JP5452037B2 - 光電変換素子用電極の製造方法 - Google Patents

光電変換素子用電極の製造方法 Download PDF

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本発明は、透明基板上に透明導電膜とその上に光触媒膜を有する電極と、対極基板上に少なくとも導電部材を有する対極とが所定間隔で対向状に配置され、両電極間に電解質が配置されてなる光電変換素子に関するものであり、より詳しくはその電極の製造方法に関するものである。
一般に、色素増感型太陽電池などの光電変換素子は、ガラス板などの透明基板上に透明導電膜を形成し、その上に酸化チタンのような金属酸化物からなる光触媒膜を形成し、同膜にルテニウム錯体などの光増感色素を吸着してなる電極と、対極用透明基板上に透明導電膜を形成してなる対極とを対向状に配置し、両電極間にヨウ素系電解質などからなる電解質層を介在させたものが知られている(特許文献1)。
上記酸化チタンのような金属酸化物からなる光触媒膜は、水分を含むと光増感色素の吸着が阻害され光電変換効率の低下をもたらすという問題がある。このため、光増感色素の吸着前に、光触媒膜を、脱水剤および乾燥剤を入れたチャンバーに配置しチャンバー内の雰囲気を循環させる方法や、光触媒膜をチャンバー内に配置しチャンバー内を減圧するなどの方法により、光触媒膜を脱水処理し光増感色素の吸着性を高めることが提案されている(特許文献2)。
しかしながら、上記のような脱水方法を実施するには、チャンバーや減圧装置などの大規模の設備およびそのための多大なコストが必要となる。さらに、脱水剤や乾燥剤による方法では、脱水処理に時間を要し、減圧による方法では脱水自体に要する時間は短縮できるものの、減圧及び減圧状態から大気圧に戻す工程に時間を要する。いずれの方法によっても、脱水処理に時間を要し、かつ光触媒膜を有する基板をチャンバー内に配置しなければならず、そのため大面積の基板の脱水処理や、連続的な脱水処理は困難である。
そこで、本発明は、大掛かりな装置を必要とせず、低コストで短時間で光触媒膜を脱水処理することができる光電変換素子用電極の製造方法を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、透明基板上に透明導電膜を形成し、その上に光触媒膜を形成し、この光触媒膜に光増感色素を吸着させる電極の製造方法であって、光触媒膜への光増感色素の吸着の前に、上記光触媒膜を、水との共沸温度が150℃以下のアルコールに浸漬し次いで加熱することで、水とアルコールの共沸により光触媒膜を脱水しておくことを特徴とする光電変換素用電極の製造方法である。
請求項2に係る発明は、アルコールが1−プロパノールまたは1−ブタノールであることを特徴とする請求項1記載の光電変換素用電極の製造方法である。
請求項3に係る発明は、透明基板がフィルム又はシート状のものであり、光触媒膜の形成、光触媒膜の脱水、光触媒膜への光増感色素の吸着を連続的に行う請求項1または2記載の光電変換素用電極の製造方法である。
請求項1に係る発明では、光触媒膜への光増感色素の吸着の前に、上記光触媒膜を有する透明基板を、水との共沸温度が150℃以下のアルコールに浸漬し次いで加熱するので、従来技術のようにチャンバーなどの大掛かりな装置を必要とせず、低コストで短時間で光触媒膜を脱水処理することができる。
また、従来技術のように、光触媒膜を、脱水剤および乾燥剤を入れたチャンバーに配置しチャンバー内の雰囲気を循環させたり、光触媒膜をチャンバー内に配置しチャンバー内を減圧する必要がないため、大面積の電極にも対応できるとともに操作を連続的に行うことができる。
請求項2に係る発明では、浸漬用のアルコールとして1−プロパノールまたは1−ブタノールを用いるので、上記効果に加え、水の共沸量が多く、安全面でも好ましいという効果が奏される。
請求項3に係る発明では、上記効果に加え、フィルム又はシート状の透明基板を連続的に供給することで、上記脱水工程を含む電極の製造方法を連続的に行うことができる。
