JP5438020B2 - 新規なフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質及びその改変体、並びにその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、糖化タンパク質、特に糖化ヘモグロビンの測定に有用なフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質及びその改変体、当該タンパク質をコードする遺伝子、並びにその利用法に関する。
糖尿病患者の血糖コントロールマーカーとして、血液中に含まれる糖化タンパク質であるヘモグロビンA1c(HbA1c)や、グリコアルブミンの測定が重用されている。これらの糖化タンパク質は、血液中に存在するD−グルコースと、血液タンパク質を構成するアミノ酸残基とが非酵素的に反応して生成するため、血液中のグルコース量をよく反映する。
血液タンパク質の主な糖化部位は、内部リジン残基のε−アミノ基、およびアミノ末端(N末端)アミノ酸のα−アミノ基である。例えば、HbA1cは、ヘモグロビンβ鎖のN末端アミノ酸であるバリンのα−アミノ基に、D−グルコースが結合して生じた糖化タンパク質である。
近年、血液中の糖化タンパク質を簡便且つ短時間で測定できる酵素的測定法(以下、「酵素法」と称する。)が開発され、既に商品化されている。酵素法を利用することにより、糖化タンパク質をハイスループットに測定することが可能となり、臨床検査分野で役立てられている。
酵素法は、まず、プロテアーゼで糖化タンパク質を加水分解し、次に、加水分解で生じたフルクトシルバリン、フルクトシルリジン、フルクトシルバリルヒスチジンなどの糖化アミノ酸をフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(FAOD)で酸化的加水分解する。最後に、オキシダーゼ反応により生じた過酸化水素を、ペルオキシダーゼ−色原体反応システムにより比色定量する(特許文献1から11参照)。
酵素法による糖化タンパク質の測定では、主反応酵素であるフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの基質特異性が重要な要素となる。例えば、HbA1cの測定では、フルクトシルバリンに対する基質特異性に優れた酵素が望まれている。
さらに、糖化ヘモグロビンのβ鎖に特異的な測定を行うためには、フルクトシルバリルヒスチジンに作用する酵素が望まれている。これは、ヘモグロビンα鎖およびβ鎖のN末端アミノ酸が共にバリンであることから、β鎖に特異的な測定を行うためには、N末端アミノ酸2残基(すなわち、フルクトシルバリルヒスチジン)を認識する必要があるためである。(特許文献12、特許文献13参照)。
これまでに、フルクトシルバリルヒスチジンに作用するオキシダーゼを生産する菌株がスクリーニングされている(例えば、特許文献14参照)。
また、フルクトシルバリルヒスチジンに作用するオキシダーゼに関して、遺伝子組み換え体を用いて当該オキシダーゼの産生、抽出、及び精製を行った報告があり、該オキシダーゼをコードする遺伝子も単離されている(特許文献15、特許文献17、非特許文献1、非特許文献2参照)。
日本国公開特許公報「特開2004−129531号公報(公開日:平成16年4月30日(2004.4.30))」 日本国公開特許公報「特開2004−113014号公報(公開日:平成16年4月15日(2004.4.15))」 国際公開第2003/064683号パンフレット(国際公開日:2003年8月7日(2003.8.7)) 日本国公開特許公報「特開2007−181466号公報(公開日:平成19年7月19日(2007.7.19))」 日本国公開特許公報「特開2007−289202号公報(公開日:平成19年11月8日(2007.11.8))」 日本国公開特許公報「特開2005−110657号公報(公開日:平成17年4月28日(2005.4.28))」 日本国公開特許公報「特許第4045322号公報(発行日:平成20年2月13日(2008.2.13))」 日本国公開特許公報「特許第4014088号公報(発行日:平成19年9月21日(2007.9.21))」 日本国公開特許公報「特許第4039664号公報(発行日:平成20年1月30日(2008.1.30))」 日本国公開特許公報「特許第4010474号公報(発行日:平成19年11月21日(2007.11.21))」 日本国公開特許公報「特許第3971702号公報(発行日:平成19年9月5日(2007.9.5))」 国際公開2005/049857号パンフレット(国際公開日:2005年6月2日(2005.6.2)) 国際公開2005/049858号パンフレット(国際公開日:2005年6月2日(2005.6.2)) 日本国公開特許公報「特開2004−275013号公報(公開日:平成16年10月7日(2004.10.7))」 日本国公開特許公報「特開2003−235585号公報(公開日:平成15年8月26日(2003.8.26))」 国際公開2007/010950号パンフレット(国際公開日:平成19年1月25日) 国際公開2004/104203号パンフレット(国際公開日:2004年12月2日(2004.12.2))
Arch. Microbiol., 180: 227-231 (2003) Biochem. Biophys. Res. Commun., 311: 104-111 (2003)
しかしながら、従来の、フルクトシルバリンに作用するフルクトシルアミノ酸オキシダーゼの多くは、より大きな基質であるフルクトシルバリルヒスチジンには実質的に作用しない。そのため、フルクトシルバリルヒスチジンに作用するフルクトシルアミノ酸オキシダーゼを得るためには、多大な労力、時間、コストをかけてスクリーニングする必要があった。
さらに、特許文献15、非特許文献1及び2に記載の、従来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼは熱安定性が悪く、液状の臨床診断薬中では長期保存できないという欠点があった。
また、酵素法では、プロテアーゼによる糖化タンパク質の加水分解工程で、不所望なフルクトシルリジンが比較的多量に生じる場合があるため、当該フルクトシルリジンに対する反応性が低いフルクトシルアミノ酸オキシダーゼが望まれる。特許文献17には、配列番号1に記載のアミノ酸配列と相同性が85.5%(図1参照)であって、且つ、フルクトシルリジンに対する反応性が2.5%であるケトアミンオキシダーゼが記載されている。このケトアミンオキシダーゼはフルクトシルバリルヒスチジンに反応するためフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼと言い換えることができる。しかしながら、当該フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの他の酵素特性は不明であり、液状の臨床診断薬中で使用できるか否かはわからない。
つまり、フルクトシルバリルヒスチジンに作用するオキシダーゼとして、優れた熱安定性と、フルクトシルリジンに対する反応性の低さとを両立するものが見出されておらず、それ故に、公知のオキシダーゼを液状の臨床診断薬として用いる技術は、実用可能なレベルには至っていなかった。
更に具体的には、何らかの原因で試料中に遊離の糖化アミンが混入すると、従来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを用いた測定では、測定値が異常に高値を示すことになる。当該問題は、特に高カロリー輸液用製剤が投与された患者で多く発生し、その理由は、輸液によって高濃度の糖およびアミノ酸が体内に補充された場合に、血中もしくは輸液バック中で遊離の糖化アミノ酸または糖化ペプチドが生成するためであると考えられている。特に、HbA1c測定の場合には、FAODがフルクトシルバリンにも反応してしまうと、フルクトシルバリンの混入によって異常に高い糖化タンパク質量を示すことになる。
そこで、測定対象物がFAODとの酸化還元反応を行う前に、予め測定対象物とは別に遊離している糖化アミンをFAODにより消去する系が開発されてきた(例えば、特許文献3、5、7、16参照)。
しかしながら、これらの方法は消去反応においてFAODを使用するため、当該消去反応時に過酸化水素が発生するという問題点がある。当該過酸化水素が測定対象物の酸化還元反応に持ち込まれると、測定値が上昇してしまう。それ故、当該方法では、測定対象物がFAODとの酸化還元反応を行う前に、過酸化水素を除去する必要がある。
したがって、遊離糖化アミンをFAODによって予め消去する工程を含む糖化アミン測定方法は、以下の(1)〜(4)の反応を含む。つまり、
(1)遊離アミンをFAODで消去する反応(以下「消去反応」と呼ぶ)
(2)消去反応で発生した過酸化水素を除去する反応(以下「除去反応」と呼ぶ)
(3)プロテアーゼにより、糖化タンパク質を糖化アミノ酸または糖化ペプチドに断片化する反応(以下「断片化反応」と呼ぶ)
(4)断片化された糖化アミノ酸または糖化ペプチドとFAODとが酸化還元反応を行い、これによって発色する反応(以下「発色反応」と呼ぶ)。
上記除去反応では、例えば、水素供与体とPOD(peroxidase)との自己縮合、および/またはカタラーゼを共存させるが、過酸化水素を完全に除去できずに当該過酸化水素が発色反応に持ち込まれれば、測定値の上昇につながる可能性がある。
これらの反応において少なくとも消去反応と除去反応とは、発色反応よりも前に行う必要がある。また、断片化反応に用いるプロテアーゼによって酵素(FAOD)が分解されるため、プロテアーゼ耐性の高い酵素を選定するか、または消去反応および発色反応を断片化反応とは別に行う必要がある。よって、上記糖化アミン測定方法では、糖化アミン測定試薬の組成、当該糖化アミン測定試薬の添加時点、および反応順序が限定されるという問題点を有している。
また、血液サンプル中には糖化アルブミンが含まれているので、HbA1cを測定する場合には、この影響を回避する必要がある。糖化アルブミンは、アルブミンのリジン残基のε−アミノ基が糖化されているため、プロテアーゼによる切断によって発生するフルクトシルリジンにFAODが反応すると、測定値が高値化する。当該問題点を解決するためにも、フルクトシルバリルヒスチジンには反応するが、フルクトシルバリンおよびフルクトシルリジンへの反応性が低いFAODが望まれているが、このようなFAODは報告されていない。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、糖化タンパク質、特に糖化ヘモグロビンの測定に有用なフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質とその改変体、および当該タンパク質をコードする遺伝子を新たに創出することにある。さらには、当該タンパク質を利用した糖化タンパク質(糖化ヘモグロビン等)の測定方法、糖化タンパク質(糖化ヘモグロビン等)測定用試薬組成物、糖化タンパク質(糖化ヘモグロビン等)測定キット、および糖化タンパク質(糖化ヘモグロビン等)センサー、等を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、微生物ゲノムデータベースに存在する機能未知のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ相同遺伝子のうち、Phaeosphaeria nodorum(小麦ふ枯病菌)に由来する遺伝子産物が、フルクトシルバリルヒスチジンに作用するフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼであることを見出した。上記フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼのアミノ酸配列を配列番号1に示す。
そして本発明者らはさらに検討した結果、上記フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼが熱安定性、基質特異性及び基質との親和性が高いことを発見し、本発明を完成させるに至った。
また、本発明者らは、更に検討を重ねた結果、フルクトシルバリルヒスチジンの測定に有用なフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質であって、野生型タンパク質よりも基質特異性および/または熱安定性が向上した変異タンパク質(改変体)を取得することにも成功した。そして、本発明者らは、この変異タンパク質をフルクトシルバリルヒスチジン含有検体に作用させ、生じた過酸化水素をペルオキシダーゼ反応にて定量することによって、フルクトシルアミノ酸を測定することが可能であることも確認した。
すなわち本発明は、以下のような構成からなるものである。
本発明に係るタンパク質は、上記課題を解決するために、以下の(I)から(III)のいずれかに記載の、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質であることを特徴としている。(I)配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(II)配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質。(III)配列番号1に記載されるアミノ酸配列と86.0%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
本発明に係るタンパク質は、上記(II)または(III)に記載のタンパク質であって、アミノ末端から58番目のイソロイシン、および/または、アミノ末端から110番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されていることが好ましい。
本発明に係るタンパク質は、上記(II)または(III)に記載のタンパク質であって、アミノ末端から282番目のフェニルアラニンが他のアミノ酸に置換されていることが好ましい。
本発明に係るタンパク質は、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンが、メチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、または、ロイシンに置換されていることが好ましい。
本発明に係るタンパク質は、上記アミノ末端から110番目のグリシンが、グルタミン、メチオニン、グルタミン酸、トレオニン、アラニン、システイン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、アルギニン、セリン、バリン、ロイシン、アスパラギン酸、イソロイシン、チロシンまたはフェニルアラニンに置換されていることが好ましい。
本発明に係るタンパク質は、上記アミノ末端から282番目のフェニルアラニンが、チロシンに置換されていることが好ましい。
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記課題を解決するために、以下の(IV)から(VII)のいずれかのポリヌクレオチドからなる、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであることを特徴としている。(IV)配列番号2に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド。(V)配列番号2に記載される塩基配列において、1つ以上30以下の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加された塩基配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。(VI)本発明のタンパク質のうちの何れかのタンパク質をコードするポリヌクレオチド。(VII)上記(IV)から(VI)のいずれかのポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
なお、上記(II)において、置換、欠失、挿入および/または付加された塩基の数は、1〜20個であることが好ましい。
本発明は更に、本発明のポリヌクレオチドのうちの何れかのポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、当該組換えベクターで宿主を形質転換した形質転換体を提供する。
本発明に係るタンパク質の製造方法は、上記の課題を解決するために、上記形質転換体を培養してフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質を生成させ、当該タンパク質を採取することを特徴としている。
本発明に係る糖化タンパク質の測定方法は、上記の課題を解決するために、糖化アミンに対して、本発明のタンパク質のうちの何れかのタンパク質を作用させる工程を含むことを特徴としている。
本発明に係る糖化ヘモグロビンの測定方法は、上記の課題を解決するために、試料中の糖化ヘモグロビンから糖化アミンを調製する工程と、次いで、当該試料に、本発明のタンパク質のうちの何れかのタンパク質を作用させる工程とを含むことを特徴としている。上記測定方法によれば、上記試料中における糖化ヘモグロビンの有無、及び糖化ヘモグロビンの量を測定することができる。
なお、上記糖化アミンを調製する工程は、糖化ヘモグロビンを適当な長さのペプチド断片又はアミノ酸に分解することにより行うことができる。また、調製される糖化アミンは、好ましくは、フルクトシルバリン、フルクトシルバリルヒスチジン、及びフルクトシルバリルヒスチジル基を末端に含む糖化ペプチドの少なくとも一種類を含むものであり、より好ましくは、ヘモグロビンのα鎖とβ鎖とを区別した測定が可能なように、フルクトシルバリルヒスチジン、及び/又は、フルクトシルバリルヒスチジル基を末端に含む糖化ペプチドを含むものである。
本発明は更に、本発明のタンパク質のうちの何れかのタンパク質を備える糖化タンパク質測定キット及び糖化タンパク質測定センサーを提供する。
本発明者らはPhaeosphaeria nodorumのゲノム情報(http://genamics.com/cgi-bin/genamics/genomes/genomesearch.cgi?field=ID&query=1666参照)について鋭意研究を重ね、この菌がフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを産生する可能性があることを突き止めた。この知見に基づき、さらに研究を重ねたところ、この菌の遺伝子から、フルクトシルバリルヒスチジンに作用するフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ(配列番号1にそのアミノ酸配列を示す)を発現させることに成功した。
