JP2008254602A - 電動パワーステアリング装置の制御装置 - Google Patents

電動パワーステアリング装置の制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】タイヤのグリップ状態を高精度に検出し、素早い操舵操作が行われた場合であっても、この操舵操作に伴いグリップが失われる状態となることを的確に防止する。
【解決手段】アシストトルクTm等に基づき発生するSAT演算値SATaを演算し、また、横力に基づき実際に生じたSAT推定値SATbを推定し、これらセルフアライニングトルクの演算値SATaと推定値SATbとの差からグリップロス度gを算出する。このグリップロス度gと、操舵角速度相当値としての電動モータ12の角速度ωとから、グリップロス度gが大きいときほど大きくなり、且つ角速度ωが大きいときほど大きくなるトルク補正値ΔTを設定し、このトルク補正値ΔT相当を、操舵トルクT及び車速Vに応じた電流指令値Itvから減算して電流指令値Itvを補正し、この補正した電流指令値Itvを操舵補助指令値Imとして、これに基づき電動モータ12を駆動する。
【選択図】 図7

Description

本発明は、車両のステアリング機構に対し、モータにより操舵補助力を付与するようにした電動パワーステアリング装置の制御装置に関し、特に、タイヤのグリップが失われた場合であっても、車両挙動を安定させることの可能な電動パワーステアリング装置の制御装置に関する。
従来、ステアリング装置として、ドライバがステアリングホイールを操舵する操舵トルクに応じてモータを駆動することにより、ステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が普及している。
また、このような電動パワーステアリング装置において、操舵性能の向上やコーナリング時の車両の挙動を安定させるために、車両に取り付けられた車輪を中立に戻そうとするトルクであるセルフアライニングトルクを求めて操舵制御に用いたもの、さらにタイヤのグリップ状態を考慮して操舵制御を行うようにしたもの等も提案されている。
このタイヤのグリップ状態を算出する方法としては、例えば規範ヨーレートと実ヨーレートとの偏差をタイヤのグリップ状態相当の値として用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−264392号公報
しかしながら、上述のように、規範ヨーレートと実ヨーレートとの偏差をグリップ状態相当の値として用いた場合、これらヨーレートの偏差は、グリップ状態を表すものの、実際のグリップ状態との誤差は比較的大きい。
また、規範ヨーレートは定常走行状態における特性を用いているため、動的な過渡応答、特に素早い操舵が行われた場合には、的確なグリップ状態を得ることは困難である。また、ヨーレートは車両の慣性等の影響を受けるためその応答性が遅い。このため、この場合も、特に、素早い操舵が行われた場合には、的確なグリップ状態を得ることは困難である。
したがって、このようにヨーレート偏差を用いてグリップ状態を推定し、これを用いて操舵制御を行った場合、実際のグリップ状態と推定されるグリップ状態との誤差が大きいことから、場合によっては、実際のグリップ状態に応じた許容範囲以上の切り増し方向への操舵が行われてしまい、グリップが失われたり、車両挙動が不安定となったりする可能性がある。
そこで、この発明は上記従来の未解決の問題点に着目してなされたものであり、車両のグリップ状態に応じて、グリップを失うことなく車両挙動を安定させることの可能な電動パワーステアリング装置の制御装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、車両のステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記操舵トルクに基づいて操舵補助指令値を算出する操舵補助指令値演算手段と、を有し、前記操舵補助指令値に基づいて前記ステアリング機構に操舵補助力を付与するモータを駆動する電動パワーステアリング装置の制御装置において、前記操舵補助指令値演算手段は、ステアリングホイールの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度を検出するグリップロス度検出手段と、前記操舵トルクに基づき前記モータの電流指令値を算出する電流指令値演算手段と、前記操舵角速度検出手段で検出した操舵角速度及び前記グリップロス度検出手段で検出したグリップロス度に基づいて前記電流指令値演算手段で算出した電流指令値を補正しこれを前記操舵補助指令値とする補正手段と、を備えることを特徴としている。
また、請求項2に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、前記補正手段は、前記操舵補助指令値が、前記グリップロス度が大きいときほど小さくなり且つ前記操舵角速度が大きいときほど小さくなるように前記電流指令値を補正することを特徴としている。
また、請求項3に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、前記補正手段は、前記グリップロス度に応じて前記電流指令値を補正するための補正値を算出し、当該補正値と前記操舵角速度との乗算値を前記電流指令値から減算した値を前記操舵補助指令値とすることを特徴としている。
また、請求項4に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、前記補正手段は、前記グリップロス度が大きいときほどより小さな値に設定されるグリップロス度係数と前記操舵角速度が大きいときどより小さな値に設定される角速度係数とを乗算して補正係数を算出し、当該補正係数を前記電流指令値に乗算した値を前記操舵補助指令値とすることを特徴としている。
また、請求項5に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、前記ステアリングホイールに対する操舵操作が切り増し方向であるか否かを判定する操舵方向判定手段を有し、前記補正手段は、前記操舵方向判定手段で切り増し方向であると判定されるときには、前記操舵補助指令値が、切り戻し方向である場合よりも小さくなるように前記電流指令値を補正することを特徴としている。
