以下、本発明の実施の形態を示して、本発明を詳細に説明する。
本発明の現像方法は、トナー層規制部材でトナー担持体上のトナーを規制する工程、静電潜像担持体に前記トナー担持体上のトナーを現像する工程を少なくとも有する現像方法において、前記トナー担持体は、軸芯体と、前記軸芯体の周囲外周に設けられた弾性層と、前記弾性層の外周に設けられた表面層とを有しており、前記表面層は、ウレタン樹脂またはアクリル樹脂を主成分とし、前記結着樹脂に分散されてなる前記表面層の表面に凸部を形成するための樹脂粒子とを含有し、前記結着樹脂がウレタン樹脂を主成分とする場合は、前記樹脂粒子がウレタン樹脂粒子であり、前記結着樹脂がアクリル樹脂を主成分とする場合は、前記樹脂粒子がアクリル樹脂粒子であり、前記樹脂粒子は無機微粒子によって表面が被覆されており、前記樹脂粒子の前記無機微粒子による被覆率が10乃至90%であり、前記トナーは、トナー粒子に、シリカ微粉体を外添したトナーであり、前記シリカ微粉体は、少なくともジメチルシリコーンオイルで疎水化処理されており、前記シリカ微粉体のジメチルシリコーンオイル由来の炭素量をC量(質量%)、前記シリカ微粉体の疎水化処理前のBETを原体BET(m2/g)としたとき、原体BETが30乃至400であり、C量/原体BETが0.020乃至0.060を満たすことが大きな特徴である。
トナー担持体表層の樹脂粒子に無機微粒子を固着させることによって、トナー担持体製造時の樹脂粒子の分散性を向上することが可能になり、より均一なトナー搬送が可能になることが知られている。
一方で、単純に無機微粒子を固着させた樹脂粒子においては、現在のような高速高寿命プリンターにおいては、トナー担持体に加わる負荷が大きく、大量の枚数を印刷した際に表面層より樹脂粒子が剥がれ落ちることによる画像欠陥が発生しやすい傾向にあった。
本発明者らは鋭意検討の結果、樹脂粒子と表面層の組成、及び樹脂粒子の被覆率を制御することによって樹脂粒子の分散性と剥がれ落ち抑制の両立が可能になることを見出した。
本発明を達成するためには、樹脂粒子の前記無機微粒子による被覆率が10乃至90%であることが必須であり、より好ましくは30乃至80%である。
被覆率が10%よりも小さい場合は無機微粒子被覆による効果が得がたい傾向にある。また、被覆率が90%よりも大きい場合は、樹脂粒子が剥がれ落ちることによる画像欠陥が発生しやすい傾向にある。
樹脂粒子が剥がれ落ちることで発生する画像弊害として、トナー担持体のトナー搬送が不均一になることによるハーフトーン画像ムラが挙げられる。しかしながら、本発明者らの検討により、樹脂粒子の前記無機微粒子による被覆率が10乃至90%を満たすだけでは樹脂粒子の分散性と剥がれ落ち抑制の両立は不十分であることがわかった。
本発明において、トナー担持体の表面層は、ウレタン樹脂またはアクリル樹脂を主成分としており、前記結着樹脂がウレタン樹脂を主成分とする場合は、前記樹脂粒子がウレタン樹脂粒子であり、前記結着樹脂がアクリル樹脂を主成分とする場合は、前記樹脂粒子がアクリル樹脂粒子であることが必須である。
具体的なメカニズムは明確になっていないが、表面層と樹脂粒子がこのような相関関係を満たした場合、トナー担持体中の表層樹脂と樹脂粒子の界面で化学結合を引き起こし、樹脂同士の密着性が向上すると考えられる。そのため、トナー担持体に加わる負荷が大きい高速高寿命プリンターであっても、樹脂粒子の剥がれ落ちが抑制されると考えられる。
さらに検討を行っていくと、本トナー担持体は樹脂粒子の剥がれ落ちを抑制するだけでなく、オイル量が制御されたシリカ微粉体を外添したトナーを使用した現像方法においてはこれまでにない高いレベルの画像安定性を発揮することが明らかになった。特に従来までのトナー担持体とトナーを用いた現像方法では解決が困難であった極低温低湿度領域での長期使用時における画像濃度ムラが大幅に軽減されることがわかった。
本画像濃度ムラは、低温低湿環境下におけるトナーの流動性減少、およびトナー担持体への静電的付着力増加によってトナーがトナー担持体上で連続的に負荷を受け続け融着し、非融着部分との帯電性能の差から発生する現象であると考えられている。特に、従来までのトナー担持体においては樹脂粒子の剥がれ落ちた凹部分や一般にトナー担持体表層よりも電気伝導率が低い樹脂粒子が露出することによって、極低温低湿環境下で多数印刷した際にはトナー担持体へのトナー融着が引き起こりやすい傾向にあった。
具体的なメカニズムはわかっていないが、本発明において、極低温低湿度領域におけるトナー担持体へのトナー融着が大幅に抑制される理由を以下のように推測している。
本発明のトナー担持体においては樹脂粒子の剥がれ落ちが抑制されるだけでなく、樹脂粒子が露出したとしても、無機微粒子が樹脂粒子表面をある程度被覆していると考えている。無機微粒子で被覆された樹脂粒子は、一般にトナー担持体表層よりも電気伝導率が低くトナーとの静電的付着力が高い樹脂粒子とトナーとの直接的な接触を抑制し、トナーのトナー担持体上での流動性を向上する効果があると考えている。さらに、トナー粒子にはオイル量が制御されたシリカ微粉体を外添しているため、トナー同士、またはトナー担持体に対するトナーの流動性が向上し、トナー担持体上でのトナーの付着が抑制され、トナーにかかる連続的な負荷が減少すると考えている。
一方で、オイル量が制御されたシリカ微粉体のオイルの効果によりトナーの過帯電抑制効果がはたらき、トナー担持体との電気的な付着性も低下し、結果としてトナーにかかる連続的な負荷が減少すると考えている。また、無機微粒子が被覆した樹脂粒子とオイル量が制御されたシリカ微粉体を外添したトナーでは、互いの相互作用により長期使用時においても従来までの現像方法では得られない流動性向上効果が得られ、著しくトナーにかかる負荷が減少していると考えている。
前記シリカ微粉体は、少なくともジメチルシリコーンオイルで疎水化処理されている必要がある。
各種疎水化処理の中で極低温環境下での過帯電抑制と流動性の観点からジメチルシリコーンオイル処理が最も効果的であった。
また、前記シリカ微粉体の原体BETは30乃至400m2/gである必要がある。
原体BETが30よりも小さい場合、トナーに対する粒径が大きくなる傾向にあり、充分な流動性が得がたくなる傾向にある。
原体BETが400よりも大きい場合、多数枚プリントするとトナー粒子へシリカ微粉体の埋め込みが進行し、長期にわたってシリカ微粉体添加の充分な効果を得がたくなる傾向にある。
本発明ではジメチルシリコーンオイルの量が制御されたシリカが用いられる。
ジメチルシリコーンオイルのシリカ微粉体への処理量としては、未処理のシリカ微粉体の比表面積に対するジメチルシリコーンオイルで表面処理された後のシリカ微粉体の炭素量で表現することが可能である。
本発明において(表面処理後のシリカ微粉体のジメチルシリコーンオイル由来の炭素量)/(表面処理前のシリカ微粉体のBET)[以下“C量/原体BET”と略すことがある。]が、0.020乃至0.060であり、好ましくは0.035乃至0.055である。上記炭素量の単位は質量%、上記BETの単位はm2/gである。
C量/原体BETが0.060よりも大きい場合、トナーの過帯電は抑制される一方で、トナー自体の物理的付着力が著しく増加することによって、トナーの流動性が著しく低下する傾向にあり、高温高湿環境下でその影響は顕著である。0.020より小さい場合、シリコーンオイルでの未処理部分が残るため、トナーの過帯電抑制効果が充分ではなく、極低温低湿環境下においてはトナー担持体への融着が進行する傾向にある。
また、本発明で使用されるシリカ微粉体は、以下の粒度分布を有することが望ましい。
以下の粒度分布は一次粒径を有するシリカ微粉体の一次粒子が、複数合一した複合粒子を形成することによって達成される。
以下の粒度分布にすることにより、トナー粒子からのシリカ微粉体の遊離や、トナー粒子へのシリカ微粉体の埋め込みが抑制され、トナー担持体へのトナー及び/またはシリカ微粉体の融着を抑制することができる。さらに、長期にわたって流動性を維持することができるため、安定的にトナーの流動性を確保することが可能になり、高温高湿環境下に放置した際でも帯電が良好に立ち上がり帯電不良などの弊害を抑制することが可能である。
帯電不良による弊害の例として、画像の白地部分にも帯電不良トナーが印字されてしまう所謂カブリといった問題が挙げられる。
