以下、図面を参照して本発明による導線へのテンション付与装置、及び、この導線へのテンション付与装置を用いた導線走行装置の一実施形態を説明する。
本発明の導線へのテンション付与装置及び導線走行装置は、例えば図10及び図11に示すような、巻枠に対して導線Wをパラ巻きするコイル巻線装置10(以下、「巻線装置10」という)に適用されるものである。
まず、図1〜7を参照して、本発明の導線へのテンション付与装置40について説明する。図2に示すように、このテンション付与装置40は、巻枠に対してパラ巻きされる複数本の並列した導線に、個別にテンションを付与する装置であって、ほぼ箱型をなすケーシング43を有している。また、このテンション付与装置40は、この実施形態の場合、図11及び図12に示すように、後述する回転枠20の下方支持枠22の周方向所定箇所に設置されるようになっている。
そして、図5に示すように、このケーシング43の内部には、所定幅の導線挿通路40aがケーシング43の前後方向に沿って貫通して設けられている。この導線挿通路40aは、複数本の導線Wを一列に整列させて通過させるためのものである。また、前記導線挿通路40aの前後両端部には、導線Wの導線挿入口41と、導線挿出口42とが設けられている。これらの導線挿入口41及び導線挿出口42は、それぞれ開口部に向けて次第に広がる曲面状のガイド面をなしており、それにより導線挿通路40a内に導線Wが挿入されるときや、導線挿通路40aから各導線Wが挿出されるときに、各導線Wが挿入・挿出されやすく、導線Wの損傷も防止することができる。なお、導線挿入口41及び導線挿出口42を曲面状ではなく、開口部に向かって次第に広がるテーパ状の斜面とし、これをガイド面としてもよい。
更に図5を参照すると、ケーシング43の内部において、前記導線挿通路40aの導線挿出口42寄りの下方部分には、導線挿通路40aを通過する複数の導線Wの整列した一方の面に当接する受け部44が配設されている。また、導線挿通路40aの上方部分には、先端部を前記受け部44に対向して配置され、基端部を支軸45によって回動可能に支持された複数枚の押圧板46が取付けられている。これらの押圧板46は、図3に示すように薄板状をなし、各導線Wにそれぞれ当接するように一枚ずつ配置されていると共に、図1に示すように複数本の導線Wに対応して導線Wの配列方向に沿って重ねられて配設され、更にこれらの複数の押圧板46は共通の支軸45によって回動支持されている。
その結果、一つの押圧板46は、整列された複数本の導線Wのうち、対応する一本の導線Wのみに当接するようになっている。また、各押圧板46が支軸45を介して回動可能に支持されているので、後述する導線挿入ノズル75が導線挿通路40a内に挿入されたときに、スプリング47の付勢力に抗して、押圧板46が押し上げられて上方に回動し、これにより受け部44と押圧板46との間を、導線Wが通り抜け可能となっている。また、複数の押圧板46は導線Wの配列方向に沿って重ねられているので、押圧板46全体を幅狭にして、テンション付与装置40のコンパクト化を図ることができる。
また、前記押圧板46の導線Wへの当接面とは反対側(上辺側)の面からは、前記スプリング47の一端部を当接支持するための突起48が突設されている(図3参照)。この突起48は、押圧板46毎に異なる位置から一つずつ突設している。この実施形態では、各突起48は、押圧板46の配列方向に沿って複数枚毎に、押圧板46の軸方向同一位置から突設すると共に、このような複数の突起48が、押圧板46の軸方向に沿って複数列配置され、図1に示すように、隣接する押圧板46,46どうしの間で突起48が重ならないように、ずれて配置されている。すなわち、後述する各押圧板46に対応して設けられたスプリング47の配列と、同じ配列でもって、各押圧板46に突起48がそれぞれ設けられている。