また、請求項6に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、前記ステアリング機構は、転舵輪を操舵するタイロッドに接続されているラックを有し、前記グリップロス度検出手段は、前記ラック上に生じる外力をセルフアライニングトルク演算値として算出するSAT演算部と、路面から生じるセルフアライニングトルクを車両運動モデルに基づいてセルフアライニングトルク推定値として推定するSAT推定部と、前記SAT演算部で算出されたセルフアライニングトルク演算値及び前記SAT推定部で推定されたセルフアライニングトルク推定値の偏差に基づいて前記グリップロス度を算出するグリップロス度検出部と、を備えることを特徴としている。
また、請求項7に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、前記ステアリング機構は、転舵輪を操舵するタイロッドに接続されているラックを有し、前記グリップロス度検出手段は、前記ラック上に生じる外力をセルフアライニングトルク演算値として算出するSAT演算部と、車両に作用する横力を検出する横力検出部と、前記SAT演算部で算出されたセルフアライニングトルク演算値及び前記横力検出部で検出された横力に基づいて前記グリップロス度を算出するグリップロス度検出部と、を備えることを特徴としている。
さらに、請求項8に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、車速を検出する車速検出手段と、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段と、を備え、前記SAT推定部は、前記車速検出手段で検出される車速と、前記操舵角検出手段で検出される操舵角とを前記車両運動モデルに代入して前記セルフアライニングトルク推定値を推定することを特徴としている。
本発明に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、操舵トルクに基づき算出したモータの電流指令値を、タイヤのグリップロス度とステアリングホイールの操舵角速度とに基づいて補正し、補正して得た操舵補助指令値に基づいてモータを駆動するため、グリップロス度と操舵角速度とを考慮した操舵補助力を付与することができ、操舵操作によりグリップが失われる状態となることを回避し、車両挙動を安定させることができる。
特に、請求項5に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、操舵方向判定手段により切り増し方向への操舵操作か、切り戻し方向への操舵操作かを判断し、切り増し方向である場合には、切り戻し方向である場合よりも操舵補助指令値が小さくなるようにしていることから、切り増し時には操舵補助力を小さくして切り増し方向への操舵操作を行わせにくくし、且つ切り戻し時には十分な操舵補助力を付与して切り戻し操作を容易に行わせることができる。
また、請求項6から請求項8に係る電動パワーステアリング装置の制御装置は、グリップロス度の変化に対する応答性の高いセルフアライニングトルクに基づいてグリックロス度を算出しているため、グリップロス度を高精度に検出することができる。
以下、本発明の実施の形態を図明に基づいて説明する。
まず、第1の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す全体構成図である。
図中、1は、ステアリングホイールであり、このステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が入力軸2aと出力軸2bとを有するステアリングシャフト2に伝達される。このステアリングシャフト2は、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は操舵トルクを検出するトルクセンサ3を介して出力軸2bの一端に連結されている。
出力軸2bに伝達された操舵力は、ユニバーサルジョイント4を介してロアシャフト5に伝達され、さらに、ユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介してタイロッド9に伝達され、図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8aとこのピニオン8aに噛合するラック8bとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8aに伝達された回転運動をラック8bで直進運動に変換している。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ11に連結された操舵補助力を発生するモータとしての例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
トルクセンサ3は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を抵抗変化や磁気変化に変換して検出するように構成されている。
このトルクセンサ3で検出された操舵トルクTは、パワーステアリング装置を制御する例えばMCU(Micro Controller Unit)で構成されるコントロールユニット20に入力され、このコントロールユニット20には、車速センサ21で検出された車速Vも入力され、コントロールユニット20は、操舵トルクT及び車速Vに応じた操舵補助力を電動モータ12で発生させるための電流指令値Itvを算出する。また、コントロールユニット20は、ステアリングホイール1を中立位置に戻そうとする力であるセルフアライニングトルクを検出し、これに基づきタイヤのグリップロス度を検出し、このグリップロス度及び電動モータ12の角速度ωに基づいて、前記電流指令値Itvを補正し操舵補助指令値Imを得る。そして、この操舵補助指令値Imに応じた電流値を電動モータ12に供給することで、グリップロス度及び電動モータ12の角速度ωすなわち操舵角速度を考慮した、操舵トルクT及び車速Vに応じた操舵補助力を発生させる。
