次に、図面を参照して本発明を実施するためのパラ巻線装置の実施形態を説明する。
図1に示すように、このパラ巻線装置10は、基台11を有し、この基台11上のテーブル12に立壁13が立設され、この立壁13上に上テーブル14が設置されている。このパラ巻線装置10の側方には、導線供給装置15が配置されている。導線供給装置15には、公知のテンション装置16が設けられており、このテンション装置16を通して複数本の導線Wが並列して供給されるようになっている。導線供給装置15から供給された導線Wは、クランプ17に保持されて、ボビン25への巻付け操作がなされるようになっている。なお、図中24は、導線Wを切断するカッターである。
テーブル12上には、スライドウェイ20が設けられており、このスライドウェイ20に沿ってスライダ19が、巻枠49の下方に向けて前後移動可能に配置されている。ここで、前方とは、スライダ19に沿って巻枠49に向かう方向を意味し、後方とは、スライダ19に沿って巻枠49から遠ざかる方向を意味し、左方向とは、スライダ19に沿って巻枠49方向に見たとき、スライダ19に対して直交する左方向を意味し、右方向とは、スライダ19に沿って巻枠49方向に見たとき、スライダ19に対して直交する右方向を意味し、上方向とは、スライダ19に沿って巻枠49方向に見たとき、スライダ19に対して直交する上方向を意味し、下方向とは、スライダ19に沿って巻枠49方向に見たとき、スライダ19に対して直交する下方向を意味する。このスライダ19上には、昇降用エアシリンダ18が設置され、この昇降用エアシリンダ18の作動ロッド上端部には、左右移動用エアシリンダ32が取り付けられている。そして、この左右移動用エアシリンダ32を介して、前記クランプ17が支持されており、クランプ17は、これらの駆動機構によって前後左右、並びに、上下に移動可能とされている。なお、上記のようなクランプ17は、1つに限られるものではなく、2つ以上設置されていてもよい。
後述するフライヤ60に支持されるボビン25の下方には、導線クランプ装置21が配置されている。導線クランプ装置21は、テーブル12上に設置された支持台22に取付けられた昇降用エアシリンダ23を介して支持されており、クランプ17によってボビン25に挿入された導線Wを、ボビン25にクランプさせる役割をなす。
図6に示すように、ボビン25は、一対の端面板26、27の間に複数枚のセパレータ28が所定間隔で積層され、これらの端面板26、27、及び、セパレータ28の間に、導線Wを一本ずつ収容する環状溝29が形成されて構成されている。また、端面板26、27には、前記導線クランプ装置21の位置決めピンが挿入される穴30と、前記導線クランプ装置21のクランプレバーが挿入される透孔31とが形成されている。
なお、ボビン25としては、セパレータ28や環状溝29を有せず、導線Wを周面に一列に並べて巻き付けるようにしたものを用いることもできる。
ボビン25への導線Wの巻付けは、クランプ17によって保持された導線Wを、クランプ17の移動によってボビン25の環状溝29に挿入し、その状態で導線クランプ装置21を上昇させ、透孔31に導線クランプ装置21のクランプレバーを挿入し、環状溝29に挿入された、それぞれの導線Wを該クランプレバーによってボビン25に固定し、その状態で後述する駆動機構によりボビン25を回転させて、導線Wをボビン25に巻き付け、最後に導線クランプ装置21を下降させて、透孔31から導線クランプ装置21のクランプレバーを引き抜くことにより行われる。
この巻線操作については、本出願人による特開2007−82340号公報に詳しく説明されているので、ここではその詳細な説明を省略することにする。
図1に示すように、上テーブル14には、巻線装置本体40が設置されている。すなわち、上テーブル14上に複数本のガイドポスト41(図1では便宜上1本のみ示されている)が立設され、これらのガイドポスト41の上端部は、支持板42に連結されている。また、支持板42の下方には、昇降プレート43がガイドポスト41にガイドされて、昇降可能に支持されている。支持板42上には、昇降用モータ44が設置され、ボールネジ41aを回転させて、昇降プレート43を昇降動作させるようになっている。
図2を併せて参照すると、この昇降プレート43の下面には、巻枠支持筒45が取り付けられ、この巻枠支持筒45は、上テーブル14を貫通して下方に伸びている。巻枠支持筒45の下端部には巻枠ホルダ46が取り付けられ、この巻枠ホルダ46に、前方巻枠47及び後方巻枠48からなる巻枠49が取り付けられている。
後方巻枠48は、下方から上方に向けて次第に拡径する複数の段部48aを有している。また、後方巻枠48は傾動機構69を介して、巻枠ホルダ46に対して傾動可能に取り付けられており、巻き付けられたコイルを後述するコイル受け治具80に落し込む際に、その下端部を前方巻枠47に近接させるように、傾動するようにされている。
昇降プレート43上には、払い落し板用エアシリンダ52が設置されており、この作動ロッドに連結されたロッド50が、巻枠支持筒45内を通って下方から突出し、その下端部に払い落し板51が取り付けられている。払い落し板51は、ロッド50に対してほぼ直交し、前方巻枠47及び後方巻枠48のスリットに挿入されて、払い落し板用エアシリンダ52の作動により、ロッド50が下降すると、それと一緒に下降して、巻枠49に巻き付けられたコイルを下方に払い落す役割をなしている。
巻枠支持筒45の上テーブル14の挿通部外周には、回転筒53が配置されており、この回転筒53は、上テーブル14に固定された保持筒55の内周に、ベアリング54を介して回転可能に支持されている。
回転筒53の上端部には、従動プーリ56が装着されている。また、図4を併せて参照すると、上テーブル14上には、フライヤ回転用モータ57が設置されており、その駆動プーリ58と前記回転筒53の従動プーリ56との間に、タイミングベルト59が張設され、フライヤ回転用モータ57の作動により、駆動プーリ58、タイミングベルト59、及び従動プーリ56を介して、回転筒53が回転するようになっている。