実施例1の光電変換素用電極の製造方法を概略的に示すフローシートである。 参考例1の光電変換素子を示す垂直縦断面図である。
本発明による光電変換素用電極の製造方法おいて、まず、透明基板上に透明導電膜を形成し、その上に光触媒膜を形成する。
透明基板としては、合成樹脂板、ガラス板などが適宜使用されるが、PEN(ポリエチレン・ナフタレート)フィルムなどの熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。合成樹脂は、PENの他に、ポリエチレン・テレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィンなどであってもよい。透明基板の厚さは好ましくは数十μm〜1mmである。
透明導電膜の形成方法はイオン化蒸着、CVD法などいろいろあり限定されないが、特にスパッタ法により行うことが好ましい。スパッタ法での金属ターゲットとしては、透明導電膜のスズ添加酸化インジウム(ITO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)の材料となる、In−Sn合金、Zn、In−Zn合金、Sn、Ga−Zn合金、Al−Zn合金などが好適に使用されるが、非酸化物金属で透明導電膜が形成できるものであれば特に限定はされない。透明導電膜の厚さは好ましくは数十〜数百nmである。
上記透明導電膜上に形成する金属酸化物層(光触媒膜)は、好ましくは酸化チタン、酸化亜鉛である。光触媒膜の形成方法としては、特に限定はされないが、アルコール等の溶媒に分散させた粒径20〜60μmの金属酸化物粒子のペースト状混合溶液を透明導電膜上にスキージなどで塗布する方法、金属酸化物ゾルを静電塗布する方法が適用できる。
金属酸化物ゾルの静電塗布については、静電塗布装置をマイナス側とし被塗物である透明電極の透明導電膜をプラス側として、この間に高電圧を加えて静電界を形成し、静電塗布装置のスプレーノズルから噴霧された金属酸化物をマイナス側に帯電させて透明導電膜表面に塗布する。
金属酸化物ゾルの出発原料となる金属化合物としては、金属有機化合物では、例えば金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、金属無機化合物では、例えば金属の硝酸塩、オキシ塩化物、塩化物などが挙げられる。
上記金属酸化物としては、酸化チタンが好ましく、その他酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化ニオブなどが挙げられる。
酸化チタンを用いた一例として、金属アルコキシドとしては、チタンテトラメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブタキシドなど、金属アセチルアセトネートとしては、チタンアセチルアセトネートなど、金属カルボキシレートとしては、チタンカルボキシレートなど、硝酸チタン、オキシ塩化チタン、四塩化チタンなどが挙げられる。
さらに、上記金属化合物に、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノールなどの溶媒、酸またはアンモニア、その他添加物などを加えることでゾル化、ゲル化を行う。
上記、金属アルコキシドを用いる場合は、金属アルコキシドに、粒径20〜60nmの上記金属酸化物の粒子、さらに必要に応じて光反乱用粒子として粒径100〜400μmの金属酸化物の粒子を含んでなるものが好ましい。
上記塗布または静電塗布後、乾燥および/または焼成される。乾燥は、室温で、5〜15分程度行うのが好ましい。焼成は120〜150℃で、10〜30分程度行うのが好ましい。上記方法により形成された光触媒膜の厚みは、好ましくは5〜20μmである。
次いで、上記光触媒膜を、水との共沸温度が150℃以下のアルコールに浸漬し次いで加熱することで、水とアルコールの共沸により光触媒膜を脱水する。
好ましい実施形態では、上記光触媒膜が形成された透明基板を、上記アルコールに浸漬した後、乾燥ついで焼成し光触媒膜を脱水する。
上記アルコールへの浸漬温度は、常温が好ましいが、透明基板が熱変形しない程度にアルコールを加熱しても良い。浸漬時間は、好ましくは30秒〜10分程度である。