さらには、シリカ微粉体のスペーサー粒子としての効果が得られ、トナー劣化防止を良好に達成することができる。
本発明においては、シリカ微粉体の解砕処理条件を調整することで、以下の粒度分布になるようにした。
本発明のトナーに用いるシリカ微粉体のレーザー回折型粒度分布計による体積基準粒度分布は、0.10μm以上1.00μm未満の累積頻度%が7.0%以下であり、10.10μm以上39.23μm未満の累積頻度%をA、39.23μm以上200.00μm未満の累積頻度%をBとしたとき、A+Bが93.0%以上であり、A/Bが0.45以上6.00以下であることが好ましい。
また、更に好ましくはA/Bが0.52以上2.00以下である。
ここで、A+Bとは10.10μm以上200.00μm未満の累積頻度%であり、シリカ微粉体のA+Bが93.0%未満の場合は、10.10μm未満と200.00μm以上の累積頻度%が多いことを意味する。
例えば200.00μm以上が多いとトナーからのシリカ微粉体の遊離が多くなり、トナーの流動性を長期にわたって維持することが困難な傾向がある。また10.10μm未満が多いと、長期使用時において、シリカ微粉体がトナー粒子へ埋め込まれやすくなり、トナーの流動性を長期にわたり維持することが出来ない場合がある。特に0.10μm以上1.00μm未満の累積頻度%が、7.0%より大きいとこの問題が顕著となる。
また、10.10μm以上39.23μm未満の累積頻度%をA、39.23μm以上200.00μm未満の累積頻度%をBとしたとき、これらの比であるA/Bでシリカ微粉体の解砕度合いが表現できる。
即ち、シリカ微粉体のA/Bが0.45未満の場合、すなわち解砕が不十分な場合、凝集しているシリカ微粉体が多いため、トナー担持体、規制部材にシリカ微粉体が付着・融着しやすい傾向にある。
A/Bが6.00より大きい場合、シリカ微粉体の解砕が過剰であり、長期使用時において、シリカ微粉体がトナー粒子へ埋め込まれやすくなり、トナー流動性を維持することが出来ない傾向にある。
その結果、トナー担持体への融着や高温高湿環境下で放置した際の帯電不良を引き起こす場合がある。
また、シリカ微粉体が静電凝集しやすくなり、経時的に再凝集しやすく、トナー粒子からのシリカ微粉体の遊離が多くなり、トナー担持体、規制部材にシリカ微粉体が融着しやすい。
本発明中の、上記粒度分布のシリカ微粉体を得る解砕方法としては、公知の解砕機を用いる事ができる。
例えば、表面処理されたシリカ微粉体を、高速衝撃式微粉砕機パルベライザー(ホソカワミクロン社製)で、シリカ微粉体の凝集体を上記粒度分布を有する複合体に解砕する方法などがある。
本発明のシリカ微粉体をトナーに添加する場合の好ましい添加量としては、トナー粒子100.00質量部に対し0.05乃至3.00質量部である。
シリカ微粉体の添加量が0.05質量部未満の場合、トナー担持体とトナー粒子とのスペーサーとしての効果が発現しづらいため、シリカ微粉体及び併用する微粒子が埋没しトナー劣化が進行する傾向にある。また、トナーの流動性が悪くなる場合があり、トナー担持体、規制部材にトナーが融着しやすくなり、画像弊害が生じる場合がある。
シリカ微粉体の添加量が3.00質量部を超える場合、シリカ微粉体がトナーから遊離しやすくなり、トナー担持体、規制部材にシリカ微粉体が融着しやすくなり、画像弊害が生じる場合がある。
本発明の現像方法についてさらに説明する。
本発明におけるトナー担持体は、軸芯体の外周上に、弾性層と表面層とを有して構成される。その構成の一例を図1に示す。
図1は、本発明にかかるトナー担持体の概略斜視図並びに回転軸に直交する方向に切断したときの概略断面を示す図である。図1に示したとおり、トナー担持体1は、円柱状又は中空円筒状の導電性軸芯体2と、その外周面に形成された弾性層3と、その外周面に形成された表面層4とから構成されている。
導電性軸芯体は、トナー担持体の電極及び支持部材として機能する。その材質としては、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属又は合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性を有する合成樹脂などが挙げられる。軸芯体の外径は通常4乃至10mmの範囲とする。
弾性層の樹脂基材としては、具体的には、以下のものを挙げることができる。ポリウレタン、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、適度な弾性を有しながら圧縮永久歪みが小さいシリコーンゴムが好ましい。
シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサン、これらポリシロキサンの共重合体等が挙げられる。これらの1種を、あるいはこれらの2種以上を必要に応じて組み合わせて用いることができる。
弾性層に導電性を付与するために導電性物質を添加してもよい。導電性物質としては、電子導電性物質、イオン導電性物質などいずれのものであってもよい。電子導電性物質としては、「ケッチェンブラックEC」(商品名、ライオン(株)製)、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したカラーインク用カーボンを例示することができる。
その他、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び金属酸化物を挙げることができる。これらの導電性物質は1種を、あるいはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。 これらのうち、少量で導電性を制御しやすいことから導電性カーボン、ゴム用カーボン、カラーインク用カーボン等のカーボンブラックが好ましい。
イオン導電性物質としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機化合物;変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテート等の有機化合物を挙げることができる。
これらは1種又は2種以上を併用することができる。
これら導電性物質は、弾性層を所望とする体積抵抗率にするのに必要な量で用いられる。
導電性物質は、例えば、樹脂基材100.0質量部に対して0.5乃至50.0質量部の範囲で用いることができ、より好ましくは1.0乃至30.0質量部の範囲で用いることができる。
また、弾性層の電気抵抗は1×103Ω以上1×1013Ω以下、より好ましくは1×104Ω以上1×1012Ω以下である。
また、弾性層のAsker−C硬度は25°乃至70°、より好ましくは30°乃至60°が好適である。この範囲に設定することにより、感光体との接触ニップ幅を安定的に確保できる。
本発明のAsker−C硬度の測定は、ゴム材硬度の測定法に従い、具体的には、基準規格アスカーC型SRIS(日本ゴム協会規格)0101に従って別途作製した試験片を用いて、アスカーゴム硬度計(高分子計器社製)により測定した。
弾性層の製造方法としては以下の方法が挙げられる。適宜接着剤などを塗布した導電性軸芯体の外周に弾性層を作製する。
弾性層の作製方法には、導電性軸芯体を配した成型金型のキャビティ内に弾性層成形用の組成物を注入し、加熱や、活性エネルギー線の照射等により反応硬化又は固化させ、導電性軸芯体と一体化して作製する方法がある。
また予め、弾性層成形用組成物を用いて別途成形したスラブやブロックから、切削加工等により、所定の形状及び寸法のチューブ状を切り出し、これに導電性軸芯体を圧入して導電性軸芯体上に弾性層を作製してもよい。さらに、弾性層を切削や研磨処理によって所定の外径に調整してもよい。
前記表面層は、ウレタン樹脂またはアクリル樹脂を主成分とし、表面に凸部を形成するための樹脂粒子を含有している。前記表面層はウレタン樹脂またはアクリル樹脂を主成分としていれば、いかなる樹脂を含有するものであってもよいが、ウレタン樹脂が主成分であると本発明の効果を得やすくなる点で好ましい。
前記表面層に用いられる樹脂は、使用される現像システムに応じたトナー帯電量を得ることができるように適宜選択して用いることが可能である。
ウレタン樹脂の原料はポリオールとイソシアネート、必要に応じて鎖延長剤から構成される。