また、このコントロールユニット20には、バッテリ25から電力が供給されると共に、イグニッションキー26のキー操作に応じてイグニッションキー信号が供給され、コントロールユニット20では、イグニッションキー信号をうけて、前記操舵補助指令値Imの演算を開始する。
コントロールユニット20では、前記グリップロス度を、次の手順で算出する。
セルフアライニングトルク(以下、SATともいう。)は、ステアリングホイールを中立位置に戻そうとする力であり、図2に示すように、ドライバがステアリングホイールを操舵することによって、操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTにしたがって電動モータMがアシストトルクTmを発生する。その結果、車輪が転舵され、転舵輪が連結されたラック軸上にタイヤから生じる外力(反力)としてSATが発生する。その際、電動モータMの慣性J及び摩擦力(静摩擦力)Frによってステアリングホイールの操舵の抵抗となるトルクが生じ、これらの力の釣り合いを考えると次式(1)の運動方程式が得られる。
なお、(1)式中のωは電動モータMの角速度、ω′は電動モータMの角加速度である。
J・ω′+Fr・sign(ω)+SAT=Tm+T ……(1)
ここで、上記(1)式を初期値零としてラプラス変換し、SATについて解くと、次式(2)が得られ、これによりSATを算出することができる。なお、このラプラス変換により得られるセルフアライニングトルクをセルフアライニングトルクの演算値SATaとする。
SATa(s)
=Tm(s)+T(s)−J・ω′(s)+Fr・sign(ω(s)) ……(2)
次に、タイヤが横滑りしながら転動する車両運動の様子をモデル化したものを、図3及び図4に示す。
図3では、タイヤが接地面全体において発生する横力はトレッド部の横方向への変形面積(斜線部)となり、SATがスリップ角を減少させる方向に働く様子を示している。また、図4は、横力の着力点(接地面の中心点)がタイヤの中心線より後方にあることを示している。そして、ニューマチックトレールとキャスタトレールとの加算値がトレールとなる。
図3及び図4より、SATは横力Fyとトレールとの積(横力Fy×トレール)であることがわかる。すなわち、トレールをεnとすると、SATは次式(3)で算出することができる。なお、この(3)式で算出されるセルフアライニングトルクを、セルフアライニングトルクの推定値SATbとする。
SATb=εn・Fy ……(3)
なお、重心から後輪までの距離をL2(固定値)、車両重量をm、横加速度をGy、車両慣性モーメントをMo、ヨーレートγの微分値をdγ/dt、ホイールベースをLとして、横力Fyは次式(4)により算出することができる。
Fy=(L2・m・Gy+Mo・dγ/dt)/L ……(4)
一方、図5は横力FyとSATの特性をスリップ角に対して示す特性図であり、横力FyとSATとはスリップ角に対して非線形な特性となっている。そして、SATは横力Fy×トレールであり、キャスタトレールは固定値であることから、SATの横力Fyに対する非線形特性はニューマチックトレールの変化を直接表すことになる。また、SATの横力に対する特性は、図4における滑り域が増大し、ニューマチックトレールが減少することによって生じる。
さらに、SATは横力Fyとトレールとの積であり、線形領域では滑り域は増加せず、ニューマチックトレールは一定値であることから、線形領域でのニューマチックトレールとキャスタトレールとの和、つまりトレールεnで横力FyをSATの次元に合わせてSAT推定値SATbとして図示すると図6のようになる。
ここで、ニューマチックトレールが一定であれば、SAT演算値SATaと横力Fy(SAT推定値SATbに相当)とは同じ軌跡を辿るが、滑り域が増大してニューマチックトレールが減少するとSAT演算値SATaと横力Fyとに差が生じる。この差はグリップが失われた度合を表し、これを本発明では「グリップロス度」とする。上記(2)式で算出されたSAT演算値SATaと、上記(3)式で算出されたSAT推定値SATbとを次式(5)により比較する。
g=SATb−SATa ……(5)
この(5)式で算出されるgがグリップロス度であり、このグリップロス度gにより車両のグリップが失われた度合を推定することができる。
図6は、SAT演算値SATaとSAT推定値SATb(トレールεnが一定の場合は横力Fy)とを比較して示す特性図であり、スリップ角が大きくなるにしたがって、SATが失われる様子を示しており、上記(5)式から算出されるSAT演算値SATaとSAT推定値SATbとの差をグリップロス度g(図中網かけ部)として示している。
次に、コントロールユニット20の機能構成を説明する。図7は、コントロールユニット20の機能構成の一例を示すブロック図であって、トルクセンサ3からの操舵トルクTは、指令値演算部40及びSAT演算部46に入力され、車速センサ21からの車速Vは指令値演算部40に入力され、指令値演算部40は操舵トルクT及び車速Vに基づいて電流指令値Itvを演算する。この電流指令値Itvの演算は、公知の手順で行えばよく、例えば、制御マップに基づいて、操舵トルクTが大きいときほど大きな値となるように設定され、且つ車速に応じて制御マップが切り替えられ、車速Vが大きいときほど操舵トルクTが小さくなるように設定される。
この指令値演算部40で演算された電流指令値ItvはSAT演算部46及び加算部60Aに入力され、加算部60Aの加算結果が操舵補助指令値Imとして減算部60Dに加算入力される。減算部60Dには、モータ電流検出器61で検出されたモータ電流値iがフィードバックされ、減算部60Dで求められる操舵補助指令値Imとモータ電流値iとの偏差(Im−i)が電流指令値ΔIとして電流制御部41に入力され、電流制御部41でPI制御等の処理を施され、さらにPWM制御部42でPWM信号処理されてインバータ回路43により電動モータ12が駆動される。
電動モータ12には、レゾルバやホール素子等の回転センサ62が設けられており、回転センサ62で検出した電動モータ12の角度θは角速度検出部63に入力され、角速度検出部63は角度θに基づいて角速度ωを検出し、この角速度ωは、SAT演算部46に入力されると共に、収れん性制御部44、角加速度検出部64及び絶対値演算部52′に入力される。角加速度検出部64で検出された角加速度ω′はSAT演算部46及び慣性補償部45に入力される。収れん性制御部44からの収れん性制御信号CM2は加算部60Bに入力され、慣性補償部45からの慣性補償信号CM1は減算部60Cに加算入力される。