図2、4、5に示すように、回転筒53の下端部には、フライヤ60が固着されている。フライヤ60は、回転筒53に対して互いに対向する方向に延出された、第1アーム61と第2アーム62とを有し、更にこの第1アーム61及び第2アーム62と直交する方向に延出された、同じく対向する方向に伸びる第3アーム63及び第4アーム64とを有している。
第1アーム61の先端部下面には、下方に延出された第1支持筒66が取り付けられている。この第1支持筒66内には、ボビン回転軸67が配置され、このボビン回転軸67の下端部が、第1支持筒66から突出して、ボビン25に連結されている。また、ボビン回転軸67の上端部には、ボビン側プーリ68が装着されている。
一方、第2アーム62の先端部下面には、モータ70が装着されている。このモータ70の駆動軸は、第2アーム62の上面に突出し、そこにモータ側プーリ71が装着されている。更に、第3アーム63及び第4アーム64の先端部上面には、それぞれアイドルプーリ72、73が設置されている(図4参照)。そして、ボビン側プーリ68、モータ側プーリ71、及び、アイドルプーリ72、73の間に、タイミングベルト74が張設されている。したがって、ボビン25が回転すると、タイミングベルト74を介して、これらのプーリが回転するようになっている。
保持筒55の外周には、リング状をなす一対の電極75a、75bが上下に所定間隔をおいて装着されている。また、フライヤ60の上面には、これらの電極75a、75bに摺接する一対のカーボンブラシ76a、76bが取り付けられている(図3参照)。したがって、電極75a、75b、並びに、カーボンブラシ76a、76bを介して、モータ70に電力が供給され、ボビン25の回転に対して制動力を付与することができるようになっている。
図3に示すように、第3アーム63の先端部下面には、下方に延出された第2支持筒105が取付けられており、この第2支持筒105の下端部には、水平方向に延出された支持板106が取付けられている。
図7を併せて参照すると、支持板106の下面には、支軸107によって回転可能に支持されたガイドリール108が装着されている。このガイドリール108には、ボビン25から引出された導線Wが引き掛けられて、後述するガイドノズル109に導線Wを案内するようになっている。
ガイドノズル109は、支持板106から延出されたブラケット110を介して支軸111により回動可能に取付けられている。この実施形態の場合、ガイドノズル109は、ほぼ直方体形状の本体112と、この本体112に設けられた導線Wの挿通路113とを有している。そして、挿通路113の途中に、押圧プレート114と、この押圧プレート114に対向して配置された受け台115とで構成されるテンション装置116が設けられている。押圧プレート114は、図示を省略したが、複数本の導線Wの一本毎に対応して配置された複数枚のプレートからなり、図示しないスプリング等の押圧手段により、各プレートがそれぞれ独立して受け台115に向けて押圧されるようになっている。導線Wは、挿通路113を通る際に、上記押圧プレート114の対応するプレートによって押圧され、所定のテンションが付与されるようになっている。そして、ガイドノズル109の挿通路113の出口が、導線Wの導出口121をなし、この導出口121が、本発明における導線導出部をなしている。
本体112には、ピン117が突設されている。また、支持板106の支軸111を挟んで両側には、一対のロック装置118が取付けられている。これらを模式化して示す図8に示すように、ロック装置118には、ガイドノズル109が支軸111を中心に回動したとき、上記ピン117を受け入れる凹溝119を有し、ピン117がこの凹溝119に挿入されたとき、該ピン117を保持してガイドノズル109を固定する図示しないロック機構を有している。このロック機構は、ロック装置118に設けられた解除レバー120を操作することにより解除されるようになっている。
そして、図9に示すように、支軸111を中心にガイドノズル109を回動させることにより、ガイドノズル109の向きを変えて、導出口121のスリット方向を反転できるようになっている。すなわち、同図(a)は、ガイドノズル109を図中左側のロック装置118に保持させた状態を示し、導出口121のスリットが縦方向に伸びている。同図(b)は、図示しない駆動機構により解除レバー120を操作してロックを解除し、ガイドノズル109を下方に回動させた状態を示している。更に、同図(c)は、ガイドノズル109を図中右側のロック装置118に保持させた状態を示し、導出口121のスリット方向は同じく縦方向となるが、同図(a)の状態に対して180度反転して上下反対となっている。
本発明におけるノズル反転機構とは、上記のような、ガイドノズル109を回動させて導出口121のスリット方向を逆にする手段を意味している。なお、ガイドノズル109の導出口121のスリットの反転の角度は、正確に180度である必要はなく、後述する巻線操作において、巻枠49の軸方向に対する導線Wの配列順序が逆転するように巻き付けられる角度であればよい。
図7に示す状態では、ボビン25から引出された導線Wが、ガイドリール108に引き掛けられた後、実線で示す位置(図中の上方)にあるガイドノズル109の挿通路113に挿入されて、導出口121から引出されている。この状態では、導線Wは途中でねじれることなく、平行状態を保って各経路を通過している。しかし、ガイドノズル109が反転して図中想像線で示す位置に配置されると、導線Wの経路が図中想像線で示すように変わり、ガイドリール108とガイドノズル109との間で、導線Wがほぼ180度捩られることになる。図10は、その状態を側方から見て示したものである。このように、導線Wが途中で捩られても、ガイドリール108とガイドノズル109との双方で整列が維持されるので、巻枠への巻線状態に対する影響は、特に生じないことがわかった。