ウレタン樹脂の原料たるポリオールとしては以下のものが例として挙げられる。ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、及びこれらの混合物。
ウレタン樹脂の原料たるイソシアネートとしては例として以下のものが挙げられる。トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキサンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート及びこれらの混合物。ウレタン樹脂の原料たる鎖延長剤としては以下のものが挙げられる。エチレングリコール、1、4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオールの如き2官能低分子ジオール;トリメチロールプロパンの如き3官能低分子トリオール、及びこれらの混合物。
アクリル樹脂としては、以下のものが例として挙げられる。ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリアクリル酸ブチル、スチレン−アクリル共重合樹脂。
表面層に分散され、表面に凸部を形成するための樹脂粒子は、表層の主成分の種類によって適した種類の樹脂粒子が選択される。即ち、前記表面層がウレタン樹脂を主成分とする場合は、前記樹脂粒子がウレタン樹脂粒子であり、前記表面層がアクリル樹脂を主成分とする場合は、前記樹脂粒子がアクリル樹脂粒子であることが必須である。
これら樹脂粒子は前記樹脂粒子が主成分であれば本発明の効果を得ることが可能ではあるが、その存在比率が高いほど本発明の効果を得やすくなる傾向にある。
前記ウレタン樹脂粒子のウレタン樹脂としては、ポリエーテルウレタン、ポリエステルウレタン、ポリカーボネートウレタン、アクリル系ウレタン、など表面層のウレタン樹脂と接着可能なウレタン樹脂であれば特に制限はない。
前記アクリル樹脂粒子のアクリル樹脂としては、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなど表面層のアクリル樹脂と接着可能なアクリル樹脂であれば特に制限はない。
前記樹脂粒子の製造方法は特に限定することがなく、懸濁重合法や乳化重合法、粉砕法などの公知の製造方法が使用可能である。
樹脂粒子の平均粒子径としては、2μm乃至30μmの範囲で好適に用いることができる。特に、表面層の凸部を形成し、安定したトナー搬送性を得るためには、平均粒子径5μm乃至18μmの範囲のものがより好ましい。
前記樹脂粒子は表面層中に無機微粒子が被覆した状態で存在している。
無機微粒子としては、例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、SrTiO3、CeO2、CrO、ZnO、MgO等の如き酸化物;Si3N4等の如き窒化物;SiC等の如き炭化物;CaSO4、BaSO4等の如き硫酸塩;CaCO3等の如き炭酸塩等が挙げられる。これらの無機微粒子は必要に応じて疎水化や親水化などの表面処理を施してもかまわない。
これらの中で特にSiO2は、極低温低湿環境下で多数枚プリントした際においてもトナーに適正な流動性と帯電性を付与できる点で好ましい。
これらの無機微粒子は1種類でも複数種類でも、樹脂粒子に被覆されてかまわない。
無機微粒子の平均1次粒子径としては、5nm以上200nm以下であることが、樹脂粒子に対する被覆性が良好となることから好ましい。さらに、少量添加で効果的に被覆できることから、5nm以上50nm以下であることがより好ましい。
無機微粒子の添加量は樹脂粒子100質量部に対して0.01乃至1.00質量部であることが好ましい。0.01質量部よりも少ないと無機微粒子被覆による効果を充分に得がたくなる。1.00質量部よりも多いと樹脂粒子の被覆率を本発明の範囲内に制御することが困難になる傾向にあり、本発明の効果を充分に得がたくなる傾向にある。
樹脂粒子に対して無機微粒子を被覆させる方法としては、本発明の範囲内の被覆率を達成することが可能であれば、特に限定することはなく、樹脂粒子と無機微粒子を混合し付着させる手法や樹脂粒子の合成中に無機微粒子を添加する方法などが例示される。
その中でも効率よく樹脂粒子を被覆する観点では樹脂粒子と無機微粒子を混合し付着させることが好ましい。その際には、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等を用いて被覆させることが可能である。
本発明のトナー粒子の製造方法は目的とする特性が達成可能なものであれば特に限定することがなく、公知の製造方法を使用できる。
公知の製造方法の中でも本発明のトナー粒子は、重合性単量体及び着色剤を少なくとも含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、該水系媒体中で該重合性単量体組成物を造粒して該重合性単量体組成物の粒子を形成し、該重合性単量体組成物の該粒子に含まれる該重合性単量体を重合して得られることが好ましい。
前記造粒方式で合成されたトナー粒子は粒度分布がシャープで、円形度の高いトナーを得やすく、結果としてトナーの流動性を高くし、帯電量分布をシャープにすると共に安定したトナー搬送性を維持することでトナー担持体への融着を抑制する傾向にある。
以下、本発明に用いられるトナー粒子を得る上で最も好適な懸濁重合法を例示して、該トナー粒子の製造方法を説明する。
重合性単量体、着色剤、極性樹脂、離型剤及び必要に応じた他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機に依って均一に溶解または分散させ、これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調製する。
次に、該重合性単量体組成物を分散安定剤含有の水系媒体中に分散した後に造粒して粒子を形成し、粒子中の重合性単量体を重合させることによってトナー粒子を製造する。
前記重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時に同時に加えても良いし、水系媒体中に該重合性単量体組成物を分散する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体あるいは溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
該重合性単量体組成物の分散工程から重合工程に至る重合反応時に極性樹脂を添加すると、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、極性樹脂の存在状態を制御することができる。即ち、極性樹脂を添加することで、樹脂層に応じた機能分離が可能となる。また、懸濁重合法により得られるトナー粒子は、離型剤成分を内包化しているコアシェル構造を有しているため好ましい。
極性樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体が挙げられ、特にポリエステル樹脂が好ましい。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂を構成する重合性単量体としては、一般的に用いられているスチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。
前記結着樹脂を構成する重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体を用いることが可能である。
該ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
結着樹脂を構成するための重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン、m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルの如きアクリル酸エステル系単量体或いはメタクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキセン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミドの如きエン系単量体。
