JP6656389B2 - 反射防止膜、反射防止膜の製造方法、光学素子および光学系 - Google Patents

反射防止膜、反射防止膜の製造方法、光学素子および光学系 Download PDF

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Description

本発明は、反射防止膜、反射防止膜の製造方法、反射防止膜を備えた光学素子およびその光学素子を備えた光学系に関するものである。
従来、ガラスおよびプラスチックなどの透光性部材を用いたレンズ(透明基材)においては、表面反射による透過光の損失を低減するために光入射面に反射防止膜が設けられている。
可視光に対し、非常に低い反射率を示す反射防止膜として、可視光の波長よりも短いピッチの微細凹凸構造や多数の孔が形成されてなるポーラス構造を最上層に備えた構成が知られている。微細凹凸構造やポーラス構造などの構造層を低屈折率層として最上層に有する反射防止膜を用いれば可視光域の広い波長帯域において0.2%以下の超低反射率を得ることができる。しかしながら、これらは表面に微細な構造をもつために、機械的強度が小さく、拭き取りなどの外力に非常に弱いという欠点がある。そのため、カメラレンズなどとして用いられる組レンズの最表面(第1レンズ表面および最終レンズ後面)などのユーザが触れる箇所には構造層を備えた超低反射率コートを施すことができなかった。
一方、表面に構造層を備えていない反射防止膜として、誘電体膜の積層体中に金属層を含む反射防止膜が特開2007−206146号公報、特開2013−238709号公報、特開2004−334012号公報などに提案されている。
特開2007−206146号公報には、反射防止膜に含まれる金属層の構成物質としては銀が好ましいが、銀は環境中の汚染物質、水、酸素、アルカリハロゲン…等によって劣化、凝集するため、銀に金、白金、パラジウム…等の環境に安定な貴金属や、希土類などの金属を一種以上含む合金も好ましい旨記載されている。また、特開2007−206146号公報には、反射防止膜の表面への汚れの付着を防止する防汚層を設けることが好ましい旨記載されており、防汚層としては有機フッ素化合物などが挙げられている。
特開2013−238709号公報には、より低い反射率を実現するために、低屈折率層と高屈折率層とが交互に積層してなる積層体と、空気への露出面を有する誘電体層との間に銀を含有する金属層を備えた構成が提案されている。
特開2004−334012号公報には、銀層の酸化防止のため、銀層の上下層に窒化シリコン層を備える構成が提案されている。
特開2013−238709号公報に記載されている、積層体、銀を含有する金属層、誘電体層が順に積層された反射防止膜は、非常に良好な反射防止性能を得ることが可能である。
しかしながら、銀は酸化されやすく、特に、塩水などのハロゲン耐性が低い。水分や塩素イオンは主として、反射防止膜の空気露出面から侵入し、銀を含む金属層に到達し、銀が酸化され、結果として反射防止機能が低下する。特開2013−238709号公報に記載の反射防止膜は、銀の劣化抑制のための対策が取られておらず、耐久性が十分でない。
特開2007−206146号公報では、環境に不安定な銀を安定化するために貴金属や希土類金属を含む合金化することが提案されているが、銀以外の金属の含有量が大きくなると反射率や吸収が増加する(透過率が減少する)ため、超低反射膜の実現が困難となり好ましくない。また、特開2007−206146号公報では最表面に防汚層を設けることが開示されているが、この防汚層は表面への汚れを防ぐために設けられているに過ぎず、銀の劣化抑制との関連については述べられていない。また実際、防汚層を設けても銀の劣化抑制に直結するとは限らない。
特開2004−334012号公報では、既述の通り、銀層の酸化防止のため窒化珪素膜を備える構成が開示されているが、窒化珪素は屈折率が高いために、銀の劣化を抑制可能なほどの厚みで備えられた場合、反射防止性能が低下する恐れがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、反射防止性能を維持することができ、かつ、銀の劣化を抑制することができる反射防止膜とその製造方法、さらには反射防止膜を備えた光学素子、およびその光学素子を備えた光学系を提供することを目的とする。
本発明の反射防止膜は、基材上に設けられる反射防止膜であって、
基材側から、中間層、銀を含有する銀含有金属層、および誘電体層がこの順に積層されてなり、
中間層が、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層と、相対的に低い屈折率を有する低屈折率層とが交互に積層された2層以上の多層膜であり、
誘電体層は空気への露出面を有し、酸化物層および該酸化物層へのシランカップリング反応により形成された自己組織化膜であるフルオロカーボン層を含む2層以上の多層膜である。
ここで「銀を含有する」とは、銀含有金属層中において銀を50原子%以上含むこととする。
また、「相対的に高い屈折率を有する」、「相対的に低い屈折率を有する」とは、高屈折率層と低屈折率層との間の関係をいうものであり、高屈折率層が低屈折率層よりも高い屈折率を有し、低屈折率層が高屈折率層よりも低い屈折率を有するものであることを意味する。
「中間層が…2層以上の多層膜である」とは、中間層が少なくとも1層の高屈折率層と1層の低屈折率層を含むことを意味する。
