JP2004064829A - 巻線装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数本の電線を並列して巻枠に巻き付けてコイルを形成する巻線装置において、各極毎に巻枠の回転方向を変えて複数極のコイルを連続して巻線する場合であっても、コイル挿入時に1周目のループに強い摩擦がかかることがない巻線装置を提供する。
【解決手段】この巻線装置は、複数本の電線を並列して送り出すノズルと、これらの電線をクランプして巻き付けさせるように回転する巻枠40と、この巻枠40の下方に配置された複数本のガイド棒を有する電線保持治具と、電線受け渡し手段とを備える。そして、巻枠40には、左右一対の巻枠クランプ73、74が設けられており、巻枠40の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプが選択される。
【選択図】 図5
【解決手段】この巻線装置は、複数本の電線を並列して送り出すノズルと、これらの電線をクランプして巻き付けさせるように回転する巻枠40と、この巻枠40の下方に配置された複数本のガイド棒を有する電線保持治具と、電線受け渡し手段とを備える。そして、巻枠40には、左右一対の巻枠クランプ73、74が設けられており、巻枠40の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプが選択される。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の電線を並列して巻枠に巻き付けてコイルを形成するようにした巻線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステータコアにコイルを装着する方法としては、巻線装置によって巻枠上に電線を巻き付けてコイルを形成し、このコイルをステータコアの内歯に対応して配置された複数本のガイド棒を有する治具に保持させ、この治具がコイル挿入治具であるときはそのまま、この治具がトランスファー治具であるときはコイル挿入治具にコイルを移した後、コイル挿入治具をステータコアの内歯に嵌合させ、治具の中心を通るストリッパでコイルをステータコアのスロットに押し込んで装着するコイルインサーター方式がよく採用されている。
【0003】
近年、電気自動車などのモータの開発に際し、自動車に搭載可能な低電圧の電源によって大きな駆動力が得られるようにするため、電線の断面積を大きくして大電流を流すことにより、大きな駆動力が得られるようにしたモータが望まれている。しかしながら、電線の直径を大きくした場合には、巻線操作やステータコアへのコイル挿入操作が困難となると共に、ステータコアのスロット内における電線のスペースファクタ(空間占有率)も小さくなるという問題点があった。
【0004】
このため、複数本の電線を並列して巻いて(パラ巻きして)コイルを形成することにより、巻線操作やコイル挿入操作に支障をきたすことなく、電線の断面積を大きくする試みがなされている。そして、電線をパラ巻きする巻線装置としては、例えば特開平11−332184号公報、特開2000−134876号公報、特開2000−209822号公報に示される装置が知られている。
これらの巻線装置においては、巻枠に電線の巻き始め部分をクランプさせ、巻枠を回転させて複数本の電線を並列した状態で巻き付けてコイルを形成するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平11−332184号公報及び特開2000−134876号公報には、電線の巻き始め端部を巻枠にクランプさせるということしか実質的に記載されておらず、クランプ機構について詳細な説明はなされていない。また、上記特開2000−209822号公報に記載された巻線装置では、巻枠でのクランプ部は、1箇所にしか設けられていない。
【0006】
上記のような巻線装置において、複数極のコイルを連続して巻線しようとすると、各極毎に巻枠の回転方向を変えて巻かなければならない。このため、巻枠のクランプ部の位置を、巻枠の幅方向に対して偏って配置すると、巻き方向によって最初のループの周長や形状が変わってしまうという問題がある。
また、巻枠のクランプ部の位置を、巻枠の幅方向中央に設定すると、最初の1周目が内周側に大きくへこんだループになり、2周目以降のループの周長や形状と大きく違ってくるので、コイル挿入時に大きな摩擦抵抗がかかりやすくなるという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、複数本の電線を並列して巻枠に巻き付けてコイルを形成する巻線装置において、各極毎に巻枠の回転方向を変えて複数極のコイルを連続して巻線する場合であっても、1周目のループ形状が2周目以降のループ形状に近くなり、コイル挿入時に強い摩擦がかからないようにした巻線装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、複数本の電線を並列して送り出すノズルと、これらの電線のクランプ部を有し、これらの電線を巻き付けさせるように回転する巻枠と、この巻枠の下方に配置され、ステータコアの内歯に対応して立設された複数本のガイド棒を有し、前記巻枠と同期して回転できる電線保持治具と、水平及び上下方向に移動できる電線受け渡し手段とを備えた巻線装置において、前記巻枠には、左右一対の巻枠クランプが設けられており、前記巻枠の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプが選択されるように構成されたことを特徴とする巻線装置を提供するものである。
【0009】
本発明によれば、巻枠に左右一対の巻枠クランプを設け、巻枠の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプを選択するようにしたので、巻線方向が変わった場合でも、巻き始めの最初のループが、できるだけ他のループと同じ周長及び形状となるようにクランプ位置を選択することができる。
このため、コイル挿入時に、1周目のループが短すぎて突っ張ったり、長すぎて飛び出したりすることを防止でき、電線の絶縁被覆の損傷を防止すると共に、後のコイル挿入操作を容易にすることができる。
【0010】
本発明の巻線装置においては、前記巻枠を支持して回転させる回転筒を貫通して、スライド軸が挿通されており、このスライド軸の下端にコイル落し板が設けられ、前記巻枠には前記コイル落し板が通過できるスリットが形成されており、前記コイル落し板が下降したときに前記巻枠クランプが開くように構成されていることが好ましい。
【0011】
上記態様によれば、電線の巻き始めをクランプさせるときと、巻枠に巻き付けられた電線を電線保持治具に落し込むときに、上記コイル落し板を下降させることにより、クランプを開くことができる。すなわち、クランプの開閉動作とコイル落し板の昇降動作とを同一の駆動源によって行わせることができ、駆動機構を簡略化することができる。
また、前記巻枠は、前記電線保持治具が上昇したときに、前記ガイド棒が挿入されるガイド溝が形成された前方巻枠と、この前方巻枠に対して所定間隔をおいて対置された後方巻枠とで構成され、前記後方巻枠は、巻線されたコイルを前記電線保持治具に落し込む際に、内側に倒れ込むことが可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
上記態様によれば、巻線されたコイルを電線保持治具に落し込む際に、後方巻枠が内側に倒れ込むことによって、巻線されたコイルを迅速かつスムーズに電線保持治具に落し込むことができる。
更に、前記後方巻枠の後方側面は、下端から所定の距離までは回転軸心と平行に伸びる垂直面をなし、それより上方においては次第に拡径するテーパ面をなしており、巻線操作の際に前記ノズルが徐々に上方に移動して巻線がなされるように構成されていることが好ましい。
【0013】
上記態様によれば、巻線開始時には、前記垂直面をなす部分に巻線がなされることによって、巻線中に電線が滑って落下してしまうことを防止でき、ある程度巻線された後は、前記テーパ面に沿って上方に移動しながら巻線がなされることによって、上方に向かって徐々にループ長が長くなるコイルを形成することができる。そして、電線保持治具としてトランスファーツールを用い、このコイルをトランスファーツールからコイル挿入治具に移し替えると、下方に向かって徐々にループが長くなる形態となる。そして、コイル挿入治具に移されたコイルをストリッパによってステータコアのスロットに挿入すると、内径側のコイルエンドが長く、外径側のコイルエンドが短くなって、全体としてコイルエンドが短くなると共に、成形しやすい形状にすることができる。
【0014】
また、上記態様において、前記後方巻枠の後方側面は、その水平断面形状において、下方部分は、両角部が比較的小さい曲率半径で面取りされた形状をなし、上方に向かうほど、前記両角部がより大きい曲率半径で面取りされた形状をなしていることが好ましい。
【0015】
この態様によれば、巻枠に巻き付けられて形成されるコイルの形状が、下方に向かうほど、ループ長が短く、かつ、両角部が小さい曲率半径で曲げられた形状をなし、上方に向かうほど、ループ長が長く、かつ、両角部が大きい曲率半径で曲げられた形状となる。そして、このコイルを電線保持治具からコイル挿入治具に移し替え、コイル挿入装置によってステータコアに挿入すると、ステータコアのスロットの奥側(ステータコアの外径側)に挿入されたコイルは、内歯に近接して矩形に近い形状で周回する形状となり、スロットの開口部側(ステータコアの内径側)に挿入されたコイルは、大きな曲率半径でステータコアの端面から大きく突出するように周回する形状となる。このような形状のコイルエンドは、コイル挿入を可能にすると共に、コイルエンドの長さを必要最小限にして無駄がなく、しかも成形しやすくすることができる。
【0016】
本発明の別の好ましい態様においては、前記後方巻枠の後方側面は、上方に向かうほど次第に縮径するテーパ面をなしており、巻線操作の際に前記ノズルが徐々に上方に移動して巻線がなされるように構成されている。
上記態様によれば、前記テーパ面に沿って上方に移動しながら巻線がなされることによって、上方に向かって徐々にループ長が短くなるコイルを形成することができる。このようなコイルであっても、後方巻枠が内側に倒れ込むことによって、電線保持治具に落し込むことができる。そして、電線保持治具としてコイル挿入治具を用いて、コイル挿入治具に直接コイルを落し込み、このコイルをストリッパによってステータコアのスロットに挿入すると、内径側のコイルエンドが長く、外径側のコイルエンドが短くなって、全体としてコイルエンドが短くなると共に、成形しやすい形状にすることができる。
【0017】
また、上記態様において、前記後方巻枠の後方側面は、その水平断面形状において、下方部分は、両角部が比較的大きい曲率半径で面取りされた形状をなし、上方に向かうほど、前記両角部がより小さい曲率半径で面取りされた形状をなしていることが好ましい。
【0018】
この態様によれば、巻枠に巻き付けられて形成されるコイルの形状が、下方に向かうほど、ループ長が長く、かつ、両角部が大きい曲率半径で曲げられた形状をなし、上方に向かうほど、ループ長が短く、かつ、両角部が小さい曲率半径で曲げられた形状となる。そして、このコイルをコイル挿入治具から、コイル挿入装置によってステータコアのスロットに挿入すると、ステータコアのスロットの奥側(ステータコアの外径側)に挿入されたコイルは、内歯に近接して矩形に近い形状で周回する形状となり、スロットの開口部側(ステータコアの内径側)に挿入されたコイルは、大きな曲率半径でステータコアの端面から大きく突出するように周回する形状となる。このような形状のコイルエンドは、コイル挿入を可能にすると共に、コイルエンドの長さを必要最小限にして無駄がなく、しかも成形しやすくすることができる。
【0019】
更にまた、前記後方巻枠の後方側面には、ゴム膜が貼り付けられていることが好ましい。
上記態様によれば、後方巻枠が上方に向かうほど拡径したテーパ面を有していても、巻枠に巻線されたコイルが、滑りにくいゴム膜によってしっかりと保持され、巻線作業中にコイルが落下してしまうことを防止できる。
【0020】
更にまた、前記ノズルは、前記巻枠が配置された方向に向けて進退可能に支持されており、巻線操作の際に、前記ノズルが前記巻枠に近接するように構成されていることが好ましい。
上記態様によれば、巻枠が回転して巻線操作がなされる際に、ノズルが巻枠に近接した位置にあるので、ノズルから並列して送り出される電線が、整列した状態で巻枠に巻き付きやすくなり、電線が整列して巻かれたコイルを形成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1〜26には、本発明による巻線装置の一実施形態が示されている。
図1,2に示すように、この巻線装置10は、上面がテーブル12をなす基台11と、この基台11上に立設された縦フレーム13と、この縦フレーム13の上端に取り付けられた天板14とを有している。
テーブル12と天板14との一側方には、天板14から垂下する2本のガイド棒21、22に案内される昇降ブロック20が配設されている。この昇降ブロック20には、天板14に取付けられたモータ23によって回転するボールネジ24が螺合して貫通している。したがって、モータ23の作動によりボールネジ24を回転させることによって、昇降ブロック20はガイド棒21、22に沿って昇降動作する。
【0022】
図3、4を併せて参照すると、昇降ブロック20には、4つのガイドプーリ25が取付けられており、このガイドプーリ25に上下辺を支持されて水平方向に移動可能なアーム26が設けられている。このアーム26は、それと平行に配設されたエアシリンダ27によって軸方向に移動可能とされている。
このアーム26の先端には、複数本の電線を並列させて繰出すノズル28が取付けられている。また、昇降ブロック20の一端には、ガイドプレート29が装着されており、このガイドプレート29に複数の電線導入孔30が形成されている。電線は、これらの導入孔30に導入された後、上記ノズル28を通って繰出されるようになっている。
