しかしながら、上記特許文献1、2に示されるようなフライヤを用いたパラ巻線装置では、予めボビンやストックリングに導線を巻き付けておく必要があり、装置構造が複雑化して製造コストが高くなるという問題があった。
また、上記特許文献3に示される巻枠を回転させて巻線する方法においては、第1の巻枠と第2の巻枠とを上下に配列して巻線を施した後、コイル挿入治具に巻線されたコイルを移すときに、第1の巻枠を下降させて第2の巻枠と並列させる必要があるので、第1の巻枠から第2の巻枠に移る渡り線を長くとる必要があること、第1の巻枠と第2の巻枠とが同心的に配置されていないので、巻線操作をスムーズに行えないこと、リード線がステータコアの両端面から取り出される構造となるため、リード線の結線処理がしにくくなるという問題があった。
更に、従来のパラ巻線装置においては、いずれの技術によっても解決されない次のような問題があった。すなわち、パラ巻きされたコイルは、複数本の導線が一列に並んでループを描いており、その配列のままコイル受け治具に保持されて、コイル受け治具がコイル挿入治具である場合にはそのまま、コイル受け治具がトランスファー治具である場合には、コイル挿入治具に受け渡されて、コイル挿入治具にステータコアが組付けられ、コイル挿入治具の内側を移動するストリッパによってステータコアのスロットに挿入される。
上記コイル挿入操作によって、一列に並んだ複数本の導線は、その配列順序でスロットに挿入されていく傾向があり、巻枠の上方に位置する導線は、巻枠の下方に位置する導線よりも、スロットの奥方に挿入される傾向がある。その結果、複数本の導線の配列順序によって、ステータコアのスロット内の位置が外径側に配置されやすいものと内径側に配置されやすいものとが生じ、スロット内の位置に偏りが生じる。
一方、コイルのインダクタンスは、巻線に流れる電流変化と巻線を貫く磁束の変化量の比で定義されるため、コイルのコアとコイル素線の相対位置がインダクタンス変化に影響を及ぼすことが知られている。このため、上記パラ巻きされたコイルを挿入したステータコアでは、スロット内に収まった複数本の各導線において、コアの内径側を通る導線と外径側を通る導線とでは導線間のインダクタンスに差が生じることとなり、そのことがモータ等の回転電機の性能の低下につながるという問題があった。
したがって、本発明の目的は、複数本の導線を並列させてパラ巻線する際、導線がねじれることなくスムーズに巻線でき、複数本の導線のインダクタンスがほぼ均一化されて、優れた性能の回転電機が得られるようにしたコイル巻線方法及びコイル巻線装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明のコイル巻線方法は、巻枠を複数個同軸上に並べて巻枠連結体を形成し、この巻枠連結体の一端に、並列した複数本の導線を係止させて、該巻枠連結体を回転させつつ、前記導線の供給部を前記巻枠連結体の他端に向けて移動させることにより、該巻枠連結体の一端から他端に向けて前記導線を連続して巻き付けて、各巻枠の外周にコイルを形成し、各巻枠をその連結部で折り曲げて、各巻枠に巻き付けられたコイルを並列させると共に、各コイルをコイル受け治具のガイド棒の対応する間隙に整合させ、該コイル受け治具に前記各コイルを受け渡すことにより、連続して巻線された隣接するコイルどうしで転位を生じさせることを特徴とする。
本発明のコイル巻線方法によれば、複数本の導線を並列させて巻き付けるパラ巻線において、各巻枠をその連結部で折り曲げて、各巻枠に巻き付けられたコイルを並列させることにより、隣接する巻枠に巻き付けられたコイルの間で、巻き方向が反対になると共に、複数本の導線の巻軸方向における配列順序が逆転されることになる。すなわち、一方の巻枠において、並列して巻き付けられた導線のうち、常に巻枠の下方に位置するように巻かれた導線は、もう一方の巻枠に巻き付けられるときには、常に上方に位置するように巻かれることとなり、コイル受け治具に挿入されたときの上下の位置が逆転することになる(いわゆる転位がもたらされる)。その結果として、ステータコアのスロットに挿入したとき、各導線の配列順序に起因する、スロット内での位置の偏りが平均化されることになり、複数本の導線のインダクタンスがほぼ均一化されて、優れた性能の回転電機を得ることができる。
また、途中でコイルの落し込み操作や、渡り線の処理操作等を行うことなく、複数の巻枠に連続して巻線を施すことができるので、サイクルタイムを著しく短くして巻線スピードを高めることができる。また、装置がコンパクト化されると共に、構造が簡略化されるので、装置コストを低減することができる。更に、各巻枠の折り曲げ部が渡り線で連結された状態になるので、渡り線の長さを比較的短くすることができる。