これらの重合性単量体は、単独、または、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−p139乃至192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移点(Tg)が、40℃乃至75℃を示すように重合性単量体を適宜混合して用いられる。
本発明においては、トナーのTHF可溶分を好ましい分子量分布とし、低温定着性能を向上するために、低分子量ポリマーを添加しても良い。低分子量ポリマーは、懸濁重合法によってトナー粒子を製造する場合には、重合性単量体組成物中に添加することができる。
低分子量ポリマーの例としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリビニルトルエンの如きスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリ酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体の如きスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂。
なお、前記低分子量樹脂は単独或いは混合して使用できる。
本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、トナーのTHF可溶成分の分子量を制御するために、結着樹脂を合成する時に架橋剤を用いてもよい。
2官能の架橋剤として、以下のものが挙げられる。ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び前記のジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの。
多官能の架橋剤としては、以下のものが挙げられる。ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテート。
これらの架橋剤の添加量は、重合性単量体100.00質量部に対して、好ましくは0.05質量部乃至10.00質量部、より好ましくは0.10質量部乃至5.00質量部である。
本発明に用いられる離型剤は、炭化水素系の離型剤が好ましく、且つ、該離型剤成分の含有量が重合性単量体100.0質量部に対して好ましくは4.0質量部乃至25.0質量部、より好ましくは7.0質量部乃至15.0質量部である。
更に、前記離型剤は、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時のDSC曲線において、最大吸熱ピーク温度が40℃乃至110℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは45℃乃至90℃である。
本発明に用いられる離型剤としては、トナー粒子中心部により内包化され易いといった点で炭化水素系離型剤の如き極性成分が少ない離型剤が特に好ましい。
その他の離型剤として、以下のものが挙げられる。アミドワックス、高級脂肪酸、長鎖アルコール、ケトンワックス、エステルワックス及びこれらのグラフト化合物、ブロック化合物の如き誘導体。必要に応じて2種以上の離型剤を併用しても良い。
前記炭化水素系離型剤としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムの如き石油系ワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法によるフィッシャートロプシュワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスの如きポリオレフィンワックス及びその誘導体。誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。
更に、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらワックスは単独で又は2種以上を併せて用いることが可能である。
なお、これらの炭化水素系離型剤には、トナーの帯電性に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。
本発明のトナーに用いられる重合開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチル−パーオキシピバレートの如き過酸化物系重合開始剤。
これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、重合性ビニル系単量体100質量部に対して3質量部乃至20質量部である。
重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
本発明のトナーは、着色力を付与するために着色剤を必須成分として含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、以下の有機顔料、有機染料、無機顔料が挙げられる。
シアン系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62。
マゼンタ系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド169、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド254。
イエロー系着色剤としての有機顔料又は有機染料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が挙げられる。具体的には、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー194。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、前記イエロー系着色剤/マゼンタ系着色剤/シアン系着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し更には固溶体の状態で用いることができる。本発明のトナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくは重合性単量体100質量部に対し1質量部乃至20質量部添加して用いられる。
本発明において重合法を用いてトナー粒子を得る場合には、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要があり、好ましくは、重合阻害のない物質による疎水化処理を着色剤に施しておいたほうが良い。特に、染料系着色剤やカーボンブラックは、重合阻害性を有しているものが多いので使用の際に注意を要する。
また、染料系着色剤の重合阻害性を抑制する方法としては、あらかじめこれら染料の存在下に重合性単量体を重合せしめる方法が挙げられ、得られた着色重合体を重合性単量体組成物に添加する。
また、カーボンブラックについては、前記染料と同様の処理の他、カーボンブラックの表面官能基と反応する物質(例えば、ポリオルガノシロキサン等)で処理を行っても良い。
前記水系媒体調製時に使用する分散安定剤としては、公知の無機系及び有機系の分散安定剤を用いることができる。
具体的には、無機系の分散安定剤の例としては、以下のものが挙げられる。
リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ。
また、有機系の分散剤としては、以下のものが挙げられる。ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン。
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。この様な界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム。
本発明のトナーに用いられる水系媒体調製時に使用する分散安定剤としては、無機系の難水溶性の分散安定剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散安定剤を用いることが好ましい。
