JP5439903B2 - 板状光学ガラス及び板状光学ガラスの端面処理方法 - Google Patents

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本発明は、フツリン酸塩系ガラスからなる板状光学ガラス及びフツリン酸塩系ガラスからなる板状光学ガラスの端面処理方法に関するもので、固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラスや固体撮像素子パッケージ用窓ガラスとして好適なものである。
デジタルスチルカメラ等に使用されるCCDやCMOSなどの固体撮像素子は可視光域から1100nm付近の近赤外域にわたる分光感度を有している。したがって、そのままでは良好な色再現性を得ることができないので、赤外線を吸収する特定の物質が添加された近赤外線カットフィルタガラスを用いて視感度を補正している。この近赤外線カットフィルタガラスは、近赤外域の波長を選択的に吸収し、かつ高い耐候性を有するように、フツリン酸塩系ガラスにCuOを添加した光学ガラスが開発され使用されている(特許文献1)。
固体撮像素子が用いられるデジタルスチルカメラとして、一眼レフタイプのものがある。このタイプのカメラでは、近赤外線カットフィルタガラスなどの光学ガラスの透光面に付着したチリ・埃が撮像画像に写り込むため、光学ガラスを振動してこれらを弾き落とす、いわゆるダスト除去装置が搭載されることが多い。
また、光学ガラスは、固体撮像素子が収められたパッケージを気密封着するカバーガラス(固体撮像素子パッケージ用窓ガラス)としても用いられる。固体撮像素子を用いた撮像デバイスは、その製造工程において、カバーガラスを仮留めした後、固体撮像素子からの出力画像情報をもとに素子表面に付着する塵埃の有無を検査する。そして、塵埃が付着していると判断された場合、仮留めされたカバーガラスをパッケージから取り外し、固体撮像素子を清浄する(特許文献2)。
特開平6−16451号公報 特開2006−303954号公報
上記近赤外線カットフィルタガラスに用いられるフツリン酸塩系ガラスは、光学ガラスに用いられる他のガラス組成系と比べてガラスの硬度が低いため、光学作用面に対し光学研磨を行うと、端部に微小な欠けを生じる割合が高いという問題がある。そのため、上記ダスト除去装置にてフツリン酸塩系ガラスからなる近赤外線カットフィルタガラスを振動すると強度が十分でないため、端部を起点に破損するおそれがある。特に最近では、デジタルスチルカメラの小型化要請から0.3〜0.5mm程度の薄い板厚で用いられることが多くなり、ダスト除去装置により強振動が加えられた際に端部の微小な欠けを起点としてヒビが入るといった信頼性上の課題が懸念されている。
また、固体撮像素子を用いたデバイスは、小型化、高画素数化、高画素面積化が進展している。撮像デバイス及びその搭載機器の薄型、大面積化に伴って、使用される光学ガラスは外形が大きく、撮像デバイスの奥行きに影響を与える光学ガラスの肉厚は非常に薄いものが求められるようになった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、薄肉でも振動等外力が作用した場合に破損しない強度を有するフツリン酸塩系ガラスからなる板状光学ガラス、及び板状光学ガラスの端部処理方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、フツリン酸塩系ガラスをエッチング処理することにより稜線部のクラック長と曲げ強さとを特定範囲とし、振動等の外力にて破損しない強度の高い板状光学ガラスが得られることを見出した。
また、本発明の板状光学ガラスの製造方法は、フツリン酸塩系ガラスからなる光学作用面を有する板状光学ガラスの製造方法であって、ガラス素材を切断して板状ガラスを得るガラス切断工程と、前記板状ガラスの側面と各透光面とが隣接する稜線部を研削砥石によって機械的に面取する面取工程と、前記面取加工された板状ガラスを酸性成分が塩酸である酸性水溶液でエッチングする第1エッチング工程と、前記第1エッチングされた板状ガラスの光学作用面を鏡面を得るまで研磨する研磨工程と、前記研磨された板状ガラスをアルカリ水溶液でエッチングする第2エッチング工程と、前記第2エッチングされた板状ガラスを洗浄し乾燥する洗浄・乾燥工程と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ガラス材料の中では比較的硬度が低いフツリン酸塩系ガラスからなる板状光学ガラスであっても、エッチング処理することにより稜線部のクラック長及び曲げ強さを特定範囲とし、薄肉でも振動等の外力が作用した場合においても破損することがない強度の高い板状光学ガラスを提供することが可能となる。
板状光学ガラスの外観を示す図である。 固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラスとして本発明の板状光学ガラスに用いられる場合の固体撮像素子デバイスの断面図である。 固体撮像素子パッケージ用窓ガラスとして本発明の板状光学ガラスが用いられる場合の固体撮像素子デバイスの断面図である。 本実施形態の端面処理方法を含む板状光学ガラスの製造方法の一実施形態を示した流れ図である。 面取り工程にて稜線部が面取りされたガラス板を示す図である。 エッチングする際にガラス板を保持する治具を示す図である。 本実施形態の端面処理方法を含む板状光学ガラスの製造方法の他の実施形態を示した流れ図である。 板状光学ガラスの製造方法の一実施形態を示した流れ図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照し説明する。