ここで、SAT演算部46は前記(2)式に基づいてSAT演算値SATaを算出する。すなわち、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として求めておき、操舵トルクT、電動モータ12の角速度ω及び角加速度ω′、電流指令値Itvに基づいてSAT演算値SATaを算出する。SAT演算部46で算出されたSAT演算値SATaは、グリップロス度検出部50に入力される。
さらに、横力検出部65は、車両に設けられたヨーレートセンサ66からのヨーレートγ及び車両に設けられた横加速度センサ67からの横加速度Gyに基づいて前記(4)式から横力Fyを算出し、算出された横力FyはSAT推定部47に入力される。
SAT推定部47は、入力された横力Fyと予め実験等により求められたトレールεnとを用いて前記(3)式からSAT推定値SATbを推定する。
グリップロス度検出部50はSAT演算部46より求められたSAT演算値SATaとSAT推定部47より求められたSAT推定値SATbとから、前記(5)式にしたがってグリップロス度gを求める。そして、このグリップロス度gを、トルク補正値演算部51に入力する。
このトルク補正値演算部51では、グリップロス度gに基づいて、グリップロス度g相当だけ操舵補助力を補正するためのトルク補正値ΔTgを検出する。このトルク補正値ΔTgは、当該トルク補正値ΔTgを用いて、電流指令値Itvが小さくなる方向に補正することにより、このグリップロス度g相当のグリップロスが生じている状態で操舵及び操舵補助が行われた場合に、グリップが失われることを回避することの可能なトルク値相当に設定される。例えば、図7のブロック51中の特性図に示すように、グリップロス度gが零近傍の不感帯幅内、すなわち−g1≦g≦g1の範囲にあるときにはトルク補正値ΔTgは零に設定され、グリップロス度gがg1より大きいときにはグリップロス度gが大きいときほどこれに比例してトルク補正値ΔTgも大きくなるように設定され、グリップロス度gが−g1より小さいときにはグリップロス度gがマイナス方向に大きいときほどこれに比例してトルク補正値ΔTgもマイナス方向に大きくなるように設定される。そして、このトルク補正値ΔTgを乗算部52に入力する。
この乗算部52では、絶対値演算部52′で算出した角速度検出部63で検出した角速度ωの絶対値|ω|と、グリップロス度g相当のトルク補正値ΔTgとを乗算し、グリップロス度gと角速度ωとを考慮したトルク補正値ΔTgωを算出する。
そして、このトルク補正値ΔTgωをリミッタ53に入力し、リミッタ53では、トルク補正値ΔTgωの絶対値|ΔTgω|を予め設定した最大値に制限した後、これをトルク補正値ΔTとして減算部60Cに減算入力する。
減算部60Cでは、慣性補償部45からの慣性補償信号CM1からトルク補正値ΔTを減算し、その減算結果CM3は加算部60Bに入力されて収れん性制御部44からの収れん性制御信号CM2と加算され、その加算結果CM4が加算部60Aに入力されて電流指令値Itvと加算され、これが操舵補助指令値Imとなる。
次に、コントロールユニット20での動作を図8のフローチャートを参照して説明する。
まず、トルクセンサ3からの操舵トルクT、車速センサ21からの車速V、ヨーレートセンサ66からのヨーレートγ、横加速度センサ67からの横加速度Gy、回転センサ62からの角度θを入力する(ステップS1)。次いで、入力した操舵トルクT及び車速Vに基づき指令値演算部40で、操舵トルクT及び車速Vに応じた電流指令値Itvを算出し(ステップS2)、回転センサ62からの角度θに基づいて角速度検出部63において電動モータ12の角速度ωを検出し、角加速度検出部64において角加速度ω′を検出する(ステップS3)。
次いで、SAT演算部46において、操舵トルクT、電流指令値Itv、角速度ω及び角加速度ω′に基づいてSAT演算値SATaを算出し(ステップS4)、続いて横力検出部65でヨーレートγ及び横加速度Gyに基づいて横力Fyを算出し、この横力Fyに基づきSAT推定部47でSAT推定値SATbを推定する(ステップS5)。
続いてグリップロス度検出部50においてSAT演算値SATa及びSAT推定値SATbの偏差からグリップロス度gを検出し(ステップS6)、このグリップロス度gに基づきトルク補正値演算部51で、グリップロス度g相当のトルク補正値ΔTgを算出し(ステップS7)、さらに乗算部52で、このトルク補正値ΔTgに、絶対値演算部52′で算出した角速度ωの絶対値を乗算して、グリップロス度gの絶対値が|g1|よりも大きいときほど大きく、且つ角速度ωの絶対値が大きいときほど絶対値が大きな値となるトルク補正値ΔTgωを算出する(ステップS8)。そして、このトルク補正値Tgωをリミッタ53で制限してトルク補正値ΔTを算出する(ステップS9)。
次いで、慣性補償部45及び収れん性制御部44で、慣性補償信号CM1及び収れん性制御信号CM2を算出し(ステップS10)、これら慣性補償信号CM1からトルク補正値ΔTを減算した値CM3に、収れん性制御信号CM2を加算して加算結果CM4を獲得し、この加算結果CM4を加算部60Aに入力する。指令値演算部40で算出した電流指令値Itvと加算結果CM4とを加算部60Aで加算して電流指令値Itvを補正し(ステップS11)、この補正した電流指令値を操舵補助指令値Imとしこれに基づき電動モータ12を駆動する(ステップS12)。
したがって、グリップロスが生じていないかグリップロス度gが不感帯幅内の値であればトルク補正値ΔTgは略零に設定されることから、角速度ωの大きさに関わらずトルク補正値ΔTは略零となり、電流指令値Itvの補正は行われない。このため、操舵トルクT及び車速Vに応じた操舵補助力が発生されることになって、ドライバの操舵操作を的確に補助することができる。