図3に示すように、第4アーム64の先端部下面には、バランスウエイト122が取付けられている。更に、各アーム61,62,63,64に取付けられた第1支持筒66、モータ70、第2支持筒105、バランスウエイト122には、それらを連結する環状の補強プレート123が取付けられている。この補強プレート123により、フライヤ60が高速回転したときの遠心力による撓みを規制するようになっている。
次に、上記パラ巻線装置10を用いた、本発明によるパラ巻線方法の一実施形態を説明する。図42は、同巻線工程のフローチャートである。
まず、巻線操作に先立って、前述したように、ボビン25に導線Wを巻き付ける(ステップS1)。この際、ボビン25の回転は、モータ70を作動させ、タイミングベルト74を介して、ボビン側プーリ68、及び、ボビン回転軸67を回転させることにより行わせることができる。
図4,5,7に示すように、ボビン25に巻き付けられた導線Wは、カットされ(ステップS2)、ガイドリール108を通って、ガイドノズル109の挿通路113に挿入され(ステップS3)、導出口121から引出されるようになっている。ガイドノズル109が上記各図の実線で示される位置にある場合には、導線Wは途中で捩られることなくガイドノズル109の挿通路113に導入され、ガイドノズル109が上記各図の想像線で示される位置にある場合には、導線Wは途中で捩られて、上記とは上下配列を逆にしてガイドノズル109の挿通路113に導入されるようになっている。
図3は、導線Wを巻き付けられたボビン25から引き出された導線Wの端部を、クランプ17で保持した状態を示している(ステップS4)。図15は、クランプ17を移動させて巻枠49に対して巻線を開始する状態を示している。この状態でフライヤ回転用モータ57(図1参照)が作動し、タイミングベルト59を介して、従動プーリ56及び回転筒53が回転し、それと共にフライヤ60が図15の矢印方向に回転する(ステップS5)。
図11及び図16は、フライヤ60の回動によって、導線Wが巻枠49に当接して巻き付き始める状態を示している。図17は、フライヤ60が更に回動して、導線Wが巻枠49に半周ほど巻き付けられた状態を示している。図18は、フライヤ60が更に回動して、導線Wが巻枠49に3/4周ほど巻き付けられた状態を示している。
図12,19は、フライヤ60が更に回動して、導線Wが巻枠49にほぼ一周巻き付けられた状態を示している。このとき、昇降用モータ44の作動によりボールネジ41aが回動して昇降プレート43が所定距離だけ下降し(図1参照)、昇降プレート43に取付けられた巻枠支持筒45を介して、巻枠49が並列した複数本の導線Wの幅もしくはそれより僅かに長い距離で下降する。こうして一周巻き付けられる毎に巻枠49が所定距離ずつ下降することにより、導線Wは、巻枠49の外周に螺旋状に巻き付けられていく。
ところで、導線Wは、ボビン25を回転させつつ、ボビン25から引き出されながら、巻枠49に巻き付けられるため、ボビン回転軸67及びボビン側プーリ68を介して、タイミングベルト74が周回することとなり、このタイミングベルト74の周回によって、モータ側プーリ71も同期して回転することになる(図4,5参照)。
一方、この実施形態では、電極75a、75b、カーボンブラシ76a、76bを介して、モータ70に電力が供給され、モータ70にタイミングベルト74によって回転する方向とは逆方向に回転させる負荷を与えるようにしている。すなわち、モータ70は、タイミングベルト74を介して、ボビン25を逆方向に回転させようとするが、巻枠49に巻き付けられる導線Wの引張り力により、ボビン25を介して強制的に逆転させられるようになっている。
その結果、モータ70は、導線Wにより引張られて回転するボビン25に対して、制動トルクを付与することになり、巻枠49に巻き付けられる導線Wに、所定のテンションを与えることになる。このように、モータ70を導線Wにテンションを与えるためのトルクモータとして使用した場合、その回転が急激に変動しても、比較的一定のトルクを与え続けることができるという利点が得られる。
また、モータ70は、電極75a、75b、及び、カーボンブラシ76a、76bを介して、電力を供給されるため、その供給電力を制御することにより、ボビン25の回転トルクに応じて、その制動トルクを変化させることができる。例えば、ボビン25に導線Wがいっぱいに巻き付けられた状態で、導線Wを引き出す場合の引き出し位置のボビン25の回転中心に対する半径は大きくなる。これに対して、ボビン25から導線Wが消費されて、巻き付けられている導線Wが少なくなったときの引き出し位置の回転中心に対する半径は小さくなる。したがって、導線Wの引張り力が一定であるとすると、回転半径が大きいときの方が、回転半径が小さいときよりも回転トルクは大きくなる。
このため、引張り力を一定に保とうとする場合には、ボビン25に残存する導線Wの巻付け半径に応じて、制動トルクを変化させる必要があるが、この実施形態では、モータ70を制御することにより、ボビン25から引き出される導線Wのテンションを一定に調整することができる。このように、導線Wにほぼ一定のテンションを与えながら、巻枠49に巻き付けることができるので、導線Wの整列状態を維持して、周長のバラツキのないコイルを形成することができる。
図13は、上記の態様で巻線操作を進行させることにより、巻枠49の段部48aの下方から上方に至るまで導線Wを巻き付けて、1つの極のコイル巻線が終了した状態を示している。この状態で、払い落とし用エアシリンダ52が作動し(図1参照)、ロッド50を介して払い落し板51が下降し、巻枠49に巻き付けられたコイルをコイル受け治具80のガイド棒82の所定の間隙に落とし込む。このとき、ロッド50の下降に伴い、傾動機構69が作動して、後方巻枠48が前方巻枠47に向けて内側定の間隙に落し込まれる(ステップS6)。