配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質(適宜「配列番号1のタンパク質」という)が、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼを産生する可能性があることは、既に見出されているゲノム配列の相同性検索からある程度予測することができるが、フルクトシルバリルヒスチジンに作用するフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(つまり「フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ」)であることは、ゲノム情報やアミノ酸配列情報からは探索することはできない。また、現時点において、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの立体構造は解明されておらず、立体構造情報から酵素活性を類推することも不可能であった。さらに、相同性検索から選択された遺伝子をクローニングして発現させても、タンパク質が精製できなかったり、予測通りの酵素活性を有していなかったりする例は多数報告がなされている。
本発明により、糖化タンパク質、特に糖化ヘモグロビン測定用として有用なフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤、およびその利用法を提供することが可能となる。また本発明は、熱安定性、基質特異性及び基質との親和性が高いフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質、およびその利用法を提供することができる。
また、本発明により、基質特異性および/または熱安定性が更に優れたフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体を提供することができるという効果を奏する。より具体的には、配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質のアミノ末端から58番目のイソロイシンを他のアミノ酸に置換することによって、当該タンパク質のフルクトシルバリルヒスチジンに対する基質特異性を更に上昇させることが可能となり、アミノ末端から110番目のグリシンを他のアミノ酸の置換することによって、当該タンパク質の熱安定性を更に上昇させることが可能となる。その結果、より正確に糖化タンパク質の量を測定することができるという効果を奏する。
Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼのアミノ酸配列とCurvlaria claveta由来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼのアミノ酸配列との相同性を比較した図である。
本発明の実施の形態について詳細に説明すれば以下のとおりであるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。また本明細書中の「〜」は「以上、以下」を意味し、例えば明細書中で「★〜☆」と記載されていれば「★以上、☆以下」を示す。また本明細書中の「および/または」は、いずれか一方または両方を意味する。
<1.本発明にかかるタンパク質>
本発明にかかるタンパク質は、以下の(I)から(III)のいずれかに記載の、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質である。つまり、
(I)配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(II)配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(III)配列番号1に記載されるアミノ酸配列と86.0%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
上記配列番号1に示されるアミノ酸配列は、Phaeosphaeria nodorumのゲノムデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nucleotide&val=NZ_AAGI00000000)に基づき探索をし、単離をしたフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼのアミノ酸配列である。
また、本発明は、上記で説示した本発明にかかるタンパク質のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をも包含するが、1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加される部位は、置換、欠失、挿入および/または付加後のタンパク質がフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有していれば、該アミノ酸配列中のどの部位であってもよい。ここで「1または数個のアミノ酸残基」とは、具体的には10個以内の範囲のアミノ酸残基数であり、好ましくは6個以内の範囲のアミノ酸残基である。
また、本発明は、上記で説示した本発明にかかるタンパク質のアミノ酸配列(配列番号1に示す)において、当該アミノ酸配列と86.0%以上、より好ましくは90.0%以上、より好ましくは95.0%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質を包含する。
なお、アミノ酸配列の相同性は、公知の方法で求めることができる。具体的には、GENETYX−WIN(株式会社ゼネティックス社製の商品名)を当該商品のマニュアルに従って使用し、配列番号1に示すアミノ酸配列と比較対象のアミノ酸配列とのホモロジーサーチ(homology search)により一致するアミノ酸配列の割合(%)として、相同性を計算することができる。相同性は、比較対象の配列の全領域にわたって最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定され得る。ここで、比較対象の塩基配列またはアミノ酸配列を最適な状態にアラインメントするために、付加または欠失(例えば、ギャップ等)を許容してもよい。
上述した、「配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質」、または、「配列番号1に記載されるアミノ酸配列と86.0%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質」では、配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、アミノ末端から58番目のイソロイシン、および/またはアミノ末端から110番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されていることが好ましい。
上記タンパク質では、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンおよび/またはアミノ末端から110番目のグリシンが、他のアミノ酸に置換されている。上記他のアミノ酸としては特に限定されず、適宜公知のアミノ酸に置換され得る。置換されるアミノ酸としては、例えば、天然のタンパク質の構成成分である基本アミノ酸、何らかの化学修飾を受けた修飾アミノ酸、基本アミノ酸から誘導された特殊アミノ酸などを挙げることできるが、これらに限定されない。
アミノ末端から58番目のイソロイシンを他のアミノ酸に置換することによって、上記タンパク質のフルクトシルバリルヒスチジンに対する基質特異性を更に上昇させることが可能となり、アミノ末端から110番目のグリシンを他のアミノ酸の置換することによって、上記タンパク質の熱安定性を更に上昇させることが可能となる。
以下に、まず、アミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されている場合について、具体的に説明する。
上記アミノ末端から58番目のイソロイシンは、例えばメチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、または、ロイシンに置換されていることが好ましい。上記構成であれば、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの基質特異性(フルクトシルバリルヒスチジンに対する反応性)を更に上昇させることができる。
フルクトシルバリルヒスチジンに対する基質特異性を更に上昇させる(換言すれば、フルクトシルバリンおよびフルクトシルリジンの両基質への反応性を大幅に低下させる)という観点からは、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンは、トレオニン、セリン、バリンまたはアラニンに置換されることが更に好ましい。
一方、基質特異性のみならず熱安定性をも上昇させるという観点からは、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンは、メチオニン、セリンまたはアラニンに置換されることが更に好ましい。
したがって、基質特異性を更に上昇させるとともに熱安定性をも上昇させるという観点からは、上記アミノ末端から58番目のイソロイシンは、セリンまたはアラニンに置換されることが最も好ましいといえる。
アミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されている場合には、アミノ末端から58番目以外の部位においても、アミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加され得る。このとき、アミノ末端から58番目以外で置換、欠失、挿入、および/または付加が生じる箇所としては、特に限定されない。
次いで、アミノ末端から110番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されている場合について、具体的に説明する。
上記アミノ末端から110番目のグリシンは、例えば、トリプトファンおよびプロリン以外のアミノ酸に置換されていることが好ましい。更に具体的には、上記アミノ末端から110番目のグリシンは、グルタミン、メチオニン、グルタミン酸、トレオニン、アラニン、システイン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、アルギニン、セリン、バリン、ロイシン、アスパラギン酸、イソロイシン、チロシンまたはフェニルアラニンに置換されていることが好ましい。上記構成であれば、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの熱安定性を上昇させることができる。
熱安定性のみならず比活性をも上昇させるという観点からは、上記アミノ末端から110番目のグリシンは、グルタミン酸(E)、アラニン(A)、バリン(V)またはチロシン(Y)に置換されることが更に好ましい。
熱安定性のみならずKm評価をもより良いものとするという観点からは、上記アミノ末端から110番目のグリシンは、ヒスチジン(H)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、チロシン(Y)、またはフェニルアラニン(F)に置換されることが更に好ましい。
熱安定性のみならず基質特異性をも上昇させるという観点からは、上記アミノ末端から110番目のグリシンは、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)に置換されることが更に好ましい。
アミノ末端から110番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されている場合には、アミノ末端から110番目以外の部位においても、アミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加され得る。このとき、アミノ末端から110番目以外で置換、欠失、挿入、および/または付加が生じる箇所としては、特に限定されない。
配列番号1に示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から58番目のアミノ酸と、アミノ末端から110番目のアミノ酸との両方が、他のアミノ酸に置換されていることが好ましい。上記構成によれば、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの熱安定性を上昇させる傾向を示すとともに、フルクトシルリジンへの反応性を低下させる傾向を示す。また、上述したように上記アミノ末端から110番目のグリシンが置換される具体的なアミノ酸は特に限定されないが、例えば、グルタミンであることが好ましい。上記構成であれば、更にフルクトシルバリンおよびフルクトシルリジンへの反応性を低下させることができる。
上記「配列番号1に記載されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質」、または、「配列番号1に記載されるアミノ酸配列と86.0%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質」では、配列番号1に記載されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から58番目・110番目のアミノ酸以外に、アミノ末端から282番目のフェニルアラニンが他のアミノ酸に置換されていることが好ましい。上記構成によれば、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの熱安定性を上昇させることができる。
上記アミノ末端から282番目のフェニルアラニンが置換される具体的なアミノ酸としては特に限定されないが、例えば、チロシンであることが好ましい。上記構成であれば、更にフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの熱安定性を上昇させることができる。
本発明におけるフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性は、後述する実施例の「活性測定法」の項において説明した方法によって測定される。フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を測定する場合、フルクトシルバリルヒスチジンを基質として用いればよい。なお、本発明の説明において「フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有する」とは、フルクトシルバリルヒスチジンを基質としたオキシダーゼ活性を少なくとも有すればよいが、好ましくは0.1U/mg‐protein以上を意味し、さらに好ましくは1.0U/mg‐protein以上を意味する。また、本発明にかかるタンパク質は、上記フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性に加えて、他の酵素活性(限定されないが、例えば、フルクトシルバリンに対するオキシダーゼ活性)をさらに有してよい。
上記本発明にかかるタンパク質は、例えば、自然界から単離した当該タンパク質を産生する生物(例えば、細菌、酵母、昆虫、線虫、ゼブラフィッシュ、哺乳類など)を用いて生産されてもよい。つまり、本発明にかかるタンパク質には、様々な生物種由来のタンパク質が包含される。また、本発明にかかるタンパク質は、遺伝子組み換え技術を用いて生産されてもよいし、またはアミノ酸合成機などを用いて化学合成されてもよい。遺伝子組み換え技術において、好適に用いられる各種組換えタンパク質発現系は、例えば、大腸菌発現系、昆虫細胞発現系、哺乳類細胞発現系、および無細胞発現系を用いてもよく、これらに限定されない。本発明のタンパク質等の製造方法については後述する。
また本発明にかかるタンパク質等は、例えば、分子間架橋および/または分子内架橋(例えば、ジスルフィド結合など)が施されたもの、化学修飾(例えば、糖鎖、リン酸もしくはその他の官能基など)されたもの、標識(例えば、ヒスチジンタグ、Mycタグ、またはFlagタグなど)が付与されたもの、または融合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、シトクロム、GSTまたはGFPなど)を付与されたものなどが含まれるが、特にこれらに限定されない。さらに、本発明にかかるタンパク質は、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性が実質的に維持される限り、数種のタンパク質の断片を組み合わせて構成したキメラタンパク質も含み得る。
本発明にかかるタンパク質と、血清タンパク質、有機酸、または、デキストランをはじめとする賦形剤等とからフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤を構成してもよい。上記フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤には、酵素剤の構成物品として公知の物品が含まれていてもよい。
<2.本発明にかかるポリヌクレオチド>
本発明にかかるポリヌクレオチドは、本発明にかかるタンパク質をコードするポリヌクレオチドであることを特徴としている。
つまり、本発明にかかるポリヌクレオチドは、以下の(IV)〜(VII)の何れかのポリヌクレオチドからなる、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。
(IV)配列表の配列番号2に記載される塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(V)配列番号2に記載される塩基配列において、1つ以上30以下の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加された塩基配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(VI)本発明にかかるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(VII)上記(IV)から(VI)の何れかのポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。ここで、ポリヌクレオチドは、DNAの形態(例えば、cDNAもしくはゲノムDNA)、またはRNA(例えば、mRNA)の形態で存在し得る。DNAまたはRNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。