【0023】
ノズル28は、1本の電線が通過できるスリット31を設けて対置された一対のプレート28a、28bを有し、電線の通過する経路の出入口の上下部分に、合計4つのガイドローラ32が配設されている。これらのガイドローラ32は、電線の導出入部における摩擦を軽減させて、電線の絶縁被覆の損傷を回避する役割をなす。
そして、上述したように、エアシリンダ27によってアーム26が軸方向に移動することにより、ノズル28は、巻枠40に近接したり、遠ざかったりするように、進退動作する。また、上記モータ23の作動により昇降ブロック20が昇降動作することにより、ノズル28も昇降動作する。
【0024】
天板14には、巻枠40が垂下して回転可能に支持されている。すなわち、巻枠40は、天板14上に設置された巻枠回転モータ41と、この巻枠回転モータ41の駆動プーリに張設された回転ベルト42を介して回転する回転板43に取付けられている。
【0025】
図5を併せて参照すると、回転板43には、断面T字状の第1ブラケット44が取付けられており、この第1ブラケット44に前方巻枠46が蟻溝嵌合して、ボルト45によって固着されている。
また、同じく断面T字状の第2ブラケット49が、回転板43の下面に取付けられた支持板47に、支軸48を介して揺動可能に取付けられている。そして、この第2ブラケット49に後方巻枠51が蟻溝嵌合して、ボルト50によって固着されている。
【0026】
更に、回転板43は、前記巻枠回転モータ41によって回転する回転筒52の下端に連結されており、この回転筒52及び回転板43を貫通してスライド軸53が挿通されている。このスライド軸53の下端には、十字状に延出された羽根からなるコイル落し板54が取付けられている。そして、図1に示すエアシリンダ55の作動によって、上記スライド軸53が軸方向に移動し、コイル落し板54が昇降動作するようになっている。コイル落し板54の昇降動作は、巻線時における上昇した位置と、後記図6における巻枠クランプを開放させる位置と、コイル落しを行う位置の3つの位置で停止できるようになっている。
【0027】
前方巻枠46及び後方巻枠51には、上記コイル落し板54が挿通されるスリット56、57が設けられ、前方巻枠46及び後方巻枠51は、該スリットによって左右に分かれた部材でそれぞれ構成されている。また、前方巻枠46には、後述するトランスファツールのガイド棒が挿入される溝58が形成されている。
後方巻枠51を支持する第2ブラケット49の上面は、支軸48を頂点とする山形の傾斜面60をなし、この傾斜面60にスプリング61で押圧されたローラ62が圧接されている。このローラ62は、スプリング61とは反対の方向に伸びるボルト軸63に連結されており、このボルト軸63に外的負荷がかからない状態では、ローラ62が傾斜面60に圧接されて、第2ブラケット49がほぼ水平状態に支持され、したがって後方巻枠51が垂下した状態に支持されるようになっている。
【0028】
また、天板14の下面には、ブラケット65を介してエアシリンダ64が設置されており、後方巻枠51が所定の回動位置にあるとき、エアシリンダ64の作動ロッド66がボルト63に対向配置されるようになっている。そして、エアシリンダ64の作動によって作動ロッド66が押出されると、ボルト63が押されてローラ62が傾斜面60を下る方向に移動し、後方巻枠51が図5中の想像線で示すように内側に倒れ込むことが可能とされる。
【0029】
後方巻枠51の外周面は、下方に向かうほど回転軸心に近づくように縮径したテーパ面71と、このテーパ面71の下端から回転軸心と平行に伸びる垂直面72とを有している。そして、テーパ面71にはゴム膜が貼り付けられており、巻線された電線が、コイル落し板54で強制的に払い落されるまでは、後方巻枠51に巻き付いた状態を維持するようにしている。なお、ゴム膜の材質は、天然ゴム、各種の合成ゴムなど、滑り止め作用と耐摩耗性を有するものであれば、いずれも使用することができる。
【0030】
更に、後方巻枠51の外周面は、図5(c)に示すように、底面側から見たとき、後方巻枠51の上部においては、両角部が大きな曲率の円弧51aをなし、これらの円弧51aが連結されて全体として一つの半円状をなしており、後方巻枠51の下部においては、両角部が小さい曲率の円弧51bをなし、中間が平面51cをなしている。
【0031】
また、後方巻枠51の、スリット57によって分割された左右の部材には、それらの下端に巻枠クランプ73、74が設けられている。図6に示すように、左右の巻枠クランプ73、74は、同じ構造からなっており、外側の固定片75と、この固定片75に対して内側から接離する可動片76とを有し、固定片75と可動片76との間に電線を挟持するようになっている。
【0032】
可動片76の背面部には、支軸77で回動可能に支持されたレバー78の一端が枢着されている。また、レバー78の他端は、ロッド79の下端に枢着されている。左右のロッド79は、図5(b)に示すように、板67によって連結されており、かつ、スプリング68によって、常時下方に付勢されている。そして、この板67の下方に、コイル落し板54が配置されており、コイル落し板54が上昇した位置では、上記板67がコイル落し板54によって押し上げられ、ロッド79が上昇した位置となる。また、コイル落し板54が下降すると、スプリング68の付勢力によって、ロッド79も下降するようになっている。
【0033】
図6(a)は、コイル落し板54が上昇した位置にあって、ロッド79がコイル落し板54によって押上げられた状態を示し、この状態ではリンク78が図中時計方向に回動しようとするため、可動片76が固定片75に押し付けられる状態となる。
また、図6(b)は、コイル落し板54が所定位置まで下降し、ロッド79がスプリング68によって下降した状態を示し、この状態ではリンク78が反時計方向に回動するため、可動片76が固定片75から離れた状態となる。
電線は、後述するグリッパによって、図6(b)に示す状態で固定片75と可動片76との隙間に挿入され、図6(a)に示す状態にすることにより、固定片75と可動片76との間にクランプされるようになっている。
【0034】
図7を併せて参照すると、上記巻枠40に対向して、テーブル12上には、トランスファーツール(本発明における電線保持治具に該当)80が配置されている。トランスファーツール80は、ステータコアの内歯に対応して立設された複数本のガイド棒81を有している。なお、ガイド棒81は、ステータコアの全ての内歯に対応して設けられる必要はなく、少なくともコイルを挿入しようとするスロットの両側に位置する内歯に対応して設けられていればよい。
【0035】
図8に示すように、ガイド棒81の先端部には、拡径したキャップ82が装着されており、キャップ82の中間部に形成された拡径部82aが隣接するキャップ82に当接して、ガイド棒81どうしの間隙に挿入されたコイルを抜け止めするようになっている。
ガイド棒81は、円板83上に立設されている。円板83には、支軸84が連結されている。支軸84は、図2に示すテーブル12の下方に配置されたエアシリンダ92によって軸方向にスライドし、それによってトランスファーツール80が昇降動作するようになっている。
【0036】
また、円板83の下方であって支軸84の外周には、回転テーブル85が同心的に配置されている。回転テーブル85の下面中央には、回転筒86が連結されている。回転筒86は、ベアリングを内蔵する軸受87によって回転可能に支持されている。更に、軸受87は、スライドベース88に設置されており、スライドベース88は、スライドレール89に沿って水平移動可能に支持されている。
図2に示すように、テーブル12上には、ボールネジ91が水平方向に配設されており、このボールネジ91は、同じくテーブル12上に設置された水平移動モータ90によって回転するようになっている。そして、ボールネジ91は、上記スライドベース88に螺合しており、水平移動モータ90によってボールネジ91が回転すると、スライドベース88が水平移動するようになっている。
【0037】
また、テーブル12の下方には、トランスファーツール回転モータ93が設置されており、このモータ93に連動するベルト94を介して、上記回転筒86と共に回転テーブル85が回転するようになっている。なお、回転筒86に挿通された支軸84は、回転筒86に対して、軸方向には移動可能で、回転方向には一体に回転するように、キーやスプライン嵌合により連結されている。
【0038】
回転テーブル85の周縁部には、周方向に対向して合計2つのリード線クランプ100が設置されている。また、回転テーブル85が所定の回動位置にあるときに、これらのリード線クランプ100の下方に位置するように、テーブル12上にはクランプ解除装置101が設置されている。
リード線クランプ100は、図9に示すように、回転テーブル85から立設された筒状の支柱102と、この支柱102の上端に連結された上方に向けて開いたコ字状の枠体103とを有している。筒状の支柱102内には、スライド軸104が挿通されている。スライド軸104の中間にはブロック105が固着されており、このブロック105から立設された2本のガイド棒106が、支柱102の上部に軸方向摺動可能に挿入されている。
【0039】
ガイド棒106及びスライド軸104の外周には、上記ブロック105と上記支柱102の上部との間に介装される圧縮コイルバネ107、108が配置されており、スライド軸104を常時、軸方向下方に付勢している。なお、ブロック105には、ハンドル109が取付けられ、このハンドル109は、支柱102のスリット状の開口を通して外部に突出しており、スライド軸104を手動で上下できるようになっている。
スライド軸104の上端は、枠体103の内側に配置されたリンクケース110に挿入され、このリンクケース110から延出された支軸を介してブロック111が配置されている。ブロック111に形成されたクランプ面112と、枠体103の一方の端部内面に形成されたクランプ面113との間に、図示しない電線が挟持されるようになっている。
【0040】
すなわち、スライド軸104が圧縮コイルバネ107、108に抗して上昇すると、リンクケース110内に設けられた図示しないリンク機構によって、ブロック111が図9中の左方向に移動し、クランプ面112、113が開くようになっている。また、スライド軸104に外力が作用しない状態では、スライド軸104が圧縮コイルバネ107、108によって下方に移動し、リンクケース110内に設けられた図示しないリンク機構によって、ブロック111が図9中の右方向に移動し、クランプ面112、113が閉じるようになっている。
【0041】
スライド軸104は、回転テーブル85の下面から突出しており、その下端にはフランジ115が連結されている。そして、クランプ解除装置101は、回転テーブル85が所定の回動位置にあるとき、上記リード線クランプ100の下方に配置されるように、テーブル12上に設置されている。クランプ解除装置101は、内蔵するエアシリンダによって昇降動作する押上げ板116を有し、この押上げ板116が上昇すると、スライド軸104が圧縮コイルバネ107、108に抗して上昇し、クランプ面112、113が開くようになっている。
【0042】
図2に示すように、巻枠40の背面側には、本発明の電線受け渡し手段に相当するグリッパ120が、上下、左右及び前後に移動可能に配設されている。この移動機構に関する詳細な説明は省略するが、上下、左右及び前後のいずれもモータで回転するボールネジ駆動によるスライド機構からなっている。
このグリッパ120は、図10に示すような構造をなしている。図において121は、上記移動機構に連設されたグリッパ本体であり、この本体121に一対の回動アーム122が、支軸123を介して、回動可能に取付けられている。これらの回動アーム122は、本体121の後部に取付けられた開閉エアシリンダ124の作動により、図示しないリンク機構を介して、同図(a)、(b)に示すように開閉動作するようになっている。
【0043】
また、各回動アーム122の先端には、それぞれクランプ部140が取付けられている。クランプ部140は、側方から見た断面がL字状の支持部材126を有し、この支持部材126の端部127は、上方に立ちあがっている。
更に、支持部材126上には、可動部材128が装着されており、この可動部材128は、回動アーム122上に設置されたエアシリンダ130の作動ロッド131に連結されたリンク132、133を介して、支持部材126の端部127内面に接離するように動作する。
【0044】
図11に示すように、並列した複数本の電線Wは、可動部材128の端部129と、支持部材126の端部127との間に、挟持される。この場合、エアシリンダ130は、同図(a)に示すように電線Wを固定できるように挟持した状態と、同図(b)に示すように電線Wを開放することなく線方向に摺動可能に挟持した状態と、同図(c)に示すように電線Wを開放できるように開いた状態の3段階の開閉状態を取り得るように動作する。
また、支持部材126の端部127の上端127aと、可動部材128の端部129の上端129aとは、上記(a)、(b)の状態で、互いに当接又は嵌合し、電線Wが抜けてしまわないようにされている。上記支持部材126の上端127aと、可動部材128の上端129aとが、電線Wの抜け止め部を構成している。
【0045】
図1に示すように、巻枠40の側方には、天板14から垂下するカッター160が取付けられている。このカッター160は、図13に示すように、天板14に立設した支持板161と、この支持板161に固着されたブロック162と、このブロック162に取付けられた昇降用エアシリンダ163と、ブロック162を上下に貫通する一対のガイド棒164を介して昇降可能に取付けられた昇降ベース165と、この昇降ベース165に取付けられたカッター本体166と、カッター本体166に設けられた刃部167とからなる。昇降用エアシリンダ163の作動ロッドは、昇降ベース165に連結されており、昇降用エアシリンダ163の作動によって昇降ベース165及びカッター本体166が昇降動作する。また、カッター本体166は、エアシリンダを内蔵しており、刃部167を開閉動作させる。