本発明のコイル巻線方法においては、周方向の一部が分離された枠体に回転可能に支持され、外周の一部に導線挿通用の切欠き部が設けられた回転基板の対向面に、ヒンジを介して、一対の巻枠を、それらの端面どうしを突き合わせて巻軸を一致させて同軸的に配置された状態と、巻軸を前記回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置された状態とで回動可能に連結し、この一対の巻枠を一組又は複数組同軸的に連結可能に配置して、前記巻枠連結体を形成することが好ましい。
この態様によれば、枠体に保持された回転基板を介して、巻枠連結体を回転可能に支持できると共に、巻線される導線が一つの巻枠から回転基板を介して隣接する別の巻枠に移動するとき、枠体に設けられた分離部及び回転基板に設けられた切欠き部を通して移動させることができるので、渡り線が回転基板の外周と枠体の内周とに挟まれて損傷することを防止できる。
また、本発明のコイル巻線方法においては、各巻枠をその連結部で折り曲げて、各巻枠に巻き付けられたコイルを並列させたとき、各コイルがそのまま前記コイル受け治具のガイド棒の対応する間隙に整合するようにすることが好ましい。
この態様によれば、各巻枠をその連結部で折り曲げるだけで、各コイルをコイル受け治具のガイド棒の対応する間隙に整合させることができるので、巻線されたコイルのコイル受け治具への受け渡しを迅速に行うことができる。
また、本発明のコイル巻線方法においては、各巻枠をその連結部で折り曲げて、各巻枠に巻き付けられたコイルを並列させ、更に各コイルを移動させることにより、各コイルが前記コイル受け治具のガイド棒の対応する間隙に整合するようにすることが好ましい。
この態様によれば、多数(例えば4個以上)の巻枠を連結して巻枠連結体を構成した場合であっても、各巻枠に巻き付けられたコイルを並列させて、コイル受け治具のガイド棒の対応する間隙に整合させることができるので、多極のコイル形成を連続して行うことが可能となる。
更に、本発明のコイル巻線方法においては、前記巻枠連結体を2組並列して配置し、各巻枠連結体に同時に導線を巻き付けてコイルを形成し、各巻枠連結体の各巻枠をその連結部で折り曲げて、各巻枠に巻き付けられたコイルを並列させると共に、各コイルを1つのコイル受け治具のガイド棒の対応する間隙に整合させ、該コイル受け治具に前記各コイルを受け渡すことが好ましい。
この態様によれば、2組の巻枠連結体に同時に巻線を施すことによって、コイル巻線操作をより高速化することができる。
一方、本発明のコイル巻線装置は、周方向の一部が分離された枠体に回転可能に支持され、外周の一部に導線挿通用の切欠き部が設けられた回転基板と、
該回転基板の対向面にヒンジを介して連結され、該回転基板を介して端面どうしを突き合わせて巻軸を一致させて同軸的に配置された状態と、巻軸を前記回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置された状態とで回動可能に支持された一対の巻枠を、一組又は複数組同軸的に連結可能に配置してなる巻枠連結体と、
前記巻枠連結体が同軸的に連結された状態で、対向する両端部にそれぞれ接離可能に当接する回転押え板と、
前記巻枠連結体が同軸的に連結された状態で、前記回転押え板の少なくとも一方を回転させて、前記巻枠連結体を回転させる回転手段と、
同軸的に連結された前記巻枠連結体に並列した複数本の導線を供給すると共に、巻線操作に伴って前記巻枠連結体の軸方向に移動する導線供給手段と、
同軸的に連結された前記巻枠連結体のいずれか一方の端部に導線をクランプさせるクランプ部と、
ステータコアの内歯に対応して配列された複数本のガイド棒を有し、該ガイド棒の所定の間隙にコイルを受け入れるコイル受け治具とを備え、
前記巻枠連結体の各巻枠がそれらの巻軸を前記回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置された状態で、各巻枠に巻き付けられたコイルのループが、前記コイル受け治具のガイド棒の所定の間隙に、そのまま整合するか、又はコイル整合手段により前記回転基板を移動させることによって整合するように構成されていることを特徴とする。
本発明のコイル巻線装置によれば、巻枠連結体の各巻枠を、回転基板を介して端面どうしを突き合わせて巻軸を一致させて同軸的に配置し、その対向する両端部に回転押え板を当接させて、回転手段によって少なくとも一方の回転押え板を回転させることにより、巻枠連結体を回転させることができる。そして、導線供給手段から供給される導線を上記巻枠連結体のクンラプ部にクランプさせて、上記巻枠連結体を回転させることにより、巻枠連結体に導線を巻き付けることができ、この巻線操作に伴って導線供給手段を巻枠連結体の軸方向に移動させることにより、巻枠連結体の一端から他端に向けて導線を順次巻き付けることができ、巻枠連結体を構成する各巻枠にスムーズに巻線を施すことができる。なお、巻線される導線が一つの巻枠から回転基板を介して隣接する別の巻枠に移動するとき、枠体の分離部及び回転基板に設けられた切欠き部を通して移動させることができるので、渡り線が回転基板の外周と枠体の内周とに挟まれて損傷することを防止できる。
