JP6269064B2 - 光学多層膜付きガラス部材及び近赤外線カットフィルタガラス - Google Patents

光学多層膜付きガラス部材及び近赤外線カットフィルタガラス Download PDF

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Description

本発明は、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラなどに利用されるCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正フィルタとして利用される光学多層膜付きガラス部材に関する。
デジタルスチルカメラやビデオカメラに利用されているCCDやCMOSなどの固体撮像素子の分光感度は、人間の視感度特性と較べて近赤外域の光に対し強い感度を持つ特徴がある。そこで、一般的にはこれら固体撮像素子の分光感度を人間の視感度特性に合わせるための視感度補正フィルタが用いられている。
このような視感度補正フィルタとして、特許文献1には、弗燐酸塩ガラスや燐酸塩ガラスなどのガラス中にCu2+イオンを存在させて、分光特性を調整した近赤外線カットフィルタガラスが開示されている(特許文献1参照)。
また、透過する波長域を正確に決定し、かつシャープにすることを目的として、上記のような近赤外線カットフィルタガラスの表面に、高屈折率層と低屈折率層とを複数交互積層した光学多層膜を設け、可視域の波長(400〜600nm)を効率的に透過し、かつ近赤外域の波長(700nm)のシャープカット性に優れた特性を有する近赤外線カットフィルタが知られている(特許文献2参照)。その他、ガラス基板表面の反射を抑制し透過率を向上させることを目的として、近赤外線カットフィルタガラスの表面に反射防止膜が設けられる場合もある。
前記光学多層膜は、近赤外線カットフィルタの場合、例えば酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブなどからなる高屈折率層と、酸化珪素などからなる低屈折率層とをガラス基板上に交互積層したもので、高屈折率層及び低屈折率層の厚さや層数を適宜に設定することで、光の干渉を利用して光を選択透過するものである。
日本特開平06−16451号公報 日本特開平02−213803号公報
近赤外線カットフィルタガラスに用いられる光学多層膜は、ガラス部材の搬送や組み立て時における他部材との接触等の製造工程における耐傷性を高めるため、より高硬度であることが求められている。また、長期保存時の湿度等による分光特性変化が少ない、いわゆるノンシフト膜であることが求められている。そして、これら高硬度、高耐候性を備えた光学多層膜の形成方法として、スパッタリング法やイオンアシスト蒸着法(Ion−beam Assisted Deposition:IAD、イオンアシストを用いた蒸着法)による成膜方法が知られている。
しかし、弗燐酸塩ガラスのガラス基板面に対して、スパッタリング法やイオンアシスト蒸着法の成膜方法を用いて光学多層膜を形成した場合、ガラス基板と光学多層膜との密着性が十分でなく、ガラス基板を小片に切断する際に膜ハガレが発生しやすいという問題がある。
その理由としては、以下の点が挙げられる。
弗燐酸塩ガラスは、ガラス組成中にフッ素成分を含有しており、ガラス表面に表面自由エネルギーの低いフッ素が存在するため、他の物質との密着性が悪いと考えられる。
他方、スパッタリング法やイオンアシスト蒸着法にて形成される光学多層膜は、膜物質が非常に緻密に構成されるため、膜の硬度が高いという特徴がある。
上述のような光学多層膜の密着性が悪いガラス基板の表面に硬度の高い光学多層膜を形成した場合、光学多層膜が切断される瞬間の衝撃によってガラス基板と光学多層膜との接触状態が弱まり、これによりガラス基板から光学多層膜が剥れる現象が発生するものと考えられる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学多層膜の膜ハガレが抑制された光学多層膜付きガラス部材、及び近赤外線カットフィルタガラスを提供することである。
本発明は、弗燐酸塩ガラス基板上に15層以上、もしくは総膜厚が1μm以上の光学多層膜が形成された光学多層膜付きガラス部材であって、前記弗燐酸塩ガラス基板と前記光学多層膜との聞に、前記弗燐酸塩ガラス基板に対する前記光学多層膜の密着性を向上させる、2層以上からなる密着強化膜を有し、
前記密着強化膜は弗化マグネシウム(MgF)を前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層以外に備え、前記光学多層膜は、密着強化膜に比べて硬度が高いことを特徴とする光学多層膜付きガラス部材(以下、本発明の光学多層膜付きガラス部材ということがある)を提供する。

また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記密着強化層は、酸化珪素(SiO)、酸化チタン(TiO)、ランタンチタン酸塩(LaTi)、酸化アルミニウム(Al)、および酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物の何れかから選ばれる材料からなる酸化物膜を前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層に備えるものを提供する。