こうして、1つの極のコイル巻線が終了した後は、インデックステーブル83を回動させることにより、コイル受け治具80を所定角度回動させ、コイルを落とし込むべき、ガイド棒82の間隙を変えて、次の極のコイルの巻線操作が準備される(ステップS7)。
次いで、上記コイルが最後の極か否かが判断され(ステップS8)、最後の極でない場合には、図9に示したように、支軸111を中心にガイドノズル109を回動させ、反対側のロック装置118にガイドノズル109を保持させる。その結果、ガイドノズル109の導出口121のスリット方向が上下反対となり、導出口121から導出される導線Wの配列が上下反対になる(ステップS9)。
その状態で、上記と同様な操作によって次の極のコイル巻線を行う。このとき、図20の矢印で示すように、フライヤ60の回転方向が前の極とは反対となり、反対回りに巻線されてコイルが形成される。また、前記のように、ガイドノズル109の導出口121のスリット方向が上下反対となるため、巻枠49に巻き付けられる導線Wの配列が上下反対になる。こうして、1極のコイル巻線が終了する毎に、ガイドノズル109が反転して、ガイドノズル109の導出口121のスリット方向が上下反対とされ、かつ、フライヤ60の回転方向も反対にされて、複数極のコイル巻線が行われる。
そして、ステップS8において、最後の極であると判断された場合には、巻線工程が終了する(ステップS10)。
図14には、こうして全ての極に対するコイル巻線が終了し、形成されたコイルCがコイル受け治具80のガイド棒81の所定の間隙に落とし込まれた状態が示されている。この実施形態の場合は、コイル受け治具80がコイル挿入治具をなしているので、このコイル挿入治具をコイル挿入装置に移動して、ステータコアへのコイル挿入を行う。コイル受け治具80がトランスファーツールの場合には、コイル受け治具80に保持されたコイルを、コイル挿入治具に移してコイル挿入を行うことになる。
図21は、このコイル挿入治具をコイル挿入装置に移動して、コイル挿入を行う状態を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図21において、160はコイル挿入治具であり、基台167上に設置された筒状のホルダ161と、その中心部に上下移動可能に配置されたストリッパ162と、ホルダ161の内周に基端部を固定して配置された複数本の固定ブレード163と、ストリッパ162に基端部を固定して配置された同じく複数本の可動ブレード164と、各ブレード163,164の基部側の外周に配置されたウェッジガイド165と、ホルダ161の外周に取付けられたコイル受け166とで構成されている。勿論、これは一例であって、他の構造のコイル挿入治具を用いることも可能である。
前述した方法で巻線されたコイルCは、下方から上方に向けて1〜8のターンをなして、ブレード163、164の所定の間隙に落とし込まれて保持されている。そして、ブレード163,164の上端部外周に、ステータコア170がその内歯を対応するブレード163,164に嵌合させて装着されている。
図22は、コイルCをステータコア170のスロットに挿入した状態を示す模式図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。すなわち、図21の状態で、ストリッパ162が上昇し、コイルCがストリッパ162によって押し上げられ、ブレード163,164の間隙を通して、ステータコア170の対応するスロットに挿入される。このとき、同図(b)に示すように、各極のコイルは、最上部のターン8がスロットの最も外周側(奥側)に入り、最下部のターン1がスロットの最も内周側(開口側)に挿入される。
図23は、ステータコア170に挿入されたコイルCのコイルエンドを成形した状態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。すなわち、コイルエンドは、ステータコア170の外周側に寄せてコンパクトな形状となるように成形される。なお、同図(b)は、巻線されたときの1〜8のターンの配置を示している。
図24は、こうしてステータコア170のスロットにコイルを挿入した状態を示す部分拡大図である。この図に示すように、コイルは、対応する各スロットに、内径側が1のターンで外径側が8のターンとなるように配列されて挿入される。そして、例えば1つの相の1つの極のコイルC1は、スロット2とスロット45との間に挿入されており、同じ相の次の極のコイルC2は、スロット44とスロット39との間に挿入されている。そして、コイルC1とコイルC2とは、コイルC1のスロット2に挿入された1のターンから、コイルC2のスロット44に挿入された8のターンに至る渡り線Waを介して連結されている。
前述したように、1極のコイル巻線が終了する毎に、ガイドノズル109が反転して、導出口121のスリット方向が上下反対とされて巻線操作が進むので、スロット内における各ターンの配列順序は変わらないが、各ターンを構成する導線Wの配列順序は、コイルC1とコイルC2とで反対になっている。その結果、図24のスロット2の拡大図並びにスロット44の拡大図に示されるように、スロット2では、導線Wの番号の小さいものが外径側に寄って挿入され、スロット44では、導線Wの番号の大きいものが外径側に寄って挿入される。
前述したように、スロットに挿入された導線のインダクタンスは、ステータコアのスロット内での径方向の位置によって変化することが知られている。このため、パラ巻きされたコイルを挿入したステータコアでは、複数本の導線によってインダクタンスが異なることとなり、そのことがモータ等の回転電機の性能の低下につながっていた。