こうして各巻枠に巻線が施されたら、回転手段を停止させ、回転押えを巻枠連結体の両端部から離し、各巻枠を回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置された状態に回動させる。更に、必要に応じてコイル整合手段により回転基板を移動させて、各巻枠に巻き付けられたコイルのループをコイル受け治具の所定の間隙に整合させ、各巻枠のコイルをコイル受け治具の所定の間隙に挿入する。
このとき、回転基板を介して連結された一対の巻枠は、その一方には巻枠の下方から上方に向けて巻線が施され、他方には巻枠の上方から下方に向けて巻線が施される。その結果、一方の巻枠において、並列して巻き付けられた導線のうち、常に巻枠の下方に位置するように巻かれた導線は、もう一方の巻枠に巻き付けられるときには、常に上方に位置するように巻かれることとなり、コイル受け治具に挿入されたときの上下の位置が逆転することになる(いわゆる転位がもたらされる)。その結果として、ステータコアのスロットに挿入したとき、各導線の配列順序に起因する、スロット内でのコイル位置の偏りが平均化されることになり、複数本の導線のインダクタンスがほぼ均一化されて、優れた性能の回転電機を得ることができる。
また、回転基板を介して連結された一対の巻枠を、一組又は複数組同軸的に連結可能に配置してなる巻枠連結体に巻線をすると、各巻枠間の渡り線は、巻枠の上端部どうし、又は巻枠の下端部どうしの間で渡ることになり、かつ、各巻枠を回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置させたとき、渡り線の経路はそれほど長くならないので、渡り線の長さを短くすることができる。
更に、回転基板を介して連結された一対の巻枠を、一組又は複数組同軸的に連結可能に配置してなる巻枠連結体の一端から他端に向けて巻線を施すことにより、途中でコイルの落し込み操作や、渡り線の処理操作等を行うことなく、複数の巻枠に連続して巻線を施すことができるので、サイクルタイムを著しく短くすることができる。
更に、複数本の導線を並列させて予めボビンやストックリング等に巻き付ける必要がなく、ボビンやストックリングから引出された導線をフライヤによって巻線する必要もないので、装置がコンパクト化されると共に、装置コストを低減することができる。
更に、巻枠連結体への巻き始め及び巻き終わりの導線の長さを調節することによって、リード線の長さを容易に変えることができ、このリード線は、巻枠連結体の両端部に配置された巻枠の下方から取出されるので、ステータコアに挿入されたとき、リード線の取出し位置がステータコアの同じ端面側となり、リード線を取出しやすくなる。
更にまた、巻枠連結体の両端部を一対の回転押え板で押えるので、巻枠連結体を高剛性にすることができ、回転動作を安定して高速で行わせることができる。
本発明のコイル巻線装置においては、前記一対の巻枠は、それらの巻軸を前記回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置されたとき、各巻枠の巻軸方向に見て、長手方向に沿ったそれぞれの中心線がV字形に交差するように、前記ヒンジを介して前記回転基板に連結されていることが好ましい。
この態様によれば、上記V字形の角度を所定の角度に設定することにより、一対の巻枠の巻軸を回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置させたとき、各巻枠に巻き付けられたコイルのループが、コイル受け治具のガイド棒の所定の間隙に、そのまま整合するようにすることができる。
本発明の一つの好ましい態様においては、前記巻枠連結体は、前記回転基板にヒンジを介して連結された一対の巻枠で構成されており、前記巻枠連結体の各巻枠が、それらの巻軸を前記回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置された状態で、各巻枠に巻き付けられたコイルのループが、前記コイル受け治具のガイド棒の所定の間隙に、そのまま整合するように構成されている。
この態様によれば、一対の巻枠に連続して巻線を施すことができ、巻線後に各巻枠の巻軸を回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置させるだけで、各巻枠に巻き付けられたコイルのループが、コイル受け治具のガイド棒の所定の間隙に、そのまま整合するようにすることができる。
本発明の別の好ましい態様においては、前記巻枠連結体は、前記回転基板にヒンジを介して連結された一対の巻枠が、複数組同軸的に連結可能に配置されて構成されており、各巻枠の巻軸を前記回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置された状態で、前記コイル整合手段により前記回転基板を移動させることにより、各巻枠に巻き付けられたコイルのループが、前記コイル受け治具のガイド棒の所定の間隙に整合するように構成されている。