そして、ケーシング43の天井壁43aには、複数のネジ孔43b(図5,6参照)が形成されており、これに複数の押しネジ49がそれぞれ螺入されて、これら複数の押しネジ49と、各押圧板46に設けられた突起48との間に、スプリング47がそれぞれ介装されるようになっている(図1及び図3参照)。
これにより、複数の押圧板46は複数個のスプリング47によって、それぞれ独立して受け部44に向けて押圧されるのであるが、本発明の特徴とするところは、図4に示すように、これら複数個のスプリング47を導線Wの配列方向に沿って複数本置きに配置すると共に、導線Wの長さ方向に沿って複数列で配置し、更に長さ方向に沿って配置された各列のスプリング47の位置を幅方向にずらして配置したことにある。
このように各スプリング47を配置することにより、図1、図3及び図6に示すように、それぞれのスプリング47の軸心Cが対応する押圧板46に整合して、それにより各スプリング47が対応する押圧板46のみに当接し、各導線Wが受け部44と対応する押圧板46との間で、個別に圧接されてテンションが付与されるようになっている。なお、図3においては、便宜上、押圧板46が一枚のみ示されている。
また、各押圧板46に設けた突起48に、スプリング47の押圧板46側の端部が当接するので、スプリング47の付勢力が隣接する押圧板46に作用することなく、対応する押圧板46のみに作用させることができる。なお、スプリング47の付勢力は、ケーシング43の天井壁43aからネジ孔43bに螺入された押しネジ49により、調整できるようになっている。
更に、図7に示すように、押圧板46と一体形成された突起48ではなく、押圧板46とは別体の、リブ状の突起48cを有する駒48aを用いてもよい。この駒48aは、円板状をなすバネ受面48bと、このバネ受面48bの一側面から突設したリブ状の突起48cと、前記バネ受面48bの他側面から突設した凸部48dとを有している。そして、凸部48dをスプリング47内に挿入し、その一端部をバネ受面48bに当接支持させることにより、駒48aがスプリング47の一端部に装着され、更に駒48aの突起48cを押圧板46の上辺側に当接させる。これにより、スプリング47が駒48aを介して押圧板46に間接的に当接し、対応する押圧板46のみを押圧できるようになっている。
上記構成からなるテンション付与装置40には導線供給装置60によって、複数本の導線Wが供給されるようになっている。本発明のもう一つは、図11及び図12に示すように、上記テンション付与装置40と、導線供給装置60とを備える導線走行装置100である。以下、この導線走行装置100について説明する。
この導線走行装置100を構成する導線供給装置60は、図11及び図12に示すように、後述する回転枠20の側方に配置され、同じく後述するフレーム11に設置されたエアシリンダ62の、フレーム11を貫通して下方に伸びるシリンダロッド61に連結されて、昇降可能に配置された昇降ベース63に取付けられている(図8参照)。また、昇降ベース63には、エアシリンダ64によって水平移動可能な水平スライドベース65が取付けられている。なお、エアシリンダ62や、エアシリンダ64の代わりに、ボールネジ等の駆動機構を用いることもできる。
そして、この水平スライドベース65に導線Wの供給機構が設けられている。すなわち、図8に示すように、水平スライドベース65の後端部には、導線Wを挿入する導線挿通孔66が所定間隔で形成された案内板68が取付けられている。また、水平スライドベース65の中間部には、一対の第1ガイドローラ67が上下に配置されており、それよりも更に前方には一対の第2ガイドローラ69が前記第1ガイドローラ67よりも更に間隔を狭めて上下に配設されている。導線挿通孔66から挿入された複数本の導線Wは、前記第1ガイドローラ67及び第2ガイドローラ69により相互の間隔を狭めて一列に配列された状態に整列される。