また、「誘電体層が…2層以上の多層膜である」とは、誘電体層が少なくとも酸化物層およびフルオロカーボン層の2層を含むことを意味する。
ここで「酸化物層へのシランカップリング反応により形成された自己組織化膜であるフルオロカーボン層」は、フルオロカーボン基を有するシランカップリング剤が酸化物層とシランカップリング反応して自己組織化的に形成された単分子膜である。
本発明の反射防止膜においては、誘電体層がシリコン酸化物層を含むことが好ましい。
また、フルオロカーボン層の直下層である酸化物層がシリコン酸化物層であってもよい。
本発明の反射防止膜は、誘電体層が、シリコン酸化物層よりも屈折率の低い層を含むことが好ましい。
シリコン酸化物層よりも屈折率の低い層としては、フッ化マグネシウム層が好ましい。
本発明の反射防止膜においては、フッ化マグネシウム層がシリコン酸化物層よりも銀含有金属層側に配置されていることが好ましい。
本発明の反射防止膜は、誘電体層の空気への露出面がフルオロカーボン層により構成されていることが好ましい。
本発明の反射防止膜においては、フルオロカーボン層の厚みが20nm以下であることが好ましい。
本発明の反射防止膜においては、銀含有金属層の厚みが6nm以下であることが好ましい。
本発明の反射防止膜においては、銀含有金属層と中間層との間に、アンカー層を有することが好ましい。
本発明の反射防止膜においては、銀含有金属層と中間層との間に、アンカー金属の酸化物を含むアンカー領域を備え、銀含有金属層と誘電体層との間に、アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域を備えていることが好ましい。
本発明の反射防止膜の製造方法は、基材の一面に中間層および銀含有金属層を、気相成長法により順次積層し、
銀含有金属層上に酸化物層を気相成長法により積層した後、その酸化物層の少なくとも表面を、フルオロカーボン基を有するシランカップリング剤を含む溶液に浸漬させ、酸化物層の表面へのシランカップリング反応による自己組織化によりフルオロカーボン層を形成する反射防止膜の製造方法である。
本発明の光学素子は、上記の本発明の反射防止膜を備えたものである。
本発明の光学系は、上記本発明の光学素子を含む組レンズであって、その光学素子の反射防止膜が設けられた面が最表面に配置されてなる組レンズを備えたものである。
ここで、最表面とは、複数のレンズからなる組レンズの両端に配置されるレンズの一面であって、組レンズの両端面となる面をいう。
本発明の反射防止膜は、基材上に設けられる反射防止膜であって、基材側から、中間層、銀を含有する銀含有金属層、および誘電体層がこの順に積層されてなり、中間層が、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層と、相対的に低い屈折率を有する低屈折率層とが交互に積層された2層以上の多層膜であり、誘電体層は空気への露出面を有し、酸化物層およびその酸化物層へのシランカップリング反応により形成された自己組織化膜であるフルオロカーボン層を含む2層以上の多層膜である。誘電体層中に自己組織化膜であるフルオロカーボン層を備えたことにより、反射防止性能を維持することができ、かつ、銀の劣化を抑制することが可能である。
本発明の反射防止膜は、凹凸構造やポーラス構造を有していないため、機械強度が高く、光学部材のユーザの手が触れる面への適用も可能である。
本発明の第1の実施形態に係る反射防止膜を備えた光学素子の断面模式図である。 本発明の第2の実施形態に係る反射防止膜を備えた光学素子の断面模式図である。 本発明の第3の実施形態に係る反射防止膜を備えた光学素子の断面模式図である。 第2の実施形態に反射防止膜の製造工程図である。 本発明の光学素子を備えた組レンズからなる光学系の構成を示す図である。 耐久性試験用のサンプルの層構成を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る反射防止膜1を備えた光学素子51の概略構成を示す断面模式図である。図1に示すように、本実施形態の反射防止膜1は、基材2上に中間層4、アンカー層6、銀(Ag)を含有する銀含有金属層8および誘電体層10がこの順に積層されてなる。中間層4は、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層41と、相対的に低い屈折率を有する低屈折率層42とが交互に積層された2層以上の多層膜である。また、誘電体層10は、空気への露出面を有する層であって、銀含有金属層8側から酸化物層の一形態であるシリコン酸化物層12および、シリコン酸化物層12へのシランカップリング反応により形成された自己組織化膜であるフルオロカーボン層14を、この順に含む2層以上の多層膜である。そして、光学素子51は、基材2とその一表面に形成された反射防止膜1とからなる。
本発明の反射防止膜において、反射すべき光は、用途によって異なるが、一般的には可視光領域の光であり、必要に応じて赤外線領域の光の場合もある。
基材2の形状は特に限定なく、平板、凹レンズまたは凸レンズなど、主として光学装置において用いられる透明な光学部材(透明基材)であり、正または負の曲率を有する曲面と平面の組合せで構成された基材であってもよい。基材2の材料としては、ガラスやプラスチックなどを用いることができる。ここで、「透明」とは、光学部材において反射防止したい光(反射防止対象光)の波長に対して透明(内部透過率が10%以上)であることを意味する。