この態様によれば、4つ以上の巻枠に連続して巻線を施すことができ、巻線後に各巻枠の巻軸を回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置させ、コイル整合手段により回転基板を移動させることにより、各巻枠に巻き付けられたコイルのループが、コイル受け治具のガイド棒の所定の間隙に整合するようにすることができる。
本発明のコイル巻線装置においては、前記巻枠連結体が2組並列して配置されており、それぞれの巻枠連結体に回転手段及び導線供給手段が設けられて、2組の巻枠連結体に同時に巻線操作がなされるように構成され、2組の巻枠連結体の各巻枠を、前記回転基板の平面に沿って互いにほぼ平行に配置させたとき、各巻枠に巻き付けられたコイルのループが、前記コイル受け治具のガイド棒の所定の間隙に、そのまま整合するか、又は前記コイル整合手段により前記回転基板を移動させることによって整合するように構成されていることが更に好ましい。
この態様によれば、2組の巻枠連結体に巻線した後、各巻枠をそれぞれの回転基板の平面に沿ってほぼ平行に配置させ、一対の巻枠からなる場合はそのまま、一対の巻枠が複数組連結された巻枠連結体の場合は更に回転基板を移動させることによって、各巻枠に巻き付けられたコイルのループをコイル受け治具のガイド棒の所定の間隙に整合するようにすることができる。こうして、2組の巻枠連結体に同時に巻線を施すことによって、コイル巻線操作をより高速化することができ、4極以上のコイルを一度に巻線して、コイル受け治具に受け渡すことができる。
本発明によれば、複数本の導線を並列させて巻き付けるパラ巻線において、巻線されたコイルをステータコアのスロットに挿入したとき、各導線の配列順序に起因する、スロット内でのコイル位置の偏りが転位によって平均化されるので、複数本の導線のインダクタンスがほぼ均一化されて、優れた性能の回転電機を得ることができる。また、途中でコイルの落し込み操作や、渡り線の処理操作等を行うことなく、複数の巻枠に連続して巻線を施すことができるので、サイクルタイムを著しく短くして巻線スピードを高めることができる。また、装置がコンパクト化されると共に、構造が簡略化されるので、装置コストを低減することができる。更に、各巻枠の折り曲げ部が渡り線で連結された状態になるので、渡り線の長さを比較的短くすることができる。
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1〜図22は、本発明によるコイル巻線装置の一実施形態が示されている。
図1、2に示されるように、このコイル巻線装置10は、基台11を有し、基台11の上面四隅に支柱12が立設されている。そして、これらの支柱12の上端に天板13が取付けられている。前面側の支柱12の前面、及び、背面側の支柱12の背面には、上下方向に沿って上下ガイドレール14が設置されている。また、支柱12の前面側及び背面側には、それぞれ左右支持部材15が上記上下ガイドレール14に支持されて昇降可能に取付けられている。
左右支持部材15は、その両側部15aを、対応する左右の支柱12に設けられた上下ガイドレール14に嵌合して保持されている。また、上下ガイドレール14と併設して、それぞれの支柱12にはボールネジ16が配設されており、このボールネジ16は、左右支持部材15の両端部15bに螺挿されている。各ボールネジ16の上端部には、従動プーリ17が取付けられている。
図3を併せて参照すると、天板13には支持板18を介してモータ19が設置されており、モータ19には駆動プーリ20が装着されている。そして、この駆動プーリ20と前記従動プーリ17とが図示しないタイミングベルトによって連結され、モータ19によりボールネジ16が回転するようになっている。そして、ボールネジ16が回転することにより、左右支持部材15が昇降動作するようになっている。
再び図2を参照すると、左右支持部材15には、左右ガイドレール21が取付けられており、この左右ガイドレール21と平行にボールネジ22が配設されている。ボールネジ22は、左右支持部材15の一端に設けられたモータ26によって回転するようになっている。
そして、左右支持部材15には、上記左右ガイドレール21に嵌合して、左右方向にスライド可能に前後支持部材23が装着されている。前後支持部材23は、左右支持部材15に対してほぼ直角に交差するように、前後に伸びている。また、左右支持部材15に設けられたボールネジ22が、前後支持部材23を螺挿しており、モータ26の作動によりボールネジ22が回転することによって、前後支持部材23が左右方向に移動するようになっている。
更に前後支持部材23には、前後ガイドレール24が装着されており、この前後ガイドレール24とほぼ平行にボールネジ25が配設されている。ボールネジ25は、前後支持部材23の後端に設けられたモータ27によって回転するようになっている。