図1は板状光学ガラス1を示す斜視図であり、図2は固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラス6として本発明の板状光学ガラス1が用いられる場合の固体撮像素子デバイス11の断面図であり、図3は固体撮像素子パッケージ用窓ガラス7(以下、カバーガラスと称す)として本発明の板状光学ガラス1が用いられる場合の固体撮像素子デバイス11の断面図である。
本発明の板状光学ガラス1は図1に示すとおり、矩形型の外観形状であって、板厚方向に相対向する光学作用面である第1透光面及び第2透光面と、このガラスの周縁を構成する側面3とを有するものである。そして、側面3と各透光面とが隣接する部分を稜線部10と呼ぶものである。また、板状光学ガラス1の四隅(コーナー部)を面取り加工した場合、その加工部と未加工の側面との隣接する部分も、本発明において稜線部10に含むものである。
本発明において、板状光学ガラス1の稜線部は、エッチング処理にてクラック長の最大値が0.02mm以下にされることを特徴としている。また、板状光学ガラス1の曲げ強さは、65N/mm以上であることを特徴としている。
板状光学ガラス1の稜線部は、製造工程の搬送や製品使用時の振動による他部材との接触でガラス粉・欠けが発生するのを防ぐことを目的として、面取り加工される。面取工程ではダイヤモンドホイール等の研削砥石によって機械的に研削を行うため、面取り加工部2には研削砥石では除去し切れない微細なクラックが残存したり、研削砥石により新たなクラックが形成されるという問題がある。
面取り加工部2に存在するクラックは、振動や他部材との接触では欠け等の問題を生じるものではないが、板状光学ガラス1に曲げ応力が作用すると、このクラックが起点となり伸長することで透光面に及んだり、板状光学ガラス1が破断に至る場合がある。
板状光学ガラス1が固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラス6として用いられる場合と固体撮像素子パッケージ用窓ガラス7として用いられる場合とでは各ガラスに作用する外力の形態は異なるものの、ガラスの曲げ応力に対する評価方法として、曲げ強さを用いることで、上記用途における強さの指標となり得ると考えた。そして、上記用途にて要求される強度とガラス自体の強度との関係を調査した結果、曲げ強度が65N/mm以上である場合、一定の信頼性をもって適用可能であることがわかった。また、ガラスに曲げ応力が作用し、破壊に至る起因となる稜線部のクラックについて調査したところ、クラック長と曲げ強さとの間に相関関係があり、フツリン酸塩系ガラスにおいては、クラック長の最大値が0.02mm以下の場合、曲げ強度を65N/mm以上とすることができることがわかった。このような知見に基づき、本発明者は、稜線部のクラック長の最大値を0.02mm以下、かつ板状光学ガラス1の曲げ強さを65N/mm以上とすることで、板状光学ガラス1として好適な強度が得られることを見出した。
板状光学ガラス1の稜線部は面取加工後にエッチング処理することにより、面取り工程より前の工程にて生じたクラックや面取り工程にて生じた微細なクラックを除去することが可能である。これにより、稜線部のクラック長の最大値を0.02mm以下とすることができる。なお、稜線部のクラック長の最大値は、0.02mm以下で限りなく0に近い方が好ましい。また、本発明における板状光学ガラス1の稜線部のクラックとは、稜線にかかるクラックをいうものである。また、本発明における板状光学ガラス1の稜線部のクラック長とは、稜線部を起点として板状光学ガラス1の表面や内部に伸びるクラックについて、そのクラックを板状光学ガラス1の表面(側面もしくは透光面)に投影した場合のクラックの長さを指すものである。なお、板状光学ガラス1の曲げ強さは、65N/mm以上で素材強度に限りなく近いことが好ましい。
さらに、板状光学ガラス1は、面取加工後のエッチング処理に加え、光学作用面を研磨加工した後にエッチング処理をすることにより稜線部のクラック長の最大値が0.01mm以下、かつ板状光学ガラス1の曲げ強さが190N/mm以上であることが好ましい。なお、稜線部のクラック長の最大値は0.01mm以下で限りなく0に近い方が好ましく、かつ板状光学ガラス1の曲げ強さが190N/mm以上で素材強度に限りなく近い方が好ましい。これは板状光学ガラス1を近赤外線カットフィルタガラスとして用いる場合、ダスト除去装置における振動がより強力になった場合においても対応が可能となる。また、板状光学ガラス1の板厚が薄くなった場合でも、一定以上の曲げ強さを有することにより、固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラスや固体撮像素子パッケージ用窓ガラスとして好適に用いることが可能である。