基材2の屈折率は、特に問わないが、1.45以上であることが好ましい。基材2の屈折率は1.61以上、1.74以上、さらには1.84以上のものであってもよい。基材2としては、例えば、カメラの組レンズの第1レンズなどの高パワーレンズであってもよい。なお、本明細書において、屈折率は全て波長500nmの光に対する屈折率で示している。
中間層4は、高屈折率層41と低屈折率層42とが交互に積層されてなるもの多層膜であり、少なくとも1層の高屈折率層41および低屈折率層42を備えればよい。本実施形態においては、高屈折率層41と低屈折率層42が交互に計4層積層されてなる。このとき、図1中(a)に示すように基材2側から低屈折率層42、高屈折率層41の順に積層されていてもよいし、図1中(b)に示すように基材2側から高屈折率層41、低屈折率層42の順に積層されていてもよい。また、中間層4の層数に制限はないが、16層以下とすることがコスト抑制の観点から好ましい。
高屈折率層41は低屈折率層42の屈折率に対して高い屈折率を有するものであり、低屈折率層42は高屈折率層41の屈折率に対して低い屈折率を有するものであればよいが、高屈折率層41の屈折率が基材2の屈折率よりも高く、低屈折率層42の屈折率が基材2の屈折率よりも低いものであることがより好ましい。
高屈折率層41同士、または低屈折率層42同士は、同一の屈折率でなくても構わないが、同一材料で同一屈折率とすれば、材料コストおよび成膜コスト等を抑制する観点から好ましい。
低屈折率層42を構成する材料としては、シリコン酸化物(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化ガリウム(Ga)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ランタン(La)、フッ化ランタン(LaF)、フッ化マグネシウム(MgF)およびフッ化ナトリウムアルミニウム(NaAlF)などが挙げられる。
高屈折率層41を構成する材料としては、五酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、五酸化タンタル(Ta)、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(Si)および酸化シリコンニオブ(SiNbO)、Substance H4(メルク社製)などが挙げられる。
いずれの化合物も化学量論比の組成比からずれた構成元素比となるように制御したり、成膜密度を制御したりして成膜することにより、屈折率をある程度変化させることができる。なお、低反射率層および高反射率層を構成する材料としては、上述の屈折率の条件を満たすものであれば、上記化合物に限らない。また、不可避不純物が含まれていてもよい。
中間層4の各層の成膜には、真空蒸着、プラズマスパッタ、電子サイクロトロンスパッタおよびイオンプレーティングなどの気相成長法を用いることが好ましい。気相成長法によれば多様な屈折率および層厚の積層構造を容易に形成することができる。
銀含有金属層8は、構成元素の50原子%以上が銀からなるものとする。銀以外にパラジウム(Pd)、銅(Cu)、金(Au)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ビスマス(Bi)、白金(Pt)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)および鉛(Pb)のうちの少なくとも1種を含有していてもよい。銀含有金属層8を構成する材料としては、具体的には、例えば、Ag−Nd−Cu合金、Ag−Pd−Cu合金あるいはAg−Bi−Nd合金などが好適である。なお、銀含有金属層8は6nm以下とすることが好ましい。
銀含有金属層8の形成のための原料としては、構成元素の85原子%以上が銀である材料を用いることが好ましい。このとき、銀以外の金属元素の含有率は15原子%未満であればよいが、5原子%以下がより好ましく、2原子%以下がさらに好ましい。なお、この場合の含有率は、2種類以上の銀以外の金属元素を含む場合、2種以上の金属元素の合計での含有率を指すものとする。なお、反射防止の観点からは、銀の組成比が高い方が好ましく、銀の割合が80原子%以上であることが好ましく、90原子%以上であることがより好ましく、純銀を用いることが最も好ましい。一方で、銀含有金属層8の平坦性や耐久性の観点からは銀以外の金属元素を含む合金であることが好ましい。なお、銀含有金属層8中における金属組成比は均一でなくてもよい。
銀含有金属層8の膜厚は6nm以下が好ましく、0.5nm以上であることが好ましい。さらには、2.0nm以上が好ましく、2.5nm以上がより好ましく、3nm以上が特に好ましい。なお、ここでいう膜厚は製造後の反射防止膜における銀含有金属層8の膜厚であり、断面TEM−EDX:(透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)−エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX))解析で得られる膜厚と組成によって確認することができる。上下層間で金属の移動が生じ混合層が形成されている場合、Ag組成が最も高くなる範囲をAgの膜厚と定義して膜厚を測定する。なお、銀含有金属層8は非常に薄く形成される膜であるため、実際には、不連続となっている領域や、欠落した領域が形成されている場合がある。また、成膜表面は完全な平滑面ではなく、通常は、粒状の凹凸を有する面である。