また、本発明にかかるポリヌクレオチドは化学的に合成してもよく、コードするタンパク質の発現が向上するように、コドンユーセージ(Codon usage)を変更してもよい。勿論、同じアミノ酸をコードするコドン同士であれば置換することも可能である。
本発明にかかるポリヌクレオチドの作製方法としては特に限定されず、適宜公知の方法によって作製することが可能である。例えば、野生型のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼをコードするポリヌクレオチド(配列番号2)に対して、必要に応じて適宜変異を導入することによって作製することが可能である。また、化学合成法によって作製することも可能である。
本発明にかかるポリヌクレオチドを作製する方法としては、通常行われるポリヌクレオチド改変方法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するポリヌクレオチドの特定の塩基を置換、欠失、挿入および/または付加することで、所望の組換えタンパク質の遺伝情報を有するポリヌクレオチドを作製することができる。ポリヌクレオチドの塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(KOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit;東洋紡績製,Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit;Clonetech製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、またはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。これらの方法は当業者に公知である。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記本発明にかかるタンパク質をコードしていればその塩基配列は特に限定されるものではない。よって本発明にかかるタンパク質のアミノ酸配列に応じた塩基配列からなる全てのポリヌクレオチドが本発明に含まれる。
本発明の一実施形態では、本発明にかかるポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドを構成する塩基の一部が化学的に合成された塩基(いわゆる非天然型塩基を含む)で置換されたものでもよい。また、本発明にかかるポリヌクレオチドが置換される部位は特に限定されず、置換後の塩基配列から発現するタンパク質が好適な性質を有していればよい。
本発明にかかるポリヌクレオチドは、本発明にかかるタンパク質をコードするポリヌクレオチドのみからなるものであってもよいが、その他の塩基配列が付加されていてもよい。付加される塩基配列としては、限定されないが、標識(例えば、ヒスチジンタグ、MycタグまたはFLAGタグなど)、融合タンパク質(例えば、ストレプトアビジン、シトクロム、GST、GFPまたはMBPなど)、プロモーター配列(例えば、酵母由来プロモーター配列、ファージ由来プロモーター配列または大腸菌由来プロモーター配列など)、およびシグナル配列(例えば、小胞体移行シグナル配列、および分泌配列など)をコードする塩基配列などが挙げられる。これらの塩基配列が付加される部位は特に限定されるものではなく、例えば、翻訳されるタンパク質のN末端であっても、C末端でもあってもよい。
また本発明にかかるポリヌクレオチドには、上記本発明にかかるタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、配列番号2に示される塩基配列を有するポリヌクレオチド)、またはこれに相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチドも含まれる。
ここで、「ストリンジェントな条件」とは、相同性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッドの融解温度(Tm値)から15℃、好ましくは10℃、更に好ましくは5℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件をいう。例えば、一般的なハイブリダイゼーション用緩衝液中で、68℃、20時間の条件でハイブリダイズする条件をいう。更に具体的には、上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている周知の方法で行うことができる。
本発明にかかるポリヌクレオチドの塩基配列は、Science, 214: 1205 (1981)に記載されたジデオキシ法により決定され得る。
本発明にかかるポリヌクレオチドの一例に関して、以下に更に詳細に説明するが、本発明は、これに限定されない。なお、本発明にかかるポリヌクレオチドには、以下に記載する置換のあらゆる組み合わせによって生じるポリヌクレオチドが包含される。
まず、本発明の一例である、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドについて説明する。
本発明にかかるポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。更に具体的には、配列番号2に示されるポリヌクレオチドにおいて、「att(172番目〜174番目)」がイソロイシン以外をコードするコドンに置換されたポリヌクレオチドであることが好ましい。
上記「att」を置換する具体的なコドンとしては特に限定されないが、例えば、メチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、または、ロイシンをコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、上記「att」は、「atg(メチオニンをコードするコドン)」、「acc(トレオニンをコードするコドン)」、「gct(アラニンをコードするコドン)」、「aac(アスパラギンをコードするコドン)」、「tcg(セリンをコードするコドン)」、「gtc(バリンをコードするコドン)」、または、「ctc(ロイシンをコードするコドン)」に置換されることが好ましいが、これらに限定されない。上記アミノ酸をコードする別のコドンに置換することも勿論可能である。
更に、本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記置換に加えて、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から282番目のフェニルアラニンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。更に具体的には、配列番号2に示されるポリヌクレオチドにおいて、「ttc(844番目〜846番目)」がフェニルアラニン以外をコードするコドンに置換されたポリヌクレオチドであることが好ましい。
上記「ttc」を置換する具体的なコドンとしては特に限定されないが、例えば、チロシンをコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、上記「ttc」は、「tat(チロシンをコードするコドン)」に置換されることが好ましいが、これに限定されない。上記「ttc」を、チロシンをコードする別のコドンに置換することも勿論可能である。
更に、本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記置換に加えて、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から110番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。更に具体的には、配列番号2に示されるポリヌクレオチドにおいて、「gga(328番目〜330番目)」がグリシン以外をコードするコドンに置換されたポリヌクレオチドであることが好ましい。
上記「gga」を置換する具体的なコドンとしては特に限定されないが、例えば、グルタミンをコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、上記「gga」は、「cag(グルタミンをコードするコドン)」に置換されることが好ましいが、これに限定されない。上記「gga」を、グルタミンをコードする別のコドンに置換することも勿論可能である。
次いで、本発明の一例である、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から110番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドについて説明する。
本発明にかかるポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から110番目のグリシンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。更に具体的には、配列番号2に示されるポリヌクレオチドにおいて、「gga(328番目〜330番目)」がグリシン以外をコードするコドンに置換されたポリヌクレオチドであることが好ましい。
上記「gga」を置換する具体的なコドンとしては特に限定されないが、例えば、トリプトファンおよびプロリン以外のアミノ酸をコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、グルタミン、メチオニン、グルタミン酸、トレオニン、アラニン、システイン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン、アルギニン、セリン、バリン、ロイシン、アスパラギン酸、イソロイシン、チロシンまたはフェニルアラニンをコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、上記「gga」は、「acg(トレオニンをコードするコドン)」、「gcg(アラニンをコードするコドン)」、「gtg(バリンをコードするコドン)」、「ctg(ロイシンをコードするコドン)」、「att(イソロイシンをコードするコドン)」、「atg(メチオニンをコードするコドン)」、「ttc(フェニルアラニンをコードするコドン)」、「tcc(セリンをコードするコドン)」、「cag(グルタミンをコードするコドン)」、「tgt(システインをコードするコドン)」、「tac(チロシンをコードするコドン)」、「aac(アスパラギンをコードするコドン)」、「aag(リジンをコードするコドン)」、「cac(ヒスチジンをコードするコドン)」、「agg(アルギニンをコードするコドン)」、「gac(アスパラギン酸をコードするコドン)」、または「gag(グルタミン酸をコードするコドン)」に置換されることが好ましいが、これらに限定されない。上記アミノ酸(置換後のアミノ酸)をコードする別のコドンに置換することも勿論可能である。
更に、本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記置換に加えて、配列番号1に示されるアミノ酸配列におけるアミノ末端から282番目のフェニルアラニンが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであることが好ましい。更に具体的には、配列番号2に示されるポリヌクレオチドにおいて、「ttc(844番目〜846番目)」がフェニルアラニン以外をコードするコドンに置換されたポリヌクレオチドであることが好ましい。
上記「ttc」を置換する具体的なコドンとしては特に限定されないが、例えば、チロシンをコードするコドンであることが好ましい。更に具体的には、上記「ttc」は、「tat(チロシンをコードするコドン)」に置換されることが好ましいが、これに限定されない。上記「ttc」を、チロシンをコードする別のコドンに置換することも勿論可能である。
<3.本発明にかかる組換えベクター・形質転換体>
本発明にかかるベクターは、上記本発明にかかるポリヌクレオチドを含むものである。上記本発明にかかるポリヌクレオチドを含むものであれば、その他の構成は特に限定されるものではない。
本発明にかかるベクターを構成するベースとなるベクターとしては、宿主に対して好適なベクターが適宜選択され得る。例えば、ベースとなるベクターとしては、プラスミド、ファージ、コスミド、アデノウイルス、またはレトロウイルスなどを使用することが可能であるが、これらに限定されない。
本発明にかかるベクターとしてプラスミドベクターを用いる場合、例えば、pBluescript(登録商標)、pUC18などが使用できる。この場合、ベクターが導入される宿主としては、例えば、酵母、大腸菌(エシェリヒア・コリーW3110(Escherichia coli)、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5α)、昆虫細胞、哺乳類細胞などが利用可能である。
更に、具体的には、上記宿主として、大腸菌(例えば、Escherichia coliなど)等の細菌、酵母(例えば、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeなど)、昆虫細胞、線虫(例えば、Caenorhabditis elegansなど)、アフリカツメガエル(例えば、Xenopus laevisなど)の卵母細胞、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞)や各種ヒト培養細胞などを用いることが可能であるが、これらに限定されない。また、本明細書中で使用される場合、用語「形質転換体」には、細胞、組織または器官だけでなく、生物個体をも含まれる。
本発明にかかるベクターは、導入されるべき宿主に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター、および/または複製起点等)を含有することが可能である。プロモーターとしては、ウイルス性プロモーター(例えば、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター等)などが挙げられるが、これに限定されない。
上記ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、アンピシリン、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ネオマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。上記選択マーカーを用いれば、本発明にかかるポリヌクレオチドが宿主に導入されたか否か、さらには宿主中で確実に発現しているか否かを確認することができる。
上記宿主に本発明にかかるベクターを導入する方法としては特に限定されるものではないが、例えば、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。更に具体的には、エシェリヒア属に属する宿主微生物にベクターを導入する場合は、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAを導入する方法や、エレクトロポレーション法を用いる方法が適用され得る。その他、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイJM109、コンピテントハイDH5α;東洋紡績製)を用いて遺伝子導入が行われても良い。
本発明にかかるベクターを構築するには、本発明にかかるポリヌクレオチド(遺伝子)を分離および精製した後、制限酵素処理などを用いて切断した該ポリヌクレオチドの断片と、ベースとなるベクターを制限酵素で切断して得た直鎖ポリヌクレオチドとを結合閉鎖させて構築することができる。結合閉鎖する際には、ベクターおよび該ポリヌクレオチドの性質に応じてDNAリガーゼなどが使用され得る。本発明のベクターを複製可能な宿主に導入した後、ベクターのマーカーおよび酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、本発明のポリヌクレオチド(遺伝子)を含有する形質転換体を得ることができる。よって、本発明にかかるベクターには薬剤耐性遺伝子などのマーカー遺伝子が含まれていることが好ましい。
なお本発明は、上記本発明にかかるベクターで形質転換された形質転換体を包含する。本発明にかかるベクターによって形質転換される宿主は、特に限定されないが、上述したように酵母、大腸菌、昆虫細胞、および哺乳類細胞などが挙げられる。
<4.本発明にかかるタンパク質の製造方法>
本発明にかかるタンパク質の製造方法は、上記本発明にかかる形質転換体を培養する工程(「培養工程」という)を含むことを特徴としている。本発明にかかるタンパク質の製造方法には、上記培養工程の他、形質転換体を用いたタンパク質生産において含まれ得るその他の工程が含まれていてもよい。その他の工程としては、例えば、培養工程後に、本発明にかかる形質転換体が生産したタンパク質を回収する工程や、当該タンパク質を精製する工程が挙げられる。
(4−1)培養工程
上記培養工程では、本発明にかかる形質転換体が栄養培地などで培養されることにより、多量の組換えタンパク質を安定して生産し得る。形質転換体の培養形態(培養方法、培養条件など)は、宿主の栄養生理的性質を考慮して選択すればよく、多くの場合は液体培養で行う。工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
培養工程で用いられる栄養培地の栄養源としては、培養に通常用いられるものが広く使用されてよい。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、またはピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては資化可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、または大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。これらに加えて、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて培地に添加されてよい。