板状光学ガラス1の稜線部は面取加工後にエッチング処理することにより、面取り工程以前の工程にて生じたクラックが除去される。その後、光学作用面を研磨加工することにより、加工キズ等のない良好な光学作用面が得られる。
板状光学ガラス1の研磨工程に用いられる両面研磨機は、研磨布を貼り付けた下定盤に、板状光学ガラス1よりやや大きい内径の孔部を複数有するキャリアをセットし、そのキャリアの孔部に板状光学ガラス1をセットした後、研磨布を貼り付けた上定盤を降ろし圧力をかけ、上定盤、下定盤、キャリアをそれぞれ回転させて、酸化セリウム等の研磨液を流しながら両面を研磨する。キャリアは外周に歯を有する歯車であって、キャリアの内側に位置する太陽歯車とキャリアの外側に位置する内歯歯車との間に等間隔に配置され、太陽歯車及び内歯歯車と噛み合い太陽歯車のまわりを遊星運動する。そして、各板状光学ガラス1が上下定盤に貼り付けられた研磨布と均等に接触移動することにより、光学作用面が平坦に光学研磨される。
この両面研磨機にて板状光学ガラス1を研磨する際、板状光学ガラス1の稜線部とキャリアの孔部とが接触することで、板状光学ガラス1の稜線部に微小なクラックが発生し、このクラックが板状光学ガラス1の曲げ強さを低下させる原因となることを発明者は見出した。そのため、光学作用面を研磨加工した後にエッチング処理をすることで研磨工程にて発生した微小なクラックを除去し、これにより板状光学ガラス1に曲げ応力が作用した際に割れの起点となるクラックを除去もしくは可及的に小さくすることで強度の高い板状光学ガラス1が得られる。
本発明の板状光学ガラス1の使用形態としては、詳細には後述するが、固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラス6や固体撮像素子パッケージ用窓ガラス7が挙げられる。これら使用形態においては、板状光学ガラス1の板厚方向に外力が作用することが想定されるため、これらの外力に対するガラスの強度指標として、JIS R1601「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に基づき板状光学ガラス1の曲げ強さを設定した。
なお、板状光学ガラス1が曲げ応力により破壊される瞬間の強度(破壊強度)については、外形寸法や板厚の要因によっても変化するが、本発明の板状光学ガラス1であれば、例えば板厚が0.3mmであっても、ダスト除去装置にて振動が付加される固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラス6にも好適に使用できる強度を有するものである。本発明の板状光学ガラス1の板厚は0.2〜1mmが好ましく、特に薄肉(0.2〜0.5mm)の場合、顕著な効果が見られる。
本発明の板状光学ガラス1は、フツリン酸塩系ガラスを用いることを必須の構成要件としている。フツリン酸塩系ガラスは、優れた耐候性を有している。更にガラス中にCuOを添加することで、可視光域の高い透過率を維持したまま近赤外域を吸収することができるため、固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラス6として好適に用いることが可能である。また、フツリン酸塩系ガラスの熱膨張係数は130×10−7/℃前後であるため、固体撮像素子9を収める樹脂パッケージ8との熱膨張率が近く、固体撮像素子パッケージ用窓ガラス7として好適に用いることが可能である。
フツリン酸塩系ガラスは、近赤外線カットフィルタガラスとして用いられる公知のガラス組成を用いることができるが、特に加工強度に優れる点でガラスの網目構造形成成分の含有比率が高い、質量%で、P 46〜70%、MgF 0〜25%、CaF 0〜25%、SrF 0〜25%、LiF 0〜20%、NaF 0〜10%、KF 0〜10%、ただしLiF、NaF、KFの合量が1〜30%、AlF 0.2〜20%、ZnF 2〜15%(ただし、フッ化物総合計量の50%までを酸化物に置換可能)からなる組成を有することが好ましい。また、前記フツリン酸塩系ガラスからなる基礎ガラスに対し、CuOを外掛で 0.5〜16質量%含むガラスであり、Ba及びPbの含有を不純物としてのみ許容することが好ましい。
フツリン酸塩系ガラスの各含有成分の含有量を上記の範囲を限定した理由は、以下の通りである。
はガラスの網目構造を形成する主成分であるが、46%未満ではガラスの安定性が悪くなり、また熱膨張係数が大きくなって耐熱衝撃性が低下する。70%を超えると化学的耐久性が低下する。好ましくは48〜65%である。
AlFは化学的耐久性を向上させ、ガラスの粘性を高める成分であるが、0.2%未満ではその効果が得られず、20%を超えるとガラス化が困難となる。好ましくは2〜15%である。
MgF、CaF、SrF、BaFは化学的耐久性を低下することなくガラスを安定化するのに効果があるが、各々25%を超えると溶融温度が高くなり、また失透を生じやすくなる。好ましくは、MgFが15%以下、CaFが5〜15%の範囲である。SrFもまたガラスの化学的耐久性改善に効果があるが、25%を超えると失透傾向が強くなる。好ましくは10%以下である。