銀含有金属層8の形成においても、真空蒸着、プラズマスパッタ、電子サイクロトロンスパッタおよびイオンプレーティングなどの気相成長法を用いることが好ましい。
本実施形態においては、誘電体層10は、シリコン酸化物(SiO)層12およびシリコン酸化物層12上に自己組織化膜として設けられたフルオロカーボン層14から構成されている。本発明の反射防止膜においては、誘電体層中にこの2層以外に複数の層を備えていてもよい。また、誘電体層を構成する各層は、屈折率が1.35以上1.51以下であることが好ましい。しかしながら、極薄い(例えば、1nm未満)高屈折率の層を備えていても構わない。誘電体層の構成材料としては、SiO以外に、SiON、MgFおよびNaAlFなどが挙げられ、特に好ましいのは、SiOあるいはMgFである。いずれの化合物も化学量論比の組成比からずれた構成元素比となるように制御したり、成膜密度を制御したりして成膜することにより、屈折率をある程度変化させることができる。
誘電体層の厚み(総厚)は対象とする波長をλ、誘電体層の屈折率をnとしたとき、λ/4n程度であることが好ましい。具体的には70nm〜100nm程度である。
なお、フルオロカーボン層14は、フルオロカーボン基を有するシランカップリング剤を用いて、その直下層である酸化物層(ここではシリコン酸化物層)の表面にシランカップリング反応して自己組織化膜として形成されるものである。そのため、シランカップリングさせるため、フルオロカーボン層14の直下層は酸化物とする必要があり、特には、本実施形態に示すように、シリコン酸化物層であることが好ましいが、他の金属酸化物層であってもよい。このとき、直下層となる酸化物層とは別にシリコン酸化物層を備えていてもよい。また、酸化物層の表面に島状に他の材料が配置されている構成であっても、積層面に酸化物層が露出する領域があればシランカップリングによる自己組織化膜の形成は可能である。フルオロカーボン層の厚みは20nm以下であることが好ましい。単分子膜であれば、概ね20nm以下の厚みとなる。
フルオロカーボンは疎水性が強く、水分や塩素などのハロゲンイオンなど、親水性分子の侵入を抑制する効果が大きい。本発明の構成のように、緻密な自己組織化膜として設けることで、高い保護性能を実現することができる。また、自己組織化膜であれば、均一な膜とすることができるので光学用途として好ましい。
フルオロカーボン層の作製方法としては、真空蒸着、溶液プロセス(塗布法)などがあるが、溶液プロセスによれば、より欠陥の少ない膜を形成することができるので好ましい。溶液プロセスとしては、ディップコート、スピンコートなどが挙げられる。
フルオロカーボン基を有するシランカップリング剤の具体例としては、キャノンオプトロン社製SurfClear100や、ダイキン社製オプツールHDシリーズおよび3M社製Novec1720、フロロテクノロジー社製フロロコートの一部(シランカップリング反応するもの)などが挙げられる。
なお、シランカップリング反応により形成された自己組織化膜としてのフルオロカーボン層の存在の有無については、断面TEM−EDX:(透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)−エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy:EDX))解析で得られる膜厚と組成によって確認することができる。
なお、本実施形態の反射防止膜1においては、図1に示す通り、中間層4と銀含有金属層8との間にアンカー層6を備えている。銀含有金属層8は、銀含有濃度が高いほど、平滑な膜ではなく粒状に成長する場合がある。アンカー層6を形成後、その上に銀を含む膜を形成することにより、粒状化を抑制し、平滑性の高い薄膜を形成することができる。また、既述の通り、銀以外の金属元素を含む金属層は、純銀を用いて形成した膜と比較して平滑性が高く、そのような金属層をアンカー層上に形成することにより、より高い平滑性を得ることができる。アンカー層を構成する材料として具体的には、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、錫(Sn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)およびシリコン(Si)などが挙げられる。これらのうち、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、錫(Sn)、インジウム(In)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)およびシリコン(Si)が好ましく、Pb、Sn、In、Mg、Zn、GaおよびGeがより好ましい。なお、本発明者らの検討によれば、Agの粒径増大を抑制する観点で、In、GaおよびGeがさらに好ましく、特にはGeが好ましい。
アンカー層の厚みとしては特に制限はないが、特に0.2nm〜2nmとすることが好ましい。0.2nm以上であればその上に形成される金属層の粒状化を十分に抑制することができる。また2nm以下であればアンカー層自体による入射光の吸収を抑制することができるので、反射防止膜の透過率の低下を抑制することができる。なお、アンカー金属としては単独の金属ではなく、2種以上の金属を含むものであってもよい。このとき、アンカー層成膜時において、2種以上の金属からなる合金層として成膜してもよいし、アンカー層成膜時において、単一の金属からなる層を複数層積層してもよい。