再び図3を併せて参照すると、前後支持部材23には、導線供給装置28が前記前後ガイドレール24に沿って前後方向にスライド可能に装着されている。導線供給装置28には、前記ボールネジ25が螺挿されており、モータ27の作動によりボールネジ25が回転すると、導線供給装置28が前後方向に移動するようになっている。
導線供給装置28には、図示しない駆動装置によって回転する供給ローラ29と、この供給ローラ29に弾性的に圧接されて、供給ローラ29との間に導線を挟持するピンチローラ30とを有している。導線は、図示しないストックリール等から引き出され、図示しないテンション装置や矯正ローラを経て、上記導線供給装置28の供給ローラ29とピンチローラ30との間に挿入されて供給されるようになっている。そして、供給ローラ29が回転することにより、導線が後述する巻枠連結体50の方向へ送り出されるようになっている。
再び図1を参照すると、天板13の左右の下面には前後2箇所にガイドレール31が配設され、このガイドレール31に沿ってスライド板32が、天板13の中心方向に向けて進退可能に装着されている。また、ガイドレール31の基部側には、エアシリンダ33が装着されており、このエアシリンダ33の作動ロッドがスライド板32に連結されて、スライド板32を進退可能に動作させるようになっている。
スライド板32には、支持板34が垂下して取付けられている。図1における右側の支持板34にはモータ35が取付けられ、このモータ35の回転軸に回転押え板36が装着されている。回転押え板36は、突起36aを前面に有している。図1の左側の支持板34には、前記と同様な回転押え板36が軸受けを介して回転可能に装着されている。この回転押え板36の前面にも、突起36aが設けられている。左右の回転押え板36は、それぞれの回転軸心を同一にして、突起36aが設けられた前面を対向させるように配置されている。
左側の支持板34にはロック装置37が装着されており、このロック装置37のロックピン38が、回転押え板36に対して出没動作するようになっている。これに関連して、左側の回転押え板36には、上記ロックピン38が挿入される位置決め孔36bが形成されている。また、左側の支持板34には、ロータリーシリンダ39が装着されている。図9に示すように、このロータリーシリンダ39は、後述する巻枠連結体50に導線をクランプするクランプ49を作動させるためのものである。
再び図3を併せて参照すると、天板13の前後方向下面には、一対の回転支持枠40が天板13に対して垂下するように取付けられている。各回転支持枠40は、図1の正面側から見て、互いに整合するように同一平面上に配置されている。また、回転支持枠40には円形の開口部40cが設けられ、この開口部40cの周縁に複数のローラ41が配設されている。また、前記開口部40cには、その一部に分離部40dが設けられ、外部に連通した状態となっている。
そして、上記複数のローラ41にその外周を支持されて、前記開口部40c内には回転基板42が回転可能に保持されている。回転基板42には、前記回転支持枠40の分離部40dとほぼ同じ幅で開口する切欠き部42aが形成されている。
図4、5、6を参照すると、回転基板42には、ヒンジ43を介して一対の巻枠44が回動可能に取付けられている。各巻枠44は、回転基板42の対向面に共通する上記ヒンジ43によって連結されており、回転基板42を介してそれぞれの上端面同士を突き合わせて、巻軸を一致させて同軸的に配置された状態と、巻軸を回転基板42の平面に沿って互いにほぼ平行に配置された状態とで、回動可能に支持されている。
図6の実線は、一対の巻枠44が巻軸を一致させて同軸的に配置された状態を示しており、同図の想像線は、巻軸を回転基板42の平面に沿ってほぼ平行に配置された状態を示している。図6の想像線で示すように、巻軸を、回転基板42の平面に沿ってほぼ平行に配置された状態では、各巻枠44の中心線Lは、V字形をなして交差するように構成されている。これによって、後述するステータコア65の所定のスロット66に、巻枠44の前端部両側面が整合するようになっている。
なお、以後の説明において、巻枠44の上端面とは、後述するコイル受け治具60の上方に巻枠44を配置して、コイル受け治具60に移し渡すときの状態において、上方に位置する端面を意味し、また、巻枠44の下端面とは、上記状態において、下方に位置する端面を意味するものとする。
図7に示すように、巻枠44は、前方巻枠44aと後方巻枠44bとで構成されている。前方巻枠44a及び後方巻枠44bの下端面には、それぞれ係合孔44cが形成されている。この係合孔44cには、回転押え板36の突起36aが挿入されるようになっている。また、前方巻枠44aの上端面には支持孔44dが形成されている。この支持孔44dには、巻枠44の巻軸が回転基板42の平面に沿ってほぼ平行に配置されたとき、後述する図15に示す支軸71が挿入されて、巻枠44がコイル受け治具60に対して正確な角度で配置されるようにするためのものである。