また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記密着強化膜は、屈折率が1.68以下の酸化物膜を前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層に備えるものを提供する。
また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記密着強化膜は、前記酸化物膜に加えて、弗化マグネシウム(MgF)膜を前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層以外に備えるものを提供する。
また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記密着強化膜は、前記弗燐酸塩ガラス基板側から、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜、酸化ジルコニウム(ZrO)膜、弗化マグネシウム(MgF)膜とをこの順に積層した3層の膜構成からなるものを提供する。
また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記光学多層膜は、15層以上、もしくは総膜厚が1μm以上であるものを提供する。
また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記密着強化膜は、前記光学多層膜の光学特性に実質的に影響を与えないものを提供する。
また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記密着強化膜は、前記光学多層膜の一部を構成するものを提供する。
また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記光学多層膜は、反射防止膜、赤外線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜、紫外線及び赤外線遮蔽膜の少なくとも何れか1種であるものを提供する。
また、本発明の光学多層膜付きガラス部材であって、前記密着強化膜の前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層は、Al成分を含み、前記弗燐酸塩ガラス基板は、P5+、Al3+、F、およびCu2+を必須成分として含むものを提供する。
また、前記光学多層膜付きガラス部材からなる近赤外線カットフィルタガラスを提供する。
本発明によれば、ガラス基板の主表面に密着強化膜を介在して光学多層膜を形成することにより、光学多層膜の膜ハガレの発生が抑制された光学多層膜付きガラス部材、及び近赤外線カットフィルタガラスが提供される。
本発明の実施形態に係る光学多層膜付きガラス部材の構成を示す模式図である。 本発明の他の実施形態に係る光学多層膜付きガラス部材の構成を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る光学多層膜付きガラス部材10の構成を示す模式図である。図1に示す光学多層膜付きガラス部材10は、ガラス基板1と、ガラス基板1の主表面に形成された密着強化膜2と、密着強化膜2の上に形成された光学多層膜3とを具備している。光学多層膜付きガラス部材10は、弗燐酸塩ガラス基板1と光学多層膜3との間に前記密着強化膜2が介在することで、両者の密着性を向上させ、膜ハガレの発生を抑制している。
光学多層膜3は、用途に応じて適宜に選択されるものであり、例えば反射防止機能を有する反射防止膜(AR膜:Anti Reflection膜)、赤外線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜、紫外線及び赤外線遮蔽膜等が挙げられる。また、反射防止膜と赤外線遮蔽膜との両者の機能を備えるものであってもよい。このような機能を有する光学多層膜3には、例えば低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に配置した積層膜が用いられる。低屈折率膜としては酸化珪素膜等が用いられる。高屈折率膜としては酸化ニオブ、酸化チタンおよび酸化タンタルから選ばれる少なくとも1種からなる金属酸化膜等が用いられる。
光学多層膜3は、スパッタリング法やイオンアシスト蒸着法を用いて形成される。スパッタリング法やイオンアシスト蒸着法にて成膜された膜は、イオンアシストを用いない蒸着法にて形成された膜と比較し、高温高湿下における分光特性変化が非常に小さく、実質的に分光変化がないノンシフト膜の実現が可能であるという利点がある。また、これら方法で成膜された膜は、硬度が高いため傷が付きにくく、部品組込み工程等における取扱性にも優れている。そのため、固体撮像素子の視感度補正フィルタとして用いられる近赤外線カットフィルタガラスの光学多層膜の成膜方法として好適である。
光学多層膜3は、要求される光学特性に応じて低屈折率膜および高屈折率膜の膜厚や積層数が適宜に設定される。ガラス基板1と光学多層膜3との膜ハガレは、光学多層膜3の総膜厚が厚く、もしくは膜層数が多いほど発生するおそれが高まる。そのため、密着強化膜2は、光学多層膜3が15層以上の場合に用いると、もしくは総膜厚が1μm以上の場合に用いると、より効果的に膜ハガレを抑制することができる。