【0046】
図2に示すように、巻枠40の背面側には、天板14の下面に支持された引張装置170が設けられている。この引張装置170は、図12に示すように、天板14の下面にブラケット171を介して取付けられた第1エアシリンダ172を有している。第1エアシリンダ172の作動ロッド173は、巻枠40の方向に向けて水平方向に伸縮動作し、その先端には第2エアシリンダ174が取付けられている。そして、第2エアシリンダ174の作動ロッド175は、垂直方向下方に延出されており、この作動ロッド175の下端に引き掛けプーリ176が取付けられている。
【0047】
次に、図14〜26を参照して、この巻線装置10を用いた巻線工程について説明する。なお、工程順に(a)〜(x)の符号を付している。各工程図において、アルファベットの後に1が付いた図は正面図であり、2が付いた図は平面図である。以下、上記工程に従って、巻線操作を説明する。
【0048】
1)図14(a1)工程
トランスファーツール80を回転テーブル85上に設置し、巻線装置10を起動する。なお、電線Wは、予めグリッパ120に保持させておく。
【0049】
2)図14(b1)(b2)工程
グリッパ120で電線W(リード線)をノズル20から引き出し、リード線クランプ100に電線Wをクランプさせる。
【0050】
その際、まず、図11(b)に示すように、可動部材128の端部129と、支持部材126の端部127とが、電線Wを開放することなく線方向に摺動可能な状態に開く(以下、この状態を「半開き状態」とする)。
そして、図10(a)に示すように、回動アーム122を回動させてクランプ部140をY字状に開く。その結果、電線Wは、Y字状に開いたクランプ部140の間に平行に並んで保持される。
【0051】
次に、可動部材128の端部129と、支持部材126の端部127とが、図11(a)に示すように、電線Wを固定するように挟持する(以下、この状態を「固定状態」とする)。この状態で、グリッパ120を移動させて、Y字状に開いたクランプ部140の間にリード線クランプ100を導入する。
このとき、図9に示すように、リード線クランプ100は、クランプ解除装置101の上方にあり、クランプ解除装置101の押上げ板116が上昇して、スライド軸104が押上げられ、クランプ面112、113が開いた状態となっている。
【0052】
そして、グリッパ120が移動して、Y字状に開いたクランプ部140の間に平行に並んで保持された電線Wを、リード線クランプ100の上記クランプ面112、113の隙間に電線Wを挿入すると、クランプ解除装置101の押上げ板116が下降し、スライド軸104が圧縮コイルバネ107、108によって下方に移動し、クランプ面112、113が閉じて電線Wを把持する。
次いで、グリッパ120の端部129と、支持部材126の端部127とが、図11(c)で示すように開き(以下、この状態を「開放状態」とする)、グリッパ120を下降させて電線Wを上記端部129、127の隙間から開放する。
【0053】
3)図15(c1)(c2)工程
トランスファーツール80を載置した回転テーブル85が回転し、電線Wを張り、グリッパ120で電線Wを把持する。このとき、グリッパ120のクランプが固定状態に閉じて、電線Wをしっかりと挟持する。
【0054】
4)図15(d1)(d2)工程
グリッパ120のクランプが半開き状態に開くと共に、クランプ部140がY字状に開く。その結果、電線Wはクランプ部140の間に平行に並んで保持される。その状態で、グリッパ120のクランプを再び固定状態に閉じ、巻枠40の後方巻枠51の一方の巻枠クランプ74に挿入する。
このとき、巻枠40のコイル落し板54が巻枠クランプ開放位置まで下降して、巻枠クランプ74は開いた状態になっている。そして、グリッパ120のY字状に開いたクランプ部140によって平行に並んで保持された電線Wが、そのままの形でクランプ74に挿入される。そして、コイル落し板54が上昇して巻枠クランプ74が閉じ、グリッパ120が開放状態に開いて、電線Wを巻枠クランプ74に残して開放する。
【0055】
なお、電線Wのリード線クランプ100に連結された方が、後方巻枠51の外周面から突出し、電線Wのノズル28に連結された方が、巻線方向によって前方巻枠46がこれから移動しようとする方向の側面側を通るように、電線Wを巻枠クランプ74に保持させるようになっている。
【0056】
5)図16(e1)(e2)工程
回転テーブル85と共に、リード線クランプ100、トランスファーツール80及び巻枠40が同期して回転し、巻き始め位置にセットされ、アーム26が突出して、ノズル28が巻枠40に近接する。
【0057】
6)図16(f1)(f2)工程
ボールネジ24(図3参照)の回転により、ノズル28を徐々に上昇させながら、リード線クランプ100、トランスファーツール80及び巻枠40を同期して回転させる。その結果、電線Wは、巻枠40の外周に下方から上方に向かいながら整列して巻き付けられ、1極目のコイルC1が形成される。
なお、巻線開始の際、前方巻枠46が移動する方向の側面側に、電線Wの後方巻枠51の内周から突出してノズル28に至る部分が当接し、前方巻枠46の外周に巻き付き、次いで後方巻枠51の外周に巻き付いて、1周目のループが形成される。このため、電線Wの1周目のループの周長や形状を、2周目以降のループの周長や形状とそれほど変わらない自然な形状とすることができる。
【0058】
また、巻枠40の後方巻枠71のテーパ面71には、ゴム膜が貼り付けられているので、巻き付けられた電線Wが巻線操作中に滑り落ちてしまうことがない。また、後方巻枠71のテーパ面71によって、コイルC1は、上方に向かうほどループ長が大きくなるように形成される。更に、上方のコイルほど両角部が大きな曲率半径の円弧を描くループとなっており、下方のコイルほど両角部が小さな曲率半径の円弧を描くループとなっている。更にまた、ノズル28が巻枠40に近接して巻線がなされるので、ノズル28から並列して送り出される電線Wが、整列した状態で巻枠40に巻き付きやすくなっている。
【0059】
7)図17(g1)(g2)工程
こうして1極目のコイルC1の巻線が終了したら、ボールネジ92(図2、7参照)の回転により、トランスファーツール80をスライドさせ、その対応するガイド棒81を、前方巻枠46の溝58(図5参照)に位置合わせする。
【0060】
8)図17(h1)(h2)工程
この状態で、支軸84(図7参照)が上昇し、トランスファーツール80が上昇して、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入される。それと同時に、エアシリンダ64の作動ロッド66が押出され、ボルト軸63を介してローラ62が第2ブラケット49の傾斜面60を移動して、後方巻枠51が傾き(図5参照)、エアシリンダ55の作動によってスライド軸53を介してコイル落し板54が下降し(図1参照)、1極目のコイルC1がトランスファーツール80のガイド棒81の間隙に落し込まれる。
また、グリッパ120が移動して、ノズル28と巻枠40との間に張設された電線Wを把持し、所定長さ引き出して渡り線の長さを調節する。
【0061】
9)図18(i1)(i2)工程
支軸84が再び下降して、トランスファーツール80が下降する。こうして1極目のコイルC1がトランスファーツール80に移される。
次に、グリッパ120のクランプ部140が半開き状態となってY字状に開き、再び固定状態に閉じて、クランプ部140の間で電線Wが平行に並んだ状態にする。
この状態で、グリッパ120が後方巻枠51の巻枠クランプ73に移動し、平行に並んだ電線Wを前回とは異なる巻枠クランプ73(1極目のときは巻枠クランプ74)に挿入する。巻枠クランプ73は、電線Wを受け入れる際には、コイル落し板54が巻枠クランプ開放位置まで下降して開いた状態にあり、電線Wを受け入れると、コイル落し板54が上昇して閉じる。
【0062】
電線Wが巻枠クランプ73に保持されると、グリッパ120のクランプが開放状態となり、電線Wを巻枠クランプ73に残して移動する。
なお、電線Wの1極目のコイルC1に連続する方が、後方巻枠51の外周面から突出し、電線Wのノズル28に連結された方が、2極目のコイルの巻線方向によって前方巻枠46がこれから移動しようとする方向の側面側を通るように、電線Wを巻枠クランプ74に保持させるようになっている。
そして、ボールネジ91(図2、7参照)の回転により、トランスファーツール80が再びスライドして、巻枠40と同心的に配置される。
【0063】
10)図18(j1)(j2)工程
この状態で、回転テーブル85と共に、リード線クランプ100、トランスファーツール80及び巻枠40が、所定角度回転して巻線開始位置にセットされた後、前回の巻線方向と反対方向に同期して回転し、ノズル28を徐々に上昇させながら、巻線を行う。
【0064】
なお、巻線開始の際、前方巻枠46が移動する方向の側面側に、電線Wの後方巻枠51の内周から突出してノズル28に至る部分が当接し、前方巻枠46の外周に巻き付き、次いで後方巻枠51の外周に巻き付いて、1周目のループが形成される。このため、電線Wの1周目のループの周長や形状を、2周目以降のループの周長や形状とそれほど変わらない自然な形状とすることができる。
また、巻線時においては、前記と同様に、アーム26が突出してノズル28が巻枠40に近接するのであるが、便宜上、以下の記載ではその説明を省略することにする。
【0065】
11)図19(k1)(k2)工程
こうして2極目のコイルC2の巻線が終了する。
【0066】
12)図19(l1)(l2)工程
トランスファーツール80が再びスライドして、対応するガイド棒81を、前方巻枠46の溝58(図5参照)に位置合わせする。
【0067】
13)図20(m1)(m2)工程
この状態で、トランスファーツール80が上昇して、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入される。それと同時に、前述した駆動機構により、後方巻枠51が傾いて、コイル落し板54が下降し、2極目のコイルC2がトランスファーツール80のガイド棒81の間隙に落し込まれる。
また、グリッパ120が移動して、ノズル28と巻枠40との間に張設された電線Wを把持し、所定長さ引き出して渡り線の長さを調節する。
【0068】
14)図20(n1)(n2)工程
トランスファーツール80が再び下降する。また、グリッパ120のクランプ部140が半開き状態となってY字状に開き、再び固定状態に閉じて、クランプ部140の間で電線Wが平行に並んだ状態にする。その状態で、グリッパ120が後方巻枠51の巻枠クランプ74に移動し、平行に並んだ電線Wを巻枠クランプ74に挿入して保持させる。
そして、トランスファーツール80が再びスライドして、巻枠40と同心的に配置され、3極目のコイルC3の巻線が開始される。
【0069】
15)図21(o1)(o2)工程
以後、前記と同様な工程を繰り返して、3極目のコイルC3及び4極目のコイルC4を形成する。図21(o1)(o2)は、4極目のコイルC4の巻線が終了した状態を示している。
【0070】
16)図21(p1)(p2)工程
4極目のコイルC4の巻線が終了したら、トランスファーツール80を再びスライドして、対応するガイド棒81を、前方巻枠46の溝58(図5参照)に位置合わせする。
また、巻枠40とノズル28との間の電線Wを、グリッパ120で保持して引き寄せると共に、引張装置170(図12参照)の引き掛けプーリ176で電線Wを引き掛け、所望の長さ引き出す。
【0071】
17)図22(q1)(q2)工程
トランスファーツール80が上昇し、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入される。それと同時に、コイル落し板54が下降し、4極目のコイルC4がトランスファーツール80のガイド棒81の間隙に落し込まれる。
また、同時にグリッパ120が下降し、引張装置170の引き掛けプーリ176に引き掛けられた電線W(渡り線)が下方に落ちる。
【0072】
18)図22(r1)(r2)工程
トランスファーツール80が下降し、グリッパ120が電線Wを後方巻枠51の巻枠クランプ74に受け渡す。
そして、トランスファーツール80が再びスライドして、巻枠40と同心的に配置され、5極目のコイルC5の巻線が開始される。
なお、図21、22の工程は、4極目のコイルと5極目のコイルとの間でリード線を取出す必要がある場合など、巻線途中での渡り線を長くすることが必要な場合に動作させればよく、そのような必要がない場合には、図21、22の工程は省略することができる。
【0073】
19)図23(s1)(s2)工程
以後、前記と同様な工程を繰り返して、最終極(8極目)のコイルC8まで形成する。図23(s1)(s2)は、8極目のコイルC8の巻線が終了した状態を示している。
この状態で、グリッパ120が、巻枠40とノズル28との間の電線Wを保持して引き寄せると共に、引張装置170(図12参照)の引き掛けプーリ176で電線Wを引き掛け、所望の長さ引き出す。
【0074】
20)図23(t1)(t2)工程
トランスファーツール80が上昇し、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入される。また、グリッパ120がノズル28の近傍まで移動し、グリッパ120のクランプ部140が半開き状態となってY字状に開き、再び固定状態に閉じる。
【0075】
21)図24(u1)(u2)工程
グリッパ120の側方位置に向かって、カッター160(図13参照)が下降し、刃部167が開いて電線Wを導入した後、刃部167が閉じて電線Wをカットする。
【0076】
22)図24(v1)(v2)工程
巻枠40のコイル落し板54が下降して、最終極のコイルC8がトランスファーツール80のガイド棒81の隙間に落し込まれる。
【0077】