しかしながら、図24の拡大図に示すように、同じ相のコイルでも、隣接する極どうしのコイル、例えばコイルC1、コイルC2で、導線Wの配列順序を反転させることにより、導線Wのスロットの径方向の位置が、1つのターンの中で番号の小さいものが外径側に寄って挿入されたり、番号の大きいものが外径側に寄って挿入されたりして変わることになる。その結果、1つの相の全ての極を連続して巻線した場合、パラ巻きされた個々の導線Wのスロットの径方向の位置は、全体として平均化されて、個々の導線W毎の偏りがなくなることになる。その結果、パラ巻きされる個々の導線Wのインダクタンスに偏りがなくなり、結果としてより優れた性能を発揮する回転電機を得ることができる。
図25〜33には、本発明を実施するためのパラ巻線装置の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略することにする。
図25に示すように、このパラ巻線装置10aは、前記実施形態の装置と基本的には同様な構造をなしているが、フライヤ60に取付けられたガイドノズルの構造等が異なっている。
図26、27に示すように、フライヤ60は、回転中心に対して対向する方向に伸びる第1アーム61と第2アーム62とを有している。第1アーム61には、第1支持筒66が取付けられ、その下端部にボビン25が装着されている。ボビン25を支持する回転軸の上端にはボビン側プーリ68(図27参照)が装着されている。第2アーム62には、モータ70が取付けられている。このモータ70の駆動軸には、モータ側プーリ71が装着されている。更に、フライヤ60の上面には、複数のアイドルプーリ72が配置されており、これらのアイドルプーリ72と、前記モータ側プーリ71と、前記ボビン側プーリ68との間に、タイミングベルト74が張設されている。その結果、ボビン25が回転すると、タイミングベルト74を介して、これらのプーリが回転するようになっている。したがって、前記実施形態と同様に、カーボンブラシ76a、76bを介して、モータ70に電力を供給し、モータ70にタイミングベルト74によって回転する方向とは逆方向に回転させる負荷を与えることにより、導線Wにより引張られて回転するボビン25に対して制動トルクを付与して、巻枠49に巻き付けられる導線Wに、所定のテンションを与えるようになっている。
また、フライヤ60の下面から複数本の連結棒124(図26参照)が突出し、これらの連結棒124の下端部と、前記第1支持筒66の下方部分とに、環状の補強板125が取付けられている。そして、この環状の補強板125の下面に、ガイドリール108と、ガイドノズル126が取付けられている。
このガイドノズル126は、図28,29に示すように、本体部127と、この本体部127の挿通孔127aに、縮径された後端部を回動可能に挿通された円柱形状の回転ノズル128と、この回転ノズル128の後部に連結された扇形のセクタギヤ129とを有している。回転ノズル128には、一列に整列した導線Wを受け入れるスリット130が、周面の一箇所から中心部に向けて形成されており、その周面の開口側には、導線Wを受け入れやすくするためにテーパ状に広がった導入部130aが設けられている。また、スリット130のガイドリール108側に位置する片面は、導線Wの導入口130bをなしている。また、上記導入口130bの反対側の面が導出口130c(図31〜33参照)をなしている。なお、本体部127にも、図28の状態で回転ノズル128のスリット130と整合するスリットが形成されている。そして、上記回転ノズル128の導線Wの導出口130cが、本発明における導線導出部を構成している。
図28(a)に示すように、導線Wのクランプ131は、支持棒132と、この支持棒132の先端に装着されたヘッド133と、このヘッド133に対して図示しない駆動機構により開閉可能に取付けられた押え片134とを有し、ヘッド133と押え片134との間に、一列に配列された導線Wを受け入れて、開閉可能に把持するようになっている。そして、このクランプ131が図中矢印で示すように上昇して、同図(b)に示すように、導線Wをスリット130に挿入するようになっている。
導線Wがスリット130の奥方まで挿入された後、図29(a)に示すように、後述する駆動機構により、セクタギヤ129を介して、回転ノズル128がやや回転して、回転ノズル128のスリット130が、本体部127の挿通孔127aの内周面で塞がれ、導線Wがスリット130から抜け出せなくなる。この状態で、導線Wは、前記ガイドリール108からほぼストレートに平行に伸びて、スリット130の導入口130bに導入されるようになっている。
上記の状態で1つの極のコイル巻線を行った後、図29(b)に示すように、セクタギヤ129を介して、回転ノズル128をこの実施形態では半周弱の角度で回動させる。その結果、ガイドリール108からスリット130の導入口130bに導入される導線Wは、その途中で180度弱の角度で捩られた状態になる。この状態で、巻線操作を行うと、導線Wは、巻枠49の軸方向に対する配列順序を逆転されて巻き付けられる。
なお、この実施形態では、スリット130の角度が、巻枠49の軸方向に対してやや傾いた状態で停止し、スリット130から導線Wがやや斜めに引出されることになるが、実際に巻線してみると、特に問題を生じることなく巻枠49に整列して巻き付けることができることがわかった。
図30は、ボビン25と、ガイドリール108と、ガイドノズル126と、巻枠49と、ガイドノズル126の回転ノズル128を回動させて、スリット130を反転させる反転機構140との配置を平面的に示している。
反転機構140は、フライヤ60の補強板125に、ガイドノズル126と隣接して設置されたロック装置141と、フライヤ60が所定の回動位置で停止したとき、上記ロック装置141と対向するように外部に配置された回転駆動装置142とを備えている。
回転駆動装置142は、エアシリンダ142aによって進退動作する支持板143を有し、この支持板143にモータ144が取付けられている。モータ144の駆動軸145には、駆動ギヤ146が装着されており、駆動軸145の先端はテーパ状に尖った突起147をなして、駆動ギヤ146の前方に突出している。