図9及び図10を併せて参照すると、水平スライドベース65には、一対の回転軸73を介して一対の回転ローラ74が装着されており、案内板68の挿通孔66を通って、所定隙間を設けて並列状態とされた複数本の導線Wを挟持可能となっている。そして、図8に示すように、水平スライドベース65にはモータ70が取付けられ、その駆動軸に装着された駆動ギヤ71が、前記回転軸73に装着された従動ギヤ72に歯合している。したがって、モータ70の作動により、駆動ギヤ71、従動ギヤ72、回転軸73を介して一対の回転ローラ74,74が回転し、それにより、並列状態で挟持された複数本の導線Wが、前方に送出されるようになっている。なお、回転ローラ74は、回転軸73に対してワンウェイクラッチを介して装着されており、回転軸73に対して導線Wの送出し方向には空転可能であるが、導線Wの引き戻し方向には回転できないようになっている。
更に、導線供給装置60には、前記テンション付与装置40に設けられた導線挿通路40aの導線挿入口41に挿入されて、受け部44と押圧板46との間に挿入できるように、先端部が次第に薄くされた形状をなす導線挿入ノズル75を有している。この実施形態の場合、一対の回転軸73,73に一対の導線挿入ノズル75,75が、回転可能にそれぞれ装着されている。この導線挿入ノズル75は、板状をなしていると共に、前方端部が次第に肉薄となるくちばし状をなして延出しており、更に、各導線挿入ノズル75の後端部には、連結軸77を介してエアシリンダ76の作動ロッドがそれぞれ取付けられている。したがって、一対のエアシリンダ76により、作動ロッドが押し出されると、各導線挿入ノズル75が図10に示すように回動して、くちばし状の先端部を閉じ、導線Wを挟んで、導線Wを挿出するためのガイドを構成するようになっている。すなわち、一対の導線挿入ノズル75,75は開閉可能となっていると共に、その前方端部が次第に肉薄のくちばし状をなしているので、各導線挿入ノズル75が閉じたときに、先端部が次第に肉薄となるように構成されている。なお、一対の導線挿入ノズル75,75で導線Wを挟んだ状態で、一対の回転ローラ74,74が回動すると、導線挿入ノズル75の先端部から、導線Wが送り出されるようになっている。
こうして構成された導線供給装置60は、前記昇降ベース63の上下動によって上下移動し、前記水平スライドベース65の水平移動によって前記回転枠20に近接離反するように前後移動するようになっている。
以上説明した本発明のテンション付与装置40、及び、同テンション付与装置40と導線供給装置60とからなる本発明の導線走行装置100の作用効果について説明する。
すなわち、一対のエアシリンダ76,76が動作して、一対の導線挿入ノズル75,75が閉じると、案内板68の挿通孔66、第1ガイドローラ67、第2ガイドローラ69を通って並列状態とされた複数本の導線Wが挟まれる(図10参照)。その状態で導線挿入ノズル75がテンション付与装置40の挿入口41に挿入されると、図5に示すように、導線挿入ノズル75の先端部が押圧板46の下端部に当接し、スプリング47の付勢力に抗して押圧板46を押し上げ、受け部44と押圧部46との間の導線挿通路40aが開く。この状態で、一対の回転ローラ74,47が回動すると、複数本の導線Wが並列された状態で前方へ送り出され、導線挿通路40aを通り抜けて、導線挿出口42から挿出される。その後、導線挿入ノズル75が導線挿出路40aから抜き出されると、導線挿通路40aに挿通された複数の導線Wに、対応する押圧板46がスプリング47の付勢力で押圧され、各導線Wにそれぞれテンションを付与することができる。
そして、本発明においては、押圧板46を押圧するスプリング47は、導線Wの配列方向に沿って複数本置きに配置されると共に、導線Wの長さ方向に沿って複数列で配置されて、長さ方向に沿って配置された各列のスプリングの位置が幅方向にずれ、それにより、それぞれのスプリング47の軸心C(図6参照)が対応する押圧板に整合して、各スプリングが対応する押圧板46のみに当接するように構成されているので、スプリング47の外径が押圧する導線Wの線径に対して著しく大きい場合であっても、対応する導線47のみが確実に押圧されて、個々の導線Wに適度な摩擦力を独立して作用させることができ、複数本の導線Wのそれぞれに適切なテンションを付与することができる。