23)図25(w1)(w2)工程
トランスファーツール80が下降して、最初にトランスファーツール80をセットした位置(作業者の取出し位置)までスライドする。これでコイル巻線作業の1サイクルが終了する。
【0078】
24)図25(x1)工程
トランスファーツール80を取り外し、図示しないコイル挿入治具に、巻線されたコイルC1〜C8を移し替え、後は常法に従って、コイル挿入装置によりステータコアへのコイル挿入がなされる。なお、トランスファーツールに替えてコイル挿入治具を用い、コイル挿入治具に巻線されたコイルを直接落し込むこともできる。
【0079】
なお、図26は、上記の工程で巻線されたコイルC1〜C8の状態を示す平面図である。図において、W1は電線の巻き始めの端部、W2は電線の巻き終わりの端部、W3は電線の中間引き出し部である。電線Wの巻き始め及び巻き終わりのリード線や、各コイルの間の渡り線の長さを上記のように調節しておくことにより、ステータコアに挿入した後の、リード端子の接続工程などの作業性を飛躍的に改善することができる。
【0080】
ここで、巻線操作の始めに電線Wを後方巻枠51の巻枠クランプ73、74のいずれかにクランプさせるため、各コイルC1〜C8の1周目のループは、2周目以降のループ形状に対して、上記クランプ部において内周側にへこんだ形状になっているが、巻き方向によって巻枠クランプを選択したことにより、2周目以降のループの周長や形状とそれほど変わらない自然な形状となっている。
【0081】
図27は、上記巻線装置によって形成されたコイルCをトランスファーツール80からコイル挿入治具180に移し替える工程を示している。
同図(a)は、巻枠40に巻き付けられたコイルCをトランスファーツール80に挿入する前の状態を示し、この状態から前述したようにトランスファーツール80が上昇して、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入され、同図(b)に示すように、後方巻枠51が内側に倒れ込んで、前記コイル落し板54が下降してコイルCがガイド棒81の所定の間隙に落し込まれる。
【0082】
こうして、巻線操作が終了し、トランスファーツール80のガイド棒81の所定の間隙に必要数のコイルCが装着されたら、同図(c)に示すように、このトランスファーツール80のガイド棒81を、コイル挿入治具180の対応するブレード181に摺接させながら、トランスファーツール80を逆様にしてコイル挿入治具180に差し込み、トランスファーツール80に保持されたコイルCをコイル挿入治具180に移し替える。こうして同図(d)に示すように、コイルCがコイル挿入治具180のガイド棒81の所定の間隙に保持される。
【0083】
図28は、こうしてコイル挿入治具180に装着されたコイルCをステータコア190のスロット192に挿入する状態を示している。
すなわち、コイルCをコイル挿入治具180に移し替えると、同図(a)に示すように、トランスファーツール80に保持されていたときとは逆になるため、下方のコイルC’ほどループが大きく、上方のコイルC”ほどループが小さくなる。また、下方のコイルC’ほど円弧に近い形状で、上方のコイルC”ほど角張った形状のループとなる。
【0084】
そして、このコイルCをコイル挿入装置によってステータコア190に挿入すると、同図(b)に示すように、コイル挿入治具180に保持されていたときに下方に位置していたコイルC’は、スロット192の開口部側に配置され、また、コイル挿入治具180に保持されていたときに上方に位置していたコイルC”はスロット192の奥側に配置される。
その結果、ステータコア190の端面から突出するコイルエンドは、スロット192の奥側に位置するものが短く、スロット192の開口部側に位置するものが長く突出する。このため、後のコイルエンド成形工程における成形がしやすくなり、コイルエンドをコンパクトに成形できる。
【0085】
また、スロット192の奥側に位置するコイルC”は、角ばった形状をなすことにより、ステータコア190の内歯191の外周にフィットした形状になり、スロット192の開口部側に位置するものは円弧状をなすことにより、ブレード181の先端がループの内側を通り抜けるのに必要な高さを確保しながら、コイルエンドの長さをできるだけ短くするのに寄与する。
【0086】
図29は、トランスファーツール80の代わりに、コイル挿入治具180を電線保持具として用い、巻線されたコイルCをコイル挿入治具180に直接落し込む別の実施形態を示している。
同図(a)に示すように、この実施形態では、巻枠40の後方巻枠51のテーパ面71が、前記実施形態とは逆に、上方に向かうほど縮径する形状に形成されている。このため、巻枠40に巻き付けられたコイルCは、上方に向かうほどループが小さくなっている。
【0087】
この状態で、コイル挿入治具180が上昇して、所定のブレード181が前方巻枠46の溝58に挿入され、同図(b)に示すように、後方巻枠51が内側に倒れ込んで、コイル落し板54が下降してコイルCがブレード181の所定の間隙に落し込まれる。
こうして、同図(c)に示すように、巻線されたコイルCをコイル挿入治具180のブレード181の所定の間隙に直接落し込むことができ、それによってトランスファーツールからの移し替え工程を省略することもできる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数本の電線を並列して巻枠に巻き付けてコイルを形成するようにした巻線装置において、巻枠に左右一対の巻枠クランプを設け、巻枠の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプを選択するようにしたので、巻き始めの最初のループが、できるだけ他のループと同じ周長及び形状となるようにクランプ位置を選択することができる。このため、コイル挿入時に、1周目のループが突っ張ったりすることを軽減でき、電線の絶縁被覆の損傷を防止すると共に、後のコイル挿入操作を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による巻線装置の全体を示す正面図である。
【図2】同巻線装置の側面図である。
【図3】同巻線装置におけるノズル及び巻枠を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】同巻線装置におけるノズル付近を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【図5】同巻線装置における巻枠を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は底面図である。
【図6】同巻枠のクランプ部を示し、(a)は閉じた状態の部分拡大図、(b)は開いた状態の部分拡大図、(c)は部分断面図である。
【図7】同巻線装置におけるトランスファーツール及びテーブルを示し、(a)は平面図、(b)は平面図である。
【図8】同巻線装置におけるトランスファーツールのガイド棒の先端部分を示す部分拡大図である。
【図9】同巻線装置におけるリード線クランプを示し、(a)は断面図、(b)は正面図である。
【図10】同巻線装置におけるグリッパを示し、(a)はクランプ部を開いた状態の平面図、(b)はクランプ部を閉じた状態の平面図、(c)は側断面図である。
【図11】同グリッパのクランプ部の先端を示し、(a)は電線を把持した固定状態を示す説明図、(b)は電線を摺動可能に保持した半開放状態を示す説明図、(c)電線を開放するために開いた状態を示す説明図である。
【図12】同巻線装置における引張装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は引き掛けプーリを下降させた状態を示す側面図である。
【図13】同巻線装置におけるカッターを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図14】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図15】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図16】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図17】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図18】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図19】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図20】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図21】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図22】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図23】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図24】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図25】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図26】同巻線装置により巻線したコイルを示す平面図である。
【図27】同巻線装置によって形成されたコイルCをトランスファーツール80からコイル挿入治具180に移し替える工程を示し、(a)はコイルが巻線された状態を示す説明図、(b)はコイルがトランスファーツールに落し込まれる状態を示す説明図、(c)はコイルをトランスファーツールからコイル挿入治具に移し替える状態を示す説明図、(d)はコイルをコイル挿入治具に装着した状態を示す説明図である。
【図28】同巻線装置によって形成されたコイルをコイル挿入治具に移してステータコアのスロットに挿入する状態を示し、(a)はコイル挿入治具に移した状態を示す側面図、(b)はコイルをステータコアに挿入した状態を示す断面図、(c)ステータコアに挿入した状態を示す平面図である。
【図29】トランスファーツールの代わりに、コイル挿入治具を電線保持具として用い、巻線されたコイルをコイル挿入治具に直接落し込む別の実施形態を示し、(a)はコイルが巻線された状態を示す説明図、(b)はコイルをコイル挿入治具に落し込む状態を示す説明図、(c)はコイルをコイル挿入治具に装着した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 巻線装置
11 基台
12 テーブル
13 縦フレーム
14 天板
20 昇降ブロック
21、22 ガイド棒
23 モータ
24 ボールネジ
25 ガイドプーリ
26 アーム
27 エアシリンダ
28 ノズル
28a、29b プレート
29 ガイドプレート
30 電線導入孔
31 スリット
32 ガイドローラ
40 巻枠
41 巻枠回転モータ
42 回転ベルト
43 回転板
44 第1ブラケット
45 ボルト
46 前方巻枠
47 支持板
48 支軸
49 第2ブラケット
50 ボルト
51 後方巻枠
52 回転筒
53 スライド軸
54 コイル落し板
55 エアシリンダ
56、57 スリット
58 溝
60 傾斜面
61 スプリング
62ローラ
63 ボルト軸
64 エアシリンダ
65 ブラケット
66 作動ロッド
71 テーパ面
72 垂直面
73、74 巻枠クランプ
75 固定片
76 可動片
77 支軸
78 レバー
79 ロッド
80 トランスファーツール
81 ガイド棒
82 キャップ
83 円板
84 支軸
85 回転テーブル
86 回転筒
87 軸受
88 スライドベース
89 スライドレール
90 水平移動モータ
91 ボールネジ
92 エアシリンダ
93 回転モータ
94 ベルト
100 リード線クランプ
101 クランプ解除装置
102 支柱
103 枠体
104 スライド軸
105 ブロック
106 ガイド棒
107、108 圧縮コイルバネ
109 ハンドル
110 リンクケース
111 ブロック
112、113 クランプ面
115 フランジ
116 押上げ板
120 グリッパ
121 本体
122 回転アーム
123 支軸
124 開閉エアシリンダ
126 支持部材
127 端部
127a 上端
128 可動部材
129 端部
129a 上端
130 エアシリンダ
131 作動ロッド
132、133 リンク
140 クランプ部
160 カッター
161 支持板
162 ブロック
163 昇降用エアシリンダ
164 ガイド棒
165 昇降ベース
166 カッター本体
167 刃部
170 引張装置
171 ブラケット
172 第1エアシリンダ
173、175 作動ロッド
174 第2エアシリンダ
176 引き掛けプーリ
W 電線
C コイル
C’ スロットの開口部側のコイル
C” スロットの奥側のコイル
C1 1極目目のコイル
C2 2極目のコイル
C3 3極目目のコイル
C4 4極目のコイル
C5 5極目目のコイル
C6 6極目のコイル
C7 7極目目のコイル
C8 8極目のコイル
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本の電線を並列して巻枠に巻き付けてコイルを形成するようにした巻線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステータコアにコイルを装着する方法としては、巻線装置によって巻枠上に電線を巻き付けてコイルを形成し、このコイルをステータコアの内歯に対応して配置された複数本のガイド棒を有する治具に保持させ、この治具がコイル挿入治具であるときはそのまま、この治具がトランスファー治具であるときはコイル挿入治具にコイルを移した後、コイル挿入治具をステータコアの内歯に嵌合させ、治具の中心を通るストリッパでコイルをステータコアのスロットに押し込んで装着するコイルインサーター方式がよく採用されている。