図31,32に示すように、ロック装置141は、スプリング148により、常時は前方に付勢されたプレート149を有し、このプレート149の中央部にガイド孔150が設けられている。また、プレート149は、スプリング148によって前方に押出された位置にあるとき、セクタギヤ129に歯合してセクタギヤ129の回動をロックする突起151を有している。なお、図32におけるAは、ガイドノズル126を反対側の面(導出口130c側)から見た部分拡大図であり、Bは、突起151がセクタギヤ129に歯合した状態を示す部分拡大図である。
図31、33に示すように、モータ144が前進してその突起147を、ロック装置141のプレート149のガイド孔150に挿入し、プレート149をスプリング148の付勢力に抗して押し込むことにより、プレート149が後退して、駆動ギヤ146がセクタギヤ129に歯合する。そして、モータ144を作動して、駆動ギヤ146を回動させることにより、セクタギヤ129を回動させて、回転ノズル128を回動させ、スリット130の角度を変えられるようになっている。なお、モータ144が後退して、駆動ギヤ146がセタクギヤ129から離れると、スプリング148の付勢力によって、プレート149が再び前進し、突起151がセクタギヤ129に歯合して、回転ノズル128の回動がロックされるようになっている。
この実施形態のパラ巻線装置10aによる巻線操作は、前記実施形態と同様であるので、その説明を省略することにする。この実施形態では、ガイドノズル126の回転ノズル128が、その導出口130cのほぼ中心を回転中心にして回動するので、反転したときの導出口130cの位置が変わらず、巻枠49への巻き付け条件を一定化しやすくすることができる。
次に、図34には、本発明を実施するためのパラ巻線装置の更に他の実施形態が示されている。なお、以下に記載する実施形態の図面は、いずれも装置の概念図であり、詳細な機構については前記実施形態に準じた機構が採用されるものである。
このパラ巻線装置10bは、前記実施形態と同様に、フライヤ60を回転させて、巻枠49に導線Wを巻き付ける方式を採用したものであるが、巻枠49の軸方向に対する複数本の導線Wの配列順序を逆転させる機構が、前記実施形態とは相違している。
すなわち、フライヤ60は、第1アーム61と、第2アーム62とを有し、第2アーム62の先端にはバランスウエイトが取付けられている。第1アーム61の先端には、下方に垂下する支持棒172が取付けられ、この支持棒172の下端部に反転用モータ173が取付けられている。反転用モータ173の回転軸は、支持棒172を貫通して、支持棒172の内周側に配設された回転板174に連結されている。そして、この回転板174には一対の支持板175,175が平行に取付けられ、支持板175,175の間に図示しない回転軸を介してボビン25が回転可能に支持されている。また、一方の支持板175には、ボビン25の回転軸に連結されたモータ176が取付けられており、このモータ176によってボビン25から引出される導線Wに適度なテンションを与えるようになっている。更に、ボビン25と巻枠49との間には、クランプ177が設けられている。巻枠49の下方には、前記実施形態と同様にコイル受け治具80が設置されている。なお、上記ボビン25から導線Wを引出す部分が、本発明における導線導出部を構成している。
図43は、このパラ巻線装置10bによる巻線工程のフローチャートである。このパラ巻線装置10bによれば、前述したような方法で導線Wをボビン25に巻き付け(ステップS11)、導線Wをカットし(ステップS12)、カットされた導線Wの先端部を引出してクランプする(ステップS13)。そして、フライヤ60が回転すると、ボビン25から並列した複数本の導線Wが引出され、巻枠49に巻き付いていく。フライヤ60が1周回転する毎に巻枠49が下降して上方の巻段に移り、螺旋状に導線Wが巻き付いていく。こうして1つの極のコイル巻線が終了すると(ステップS14)、クランプ177で導線Wを保持して、形成されたコイルCは、コイル受け治具80のガイド棒82の所定の間隙に落とし込まれる(ステップS15)。
次いで、図示しないインデックステーブルを回動させることにより、コイル受け治具80を所定角度回動させ、コイルを落とし込むべき、ガイド棒82の間隙を変えて、次の極のコイルの巻線操作が準備される(ステップS16)。
更に、上記コイルが最後の極か否かが判断され(ステップS17)、最後の極でない場合には、次の巻線操作を開始する前に、反転用モータ173により回転板174及び支持板175を回転させて、ボビン25の上下を反転させる(ステップS18)。
そして、図中想像線で示すようにクランプ177で導線Wを保持し直し、導線Wを所定の位置まで引出して、フライヤ60を回転させて、次の極のコイル巻線を開始する。こうしてステップS14以降の巻線操作を繰り返すことにより、巻枠49の軸方向に対する複数本の導線Wの配列順序を各コイル毎に逆転させることができる。最後に、ステップS17にて最後の極であると判断された場合には、巻線工程が終了する(ステップS19)。
図35には、本発明を実施するためのパラ巻線装置の更に他の実施形態が示されている。このパラ巻線装置10cは、図34に示した前記実施形態と基本的には同じ構造をなすので、機構的に異なる部分についてのみ説明することにする。
このパラ巻線装置10cでは、支持棒172の下端部に、ボビン25を支持する回転板174及び支持板175,175が、回転軸178によって支持されており、回転軸178の基端部は、支持棒172の外側に突出して、その先端に扁平な突部を有するツマミ179が装着されている。そして、フライヤ60が所定の回動位置にあるとき、上記ツマミ179に対向するように、台181を介して反転用モータ173が設置されている。反転用モータ173の駆動軸には、軸方向に進退動作して上記ツマミ179に嵌合するホルダ180が装着されており、このホルダ180が前進して上記ツマミ179に嵌合し、反転用モータ173が作動して、ボビン25の上下を反転させるようになっている。そして、巻線操作中は、ホルダ180がツマミ179から離れて、フライヤ60が自由に回転できるようにされている。