また、本発明においては、水系媒体を調製する場合に、これらの分散安定剤の使用量は重合性単量体100.0質量部に対して、0.2質量部乃至2.0質量部であることが好ましい。
また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300質量部乃至3,000質量部の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、前記のような分散安定剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定剤をそのまま用いて分散させてもよい。
また、細かい均一な粒度を有する分散安定剤の粒子を得るために、水の如き液媒体中で、高速撹拌下、分散安定剤を生成させて水系媒体を調製してもよい。
例えば、リン酸三カルシウムを分散安定剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定剤を得ることができる。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子と混合して用いることも可能である。
荷電制御剤を配合することにより、多岐にわたる環境においても荷電特性の向上と安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
さらに、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が少ない荷電制御剤が特に好ましい。
荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物。
他には、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類なども含まれる。さらに、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
本発明のトナーは、これら荷電制御剤を単独で或いは2種類以上組み合わせて含有することができる。
荷電制御剤の好ましい配合量は、重合性単量体100.00質量部に対して0.01質量部乃至20.00質量部、より好ましくは0.30質量部乃至10.00質量部である。
本発明のトナーにおいては、必要に応じて前述したシリカ微粉体以外の無機微粉体を外添することが可能である。
前記無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体またはそれらの複酸化物微粉体の如き微粉体が挙げられる。該無機微粉体の中でもシリカ微粉体及び酸化チタン微粉体が好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ又はヒュームドシリカ、及び水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。
無機微粉体としては、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-の少ない乾式シリカの方が好ましい。
また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。
前記無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のためにトナー粒子に外添される。
無機微粉体を疎水化処理することによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体を用いることが好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなり多岐にわたる環境下において、本発明の効果を得難くなる傾向にある。
無機微粉体の疎水化処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。
より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理した疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナー粒子の帯電量を高く維持し、安定した画像を提供することができる点でよい。
無機微粉体の総量は、トナー粒子100.0質量部に対して1.0乃至5.0質量部であることが好ましい。
本発明の外添工程に用いる装置は、特性を達成可能なものであれば特に限定することがなく、公知の製造方法が使用可能であるが、装置の例としてヘンシェルミキサー、スーパーミキサーといった既存の高速撹拌型の混合機が挙げられる。
次に本発明における各種測定方法について説明する。
<無機微粉体による樹脂粒子の被覆率の算出>
トナー担持体の表面層を導電性軸芯体に対して垂直方向にカミソリ刃で切り出し、可視光硬化型アクリル樹脂により包埋した。
次に、クライオシステム(商品名:「REICHERT−NISSEI−FCS」、ライカ社製)によりダイヤモンドナイフ装着のウルトラミクロトーム(商品名:「EM−ULTRACUT・S」、ライカ社製)でトリミング/面出し、超薄切片を作成した。
その後、透過型電子顕微鏡(商品名:「JEM−2100」、日本電子社製)で加速電圧200kVにて観察を行った。1つの画像に表層樹脂と樹脂粒子の界面における稜線の長さが2.0μm以上になるように、倍率を調整して写真を撮影し、その画像より被覆率を求めた。
上記のように得られた透過電子顕微鏡(TEM)像より、表層樹脂と樹脂粒子の界面における稜線の長さ(L)を測定する。
次に無機微粒子が存在し、直接表層樹脂と樹脂粒子が接触していない前記稜線部分の長さの和(l)を測定する。そして下記式1により被覆率を求める。
被覆率(%)=l/L×100 (式1)。
この測定方法により、トナー担持体の画像領域において任意の表面層の50箇所の被覆率を算出し、その相加平均値を本発明における被覆率とする。
また、表層樹脂と樹脂粒子の界面に存在する物質はEDAXにより元素分析した。
<シリカ微粉体のジメチルシリコーンオイル由来の炭素量の測定>
ジメチルシリコーンオイル処理したシリカ微粉体の表面疎水基が含有する炭素を1100℃、酸素雰囲気中にてCO2に熱分解した後、微量炭素分析装置(Horiba製EMIA−110)によりシリカ微粉体の含有する炭素量を求める。
ただし、ジメチルシリコーンオイル以外の処理剤の炭素量は除くこととする。
例えば、ジメチルシリコーンオイルとその他のシリコーンオイルを併用して使用する場合には、ジメチルシリコーンオイルだけを使用したものを同条件で作成し、その炭素量を“シリカ微粉体の炭素量”とする。
また例えば、シランカップリング剤でシリカ微粉体を表面処理し、その後ジメチルシリコーンオイルで表面処理したシリカ微粉体の場合には、シランカップリング処理までしたシリカ微粉体の炭素量を、シランカップリング剤及びジメチルシリコーンオイルまで表面処理したシリカ微粉体の炭素量から差し引いた炭素量を“シリカ微粉体の炭素量”とする。
<シリカ微粉体のBET比表面積の測定方法>
BET比表面積の測定は、脱ガス装置バキュプレップ061(マイクロメソティック社製)、BET測定装置ジェミニ2375(マイクロメソティック社製)等公知の装置を用いて行う。
本発明におけるBET比表面積は、多点法BET比表面積の値である。具体的には、以下のような手順で行う。
空のサンプルセルの質量を測定した後、測定試料を1.0乃至2.0g程度入るように充填する。
さらに、脱ガス装置に、試料(表面処理前のシリカ微粉体)が充填されたサンプルセルをセットし、室温で3時間脱ガスを行う。脱ガス終了後、サンプルセル全体の質量を測定し、空サンプルセルとの差から試料の正確な質量を算出する。
次に、BET測定装置のバランスポートおよび分析ポートに空のサンプルセルをセットする。所定の位置に液体窒素の入ったデュワー瓶をセットし、飽和蒸気圧(P0)測定コマンドにより、P0を測定する。
P0測定終了後、分析ポートに脱ガス調製されたサンプルセルをセットし、サンプル質量およびP0を入力後、BET測定コマンドにより測定を開始する。後は自動でBET比表面積が算出される。
<シリカ微粉体の粒度分布の測定方法>