また、前方巻枠44aの下面にはガイド棒挿入孔44eが形成されている。このガイド棒挿入孔44eは、巻枠44に巻き付けられたコイルをコイル受け治具60に受け渡すとき、コイル受け治具60の、例えば、ブレード等のガイド棒が挿入される部分となる。
後方巻枠44bは、支軸45を介して前方巻枠44aに対して傾動可能に支持されている。前方巻枠44a及び後方巻枠44bの対向する面には、それぞれバネ受け46、47が形成されており、これらのバネ受け46、47の間にバネ48が介装されて、後方巻枠44bを常に開いた状態に付勢するようになっている。
そして、巻枠44に巻き付けられたコイルをコイル受け治具60に受け渡すとき、後述する図15に示すプッシャ73によって、後方巻枠44bの上端面を押すことにより、後方巻枠44bは、図7中の想像線に示すように内側に傾動し、巻枠44に巻き付けられたコイルをコイル受け治具60に落とし込みやすくしている。この実施形態では、一対の巻枠44が、ヒンジ43を介して回転基板42の対向面に取付けられ、巻枠連結体50を構成している。
また、この実施形態の場合、巻枠連結体50は、それぞれの回転基板42の平面を一致させて、2組平行に配置されており、2組の巻枠連結体50に対して同時に巻線が施されるようになっている。
再び図1、3を参照すると、基台11の上面の前後寄り部分には、各巻枠連結体50に対応して、それぞれリフト装置51が設置されている。リフト装置51は、ガイドレール52によって、基台11の中央部方向に進退可能に設置されている。そして、リフト装置51に連結されたエアシリンダ53により、図3の実線で示す退避位置と想像線で示す動作位置とに移動可能とされている。
図17、18、19を併せて参照すると、リフト装置51は、エアシリンダ55によって昇降動作する押し上げ板54を有している。更に、この押し上げ板54の両側には、それぞれエアシリンダ56が設置され、このエアシリンダ56の作動ロッドが各巻枠44に向けて進退動作するプッシャ57をなしている。
図3を参照すると、基台11の上面中央部にはコイル受け治具60が設置されている。このコイル受け治具60は、基台61と、円筒状のホルダ62と、このホルダ62によって保持された複数本のブレード63及びウェッジガイド64とで構成されている。
ブレード63は、その外周面がステータコア65の対応する内歯67の内面に当接するように配列されている。このコイル受け治具60は、そのままコイル挿入治具として機能するものである。但し、コイル受け治具60として、いわゆるトランスファー治具を用いることもできる。トランスファー治具にコイルを受け渡したときには、このトランスファー治具から更にコイル挿入治具にコイルが受け渡されることになる。
コイル受け治具60は、図示しない昇降装置によって、巻枠44に向けて昇降可能に支持されている。図6に示すように、巻枠連結体50への巻線が終了し、巻枠44が回転基板42に対してヒンジ43を介して回動し、それらの下端面がコイル受け治具60方向に向いた状態では、各巻枠44に巻き付けられたコイルが、コイル受け治具60のブレード63の所定の間隙に配置されるようになっている。
この実施形態の場合、ブレード63は、コイルの内側に配置される固定ブレード63aと、コイルの外側に配置される可動ブレード63bとで構成されており、コイルが挿入される間隙は、固定ブレード63aと可動ブレード63bとの間に設けられる。また、この実施形態では、コイル受け治具60に合計8極のコイルが挿入されるようになっており、2つの巻枠連結体50による巻線操作を2回繰り返して行うことによって、合計8極のコイルが形成され、それぞれ対応するブレード63の間隙に落とし込まれるようになっている。なお、2回目の巻線操作の際に、コイル受け治具60は、図示しないインデックス装置によって回転し、まだコイルが挿入されていないブレードの間隙が、巻枠44に整合するように位置決めされる。
コイルを受け取ったコイル受け治具60は、図示しないコイル挿入装置に運ばれ、そこで図6中の想像線で示すように、ブレード63の先端部外周にステータコア65を装着され、コイル挿入装置によるコイル挿入が行われるようになっている。
図1、7、15を参照すると、天板13の中央部上面にはエアシリンダ70が設置されており、このエアシリンダ70の作動ロッドは、天板13を貫通して下方に伸び、その先端部に一対の支軸71が取付けられている。この支軸71は、図7に示した巻枠44の支持孔44dに挿入され、巻枠44をコイル受け治具60に対して正確な角度で支持するようになっている。
更に天板13上には、各巻枠44の下端面が下方に向いた状態において、後方巻枠44bの上方に位置する部分に、それぞれエアシリンダ72が設置されており、このエアシリンダ72の作動ロッドに取付けられたプッシャ73は、天板13を貫通して下方に延出され、図15に示すように後方巻枠44bの上端面を押圧し、図7の想像線で示すように後方巻枠44bを内側に傾動させるようになっている。なお、従来の巻線装置と同様に、このコイル巻線装置10においても、図示しないコイル払い落とし板が設けられており、各巻枠44に巻き付けられたコイルをコイル受け治具60に落とし込むときに、上記コイル払い落とし板が下降して、各巻枠44に巻き付けられたコイルを強制的にコイル受け治具60に落とし込むようになっている。