このパラ巻線装置10cによる巻線操作は、上記ボビン25の反転機構が異なっている点以外は、基本的に図34に示した実施形態と同じであるので、その説明を省略することにする。このパラ巻線装置10cにおいては、反転用モータ173がフライヤ60に装着されることなく、外部に設置されるので、フライヤ60を軽くして、より高速回転させることが可能となる。
図36には、本発明を実施するためのパラ巻線装置の更に他の実施形態が示されている。このパラ巻線装置10dも、図34,35に示した実施形態と基本的には同じ構造をなすが、ボビン25の反転機構が異なっている。
この巻線装置10dは、フライヤ60の第2アーム62先端にモータ70が取付けられている。モータ70の駆動軸には、モータ側プーリ71が装着されている。また、第1アーム61の先端には、第1支持筒66が垂下して取付けられており、その内部にボビン回転軸67が配置されており、その下端にボビン25が着脱可能に装着されている。ボビン回転軸67の上端には、ボビン側プーリ68が装着され、前記モータ側プーリ71とボビン側プーリ68との間にタイミングベルト74が装着されている。したがって、モータ70により、モータ側プーリ71、タイミングベルト74、ボビン側プーリ68及び回転軸67を介して、ボビン25に制動力を付与して、ボビン25から引出される導線Wに適度なテンションを与えるようになっている。
そして、この巻線装置10dでは、フライヤ60が所定の回転位置にあるとき、その下方にボビン脱着装置183が設置されている。ボビン脱着装置183は、昇降ホルダ184を有している。また、このボビン脱着装置183の側方に、支持台181を介して反転用モータ173が設置されており、この反転用モータ173の回転軸にクランプ182が装着されている。
したがって、この巻線装置10dにおいては、フライヤ60が回転して1つの極のコイル巻線が終了すると、クランプ177で導線Wを保持し、巻線されたコイルCをコイル受け治具80に落とし込む。次いで、ボビン脱着装置183の昇降ホルダ184が上昇し、フライヤ60のボビン回転軸67の下端に装着されたボビン25を取り外して支持し、その状態で下降させる。続いて、反転用モータ173のクランプ182がボビン25を把持し、図中矢印で示すようにクランプ182を回動させてボビン25を上下反転させる。その後、ボビン25を昇降ホルダ184で再び支持し、クランプ182を離して、昇降ホルダ184によりボビン25を上昇させ、フライヤ60のボビン回転軸67の下端に再びボビン25を装着する。こうしてボビン25を反転させて、次の極の巻線操作を開始することにより、巻枠49の軸方向に対する複数本の導線Wの配列順序を各コイル毎に逆転させることができる。
図37、38には、本発明を実施するためのパラ巻線装置の更に他の実施形態が示されている。このパラ巻線装置10eは、前記特許文献2(特開2004−64829号公報)に記載されたような、巻枠49を回転させて導線Wを巻枠49に巻き付けるタイプのパラ巻線装置に、本発明を適用したものである。
図37に示すように、このパラ巻線装置10eは、図示しないフレームの上方に取付けられた上テーブル14に、巻枠回転用モータ190が設置され、その回転軸191は、軸方向にスライド可能に支持されていて、その下端部に巻枠49が支持されている。したがって、巻枠49は、巻枠回転用モータ190の作動により回転すると共に、昇降可能に支持されている。
また、基台のテーブル12上には、前記巻枠49の側方に支柱192が立設され、この支柱192の上端には、水平方向かつ巻枠49の方向に延出されたアーム193が取付けられている。このアーム193には、図示しない複数の導線リール等から繰り出される複数本の導線Wを案内するガイド194が取付けられている。そして、アーム193の先端部には、導線Wを一列に配列させて保持すると共に、導線Wの配列順序を上下逆にするように180°反転可能な反転ノズル195が取付けられている。この反転ノズル195が本発明における導線導出部をなしている。なお、巻枠49には、導線Wの図示しないクランプ部が設けられており、クランプ196で導線Wを保持して移動させることにより、上記クランプ部に導線Wの巻き始め端部を保持させることができるようになっている。
更に、基台のテーブル12上には、巻枠49の下方を通るスライドウェイ199が配設され、このスライドウェイ199にスライダ200が移動可能に装着されている。スライダ200には、モータ201に装着され、このモータ201によって回転する回転軸203を介して、ターンテーブル202が回転可能に配置されている。ターンテーブル202上には、その中心にコイル受け治具80が設置されており、このコイル受け治具80の周辺に複数のコイル保持具198が設置されている。コイル受け治具80の中心は、上記回転軸203と整合するように配置されている。
図38に示すように、コイル受け治具80は、複数本のガイド棒82を有し、巻線終了後、巻枠49に巻き付けられたコイルを受けるときには、巻枠49の各巻段に巻線された導線Wが、ガイド棒82の所定の間隙に落とし込まれるように、巻枠49の下方に配置される。また、コイル保持具198は、複数本の保持棒197を有しており、コイル受け治具80にコイルが落とし込まれるとき、コイルの外側に突出するループ部分が保持棒197の所定の間隙に落しこまれるようになっている。
次に、この巻線装置10dを用いた巻線方法について説明すると、まず、図示しない導線リール等から繰り出された複数本の導線Wは、ガイド194及び反転ノズル195を通して供給され、クランプ196で保持されて巻枠49の図示しない保持部に保持される。また、スライダ200が移動して、コイル受け治具80の中心、言い換えるとターンテーブル202の回転軸203が、巻枠49の回転軸191と整合するように配置される。