本発明にかかる形質転換体の培養温度は、当該形質転換体が本発明にかかるタンパク質を生産可能な範囲内であれば適宜変更し得るが、例えば、大腸菌(エシェリヒア・コリー)を宿主として利用する場合、好ましくは20〜42℃程度であり、より好ましくは20〜30℃である。当該温度範囲であれば、活性を有するタンパク質を多く生産することができる。
培養時間は、本発明にかかるタンパク質が最高収量に達する適当な時期に培養を完了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地のpHは本発明にかかる形質転換体が好適に発育し、且つ本発明にかかるタンパク質を生産可能な範囲内で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度の範囲である。
(4−2)回収工程
回収工程では、上記培養工程中に形質転換体によって生産された本発明にかかるタンパク質が回収される。
本発明にかかる形質転換体がタンパク質を細胞外に分泌する場合、その培養物には本発明のタンパク質が含まれている。よって培養物を本発明にかかるタンパク質としてそのまま利用することが可能である。この時、例えばろ過や遠心分離などにより、培養液と本発明にかかる形質転換体とを分離してもよい。
また本発明にかかるタンパク質が形質転換体内に存在する場合、形質転換体を培養して得られた培養物から、ろ過または遠心分離などの手段を用いて形質転換体を採取し、該形質転換体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊後、目的のタンパク質を回収すればよい。また、必要に応じて、キレート剤(例えば、EDTAなど)および界面活性剤(例えば、トリトン−X100など)を添加して本発明にかかるタンパク質を可溶化し、当該タンパク質を水溶液として分離採取してもよい。
(4−3)精製工程
精製工程は、上記回収工程によって得られたタンパク質を精製する工程である。
精製工程の具体的な方法は特に限定されるものではないが、例えば、本発明にかかるタンパク質を含む溶液を、減圧濃縮、膜濃縮、塩析処理(例えば、硫酸アンモニウムまたは硫酸ナトリウムなどを用いる)、または親水性有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、アセトンなど)による分別沈殿法に供すればよい。上記操作によって、目的である本発明にかかるタンパク質を沈殿させ、精製することができる。
また、前記精製工程では、加熱処理、等電点処理、ゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、またはこれらの組み合わせを用いて精製を行ってもよい。
上記手法を用いて得られた目的のタンパク質を含む精製酵素は、電気泳動(SDS−PAGE)を行えば単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
上記の精製酵素は、例えば凍結乾燥、真空乾燥、またはスプレードライなどにより粉末化して流通させることが可能である。また、精製酵素を使用する際は、その用途によって適宜緩衝液に溶解した状態で使用することができる。緩衝液としては、例えば、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、およびGOOD緩衝液などが目的のタンパク質の性質、および/または実験条件もしくは環境に応じて好適に選択されてよい。さらに、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、グルタミン、またはリジンなど)、および血清アルブミンなどを精製酵素に添加することにより、タンパク質を安定化することができる。
<5.本発明にかかる糖化タンパク質の測定方法>
本発明にかかる糖化タンパク質の測定方法(以下「本発明の測定方法」という)は、少なくとも糖化アミンに本発明にかかるタンパク質(またはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤)を作用させることを特徴としている。以下に本発明の測定方法の一実施形態を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。また本項の説明において「本発明にかかるタンパク質」は「本発明にかかるフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤」と読み替えることが可能である。
本発明にかかる測定方法の一実施形態は、
(1)試料とプロテアーゼとを反応させて、試料中の糖化タンパク質を分解し、試料中の糖化タンパク質由来の糖化アミンを調製する工程(便宜上「第1工程」という)、
(2)前記(1)の工程によって得られた試料中の糖化タンパク質由来の糖化アミンに本発明にかかるタンパク質を作用させる工程(便宜上「第2工程」という)、および、
(3)前記(2)の工程において発生した過酸化水素の量または消費された酸素の量を測定する工程(便宜上「第3工程」という)、を含む糖化タンパク質を測定するための方法である。
この実施形態における一具体例としては、酵素法が挙げられる。酵素法においては、試料中の糖化タンパク質をアミノ酸、またはペプチドのレベルまで酵素(例えば、プロテアーゼ)を用いて断片化する(第1工程)。次に、生じた糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドに、FAODを加え、酸化還元反応により過酸化水素を発生させる(第2工程)。この試料にペルオキシダーゼ(POD)、および酸化により発色する還元剤を添加し、PODを触媒として過酸化水素と還元剤との間で酸化還元反応を生じさせる(第3工程)。酸化還元反応により還元剤を発色させ、この発色強度を測定することにより過酸化水素量を測定できる(第3工程)。
以下に各工程について説明する。
(5−1)第1工程
第1工程は、試料中の糖化タンパク質を分解し、試料中の糖化タンパク質由来の糖化アミンを調製する工程である。
上記「糖化タンパク質」とは、タンパク質を構成するアミノ酸残基の一部または全部に糖が結合した(糖化した)タンパク質を意味する。糖化タンパク質としては、特に限定されるものではないが、例えば、タンパク質のアミノ末端アミノ酸のα−アミノ基が糖化されたもの(例えばHbA1c)等が挙げられる。なお上記例示したHbA1cは、糖尿病の診断など臨床診断の指標として使用されている。また、上記糖化タンパク質は、糖化したタンパク質とその他の任意の物質とが結合したタンパク質複合体であってもよい。
上記プロテアーゼとしては、試料中に含まれる糖化タンパク質を糖化アミノ酸または糖化ペプチドに分解し得るものであれば特に限定されるものではない。例えば臨床検査において使用されているプロテアーゼが好ましく利用され得る。
また上記「試料」は、糖化タンパク質の有無や濃度を検出すべき対象物であれば特に限定されるものではなく、例えば、全血、血漿、血清、血球等の他に、尿、髄液等の生体試料(すなわち生体から採取された試料)や、ジュース等の飲料水、醤油、ソース等の食品類等の試料に対しても適用できる。本発明の方法は、糖尿病の診断に応用することができるため、上記の中でも特に全血試料、血球試料に有用である。特に限定されるものではないが、赤血球内の糖化ヘモグロビンを測定する場合には、全血をそのまま溶血したり、全血から分離した赤血球を溶血したりして、この溶血試料を測定用の試料とすればよい。
試料とプロテアーゼとを反応させる際の具体的な条件は、所望の糖化アミンが調製され得る条件であれば特に限定されるものではなく、試料の濃度や種類、プロテアーゼの種類や濃度に応じて適宜好適な条件を検討の上、採用されればよい。
本発明の測定方法に好適に使用できるプロテアーゼの濃度は、例えば0.1U〜1MU/ml(より好ましくは1U〜500KU/ml、最も好ましくは5U〜100KU/ml)である。上記のプロテアーゼの濃度は、限定されるものではなく、反応条件、試料の種類並びに状態、実験者の手技および使用する試薬の種類などに応じて、好適に決定され得る。
また上記「糖化アミン」は、試料中に含まれる糖化タンパク質に由来の糖化アミノ酸や糖化ペプチドなどが挙げられる。糖化ペプチドの長さは特に限定されるものではないが、本発明のタンパク質が作用し得る長さ、例えばアミノ酸残基数が2〜6の範囲のものが挙げられる。
(5−2)第2工程
第2工程は、上記第1工程によって得られた試料中の糖化タンパク質由来の糖化ア
ミンに本発明にかかるタンパク質を作用させる工程である。
本発明にかかるタンパク質が有し得るフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性は特に限定されるものではないが、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性が高いほど高感度で糖化アミンを検出することができ、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼタンパク質の使用量を少なくすることができるために好ましい。
なお本発明の測定方法に好適に使用できるフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼタンパク質の濃度は、例えば0.1〜500U/ml(好ましくは0.5〜200U/ml、最も好ましくは1.0〜100U/ml)である。ただし上記のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの濃度は、特に限定されるものではなく、反応条件、試料の種類並びに状態、実験者の手技および使用する試薬の種類などに応じて、適宜、決定され得る。
なお、1単位(U)の定義は、後述する実施例の「活性測定法」に記載したものと同一である。
また、本発明にかかるタンパク質が糖化アミンに作用すると、酸化的加水分解反応により酸素が消費され、過酸化水素が発生する。
(5−3)第3工程
第3工程は、上記第2工程において発生した過酸化水素の量または消費された酸素の量を測定する工程である。第3工程は過酸化水素の量または酸素の量を測定し得る方法であれば、その具体的方法は特に限定されるものではない。したがって、公知の方法が適宜適用され得る。
第3工程に用いられる方法は、限定されないが、例えば、酵素法などが挙げられる。酵素法においては、試料中の糖化タンパク質をアミノ酸、またはペプチドのレベルまで酵素(例えば、プロテアーゼ)を用いて断片化する。次に、生じた糖化アミノ酸および/または糖化ペプチドに、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを加え、酸化還元反応により過酸化水素を発生させる。この試料に、ペルオキシダーゼ(以下PODと省略する)、および酸化により発色する還元剤を添加し、前記PODを触媒として前記過酸化水素と前記還元剤との間で酸化還元反応を生じさせる。前記酸化還元反応により前記還元剤を発色させ、この発色強度を測定することにより前記過酸化水素量を測定できる。
第3工程において好適なPODは、西洋ワサビ、微生物などに由来するものである。また、前記のPODの好適な使用濃度は、0.01〜100単位(U)/mLである。
第3工程において好適な過酸化水素の測定方法としては、PODの存在下でのカップラー(4−アミノアンチピリン(4−AA)並びに3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)など)に対してフェノール系、アニリン系またはトルイジン系の水素供与体(いわゆる、トリンダー試薬)を酸化縮合反応させることにより色素を生成する方法、または、PODの存在下で直接酸化呈色するロイコ色素を使用する方法が採用され得る。これらの方法は、当業者に公知であり、一般に容易に使用され得る。
上記トリンダー試薬としては、限定されないが、例えば、フェノール及びその誘導体を好適に用いることができる。
第3工程において好適に使用可能な上記カップラーとしては、4−アミノアンチピリン、アミノアンチピリン誘導体、バニリンジアミンスルホン酸、メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(MBTH)(更に具体的には、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン)およびスルホン化メチルベンズチアゾリノンヒドラゾン(SMBTH)(更に具体的には、スルホン化3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラゾン)などが挙げられる。
第3工程において好適に使用できる前記ロイコ色素としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルメタン誘導体、フェノチアジン誘導体、ジフェニルアミン誘導体などが使用できる。
第3工程における前記過酸化水素量の測定において、前記POD等を用いた発色方法以外に、各種センサー系を用いた測定法が当業者に一般的に知られている(限定されないが、例えば、特開2001−204494号公報を参照のこと)。具体的には、各種センサー系に用いる電極としては、酸素電極、カーボン電極、金電極、または白金電極などが挙げられる。本発明において、作用電極として酵素を固定化したこれらの電極を用い、対極(例えば、白金電極など)、および参照電極(例えば、Ag/Cl電極など)と共に、本発明に好適な条件下の緩衝液中に挿入して一定温度に保持しながら、作用電極に一定の電圧を加え、さらに試料を添加して、酵素反応の結果生じる過酸化水素に起因する電流の増加値を測定することができる。
また、カーボン電極、金電極、および白金電極などを用いてアンペロメトリック系で測定する方法として、固定化電子メディエーターを用いる系がある。例えば、作用電極として、酵素および電子メディエーター(例えば、フェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体、およびフェナジンメトサルフェートなど)を吸着、または共有結合法により高分子マトリクスに固定化した電極を用い、対極(例えば、白金電極など)、および参照電極(例えば、Ag/AgCl電極など)と共に、本発明に好適な条件下の緩衝液中に挿入して一定温度に保持する。続いて、作用電極に一定の電圧を加え、試料を添加して酵素反応の結果生じる過酸化水素に起因する電流の増加値を測定することができる。
第3工程で消費された酸素量を測定することで糖化アミン量を測定することもできる(限定されないが、例えば、特開2001−204494号公報を参照のこと)。具体的には、酸素電極を用い、電極表面に酸素を固定化して、本発明に好適な条件下の緩衝液中に挿入して一定温度に保持する。ここに試料を加えて、電流の減少値を測定する。
カーボン電極、金電極、白金電極などを用いてアンペロメトリック系で測定する場合には、作用電極として酵素を固定化したこれらの電極を用い、対極(例えば、白金電極など)、および参照電極(例えば、Ag/AgCl電極など)と共に、メディエーターを含む電流の増加量を測定する。メディエーターとしては、フェリシアン化カリウム、フェロセン、オスミウム誘導体、およびフェナジンメトサルフェートなどを用いることができる。
本発明の測定法において、各工程を実施する系(例えば、各反応溶液中)に、本発明のタンパク質の安定性を増すために不活性タンパク質を添加してもよい。不活性タンパク質は、血清アルブミン類、グロブリン類または繊維性タンパク質類であることが好ましい。更に好ましいタンパク質は、ウシ血清アルブミンであり、wt/volにおける好ましい濃度は、0.05〜1%である。好ましい不活性タンパク質は、酵素分解を起こすプロテアーゼ不純物を含まないものである。
フルクトシルバリルヒスチジン濃度の測定は、試料の特定体積および試薬の特定体積を用いて行われる。吸光度測定は、試料ブランクを測定するために、当該試料と試薬とを混合後であって、かつフルクトシルバリルヒスチジンによる有意な吸光度変化が起こる前にできるだけ速やかに行われる。0.5〜5秒後の第1の吸光度測定が適当である。第2の吸光度測定は、吸光度が定常的になった後、典型的には1mg/dLのフルクトシルバリルヒスチジン濃度において37℃にて3〜5分間である。典型的には、該試薬は既知のフルクトシルバリルヒスチジン濃度を有する水性または血清溶液にて標準化される。
<6.本発明にかかる糖化タンパク質測定キット>
本発明にかかる糖化タンパク質測定キット(以下「本発明のキット」という)は、少なくとも上記本発明にかかるタンパク質(またはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤)を備えることを特徴としている。
本発明のキットは、例えば、糖化ヘモグロビン測定キットであってもよい。本発明のキットに含まれる、本発明にかかるタンパク質(またはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤)の形態は特に限定されるものではないが、例えば、水溶液、懸濁液または凍結乾燥粉末など形態が採用され得る。上記凍結乾燥粉末は常法に従って作製され得る。
本発明のキットは、様々な添加物を備え得るが、当該添加物の配合法は特に制限されるものではない。例えば、本発明にかかるタンパク質を含む緩衝液に添加剤を配合する方法、添加剤を含む緩衝液に本発明にかかるタンパク質を配合する方法、または本発明にかかるタンパク質および安定化剤を緩衝液に同時に配合する方法などが挙げられる。
本発明のキットは、少なくとも上記本発明にかかるタンパク質(またはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤)、ペルオキシダーゼ、および色原体を備える試薬組成物により構成されていてもよい。
本発明の測定方法においてフルクトシルバリルヒスチジンの酸化に由来する過酸化水素の検出には、ペルオキシダーゼ反応を利用する。よって上記試薬組成物には、ペルオキシダーゼおよび色原体(過酸化水素発色試薬)が好ましく用いられる。上記ペルオキシダーゼおよび色原体(過酸化水素発色試薬)の具体的な構成は、何ら制限されるものではない。