本発明で用いられるシリカ微粉体の体積基準の粒度分布の測定は、JIS Z8825−1(2001年)に準じて測定されるが、具体的には以下の通りである。
測定装置としては、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」(堀場製作所社製)を用いた。
測定条件の設定および測定データの解析は、LA−920に付属の専用ソフト「HORIBA LA−920 for Windows(登録商標)WET(LA−920)Ver.2.02」を用いた。また、測定溶媒としては、エタノールを用いる。
測定は、フローセルを用いて循環系にて測定を行う。
各種測定条件は以下のとおりである。
超音波:レベル3
循環速度:レベル3
相対屈折率:1.08
測定手順は、以下の通りである。
エタノールを循環させ、約1mg(透過率が70%乃至95%になる量)のシリカ微粉体を少量ずつ加え、分散させる。
そして、さらに60秒間超音波分散処理をする。なを、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
その後、粒度分布の測定を行う。尚、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−920」においては、まず各粒子の粒径を求め、表1のチャンネルに振り分ける。
そして、各チャンネルの中心径をそのチャンネルの代表値とし、その代表値を直径として有する球を想定し、その球の体積をもとに体積基準の粒度分布を求めている。
得られた体積基準の粒度分布のデータを元に、0.10μm以上1.00μm未満の累積頻度%、10.10μm以上39.23μm未満の累積頻度%、39.23μm以上200.00μm未満の累積頻度%を算出する。
<トナー粒子の体積基準のメジアン径D50tの測定>
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。
測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。
「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。
そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。
この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。
超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。
尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、個数基準のメジアン径D50tを算出する。尚、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」がトナーの個数基準のメジアン径D50tである。
以下に実施例をもって本発明を説明するが、本発明は実施例によって制限されるものではない。
<樹脂粒子母体(1)の例>
あらかじめ窒素ガスで充分に置換し、乾燥させた2Lオートクレーブを用意した。該オートクレーブに、3官能のポリプロピレンポリオール「MN−400」(商品名、三井武田化学ポリウレタン社製 水酸基価235mgKOH/g)700gとへキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業社製)1000gを仕込んだ。
次に、窒素ガスにて上方置換させた後密閉し、120℃で20時間撹拌して反応させた。
その後、減圧下で未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去し、トルエンを加えて不揮発分90質量%の合成物(1)を得た。この合成物(1)のNCO%は9.1%であった。
次に、2L撹拌機付きセパラブルフラスコに水900gを仕込み、この中に「メトローズ90SH−100」(商品名、信越化学工業社製)32gを溶解して分散媒を調製した。
そして、この分散媒を600rpm撹拌下において、合成物(1)261gをトルエン112gで希釈した溶液を加え、懸濁液を調製した。そのまま撹拌下において懸濁液を60℃に昇温させ、1.5時間反応させた。
その後室温まで冷却し、固液分離し、水で充分洗浄した後70℃、20時間乾燥して、平均粒子径5.0μmのエーテルウレタンである樹脂粒子母体(1)を得た。
<樹脂粒子母体(2)の例>
アクリル樹脂として旭化成ケミカルズ(株)製のデルペット60N 100質量部をヘンシェルミキサーにより十分予備混合し、二軸押出し混練機で任意のバレル温度にて溶融混練した。
冷却後ハンマーミルを用いて粗粉砕し、第一段階として機械式粉砕方式による微粉砕機で10μm以下の粒径に微粉砕した。
さらに、第二段階として、微粉砕物を粉砕条件を変更した機械式粉砕機より更に粉砕処理し、得られた微粉砕物を熱球形化装置によって任意の温度にて熱球形化処理した。
その後、得られた微粉砕物を分級と機械式衝撃力を用いる表面改質処理を同時に行う装置にて分級および球形化し、平均粒子径6.1μmのアクリル樹脂粒子である樹脂粒子母体(2)を得た。
<樹脂粒子(1)の作製>
以下の材料を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて回転数4000rpmの条件で5分間混合工程を行った。
樹脂粒子母体(1) 100.0質量部
シリカ1(トクヤマ社製 レオロシールMT−10(平均粒子径15nm))
0.38質量部
このようにして本発明の樹脂粒子(1)を得た。
<樹脂粒子(2)乃至(9)の作製>
表2に記載の樹脂粒子母体、無機微粒子を用い、表2に記載の条件にする以外は樹脂粒子1の作製と同様にして樹脂粒子(2)乃至(9)を得た。
シリカ2:日本アエロジル社製 OX50(平均粒子径30nm)
チタニア:テイカ社製 AMT−100(平均粒子径6nm)
アルミナ:日本アエロジル社製 AEROXIDE Alu C(平均粒子径13nm)
<樹脂粒子(10)の作製>
樹脂粒子母体(1)に無機微粒子を添加、混合しないものを樹脂粒子(10)とした。
<ポリオール化合物(1)の合成例>
メチルエチルケトン(MEK)79.6質量部にポリテトラメチレングリコール(商品名:「PTG1000SN」、保土谷化学社製)100.0質量部と4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:「コスモネートPH」、三井化学ポリウレタン社製)19.4質量部とを段階的に混合した。
窒素雰囲気下80℃にて4.5時間反応させ、重量平均分子量Mw=10000、水酸基価22(mgKOH/g)、官能基数2.0のポリエーテルポリウレタンポリオール(1)のMEK溶液を得た。
<ポリオール化合物(2)の合成例>
メチルエチルケトン(MEK)79.6質量部にポリエステルポリオール(商品名:「P−1010」、クラレ社製)100.0質量部と4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:「コスモネートPH」、三井化学ポリウレタン社製)19.4質量部とを段階的に混合した。
窒素雰囲気下80℃にて4.5時間反応させ、重量平均分子量Mw=10000、水酸基価21(mgKOH/g)、官能基数2.0のポリエステルポリウレタンポリオール(2)のMEK溶液を得た。
<イソシアネート化合物(1)の合成例>
窒素雰囲気下にて、ポリテトラメチレングリコール(商品名:「PTG1000SN」、保土谷化学社製)100.0質量部とポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:「ミリオネートMR−200」、日本ポリウレタン工業社製)69.6質量部を80℃で2時間加熱反応した。その後、ブチルセロソルブ 72.7質量部を加えた。 さらに、反応物温度50℃の条件下、2−ブタノンオキシム(Ardrich社製)を25.8質量部滴下し、平均官能基数3.5のイソシアネート化合物(1)のブチルセロソルブ溶液を得た。
<導電性軸芯体の作製>
導電性軸芯体として、SUS304製の直径6mmの芯金にプライマ−(商品名:「DY35−051」、東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布し、温度150℃にて30分間焼付けた。