次に、このコイル巻線装置10を用いた巻線方法について、図8〜20を参照して説明する。
図8に示すように、巻線開始時においては、一対の巻枠44がそれらの上端面を回転基板42の対向する面に当接させて、巻軸を一致させて同軸的に配置され、各巻枠44の下端面には、左右からそれぞれ回転押え板36が当接し、各回転押え板36の突起36aが、巻枠44の係合孔44cに挿入されることによって回転押え板36と一体化される。
こうして、一対の巻枠44が回転基板42を介して、それらの両側が回転押え板36で押えられて、剛体化した巻枠連結体50を構成する。一方、図示しない導線リール等から繰り出された複数本の導線が互いに平行に並列されて、導線供給装置28の供給ローラ29(図3参照)とピンチローラ30との間に挿通保持される。
次に図9に示すように、モータ26が作動し、ボールネジ22が回転して、前後支持部材23が図中右方向にやや移動し、導線供給装置28が一方の回転押え板36に整合する位置で停止する。そして、供給ローラ29の回転により導線供給装置28から押し出された導線Wが、ロータリーシリンダ39の作動によりクランプ49に固定される。
次いで図10に示すように、モータ35の作動により巻枠連結体50が回転し、それと共にモータ26の作動により、前後支持部材23が図中右方向へ少しずつ移動する。その結果、巻枠連結体50には、導線Wが螺旋状に巻き付けられていく。
図11に示すように、導線Wが巻枠連結体50の図中左側の巻枠44に巻き付けられると、回転基板42を通過して、導線Wが右側の巻枠44に巻き付けられ始める。このとき、図5に示すように、導線Wは、回転支持枠40の分離部40dと回転基板42の切欠き部42aを通って、右側の巻枠44に巻き移るため、導線Wが回転基板42の周面に乗り上げることが防止される。その結果、回転基板42が回転しても、導線Wが回転基板42とローラ41とに挟まれて損傷することを防止できる。なお、回転基板42の外周には、複数のローラ41が配置されているため、切欠き部42aが一つのローラ41に面しても、他のローラ41によって回転可能に保持されることになる。
図12に示すように、導線Wが右側の巻枠44の下端面にまで巻き付けられると、前後支持部材23の移動が停止し、それと共にモータ35が停止して、巻枠連結体50の回転が停止する。このとき、巻枠連結体50の回転停止位置は、図示しないセンサーによって所定位置でなされるようになっている。
図13に示すように、巻枠連結体50の回転が所定位置で停止すると、ロック装置37のロックピン38が押出され、巻枠44を支持する図中左側の回転押え板36の、位置決め孔36bに挿入される。こうして、巻枠連結体50の回転角度が正確に規定されることになる。
また、モータ27の作動によってボールネジ25が回転し、導線供給装置28が前後ガイドレール24に沿って所定距離だけ後退する。この導線供給装置28の後退位置によって、右側の巻枠44から引き出された渡り線W´の長さを調整することができる。
次に図14に示すように、左右一対の回転押え板36がエアシリンダ33の作動によって後退し、左右一対の巻枠44がヒンジ43を介して回動し、それらの下端面が下方を向くように配置される。このとき、図1に示すエアシリンダ70の作動により、図14の支軸71が下降し、図7に示した支持孔44dに挿入されることにより、巻枠44の向きがコイル受け治具60のブレード63と正確に整合するように角度規制される。
次に図15に示すように、図示しない昇降装置によりコイル受け治具60が上昇し、対応するブレード63が、図7に示した巻枠44のガイド棒挿入孔44eに挿入される。この状態で図1に示すエアシリンダ72が作動し、図15に示すプッシャ73が下降して、図7に示す後方巻枠44bの上端面を押圧し、後方巻枠44bを前方巻枠44aに向けて傾動させる。その結果、巻枠44に巻き付けられたコイルは、巻枠44の下方に落下しやすくなる。
更に図示しないコイル払い落とし板が下降し、各巻枠44に巻き付けられたコイルを対応するブレード63の間隙に落とし込んで、コイル受け治具60に受け渡す。この場合、この実施形態では、一対の巻枠連結体50に同時に巻線が施されるため、合計4つの巻枠44にコイルが巻き付けられることになり、それぞれのコイルが、図6の想像線で示す巻枠44の外周に沿って、対応するブレード63の所定の間隙に落とし込まれることになる。