本発明に用いられる色原体(過酸化水素発色試薬)は、溶液において安定であり、且つビリルビン干渉が低いものであることが好ましい。本発明に好適に用いることができる色原体(過酸化水素発色試薬)としては、例えば、4−アミノアンチピリン及び3−メチル−2−ベンゾチアゾリンヒドラゾン(MBTH)から選択される化合物と、フェノール、その誘導体、アニリン、及びその誘導体から選択される化合物とを組み合わせてなる試薬が挙げられる。また、本発明において用いられる色原体(過酸化水素発色試薬)は、ベンジジン類、ロイコ色素類、4−アミノアンチピリン、フェノール類、ナフトール類およびアニリン誘導体類であってもよい。
また本発明において好適に用いられるペルオキシダーゼは、西洋ワサビ由来のペルオキシダーゼが好ましい。前記ペルオキシダーゼは、高純度かつ低価格のものが商業的に入手可能である。酵素濃度は、迅速かつ完全な反応のために充分高くなければならず、好ましくは、1,000〜50,000U/Lである。
また上記試薬組成物には、上記構成の他、緩衝剤(例えば、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、およびGOOD緩衝液など)が含まれていてもよい。さらに上記試薬組成物には、酵素反応を妨害するイオンを捕捉するキレート試薬(例えば、EDTAおよびO−ジアニシジンなど)、過酸化水素の定量の妨害物質であるアスコルビン酸を消去するアスコルビン酸オキシダーゼ、各種界面活性剤(例えば、トリトンX−100およびNP−40など)、ならびに各種抗菌剤および防腐剤(例えば、ストレプトマイシンおよびアジ化ナトリウムなど)などが含まれていてもよい。これらの試薬は、単一試薬でも2種類以上の試薬を組み合わせてなるものであってもよい。
上記緩衝剤としては特に限定されないが、6〜8.5のpH範囲において充分な緩衝能力を有する任意の緩衝剤を使用することができる。このpH範囲の緩衝剤としては、リン酸塩、トリス、ビス−トリスプロパン、N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−2−アミノエタンスルホン酸(TES)、2−モルフォリノエタンスルホン酸1水和物(MES)、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(piperazine-1,4-bis (2-ethanesulfonic acid))(PIPES)、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl] ethanesulfonic acid)(HEPES)、および3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)などが挙げられる。特に、好ましい緩衝剤はMESおよびPIPESである。また特に、好ましい濃度範囲は20〜200mMであり、好ましいpH範囲はpH6〜7である。
本発明のキットには、例えば、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ、緩衝液、プロテアーゼ、POD、発色試薬、酵素反応を妨害するイオンを捕捉するキレート試薬、過酸化水素の定量の妨害物質であるアスコルビン酸を消去するアスコルビン酸オキシダーゼ、界面活性剤、安定化剤、賦形剤、抗菌剤、防腐剤、ウェルプレート、蛍光スキャナー、自動分析機、および本発明にかかる測定方法を紙などの記録媒体に記載した取り扱い説明書などが含まれていてもよい。
本発明の測定キットは、本発明の糖化タンパク質の測定方法、およびフルクトシルアミノ酸の測定に利用し得るものであり、とりわけ、糖化ヘモグロビンの測定に好適に利用し得る。
<7.本発明にかかる糖化タンパク質測定センサー>
本発明にかかる糖化タンパク質測定センサー(以下「本発明のセンサー」)は、糖化タンパク質を検出するために用いられるセンサーであり、少なくとも本発明にかかるタンパク質(またはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤)を備えている。
本発明のセンサーは、本発明の測定方法の実施に用いられる。とりわけ、糖化ヘモグロビンの測定に好適に利用し得る。よって、本発明のセンサーは、本発明の測定方法の実施に用いられる物品により構成されていてもよい。上記物品の説明については、本発明の測定方法および本発明のキットの項における緩衝剤等の説明を援用することができる。
本発明のセンサーの一実施形態は、本発明にかかるタンパク質(またはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤)を支持体に固定して用いることができる。支持体としては、本発明にかかるタンパク質(またはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤)を固定化できるものであれば、特に限定されるものではなく、形状や材質は該タンパク質の性質に応じて好適なものを使用してよい。支持体の形状は、本発明にかかるタンパク質(またはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ剤)が固定化できる十分な面積を有するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、基板、ビーズおよび膜などが挙げられる。支持体の材料としては、例えば、無機系材料、天然高分子、および合成高分子などが挙げられる。
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種種の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
<1.活性測定試薬>
表1に実施例において使用した活性測定試薬の組成を示した。なお、実施例において使用した試薬は特記しない限り、ナカライテスク社より購入したものを用いた。
Figure 0005438020
実施例におけるフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの活性測定条件を以下に示した。
<2.活性測定法>
下記実施例1〜3における活性測定法を以下に説明する。
各基質に対する酵素活性は、酵素反応により生成する過酸化水素を追随するペルオキシダーゼ反応により生じた色素の吸光度の増加で測定した。活性測定試薬3mlを37℃で5分間予備加温後、予め、酵素希釈液(50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5))で希釈した酵素溶液0.1mlを加え、反応を開始する。
37℃で5分間反応させ、500nmの吸光度変化を測定する(ΔODtest/min)。盲検では、酵素溶液の代わりに酵素希釈液0.1mlを加え、上記同様に操作を行って吸光度変化を測定した(ΔODblank/min)。得られた吸光度変化より、下記計算式に基づき酵素活性を算出した。尚、上記条件で1分間に1マイクロモルの基質を酸化する酵素量を1単位(U)とする。
−計算式−
活性値(U/ml)={ΔOD/min(ΔODtest−ΔODblank)×3.1(ml)×希釈倍率}/{13×1.0(cm)×0.1(ml)}
3.1(ml):全液量
13:ミリモル吸光係数
1.0cm:セルの光路長
0.1(ml):酵素サンプル液量
<3.実施例1:フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子のクローニング>
Phaeosphaeria nodorum由来のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼのcDNAクローニングを行うために、Phaeosphaeria nodorumのゲノムデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sutils/genom_table.cgi?organism=fungi&database=321614)を検索した。
ゲノムデータベースから、FAD依存オキシドレダクターゼ(FAD−dependent oxidoreductase)をコードすることが予測される遺伝子を抽出した。検索結果から得られた種々の遺伝子のうち、フルクトシルバリンに実質的に作用する酵素をコードする可能性を有するという観点からさらに絞り込みを行った結果、GenBank no. AAGI01000177 239512 bp Phaeosphaeria nodorum SN15 cont1.177, whole genome shotgun Sequence(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?tool=portal&db=nuccore&term=&query%5Fkey=11&dopt=gb&dispmax=20&page=1&qty=1&WebEnv=0x3fThZQ1ubv2E4QUtcTFzS2yHOV3ljOuR6kUwGyNOVEiqCGdFac8yYAlfzZG%2DvpBxXqNrPNESW3skk%402644558678701720%5F0135SID&WebEnvRq=1)の75,143 bpから76,625 bpの配列に相当する遺伝子をクローニング候補遺伝子とした。
次に、上記クローニング候補遺伝子のcDNAについて、スプライシング部位(エキソン-イントロン)の予測ツール(http://www.fruitfly.org/seq_tools/splice.html)の使用や、既知の他の生物種のフルクトシルアミノ酸オキシダーゼ遺伝子との比較により、タンパク質をコードする部分に対応するcDNA全配列を推定した。この情報をもとに、定法である遺伝子断片のPCRによる全合成、すなわち全RNAの調製からmRNAの抽出を経て逆転写を行うことでcDNA全配列を合成した。前記のcDNAを、Blunting high(東洋紡績社製)を用いて末端の平滑化を行い、pUC118のSmaI部位へサブクローニングした。cDNA部分についてシーケンス解析を行った結果、配列番号2に示した塩基配列が得られた。配列番号2に示した塩基配列におけるcDNAのコーディング領域は1番目の塩基から1314番目の塩基であり、開始コドンは1番目の塩基から3番目の塩基、終止コドンTAGは1312番目の塩基から1314番目の塩基に相当する。配列番号2に示した塩基配列から明らかとなったアミノ酸配列は、配列番号1に示した。
なお、後述の実施例2及び3に示すように、得られたcDNAは、新規なフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼをコードするものであった。
<4.実施例2:フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子の大腸菌での大量発現と精製、酵素アッセイ>
上記配列番号2に示した塩基配列を有するフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子を含むプラスミドを作製し、大腸菌におけるフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼタンパク質の大量発現を試みた。
フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子の終止コドンを除いた全長cDNA領域(配列番号2に示した塩基配列の1番目から1311番目の塩基まで)をPCRで増幅した。その際、アミノ酸配列のN末端側に配列番号3に示すプライマーP1(5’-GGAATTCCATATGGCGCCCTCCAGAGCAAACACCAGTGTCATT-3’)(上記塩基配列における「CATATG」はNdeI部位)を用いてNdeI切断部位を挿入し、C末端側に配列番号4に示すプライマーP2(5’-CCGCTCGAGCAAGTTCGCCCTCGGCTTATCATGATTCCAACC-3’)(上記塩基配列における「CTCGAG」はXhoI部位)を用いてXhoI切断部位を導入した。本DNA断片をpET−23bベクター(ノバジェン社)のNdeI−XhoI部位へT7プロモーターと正方向になるようにサブクローニングした。作製したプラスミドは、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ発現用プラスミドとしてpIE353と命名した。
前記のプラスミドpIE353を用いて大腸菌BL21 CodonPlus(DE3)−RIL(ストラタジーン社)を形質転換した。その後、アンピシリン耐性を示す形質転換体BL21 CodonPlus(DE3)−RIL(pIE353)を選択した。
前記形質転換体の培養用の培地として、200mlのTB培地を容積2Lの坂口フラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行ったものを用いた。前記培地を放冷後、別途無菌濾過したアンピシリンを終濃度が100μg/mlになるように培地に添加した。この培地に100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地で予め30℃、16時間培養したBL21 CodonPlus(DE3)−RIL(pIE353)の培養液を2ml接種した。
続いて、30℃で24時間通気攪拌培養を行った。培養終了後、菌体を遠心分離により集菌し、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁した後、細胞を超音波破砕した。
次に、前記懸濁液を遠心分離して、上清液を粗酵素液として得た。フルクトシルバリルヒスチジンを基質として含む酵素活性測定試薬を用いて測定した粗酵素液のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性は、約1.0U/mlであった。得られた粗酵素液についてMagExtractor−His−tag−(東洋紡績製)を用いて、規定のプロトコールに従って精製し、精製酵素標品(IE353)を得た。本方法により得られたIE353標品は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、単一であることが確認された。
前記IE353標品の酵素活性を、フルクトシルバリルヒスチジンを基質として含む酵素活性測定試薬を用いて測定し、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有することを確認した。
<5.実施例3:各フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼタンパク質の特性評価>
本発明にかかるフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ(IE353)、及び従来の酵素FPOX−CE及びFPOX−EE(ともにキッコーマン製)の、熱安定性、基質特異性及びフルクトシルバリルヒスチジン(F−VH)に対するKm値を測定した結果を表2に示す。
熱安定性は50mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に各酵素を0.1mg/mLになるように調製し、50℃、10分間熱処理を行い、下記計算式により算出した。
熱安定性(%)=(50℃、10分熱処理後の活性値)÷(熱処理なし活性値)×100
基質特異性は各基質を10mMになるように調製して、前述した活性測定法を用い、下記計算式により算出した。なお、下記式中で、F−Kは、酵素反応の基質としてのフルクトシルリジンを指す。また、当該式で定義される基質特異性の値が小さいほど、F−VHに対する特異性に優れ、好ましいと判定される。
基質特異性(F−K/F−VH)=(F−Kを基質としたときの活性値)÷(F−VHを基質としたときの活性値)
F−VHに対するKm値はF−VH濃度を1.75mM、0.88mM、0.58mM、0.35mM、0.25mM、0.18mMになるように試薬を調製し、それぞれを用いて前述した活性測定を実施し、ラインウィーバー・バークプロットより算出した。
Figure 0005438020
表2の結果から明らかなように、IE353はFPOX―CE及びFPOX―EEと比較して熱安定性が高く、基質特異性に優れ、且つKm値も低いことがわかる。Km値が低いことは基質との親和性が高い、つまり低い基質濃度でも反応性が良いことを示している。よって、糖化タンパク質測定試薬におけるフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼの添加量を減らすことができる。
<6.活性測定方法>
以下の実施例4〜7、参考例1におけるFAODの活性測定方法を、以下に示す。
各基質に対するFAODの酵素活性は、酵素反応によって生成される過酸化水素を用いたペルオキシダーゼ反応により生じた色素の吸光度の増加を測定した。
まず、活性測定試薬3mlを37℃にて5分間加温した後、当該活性測定試薬に、予め酵素希釈液(0.1%トリトンX100を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5))にて希釈した酵素溶液0.1mlを加え、反応を開始した。
37℃にて5分間反応させた後、単位時間あたりの500nmの吸光度変化を測定した(ΔODtest/min)。盲検としては、酵素溶液の代わりに酵素希釈液0.1mlを用い、同様の操作を行って吸光度変化を測定した(ΔODblank/min)。
下記計算式に基づいて、得られた吸光度変化から酵素活性を算出した。なお、上記条件下で1分間に1マイクロモルの基質を酸化する酵素量を1単位(U)と規定した。
−計算式−
活性値(U/ml)={((ΔODtest/min)−(ΔODblank/min))×3.1ml×希釈倍率}/(13×1.0cm×0.1ml)
なお、上記計算式において、「3.1ml」は全液量を示し、「13」はミリモル吸光係数を示し、「1.0cm」はセルの光路長を示し、「0.1ml」は酵素サンプル液量を示す。
<7.基質特異性評価方法>
以下の実施例4〜7、参考例1におけるFAODの基質特異性評価方法を、以下に説明する。
各基質(F−K:フルクトシルリジン、F−V:フルクトシルバリン、F−VH:フルクトシルバリルヒスチジン)の濃度が2mMになるように活性測定試薬を調製し、上述した活性測定法に従って、下記計算式により活性値比(基質特異性)を算出した。
(F−V/F−VH)=(F−Vを基質としたときの活性値)÷(F−VHを基質としたときの活性値)
(F−K/F−VH)=(F−Kを基質としたときの活性値)÷(F−VHを基質としたときの活性値)
なお、当該式で定義される活性値比の値が小さいほど、F−VHに対する特異性に優れ、好ましいと判定される。
<8.熱安定性評価方法>