<弾性層の作製>
次に、導電性軸芯体を金型に配置し、液状導電性シリコーンゴム(東レダウコーニングシリコーン社製、ASKER−C硬度45度、体積抵抗率1×105Ω・cm品)を金型内に形成されたキャビティに注入した。
続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを150℃で15分間加硫し、金型から脱型した後、200℃で2時間加熱して硬化反応を完結させた。このようにして導電性軸芯体の外周に直径12mmの弾性層を設けた。
<表面層結着樹脂含有塗料(1)の作製>
以下の材料を撹拌モーターにより混合撹拌し、総固形分が30質量%になるようにMEKに溶解して、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層結着樹脂含有塗料(1)を得た。
ポリオール化合物1:62.0質量部(固形分として)
イソシアネート化合物1:38.0質量部(固形分として)
カーボンブラック(商品名:「MA100」、三菱化学社製):20.0質量部。
<表面層結着樹脂含有塗料(2)の作製>
以下の材料を撹拌モーターにより混合撹拌し、総固形分が30質量%になるようにMEKに溶解して、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層結着樹脂含有塗料(2)を得た。
・ポリオール化合物2:62.0質量部(固形分として)
・イソシアネート化合物1:38.0質量部(固形分として)
・カーボンブラック(商品名:「MA100」、三菱化学社製):20.0質量部
<表面層結着樹脂含有塗料(3)の作製>
以下の材料を撹拌モーターにより混合撹拌し、総固形分が30質量%になるようにMEKに溶解して、混合した後、サンドミルにて均一に分散し、表面層結着樹脂含有塗料(3)を得た。
・アクリル樹脂(ヒタロイド3001;日立化成工業株式会社):100.0質量部
・イソシアネート化合物(コロネートL;日本ポリウレタン株式会社):10.4質量部
・カーボンブラック(商品名:「MA100」、三菱化学社製):20.0質量部
<トナー担持体(1)の作製>
表面層結着樹脂含有塗料(1) 100質量部にウレタン樹脂粒子(1)を25質量部添加し、サンドミルにて均一に分散した後に、前記弾性層に浸漬塗工し、乾燥させ、温度140℃にて2時間加熱硬化することで弾性層の外周に膜厚6.0μmの表面層を設け、のトナー担持体(1)を得た。
<トナー担持体(2)乃至(12)の作製>
“トナー担持体(1)の作製”における表面層結着樹脂含有塗料およびウレタン樹脂粒子を表3に記載のものを使用する以外は、“トナー担持体(1)の作製”と同様にしてトナー担持体(2)乃至(12)を得た。
<シリカ微粉体(1)の製造例>
酸素−水素炎で形成された外炎中において、四塩化珪素の蒸気を酸水素炎で燃焼することにより、火炎加水分解反応を行わせ、原体シリカ微粉体(1)を得た。この原体シリカ微粉体(1)に対して、微粉体同士の接触を促進するような混合等の操作は、一切行わないように注意した。得られた原体シリカ微粉体(1)は、比表面積121m2/gであった。
引き続き、同条件でミキサーの撹拌を続け、原体シリカ微粉体(1)を100質量部に対して21.5質量部のジメチルシリコーンオイル(粘度50cSt)を、2流体ノズルを用いて噴霧し、原体シリカ微粉体(1)に付着させた。
更に、同条件でミキサーの撹拌を続け、60分間保持し、冷却した。その後、パルベライザー(ホソカワミクロン社製)にて解砕を行いシリコーンオイルで表面処理されたシリカ微粉体(1)を得た。
得られたシリカ微粉体(1)の物性を表4に示す。また、シリカ微粉体(1)の粒度分布を図2に示す。
<シリカ微粉体(2)乃至(4)の製造例>
シリカ微粉体(1)の製造例において、パルベライザーの回転数、フィード量を変更し、“A/B”などを調整(回転数上げる及び/またはフィード量を下げることによって解砕強度が上がる。解砕強度が強くなると、“A/B”が大きくなる。)した以外は、同様に行った。得られたシリカ微粉体(2)乃至(4)の物性を表4に示す。
<シリカ微粉体(5)乃至(10)の製造例>
シリカ微粉体(1)の製造例において、ジメチルシリコーンオイルの添加量をそれぞれ、20.0質量部、15.0質量部、9.0質量部、33.9質量部、38.0質量部、42.0質量部添加した以外は、同様に行った。
得られたシリカ微粉体(5)乃至(10)の物性を表4に示す。
<シリカ微粉体(11)、(12)の製造例>
シリカ微粉体(8)の製造例において、パルベライザーの回転数、フィード量を変更し、“A/B”、“0.10μm以上200.00μm以下”の量を表2の値になるように調整(回転数上げる及び/またはフィード下げることによって解砕強度が上がる。
解砕強度が強くなると、“A/B”及び“0.10μm以上200.00μm以下”が大きくなる。)した以外は、同様に行った。
得られたシリカ微粉体(11)、(12)の物性を表4に示す。
<シリカ微粉体(13)の製造例>
シリカ微粉体(1)の製造例において、原体シリカ微粉体の製造条件を適宜変更した以外は、シリカ微粉体(1)と同様にして、原体シリカ微粉体(13)を得た。得られた原体シリカ微粉体(13)は、比表面積33m2/gであった。
次に、この原体シリカ微粉体100質量部を、90%メタノール水10質量部、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)3.27質量部をヘキサン10000質量部に溶解さした液に入れて反応させ、溶剤を除去した。
その後、HMDS処理したシリカ微粉体100質量部をミキサーに入れ、ミキサー内温度が250℃、周速94m/s、1分間の混合度が98%の条件にて撹拌を開始し、窒素を流通させた。
これに、13.3質量部のジメチルシリコーンオイル(粘度50cSt)を、2流体ノズルを用いて噴霧し、原体シリカ微粉体に付着させた。
更に、同条件でミキサーの撹拌を続け、60分間保持し、冷却した。その後、パルベライザー(ホソカワミクロン社製)にて解砕を行い表面処理されたシリカ微粉体(13)を得た。
得られたシリカ微粉体(13)の物性を表4に示す。
<シリカ微粉体(14)の製造例>
シリカ微粉体(1)の製造例において、原体シリカ微粉体の製造条件を適宜変更した以外は、シリカ微粉体(1)と同様にして、原体シリカ微粉体(14)を得た。得られた原体シリカ微粉体は、比表面積26m2/gであった。
次に、この原体シリカ微粉体100質量部を、90%メタノール水10質量部、ヘキサメチレンジシラザン(HMDS)3.27質量部をヘキサン10000質量部に溶解さした液に入れて反応させ、溶剤を除去した。
その後、HMDS処理したシリカ微粉体100質量部をミキサーに入れ、ミキサー内温度が250℃、周速94m/s、1分間の混合度が98%の条件にて撹拌を開始し、窒素を流通させた。
これに、13.3質量部のジメチルシリコーンオイル(粘度50cSt)を、2流体ノズルを用いて噴霧し、原体シリカ微粉体に付着させた。
更に、同条件でミキサーの撹拌を続け、60分間保持し、冷却した。その後、パルベライザー(ホソカワミクロン社製)にて解砕を行い表面処理されたシリカ微粉体(14)を得た。得られたシリカ微粉体(14)の物性を表4に示す。
<シリカ微粉体(15)の製造例>
シリカ微粉体1の製造例において、原体シリカ微粉体の製造条件を適宜変更した以外は、シリカ微粉体1と同様にして、原体シリカ微粉体(15)を得た。得られた原体シリカ微粉体は、比表面積392m2/gであった。
引き続き、同条件でミキサーの撹拌を続け、原体シリカ微粉体100質量部に対して59.0質量部のジメチルシリコーンオイル(粘度50cSt)を、2流体ノズルを用いて噴霧し、原体シリカ微粉体に付着させた。
更に、同条件でミキサーの撹拌を続け、60分間保持し、冷却した。その後、パルベライザー(ホソカワミクロン社製)にて解砕を行いシリコーンオイルで表面処理されたシリカ微粉体(15)を得た。得られたシリカ微粉体(15)の物性を表4に示す。
<シリカ微粉体(16)の製造例>
シリカ微粉体(1)の製造例において、原体シリカ微粉体の製造条件を適宜変更した以外は、シリカ微粉体(1)と同様にして、原体シリカ微粉体(16)を得た。得られた原体シリカ微粉体は、比表面積420m2/gであった。