アルコールとしては、透明基板に合成樹脂等を用いた場合でも熱変形の起こらない水との共沸点(150℃以下)を有するものが好ましく、水との共沸量が多いものであればさらに好ましい。たとえば、表1に示すアルコールが用いられる。
Figure 0005452037
また、安全性を考慮すると、1−プロパノール、1−ブタノールがより好ましい。
乾燥は、室温で、5〜15分程度行うのが好ましい。焼成は、120〜150℃で、5〜10分程度行うのが好ましい。
上記乾燥および焼成により、光触媒膜に含まれる水分とアルコールが共沸され、光触媒膜が脱水される。また、光触媒膜を高温に維持することで後段の色素の吸着性が高まる。
次いで、光触媒膜に色素を吸着させる。上記脱水から色素の吸着までの時間はできる限り短くするのが好ましい。これは、再び光触媒膜に水分が吸収されるのを防ぐと共に、光触媒膜の温度が低下するのを防ぐためである。
色素の吸着は、例えば、光触媒膜を、光増感色素を含む浸漬液に(30〜60分)浸して光触媒膜の表面に同色素を吸着させることにより行われる。浸漬後、乾燥さらには焼成を行うことが好ましい。光増感色素は、例えばビピリジン構造、ターピリジン構造などを含む配位子を有するルテニウム錯体や鉄錯体、ポルフィリン系やフタロシアニン系の金属錯体、さらにはエオシン、ローダミン、メロシアニン、クマリンなどの有機色素などであってよい。このようにして、透明基板上に光触媒膜が形成された電極が完成する。
上記電極を適用した光電変換素子は、例えば、上記色素を吸着させた光触媒膜を備えた透明電極と、これに対向する対極と、両極間に配された電解質層とから主として構成されている。
電解質としては、例えば、ヨウ素系電解液が使用され、具体的には、ヨウ素、ヨウ化物イオン、ターシャリーブチルピリジンなどの電解質成分が、エチレンカーボネートやメトキシアセトニトリルなどの有機溶媒に溶解されてなるものが例示される。電解質は、電解液からなるものに限定されず、固体電解質であってもよい。固体電解質としては、例えば、DMPImI(ジメチルプロピルイミダゾリウムヨウ化物)が例示され、このほか、LiI、NaI、KI、CsI、CaIなどの金属ヨウ化物、およびテトラアルキルアンモニウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩などのヨウ化物とIとを組み合わせたもの;LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBrなどの金属臭化物、およびテトラアルキルアンモニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩などの臭化物とBrとを組み合わせたものなどを適宜使用することができる。
対極は、対極用透明基板上に透明導電膜が形成されたもの、あるいは同基板上にアルミニウム、銅、スズなどの金属のシートを設けたものであってよい。このほか、金属(アルミニウム、銅、スズなど)またはカーボン製などのメッシュ状電極にゲル状固体電解質を保持させることで対極を構成してもよく、また、対極用基板の片面上に導電性接着剤層を、同基板を覆うように形成し、同接着剤層を介して、別途形成のブラシ状カーボンナノチューブ群を基板に転写することで、対極を構成してもよい。
光電変換素子を組み立てるには、例えば、色素を吸着させた光触媒膜を備えた電極と対極とを対向状に位置合わせし、両極間を熱融着フィルムやシール材などで密封し、対極または電極などに予め設けておいた孔や隙間から電解質を注入する。また、固体電解質を用いる場合は、両極をこれらの間に光触媒膜および電解質層が挟まれるように重ね合わせ、その周縁部同士を加熱接着する。加熱は、金型によってもよく、プラズマ(波長の長いもの)、マイクロ波、可視光(600nm以上)や赤外線などのエネルギービームを照射することによってもよい。