なお、アンカー層6は、作製の過程において、そのアンカー層を構成するアンカー金属の一部が銀含有金属層の中間層側に留まり、一部が銀含有金属層を通過して銀含有金属層の誘電体層側に移動することにより、銀含有金属層と中間層との界面領域、銀含有金属層と誘電体層との界面領域におけるアンカー領域、キャップ領域に変質する場合がある。なお、アンカー領域、キャップ領域においては、アンカー金属の一部あるいは全部が酸化された状態で存在してもよい。なお、アンカー金属の移動の有無はアンカー金属、およびアニール温度等の作製条件によって異なる。本発明者らの検討によれば、上記アンカー金属の具体例として挙げた金属のうち、好ましい例として挙げた金属が、比較的移動しやすく、アンカー層からアンカー領域およびキャップ領域への変質が生じやすい金属である。
また、微量のアンカー層金属がAg中に留まる場合もある。
図2および図3は、それぞれ第2の実施形態の反射防止膜11を備えた光学素子52および第3の実施形態の反射防止膜21を備えた光学素子53の模式断面図である。各図において、第1の実施形態の反射防止膜1を備えた光学素子51中の構成要素と同等の構成要素には同一符号を付し詳細な説明は省略する。
図2に示す第2の実施形態の反射防止膜11は、銀含有金属層8の中間層4側にアンカー領域7、誘電体層15側にキャップ領域9を備えており、誘電体層15として、シリコン酸化物層12の下層にフッ化マグネシウム層13を備えた点で第1の実施形態の反射防止膜1と異なる。
アンカー領域7は、中間層4の積層後、銀含有金属層8の積層前にこの銀含有金属層を平滑に成膜するために設けられた第1の実施形態の反射防止膜におけるアンカー層が製造過程において変質して構成された領域であり、中間層4と銀含有金属層8との界面領域である。
同様にキャップ領域9は、アンカー層を構成するアンカー金属が製造過程において、銀含有金属層8中を通り抜け、銀含有金属層8表面で環境下の酸素により酸化されたアンカー金属の酸化物を含む、銀含有金属層8と誘電体層15との界面領域である。
ここで、変質するとは、中間層や銀含有金属層の構成元素との混合や、金属元素の酸化などが生じて、アンカー層が成膜時の状態とは異なる状態となることを意味する。
なお、アンカー層6がアンカー領域7およびキャップ領域9へと変質した後には、アンカー金属の酸化に伴い、アンカー層6の膜厚に対して、両領域7および9の合計膜厚は2倍程度に増加する場合もある。
従って、アンカー領域7にはアンカー金属およびその酸化物に加えて、銀含有金属層8と中間層4に存在する原子が混在し、キャップ領域9には、アンカー酸化物に加えて、銀含有金属層8と誘電体層15に存在する原子が混在している。アンカー領域7およびキャップ領域9は、アンカー金属について深さ方向(積層方向)における含有率を測定したとき、その深さ方向の位置に対する含有率の変化を示すラインプロファイル(図9参照)においてピークを示す位置(深さ方向位置)を中心として2nm程度以下の領域である。ラインプロファイルにおいては、2つのピークが観察されるが、そのうち基材に近い側がアンカー領域であり、基材から遠い側がキャップ領域のピークである。なお、アンカー金属含有率ピーク位置は、例えば、TEM−EDXのラインプロファイルより算出できる。ラインプロファイルにおいてアンカー金属の信号が強く出る点(極大値)をピーク位置として算出する。
なお、アンカー領域には酸化されたアンカー金属(アンカー金属酸化物)、酸化されていないアンカー金属が混在している場合もあるが、アンカー金属酸化物の含有量が酸化されていないアンカー金属の含有量よりも大きいことが望ましく、アンカー領域に含まれているアンカー金属が全て酸化されていることが特に好ましい。
一方、キャップ領域に含まれているアンカー金属は全て酸化され、アンカー金属酸化物となっていることが好ましい。
キャップ領域は、アニール時において銀が凝集して粒状になるのを抑制する効果もあると考えられる。製造過程において、アンカー層、銀含有金属層を順次形成した段階で、アンカー金属の移動は生じ、また、その段階で大気中に露出することにより表面に移動したアンカー金属の酸化が生じる。アンカー金属が酸化物となることにより、安定なものとなり銀の移動を抑制、凝集抑制、長期安定性、耐水性および耐湿性等のキャップ性能が向上するものと考えられる。なお、酸素存在化下にてアニールされることにより、キャップ領域のアンカー金属の大部分が酸化物となる。このとき、キャップ領域に含まれているアンカー金属の80%以上が酸化されていることが好ましく全て酸化され、アンカー金属酸化物となっていることが好ましい。
以上のようなアンカー領域およびキャップ領域を備えることにより、平坦性と透明性を両立させた銀の超薄膜構造の実現が可能である。
また、本実施形態は誘電体層15において、シリコン酸化物層12の下層にフッ化マグネシウム層13を備えている。フッ化マグネシウム層13をさらに加えることにより、反射防止機能をさらに良好なものとすることができる。
図3に示す第3の実施形態の反射防止膜21の誘電体層20においては、フッ化マグネシウム層13がフルオロカーボン層14の上に設けられている。このように、本発明の反射防止膜の誘電体層においては、シリコン酸化物層と自己組織化膜状のフルオロカーボン層を備えていれば、他の層がシリコン酸化物層より下層に、もしくはフルオロカーボン層の上層に他の層を備えていてもよい。但し、フッ化マグネシウム層が露出面となる場合、耐久性が低下するため、最表面にフルオロカーボン層を備えた構成が最も好ましい。