【0003】
近年、電気自動車などのモータの開発に際し、自動車に搭載可能な低電圧の電源によって大きな駆動力が得られるようにするため、電線の断面積を大きくして大電流を流すことにより、大きな駆動力が得られるようにしたモータが望まれている。しかしながら、電線の直径を大きくした場合には、巻線操作やステータコアへのコイル挿入操作が困難となると共に、ステータコアのスロット内における電線のスペースファクタ(空間占有率)も小さくなるという問題点があった。
【0004】
このため、複数本の電線を並列して巻いて(パラ巻きして)コイルを形成することにより、巻線操作やコイル挿入操作に支障をきたすことなく、電線の断面積を大きくする試みがなされている。そして、電線をパラ巻きする巻線装置としては、例えば特開平11−332184号公報、特開2000−134876号公報、特開2000−209822号公報に示される装置が知られている。
これらの巻線装置においては、巻枠に電線の巻き始め部分をクランプさせ、巻枠を回転させて複数本の電線を並列した状態で巻き付けてコイルを形成するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平11−332184号公報及び特開2000−134876号公報には、電線の巻き始め端部を巻枠にクランプさせるということしか実質的に記載されておらず、クランプ機構について詳細な説明はなされていない。また、上記特開2000−209822号公報に記載された巻線装置では、巻枠でのクランプ部は、1箇所にしか設けられていない。
【0006】
上記のような巻線装置において、複数極のコイルを連続して巻線しようとすると、各極毎に巻枠の回転方向を変えて巻かなければならない。このため、巻枠のクランプ部の位置を、巻枠の幅方向に対して偏って配置すると、巻き方向によって最初のループの周長や形状が変わってしまうという問題がある。
また、巻枠のクランプ部の位置を、巻枠の幅方向中央に設定すると、最初の1周目が内周側に大きくへこんだループになり、2周目以降のループの周長や形状と大きく違ってくるので、コイル挿入時に大きな摩擦抵抗がかかりやすくなるという問題がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、複数本の電線を並列して巻枠に巻き付けてコイルを形成する巻線装置において、各極毎に巻枠の回転方向を変えて複数極のコイルを連続して巻線する場合であっても、1周目のループ形状が2周目以降のループ形状に近くなり、コイル挿入時に強い摩擦がかからないようにした巻線装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、複数本の電線を並列して送り出すノズルと、これらの電線のクランプ部を有し、これらの電線を巻き付けさせるように回転する巻枠と、この巻枠の下方に配置され、ステータコアの内歯に対応して立設された複数本のガイド棒を有し、前記巻枠と同期して回転できる電線保持治具と、水平及び上下方向に移動できる電線受け渡し手段とを備えた巻線装置において、前記巻枠には、左右一対の巻枠クランプが設けられており、前記巻枠の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプが選択されるように構成されたことを特徴とする巻線装置を提供するものである。
【0009】
本発明によれば、巻枠に左右一対の巻枠クランプを設け、巻枠の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプを選択するようにしたので、巻線方向が変わった場合でも、巻き始めの最初のループが、できるだけ他のループと同じ周長及び形状となるようにクランプ位置を選択することができる。
このため、コイル挿入時に、1周目のループが短すぎて突っ張ったり、長すぎて飛び出したりすることを防止でき、電線の絶縁被覆の損傷を防止すると共に、後のコイル挿入操作を容易にすることができる。
【0010】
本発明の巻線装置においては、前記巻枠を支持して回転させる回転筒を貫通して、スライド軸が挿通されており、このスライド軸の下端にコイル落し板が設けられ、前記巻枠には前記コイル落し板が通過できるスリットが形成されており、前記コイル落し板が下降したときに前記巻枠クランプが開くように構成されていることが好ましい。
【0011】
上記態様によれば、電線の巻き始めをクランプさせるときと、巻枠に巻き付けられた電線を電線保持治具に落し込むときに、上記コイル落し板を下降させることにより、クランプを開くことができる。すなわち、クランプの開閉動作とコイル落し板の昇降動作とを同一の駆動源によって行わせることができ、駆動機構を簡略化することができる。
また、前記巻枠は、前記電線保持治具が上昇したときに、前記ガイド棒が挿入されるガイド溝が形成された前方巻枠と、この前方巻枠に対して所定間隔をおいて対置された後方巻枠とで構成され、前記後方巻枠は、巻線されたコイルを前記電線保持治具に落し込む際に、内側に倒れ込むことが可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
上記態様によれば、巻線されたコイルを電線保持治具に落し込む際に、後方巻枠が内側に倒れ込むことによって、巻線されたコイルを迅速かつスムーズに電線保持治具に落し込むことができる。
更に、前記後方巻枠の後方側面は、下端から所定の距離までは回転軸心と平行に伸びる垂直面をなし、それより上方においては次第に拡径するテーパ面をなしており、巻線操作の際に前記ノズルが徐々に上方に移動して巻線がなされるように構成されていることが好ましい。
【0013】
上記態様によれば、巻線開始時には、前記垂直面をなす部分に巻線がなされることによって、巻線中に電線が滑って落下してしまうことを防止でき、ある程度巻線された後は、前記テーパ面に沿って上方に移動しながら巻線がなされることによって、上方に向かって徐々にループ長が長くなるコイルを形成することができる。そして、電線保持治具としてトランスファーツールを用い、このコイルをトランスファーツールからコイル挿入治具に移し替えると、下方に向かって徐々にループが長くなる形態となる。そして、コイル挿入治具に移されたコイルをストリッパによってステータコアのスロットに挿入すると、内径側のコイルエンドが長く、外径側のコイルエンドが短くなって、全体としてコイルエンドが短くなると共に、成形しやすい形状にすることができる。
【0014】
また、上記態様において、前記後方巻枠の後方側面は、その水平断面形状において、下方部分は、両角部が比較的小さい曲率半径で面取りされた形状をなし、上方に向かうほど、前記両角部がより大きい曲率半径で面取りされた形状をなしていることが好ましい。
【0015】
この態様によれば、巻枠に巻き付けられて形成されるコイルの形状が、下方に向かうほど、ループ長が短く、かつ、両角部が小さい曲率半径で曲げられた形状をなし、上方に向かうほど、ループ長が長く、かつ、両角部が大きい曲率半径で曲げられた形状となる。そして、このコイルを電線保持治具からコイル挿入治具に移し替え、コイル挿入装置によってステータコアに挿入すると、ステータコアのスロットの奥側(ステータコアの外径側)に挿入されたコイルは、内歯に近接して矩形に近い形状で周回する形状となり、スロットの開口部側(ステータコアの内径側)に挿入されたコイルは、大きな曲率半径でステータコアの端面から大きく突出するように周回する形状となる。このような形状のコイルエンドは、コイル挿入を可能にすると共に、コイルエンドの長さを必要最小限にして無駄がなく、しかも成形しやすくすることができる。
【0016】
本発明の別の好ましい態様においては、前記後方巻枠の後方側面は、上方に向かうほど次第に縮径するテーパ面をなしており、巻線操作の際に前記ノズルが徐々に上方に移動して巻線がなされるように構成されている。
上記態様によれば、前記テーパ面に沿って上方に移動しながら巻線がなされることによって、上方に向かって徐々にループ長が短くなるコイルを形成することができる。このようなコイルであっても、後方巻枠が内側に倒れ込むことによって、電線保持治具に落し込むことができる。そして、電線保持治具としてコイル挿入治具を用いて、コイル挿入治具に直接コイルを落し込み、このコイルをストリッパによってステータコアのスロットに挿入すると、内径側のコイルエンドが長く、外径側のコイルエンドが短くなって、全体としてコイルエンドが短くなると共に、成形しやすい形状にすることができる。
【0017】
また、上記態様において、前記後方巻枠の後方側面は、その水平断面形状において、下方部分は、両角部が比較的大きい曲率半径で面取りされた形状をなし、上方に向かうほど、前記両角部がより小さい曲率半径で面取りされた形状をなしていることが好ましい。
【0018】
この態様によれば、巻枠に巻き付けられて形成されるコイルの形状が、下方に向かうほど、ループ長が長く、かつ、両角部が大きい曲率半径で曲げられた形状をなし、上方に向かうほど、ループ長が短く、かつ、両角部が小さい曲率半径で曲げられた形状となる。そして、このコイルをコイル挿入治具から、コイル挿入装置によってステータコアのスロットに挿入すると、ステータコアのスロットの奥側(ステータコアの外径側)に挿入されたコイルは、内歯に近接して矩形に近い形状で周回する形状となり、スロットの開口部側(ステータコアの内径側)に挿入されたコイルは、大きな曲率半径でステータコアの端面から大きく突出するように周回する形状となる。このような形状のコイルエンドは、コイル挿入を可能にすると共に、コイルエンドの長さを必要最小限にして無駄がなく、しかも成形しやすくすることができる。
【0019】
更にまた、前記後方巻枠の後方側面には、ゴム膜が貼り付けられていることが好ましい。
上記態様によれば、後方巻枠が上方に向かうほど拡径したテーパ面を有していても、巻枠に巻線されたコイルが、滑りにくいゴム膜によってしっかりと保持され、巻線作業中にコイルが落下してしまうことを防止できる。
【0020】
更にまた、前記ノズルは、前記巻枠が配置された方向に向けて進退可能に支持されており、巻線操作の際に、前記ノズルが前記巻枠に近接するように構成されていることが好ましい。
上記態様によれば、巻枠が回転して巻線操作がなされる際に、ノズルが巻枠に近接した位置にあるので、ノズルから並列して送り出される電線が、整列した状態で巻枠に巻き付きやすくなり、電線が整列して巻かれたコイルを形成することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1〜26には、本発明による巻線装置の一実施形態が示されている。
図1,2に示すように、この巻線装置10は、上面がテーブル12をなす基台11と、この基台11上に立設された縦フレーム13と、この縦フレーム13の上端に取り付けられた天板14とを有している。
テーブル12と天板14との一側方には、天板14から垂下する2本のガイド棒21、22に案内される昇降ブロック20が配設されている。この昇降ブロック20には、天板14に取付けられたモータ23によって回転するボールネジ24が螺合して貫通している。したがって、モータ23の作動によりボールネジ24を回転させることによって、昇降ブロック20はガイド棒21、22に沿って昇降動作する。
【0022】
図3、4を併せて参照すると、昇降ブロック20には、4つのガイドプーリ25が取付けられており、このガイドプーリ25に上下辺を支持されて水平方向に移動可能なアーム26が設けられている。このアーム26は、それと平行に配設されたエアシリンダ27によって軸方向に移動可能とされている。
このアーム26の先端には、複数本の電線を並列させて繰出すノズル28が取付けられている。また、昇降ブロック20の一端には、ガイドプレート29が装着されており、このガイドプレート29に複数の電線導入孔30が形成されている。電線は、これらの導入孔30に導入された後、上記ノズル28を通って繰出されるようになっている。
【0023】
ノズル28は、1本の電線が通過できるスリット31を設けて対置された一対のプレート28a、28bを有し、電線の通過する経路の出入口の上下部分に、合計4つのガイドローラ32が配設されている。これらのガイドローラ32は、電線の導出入部における摩擦を軽減させて、電線の絶縁被覆の損傷を回避する役割をなす。
そして、上述したように、エアシリンダ27によってアーム26が軸方向に移動することにより、ノズル28は、巻枠40に近接したり、遠ざかったりするように、進退動作する。また、上記モータ23の作動により昇降ブロック20が昇降動作することにより、ノズル28も昇降動作する。
【0024】
天板14には、巻枠40が垂下して回転可能に支持されている。すなわち、巻枠40は、天板14上に設置された巻枠回転モータ41と、この巻枠回転モータ41の駆動プーリに張設された回転ベルト42を介して回転する回転板43に取付けられている。
【0025】
図5を併せて参照すると、回転板43には、断面T字状の第1ブラケット44が取付けられており、この第1ブラケット44に前方巻枠46が蟻溝嵌合して、ボルト45によって固着されている。
また、同じく断面T字状の第2ブラケット49が、回転板43の下面に取付けられた支持板47に、支軸48を介して揺動可能に取付けられている。そして、この第2ブラケット49に後方巻枠51が蟻溝嵌合して、ボルト50によって固着されている。
【0026】
更に、回転板43は、前記巻枠回転モータ41によって回転する回転筒52の下端に連結されており、この回転筒52及び回転板43を貫通してスライド軸53が挿通されている。このスライド軸53の下端には、十字状に延出された羽根からなるコイル落し板54が取付けられている。そして、図1に示すエアシリンダ55の作動によって、上記スライド軸53が軸方向に移動し、コイル落し板54が昇降動作するようになっている。コイル落し板54の昇降動作は、巻線時における上昇した位置と、後記図6における巻枠クランプを開放させる位置と、コイル落しを行う位置の3つの位置で停止できるようになっている。