この状態から、グリップロス度が増加するとこれに伴って、トルク補正値演算部51で算出されるトルク補正値ΔTgが増加し、このトルク補正値ΔTgが、電動モータ12の角速度ωが大きいときほどより大きくなるように補正されて、トルク補正値ΔTが算出される。そして、このトルク補正値ΔT相当だけ電流指令値Itvが小さくなるように補正されて操舵補助指令値Imが算出され、これに基づき電動モータ12が駆動される。したがって、グリップロスが発生していないときよりも、トルク補正値ΔT相当だけ低減された操舵補助力が発生されることになり、操舵補助力が抑制されることになるから、ドライバは切り増し方向への操舵をしにくくなり、すなわち、ドライバがグリップ力を越えて切り増しすることを抑制し、グリップ力が失われることにより車両挙動が不安定となることを回避することができる。
また、ここでは、操舵トルクT、アシストトルクTm、電動モータ12の角速度ω及び角加速度ω′に基づいて検出したSAT演算値SATaと、車両に発生する横力Fyに基づくSAT推定値SATbとの偏差からグリップロス度gを算出している。ここで、グリップが失われた場合、これに対するセルフアライニングトルクの応答性は、グリップが失われたことに対するヨーレートの応答性に比較して速い。したがって、セルフアライニングトルクを用いてグリップロス度を算出することによって、ヨーレートを用いてグリップロス度を算出する場合に比較してより早い段階で、グリップロス度の変化を検出することができる。よって、セルフアライニングトルクを用いてグリップロス度を算出することにより、グリップ状況をより高精度に検出することができ、このようにして検出したグリップ状況にしたがって電流指令値Itvを補正し、操舵補助力を低減することによって、より的確に操舵補助力を発生させることができ、グリップロス度に応じて切り増しし過ぎることを回避し、グリップが失われることにより車両挙動が不安定となることを確実に回避することができ、車両走行安定性を向上させることができる。
また、トルク補正値ΔTを、グリップロス度だけでなく電動モータ12の角速度ωにも基づいて算出しており、すなわち、ドライバの操舵速度に基づいて設定している。そして、電動モータ12の角速度ωが大きいときほど、すなわちドライバの操舵速度が大きいときほどトルク補正値ΔTが大きな値となるように算出しているから、ドライバの操舵速度が大きく切り増し過ぎの状態となる可能性が高いときほど操舵補助力を小さくし、切り増ししにくくすることができることから、より確実にグリップが失われる状態となることを回避することができ、すなわち、車両走行安定性を向上させることができる。
また、上述のようにグリップロス度が不感帯幅内の値である場合には、補正指令値Itvの補正は行わず、操舵トルクT及び車速Vに応じた操舵補助力を発生させるようにしているから、グリップロスが発生していないか比較的グリップロスが小さく悪影響を及ぼすことのない状況であるにも関わらず操舵補助力が抑制され、十分な操舵補助力を発生されないことに起因してドライバに違和感を与えることを回避することができる。
ここで、トルクセンサ3が操舵トルク検出手段に対応し、図8のステップS2の処理が電流指令値演算手段に対応し、ステップS3で電動モータの角速度ωを算出する処理が操舵角速度検出手段に対応し、ステップS4からステップS6の処理がグリップロス度検出手段に対応し、ステップS7からステップS11の処理が補正手段に対応し、ステップS2からステップS11の処理が操舵補助指令値演算手段に対応している。
また、ステップS4の処理がSAT演算部に対応し、ステップS5の処理がSAT推定部に対応し、ステップS5で横力を算出する処理が横力検出部に対応し、ステップS6の処理がグリップロス度検出部に対応している。
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。
この第2の実施の形態は、コントロールユニット20の構成が異なること以外は上記第1の実施の形態と同様であるので同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
図9は、第2の実施の形態におけるコントロールユニット20の概略構成を示すブロック図である。
この第2の実施の形態におけるコントロールユニット20では、指令値演算部40で算出された電流指令値Itvは、乗算部56に入力され、後述の補正係数Kと乗算されて補正電流指令値Itv′が算出され、この補正電流指令値Itv′が加算部60Aに入力される。そして、収れん性制御部44で算出した収れん性制御信号CM2と慣性補償部45で算出した慣性補償信号CM1とが加算部60Bで加算され、この加算結果CM4が加算部60Aに入力され、この加算結果CM4と補正電流指令値Itv′とが加算されて操舵補助指令値Imが算出され、この操舵補助指令値Imに基づき電動モータ12が駆動される。
また、グリップロス度検出部50で検出したグリップロス度gはグリップロス度係数演算部55′に入力され、このグリップロス度gに対応するグリップロス度係数Kgが算出される。このグリップロス度係数Kgは、図9のブロック55′中の特性図に示すように、グリップロス度gが不感帯幅内、つまり−g2≦g≦g2を満足するときには、“1”に設定される。そして、グリップロス度gが不感帯幅外であるときには、グリップロス度gの絶対値|g|が|g2|よりも大きいときほどこれに反比例してグリップロス度係数Kgが減少し、グリップロス度の絶対値|g|がしきい値g3の絶対値|g3|以上であるときグリップロス度係数Kgは零に設定される。このようにしてグリップロス度係数演算部55′で算出されたグリップロス度係数Kgは、乗算部55に入力される。この乗算部55には、グリップロス度係数Kgと、角速度係数演算部54で算出された角速度係数Kωとが入力される。
角速度係数演算部54は、角速度検出部63で検出した角速度ωに対応する角速度係数Kωを算出する。この角速度係数Kωは、図9のブロック54中の特性図に示すように、角速度ωが零であるときには角速度係数Kωは“1”に設定され、角速度ωの絶対値が大きいときほど角速度係数Kωは“1”よりも小さくなるように設定される。このようにして角速度係数演算部54で算出された角速度係数Kωは、乗算部55に入力される。
乗算部55では、グリップロス度係数演算部55′で算出されたグリップロス度Kgと、角速度係数演算部54で算出された角速度係数Kωとを乗算し、その乗算結果を補正係数Kとして乗算部56に入力する。
次に、第2の実施の形態におけるコントロールユニット20での動作を図10のフローチャートを参照して説明する。
なお、図8に示す上記第1の実施の形態における処理と同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
