fyに基づいて実際に車両に作用するセルフアライニングトルクを推定する場合について説明したが、ハブ等に横力センサを設け、この横力センサで直接横力を検出し、これを用いてセルフアライニングトルク推定値SATpを算出してもよい。
ヨーレートγとスリップ角βと車速Vxと操舵角δとの関係は、次式(6)及び(7)で表すことができる。
mVx・(dβ/dt)=−{mVx+[(Kf・Lf−Kr・Lr)/Vx]}・γ−(Kf+Kr)・β+Kf・δ/n ……(6)
I・(dγ/dt)=−[(Kf・Lf2+Kr・Lr2)/Vx]・γ+(−Kf・Lf+Kr・Lr)・β+Kf・Lf・δ/n ……(7)
なお、(6)及び(7)式中の、mは車両重量、Iは車両重心を通るZ軸回りの慣性モーメント、Lはホイールベース(L=Lf+Lr)、Lf,Lrは、前,後車軸から重心までの水平距離、Kf,Krは、前,後タイヤのコーナリングパワー、nはオーバーオールステアリングギア比、δ/nは前輪実舵角、βは車体重心のスリップ角、Vxは車速、γはヨーレートである。
ここで、Ktはモータのトルク定数、Jmはモータのロータ部の慣性モーメントである。
この他、電動モータ12の出力軸、減速機11の入出力軸等のトルク伝達軸に磁歪式トルクセンサなどのトルクセンサを配設し、このトルクセンサで検出したモータアシストトルクTmaを適用するようにしてもよい。
Claims (5)
- 転舵輪を転舵するステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記ステアリング機構に操舵補助力を付与する電動モータと、前記操舵トルクに基づいて操舵補助電流指令値を演算し、演算した操舵補助電流指令値に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動パワーステアリング装置であって、
タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度を検出するグリップロス度検出手段と、前記操舵補助電流指令値に対してアクティブリターン補償を行うことで、ハンドルを中立に戻すハンドル戻し制御を行うアクティブリターン補償手段と、前記グリップロス度検出手段で検出したグリップロス度に基づいて前記アクティブリターン補償手段のアクティブリターン補償値を補正する補償値補正手段とを備え、
前記補償値補正手段は、前記グリップロス度が第1の閾値よりも大きく且つ第2の閾値以下であるときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値を減少補正するように構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記補償値補正手段は、前記グリップロス度が第1の閾値よりも大きく且つ第2の閾値以下であるときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値に1以下のゲインを乗算して減少補正するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記補償値補正手段は、前記グリップロス度が前記第2の閾値を超えているときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値を増加補正するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記補償値補正手段は、前記グリップロス度が前記第2の閾値を超えているときに、前記アクティブリターン補償部のアクティブリターン補償値に1を超えるゲインを乗算して増加補正するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記転舵輪側に発生するセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク検出手段と、車両の横力を検出する横力検出手段と、該横力検出手段で検出した横力に基づいてセルフアライニングトルクを推定するセルフアライニングトルク推定手段とを備え、前記グリップロス度検出手段は、前記セルフアライニングトルク検出手段で検出したセルフアライニングトルク検出値と、前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルク推定値とに基づいてグリップロス度を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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