以下の実施例4〜7、参考例1におけるFAODの熱安定性評価方法を、以下に説明する。
精製酵素標品を0.1mg/mlになるように50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)に溶解し、50℃にて10分間の加熱処理を施した。なお、後述する3重変異タンパク質では、加熱温度は55℃とした。そして、以下の計算式に基づいて、精製酵素標品の熱安定性(%)を算出した。
熱安定性(%)=[(50℃、10分間加熱処理後の活性値)/(加熱処理前の活性値)]×100
<9.実施例4:フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子・タンパク質の改変>
配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目のイソロイシンをランダムに他のアミノ酸に置換するために、プライマーR1およびプライマーR2を合成した。
・プライマーR1:5’-cttattgaggtcattgcctgcagattgcgatgaagg-3’(配列番号5)
・プライマーR2:5’-nnsatgggcgttagcttgcgaaacccagtggac-3’(配列番号6)
上記pIE353、プライマーR1、およびプライマーR2、およびKOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を用いて、上記58番目のイソロイシンに変異が導入された組換えプラスミドを作製した。当該組換えプラスミドを用いてBL21 CodonPlus(DE3)−RILを形質転換した後、アンピシリン耐性を示す100個のコロニーをピックアップした。100個のコロニーに導入されている100個の組換えプラスミドの塩基配列を確認したところ、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目のイソロイシンが19種類のアミノ酸の各々に置換されたプラスミドを取得することに成功した。
具体的には、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がトレオニン(T)をコードする塩基配列(acc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Tと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がアラニン(A)をコードする塩基配列(gct)に置換されたプラスミド(pIE353−I58A)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Aと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がバリン(V)をコードする塩基配列(gtc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58V)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Vと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がロイシン(L)をコードする塩基配列(ctc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58L)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Lと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がメチオニン(M)をコードする塩基配列(atg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58M)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Mと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がフェニルアラニン(F)をコードする塩基配列(ttc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58F)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Fと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がセリン(S)をコードする塩基配列(tcg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58S)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Sと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がグルタミン(Q)をコードする塩基配列(caa)に置換されたプラスミド(pIE353−I58Q)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Qと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がシステイン(C)をコードする塩基配列(tgc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58C)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Cと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がチロシン(Y)をコードする塩基配列(tac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がアスパラギン(N)をコードする塩基配列(aac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58N)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Nと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がリジン(K)をコードする塩基配列(aag)に置換されたプラスミド(pIE353−I58K)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Kと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がヒスチジン(H)をコードする塩基配列(cac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58H)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Hと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がアルギニン(R)をコードする塩基配列(cgc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58R)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Rと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がアスパラギン酸(D)をコードする塩基配列(gac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58D)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Dと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がグルタミン酸(E)をコードする塩基配列(gaa)に置換されたプラスミド(pIE353−I58E)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Eと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がトリプトファン(W)をコードする塩基配列(tgg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58W)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Wと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がプロリン(P)をコードする塩基配列(ccc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58P)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Pと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目をコードする塩基配列(att)がグリシン(G)をコードする塩基配列(gtt)に置換されたプラスミド(pIE353−I58G)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58Gと呼ぶ。
取得した各プラスミドを用いてBL21 CodonPlus(DE3)−RILを形質転換した後、アンピシリン耐性を示す形質転換体をそれぞれ選抜した。
上述した上記IE353の場合と同様に、各形質転換体を培養し、得られた粗酵素液から精製を行うことにより、それぞれの精製酵素標品(IE353−I58T、IE353−I58A、IE353−I58V、IE353−I58L、IE353−I58G、IE353−I58M、IE353−I58F、IE353−I58S、IE353−I58Q、IE353−I58C、IE353−I58Y、IE353−I58N、IE353−I58K、IE353−I58H、IE353−I58R、IE353−I58D、IE353−I58E、IE353−I58W、IE353−I58P)を得た。各精製酵素標品をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析し、各精製酵素標品が単一のタンパク質であることを確認した。
<10.実施例5:フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ変異タンパク質の特性評価>
まず、上述した活性測定方法にしたがって、野生型フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ(IE353)、および、19種類の精製酵素標品(IE353−I58T、IE353−I58A、IE353−I58V、IE353−I58L、IE353−I58G、IE353−I58M、IE353−I58F、IE353−I58S、IE353−I58Q、IE353−I58C、IE353−I58Y、IE353−I58N、IE353−I58K、IE353−I58H、IE353−I58R、IE353−I58D、IE353−I58E、IE353−I58W、IE353−I58P)の酵素活性を測定した。
上記精製酵素標品の中でフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するものは、IE353、IE353−I58T、IE353−I58M、IE353−I58S、IE353−I58V、IE353−I58A、IE353−I58N、およびIE353−I58Lであった。
これらの精製酵素標品に関して、上述した基質特異性評価方法および熱安定性評価方法に従って、更に基質特異性および熱安定性を評価した。その結果を、表3に示す。
Figure 0005438020
熱安定性(%)は、野生型を1.00とした比に基づいても評価し、1.00よりも数値が上昇しているものを「熱安定性が向上している」と評価した。これによって、より客観的に熱安定性を評価することができる。
表3に示すように、配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目のイソロイシンを他のアミノ酸(T、M、S、V、A,N、またはL)に置換した変異タンパク質は、野生型フルクトシルバリスヒスチジンオキシダーゼタンパク質と比較してF−K/F−VH、F−V/F−VHが低減すること、つまり基質特異性が向上していることが明らかになった。更に、58番目のイソロイシンをメチオニン(M)、アラニン(A)またはセリン(S)に置換した変異タンパク質は、野生型のタンパク質と比較して熱安定性も向上していることが明らかになった。
<11.実施例6:更なるアミノ酸置換を含むフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ変異タンパク質(2重変異タンパク質)、および当該変異タンパク質の特性評価>
配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目のイソロシンの置換に加えて他のアミノ酸をも置換した場合に、当該変異タンパク質の特性がどのように変化するか検討した。
まず、配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンがチロシンに置換された変異タンパク質の発現プラスミドを作製した。以下に、当該発現プラスミドの作製方法を説明する。
配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンをチロシンに置換するために、プライマーY1およびプライマーY2を合成した。
・プライマーY1:5’-tatacgcgcttcaagatgcatcaaccctttggcg-3’(配列番号7)
・プライマーY2:5’-gccaggaaactcgtcgcagactttgatcacg-3’(配列番号8)
上記pIE353、プライマーY1、プライマーY2、およびKOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を用いて、上記282番目のフェニルアラニンがチロシンに置換された組換えプラスミドを作製した。更に詳細には、配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンをコードする塩基配列(ttc)がチロシン(Y)をコードする塩基配列(tat)に置換された組換えプラスミド(pIE353−F282Y)を取得することに成功した。なお、後述する表4に示すように、pIE353−F282Yから得られる精製酵素標品(IE353−F282Y)は、野生型のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼと比較して、熱安定性が向上していた。
上記pIE353−F282Y、プライマーR1、およびプライマーR2、およびKOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を用いて、282番目のアミノ酸であるフェニルアラニンからチロシンへの置換に加えて、更に58番目のイソロイシンが他のアミノ酸へ置換された変異タンパク質の発現プラスミドを作製した。なお、当該発現プラスミドの作製方法は、58番目のイソロイシンのみを置換したときと基本的に同じであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
以上のようにして作製した発現プラスミドを用いて、表3に示す精製酵素標品と同様の方法にて各精製酵素標品を取得し、これらの精製酵素標品の基質特異性および熱安定性を評価した。その結果を、表4に示す。
Figure 0005438020
表4の結果から明らかなように、IE353−F282Yに対して更に配列番号1に示したアミノ酸配列の58番目のイソロイシンを他のアミノ酸に置換した変異タンパク質も、改変前のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼタンパク質(IE353−F282Y)と比較してF−K/F−VH、F−V/F−VHが低減していること、つまり基質特異性が向上していることが明らかになった。
また、熱安定性に関しては、好ましい特性が得られているものが多く得られた。例えば、置換したアミノ酸が特にM、Aの場合には、野生型と比較して熱安定性が大幅に向上していた。
<12.実施例7:更なるアミノ酸置換を含むフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ変異タンパク質(3重変異タンパク質)、および当該変異タンパク質の特性評価>
配列番号1に示したアミノ酸配列における58番目のイソロシンの置換、および282番目のフェニルアラニンの置換に加えて他のアミノ酸をも置換した場合に、当該変異タンパク質の特性がどのように変化するか検討した。
まず、配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンがチロシンに置換されるとともに、110番目のグリシンがグルタミンに置換された変異タンパク質の発現プラスミドを作製した。以下に、当該発現プラスミドの作製方法を説明する。
配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンをチロシンに置換するために、プライマーQ1およびプライマーQ2を合成した。
・プライマーQ1:5’-taccaagctctcgtggacgcgggcttggat-3’(配列番号9)
・プライマーQ2:5’-cagtaccaagctctcgtggacgcgggctt-3’(配列番号10)
上記pIE353−F282Y、プライマーY1、プライマーY2、およびKOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を用いて、上記282番目のフェニルアラニンがチロシンに置換されるとともに、110番目のグリシンがグルタミンに置換された組換えプラスミドを作製した。更に詳細には、配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンをコードする塩基配列(ttc)がチロシン(Y)をコードする塩基配列(tat)に置換されるとともに、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がグルタミン(Q)をコードする塩基配列(cag)に置換された組換えプラスミド(pIE353−G110Q+F282Y)を取得しすることに成功した。