本実施形態ではフッ化マグネシウム層としているが、他の材料からなる誘電体膜であってもよい。
誘電体層において、シリコン酸化物層とフルオロカーボン層以外の層を設ける場合、シリコン酸化物層よりも低屈折率の材料と組み合わせることにより、反射防止特性を向上させることができる。
なお、本発明の反射防止膜は、上記各層以外に、銀含有金属層の酸化を抑制する保護機能を有する保護層など、他の機能層を備えていてもよい。また、本発明の反射防止膜を構成する各層の成膜において、nmオーダーの極薄い層を形成する場合には、一様膜に形成しがたく、現実には凹凸膜あるいは海島状に部分的に形成されていない部分(海)があるが、本発明はこのような形態を包含するものとする。
本発明の反射防止膜の製造方法の実施形態として、図2に示した第2の実施形態の反射防止膜11の製造方法を例について説明する。図4は製造工程を示す図である。
基材2上に、中間層4を成膜し(Step1)、その後、アンカー領域およびキャップ領域に含まれる金属の酸化物における金属をアンカー層6として成膜し、さらに銀含有金属層8を成膜する(Step2)。アンカー層6および銀含有金属層8の成膜は酸素が存在しない雰囲気下で行う。アンカー層6の成膜厚みは0.2nm〜2.0nm程度とすることが好ましい。なお、既述の通り、製造過程においてアンカー層6を構成するアンカー金属は一部が銀含有金属層8の表面まで移動するため、反射防止膜においては、アンカー層はアンカー領域に変質し厚みも大きく変化する。なお、アンカー金属の移動(拡散)は銀含有金属層8の成膜直後から生じ始める。
その後、中間層4、アンカー層6および銀含有金属層8の順に積層された基材2を大気中に曝露し、大気中にてアニールを行う(Step3)。アニール温度は100℃〜400℃、アニール時間は1分〜2時間程度が好ましい。このアニール開始時には、既にアンカー層6中のアンカー金属が銀含有金属層8を通過して移動し、銀含有金属層8の表面にキャップ領域の前駆領域9aが形成されつつあり、一方でアンカー層6はアンカー領域への変質途中の領域7aとなっている。
上記成膜後に移動開始したアンカー金属のうち、銀含有金属層8表面まで移動したアンカー金属は、基材2を大気中に曝露した段階で酸化され始める。そして、アニールによりアンカー金属の拡散および酸化が促進され、このアニール処理後において、アンカー層6はアンカー領域7に変質し、アンカー金属の一部が銀含有金属層8中を通過して積層体の表面側に移動し、表面に移動したアンカー金属が酸化されて金属酸化物からなるキャップ領域9が形成されている(Step4)。
その後、積層体の最表面となるキャップ領域9上に誘電体層のうち、フッ化マグネシウム層13およびシリコン酸化物層12を成膜する。(Step5)。
さらに、シリコン酸化物層12の表面を、フルオロカーボン基を有するシランカップリング剤を含む溶液中に浸漬させて、シランカップリング反応による自己組織化膜であるフルオロカーボン層14の形成を行う(Step6)。シランカップリング剤は真空蒸着で形成してもよい。
以上の工程により、図2に示した実施形態の反射防止膜11を作製することができる。
本発明の反射防止膜は種々の光学部材の表面に適用することができる。高屈折率のレンズ表面への適用が可能であるため、例えば、特開2011−186417号公報等に記載の公知のズームレンズの最表面に好適である。
上述した第1の実施形態の反射防止膜1を備えた組レンズからなる光学系の実施形態を説明する。
図5(A),(B),(C)は、本発明の光学系の一実施形態であるズームレンズの構成例を示している。図5(A)は広角端(最短焦点距離状態)での光学系配置、図5(B)は中間域(中間焦点距離状態)での光学系配置、図5(C)は望遠端(最長焦点距離状態)での光学系配置に対応している。
このズームレンズは、光軸Z1に沿って物体側から順に、第1レンズ群G1と、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4と、第5レンズ群G5とを備えている。光学的な開口絞りS1は、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間で、第3レンズ群G3の物体側近傍に配設されていることが好ましい。各レンズ群G1〜G5は1枚または複数のレンズLijを備えている。符合Lijは第iレンズ群中の最も物体側のレンズを1番目として結像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したj番目のレンズを示す。
このズームレンズは、例えばビデオカメラ、およびデジタルスチルカメラ等の撮影機器のほか、情報携帯端末にも搭載可能である。このズームレンズの像側には、搭載されるカメラの撮影部の構成に応じた部材が配置される。例えば、このズームレンズの結像面(撮像面)には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子100が配置される。最終レンズ群(第5レンズ群G5)と撮像素子100との間には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、種々の光学部材GCが配置されていても良い。