まず、各種センサから、操舵トルクT、車速V、ヨーレートγ、横加速度Gy、電動モータ12の角度θを入力し(ステップS1)、操舵トルクT及び車速Vに応じた電流指令値Itvを算出し(ステップS2)、電動モータ12の角度θから電動モータ12の角速度ω及び角加速度ω′を検出する(ステップS3)。
次いで、操舵トルクT、車速V、角速度ω及び角加速度ω′に基づいてSAT演算値SATaを検出し(ステップS4)、ヨーレートγ及び横加速度Gyに基づいて横力Fyを検出しSAT推定値SATbを検出する(ステップS5)。
続いてSAT演算値SATa及びSAT推定値SATbからグリップロス度gを検出する(ステップS6)。このグリップロス度gに応じたグリップロス度係数Kg及び角速度ωに応じた角速度係数Kωを、グリップロス度係数演算部55′及び角速度係数演算部54のそれぞれで算出し(ステップS6a)、これを乗算部55で乗算して補正係数Kを算出する(ステップS6b)。グリップロス度gが不感帯幅内のときにはグリップロス度係数Kgは“1”に設定されることから、補正係数Kは、角速度ωに応じて決定され、角速度ωが零近傍の値のときには角速度係数Kωは“1”近傍の値に設定されることから補正係数Kは“1”近傍の値に設定され、角速度ωの絶対値が大きくなると補正係数Kωが減少することから、これに伴って補正係数Kも減少する。そして、グリップロス度係数gが、不感帯幅外の値となると、グリップロス度gの絶対値が大きくなるほどグリップロス度係数Kgは小さな値に設定されることから、補正係数Kはこれに伴って減少し、さらに角速度ωが大きくなるほどより小さな値に設定される。
そして、慣性補償信号CM1及び収れん性制御信号CM2を算出し(ステップS10)、操舵トルクT及び車速Vに応じた電流指令値Itvと補正係数Kとを乗算部56で乗算して補正電流指令値Itv′を算出し、この補正電流指令値Itv′に、加算部60Aで慣性補償信号CM1及び収れん性制御信号CM2を加算し(ステップS11a)、この結果得た操舵補助指令値Imに基づき電動モータ12を駆動する(ステップS12)。
したがって、グリップロスが生じていないか又はグリップロス度gが不感帯幅内の値であるときには、グリップロス度係数Kgは“1”となり、補正係数Kは、角速度係数Kωにより決定されることから、角速度ωが零近傍の値のときには補正係数Kは“1”に近傍の値に設定され、電流指令値Itvの補正はそれほど行われない。このため、操舵トルクT及び車速Vに略応じた操舵補助力が発生されることになって、ドライバの操舵操作を的確に補助することができる。この状態で角速度ωの絶対値が大きくなると補正係数Kは“1”から減少するため、電流指令値Itvが抑制されることになる。また、この状態から、グリップロス度が増加すると、これに伴ってグリップロス度係数Kgが減少し、また、角速度ωが大きくなるほど角速度係数Kωは減少することから、補正係数Kは、グリップロス度gが大きいときほど小さな値となり、また、角速度ωが大きくなるほど小さな値となることから、グリップロス度が大きいときほど、また、角速度ωが大きいときほど電流指令値Itvがより小さな値に補正され、これに基づき電動モータ12が駆動される。
したがって、グリップロス度が大きくなるほど、また、電動モータ12の角速度ωが大きくなるほど操舵補助力がより小さな値に制限されることになり、ドライバの切り増し方向への操舵操作を行いにくくすることから、ドライバがグリップ力を越えて切り増しすることを抑制することができ、グリップ力が失われることにより車両挙動が不安定となることを回避することができる。
したがって、この場合も上記第1の実施の形態と同等の作用効果を得ることができる。
また、グリップロス度係数Kgに、不感帯を設けていることから、グリップロス度が小さく、グリップが失われていないにも関わらず操舵補助力が抑制されることを回避することができる。
ここで、図10のステップS6aからステップS11aの処理が補正手段に対応し、ステップS2からステップS11aの処理が操舵補助指令値演算手段に対応している。
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。
この第3の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、切り増し切り戻し判定部(操舵方向判定手段)57と、この切り増し切り戻し判定部57の判定結果に応じたゲインを乗算するゲイン部58と、を備えること以外は同様であるので、同一部には同一符号を付与し、その詳細な説明は省略する。
図11は、第3の実施の形態におけるコントロールユニット20の概略構成を示すブロック図である。
この第3の実施の形態におけるコントロールユニット20では、トルク補正値演算部51で演算されたグリップロス度gに応じたトルク補正値ΔTgは乗算部52に入力されここで電動モータ12の角速度ωの絶対値と乗算された後、ゲイン部58に入力される。また角速度検出部63で検出した電動モータ12の角速度ω及び操舵トルクTは、切り増し切り戻し判定部57に入力され、この切り増し切り戻し判定部57では操舵トルクT及び電動モータ12の角速度ωに基づいて切り増しが行われているか、切り戻しが行われているかを判定する。ここで、トルクセンサ3は、例えば、右操舵時の発生トルクは正値、左操舵時の発生トルクは負値として、操舵トルクTに符号を付与して出力するように構成されている。同様に、電動モータ12の角速度検出部63は、電動モータ12の回転方向に応じて符号を付与し、例えば、右操舵時に操舵補助力を付与する回転方向の場合には正値、左操舵時に操舵補助力を付与する回転方向の場合には負値、を付与して出力するように構成されている。そして、切り増し切り戻し判定部57では、電動モータ12の角速度ω及び操舵トルクTの符号が同一であるとき、つまり、共に正又は共に負であるとき、切り増しと判定し、これらの符号が異なるとき切り戻しと判定する。
なお、ここでは、操舵トルクTと電動モータ12の角速度ωに基づいて切り増しか切り戻しかを判定する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、特開2003−170856号公報に記載されているように、操舵トルク値Tの符号と、操舵トルク変化率の符号とが異符号であり、且つ操舵トルク変化率の絶対値が所定値以上のときに切り戻しと判定するようにしてもよい。この場合、角速度ωを用いることなく、操舵トルク値Tのみで切り増しと切り戻しとを判定することができる。