ガラス基板1は、弗燐酸塩ガラスを用いる。弗燐酸塩ガラスとしては、下記の酸化物基準またはフッ化物基準の質量%表示でP 10〜60%、AlF 0〜20%、LiF+NaF+KF 1〜30%、MgF+CaF+SrF+BaF 10〜75%、(ただし、弗化物総合計量の70%までを酸化物に置換可能)を含む成分の合計が90%以上である母ガラス100質量部に対し、外割でCuOを0.5から12質量部を含有するものであることが好ましい。
上記した数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
ガラス基板側の第1層に形成される密着強化膜2がAl成分を含有する場合、ガラス基板1は、P5+、Al3+、F、およびCu2+を必須成分として含む弗燐酸塩ガラスであることが好ましい。
密着強化膜2とガラス基板1の両者に共にAl成分が含有されている場合、密着強化膜2とガラス基板1の密着力が特に優れることがわかった。これは、密着強化膜2とガラス基板1に含有する成分が同一であるため、密着強化膜2とガラス基板1との界面の物理的もしくは化学的な結合力が高まるためと考えられる。Al成分を含有する密着強化膜2としては、酸化アルミニウム(Al)、または酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜が、代表的な例として挙げられる。
ガラス基板1は、カチオン%表示で、P5+ 20〜55%、Al3+ 1〜25%、R 1〜50%(ただし、Rは、Li、Na、およびKのアルカリ金属イオンであり、Rとして含有割合を表記する場合には、含有されるアルカリ金属イオンの合量を表す)、R2+ 1〜50%(ただし、R2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、およびZn2+のアルカリ土類金属イオンであり、R2+として含有割合を表記する場合には、含有されるアルカリ土類金属イオンの合量を表す)、Cu2+ 1〜10%、Sb3+ 0〜3%を含有すると共に、アニオン%表示で、O2− 35〜95%、F 5〜65%、を含有する弗燐酸塩ガラスであることが好ましい。
また、前記ガラス基板1において含有されるRとしては、カチオン%表示で、Liを0〜40%、Naを0〜40%、Kを0〜40%含有することが好ましい。
また、前記ガラス基板1において含有されるR2+としては、カチオン%表示で、Mg2+を0〜20%、Ca2+を0〜40%、Sr2+を0〜40%、Ba2+を0〜40%、Zn2+を0〜40%含有することが好ましい。
次に、ガラス基板1を構成する各成分の含有量(カチオン%表示、アニオン%表示)を上記のように限定した理由を以下に説明する。
5+は、ガラスを形成する主成分(すなわち、ガラス形成酸化物)であり、近赤外領域のカット性を高めるための必須成分であるが、20%未満ではその効果が十分得られず、55%を超えるとガラスの粘性が高くなる、ガラスの液相温度が高くなる、また耐候性が低下するため好ましくない。好ましくは25〜50%であり、より好ましくは30〜45%である。
Al3+は、ガラスを形成する主成分(すなわち、ガラス形成酸化物)であり、Al成分を含有する密着強化膜との密着性を高めるための必須成分であるが、1%未満ではその効果が十分得られず、耐候性が低くなり、25%を超えるとガラスが不安定になる、また赤外カット性が低下するため好ましくない。好ましくは3〜20%であり、より好ましくは5〜18%である。さらに好ましくは7〜16%である。
は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、ガラスを安定化させるための必須成分であるが、1%未満ではその効果が十分得られず、また50%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは5〜40%であり、より好ましくは10〜35%である。さらに好ましくは15〜30%である。
Liは、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、またガラスを安定化させる効果があるが、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは、1〜35%であり、より好ましくは、5〜32%である。さらに好ましくは、10〜29%である。
Naは、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、またガラスを安定化させる効果があるが、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは、1〜35%であり、より好ましくは、5〜32%である。さらに好ましくは、10〜29%である。
は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、またガラスを安定化させる効果があるが、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは、1〜35%であり、より好ましくは、5〜32%である。さらに好ましくは、10〜29%である。