このズームレンズは、少なくとも第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第4レンズ群G4を光軸Z1に沿って移動させて、各群間隔を変化させることにより変倍を行うようになされている。また第4レンズ群G4を合焦時に移動させるようにしても良い。第5レンズ群G5は、変倍および合焦の際に常時固定であることが好ましい。開口絞りS1は、例えば第3レンズ群G3と共に移動するようになっている。より詳しくは、広角端から中間域へ、さらに望遠端へと変倍させるに従い、各レンズ群および開口絞りS1は、例えば図5(A)の状態から図5(B)の状態へ、さらに図5(C)の状態へと、図に実線で示した軌跡を描くように移動する。
このズームレンズの最表面は、第1レンズ群G1のレンズL11の外側面(物体側面)および最終レンズ群である第5レンズ群G5のレンズL51に反射防止膜1が備えられている。なお、他のレンズ面にも同様に反射防止膜1を備えていてもよい。
本実施形態の反射防止膜1は機械的強度が大きいので、ユーザが触れる可能性のあるズームレンズの最表面に備えることができ、非常に反射防止性能の高いズームレンズを構成することができる。
また、微細凹凸構造を備えた反射防止膜においては、凹凸構造ゆえに屈折率揺らぎが存在し、その屈折率揺らぎにより散乱が生じる恐れがあるが、凹凸構造を有していない本発明の反射防止膜は屈折率揺らぎがほとんど存在しないため、散乱もほとんど生じない。カメラレンズにおける反射防止膜において、散乱はフレアを発生し画像のコントラストを低下させることから、本発明の反射防止膜を備えることにより散乱を抑制し、結果として画像のコントラストの低下を抑制することができる。
本発明の反射防止膜における反射防止性能に寄与する具体的な層構成の実施例を説明する。
下記表1に、実施例および比較例の層構成およびEssential Macleod(Thin Film Center社製)を用いて膜厚を最適化して求めた膜厚と、反射率の波長依存性のシミュレーションから求めた可視光域(波長400nm〜700nm)における反射率の平均値(平均反射率)を示す。なお、表1には後記の耐久性試験結果も併せて示している。
なお、シミュレーションにおいて、基材としてS−NBH5(オハラ社製:屈折率1.66393)を想定し、中間層は低屈折率層としてSiO(屈折率1.46235)、高屈折率層としてTiO(屈折率2.291)を交互に積層した計4層構成とし、Ag層(屈折率0.05)上の誘電体層は表1に示す構成とした上で、最も反射率が低くなるように膜厚を最適化した。なお、MgFの屈折率は1.3857、SurfClear100およびオプツールHD1100およびフロロサーフFG−5040、すなわちフルオロカーボン層の屈折率は1.33とし、フルオロカーボン層は単分子膜の膜厚として16nmと固定してシミュレーションを行った。但し、実施例8については、さらにAg膜厚をそれぞれ6nmに固定した上で、他の層の膜厚の最適化を行った。
<反射性能評価>
反射性能は平均反射率に基づいて以下のように評価した。
A:0.04%以下
B:0.04%超0.05%以下
C:0.05%超0.06%以下
D:0.06%超0.10%以下
E:0.10%超
<耐久性試験用サンプルの作製方法>
耐久性試験用サンプル60の積層構成の断面模式図を図6に示す。
サンプル60は、ガラス基板62上に、アンカー層としてGe層63を1nm、銀含有金属層としてAg層64を4nm積層したのち、第1の誘電体層65、第2の誘電体層66および第3の誘電体層67を順次積層して作製した。上記反射率のシミュレーションを行った表1の各実施例および比較例の誘電体層の構成をAg層64上に設け、耐久性の試験用サンプルとした。したがって、第2、第3の誘電体層を備えない比較例あるいは第3の誘電体層を備えない実施例もある。
なお、各サンプル作製時において、各誘電体層の膜厚は、表1中における数値の小数点以下は切り捨てた膜厚とした。例えば、実施例1の耐久性試験用サンプルは、ガラス基板上に1nmのアンカー層、4nmのAg層、第1の誘電体層として66nmのSiO層が形成され、その表面にSurfClear100(キャノンオプトロン社製、フルオロカーボン基を有するシランカップリング剤)を用いて第2の誘電体層としてフルオロカーボン層を形成したものである。フルオロカーボン層の膜厚は単分子膜厚みである。
各サンプルの作製において、各層の成膜は、以下の方法で行った。
Ge層、Ag層、MgF層およびSiO層はアルバック社製EBX−1000を用いたEB(電子ビーム)蒸着により成膜した。各層は水晶振動子による膜厚制御を行って成膜した。
また、SiはMESアフティ社製AFTEX−6000を用いたECRスパッタにより成膜した。
SurfClear100は、アルバック社製EBX−1000を用いた抵抗加熱法により成膜した。
一方、オプツールHD(ダイキン社製、フルオロカーボン基を有するシランカップリング剤)、フロロサーフFG−5040(フロロテクノロジー社製、フルオロカーボン基を有するがシランカップリング剤ではない)は浸漬方法(溶液法)にて成膜した。
上記のようにして得られた実施例および比較例の耐久性試験用サンプルについて、以下の耐久性試験を行った。
<耐久性試験>
5質量%の食塩水にサンプルを浸漬し、目視にて異常発生時間を測定して、耐久性を評価した。銀が塩水により酸化すると黄色く変色するため、サンプルが黄変するまでの所要時間を調べ、以下の基準で評価した。評価結果は表1に示した通りである。
A 5時間以上
B 1時間以上5時間未満
C 30分以上1時間未満
D 5分以上30分未満
E 5分未満