上記pIE353−G110Q+F282Y、プライマーR1、およびプライマーR2、およびKOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を用いて、282番目のアミノ酸であるフェニルアラニンからチロシンへの置換および110番目のアミノ酸であるグリシンからグルタミンへの置換に加えて、更に58番目のイソロイシンが他のアミノ酸へ置換された変異タンパク質の発現プラスミドを作製した。なお、当該発現プラスミドの作製方法は、58番目のイソロイシンのみを置換したときと基本的に同じであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
以上のようにして作製した発現プラスミドを用いて、表3に示す精製酵素標品と同様の方法にて各精製酵素標品を取得し、これらの精製酵素標品の基質特異性および熱安定性を評価した。その結果を、表5に示す。
Figure 0005438020
表5の結果から明らかなように、IE353−G110Q+F282Yに対して更に配列番号1に示すアミノ酸配列の58番目のイソロイシンを他のアミノ酸に置換した変異タンパク質も、改変前のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼタンパク質(IE353−F282Y)と比較してF−K/F−VH、F−V/F−VHが低減していること、つまり基質特異性が向上していることが明らかになった。
また、置換したアミノ酸がM、A、Sの場合には、熱安定性も向上していることが明らかになった。よって、配列番号1に示したアミノ酸配列に更なる変異が導入されたフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ改変体に関しても、58番目のイソロイシンを他のアミノ酸に置換することによって基質特異性が向上することが明らかになった。
<13.参考例1:更なるアミノ酸置換を含むフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ変異タンパク質(3重変異タンパク質)、および当該変異タンパク質の特性評価>
上述した実施例10では110番目のグリシンをグルタミンに置換しているが、他のアミノ酸に置換した場合にも同様の効果があるか否かを検証した。更に具体的には、IE353−I58T+F282Yに対して、更に110番目のグリシンを他のアミノ酸に置換し、これらの精製酵素標品の基質特異性を調べた。
まず、配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンがチロシンに置換されるとともに、58番目のイソロイシンがトレオニンに置換された変異タンパク質の発現プラスミドを作製した。以下に、当該発現プラスミドの作製方法を説明する。
配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをランダムに他のアミノ酸に置換するために、プライマーR3およびプライマーR4を合成した。
・プライマーR3:5’-snnagacttcaggtctgcaatgtctttttc-3’(配列番号11)
・プライマーR4:5’-taccaagctctcgtggacgcgggcttggat-3’(配列番号12)
実施例9で取得した発現プラスミドpIE353−I58T+G110Q+F282Y、プライマーR3、プライマーR4、および、KOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kitを用いて、更に110番目のグリシンに変異が導入された組換えプラスミドを作製した。
当該組換えプラスミドを用いてBL21 CodonPlus(DE3)−RILを形質転換した後、アンピシリン耐性を示す100個のコロニーをピックアップした。100個のコロニーに導入されている100個の組換えプラスミドの塩基配列を確認したところ、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンが19種類のアミノ酸(野生型も含む)の各々に置換されたプラスミドを取得することに成功した。
具体的には、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がアラニン(A)をコードする塩基配列(gcg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110A+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110A+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がバリン(V)をコードする塩基配列(gtg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110V+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110V+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がロイシン(L)をコードする塩基配列(ctg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110L+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110L+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がメチオニン(M)をコードする塩基配列(atg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110M+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110M+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がフェニルアラニン(F)をコードする塩基配列(ttc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110F+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110F+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がセリン(S)をコードする塩基配列(tcc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110S+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110S+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がトレオニン(T)をコードする塩基配列(acg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110T+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110T+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がシステイン(C)をコードする塩基配列(tgt)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110C+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110C+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がチロシン(Y)をコードする塩基配列(tac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110Y+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110Y+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がアスパラギン(N)をコードする塩基配列(aac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110N+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110N+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がリジン(K)をコードする塩基配列(aag)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110K+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110K+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がヒスチジン(H)をコードする塩基配列(cac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110H+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110H+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がアルギニン(R)をコードする塩基配列(agg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110R+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110R+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がアスパラギン酸(D)をコードする塩基配列(gac)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110D+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110D+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がグルタミン酸(E)をコードする塩基配列(gag)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110E+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110E+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がトリプトファン(W)をコードする塩基配列(tgg)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110W+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110W+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がプロリン(P)をコードする塩基配列(ccc)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110P+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110P+F282Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目をコードする塩基配列(gga)がイソロイシン(I)をコードする塩基配列(att)に置換されたプラスミド(pIE353−I58T+G110I+F282Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−I58T+G110I+F282Yと呼ぶ。
上記精製酵素標品の中でフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するものは、IE353−I58T+G110Q+F282Y、IE353−I58T+G110V+F282Y、IE353−I58T+G110L+F282Y、IE353−I58T+G110I+F282Y、IE353−I58T+G110M+F282Y、IE353−I58T+G110F+F282Y、IE353−I58T+G110S+F282Y、IE353−I58T+G110T+F282Y、IE353−I58T+G110Y+F282Y、IE353−I58T+G110N+F282Y、IE353−I58T+G110H+F282Y、IE353−I58T+G110R+F282Y、IE353−I58T+G110E+F282Y、IE353−I58T+G110K+F282Y、および、IE353−I58T+G110D+F282Yであった。これらの精製酵素標品に関して基質特異性を評価した。その結果を、表6に示す。
Figure 0005438020
表6の結果から明らかなように、IE353−I58T+F282Yに対して更に配列番号1に示すアミノ酸配列の110番目のグリシンを他のアミノ酸に置換した変異タンパク質はIE353−I58T+G110Q+F282Yと同様にF−V/F−VHが低減していること、つまり基質特異性が向上していることが明らかになった。
<14.活性測定方法>
以下の実施例8〜10におけるFAODの活性測定方法を、以下に示す。
各基質に対するFAODの酵素活性は、酵素反応によって生成される過酸化水素を用いたペルオキシダーゼ反応により生じた色素の吸光度の増加を測定することによって求めた。
まず、活性測定試薬3mLを37℃にて5分間加温した後、当該活性測定試薬に、予め酵素希釈液(0.1%トリトンX100を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5))にて希釈した酵素溶液0.1mLを加え、反応を開始した。
37℃にて5分間反応させた後、単位時間あたりの500nmの吸光度変化を測定した(ΔODtest/min)。盲検としては、酵素溶液の代わりに酵素希釈液0.1mLを用い、同様の操作を行って吸光度変化を測定した(ΔODblank/min)。
下記計算式に基づいて、得られた吸光度変化から酵素活性を算出した。なお、上記条件下で1分間に1マイクロモルの基質を酸化する酵素量を1単位(U)と規定した。
(計算式)
活性値(U/mL)={((ΔODtest/min)−(ΔODblank/min))×3.1mL×希釈倍率}/(13×1.0cm×0.1mL)
なお、上記計算式において、「3.1mL」は全液量を示し、「13」はミリモル吸光係数を示し、「1.0cm」はセルの光路長を示し、「0.1mL」は酵素サンプル液量を示す。
<15.比活性の算出方法>
以下の実施例8〜10における比活性は、精製酵素標品の活性値(U/mL)と、280nmにおける吸光度(A280)とに基づいて、以下計算式にて算出した。
(計算式)
比活性(U/A280)=活性値(U/mL)/A280(Abs)
なお、比活性の値が高いほど好ましいと判定される。
<16.Km評価方法>
以下の実施例8〜10におけるKm評価方法について、以下に説明する。
基質であるフルクトシルバリルヒスチジンの濃度が1.75mMまたは0.35mMに調製された活性測定試薬を調製した。
上述した活性測定法にしたがって、各活性測定試薬を用いた場合の精製酵素標品の活性値を求めた。次いで、下記計算式に基づいてKm評価を行った。
(計算式)
Km評価=基質濃度1.75mMでの活性値(U/mL)/基質濃度0.35mMでの活性値(U/mL)
なお、当該計算式で定義されるKm評価の値が大きいほど、Km値(Michaelis 定数)が低減する(換言すれば、基質と酵素との親和性が向上する)ので、好ましいと判定される。
<17.基質特異性評価方法>
以下の実施例8〜10におけるFAODの基質特異性評価方法を、以下に説明する。
各基質(F−K:フルクトシルリジン、F−V:フルクトシルバリン、F−VH:フルクトシルバリルヒスチジン)の濃度が2mMになるように活性測定試薬を調製し、上述した活性測定法に従って活性値を算出し、下記計算式により活性値比(基質特異性)を算出した。つまり、
(F−V/F−VH)=(F−Vを基質としたときの活性値)/(F−VHを基質としたときの活性値)
(F−K/F−VH)=(F−Kを基質としたときの活性値)/(F−VHを基質としたときの活性値)
なお、当該計算式で定義される活性値比の値が小さいほど、F−VHに対する特異性に優れ、好ましいと判定される。
<18.熱安定性評価方法>
以下の実施例8〜10におけるFAODの熱安定性評価方法を、以下に説明する。
精製酵素標品を0.1mg/mLになるように50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)に溶解し、50℃にて10分間の加熱処理を施した。そして、以下の計算式に基づいて、精製酵素標品の熱安定性(%)を算出した。つまり、
熱安定性(%)=[(50℃、10分間加熱処理後の活性値)/(加熱処理前の活性値)]×100
なお、当該計算式で定義される熱安定性の値が高いほど、熱安定性に優れ、好ましいと判定される。
<19.実施例8:フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ遺伝子・タンパク質の改変>
配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをランダムに他のアミノ酸に置換するために、プライマーR3およびプライマーR4を合成した。
・プライマーR3:5’-snnagacttcaggtctgcaatgtctttttc-3’(配列番号11)
・プライマーR4:5’-taccaagctctcgtggacgcgggcttggat-3’(配列番号12)
上記pIE353、プライマーR3、およびプライマーR4、およびKOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を用いて、上記110番目のグリシンに変異が導入された組換えプラスミドを作製した。当該組換えプラスミドを用いてBL21 CodonPlus(DE3)−RILを形質転換した後、アンピシリン耐性を示す100個のコロニーをピックアップした。100個のコロニーに導入されている100個の組換えプラスミドの塩基配列を確認したところ、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンが19種類のアミノ酸(野生型のグリシンを除く)の各々に置換されたプラスミドを取得することに成功した。