【0027】
前方巻枠46及び後方巻枠51には、上記コイル落し板54が挿通されるスリット56、57が設けられ、前方巻枠46及び後方巻枠51は、該スリットによって左右に分かれた部材でそれぞれ構成されている。また、前方巻枠46には、後述するトランスファツールのガイド棒が挿入される溝58が形成されている。
後方巻枠51を支持する第2ブラケット49の上面は、支軸48を頂点とする山形の傾斜面60をなし、この傾斜面60にスプリング61で押圧されたローラ62が圧接されている。このローラ62は、スプリング61とは反対の方向に伸びるボルト軸63に連結されており、このボルト軸63に外的負荷がかからない状態では、ローラ62が傾斜面60に圧接されて、第2ブラケット49がほぼ水平状態に支持され、したがって後方巻枠51が垂下した状態に支持されるようになっている。
【0028】
また、天板14の下面には、ブラケット65を介してエアシリンダ64が設置されており、後方巻枠51が所定の回動位置にあるとき、エアシリンダ64の作動ロッド66がボルト63に対向配置されるようになっている。そして、エアシリンダ64の作動によって作動ロッド66が押出されると、ボルト63が押されてローラ62が傾斜面60を下る方向に移動し、後方巻枠51が図5中の想像線で示すように内側に倒れ込むことが可能とされる。
【0029】
後方巻枠51の外周面は、下方に向かうほど回転軸心に近づくように縮径したテーパ面71と、このテーパ面71の下端から回転軸心と平行に伸びる垂直面72とを有している。そして、テーパ面71にはゴム膜が貼り付けられており、巻線された電線が、コイル落し板54で強制的に払い落されるまでは、後方巻枠51に巻き付いた状態を維持するようにしている。なお、ゴム膜の材質は、天然ゴム、各種の合成ゴムなど、滑り止め作用と耐摩耗性を有するものであれば、いずれも使用することができる。
【0030】
更に、後方巻枠51の外周面は、図5(c)に示すように、底面側から見たとき、後方巻枠51の上部においては、両角部が大きな曲率の円弧51aをなし、これらの円弧51aが連結されて全体として一つの半円状をなしており、後方巻枠51の下部においては、両角部が小さい曲率の円弧51bをなし、中間が平面51cをなしている。
【0031】
また、後方巻枠51の、スリット57によって分割された左右の部材には、それらの下端に巻枠クランプ73、74が設けられている。図6に示すように、左右の巻枠クランプ73、74は、同じ構造からなっており、外側の固定片75と、この固定片75に対して内側から接離する可動片76とを有し、固定片75と可動片76との間に電線を挟持するようになっている。
【0032】
可動片76の背面部には、支軸77で回動可能に支持されたレバー78の一端が枢着されている。また、レバー78の他端は、ロッド79の下端に枢着されている。左右のロッド79は、図5(b)に示すように、板67によって連結されており、かつ、スプリング68によって、常時下方に付勢されている。そして、この板67の下方に、コイル落し板54が配置されており、コイル落し板54が上昇した位置では、上記板67がコイル落し板54によって押し上げられ、ロッド79が上昇した位置となる。また、コイル落し板54が下降すると、スプリング68の付勢力によって、ロッド79も下降するようになっている。
【0033】
図6(a)は、コイル落し板54が上昇した位置にあって、ロッド79がコイル落し板54によって押上げられた状態を示し、この状態ではリンク78が図中時計方向に回動しようとするため、可動片76が固定片75に押し付けられる状態となる。
また、図6(b)は、コイル落し板54が所定位置まで下降し、ロッド79がスプリング68によって下降した状態を示し、この状態ではリンク78が反時計方向に回動するため、可動片76が固定片75から離れた状態となる。
電線は、後述するグリッパによって、図6(b)に示す状態で固定片75と可動片76との隙間に挿入され、図6(a)に示す状態にすることにより、固定片75と可動片76との間にクランプされるようになっている。
【0034】
図7を併せて参照すると、上記巻枠40に対向して、テーブル12上には、トランスファーツール(本発明における電線保持治具に該当)80が配置されている。トランスファーツール80は、ステータコアの内歯に対応して立設された複数本のガイド棒81を有している。なお、ガイド棒81は、ステータコアの全ての内歯に対応して設けられる必要はなく、少なくともコイルを挿入しようとするスロットの両側に位置する内歯に対応して設けられていればよい。
【0035】
図8に示すように、ガイド棒81の先端部には、拡径したキャップ82が装着されており、キャップ82の中間部に形成された拡径部82aが隣接するキャップ82に当接して、ガイド棒81どうしの間隙に挿入されたコイルを抜け止めするようになっている。
ガイド棒81は、円板83上に立設されている。円板83には、支軸84が連結されている。支軸84は、図2に示すテーブル12の下方に配置されたエアシリンダ92によって軸方向にスライドし、それによってトランスファーツール80が昇降動作するようになっている。
【0036】
また、円板83の下方であって支軸84の外周には、回転テーブル85が同心的に配置されている。回転テーブル85の下面中央には、回転筒86が連結されている。回転筒86は、ベアリングを内蔵する軸受87によって回転可能に支持されている。更に、軸受87は、スライドベース88に設置されており、スライドベース88は、スライドレール89に沿って水平移動可能に支持されている。
図2に示すように、テーブル12上には、ボールネジ91が水平方向に配設されており、このボールネジ91は、同じくテーブル12上に設置された水平移動モータ90によって回転するようになっている。そして、ボールネジ91は、上記スライドベース88に螺合しており、水平移動モータ90によってボールネジ91が回転すると、スライドベース88が水平移動するようになっている。
【0037】
また、テーブル12の下方には、トランスファーツール回転モータ93が設置されており、このモータ93に連動するベルト94を介して、上記回転筒86と共に回転テーブル85が回転するようになっている。なお、回転筒86に挿通された支軸84は、回転筒86に対して、軸方向には移動可能で、回転方向には一体に回転するように、キーやスプライン嵌合により連結されている。
【0038】
回転テーブル85の周縁部には、周方向に対向して合計2つのリード線クランプ100が設置されている。また、回転テーブル85が所定の回動位置にあるときに、これらのリード線クランプ100の下方に位置するように、テーブル12上にはクランプ解除装置101が設置されている。
リード線クランプ100は、図9に示すように、回転テーブル85から立設された筒状の支柱102と、この支柱102の上端に連結された上方に向けて開いたコ字状の枠体103とを有している。筒状の支柱102内には、スライド軸104が挿通されている。スライド軸104の中間にはブロック105が固着されており、このブロック105から立設された2本のガイド棒106が、支柱102の上部に軸方向摺動可能に挿入されている。
【0039】
ガイド棒106及びスライド軸104の外周には、上記ブロック105と上記支柱102の上部との間に介装される圧縮コイルバネ107、108が配置されており、スライド軸104を常時、軸方向下方に付勢している。なお、ブロック105には、ハンドル109が取付けられ、このハンドル109は、支柱102のスリット状の開口を通して外部に突出しており、スライド軸104を手動で上下できるようになっている。
スライド軸104の上端は、枠体103の内側に配置されたリンクケース110に挿入され、このリンクケース110から延出された支軸を介してブロック111が配置されている。ブロック111に形成されたクランプ面112と、枠体103の一方の端部内面に形成されたクランプ面113との間に、図示しない電線が挟持されるようになっている。
【0040】
すなわち、スライド軸104が圧縮コイルバネ107、108に抗して上昇すると、リンクケース110内に設けられた図示しないリンク機構によって、ブロック111が図9中の左方向に移動し、クランプ面112、113が開くようになっている。また、スライド軸104に外力が作用しない状態では、スライド軸104が圧縮コイルバネ107、108によって下方に移動し、リンクケース110内に設けられた図示しないリンク機構によって、ブロック111が図9中の右方向に移動し、クランプ面112、113が閉じるようになっている。
【0041】
スライド軸104は、回転テーブル85の下面から突出しており、その下端にはフランジ115が連結されている。そして、クランプ解除装置101は、回転テーブル85が所定の回動位置にあるとき、上記リード線クランプ100の下方に配置されるように、テーブル12上に設置されている。クランプ解除装置101は、内蔵するエアシリンダによって昇降動作する押上げ板116を有し、この押上げ板116が上昇すると、スライド軸104が圧縮コイルバネ107、108に抗して上昇し、クランプ面112、113が開くようになっている。
【0042】
図2に示すように、巻枠40の背面側には、本発明の電線受け渡し手段に相当するグリッパ120が、上下、左右及び前後に移動可能に配設されている。この移動機構に関する詳細な説明は省略するが、上下、左右及び前後のいずれもモータで回転するボールネジ駆動によるスライド機構からなっている。
このグリッパ120は、図10に示すような構造をなしている。図において121は、上記移動機構に連設されたグリッパ本体であり、この本体121に一対の回動アーム122が、支軸123を介して、回動可能に取付けられている。これらの回動アーム122は、本体121の後部に取付けられた開閉エアシリンダ124の作動により、図示しないリンク機構を介して、同図(a)、(b)に示すように開閉動作するようになっている。
【0043】
また、各回動アーム122の先端には、それぞれクランプ部140が取付けられている。クランプ部140は、側方から見た断面がL字状の支持部材126を有し、この支持部材126の端部127は、上方に立ちあがっている。
更に、支持部材126上には、可動部材128が装着されており、この可動部材128は、回動アーム122上に設置されたエアシリンダ130の作動ロッド131に連結されたリンク132、133を介して、支持部材126の端部127内面に接離するように動作する。
【0044】
図11に示すように、並列した複数本の電線Wは、可動部材128の端部129と、支持部材126の端部127との間に、挟持される。この場合、エアシリンダ130は、同図(a)に示すように電線Wを固定できるように挟持した状態と、同図(b)に示すように電線Wを開放することなく線方向に摺動可能に挟持した状態と、同図(c)に示すように電線Wを開放できるように開いた状態の3段階の開閉状態を取り得るように動作する。
また、支持部材126の端部127の上端127aと、可動部材128の端部129の上端129aとは、上記(a)、(b)の状態で、互いに当接又は嵌合し、電線Wが抜けてしまわないようにされている。上記支持部材126の上端127aと、可動部材128の上端129aとが、電線Wの抜け止め部を構成している。
【0045】
図1に示すように、巻枠40の側方には、天板14から垂下するカッター160が取付けられている。このカッター160は、図13に示すように、天板14に立設した支持板161と、この支持板161に固着されたブロック162と、このブロック162に取付けられた昇降用エアシリンダ163と、ブロック162を上下に貫通する一対のガイド棒164を介して昇降可能に取付けられた昇降ベース165と、この昇降ベース165に取付けられたカッター本体166と、カッター本体166に設けられた刃部167とからなる。昇降用エアシリンダ163の作動ロッドは、昇降ベース165に連結されており、昇降用エアシリンダ163の作動によって昇降ベース165及びカッター本体166が昇降動作する。また、カッター本体166は、エアシリンダを内蔵しており、刃部167を開閉動作させる。
【0046】
図2に示すように、巻枠40の背面側には、天板14の下面に支持された引張装置170が設けられている。この引張装置170は、図12に示すように、天板14の下面にブラケット171を介して取付けられた第1エアシリンダ172を有している。第1エアシリンダ172の作動ロッド173は、巻枠40の方向に向けて水平方向に伸縮動作し、その先端には第2エアシリンダ174が取付けられている。そして、第2エアシリンダ174の作動ロッド175は、垂直方向下方に延出されており、この作動ロッド175の下端に引き掛けプーリ176が取付けられている。
【0047】
次に、図14〜26を参照して、この巻線装置10を用いた巻線工程について説明する。なお、工程順に(a)〜(x)の符号を付している。各工程図において、アルファベットの後に1が付いた図は正面図であり、2が付いた図は平面図である。以下、上記工程に従って、巻線操作を説明する。
【0048】
1)図14(a1)工程
トランスファーツール80を回転テーブル85上に設置し、巻線装置10を起動する。なお、電線Wは、予めグリッパ120に保持させておく。
【0049】
2)図14(b1)(b2)工程
グリッパ120で電線W(リード線)をノズル20から引き出し、リード線クランプ100に電線Wをクランプさせる。
【0050】
その際、まず、図11(b)に示すように、可動部材128の端部129と、支持部材126の端部127とが、電線Wを開放することなく線方向に摺動可能な状態に開く(以下、この状態を「半開き状態」とする)。
そして、図10(a)に示すように、回動アーム122を回動させてクランプ部140をY字状に開く。その結果、電線Wは、Y字状に開いたクランプ部140の間に平行に並んで保持される。
【0051】
次に、可動部材128の端部129と、支持部材126の端部127とが、図11(a)に示すように、電線Wを固定するように挟持する(以下、この状態を「固定状態」とする)。この状態で、グリッパ120を移動させて、Y字状に開いたクランプ部140の間にリード線クランプ100を導入する。