2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、ガラスを安定化させるための必須成分であるが、1%未満ではその効果が十分得られず、また50%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは5〜40%であり、より好ましくは10〜35%である。さらに好ましくは15〜30%である。
Mg2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、またガラスを安定化させる効果があるが、20%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは、1〜15%であり、より好ましくは、2〜10%である。さらに好ましくは、3〜5%である。
Ca2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、またガラスを安定化させる効果があるが、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは、1〜30%であり、より好ましくは、2〜20%である。さらに好ましくは、3〜10%である。
Sr2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、またガラスを安定化させる効果があるが、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは、1〜30%であり、より好ましくは、2〜20%である。さらに好ましくは、3〜10%である。
Ba2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、またガラスを安定化させる効果があるが、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは、1〜30%であり、より好ましくは、2〜20%である。さらに好ましくは、3〜10%である。
Zn2+は、ガラスの溶融温度を低くする、ガラスの液相温度を低くする、ガラスを軟化させる、またガラスを安定化させる効果があるが、40%を超えるとガラスが不安定になるため好ましくない。好ましくは、1〜30%であり、より好ましくは、2〜20%である。さらに好ましくは、3〜10%である。
Cu2+は、近赤外線カットための必須成分であるが、1%未満であるとその効果が十分に得られず、10%を超えると可視域透過率が低下するため好ましくない。好ましくは2〜8%であり、より好ましくは3〜7%である。
Sb3+は、必須成分ではないものの、銅のレドックスを下げて可視域透過率を高める効果があるが、3%を超えるとガラスの安定性が低下するため好ましくない。好ましくは0〜2%であり、より好ましくは0.01〜1%である。さらに好ましくは0.05〜0.5%である。
2−は、ガラスを安定化させるための必須成分であるが、35%未満であるとその効果が十分得られず、95%を超えるとガラスが不安定となるため好ましくない。好ましくは55〜90%であり、より好ましくは60〜85%である。
は、ガラスを安定化させるため、耐候性を向上させるための必須成分であるが、5%未満であるとその効果が十分得られず、65%を超えると可視域透過率が低下するおそれがあるため好ましくない。好ましくは10〜45%であり、より好ましくは15〜40%である。
ガラス基板1は、PbO、およびAsを実質的に含有しないことが好ましい。PbOは、ガラスの粘度を下げ、製造作業性を向上させる成分である。また、Asは清澄剤や酸化剤として作用する成分である。しかし、PbOおよびAsは、環境負荷物質であるため、できるだけ含有しないことが望ましい。ここで、実質的に含有しないとは、原料として意図して用いないことを意味しており、原料成分や製造工程から混入する不可避不純物については実質的に含有していないとみなす。また、前記各成分を実質的に含有しないこととは、不可避不純物を考慮し、含有量は0.1%以下であることを意味する。
ガラス基板1は、上記したような所望のガラス組成となるように、ガラス原料を調合、溶融し、次いで溶融したガラスを成形する。そして、所定の大きさとなるよう外形を加工してガラス基板を作製した後、ガラス基板のガラス表面をラッピング、ポリッシングする。次いで、これらガラス基板に光学多層膜や密着強化膜を形成した後、所定の製品サイズとなるよう光学多層膜付きガラス部材を、公知方法(スクライブ、ダイシング、レーザー切断等)を用いて切断する。
上記組成の弗燐酸塩ガラスは、耐候性に優れており、CuOを含有することで、近赤外線カットフィルタガラスに好適な分光特性を得ることができる。また、弗燐酸塩ガラスとしては、例えば、日本特開平3−83834号公報、日本特開平6−16451号公報、日本特開平8−253341号公報、日本特開2004−83290号公報、または日本特開2011−132077号公報に開示された組成範囲または実施例に記載のガラスを用いることができる。
弗燐酸塩ガラスは、ガラス成分に弗素成分を含有する。そのため、ガラス表面に存在する弗素成分が、ガラス表面に形成される光学多層膜3の密着性を低下させる原因と考えられる。また、上述のとおり、スパッタリング法やイオンアシスト蒸着法を用いて形成された膜は、イオンアシストを用いない蒸着法によって形成された膜と比較し硬度が高い。弗燐酸塩ガラスは、ケイ酸塩ガラスと比較し、ガラスの硬度が低く、脆性が大きいため(すなわち脆いため)、外力が作用した際に割れやすく、また傷が付きやすい。そのため、硬度の低い弗燐酸塩ガラスのガラス表面に膜硬度の高い光学多層膜が形成されたガラス部材を切断すると、硬度差の大きいガラス基板と光学多層膜との界面に応力が集中し、破壊が伸長することで、両者の密着性が弱くなることが考えられる。