引き続き、同条件でミキサーの撹拌を続け、原体シリカ微粉体100質量部に対して59.0質量部のジメチルシリコーンオイル(粘度50cSt)を、2流体ノズルを用いて噴霧し、原体シリカ微粉体に付着させた。
更に、同条件でミキサーの撹拌を続け、60分間保持し、冷却した。その後、パルベライザー(ホソカワミクロン社製)にて解砕を行いシリコーンオイルで表面処理されたシリカ微粉体(16)を得た。得られたシリカ微粉体(16)の物性を表4に示す。
<シリカ微粉体(17)の製造例>
“シリカ微粉体(1)の製造例”における原体シリカ微粉体(1)をシリカ微粉体(17)とした。得られたシリカ微粉体(17)の物性を表4に示す。
<トナー粒子(1)の製造例>
四つ口容器中にイオン交換水60.0質量部と0.1モル/リットルのリン酸ナトリウム水溶液300.0質量部と1.00モル/リットル−塩酸10.0質量部を添加し、高速撹拌装置TK−ホモミキサーを用いて12,000rpmで撹拌し、63℃に保持した。
ここに1.00モル/リットル−CaCl2水溶液25.0質量部を一度に添加し、微細な難水溶性分散安定剤Ca3(PO4)2を含む水系分散媒体を調製した。
・スチレンモノマー 78.0質量部
・n−ブチルアクリレート 22.0質量部
・C.I.Pigment Blue15:3 8.0質量部
・ポリエステル系樹脂(イソフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(3モル付加物)(モル比30:55:15)) 8.0質量部
・負荷電性制御剤(オリエント化学工業社製:ボントロンE88)) 0.5質量部
・ワックス(日本精蝋製:HNP−10) 12.5質量部
前記材料を、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、6,000rpmの条件にて分散させた後、63℃に加温し均一に溶解・分散させ重合性単量体組成物を調製した。
該重合性単量体組成物に重合開始剤である1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート7.5質量部(トルエン溶液75%)を添加した後、撹拌機の回転数を12,000rpmにした水系分散媒体中に投入した。
そして、回転数を12,000rpmに維持して10分間造粒した。その後、高速撹拌装置をプロペラ式撹拌器に変えて、内温を67℃に昇温させ、ゆっくり撹拌しながら4時間反応させた。
次いで、容器内を温度85℃に昇温して20分間維持し、毎分1℃の冷却速度で徐々に30℃まで冷却し、スラリー1を得た。スラリー1を含む容器内に希塩酸を添加して分散安定剤を除去した。
更に、ろ別、洗浄、乾燥した後に、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、個数基準のメジアン径D50tが5.6μmのトナー粒子(1)を得た。
<トナー(1)の製造例>
前記トナー粒子(1)100.0質量部に対し、1.5質量部のシリカ微粉体(1)を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて回転数4000rpmの条件で300秒間混合工程を行う。
このようにして本発明のトナー(1)を得た。
<トナー(2)乃至トナー(19)の製造例>
表2に示したシリカ微粉体を用いて、表5に示した条件下でトナーを作製する以外は、トナー(1)と同様にしてトナー(2)乃至トナー(19)を得た。
〔実施例1〕
画像形成装置としては市販のレーザプリンタLBP−3700(HP社製)の改造機(プロセススピード:150mm/secとし、トナー規制部材として、厚み8μmのSUSブレードを用い、このトナー規制部材にブレードバイアスを現像バイアスに対して−200Vのブレードバイアスを印加できるように改造したもの)を使用した。
評価は、画像出力用カートリッジのトナー担持体を上記トナー担持体(1)に取り替え、且つトナーとして上記トナー(2)を170g充填したものをシアンステーションに装着し、画像評価を実施した。
なお、シアンステーション以外は通常の製品CRGを装着して評価を行った。
評価環境としては、極低温低湿環境(温度10.0℃,湿度15%RH)と低温低湿環境下(L/L:温度15.0℃、湿度10.0%RH)と高温高湿環境下(H/H:温度32.5℃、湿度80.0%RH)での評価を行った。
なお、画像評価項目は下記の通りであり、極低温低湿環境及び低温低湿環境及び高温高湿環境下での画像評価は初期と図3に示すような横線で1%の印字率の画像を2万枚印字した後に行った。
また、評価紙としてLETTERサイズのXEROX4200紙(XEROX社製、75g/m2)を使用した。
<トナー担持体融着>
トナー担持体の融着評価はトナー担持体表面の目視及びハーフトーン画像(30H画像)で評価を行った。
尚、30H画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hをベタ白とし、FFHをベタ黒とする時のハーフトーン画像である。
極低温低湿環境と低温低湿環境において、印刷初期、20000枚印字後のハーフトーン画像において、1%印字画像部分と非印字画像部分の間で濃度差が発生していないか評価した。
なお、本現象は極低温低湿環境下にて顕著に現れるため、極低温低湿環境と低温低湿環境において評価を行った。
具体的には、マクベス濃度計(RD924 マクベス社製)を用いて画像部分の着色度合いを5点測定し、その平均値と非画像部分の5点の平均値との差(Δ)の測定結果を元に、下記の基準に基づいて評価した。
その後、トナー担持体表面のトナーをエアーでブローし、トナー担持体表面の観察を行った。
ランクA:良好 トナー担持体表面に融着が未確認
濃度差Δが0.05未満
ランクB:やや良好 トナー担持体表面に若干の融着が確認
濃度差Δが0.05未満
ランクC:並 トナー担持体表面に融着が確認
濃度差Δが0.05以上0.10未満
ランクD:劣る トナー担持体表面に融着が確認
濃度差Δが0.10以上
<放置時カブリ>
高温高湿環境において、印刷初期と20000枚印刷した後に、電源を切ったマシンの中にCRGを入れたまま2日間放置した。
その後、LETTERサイズのHP Photo Paper(HP社製、220g/m2)に全面白画像をプロセススピード:50mm/secで出力した。
画出しを行っていない紙の五箇所の反射率(%)を、アンバーフィルターを搭載したリフレクトメーター(東京電色株式会社製の「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」)によって測定し、これら平均値を紙の平均反射率とする。
次いで、全面白画像の五箇所の反射率(%)を測定し、これら平均値を全面白画像の平均反射率とする。
前記全面白画像の平均反射率と前記紙の平均反射率の差からカブリ濃度(%)を算出し、画像カブリを下記に判断基準に基づいて評価した。
なお、本現象は帯電不良が原因で起こるため、帯電量が最も低下し本現象が起こりやすい高温高湿環境下にて評価を行った。
ランクA:良好 反射濃度1.0%未満
ランクB:並 反射濃度1.0%以上、3.0%未満
ランクC:劣る 反射濃度3.0%以上
<ハーフトーン均一性>
高温高湿環境下にて、印刷初期と20000枚印刷した後にハーフトーン(30H)画像を形成し、この画像を目視にて観察し、前記画像のドットの再現性について以下の基準に基づき評価した。
ランクA:非常に良好 画像の均一性が非常に優れ、極めて鮮明な画像
ランクB:良好 画像の均一性に優れ、良好な画像
ランクC:並 実用的には問題の無い画質
ランクD:劣る 画像の均一性が悪く、実用上好ましくない画像
得られた評価結果を表8に示す。
〔実施例2乃至17〕
実施例1のトナー(1)の代わりに表6に記載のトナーを用い,実施例1のトナー担持体の代わりに表6に記載のトナー担持体を用いる以外は実施例1と同様にして前記画像評価を行った。評価結果を表8に記した。
〔比較例1乃至10〕
実施例1のトナー(1)の代わりに表7に記載のトナーを用い,実施例1のトナー担持体の代わりに表7に記載のトナー担持体を用いる以外は実施例1と同様にして前記画像評価を行った。評価結果を表8に記した。