このとき、図9に示すように、リード線クランプ100は、クランプ解除装置101の上方にあり、クランプ解除装置101の押上げ板116が上昇して、スライド軸104が押上げられ、クランプ面112、113が開いた状態となっている。
【0052】
そして、グリッパ120が移動して、Y字状に開いたクランプ部140の間に平行に並んで保持された電線Wを、リード線クランプ100の上記クランプ面112、113の隙間に電線Wを挿入すると、クランプ解除装置101の押上げ板116が下降し、スライド軸104が圧縮コイルバネ107、108によって下方に移動し、クランプ面112、113が閉じて電線Wを把持する。
次いで、グリッパ120の端部129と、支持部材126の端部127とが、図11(c)で示すように開き(以下、この状態を「開放状態」とする)、グリッパ120を下降させて電線Wを上記端部129、127の隙間から開放する。
【0053】
3)図15(c1)(c2)工程
トランスファーツール80を載置した回転テーブル85が回転し、電線Wを張り、グリッパ120で電線Wを把持する。このとき、グリッパ120のクランプが固定状態に閉じて、電線Wをしっかりと挟持する。
【0054】
4)図15(d1)(d2)工程
グリッパ120のクランプが半開き状態に開くと共に、クランプ部140がY字状に開く。その結果、電線Wはクランプ部140の間に平行に並んで保持される。その状態で、グリッパ120のクランプを再び固定状態に閉じ、巻枠40の後方巻枠51の一方の巻枠クランプ74に挿入する。
このとき、巻枠40のコイル落し板54が巻枠クランプ開放位置まで下降して、巻枠クランプ74は開いた状態になっている。そして、グリッパ120のY字状に開いたクランプ部140によって平行に並んで保持された電線Wが、そのままの形でクランプ74に挿入される。そして、コイル落し板54が上昇して巻枠クランプ74が閉じ、グリッパ120が開放状態に開いて、電線Wを巻枠クランプ74に残して開放する。
【0055】
なお、電線Wのリード線クランプ100に連結された方が、後方巻枠51の外周面から突出し、電線Wのノズル28に連結された方が、巻線方向によって前方巻枠46がこれから移動しようとする方向の側面側を通るように、電線Wを巻枠クランプ74に保持させるようになっている。
【0056】
5)図16(e1)(e2)工程
回転テーブル85と共に、リード線クランプ100、トランスファーツール80及び巻枠40が同期して回転し、巻き始め位置にセットされ、アーム26が突出して、ノズル28が巻枠40に近接する。
【0057】
6)図16(f1)(f2)工程
ボールネジ24(図3参照)の回転により、ノズル28を徐々に上昇させながら、リード線クランプ100、トランスファーツール80及び巻枠40を同期して回転させる。その結果、電線Wは、巻枠40の外周に下方から上方に向かいながら整列して巻き付けられ、1極目のコイルC1が形成される。
なお、巻線開始の際、前方巻枠46が移動する方向の側面側に、電線Wの後方巻枠51の内周から突出してノズル28に至る部分が当接し、前方巻枠46の外周に巻き付き、次いで後方巻枠51の外周に巻き付いて、1周目のループが形成される。このため、電線Wの1周目のループの周長や形状を、2周目以降のループの周長や形状とそれほど変わらない自然な形状とすることができる。
【0058】
また、巻枠40の後方巻枠71のテーパ面71には、ゴム膜が貼り付けられているので、巻き付けられた電線Wが巻線操作中に滑り落ちてしまうことがない。また、後方巻枠71のテーパ面71によって、コイルC1は、上方に向かうほどループ長が大きくなるように形成される。更に、上方のコイルほど両角部が大きな曲率半径の円弧を描くループとなっており、下方のコイルほど両角部が小さな曲率半径の円弧を描くループとなっている。更にまた、ノズル28が巻枠40に近接して巻線がなされるので、ノズル28から並列して送り出される電線Wが、整列した状態で巻枠40に巻き付きやすくなっている。
【0059】
7)図17(g1)(g2)工程
こうして1極目のコイルC1の巻線が終了したら、ボールネジ92(図2、7参照)の回転により、トランスファーツール80をスライドさせ、その対応するガイド棒81を、前方巻枠46の溝58(図5参照)に位置合わせする。
【0060】
8)図17(h1)(h2)工程
この状態で、支軸84(図7参照)が上昇し、トランスファーツール80が上昇して、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入される。それと同時に、エアシリンダ64の作動ロッド66が押出され、ボルト軸63を介してローラ62が第2ブラケット49の傾斜面60を移動して、後方巻枠51が傾き(図5参照)、エアシリンダ55の作動によってスライド軸53を介してコイル落し板54が下降し(図1参照)、1極目のコイルC1がトランスファーツール80のガイド棒81の間隙に落し込まれる。
また、グリッパ120が移動して、ノズル28と巻枠40との間に張設された電線Wを把持し、所定長さ引き出して渡り線の長さを調節する。
【0061】
9)図18(i1)(i2)工程
支軸84が再び下降して、トランスファーツール80が下降する。こうして1極目のコイルC1がトランスファーツール80に移される。
次に、グリッパ120のクランプ部140が半開き状態となってY字状に開き、再び固定状態に閉じて、クランプ部140の間で電線Wが平行に並んだ状態にする。
この状態で、グリッパ120が後方巻枠51の巻枠クランプ73に移動し、平行に並んだ電線Wを前回とは異なる巻枠クランプ73(1極目のときは巻枠クランプ74)に挿入する。巻枠クランプ73は、電線Wを受け入れる際には、コイル落し板54が巻枠クランプ開放位置まで下降して開いた状態にあり、電線Wを受け入れると、コイル落し板54が上昇して閉じる。
【0062】
電線Wが巻枠クランプ73に保持されると、グリッパ120のクランプが開放状態となり、電線Wを巻枠クランプ73に残して移動する。
なお、電線Wの1極目のコイルC1に連続する方が、後方巻枠51の外周面から突出し、電線Wのノズル28に連結された方が、2極目のコイルの巻線方向によって前方巻枠46がこれから移動しようとする方向の側面側を通るように、電線Wを巻枠クランプ74に保持させるようになっている。
そして、ボールネジ91(図2、7参照)の回転により、トランスファーツール80が再びスライドして、巻枠40と同心的に配置される。
【0063】
10)図18(j1)(j2)工程
この状態で、回転テーブル85と共に、リード線クランプ100、トランスファーツール80及び巻枠40が、所定角度回転して巻線開始位置にセットされた後、前回の巻線方向と反対方向に同期して回転し、ノズル28を徐々に上昇させながら、巻線を行う。
【0064】
なお、巻線開始の際、前方巻枠46が移動する方向の側面側に、電線Wの後方巻枠51の内周から突出してノズル28に至る部分が当接し、前方巻枠46の外周に巻き付き、次いで後方巻枠51の外周に巻き付いて、1周目のループが形成される。このため、電線Wの1周目のループの周長や形状を、2周目以降のループの周長や形状とそれほど変わらない自然な形状とすることができる。
また、巻線時においては、前記と同様に、アーム26が突出してノズル28が巻枠40に近接するのであるが、便宜上、以下の記載ではその説明を省略することにする。
【0065】
11)図19(k1)(k2)工程
こうして2極目のコイルC2の巻線が終了する。
【0066】
12)図19(l1)(l2)工程
トランスファーツール80が再びスライドして、対応するガイド棒81を、前方巻枠46の溝58(図5参照)に位置合わせする。
【0067】
13)図20(m1)(m2)工程
この状態で、トランスファーツール80が上昇して、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入される。それと同時に、前述した駆動機構により、後方巻枠51が傾いて、コイル落し板54が下降し、2極目のコイルC2がトランスファーツール80のガイド棒81の間隙に落し込まれる。
また、グリッパ120が移動して、ノズル28と巻枠40との間に張設された電線Wを把持し、所定長さ引き出して渡り線の長さを調節する。
【0068】
14)図20(n1)(n2)工程
トランスファーツール80が再び下降する。また、グリッパ120のクランプ部140が半開き状態となってY字状に開き、再び固定状態に閉じて、クランプ部140の間で電線Wが平行に並んだ状態にする。その状態で、グリッパ120が後方巻枠51の巻枠クランプ74に移動し、平行に並んだ電線Wを巻枠クランプ74に挿入して保持させる。
そして、トランスファーツール80が再びスライドして、巻枠40と同心的に配置され、3極目のコイルC3の巻線が開始される。
【0069】
15)図21(o1)(o2)工程
以後、前記と同様な工程を繰り返して、3極目のコイルC3及び4極目のコイルC4を形成する。図21(o1)(o2)は、4極目のコイルC4の巻線が終了した状態を示している。
【0070】
16)図21(p1)(p2)工程
4極目のコイルC4の巻線が終了したら、トランスファーツール80を再びスライドして、対応するガイド棒81を、前方巻枠46の溝58(図5参照)に位置合わせする。
また、巻枠40とノズル28との間の電線Wを、グリッパ120で保持して引き寄せると共に、引張装置170(図12参照)の引き掛けプーリ176で電線Wを引き掛け、所望の長さ引き出す。
【0071】
17)図22(q1)(q2)工程
トランスファーツール80が上昇し、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入される。それと同時に、コイル落し板54が下降し、4極目のコイルC4がトランスファーツール80のガイド棒81の間隙に落し込まれる。
また、同時にグリッパ120が下降し、引張装置170の引き掛けプーリ176に引き掛けられた電線W(渡り線)が下方に落ちる。
【0072】
18)図22(r1)(r2)工程
トランスファーツール80が下降し、グリッパ120が電線Wを後方巻枠51の巻枠クランプ74に受け渡す。
そして、トランスファーツール80が再びスライドして、巻枠40と同心的に配置され、5極目のコイルC5の巻線が開始される。
なお、図21、22の工程は、4極目のコイルと5極目のコイルとの間でリード線を取出す必要がある場合など、巻線途中での渡り線を長くすることが必要な場合に動作させればよく、そのような必要がない場合には、図21、22の工程は省略することができる。
【0073】
19)図23(s1)(s2)工程
以後、前記と同様な工程を繰り返して、最終極(8極目)のコイルC8まで形成する。図23(s1)(s2)は、8極目のコイルC8の巻線が終了した状態を示している。
この状態で、グリッパ120が、巻枠40とノズル28との間の電線Wを保持して引き寄せると共に、引張装置170(図12参照)の引き掛けプーリ176で電線Wを引き掛け、所望の長さ引き出す。
【0074】
20)図23(t1)(t2)工程
トランスファーツール80が上昇し、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入される。また、グリッパ120がノズル28の近傍まで移動し、グリッパ120のクランプ部140が半開き状態となってY字状に開き、再び固定状態に閉じる。
【0075】
21)図24(u1)(u2)工程
グリッパ120の側方位置に向かって、カッター160(図13参照)が下降し、刃部167が開いて電線Wを導入した後、刃部167が閉じて電線Wをカットする。
【0076】
22)図24(v1)(v2)工程
巻枠40のコイル落し板54が下降して、最終極のコイルC8がトランスファーツール80のガイド棒81の隙間に落し込まれる。
【0077】
23)図25(w1)(w2)工程
トランスファーツール80が下降して、最初にトランスファーツール80をセットした位置(作業者の取出し位置)までスライドする。これでコイル巻線作業の1サイクルが終了する。
【0078】
24)図25(x1)工程
トランスファーツール80を取り外し、図示しないコイル挿入治具に、巻線されたコイルC1〜C8を移し替え、後は常法に従って、コイル挿入装置によりステータコアへのコイル挿入がなされる。なお、トランスファーツールに替えてコイル挿入治具を用い、コイル挿入治具に巻線されたコイルを直接落し込むこともできる。
【0079】
なお、図26は、上記の工程で巻線されたコイルC1〜C8の状態を示す平面図である。図において、W1は電線の巻き始めの端部、W2は電線の巻き終わりの端部、W3は電線の中間引き出し部である。電線Wの巻き始め及び巻き終わりのリード線や、各コイルの間の渡り線の長さを上記のように調節しておくことにより、ステータコアに挿入した後の、リード端子の接続工程などの作業性を飛躍的に改善することができる。
【0080】
ここで、巻線操作の始めに電線Wを後方巻枠51の巻枠クランプ73、74のいずれかにクランプさせるため、各コイルC1〜C8の1周目のループは、2周目以降のループ形状に対して、上記クランプ部において内周側にへこんだ形状になっているが、巻き方向によって巻枠クランプを選択したことにより、2周目以降のループの周長や形状とそれほど変わらない自然な形状となっている。
【0081】
図27は、上記巻線装置によって形成されたコイルCをトランスファーツール80からコイル挿入治具180に移し替える工程を示している。
同図(a)は、巻枠40に巻き付けられたコイルCをトランスファーツール80に挿入する前の状態を示し、この状態から前述したようにトランスファーツール80が上昇して、所定のガイド棒81が前方巻枠46の溝58に挿入され、同図(b)に示すように、後方巻枠51が内側に倒れ込んで、前記コイル落し板54が下降してコイルCがガイド棒81の所定の間隙に落し込まれる。
【0082】