ここで、イオンアシスト蒸着法は、真空蒸着法による成膜中にイオンの持つ高い運動エネルギーを作用させて緻密な膜としたり、被膜の密着力を高める方法であり、例えばイオンビーム蒸着法やイオンプレーティング蒸着法などが知られている。例えば、イオンビームによる方法は、イオン銃から照射されるイオン化されたガス分子により被着材料を加速し、基板表面に成膜する方法である。一方、イオンアシストを用いない蒸着法は、上記したような、イオンビームやイオンプレーティングを用いない方法である。
本発明の光学多層膜付きガラス部材において密着強化膜2は、ガラス基板1と光学多層膜3との間に密着強化膜2を介在させることで両者の密着性を向上させ、膜ハガレの発生を抑制するものであり、イオンアシストを用いない蒸着法にて形成されたものである。密着強化膜2は、イオンアシストを用いない蒸着法で形成されることにより硬度が低く、脆性の大きい膜となる。これにより、ガラス基板1と密着強化膜2との物性が近くなり、ガラス部材10を切断する際の応力集中ポイントがガラス基板と光学多層膜との界面から、密着強化膜2と光学多層膜3との界面に移動する。密着強化膜2と光学多層膜3とは、それぞれの硬度は異なるものの、製造方法等が類似することから、両者の層間においては剥離が発生し難い。また、ガラス部材10を厚さ方向に切断する際、ぜい性の大きい密着強化膜2が先に破壊されることで応力を吸収し、結果として膜ハガレの要因となるキズが伸長しないと考えられる。以上のことから、本発明の光学多層膜付きガラス部材10は、ガラス基板1と光学多層膜3との間に密着強化膜2を介在させることで両者の密着性を向上させ、膜ハガレの発生を抑制するものと考えられる。
密着強化膜2は、硬度が低く、脆性の大きい膜である。前述のとおり、密着強化膜2はイオンアシストを用いない蒸着法で形成することで、このような膜質となる。蒸着法において、一層硬度が低く、脆性の大きい膜を得るには、ガラス基板1に密着強化膜2を形成する際のガラス基板1の温度を通常の蒸着法にて用いる条件よりも低い温度とすることが好ましい。具体的には、イオンアシストを用いない蒸着法を用いて弗燐酸塩ガラス基板に薄膜を成形する場合、通常、ガラス基板の温度は通常200℃〜350℃程度とする。これに対し、本発明においては、成膜時のガラス基板の温度を120℃〜200℃(200℃を含まない)として密着強化膜2を形成することが好ましく、120℃〜160℃のガラス基板温度とすることが更に好ましい。また、ガラス基板の温度を前記条件とすることで、密着強化膜2を形成する際のガラス基板1の温度と、イオンアシスト蒸着法を用いて光学多層膜3を形成する際のガラス基板1の温度との差が小さくなる。そのため、両者を連続して形成することが可能となり、生産性が高くなる。なお、これは、イオンアシスト蒸着法ではイオンアシストのエネルギーが加算される関係で、イオンアシストを用いない蒸着法におけるガラス基板温度より数十度低いガラス基板温度が好ましいためである。
また、蒸着法において、一層硬度が低く、脆性の大きい膜を得るための別の方法として、蒸着装置内の真空度を通常の蒸着法にて用いる条件よりも、低い真空度とすることが好ましい。具体的には、密着強化膜2を成膜する際には10sccm以上の不活性ガス(アルゴンガスなど)もしくは反応性ガス(酸素ガスなど)を導入して成膜を行うことが好ましい。
密着強化膜2は、酸化珪素(SiO)、酸化チタン(TiO)、ランタンチタン酸塩(LaTi)、酸化アルミニウム(Al)、および酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物のいずれかから選ばれる材料からなる酸化物膜をガラス基板側の第1層に備えることが好ましい。また、密着強化膜2は、蒸着法において、成膜時の真空度をコントロールすることで、膜質を調整して成膜を行うことが好ましい。これらにより、硬度が低く、脆性が大きい密着強化膜2を得ることができる。
密着強化膜2は、屈折率が1.70以下、好ましくは1.68以下の酸化物膜をガラス基板側の第1層に備えることが好ましい。ガラス基板側の第1層に形成される密着強化膜は、ガラス基板面への成膜工程を開始した直後に成形されるものである。成膜工程の開始時は、蒸着装置内の状態等が安定しておらず、形成される膜の状態(例えば、屈折率等)が所望の特性とならないおそれがある。前記ガラス基板側の第1層の酸化物膜を屈折率1.68以下とすることで、ガラス基板1の屈折率(例えば、1.52)との差が小さい。そのため、前述のように成膜工程に起因して密着強化膜2の膜の状態が所望の特性から多少変動しても、ガラス部材としての分光特性に与える影響を無視できる程度に小さくすることができる。屈折率が1.68以下の酸化物膜としては、酸化珪素(SiO、屈折率:1.46)、酸化アルミニウム(Al、屈折率:1.64)、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜(屈折率:1.67)が挙げられる。なお、本発明における密着強化膜2の屈折率は波長500nmにおける屈折率をいうものである。