このように、複数本の導線Wのそれぞれに独立してテンションを付与することができるので、これら複数本の導線Wを巻枠に巻き付ける際に、その弛みを防止して巻き付け途中にバラけるのを抑制することができると共に、複数本の導線Wを巻枠の外周に密着させて、きれいに整列させて巻き付けることができる。
次に、上記構成からなる本発明のテンション付与装置40及び導線走行装置100を設けた、巻線装置10について説明する。
図11に示すように、この巻線装置10は、フレーム11にベアリング12を介して回転自在に保持された回転筒13を有している。この回転筒13には、従動プーリ14が固着されている。また、フレーム11上にはモータ15が設置されており、その駆動軸には駆動プーリ16が装着されている。そして、従動プーリ14と駆動プーリ16との間に、タイミングベルト17が張設され、モータ15の作動によって、駆動プーリ16、タイミングベルト17、従動プーリ14を介して回転筒13が回転するようになっている。
回転筒13には回転枠20が固着されて、フレーム11の下方に支持されている。図113〜15を併せて参照すると、回転枠20は、回転筒13に固定された上方支持枠21と、上方支持枠21から所定間隔離れて下方に配置されたほぼ環状の下方支持枠22と、上方支持枠21及び下方支持枠22を連結し、それらの周方向に沿って所定間隔でほぼ平行に配設された複数の連結棒23(図11参照)と、各連結棒23にフランジ24を介して軸方向に配列された複数のローラ25とを有している。
また、回転枠20の外周には、フレーム11に上端部を支持された円筒状の押えガイド26が装着され、回転枠20に巻き付けられた導線Wが、回転枠20の回転によって遠心力でバラけるのが防止されている。また、押えガイド26の導線供給装置60と対面する部分は、上下に伸びるスリットをなし、導線Wが挿入できるようになっている。
また、回転筒13の内周には支持筒18が挿通されており、この支持筒18の上端部は、図示しない駆動手段に接続されて、軸方向に沿って上下スライド可能とされている。支持筒18の下端部には、巻枠30が取付けられている。巻枠30は、支持筒18の下端部に固着された支持板34と、この支持板34に支持された前方巻枠32と、後方巻枠33とを有している。前方巻枠32には、後述するコイル受け治具50のガイド棒53が挿入される治具挿入溝35が設けられている。後方巻枠33は、支軸36を介して支持板34に対して傾動可能に取付けられている。そして、巻枠30に対する巻線が終了した後、コイルを下方に落とす際には、公知の傾動機構37(例えば、特開2004−23968号公報、特開2005−65431号公報等参照)により、支軸36を介して後方巻枠33が前方巻枠32に向けて傾動し、コイルが落下しやすくなるように構成されている。
支持筒18の更に内側には、支軸19が挿通されている。支軸19の上端部は図示しない駆動機構に接続されており、該駆動機構によって支軸19は、軸方向に上下スライドするようになっている。支軸19の下端部には、ほぼ十字状に延出された払い落とし板31が取付けられ、これが支軸19の下降によって下方に移動し、巻枠30に巻き付けられたコイルを強制的に払い落とす役割をなしている。
巻枠30及び回転枠20の下方には、コイル受け治具50が配置されている。コイル受け治具50は、図示しない駆動手段によって回転する回転支軸51と、この回転支軸51に固着された円板52と、この円板52の外周に沿って所定間隔で配列され、上方に向けて立設された複数本のガイド棒53とを有している。この実施形態では、ガイド棒53は3本ずつ、45度の間隔で配列されている。