表1に示す通り、本発明の実施例1〜8は反射性能および耐久性の評価がいずれもC以上であり、実用上好ましいものとなった。一方で、比較例1〜6については、反射性能および耐久性の少なくとも一方の評価がD以下であった。
実施例1と比較例2との層構成上の差は、表面のフルオロカーボン層の有無である。両者の比較から、フルオロカーボン層を備えたことにより耐久性が向上することは明らかである。反射率についても、フルオロカーボン層を備えた方がより低くなる傾向にあった。
実施例2〜7に示すように、誘電体層をMgF層とSiO層およびフルオロカーボン層の三層構造とすることにより、実施例1のSiO層およびフルオロカーボン層の二層構造の場合と比較して反射性能を高くできることが分かった。特に、反射率を抑制する効果は、MgF層を厚く、SiO層を薄くした場合に高く、耐久性はMgF層を薄く、SiO層を厚くした場合に高かった。
したがって、用途に応じて、少しでも耐久性を上げたい(耐久性を優先する)場合は、SiO層を厚く、反射特性を優先する場合には、MgF層の膜厚を厚くすることが好ましい。
また、従来技術の項で述べた特開2004−334012号公報記載の窒化シリコンからなる銀の保護膜について比較例3−5において検証した。その結果、窒化シリコン層の厚みが6nm程度と薄い場合には十分な耐久性が得られず、厚みを16nmとした場合には耐久性は得られるが、反射防止性能が低下し、耐久性と反射防止性能の両立が困難であり実用的でないこと明らかになった。また、比較例7に示すように、SiO層上にシランカップリングをしないフロロカーボン層(フロロサーフ)を形成した場合には、十分な耐久性が得られなかった。
これに対し、本発明の、シランカップリングによる単分子膜からなるフルオロカーボン層を備えた構成とすることにより、十分な耐久性を得ることができ、かつ、良好な反射防止性能を得ることができることが明らかになった。
1、11、21 反射防止膜
2 基材
4 中間層
6 アンカー層
7 アンカー領域
7a アンカー領域への変質途中の領域
8 銀含有金属層
9 キャップ領域
9a キャップ領域の前駆領域
10、15、20 誘電体層
12 シリコン酸化物層(酸化物層)
13 フッ化マグネシウム層
14 フルオロカーボン層
41 高屈折率層
42 低屈折率層
51、52、53 光学素子
60 耐久性試験用サンプル
62 ガラス基板
63 Ge層
64 Ag層
65 第1の誘電体層
66 第2の誘電体層
67 第3の誘電体層
100 撮像素子
G1〜G5 レンズ群
GC 光学部材
L11〜L51 レンズ
S1 開口絞り
Z1 光軸

Claims (12)

  1. 基材上に設けられる反射防止膜であって、
    前記基材側から、中間層、銀を含有する銀含有金属層、および誘電体層がこの順に積層されてなり、
    前記中間層が、相対的に高い屈折率を有する高屈折率層と、相対的に低い屈折率を有する低屈折率層とが交互に積層された2層以上の多層膜であり、
    前記誘電体層は空気への露出面を有し、酸化物層および該酸化物層へのシランカップリング反応により形成された自己組織化膜であるフルオロカーボン層を含む2層以上の多層膜であり、
    前記誘電体層が、シリコン酸化物層と、該シリコン酸化物層よりも屈折率の低い層を含み、
    前記シリコン酸化物層よりも屈折率の低い層が、前記酸化物層よりも前記銀含有金属層側に配置されている反射防止膜。
  2. 前記酸化物層が、前記シリコン酸化物層である請求項1に記載の反射防止膜。
  3. 前記シリコン酸化物層よりも屈折率の低い層が、フッ化マグネシウム層である請求項1または3に記載の反射防止膜。
  4. 前記フッ化マグネシウム層が前記シリコン酸化物層よりも前記銀含有金属層側に配置されている請求項5に記載の反射防止膜。
  5. 前記誘電体層のうち前記露出面が、前記フルオロカーボン層により構成される請求項1、3および5から6いずれか1項に記載の反射防止膜。
  6. 前記フルオロカーボン層の厚みが20nm以下である請求項1、3および5から7いずれか1項に記載の反射防止膜。
  7. 前記銀含有金属層の厚みが6nm以下である請求項1、3および5から8いずれか1項に記載の反射防止膜。
  8. 前記銀含有金属層と前記中間層との間に、アンカー層を有する請求項1、3および5から9いずれか1項に記載の反射防止膜。
  9. 前記銀含有金属層と前記中間層との間に、アンカー金属の酸化物を含むアンカー領域を備え、
    前記銀含有金属層と前記誘電体層との間に、前記アンカー金属の酸化物を含むキャップ領域を備えた請求項1、3および5から9いずれか1項に記載の反射防止膜。
  10. 請求項1、3および5から11いずれか1項に記載の反射防止膜の製造方法であって、
    基材の一面に前記中間層および前記銀含有金属層を、気相成長法により順次積層し、
    該銀含有金属層上に前記酸化物層を気相成長法により積層した後、該酸化物層の少なくとも表面を、フルオロカーボン基を有するシランカップリング剤を含む溶液に浸漬させ、前記酸化物層の表面へのシランカップリング反応による自己組織化により前記フルオロカーボン層を形成する反射防止膜の製造方法。
  11. 請求項1、3および5から11いずれか1項に記載の反射防止膜を備えた光学素子。
  12. 請求項13に記載の光学素子を含む組レンズであって、該光学素子の前記反射防止膜が設けられた面が最表面に配置されてなる組レンズを備えた光学系。
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