密着強化膜2は、上述の酸化物膜からなる膜をガラス基板側の第1層に備えれば、単層で構成されていても複数層で構成されていてもよい。密着強化膜2が複数層で構成される場合、前記酸化物膜に加えて、弗化マグネシウム(MgF)膜をガラス基板側の第1層以外に備えることが好ましい。弗化マグネシウム(MgF)膜は、非常に脆性の大きい膜であるため、前記酸化物膜と組み合わせて密着強化膜2を構成することで、ガラス基板1と光学多層膜3との間の密着性を向上させ、膜ハガレの発生を抑制することができる。また、前記酸化物膜と弗化マグネシウム(MgF)膜とを組み合わせると、前記酸化物膜を単層で用いるのに比べ、前記酸化物膜の膜厚を薄くすることが可能となり、生産性を向上することができる。
密着強化膜2は、ガラス基板側から、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜、酸化ジルコニウム(ZrO)膜、弗化マグネシウム(MgF)膜の3層の膜構成からなることがより好ましい。この膜構成を用いることで密着強化膜2は高い反射防止機能を備える。そのため、光学多層膜3の光学特性に影響を与えることなく、密着強化膜2を構成することができる。また、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜は、硬度が低く脆性の大きい膜を形成することができるため、ガラス基板と光学多層膜との密着性に寄与し、ガラス部材の切断時の両者のはがれを抑制することができる。その他、密着強化膜2が複数層で構成される場合、酸化珪素(SiO)と酸化チタン(TiO)との交互層も好適に用いることができる。
密着強化膜2は、光学多層膜3の光学特性に実質的に影響を与えないことが好ましい。これにより、密着強化膜2と光学多層膜3とをそれぞれ独立して設計したとしても、密着強化膜2が光学多層膜付きガラス部材の分光特性に影響を及ぼすことがない。密着強化膜2の膜厚は、生産性や分光特性を考慮し、1μm以下とすることが好ましく、500nm以下がより好ましい。また、密着強化膜2の膜厚は、薄すぎると光学多層膜3とガラス基板1との密着性が得られないことから、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。なお、実質的に影響を与えないとは、密着強化膜2と光学多層膜3とをそれぞれ別に設計した場合において、密着強化膜2と光学多層膜3との両者が合わさった分光特性と、光学多層膜3のみの分光特性とが大きく相違しないことをいう。
また、密着強化膜2は、光学多層膜3の一部を構成してもよい。これにより、密着強化膜2の光学特性へ影響を考慮する必要がなくなる。例えば、少なくとも光学多層膜3のガラス基板1と接する膜をイオンアシストを用いない蒸着法にて形成し、それ以降の光学多層膜3をイオンアシストを用いた蒸着法にて形成する。この場合、光学多層膜3の一部を構成するイオンアシストを用いない蒸着法で形成した光学多層膜3が密着強化膜2を兼ねることで、ガラス基板1と光学多層膜3との密着性の向上に寄与する。なお、密着強化膜2として作用する光学多層膜3の一部をイオンアシストを用いない蒸着法にて形成し、次いで残りの光学多層膜3をスパッタリング法にて形成してもよい。
次に、本発明の他の実施形態を図2に示す。この実施形態は、ガラス基板の両面に密着強化膜及び光学多層膜を備える点で上述の実施形態と相違する。
この実施形態の光学多層膜付きガラス部材20としては、ガラス基板1のそれぞれの面に以下の機能を備える光学多層膜3、4を形成し、ガラス基板1と光学多層膜3、4との間に密着強化膜2を備える。この実施態様の構成を具体的に示すと、例えば、反射防止膜/密着強化膜/ガラス基板/密着強化膜/反射防止膜、反射防止膜/密着強化膜/ガラス基板/密着強化膜/赤外線遮蔽膜、赤外線遮蔽膜/密着強化膜/ガラス基板/密着強化膜/赤外線遮蔽膜、赤外線遮蔽膜/密着強化膜/ガラス基板/密着強化膜/紫外線及び赤外線遮蔽膜等である。
光学多層膜付きガラス部材20を近赤外線カットフィルタとして用いる場合、光に入射角度に依存する分光特性の変化を極力抑制したフィルタが求められる。この場合、例えば、光学多層膜付きガラス部材20として、赤外線遮蔽膜/密着強化膜/ガラス基板/密着強化膜/紫外線及び赤外線遮蔽膜の構成が用いられる。赤外線遮蔽膜や紫外線及び赤外線遮蔽膜は、膜層数が多く、総膜厚が厚いため、それぞれの光学多層膜とガラス基板との界面に密着強化膜を設ける必要がある。
なお、ガラス基板の両面に光学多層膜が形成される場合で、一方の光学多層膜の総膜厚や膜層数が少なく、膜ハガレのおそれが少ない場合は、一方の光学多層膜についてのみ密着強化膜を用いなくてもよい。
以下に、本発明を実施するための具体的な態様について説明する。なお、以下の説明は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿った形での改変であれば可能である。