再び図11及び図12を参照すると、回転枠20の近傍には、導線Wの端部を保持する導線保持装置80が配置されている。導線保持装置80は回転枠20の下方を通って、回転枠20の外周から内周に向けて進退自在とされ、かつ、回転枠20の内周においてテンション付与装置40に近接する位置まで昇降可能とされている。導線保持装置80は、本体部81と、クランプ部82とを有している。また、回転枠20の側方には、カッター85が所定方向に移動可能に配置されている。カッター85は切断刃86を有し、後述する巻線工程の途中で、導線供給装置60から供給される導線Wを切断する役割をなす。
次に、この巻線装置10を用いた巻線方法を説明する。
巻線操作を開始する際、巻線装置10が図11、図12に示す状態にあるときは、まず、水平スライドベース65が後退して、回転枠20からやや離れた位置とされる。この状態が図16及び図17に示されている。このとき、回転枠20は、テンション付与装置40が導線供給装置60と対向する位置となるように回転位置決めされている。また、巻枠30及び払い落とし板31は上方に移動した位置となっている。
この状態で、図17に示すエアシリンダ76がそれぞれ作動して、一対の導線挿入ノズル75,75が閉じて、複数本の導線Wが挟持される。この状態が図18及び図19に示されている。なお、導線挿入ノズル75がテンション付与装置40とほぼ同じ高さとなるように、昇降ベース63の高さが設定されている。
この状態で、水平スライドベース65が前進し、導線挿入ノズル75が前進すると、図20及び図21に示すように、導線挿入ノズル75がテンション付与装置40の導線挿入口41に挿入される。図5を併せて参照すると、この状態では、導線挿入口41を通って、導線挿通路40aの奥方まで入り込んだ導線挿入ノズル75の先端部が、押圧板46の下端部に当接して、スプリング47の付勢力に抗して押圧板46が上方に押し上げられ、受け部44と押圧板46との間の導線挿通路40aを開く。また、このとき、導線保持装置80が移動してクランプ部82を本体部81に対して開いた状態で、テンション付与装置40の導線挿出口42近傍に配置される。
この状態で、導線供給装置60のモータ70が作動し、一対の回転ローラ74が回転して、回転ローラ74に挟まれた導線Wが前方に押し出される。すると、複数本の導線Wが、導線挿入ノズル75を通って、テンション付与装置40の導線挿入口41を介して導線挿通路40a内に挿入されていく。このとき、押圧板46は導線挿入ノズル75によって押し上げられているので、導線挿通路40a内に挿入された各導線Wは、押圧板46に押圧されることなく、導線挿通路40aを通り抜けて導線挿出口42から挿出され、更に導線保持装置80の本体部81とクランプ部82との間を通って所定長さ押し出される。この状態が図22及び図23に示されている。
次いで、図24に示すように、導線保持装置80のクランプ部82が本体部81に対して閉じ、導線Wの端部を保持する。そして、導線供給装置60の水平スライドベース65が後退し、図25に示すように、導線挿入ノズル75が導線挿通路40a内から抜き出されて離れる。すると、導線挿入ノズル75により上方に押し上げられた複数の押圧板46が、それに対応して配置された複数のスプリング47により付勢されて、受け部44側に向けて押圧される。
これにより、複数本の導線Wは、その一方の面が受け部44に当接すると共に、他方の面が複数の押圧板46によりそれぞれ押圧され、それにより受け部44と対応する押圧板46との間で圧接され、複数本の導線Wのそれぞれに適切なテンションが付与される。
そして、図26に示すように、エアシリンダ76の作動により導線挿入ノズル75が再び開く。この状態で、図27及び図28に示すように、導線保持装置80が回転枠20の内周から外周方向に移動し、導線Wを所定長さ引っ張り出した状態で保持する。それと共に、導線供給装置60の水平スライドベース65が再び前進し、回転ローラ74による導線供給部が回転枠20に近接配置される。