LiF、NaF、KFは溶融温度を下げるために有効な成分であるが、LiFについては20%を、NaF、KFについては各々10%を超えると化学的耐久性の低下をまねき、かつ耐熱衝撃性が低下する。また、LiF、NaF、KFの合量が1% 未満では溶融温度を低下させる効果が得られず、30%を超えると化学的耐久性を著しく低下させるので、1〜30%の範囲とした。好ましくは、LiFが4〜15%、NaFが5%以下、KFが5%以下、合量で5〜20%である。
ZnFは、化学的耐久性を向上させるとともに熱膨張係数を下げる効果があるが、2%未満ではその効果が得られず、15%を超えるとガラスが不安定となるので好ましくない。好ましくは2〜10%の範囲である。
また、上記フッ化物総合計量の50%までを酸化物に置換することが可能である。この場合、Oは耐熱衝撃性を高め、Cu2+イオンによるガラスの着色に寄与するが、50%を超えると溶融温度が高くなり、Cu2+の還元をまねき所望の分光透過特性が得られなくなる。
CuOは近赤外線カットのための成分であるが、0.5%未満ではその効果が不充分で所望の分光透過特性が得られず、16%を超えるとガラスが不安定となって失透を生じる。好ましくは1〜12%である。また、ガラス肉厚が0.5mm以下の場合、所望とする分光透過特性を得るためには、4%以上とすることが好ましく、肉厚0.2mm以下の場合、8%以上とすることが好ましい。ただし、ガラス肉厚の薄肉化に伴ってCuO含有量を増やしてゆくと、上述のようにガラスが不安定となるだけでなく可視域での透過率が低下するので、上限を12%以下とすることが好ましい。
Ba及びPbの含有を不純物としてのみ許容していることが好ましい。従来のフツリン酸塩系ガラスを基礎ガラスとする近赤外線カットフィルタガラスにおいては、Ba及びPbは、ガラスを安定化させるとともに耐候性を向上させる目的でBaF、PbFとして含有されているが、板状光学ガラスの稜線部に発生するクラック長を小さくするためには、BaF、PbFを実質的に含有させないことが効果的であると考えた。また、Pbについては環境汚染物質としても含有しないことが好ましい。このため、本発明においては、Ba及びPbは意図的には添加しないことが好ましい。
本発明の板状光学ガラス1は、前述の通り、固体撮像素子用光学ガラスとして好適に用いられるものであり、例えば図2に示すように、固体撮像素子に入射する光のうち近赤外域の波長の光を選択的に吸収する、いわゆる近赤外線カットフィルタガラス6として用いられる。近赤外線カットフィルタガラス6が、一眼レフタイプのデジタルスチルカメラに用いられる場合、レンズ交換の際に近赤外線カットフィルタガラス6が大気と接触することで、その透光面に大気中のチリや埃が付着することがある。これらチリや埃は、撮像画像に写り込むことになる。そのため、一眼レフタイプのデジタルスチルカメラにおいては、近赤外線カットフィルタガラス6の透光面に付着したチリや埃を除去するダスト除去装置が設けられる。ダスト除去装置は、圧電素子等の駆動手段により近赤外線カットフィルタガラス6を板厚方向に微小振動させることにより、チリや埃を物理的に弾き落とすものである。そのため、近赤外線カットフィルタガラスには、駆動手段による板厚方向の振動に耐えうる強度が求められる。本発明の板状光学ガラス1は、稜線部のクラック長の最大値、及び曲げ強さを特定範囲に設定しているため、このような用途においても破損することなく用いることが可能である。
また、本発明の板状光学ガラス1は、例えば図3に示すように、固体撮像素子9が収められたパッケージ8を気密封着する固体撮像素子パッケージ用窓ガラス(以下、カバーガラス7と称する)としても用いられる。このカバーガラス7は、パッケージ8と気密封着されることで固体撮像素子9を保護するものである。カバーガラス7は、固体撮像素子9を用いた固体撮像デバイス11の製造工程において、仮接着の状態でパッケージ8から取り外されることがあるため、その取り外し時において、破損しない強度が求められる。本発明の板状光学ガラス1は、稜線部のクラック長の最大値、及び曲げ強さを特定範囲に設定しているため、このような取り扱いを受けた場合も破損することなく用いることが可能である。なお、近赤外線カットフィルタガラス6とカバーガラス7とを1枚の板状光学ガラスで兼ね備えてもよい。
また、カバーガラス7は、固体撮像素子9のノイズ原因となる放射線の放出量が低いガラスが求められる。ガラスからの放射線放出量を低くするには、ガラス原料に高純度品を用いる方法や製造プロセスにおいてガラスに放射性放出物質が混入しない方法がある。しかし、光学作用面を研磨する際に用いられる研磨材には放射性放出物質を含む場合があり、これらが研磨工程で発生した微小クラックに入り込むことで、後の洗浄工程にて十分に除去できず、残存付着した研磨材に起因する放射線放出が固体撮像素子9に悪影響を与えるおそれがある。本発明においては、研磨工程後にエッチング処理をすることでエッチャントが微小クラックの内部に浸透しクラック先端の曲率半径を大きくする。これにより、微小クラックの内部に侵入した研磨材が洗浄工程により容易に排出することが可能となり、固体撮像素子に用いられるガラスの研磨材に起因する放射線の影響を排除することができる。