実施例及び比較例の光学多層膜付きガラス部材として、以下のガラス基板と光学多層膜を用いた。ガラス基板として、板状の弗燐酸塩ガラス(製品名:NF−50、AGCテクノグラス社製、大きさ50mm×50mm、厚さ0.05mm)の主表面を精密研磨したものを用いた。光学多層膜として、赤外線遮蔽膜(酸化チタン(TiO)膜、酸化珪素(SiO)膜、および酸化タンタル(Ta)膜とをこの順に積層した3層基本層を繰返し積層した交互膜(3層基本層の層数:80層、総膜厚4μm))をイオンアシストを用いた蒸着法にて前記ガラス基板の一方の主表面に形成した。イオンアシスト蒸着法を用いてガラス基板上に光学多層膜を形成した際のガラス基板の温度は128℃であった。また、各実施例において、以下に述べる密着強化膜を前記ガラス基板と前記光学多層膜との間に設けた。
実施例および比較例の光学多層膜付きガラス部材の膜ハガレ性の評価は、以下のようにして実施した。まず、ガラス基板上に形成された光学多層膜の膜面上に一般的なガラス切りを用いて、間隔約2mm、長さ10mm程度のガラス基板に到達する傷を線状に数本つけ、これを格子状になるように形成する。次いで、JIS Z1522で規定された粘着テープ(幅12〜19mm)を格子状の傷上に貼り付け、この粘着テープを光学多層膜の膜面に対して垂直方向に素早く引張り、光学多層膜の膜剥がれの発生の様子を確認した。
評価基準として、膜ハガレが全くないものを○、格子状の傷の一部を起点とした線状の膜ハガレがわずかに発生したものを○〜△、格子状の傷の一部を起点とした面状の膜ハガレが部分的に発生したものを△、面状の膜ハガレがテープ面の大部分に発生したものを×とした。
(実施例1)
密着強化膜として、ガラス基板側から、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜(67nm)、酸化ジルコニウム(ZrO)膜(121nm)、弗化マグネシウム(MgF)膜(85nm)の3層の膜(総膜厚:0.27μm)を、イオンアシストを用いない蒸着法にてガラス基板の一方の主表面に形成した。次いで、前述の光学多層膜を形成した。なお、密着強化膜は、反射防止膜としても機能し、光学多層膜の光学特性に影響を及ぼさなかった。
(実施例2)
密着強化膜として、ガラス基板上に側から、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜(120nm)を、イオンアシストを用いない蒸着法にてガラス基板の一方の主表面に形成した。次いで、前述の光学多層膜を形成した。なお、ガラス基板上に密着強化膜を形成した際のガラス基板温度は300℃であり、蒸着装置内の真空度は3.6×10−2Paでアルゴンガスを40sccm導入した。
(実施例3)
密着強化膜として、ガラス基板上に側から、二酸化珪素(SiO)膜と酸化チタン(TiO)膜とをこの順に積層した2層基本層を繰返し積層した交互膜(2層基本層の層数:7層、総膜厚:0.30μm)を、イオンアシストを用いない蒸着法にてガラス基板の一方の主表面に形成した。次いで、前述の光学多層膜を形成した。
(実施例4)
密着強化膜として、ガラス基板上に酸化珪素(SiO)の単層膜(膜厚240nm)を、イオンアシストを用いない蒸着法にてガラス基板の一方の主表面に形成した。次いで、前述の光学多層膜を形成した。
(実施例5)
密着強化膜として、ガラス基板上に酸化チタン(TiO)の単層膜(膜厚60nm)をイオンアシストを用いない蒸着法にてガラス基板の一方の主表面に形成した。次いで、前述の光学多層膜を形成した。
(実施例6)
密着強化膜として、ガラス基板上にランタンチタン酸塩(LaTi)の単層膜(膜厚240nm)を、イオンアシストを用いない蒸着法にてガラス基板の一方の主表面に形成した。次いで、前述の光学多層膜を形成した。
(比較例1)
密着強化膜を用いず、ガラス基板上に直接、前述の光学多層膜を形成した。
上述した実施例及び比較例の膜ハガレ性の評価結果を表1にまとめて示す。この表から明らかなように、ガラス基板と光学多層膜との間にイオンアシストを用いない蒸着法にて形成した密着強化膜を介在することで、光学多層膜の密着性を向上し、膜ハガレを抑制することが可能となる。
Figure 0006269064
(実施例7)
実施例1と同様の光学多層膜付きガラス部材を用い、他方の面に実施例1と同様の密着強化膜を形成した。次いで、光学多層膜として、赤外線遮蔽膜(酸化チタン(TiO)膜、酸化珪素(SiO)膜、および酸化タンタル(Ta層)とをこの順に積層した3層基本層を繰返し積層した交互膜(3層基本層の層数:68層、総膜厚6μm))を、イオンアシストを用いた蒸着法により前記密着強化膜の上に形成した。上述の膜ハガレ性の評価を、ガラス基板の両側に設けた光学多層膜に対して行った。結果として、光学多層膜の膜ハガレは両面共に確認されず、評価は○であった。
(実施例8)
密着強化膜として、ガラス基板上に側から、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜(75nm)を、イオンアシストを用いない蒸着法にてガラス基板の一方の主表面に形成した。なお、ガラス基板上に密着強化膜を形成した際のガラス基板温度は128℃であり、蒸着装置内の真空度は8.0×10−3Paで酸素ガスを30sccm導入した。次いで、前述の光学多層膜(赤外線遮蔽膜(酸化チタン(TiO)膜、酸化珪素(SiO)膜、および酸化タンタル(Ta)膜とをこの順に積層した3層基本層を繰返し積層した交互膜(3層基本層の層数:80層、総膜厚4μm))を形成した。実施例8は、実施例2と比較し膜ハガレ性の評価が良好であり、評価は○であった。これは、密着強化膜の形成工程において、実施例2よりガラス基板1の温度が低い条件で蒸着したため、実施例2の密着強化膜と比べて一層硬度が低く、脆性の大きい膜が形成され、これによりガラス基板と密着強化膜との密着性が一層強固になったものと考えられる。