光電変換素子は、例えば、方形の電極用透明基板と方形の対極用透明基板との間に、電極用透明導電膜、対極用透明導電膜、集電電極、電解質層および光触媒膜が所定間隔で配置されることにより形成され、この際の電極と対極との接続は、直列とされることがあり、並列とされることもある。いずれの場合でも、電解質層および光触媒膜はシール材によって隣り合うもの同士の間が仕切られる。直列接続の場合、電極用透明導電膜、対極用透明導電膜および集電電極は、隣り合うもの同士の間に間隙が形成され、隣り合う電極用透明導電膜と対極用透明導電膜とが導体によって接続される。並列接続の場合、電極用透明導電膜、対極用透明導電膜および集電電極は、隣り合うもの同士の間に隙間がない形状とされる。
実施例1
図1において、透明基板(ポリエチレン・ナフタレート)フィルム(厚み100μm)の上に透明導電膜(ITO)を厚み(150)nmで形成した。この導電膜付き透明基板を巻き取ってなるロール(1)から導電膜付き透明基板(2)を繰り出し、20〜50nmのアナターゼ型酸化チタン、エタノールおよび水からなる酸化チタン含有ペーストをペースト塗布装置(3)から透明基板(2)の透明導電膜上に供給し、厚み(10)μmで塗布した。塗布後、塗膜を室温で10分間乾燥させ、さらに加熱器(4)で150℃で10分間焼成し、透明導電膜上に光触媒膜を形成した。
その後、光触媒膜が形成された透明基板(2)をプロパノール(5)に10分間浸漬し、室温で10分間乾燥させ、さらに加熱器(6)により150℃で10分間焼成した。こうして光触媒膜の脱水処理後、色素(N719)を含む浸漬液(7)に(45分)間浸漬し、光触媒膜に色素を吸着させた。
こうして、電極を作製した。
比較例1
プロパノール浸漬および焼成による光触媒膜の脱水処理を行わなかった以外、実施例と同じ要領で操作を行って、電極を作製した。
参考例1
図2に、実施例1で作製した透明電極を用いて構成した光電変換素子の例を示す。光電変換素子は、色素を吸着させた光触媒膜を備えた透明電極と、これに対向する対極と、両極間に配される電解質層とから主として構成されている。
同図において、(21)は透明基板、(22)は透明基板(21)上に形成された透明導電膜、(24)は対極用基板、(25)は同基板(24)に設けられた対極で、白金で構成されている。(26)は両極間に亘って設けられた複数のシール材兼セパレータで、これらによって両極間に複数の区画が形成されている。(23)は各区画において透明導電膜(22)上に形成された光触媒膜で、光増感色素が吸着されている。各区画には電解液が注入されている。(27)は両極に渡された複数の極間電極、(28)は極間電極保護用シール材である。
上記構成にて100mm角の色素増感太陽電池を作製し、AM1.5、100mW/cmの標準光源照射により電力変換効率を計測したところ、変換効率η=4.5%と、高効率が得られた。
参考例2
電極として、比較例1で作製したものを用いた以外、参考例1と同様にして、光電変換素子を構成した。
上記構成にて100mm角の色素増感太陽電池を作製し、AM1.5、100mW/cmの標準光源照射により電力変換効率を計測したところ、変換効率ηは1.8%と低い値であった。
(1) ロール
(2) 透明基板
(3) ペースト塗布装置
(4),(6) 加熱器
(5) プロパノール
(7) 浸漬液
特開2002−93475号公報 特開2005−251591号公報

Claims (3)

  1. 透明基板上に透明導電膜を形成し、その上に光触媒膜を形成し、この光触媒膜に光増感色素を吸着させる電極の製造方法であって、光触媒膜への光増感色素の吸着の前に、透明基板の光触媒膜を、水との共沸温度が150℃以下のアルコールに浸漬し次いで加熱することで、水とアルコールの共沸により光触媒膜を脱水しておくことを特徴とする光電変換素用電極の製造方法。
  2. アルコールが1−プロパノールまたは1−ブタノールであることを特徴とする請求項1記載の光電変換素用電極の製造方法。
  3. 基板がフィルム又はシート状のものであり、光触媒膜の形成、光触媒膜の脱水、光触媒膜への光増感色素の吸着を連続的に行う請求項1または2記載の光電変換素用電極の製造方法。
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