この状態で図11に示すモータ15が作動し、駆動プーリ16、タイミングベルト17、従動プーリ14を介して回転枠20が回転し始める。なお、回転枠20の回転に伴ない、支持筒18が徐々に下降して、巻枠30が下降するようになっている。
図29、図30及び図31は、回転枠20が巻線開始時点からほぼ1/4周回転した状態を示している。すなわち、導線供給装置60から繰り出された導線Wは、回転枠20の回転に伴ないテンション付与装置40が回転するため、回転枠20の外周に巻き付くと共に、回転枠20の内周に配置された巻枠30の外周にも巻き付き始める。このとき、図31に示すように、導線Wは、回転枠20のフランジ24に両側をガイドされて、それらの間にあるローラ25に巻き付く。
図32、図33及び図34には、回転枠20が巻き始めからほぼ半周した状態が示されている。導線Wは、回転枠20のほぼ半周に巻き付くと共に、巻枠30に対しても更に長く巻き付いている。
図35、図36及び図37には、回転枠20が巻き始めからほぼ3/4回転した状態が示されている。導線Wは、回転枠20の外周にほぼ3/4周巻き付くと共に、巻枠30の外周にも半分以上巻き付いた状態となっている。なお、図37に示すように、回転枠20の巻付け部となるローラ25は、周方向に沿って螺旋状をなすように配置されており、これに合わせて導線供給装置60がガイド棒61に沿って上昇し、導線Wは回転枠20の外周に螺旋状に巻き付いていく。
図38、図39及び図40は、回転枠20が巻線開始からほぼ一周した状態を示している。導線Wは、回転枠20の外周にほぼ一周巻き付くと共に、巻枠30の外周にもほぼ一周巻き付いた状態となっている。
以上のようにして、この実施形態においては、回転枠20及び巻枠30の両方に、複数本の導線Wが巻き付くようになっているが、このとき、本発明においては、テンション付与装置40によって、複数の導線Wのそれぞれに独立してテンションを付与することができるようになっているので、これら複数本の導線Wを、上記工程のように回転枠20及び巻枠30に巻き付ける際に、弛みを防止して巻き付け途中に導線Wがバラけるのを抑制することができると共に、複数本の導線Wを回転枠20及び巻枠30の外周に密着させて、きれいに整列させて巻き付けることができる。
また、巻枠30は巻線操作の進行に合わせて次第に下降するため、導線Wは巻枠30に対しても螺旋状に巻き付いていく。また、コイル受け治具50のガイド棒53の先端が、巻枠30の下降に伴ない、治具挿入溝35に挿入されていく。
図41、図42及び図43は、こうして回転枠20を回転させ、巻枠30に対する一つのコイルの巻線が終了した状態を示している。導線Wは、巻枠30に対して下方から欄施状に複数回巻き付けられると共に、回転枠20の外周にも下方から上方に向けて螺旋状に同じ回数だけ巻き付けられた状態となっている。この状態で、回転枠20の回転が一時停止する。
図44は、上記の状態で巻枠30が更に下降した状態を示している。巻枠30が更に下降することによって、コイル受け治具50のガイド棒53先端が、巻枠30の外周に巻き付けられたコイルの上端部よりも更に上方に突出した位置となる。
図45は、巻枠30の後方巻枠33が、傾動機構37によって内側に傾斜し、それと共に、支軸19の下降により払い落とし板31が下降して、巻枠30の外周に巻き付いたコイルを下方に払い落とした状態を示している。
図46は、支持筒18が上昇し、巻枠30が上昇して元の位置に復帰した状態を示している。このとき、傾動機構37により後方巻枠33は元の位置に復帰する。また、払い落とし板31も、支軸19の上昇により上昇して元の位置に復帰する。その結果、コイル受け治具50のガイド棒53は、巻枠30の治具挿入溝35から抜き出され、巻線されたコイルがガイド棒53に完全に受け渡された状態となる。