切り増し切り戻し判定部57は、このようにして切り増しか切り戻しかを判定したならばその判定信号DSをゲイン部58に出力する。
このゲイン部58は、切り増し切り戻し判定部57からの判定信号DSに基づいてゲインを切り替え、判定信号DSが切り増しである場合にはゲインG、切り戻しの場合にはゲインGよりもゲインの小さいゲインGを、トルク補正値ΔTgωに乗算し、これをリミッタ53に出力する。
そして、リミッタ53で制限されたトルク補正値ΔTが減算部60Cに減算入力されて慣性補償部45で算出された慣性補正値CM1から減算され、この演算結果CM3と収れん性制御信号CM2とを加算した加算結果CM4が電流指令値Itvに加算されて、操舵補助指令値Imが算出され、これに基づいて電動モータ12の駆動が行われる。
したがって、この第3の実施の形態におけるコントロールユニット20では、図12のフローチャートに示すように、上記第1の実施の形態と同様の手順で、ステップS1からステップS8の処理が実行されてグリップロス度gと電動モータ12の角速度ωの絶対値とに応じたトルク補正値ΔTgωが演算された後、切り増し切り戻し判定部57で判定が行われ(ステップS8a)、切り増しのときには、トルク補正値ΔTgωにゲインGが乗算され(ステップS8b)、逆に切り戻しの場合にはゲインGよりもゲインの小さいゲインGがトルク補正値ΔTgωに乗算され(ステップS8c)、ゲイン乗算後のトルク補正値ΔTgωがリミッタ53でリミッタ処理されてトルク補正値ΔTが算出される(ステップS9)。そして、慣性補償信号CM1及び収れん性制御信号CM2が算出され(ステップS10)、慣性補償信号CM1からトルク補正値ΔTが減算され、これに収れん性制御信号CM2が加算された加算結果CM4が電流指令値Itvに加算されて(ステップS11)、この結果得た操舵補助指令値Imに基づき電動モータ12が駆動される(ステップS12)。
したがって、この第3の実施の形態では、切り増し時と切り戻し時とで、トルク補正値ΔTを異ならせており、切り戻し時よりも切り増し時の方がゲインは大きく、すなわち、切り増し時の方がトルク補正値ΔTは大きな値となり、その結果操舵補助力がより小さくなるようにしており、逆に、切り戻し時にはトルク補正値ΔTは小さく、操舵補助力の低減量は少なく、ある程度の操舵補助力を発生させるようにしている。したがって、切り増し時には操舵補助力を十分低減して操舵操作を行いにくくし、グリップが失われる状態となることを確実に回避すると共に、切り戻し時には、操舵補助力を十分発生させて十分操舵補助を行い、操舵補助力が低減されることによるステアリングホイール1の中立位置への急速な戻りを回避し、操舵補助力が低減されることに起因してドライバに違和感を与えることを回避することができる。
なお、この第3の実施の形態においては、上記第1の実施の形態において、切り増し時と切り戻し時とでトルク補正値ΔTを異ならせる場合について説明したが、上記第2の実施の形態に適用することも可能である。この場合には、補正係数Kに、切り増し時か切り戻し時であるかに応じてゲインG又はゲインGを乗算し、この乗算結果と電流指令値Itvとを乗算するようにすればよく、この場合も同等の作用効果を得ることができる。
なお、上記各実施の形態においては、電動モータ12の角速度ωを、ステアリングホイール1の操舵速度相当の値として用い、角速度ωとグリップロス度gとに基づいて操舵補助力を補正する場合について説明したが、例えばステアリングシャフト2に、操舵角速度を検出するための操舵角速度センサを設け、この操舵角速度センサの検出信号を用いてもよく、また、ステアリングシャフト2に操舵角を検出するための操舵角センサを設け、この操舵角センサの検出信号を時間微分して操舵角速度を算出し、この算出した操舵角速度を用いてもよい。
また、上記各実施の形態においては、ヨーレートγ、横加速度Gy及び車両運動モデルに基づいて横力Fyを推定し、この横力Fyに基づいて実際に車両に作用するセルフアライニングトルクを推定する場合について説明したが、ハブ等に横力センサを設け、この横力センサで直接横力を検出し、これを用いてSAT推定値SATbを算出してもよい。
また、横力Fyを用いずに、水平面における車両運動モデルと、車速V及び操舵角δとを用いてセルフアライニングトルクを推定してもよい。
つまり、ヨーレートγとスリップ角βと車速Vと操舵角δとの関係は、次式(6)及び(7)で表すことができる。
mV・(dβ/dt)
=−{mV+[(Kf・Lf−Kr・Lr)/V]}・γ−(Kf+Kr)・β+Kf・δ/n
……(6)
I・(dγ/dt)
=−[(Kf・Lf+Kr・Lr)/V]・γ+(−Kf・Lf+Kr・Lr)・β
+Kf・Lf・δ/n
……(7)
なお、(6)及び(7)式中の、mは車両重量、Iは車両重心を通るZ軸回りの慣性モーメント、Lはホイールベース(L=Lf+Lr)、Lf,Lrは、前,後車軸から重心までの水平距離、Kf,Krは、前,後タイヤのコーナリングパワー、nはオーバーオールステアリングギア比、δ/nは前輪実舵角、βは車体重心のスリップ角、Vは車速、γはヨーレートである。
セルフアライニングトルクはヨーレートγとスリップ角βの関数として表すことができることから、ヨーレートγとスリップ角βとを車速Vと操舵角δとの関数として整理すれば、SAT推定値SATbを求めることができる。車速Vと操舵角δよりSATbを求めると、図13に示すようになる。この特性は実験によって車両毎の特性値を測定してから、車両運動モデルを用いてシミュレーションによって作成してもよい。
したがって、この場合には、図14に示すように、車速センサ(車速検出手段)21で検出した車速Vと、図示しない操舵角センサ(操舵角検出手段)で検出した操舵角δとをSAT推定部47に入力し、このSAT推定部47で、図13の特性図にしたがってSAT推定値SATbを算出すればよい。