なお、板状光学ガラス1が近赤外線カットフィルタガラス6に用いられる場合、ダスト除去装置によって振動を加えられたガラスは、透光面が波状に変形するように振動することが分かっている。また、板状光学ガラス1がカバーガラス7に用いられる場合、パッケージ8に仮留めされたガラスを取り外す際には、ガラスの一端側(もしくは両端側)から引き剥がすように力が加えられる。いずれの場合においても板状光学ガラス1には板面に対して曲げ方向の力が加えられるようになる。このため、本発明においては、これら外力に対するガラスの強度指標として、JIS R1601「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」を採用した。
次に、本発明の板状光学ガラス1の端面処理方法について説明する。図4は、本実施形態の端面処理方法を含む板状光学ガラス1の製造方法の一実施形態を示した流れ図である。
以下、ガラス原料からガラス製品に至る工程の流れを図4に従って簡単に説明する。まず、ガラス原料を溶融、成形して平板状のガラス板を得る(ガラス板成形工程)。このガラス板を所定の大きさに切断し、その稜線部をダイヤモンドホイールなどを使い面取加工する(面取工程)。ガラス板を酸性成分が塩酸である酸性水溶液からなるエッチング液中に浸漬し、稜線部をエッチング処理する(エッチング工程)。このガラス板の光学作用面に対し研磨を行い、鏡面にまで仕上げ(研磨工程)、ガラス板を洗浄して研磨剤や研磨屑を十分に除き乾燥する(第1の洗浄・乾燥工程)。こうして得られたガラス板の研磨面に対して、必要に応じて反射防止膜や近赤外線カット膜などの成膜を行う(成膜工程)。そして、ガラス基板を洗浄して乾燥する(第2の洗浄・乾燥工程)。これによりガラス製品を得る。
ガラス板成形工程は、調合したガラス原料をガラス溶融炉で溶融し、溶融ガラスをガラス溶融炉から成形型に流出して板状のガラスに成形する。もしくはブロック状のガラスに成形したのち、板状に切断する。
面取工程は、研削によって行う。例えば、ガラス板を両面で保持されガラス板の面取される端面が突出し、この端面の一辺の稜が面取される第1の回転研削砥石とこの端面の他の一辺が面取される第2の研削砥石にこの端面を順次圧接させながら、この端面を第1の回転研削砥石と第2の回転研削砥石との間を直線的に通過することにより、ガラス板の端面の稜部が面取される方法を用いることができる。
研磨工程は、エッチング工程により得られた稜線部にダメージを与えないように比較的軟質の治具を使用する必要がある。この研磨工程は、たとえば粗研磨、中研磨及び鏡面仕上げの各段階に分けて行うことにより、良好な寸法精度と良好な仕上げ面とを得ることができる。
第1及び第2の洗浄・乾燥工程は、研磨に用いた研磨剤、研磨屑や切断屑を洗浄によって除去する。たとえばガラス板を1枚ずつ間隔を設けて保持する保持部を有するかごに収容して保持し、このかごを順次超音波洗浄槽に浸漬して洗浄し、最終的にはIPA洗浄し乾燥する方法を用いることができる。
成膜工程は、研磨され洗浄・乾燥されたガラス板の板面に、必要に応じて反射防止膜や近赤外線カット膜等の薄膜を成膜する工程である。固体撮像素子9に用いられる近赤外線カットフィルタガラス6やカバーガラス7などの板状光学ガラス1には、入射光の反射損失低減のための反射防止膜や近赤外線カット膜を真空蒸着装置やスパッタリング装置などにより成膜する。なお、上記のような薄膜を必要としない板状光学ガラス1の場合、成膜工程は省略してもよい。
次に本実施形態の端面処理方法であるエッチング工程について、図5、図6に基づき詳細に説明する。
図5に示すような稜線部が面取りされたガラス板を、図6に示す治具4にて複数枚保持した後、後述するエッチング液に治具4ごとエッチング槽5に浸漬することで、ガラス板の稜線部をエッチングする。この際、ガラス板とエッチング液とを動態接触させることによって行うことが好ましい。つまり、ガラス板をエッチング液に浸漬するだけでなく、両者の接触面が変化するように撹拌あるいは流動化させておく。これによって、エッチングの進行を均一化しかつ促進できる。具体的には、密閉容器中にガラス板とエッチング液を収容し、この密閉容器を回転または振動させる。
このエッチング工程にて、ガラス板の稜線部をエッチングし、稜線部のクラック長の最大値を0.02mm以下とすることで、薄肉であっても強度の高い板状光学ガラス1が得られる。詳細には、ガラス板の稜線部に面取工程にて発生したクラックをエッチング工程にて除去できるため、板状光学ガラス1の曲げ強さを一定以上とすることが可能となる。
ガラス板の稜線部に面取工程にて発生したクラックを除去する目的で行われるエッチング工程では、酸性成分が塩酸である酸性水溶液からなるエッチング液を用いることが好ましい。ガラスのエッチングにおいては、通常酸性成分がフッ酸である酸性水溶液からなるエッチング液が用いられるが、フツリン酸塩系ガラスをフッ酸を含むエッチング液にてエッチングすると、ガラス表面にガラス成分とエッチング液との反応析出物が付着し、これがエッチング液とガラスとの接触を妨げ、エッチングの進行が遅くなり、エッチングレートの低下等の不具合を生じる。これに対し、酸性成分が塩酸である酸性水溶液からなるエッチング液を用いることで、このような反応析出物の付着がなく、エッチング処理を正確かつ容易に行うことが可能である。これは、フツリン酸塩系ガラスと組合せにおいては、特に顕著に見られる現象であり、フツリン酸塩系ガラスのエッチングレートを確認したところ、酸性成分が塩酸である酸性水溶液からなるエッチング液を用いる場合は、酸性成分が同濃度のフッ酸である酸性水溶液からなるエッチング液を用いる場合と比較し、3割程度エッチングレートが高いことが実験的に確認された。