次いで、表2及び表3に示す例1〜例17のガラス基板に実施例8の密着強化膜を形成し、光学多層膜として、赤外線遮蔽膜(酸化チタン(TiO)膜、酸化珪素(SiO)膜、および酸化タンタル(Ta)膜とをこの順に積層した3層基本層を繰返し積層した交互膜(3層基本層の層数:80層、総膜厚4μm))を、イオンアシストを用いた蒸着法にて前記ガラス基板の一方の主表面に形成した。これらガラスは、各表に示すガラス組成(カチオン%、アニオン%)となるようガラス原料を秤量・混合し、内容積約300ccの白金ルツボ内に入れて、850℃で2〜80時間でガラス原料を溶解した。なお、比較例のガラスの溶解は、850℃で1時間で行った。次いで、清澄、撹拌した後、溶融ガラスをおよそ300℃から500℃に予熱した縦50mm×横50mm×高さ20mmの長方形のモールドに鋳込み後、約1℃/分で徐冷し、ガラス基板を得た。そして、ガラス基板の主表面の光学研磨し、この主表面に上記した密着強化膜及び光学多層膜を形成した。上述の膜ハガレ性の評価を、ガラス基板に設けた光学多層膜に対して行った。結果として、いずれのガラス基板についても光学多層膜の膜ハガレは確認されず、評価は○であった。

これらの結果より、ガラス基板および密着強化膜にAl成分を含有することで、両者の密着性が高まり、膜ハガレ性が良好であったと考えられる。
Figure 0006269064
Figure 0006269064
本発明の光学多層膜付きガラス部材及び近赤外線カットフィルタガラスは、ガラス基板と光学多層膜との密着性が高く、光学多層膜付きガラス部材を切断する際に膜ハガレが抑制される。
なお、2011年11月21日に出願された日本特許出願2011−253916号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
1:ガラス基板
2:密着強化膜
3:光学多層膜
4:光学多層膜
10、20:ガラス部材

Claims (9)

  1. 弗燐酸塩ガラス基板上に15層以上、もしくは総膜厚が1μm以上の光学多層膜が形成された光学多層膜付きガラス部材であって、前記弗燐酸塩ガラス基板と前記光学多層膜との間に、前記弗燐酸塩ガラス基板に対する前記光学多層膜の密着性を向上させる、2層以上からなる密着強化膜を有し、
    前記密着強化膜は弗化マグネシウム(MgF)を前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層以外に備え、
    前記光学多層膜は、密着強化膜に比べて硬度が高いことを特徴とする光学多層膜付きガラス部材。
  2. 前記密着強化膜は、酸化珪素(Si0)、酸化チタン(TiO)、ランタンチタン酸塩(LaTi)、酸化アルミニウム(Al)、および酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物の何れかから選ばれる材料からなる酸化物膜を前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層に備えることを特徴とする請求項1に記載の光学多層膜付きガラス部材。
  3. 前記密着強化膜は、屈折率が1.68以下の酸化物膜を前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層に備えることを特徴とする請求項2に記載の光学多層膜付きガラス部材。
  4. 前記密着強化膜は、ガラス基板側から、酸化アルミニウム(Al)と酸化ジルコニウム(ZrO)との混合物膜、酸化ジルコニウム(ZrO)膜、および弗化マグネシウム(MgF)膜とをこの順に積層した3層の膜構成からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の光学多層膜付きガラス部材。
  5. 前記密着強化膜は、前記光学多層膜の光学特性に実質的に影響を与えないことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の光学多層膜付きガラス部材。
  6. 前記密着強化膜は、前記光学多層膜の一部を構成することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載の光学多層膜付きガラス部材。
  7. 前記光学多層膜は、反射防止膜、赤外線遮蔽膜、紫外線遮蔽膜、紫外線及び赤外線遮蔽膜の少なくとも何れか1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光学多層膜付きガラス部材。
  8. 前記密着強化膜の前記弗燐酸塩ガラス基板側の第1層は、Al成分を含み、前記弗燐酸塩ガラス基板は、P5+、Al3+、F、およびCu2+を必須成分として含むことを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の光学多層膜付きガラス部材。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の前記光学多層膜付きガラス部材からなる近赤外線カットフィルタガラス。
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