図47及び図48は、コイル受け治具50が所定角度回転して、ガイド棒53に保持されたコイルが移動し、巻枠30の下方に別のガイド棒53が配置された状態が示されている。このとき、導線保持装置80は、導線Wの巻き始め端部を離し、テンション付与装置40とコイルCとの間に張設された導線を把持できる位置に移動する。導線保持装置80は、その位置で導線Wを保持し、再び回転枠20が回転を始めて、巻枠30に対する次のコイルの巻線が開始される。
図49、図50及び図51は、前記巻線操作を繰り返すことにより、巻枠30の外周に次のコイルCが巻線された状態を示している。このとき、回転枠20の外周にも導線Wが更に螺旋状に巻き付いていき、回転枠20の上方まで巻き付いた状態となっている。この状態で、回転枠20の回転が再び停止し、導線供給装置60の水平スライドベース65が後退し、導線供給装置60が回転枠20から所定距離だけ離れる。
図52は前述した方法により、巻枠30に巻き付けられたコイルCが、コイル受け治具50のガイド棒53に落とされた状態を示している。また、巻枠30及び払い落とし板31は、上方に移動して元の位置に復帰している。
次いで、図53及び図54に示すように、回転枠20と導線供給装置60との間に、カッター85が進入し、回転枠20と導線供給装置60との間で導線Wをカットする。
こうして導線Wを切断した後、コイル受け治具50を所定角度回動させて、次のコイルを受けるためのガイド棒53を巻枠30の下方に配置させる。
そして、回転枠20を回転させて、巻枠30に対する巻線を続行する。この場合、導線Wは、前述したように、導線供給装置60と回転枠20との間で既に切断されているため、以後の巻枠30に対する巻線は、回転枠20に巻き付けられている導線Wを引き出しながら行われる。
図55、図56及び図57は、導線Wを切断した後、巻枠30に対して次のコイルを巻線した状態を示している。回転枠20に巻き付けられた導線Wは、図56に示すように、巻枠30に巻き付けられた分だけ引き出され、導線Wの切断された端部が、ローラ25及びフランジ24によって形成された巻付け部に沿って下方に移動する。
図58は、巻枠30に巻き付けられたコイルCを、コイル受け治具50の対応するガイド棒53に落とし込んだ状態を示している。そして、巻枠30は上方に復帰する。その後、コイル受け治具50が再び所定角度回動し、次のコイルを受けるためのガイド棒53が巻枠30の下方に配置される。
図59、図60及び図61は、巻枠30に対して次のコイルCを巻き付けた状態を示している。図61に示すように、導線Wの切断された端部は、回転枠20の更に下方に移動する。
図62は、上記状態で巻枠30に巻き付けられたコイルCを、コイル受け治具50の対応するガイド棒53に払い落とした状態を示している。コイルCを払い落とされた後、巻枠30は上方に復帰する。そして、コイル受け治具50が再び回動し、次のコイルを受けるためのガイド棒53が巻枠30の下方に配置される。
図63、図64及び図65は、上記のような巻線操作を繰り返すことにより、合計8つのコイルCを巻線して、それぞれ対応するコイル受け治具50のガイド棒53に落とし込んだ状態を示している。図65に示すように、回転枠20に巻き付けられた導線Wは、そのほとんどが引き出され、導線Wの切断された端部が回転枠20の最下端に位置している。
図66及び図67は、上記の状態で導線保持装置80を移動させ、導線Wを回転枠20のテンション付与装置40から引き抜き、回転枠20上の導線Wを全て引き抜いた状態を示している。こうして、一つのステータコアに対する合計8つのコイルの巻線が終了する。
こうして得られたコイルCは、複数本の導線Wが並列した状態で巻き付けられており、コイル挿入装置によるステータコアのスロットへのコイル挿入が可能となる。
なお、本発明のテンション付与装置及び導線走行装置は、上記巻線装置10に限らず、例えば前記特許文献1、2、3等に示される巻線装置にも適用することができる。