また、エッチング液の酸性成分としては、塩酸のみの他に、塩酸とHSOの混酸も用いることができる。エッチング液の濃度やエッチングの処理時間については、除去すべきクラックの程度によって、適宜調整することができるが、塩酸の濃度としては、3〜25%(質量%)が好ましい。
さらに、エッチング液には前記塩酸等の他に界面活性剤を含めることもできる。エッチング液に界面活性剤を添加すると、エッチング液のガラス表面への濡れ性が向上し、エッチング液がクラック内部に浸透しやすくなる。これにより、エッチング処理によるクラックの除去を素早くかつ確実に行うことができる。界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウムやポリオキシエチレンアルキルエーテルなど、アニオン性界面活性剤・非イオン性(ノニオン性)界面活性剤等公知のものを用いることができる。また界面活性剤の濃度は、0.01〜10%(質量%)が好ましい。
次に、本発明の板状光学ガラスの端面処理方法の他の実施形態について説明する。図7は、他の実施形態の端面処理方法を含む板状光学ガラスの製造方法を示した流れ図である。前述の図4に記載の実施形態との違いは、面取工程後のエッチング工程がなく、研磨工程後にエッチング工程(先に説明した面取工程後のエッチング工程と区別するため、以下第2エッチング工程と称する)を有するものである。その他の工程については、図4の実施形態と同様であるため説明を省略する。
第2エッチング工程は、研磨工程において板状光学ガラス1の稜線部に入った微小クラックを除去もしくは可及的に小さくすることを目的として行われる。
板状光学ガラス1の研磨工程に用いられる両面研磨機は、研磨布を貼り付けた下定盤に、板状光学ガラス1よりやや大きい内径の孔部を複数有するキャリアをセットし、そのキャリアの孔部に板状光学ガラス1をセットした後、研磨布を貼り付けた上定盤を降ろし圧力をかけ、上定盤、下定盤、キャリアをそれぞれ回転させて、酸化セリウム等の研磨液を流しながら両面を研磨する。キャリアは外周に歯を有する歯車であって、キャリアの内側に位置する太陽歯車とキャリアの外側に位置する内歯歯車との間に等間隔に配置され、太陽歯車及び内歯歯車と噛み合い太陽歯車のまわりを遊星運動する。そして、板状光学ガラス1が上下定盤に貼り付けられた研磨布と均等に接触移動することにより、光学作用面が平坦に光学研磨される。
この両面研磨機にて板状光学ガラス1を研磨する際、板状光学ガラス1の稜線部とキャリアの孔部とが接触することで、板状光学ガラス1の稜線部に微小クラックが発生し、このクラックが板状光学ガラス1の曲げ強さを低下させる原因となることを発明者は見出した。そのため、光学作用面を研磨加工した後に第2エッチング工程にてエッチング処理をすることで、研磨工程にて発生した微小クラックをもしくは可及的に小さくし、これにより板状光学ガラス1に曲げ応力が作用した際に割れの起点となるクラックがなくなるため、強度の高い板状光学ガラス1が得られる。
第2エッチング工程は、研磨工程後の板状光学ガラス1を常温から80度程度に温めたアルカリ水溶液からなるエッチング液に所定時間浸漬するものである。第2エッチング工程においてアルカリ水溶液からなるエッチング液を用いる理由は、研磨工程後の光学作用面にマスキング等の保護処理をせずにエッチングしても、研磨工程にて生じた微小クラックを確実に除去し、かつ光学作用面に対し面荒れ等の影響を及ぼさないためである。これにより、研磨工程後の光学作用面を保護する工程が不要であり、製造工程を簡易にすることができる。なお、面取工程後のエッチング工程において用いられるエッチング液(酸性成分が塩酸である酸性水溶液)を第2エッチング工程に用いるとクラック除去においては効果が大きいものの、研磨工程にて形成した光学作用面がエッチングによりダメージを受けてしまうため好ましくない。また、面取工程後のエッチング工程で第2エッチング工程で用いるアルカリ水溶液からなるエッチング液を用いると、面取工程にて生じたクラックは先端の曲率半径が大きくなるものの、クラック長が短くならず、曲げ強さ向上の効果が十分に得られないため好ましくない。つまり、エッチング工程とエッチング液との組み合わせを最適化することにより、曲げ強さやクラック長が特定範囲となり、よって強度の高い板状光学ガラスが得られるものである。第2エッチング工程で用いられるアルカリ水溶液からなるエッチング液は、アルカリ成分はKOHであり、その他の成分として界面活性剤(トリエタノールアミン、ベンジルアルコールなど)、水などが含まれる。
また、面取工程後のエッチング工程と異なり、超音波等の揺動手段を用いず板状光学ガラス1とエッチング液を動態接触させないことが好ましい。これは、アルカリ水溶液からなるエッチング液の親水性(浸透性)を利用し、研磨工程において板状光学ガラス1の稜線部に発生した微小クラックのみにエッチング液を作用させるとともに、研磨工程にて鏡面にまで仕上げた光学作用面に対して第2エッチング工程による面荒れ等の影響を少なくするためである。