こうして、導線Wの巻き始め端部を巻枠49に固定した後、クランプ196は、導線Wを開放し、巻枠回転用モータ190が作動して、巻枠49が回転し始める。このとき、同時にモータ201が作動して、ターンテーブル202及びその上に設置されたコイル受け治具80やコイル保持具198も、巻枠49と同期して回転する。そして、巻枠49が回転すると、導線Wは巻枠49の外周に巻き付いていき、それと同期して巻枠49が一段ずつ下降して、巻枠49の各巻段に導線Wが螺旋状に巻き付いてコイルが形成される。
こうして1つの極のコイルが形成されたら、所定の位置で巻枠49の回転が停止し、クランプ196で導線Wの巻き終わり端部を再び把持し、スライダ200が移動して、図38に示すように、巻枠49の各巻段に巻き付けられたコイルが、ガイド棒82の所定の間隙に整合するように、コイル受け治具80が配置される。その状態で、巻枠49に巻き付けられたコイルが、コイル受け治具80のガイド棒82の所定の間隙に落とし込まれる。それと同時に、コイルの外方のループは、コイル保持具198の保持棒197の所定の間隙に落とし込まれ、次の極の巻線操作の際にターンテーブル202が回転しても、コイルがばらけないように保持する。
巻枠49に巻き付けられたコイルが、コイル受け治具80及びコイル保持具198に受け渡されると、再びスライダ200が移動して、巻枠49の回転軸191と、ターンテーブル202の回転軸203とが一致するように、ターンテーブル202が移動する。
次いで、反転ノズル195が反転して、巻枠49の軸方向に対する複数本の導線Wの配列順序を逆転させる。そして、クランプ196が移動して、巻枠49の図示しない保持部に導線Wを保持させる。この状態で、クランプ196が導線Wを離し、巻枠回転用モータ190が作動して、巻枠49が再び回転し始め、次の極の巻線操作が開始される。
このように、この実施形態においても、巻枠49の軸方向に対する複数本の導線Wの配列順序を各極のコイル毎に逆転させることができる。
図39には、本発明を実施するためのパラ巻線装置の更に他の実施形態が示されている。このパラ巻線装置10fは、前記図37,38に示した実施形態と基本的には同じであるが、導線Wの供給が、アーム193に取付けられたボビン25からなされる点が相違している。すなわち、アーム193にテンション用のモータ176が取付けられ、このモータ176の回転軸にボビン25が装着されている。そして、ボビン25から繰り出される導線Wが、ガイド194及び反転ノズル195を通して供給され、巻枠49に巻き付けられるようになっている。他の構成や、巻線操作は、前記実施形態と同様であるため、その説明を省略することにする。
図40には、本発明を実施するためのパラ巻線装置の更に他の実施形態が示されている。このパラ巻線装置10gは、図39に示した実施形態と基本的に同じであるが、アーム193が昇降可能に取付けられている点が相違している。すなわち、支柱192上にガイドレール204が立設され、このガイドレール204に沿ってスライダ205が昇降可能に取付けられている。そして、このスライダ205に前記アーム193が支持されて水平方向に延出されている。したがって、巻線操作に伴って、アーム193を上昇させることにより、巻枠49の下段から上段に向けて、導線Wを螺旋状に巻き付けることができるようになっている。なお、巻線操作終了後にコイルを受け治具80及び保持具198に落とし込む際には、巻枠49も下降できるようになっている。
図41には、本発明を実施するためのパラ巻線装置の更に他の実施形態が示されている。このパラ巻線装置10hは、図40に示した実施形態と基本的には同じであるが、導線Wの反転機構が異なっている。すなわち、スライダ205に反転用モータ173が設置され、この反転用モータ173の回転軸に回転板174が連結されている。そして、この回転板174には一対の支持板175,175が平行に取付けられ、支持板175,175の間に図示しない回転軸を介してボビン25が回転可能に支持されている。また、一方の支持板175には、ボビン25の回転軸に連結されたモータ176が取付けられており、このモータ176によってボビン25から引出される導線Wに適度なテンションを与えるようになっている。更に、ボビン25と巻枠49との間には、クランプ177が設けられている。なお、上記ボビン25から導線Wが引出される部分が、本発明における導線導出部を構成している。
このパラ巻線装置10hにおいては、1つの極の巻線が終了した後、クランプ177で導線Wの巻き終わり端部を把持し、スライダ203を移動して所定位置に配置されたコイル受け治具80及びコイル保持具197に巻線されたコイルを落とし込む。次いで、スライダ203を再び移動して、ターンテーブル202の回転軸203が、巻枠49の回転軸191と整合するように配置される。そして、反転用モータ173が作動して、ボビン25の上下が反転する。その結果、ボビン25から供給される導線Wの巻枠49の軸方向に対する配列順序を反転させることができる。次いで、クランプ196でボビン25から供給される導線Wを把持して、クランプ177から導線Wを離し、クランプ196で導線Wを巻枠49の図示しない保持部に保持させ、モータ190により巻枠49を回転させて、次の極の巻線操作を開始する。
以上のように、本発明は、フライヤを回転させて巻枠に導線を巻き付けるタイプの巻線装置、例えば前記特許文献1(特開平11−98779号公報)、特許文献3(特開2006−271118号公報)、特許文献4(特開2008−22696号公報)に記載されたような巻線装置だけでなく、巻枠を回転させて巻枠に導線を巻き付けるタイプの巻線装置、例えば前記特許文献2(特開2004−64829号公報)に記載されたような巻線装置にも適用することができる。