具体的には、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がトレオニン(T)をコードする塩基配列(acg)に置換されたプラスミド(pIE353−G110T)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Tと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がアラニン(A)をコードする塩基配列(gcg)に置換されたプラスミド(pIE353−G110A)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Aと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がバリン(V)をコードする塩基配列(gtg)に置換されたプラスミド(pIE353−G110V)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Vと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がロイシン(L)をコードする塩基配列(ctg)に置換されたプラスミド(pIE353−G110L)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Lと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がイソロイシン(I)をコードする塩基配列(att)に置換されたプラスミド(pIE353−G110I)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Iと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がメチオニン(M)をコードする塩基配列(atg)に置換されたプラスミド(pIE353−G110M)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Mと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がフェニルアラニン(F)をコードする塩基配列(ttc)に置換されたプラスミド(pIE353−G110F)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Fと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がセリン(S)をコードする塩基配列(tcc)に置換されたプラスミド(pIE353−G110S)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Sと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がグルタミン(Q)をコードする塩基配列(cag)に置換されたプラスミド(pIE353−G110Q)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Qと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がシステイン(C)をコードする塩基配列(tgt)に置換されたプラスミド(pIE353−G110C)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Cと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がチロシン(Y)をコードする塩基配列(tac)に置換されたプラスミド(pIE353−G110Y)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Yと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がアスパラギン(N)をコードする塩基配列(aac)に置換されたプラスミド(pIE353−G110N)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Nと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がリジン(K)をコードする塩基配列(aag)に置換されたプラスミド(pIE353−G110K)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Kと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がヒスチジン(H)をコードする塩基配列(cac)に置換されたプラスミド(pIE353−G110H)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Hと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がアルギニン(R)をコードする塩基配列(agg)に置換されたプラスミド(pIE353−G110R)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Rと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がアスパラギン酸(D)をコードする塩基配列(gac)に置換されたプラスミド(pIE353−G110D)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Dと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がグルタミン酸(E)をコードする塩基配列(gag)に置換されたプラスミド(pIE353−G110E)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Eと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がトリプトファン(W)をコードする塩基配列(tgg)に置換されたプラスミド(pIE353−G110W)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Wと呼ぶ。
また、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンをコードする塩基配列(gga)がプロリン(P)をコードする塩基配列(ccc)に置換されたプラスミド(pIE353−G110P)を取得することに成功した。なお、当該プラスミドから得られる精製酵素標品を、IE353−G110Pと呼ぶ。
取得した各プラスミドを用いてBL21 CodonPlus(DE3)−RILを形質転換した後、アンピシリン耐性を示す形質転換体をそれぞれ選抜した。
上述した上記IE353の場合と同様に、各形質転換体を培養し、得られた粗酵素液から精製を行うことにより、それぞれの精製酵素標品(IE353−G110Q、IE353−G110A、IE353−G110V、IE353−G110L、IE353−G110I、IE353−G110M、IE353−G110F、IE353−G110S、IE353−G110T、IE353−G110C、IE353−G110Y、IE353−G110N、IE353−G110K、IE353−G110H、IE353−G110R、IE353−G110D、IE353−G110E、IE353−G110W、IE353−G110P)を得た。
各精製酵素標品をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分析し、各精製酵素標品が単一のタンパク質であることを確認した。
<20.実施例9:フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ変異タンパク質の特性評価>
まず、上述した活性測定方法(基質としては、フルクトシルバリルヒスチジンを用いた)にしたがって、野生型フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ(IE353)、および、19種類の精製酵素標品(IE353−G110Q、IE353−G110A、IE353−G110V、IE353−G110L、IE353−G110I、IE353−G110M、IE353−G110F、IE353−G110S、IE353−G110T、IE353−G110C、IE353−G110Y、IE353−G110N、IE353−G110K、IE353−G110H、IE353−G110R、IE353−G110D、IE353−G110E、IE353−G110W、IE353−G110P)の酵素活性を測定した。
IE353−G110Pはフルクトシルバリルヒスチジン活性が検出できなかったため、その他の精製酵素標品に関して、熱安定性、比活性、Km値、および基質特異性に関する評価を実施した。その結果を、表7に示す。なお、表7において「Xのアミノ酸」とは、110番目のグリシンが置換されたアミノ酸(換言すれば、IE353−G110XにおけるX)を示す。
Figure 0005438020
表7の結果から明らかなように、配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンを他のアミノ酸に置換した変異体は、IE353−G110Wを除き、野生型(IE353)と比較して熱安定性が向上していた。
また、比活性、Km評価、基質特異性(F−K/F−VH、F−V/F−VH)に関しても、好ましい特性を有する改変タンパク質が存在することも明らかになった。例えば、置換したアミノ酸がグルタミン酸(E)の場合、比活性が約2.5倍上昇し、基質特異性も向上している。よって、110番目のグリシンを他のアミノ酸に置換することにより熱安定性のみならず、他の特性も向上するものが得られることが明らかになった。
<21.実施例10:更なるアミノ酸置換を含むフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ変異タンパク質(2重変異タンパク質)、および当該変異タンパク質の特性評価>
配列番号1に示したアミノ酸配列の110番目のグリシンの置換に加えて他のアミノ酸をも置換した場合に、当該変異タンパク質の特性がどのように変化するか検討した。
まず、配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンがチロシンに置換された変異タンパク質の発現プラスミドを作製した。以下に、当該発現プラスミドの作製方法を説明する。
配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンをチロシンに置換するために、プライマーY1およびプライマーY2を合成した。
・プライマーY1:5’-tatacgcgcttcaagatgcatcaaccctttggcg-3’(配列番号7)
・プライマーY2:5’-gccaggaaactcgtcgcagactttgatcacg-3’(配列番号8)
上記pIE353、プライマーY1、プライマーY2、およびKOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を用いて、上記282番目のフェニルアラニンがチロシンに置換された組換えプラスミドを作製した。更に詳細には、配列番号1に示したアミノ酸配列の282番目のフェニルアラニンをコードする塩基配列(ttc)がチロシン(Y)をコードする塩基配列(tat)に置換された組換えプラスミド(pIE353−F282Y)を取得することに成功した。
上述した各種精製酵素標品と同様の方法にて、所望の精製酵素標品(IE353−F282Y)を得た。
下記表8に示すように、pIE353−F282Yから得られる精製酵素標品(IE353−F282Y)は、野生型のフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ(IE353)と比較して、熱安定性が向上していた。
Figure 0005438020
上記pIE353−F282Y、プライマーR3、およびプライマーR4、およびKOD−Plus Site−Directed Mutagenesis Kit(東洋紡績製)を用いて、282番目のアミノ酸であるフェニルアラニンからチロシンへの置換に加えて、更に110番目のグリシンが他のアミノ酸へ置換された変異タンパク質の発現プラスミドを作製した。なお、当該発現プラスミドの作製方法は、110番目のグリシンのみを置換したときと基本的に同じであるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
以上のようにして作製した発現プラスミドを用いて、表7に示す精製酵素標品と同様の方法にて各精製酵素標品を取得し、これらの精製酵素標品の特性を評価した。なお、IE353−G110P+F282Yはフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性が検出できなかったので、その他の精製酵素標品に関して、その特性を評価した。その結果を、表9に示す。なお、表9において「Xのアミノ酸」とは、110番目のグリシンが置換されたアミノ酸(換言すれば、IE353−G110X+F282YにおけるX)を示す。
Figure 0005438020
表9の結果から明らかなように、IE353−F282Yに対して更に110番目のグリシンを他のアミノ酸に置換しても、熱安定性が向上していることが明らかになった。
また、比活性、Km評価、基質特異性(F−K/F−VH、F−V/F−VH)に関しても、好ましい特性が得られているものもある。
よって、配列番号1に示されるアミノ酸配列における110番目のグリシン以外のアミノ酸に対して変異が導入されたものに関しても、更に110番目のグリシンを他のアミノ酸に置換することによって熱安定性を向上させることが可能であることが明らかになった。
本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
本発明によって、フルクトシルバリルヒスチジンの測定に有用なフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質を新たに創出し、これを提供することが可能となる。また、該タンパク質を利用したフルクトシルバリルヒスチジン等の測定方法、およびフルクトシルバリルヒスチジン等の測定用試薬組成物等を提供することが可能となる。したがって、予防医学に基づく臨床検査の更なる普及に貢献することができる。
また、本発明は、フルクトシルバリルヒスチジンの測定に有用な基質特異性および/または熱安定性に優れたフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを提供できるので、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼを利用した測定精度の高いフルクトシルバリルヒスチジンの測定方法およびフルクトシルバリルヒスチジン測定用試薬組成物等を提供できる。したがって、本発明は、予防医学に基づく臨床検査分野、診断医療分野、製薬分野および保健医学分野をはじめ、生命科学分野の産業に広く利用することができる。

Claims (13)

  1. 以下の(I)または(II)に記載のタンパク質のアミノ末端から110番目のグリシンが、グルタミン、メチオニン、グルタミン酸またはトレオニンに置換されている、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
    (I)配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
    (II)配列番号1に記載されるアミノ酸配列のアミノ末端から110番目のアミノ酸以外の部位において、1または数個のアミノ酸残基が置換されたアミノ酸配列からなり、且つフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質
  2. ミノ末端から58番目のイソロイシンが他のアミノ酸に置換されている請求項1に記載のタンパク質。
  3. ミノ末端から282番目のフェニルアラニンが他のアミノ酸に置換されている請求項2に記載のタンパク質。
  4. 上記アミノ末端から58番目のイソロイシンが、メチオニン、トレオニン、アラニン、アスパラギン、セリン、バリン、または、ロイシンに置換されていることを特徴とする請求項2または3に記載のタンパク質。
  5. 上記アミノ末端から282番目のフェニルアラニンが、チロシンに置換されている請求項に記載のタンパク質。
  6. 以下の(VI)のポリヌクレオチドからなる、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
    (VI)請求項1〜の何れか1項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド
  7. 請求項に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  8. 請求項に記載の組換えベクターで宿主を形質転換した形質転換体。
  9. 請求項に記載の形質転換体を培養してフルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質を生成させ、当該タンパク質を採取する、フルクトシルバリルヒスチジンオキシダーゼ活性を有するタンパク質の製造方法。
  10. 糖化アミンに対して、請求項1〜の何れか1項に記載のタンパク質を作用させる工程を含む、糖化タンパク質の測定方法。
  11. 試料中に含まれる糖化ヘモグロビンを測定する方法であって、
    上記試料中の糖化ヘモグロビンから糖化アミンを調製する工程と、次いで、
    上記試料に、請求項1〜の何れか1項に記載のタンパク質を作用させる工程と、を含む、糖化ヘモグロビンの測定方法。
  12. 請求項1〜の何れか1項に記載のタンパク質を備える、糖化タンパク質測定キット。
  13. 請求項1〜の何れか1項に記載のタンパク質を備える、糖化タンパク質測定センサー。
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