次に、本発明の板状光学ガラスの製造方法における他の実施形態について説明する。図8は、本実施形態の板状光学ガラスの製造方法を示した流れ図である。前述の図4の実施形態との違いは、面取り工程後のエッチング工程に加え、更に研磨工程後に第2エッチング工程を有するものである。第2エッチング工程以外の工程については、図4の実施形態と同様であり、第2エッチング工程は図7の実施形態と同様である。
この実施形態では、板状ガラスの稜線部の面取り工程後にエッチング工程を有し、さらに研磨工程後に第2エッチング工程を有する。板状ガラスの稜線部の面取工程では、ダイヤモンドホイール等の研削砥石によって機械的に研削を行うため、稜線部には研削砥石で除去し切れないクラックが残存したり、研削抵抗により新たなクラックが形成されたりして、後工程や搬送途中での接触・振動等により欠け(チッピング)の発生、そこから生じた二次的なチッピング粒子による板状光学ガラス表面への付着や傷付きが発生することもする。そのため、酸性成分が塩酸である酸性水溶液をエッチング液として用いるエッチング工程(第1エッチング工程)により、面取工程にて生じた稜線部のクラックを除去する。そして両面研磨機を用いた研磨工程においては、板状光学ガラス1よりやや大きい外形形状の孔部を複数有するキャリア内に板状光学ガラス1を納めて研磨を行う。研磨時に板状光学ガラス1の周縁である稜線部とキャリア孔部の内周面とが接触することで、板状光学ガラス1の稜線部に微小クラックが新たに発生、また既に存在していたクラックが伸長することになる。そのため、アルカリ水溶液からなるエッチング液を用いる第2エッチング工程により、研磨工程にて形成された光学作用面にダメージを与えることなく、稜線部の微小クラックを除去する。なお、第2エッチング工程における微小クラックの除去とは、微小クラックにエッチング液が浸透することでクラック長を短くすること、クラック先端の曲率半径を大きくすることも含む。これらより、板状光学ガラスに曲げ応力が作用した際に、微小クラックが割れの起点とならないため、板状光学ガラスの曲げ強さを大幅に向上させることができる。
以下の各実施例及び各比較例では、板状光学ガラス1として、大きさ33.7mm×50.8mm、厚さ0.3mmの近赤外線カットフィルタガラス(フツリン酸塩系ガラス)を適用した。前記近赤外線カットフィルタガラスとして使用したガラスは、質量%で、P 46.2%、MgF 1.9%、CaF 8.4%、SrF 18.3%、NaF 9.0%、AlF 9.9%、MgO 2.2%、CuO 6.2%からなる組成を有する。
このガラスは次のようにして作製した。まず得られるガラスが上記組成範囲になるように原料を秤量、混合し、この原料混合物を白金ルツボに収容し、蓋をして、電気炉内において780〜1100℃の温度で加熱熔融した。十分に攪拌・清澄した後、金型内に鋳込み、徐冷した後、切断して125mm角の平板とした。これを♯600のカーボン系砥粒を用い両面研磨機で肉厚1mmとなるまで粗磨りし、ダイヤモンド超鋼刃を用いたスクライブマシンにより所定寸法に割断し板状ガラスとした。面取工程は、割断した板状ガラスをV溝を複数持つ研削ホイールを用い基準となる形状を倣いカム式で外形研削する多溝ホイールを用い、8稜線部を面取り加工した。面取工程で用いた研削ホイールは、ダイヤモンド電着砥石(#400)である。また、研磨工程としては、板状ガラスの表裏面(光学作用面)を両面研磨機にて、♯1200のアルミナ系砥粒でラッピングし、表面の粗さ仕上げと板厚を0.3mm程度の厚みまで削り込んだ。続いてこのガラス製品に対し、両面研磨機でセリア系の研磨材にてポリッシング処理し、最終製品の仕様となるガラス面の鏡面仕上げを行なった。その他の製造工程は、図4に示す流れ図に沿って行った(但し、成膜工程はなし)。
(実施例1〜実施例5)
各実施例のエッチング工程において用いたエッチング液は、表1に示すHClを酸性成分とし、蒸留水と界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、実施例4はなし)とからなるものである。前述したガラスに面取り加工を行ったものを用意し、ガラス板をエッチング液を満たした超音波発生機構と上下揺動機構を備えたエッチング装置に浸漬し、所定時間エッチングを行った。その後、図4に示した工程に従ってサンプルを作成した。作成したサンプルについて、JIS R1601「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に記載の3点曲げ強さ試験にて、曲げ強さを測定した。また、稜線部を光学顕微鏡で確認し、クラック長の最大値を確認した。なお、実施例、比較例について各30枚測定を行った。
(比較例1、比較例2)
各比較例として、実施例のエッチング工程がない以外は全て同一条件にてサンプルを作成した。作成したサンプルについて、実施例と同様に曲げ強さの測定、クラック長の最大値を確認した。
各実施例及び各比較例のエッチング条件(HCl濃度[質量%]、界面活性剤濃度[質量%]、エッチング時間)と曲げ強さ(最小値)とクラック長(最大値)を表1に示す。