本発明を適用した電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。 路面からステアリングホイールまでの間に発生するトルクの様子を説明するための模式図である。 タイヤの進行方向とスリップ角によるセルフアライニングトルク及び横力の関係を示す図である。 横力の着力点とトレールとの関係を示す図である。 スリップ角の変化に対する、横力及びセルフアライニングトルクの変化を示すグラフである。 セルフアライニングトルクの演算値SATaと推定値SATbとの関係を表すグラフである。 第1の実施の形態におけるコントロールユニットの概略構成を示すブロック図である。 第1の実施の形態におけるコントロールユニットの処理手順の一例を示すフローチャートである。 第2の実施の形態におけるコントロールユニットの概略構成を示すブロック図である。 第2の実施の形態におけるコントロールユニットの処理手順の一例を示すフローチャートである。 第3の実施の形態におけるコントロールユニットの概略構成を示すブロック図である。 第3の実施の形態におけるコントロールユニットの処理手順の一例を示すフローチャートである。 操舵角δとセルフアライニングトルクの推定値SATとの関係を表す特性図である。 本発明におけるコントロールユニットのその他の例を示すブロック図である。
符号の説明
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 トルクセンサ
12 電動モータ
20 コントロールユニット
21 車速センサ
46 セルフアライニングトルク演算部
47 セルフアライニングトルク推定部
50 グリップロス度検出部
51 トルク補正値演算部
53 リミッタ
55 補正係数演算部
57 切り増し切り戻し判定部
58 ゲイン部

Claims (8)

  1. 車両のステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
    前記操舵トルクに基づいて操舵補助指令値を算出する操舵補助指令値演算手段と、を有し、
    前記操舵補助指令値に基づいて前記ステアリング機構に操舵補助力を付与するモータを駆動する電動パワーステアリング装置の制御装置において、
    前記操舵補助指令値演算手段は、
    ステアリングホイールの操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段と、
    タイヤのグリップが失われた度合を表すグリップロス度を検出するグリップロス度検出手段と、
    前記操舵トルクに基づき前記モータの電流指令値を算出する電流指令値演算手段と、
    前記操舵角速度検出手段で検出した操舵角速度及び前記グリップロス度検出手段で検出したグリップロス度に基づいて前記電流指令値演算手段で算出した電流指令値を補正しこれを前記操舵補助指令値とする補正手段と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置の制御装置。
  2. 前記補正手段は、前記操舵補助指令値が、前記グリップロス度が大きいときほど小さくなり且つ前記操舵角速度が大きいときほど小さくなるように前記電流指令値を補正することを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  3. 前記補正手段は、前記グリップロス度に応じて前記電流指令値を補正するための補正値を算出し、当該補正値と前記操舵角速度との乗算値を前記電流指令値から減算した値を前記操舵補助指令値とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  4. 前記補正手段は、前記グリップロス度が大きいときほどより小さな値に設定されるグリップロス度係数と前記操舵角速度が大きいときほどより小さな値に設定される角速度係数とを乗算して補正係数を算出し、当該補正係数を前記電流指令値に乗算した値を前記操舵補助指令値とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  5. 前記ステアリングホイールに対する操舵操作が切り増し方向であるか否かを判定する操舵方向判定手段を有し、
    前記補正手段は、前記操舵方向判定手段で切り増し方向であると判定されるときには、前記操舵補助指令値が、切り戻し方向である場合よりも小さくなるように前記電流指令値を補正することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  6. 前記ステアリング機構は、転舵輪を操舵するタイロッドに接続されているラックを有し、
    前記グリップロス度検出手段は、前記ラック上に生じる外力をセルフアライニングトルク演算値として算出するSAT演算部と、
    路面から生じるセルフアライニングトルクを車両運動モデルに基づいてセルフアライニングトルク推定値として推定するSAT推定部と、
    前記SAT演算部で算出されたセルフアライニングトルク演算値及び前記SAT推定部で推定されたセルフアライニングトルク推定値の偏差に基づいて前記グリップロス度を算出するグリップロス度検出部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  7. 前記ステアリング機構は、転舵輪を操舵するタイロッドに接続されているラックを有し、
    前記グリップロス度検出手段は、前記ラック上に生じる外力をセルフアライニングトルク演算値として算出するSAT演算部と、
    車両に作用する横力を検出する横力検出部と、
    前記SAT演算部で算出されたセルフアライニングトルク演算値及び前記横力検出部で検出された横力に基づいて前記グリップロス度を算出するグリップロス度検出部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
  8. 車速を検出する車速検出手段と、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段と、を備え、
    前記SAT推定部は、前記車速検出手段で検出される車速と、前記操舵角検出手段で検出される操舵角とを前記車両運動モデルに代入して前記セルフアライニングトルク推定値を推定することを特徴とする請求項6記載の電動パワーステアリング装置の制御装置。
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