こうして、巻線操作が終了し、トランスファーツール80のガイド棒81の所定の間隙に必要数のコイルCが装着されたら、同図(c)に示すように、このトランスファーツール80のガイド棒81を、コイル挿入治具180の対応するブレード181に摺接させながら、トランスファーツール80を逆様にしてコイル挿入治具180に差し込み、トランスファーツール80に保持されたコイルCをコイル挿入治具180に移し替える。こうして同図(d)に示すように、コイルCがコイル挿入治具180のガイド棒81の所定の間隙に保持される。
【0083】
図28は、こうしてコイル挿入治具180に装着されたコイルCをステータコア190のスロット192に挿入する状態を示している。
すなわち、コイルCをコイル挿入治具180に移し替えると、同図(a)に示すように、トランスファーツール80に保持されていたときとは逆になるため、下方のコイルC’ほどループが大きく、上方のコイルC”ほどループが小さくなる。また、下方のコイルC’ほど円弧に近い形状で、上方のコイルC”ほど角張った形状のループとなる。
【0084】
そして、このコイルCをコイル挿入装置によってステータコア190に挿入すると、同図(b)に示すように、コイル挿入治具180に保持されていたときに下方に位置していたコイルC’は、スロット192の開口部側に配置され、また、コイル挿入治具180に保持されていたときに上方に位置していたコイルC”はスロット192の奥側に配置される。
その結果、ステータコア190の端面から突出するコイルエンドは、スロット192の奥側に位置するものが短く、スロット192の開口部側に位置するものが長く突出する。このため、後のコイルエンド成形工程における成形がしやすくなり、コイルエンドをコンパクトに成形できる。
【0085】
また、スロット192の奥側に位置するコイルC”は、角ばった形状をなすことにより、ステータコア190の内歯191の外周にフィットした形状になり、スロット192の開口部側に位置するものは円弧状をなすことにより、ブレード181の先端がループの内側を通り抜けるのに必要な高さを確保しながら、コイルエンドの長さをできるだけ短くするのに寄与する。
【0086】
図29は、トランスファーツール80の代わりに、コイル挿入治具180を電線保持具として用い、巻線されたコイルCをコイル挿入治具180に直接落し込む別の実施形態を示している。
同図(a)に示すように、この実施形態では、巻枠40の後方巻枠51のテーパ面71が、前記実施形態とは逆に、上方に向かうほど縮径する形状に形成されている。このため、巻枠40に巻き付けられたコイルCは、上方に向かうほどループが小さくなっている。
【0087】
この状態で、コイル挿入治具180が上昇して、所定のブレード181が前方巻枠46の溝58に挿入され、同図(b)に示すように、後方巻枠51が内側に倒れ込んで、コイル落し板54が下降してコイルCがブレード181の所定の間隙に落し込まれる。
こうして、同図(c)に示すように、巻線されたコイルCをコイル挿入治具180のブレード181の所定の間隙に直接落し込むことができ、それによってトランスファーツールからの移し替え工程を省略することもできる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数本の電線を並列して巻枠に巻き付けてコイルを形成するようにした巻線装置において、巻枠に左右一対の巻枠クランプを設け、巻枠の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプを選択するようにしたので、巻き始めの最初のループが、できるだけ他のループと同じ周長及び形状となるようにクランプ位置を選択することができる。このため、コイル挿入時に、1周目のループが突っ張ったりすることを軽減でき、電線の絶縁被覆の損傷を防止すると共に、後のコイル挿入操作を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による巻線装置の全体を示す正面図である。
【図2】同巻線装置の側面図である。
【図3】同巻線装置におけるノズル及び巻枠を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】同巻線装置におけるノズル付近を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【図5】同巻線装置における巻枠を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は底面図である。
【図6】同巻枠のクランプ部を示し、(a)は閉じた状態の部分拡大図、(b)は開いた状態の部分拡大図、(c)は部分断面図である。
【図7】同巻線装置におけるトランスファーツール及びテーブルを示し、(a)は平面図、(b)は平面図である。
【図8】同巻線装置におけるトランスファーツールのガイド棒の先端部分を示す部分拡大図である。
【図9】同巻線装置におけるリード線クランプを示し、(a)は断面図、(b)は正面図である。
【図10】同巻線装置におけるグリッパを示し、(a)はクランプ部を開いた状態の平面図、(b)はクランプ部を閉じた状態の平面図、(c)は側断面図である。
【図11】同グリッパのクランプ部の先端を示し、(a)は電線を把持した固定状態を示す説明図、(b)は電線を摺動可能に保持した半開放状態を示す説明図、(c)電線を開放するために開いた状態を示す説明図である。
【図12】同巻線装置における引張装置を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は引き掛けプーリを下降させた状態を示す側面図である。
【図13】同巻線装置におけるカッターを示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図14】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図15】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図16】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図17】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図18】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図19】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図20】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図21】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図22】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図23】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図24】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図25】同巻線装置による巻線工程を示す説明図である。
【図26】同巻線装置により巻線したコイルを示す平面図である。
【図27】同巻線装置によって形成されたコイルCをトランスファーツール80からコイル挿入治具180に移し替える工程を示し、(a)はコイルが巻線された状態を示す説明図、(b)はコイルがトランスファーツールに落し込まれる状態を示す説明図、(c)はコイルをトランスファーツールからコイル挿入治具に移し替える状態を示す説明図、(d)はコイルをコイル挿入治具に装着した状態を示す説明図である。
【図28】同巻線装置によって形成されたコイルをコイル挿入治具に移してステータコアのスロットに挿入する状態を示し、(a)はコイル挿入治具に移した状態を示す側面図、(b)はコイルをステータコアに挿入した状態を示す断面図、(c)ステータコアに挿入した状態を示す平面図である。
【図29】トランスファーツールの代わりに、コイル挿入治具を電線保持具として用い、巻線されたコイルをコイル挿入治具に直接落し込む別の実施形態を示し、(a)はコイルが巻線された状態を示す説明図、(b)はコイルをコイル挿入治具に落し込む状態を示す説明図、(c)はコイルをコイル挿入治具に装着した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 巻線装置
11 基台
12 テーブル
13 縦フレーム
14 天板
20 昇降ブロック
21、22 ガイド棒
23 モータ
24 ボールネジ
25 ガイドプーリ
26 アーム
27 エアシリンダ
28 ノズル
28a、29b プレート
29 ガイドプレート
30 電線導入孔
31 スリット
32 ガイドローラ
40 巻枠
41 巻枠回転モータ
42 回転ベルト
43 回転板
44 第1ブラケット
45 ボルト
46 前方巻枠
47 支持板
48 支軸
49 第2ブラケット
50 ボルト
51 後方巻枠
52 回転筒
53 スライド軸
54 コイル落し板
55 エアシリンダ
56、57 スリット
58 溝
60 傾斜面
61 スプリング
62ローラ
63 ボルト軸
64 エアシリンダ
65 ブラケット
66 作動ロッド
71 テーパ面
72 垂直面
73、74 巻枠クランプ
75 固定片
76 可動片
77 支軸
78 レバー
79 ロッド
80 トランスファーツール
81 ガイド棒
82 キャップ
83 円板
84 支軸
85 回転テーブル
86 回転筒
87 軸受
88 スライドベース
89 スライドレール
90 水平移動モータ
91 ボールネジ
92 エアシリンダ
93 回転モータ
94 ベルト
100 リード線クランプ
101 クランプ解除装置
102 支柱
103 枠体
104 スライド軸
105 ブロック
106 ガイド棒
107、108 圧縮コイルバネ
109 ハンドル
110 リンクケース
111 ブロック
112、113 クランプ面
115 フランジ
116 押上げ板
120 グリッパ
121 本体
122 回転アーム
123 支軸
124 開閉エアシリンダ
126 支持部材
127 端部
127a 上端
128 可動部材
129 端部
129a 上端
130 エアシリンダ
131 作動ロッド
132、133 リンク
140 クランプ部
160 カッター
161 支持板
162 ブロック
163 昇降用エアシリンダ
164 ガイド棒
165 昇降ベース
166 カッター本体
167 刃部
170 引張装置
171 ブラケット
172 第1エアシリンダ
173、175 作動ロッド
174 第2エアシリンダ
176 引き掛けプーリ
W 電線
C コイル
C’ スロットの開口部側のコイル
C” スロットの奥側のコイル
C1 1極目目のコイル
C2 2極目のコイル
C3 3極目目のコイル
C4 4極目のコイル
C5 5極目目のコイル
C6 6極目のコイル
C7 7極目目のコイル
C8 8極目のコイル
Claims (9)
- 複数本の電線を並列して送り出すノズルと、これらの電線のクランプ部を有し、これらの電線を巻き付けさせるように回転する巻枠と、この巻枠の下方に配置され、ステータコアの内歯に対応して立設された複数本のガイド棒を有し、前記巻枠と同期して回転できる電線保持治具と、水平及び上下方向に移動できる電線受け渡し手段とを備えた巻線装置において、
前記巻枠には、左右一対の巻枠クランプが設けられており、前記巻枠の回転方向によって、電線を保持させる巻枠クランプが選択されるように構成されたことを特徴とする巻線装置。 - 前記巻枠を支持して回転させる回転筒を貫通して、スライド軸が挿通されており、このスライド軸の下端にコイル落し板が設けられ、前記巻枠には前記コイル落し板が通過できるスリットが形成されており、前記コイル落し板が下降したときに前記巻枠クランプが開くように構成されている請求項1記載の巻線装置。
- 前記巻枠は、前記電線保持治具が上昇したときに、前記ガイド棒が挿入されるガイド溝が形成された前方巻枠と、この前方巻枠に対して所定間隔をおいて対置された後方巻枠とで構成され、前記後方巻枠は、巻線されたコイルを前記電線保持治具に落し込む際に、内側に倒れ込むことが可能に構成されている請求項1又は2記載の巻線装置。
- 前記後方巻枠の後方側面は、下端から所定の距離までは回転軸心と平行に伸びる垂直面をなし、それより上方においては次第に拡径するテーパ面をなしており、巻線操作の際に前記ノズルが徐々に上方に移動して巻線がなされるように構成されている請求項3記載の巻線装置。
- 前記後方巻枠の後方側面は、その水平断面形状において、下方部分は、両角部が比較的小さい曲率半径で面取りされた形状をなし、上方に向かうほど、前記両角部がより大きい曲率半径で面取りされた形状をなしている請求項4記載の巻線装置。
- 前記後方巻枠の後方側面は、上方に向かうほど次第に縮径するテーパ面をなしており、巻線操作の際に前記ノズルが徐々に上方に移動して巻線がなされるように構成されている請求項3記載の巻線装置。
- 前記後方巻枠の後方側面は、その水平断面形状において、下方部分は、両角部が比較的大きい曲率半径で面取りされた形状をなし、上方に向かうほど、前記両角部がより小さい曲率半径で面取りされた形状をなしている請求項6記載の巻線装置。
- 前記後方巻枠の後方側面には、ゴム膜が貼り付けられている請求項3〜7のいずれか1つに記載の巻線装置。
- 前記ノズルは、前記巻枠が配置された方向に向けて進退可能に支持されており、巻線操作の際に、前記ノズルが前記巻枠に近接するように構成されている請求項1〜8のいずれか1つに記載の巻線装置。
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-
2002
- 2002-07-25 JP JP2002216866A patent/JP2004064829A/ja active Pending
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