Figure 0005439903
試験結果より、実施例の曲げ強さが65N/mm以上であり、比較例に比べて高い曲げ強さを有していることが確認された。なお、曲げ強さについて最小値を示した理由は、エッチング処理によるばらつきの中の最小値をみることが、実際の製品に用いられた場合の板状光学ガラスの信頼性を裏付ける上で重要であると考えたからである。なお、実施例にはチッピングは存在するものの、比較例よりも曲げ強さが高かったことから、チッピングの存在が曲げ強さを低くする要因とはならないと考えられる。また、実施例や比較例で得られたクラック長と曲げ強さとの関係から、クラック長が0.02mm以下の場合、曲げ強さが65N/mm以上であることが確認された。
次にエッチング液に界面活性剤を添加することの効果を確認するため、エッチング液として、HCl:5質量%+蒸留水からなる混合液に界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル):1質量%を添加したものと添加しないものを用意し、実施例で用いたガラス板を60分間エッチング処理し、平均エッチングレートとクラックの有無を確認した。その結果を表2に示す。これより、エッチング液に界面活性剤を添加した場合、平均エッチングレートの向上が見られ、クラックも除去されていた。なお、界面活性剤を添加しない場合については、処理時間を長く、もしくは塩酸の濃度を上げることでクラック除去は可能であった。
Figure 0005439903
(実施例6〜実施例8)
実施例6〜実施例8では、研磨工程後の第2エッチング工程による効果を確認する。研磨工程後の第2エッチング工程において用いたアルカリ水溶液からなるエッチング液は、アルカリ成分としてKOHを含み、その他蒸留水等からなるものである。第2エッチング工程は、光学作用面を研磨工程にてラッピング処理、ポリッシュ処理した板状光学ガラスを、40℃程度に加温したアルカリ水溶液中に浸漬し、所定時間エッチング処理を行った。なお、実施例6〜実施例8は、面取工程後にエッチング処理を行っており、これに用いたエッチング装置は実施例1等と同様で、エッチング液は表3に示すとおりである。作成したサンプルについて、JIS R1601「ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法」に記載の3点曲げ強さ試験にて、曲げ強さを測定した。また、稜線部を光学顕微鏡で確認し、クラック長の最大値を確認した。なお、実施例について各30枚測定を行った。
Figure 0005439903
試験結果より、実施例の曲げ強さが190N/mm以上であり、比較例や面取工程後にのみエッチング処理を行った実施例1〜実施例5に比べて高い曲げ強さを有していることが確認された。
次に第2エッチング工程における光学作用面への影響を調べるため、実施例6〜実施例8にて作成したサンプルについて、平坦度(フリンジ数)、面粗さ(Ra)、分光透過率、耐候性(65℃、95RH%、700時間での表面状態)について調査した。いずれの実施例で作成したサンプルも、研磨工程後にエッチング処理を行わないものと比較し、結果に有意差は見られず、光学作用面の品質上の問題はなかった。
(実施例9)
実施例9として、第2エッチング工程における光学作用面への影響を調べるため、面取工程後のエッチング処理を行わず、前記実施例6〜実施例8の第2エッチング工程と同様の処理のみを行ったサンプルについて、平坦度(フリンジ数)、面粗さ(Ra)、分光透過率、耐候性(65℃、95RH%、700時間での表面状態)について調査した。その結果、研磨工程後にエッチング処理を行わないものと比較し、結果に有意差は見られず、光学作用面の品質上の問題はなかった。
本発明の板状光学ガラス1及び板状光学ガラス1の端面処理方法によれば、比較的硬度が低いフツリン酸塩系ガラスからなる板状光学ガラス1であっても稜線部のクラック長及び曲げ強さを特定範囲とすることで、薄肉でも振動等の外力が作用した場合においても破損することがない板状光学ガラス1を提供することが可能となる。
1…板状光学ガラス、2…面取り加工部、3…側面、4…エッチング用治具、5…エッチング槽、6…固体撮像素子用近赤外線カットフィルタガラス、7…固体撮像素子パッケージ用窓ガラス(カバーガラス)、8…パッケージ、9…固体撮像素子、10…稜線部、11…固体撮像素子デバイス。

Claims (1)

  1. フツリン酸塩系ガラスからなる光学作用面を有する板状光学ガラスの製造方法であって、ガラス素材を切断して板状ガラスを得るガラス切断工程と、前記板状ガラスの側面と各透光面とが隣接する稜線部を研削砥石によって機械的に面取する面取工程と、前記面取加工された板状ガラスを酸性成分が塩酸である酸性水溶液でエッチングする第1エッチング工程と、前記第1エッチングされた板状ガラスの光学作用面を鏡面を得るまで研磨する研磨工程と、前記研磨された板状ガラスをアルカリ水溶液でエッチングする第2エッチング工程と、前記第2エッチングされた板状ガラスを洗浄し乾燥する洗浄・乾燥工程と、を備えたことを特徴とする板状光学ガラスの製造方法。
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