こうして、コイル受け治具60へのコイルの受け渡しが終了すると、図16に示すようにコイル受け治具60が元の位置に下降する。更にコイル受け治具60は、図示しない駆動手段によってほぼ90度回動し、コイルCが挿入されていないブレード63が、一対の巻枠連結体50の方向に向くように配置される。したがって、次の巻線操作の際に形成されるコイルは、ブレード63のコイルが挿入されていない間隙に挿入され、合計8極のコイルがコイル受け治具60に受け渡されることになる。
図17は、上記のようにコイル受け治具60が回動して、既に形成されたコイルCが90度回動した位置に移動し、次のコイルが挿入されるべきブレード63の間隙が、対応する巻枠44の下方に位置するように設置された状態が示されている。
この状態で図3に示したエアシリンダ53が作動し、リフト装置51が巻枠連結体50の下方に移動する。図18に示すように、この状態でエアシリンダ55が作動し、押し上げ板54が上昇して、回転基板42にヒンジ43を介して連結された、一対の巻枠44を押し上げる。
更に図19に示すように、エアシリンダ56の作動により、プッシャ57が上昇し、巻枠44を更に押し上げて、それらの上端面が回転基板42の対向面に当接し、それぞれの巻軸が一致して、同軸的に配置された状態とする。
更に図20に示すように、エアシリンダ33の作動により、回転押え板36が巻枠44の下端面に当接する位置まで押し出される。このとき、回転押え板36の突起36aが巻枠44の係合孔44cに挿入され、回転押え板36と巻枠44とが一体化される。こうして、一対の巻枠44が、回転基板42を介して同軸的に配置されて剛体となり、図8に示した巻線開始状態に戻る。
そして、次の巻線が開始され、前述したように、次の巻線によって形成されたコイルは、コイル受け治具60の、まだコイルが挿入されていないブレード63の所定の間隙に挿入され、合計8極のコイルが形成されて、コイル受け治具60に挿入されることになる。
こうして、コイル受け治具60に挿入されたコイルは、この実施形態の場合、コイル受け治具60がコイル挿入治具をなしているため、そのままコイル挿入装置へ運ばれ、コイル挿入装置において、ブレード63の先端部にステータコア65が装着され、コイル挿入装置のストリッパーによりコイルが押し上げられて、ステータコア65の対応するスロット66に挿入されることになる。
このとき、複数本の並列された導線のうち、巻枠44の下方に位置する導線は、スロット66の内径側に位置し、巻枠44の上方に位置する導線は、スロット66の外径側に位置する傾向がある。
一方、図15(a)及び図16(a)の左側に位置する巻枠44に巻き付けられる導線は、巻枠44の下方から上方に向けて巻線が施されており、右側に位置する巻枠44に巻き付けられる導線は、巻枠44の上方から下方に向けて巻線が施されていて、左側の巻枠44において下方に位置した導線は、右側の巻枠44においては上方に位置するようになり、導線の配列が逆転した状態となる。
そして、巻枠44からコイル受け治具60に落とし込まれたコイルは、コイル挿入装置によって、ステータコア65の所定のスロット66に挿入されるとき、前記と同様に巻枠44の下方に位置する導線が、スロット66の内径側に位置し、巻枠44の上方に位置した導線がスロット66の外径側に位置するように挿入される傾向がある。
結果として、一本の導線について見たとき、左側の巻枠44に巻き付けられて、ステータコア65のスロット66に挿入されたときの配置傾向と、右側の巻枠44に巻き付けられて、コイル受け治具60に落とし込まれ、ステータコア65のスロット66に挿入されたときの配置傾向とは、逆転した傾向になり、両コイルを通して見ると、各導線ごとのステータコア65のスロット66内における位置の偏りが平均化され、各導線のインダクタンスがほぼ均一化されることになる。
このようにコイルの向きを、逆転させてスロットに挿入することを、いわゆる転位と呼んでいるが、本発明のコイル巻線装置10によれば、特別な付加的な操作や構造を要することなく、上記転位をもたらすことができ、それによって優れた性能の回転電機を提供することができる。
また、本発明のコイル巻線装置10においては、巻線時に一対の巻枠44が、その両側を回転押え板36で押えられて剛体となるので、巻枠連結体50を高速で回転させ、巻線速度を高めることができる。また、回転基板42を介して、巻軸を一致させて同軸的に配置された一対の巻枠44には、巻線を連続して施すことができ、一つの巻枠44から他方の巻枠44に渡るときに、巻線操作を中断する必要がない。更に端面同士を突き合わせた一方の巻枠44から他方の巻枠44へ渡り線が移動するため、渡り線の長さを短くすることができる。
また、巻線後に巻枠44を回動させて、コイル受け治具60にコイルを落とし込むように上下に並列して配置させた状態では、渡り線は、一方の巻枠44の上端面から他方の巻枠44の上端面に移動する状態となるため、渡り線の長さを長くする必要もない。
更に、複数本の導線をボビン等に予め巻き取っておいたり、ボビンから引き出した導線をフライヤ等により巻線したりする構造が必要ないため、装置をコンパクトにすることができ、製造コストも低減することができる。
更にまた、図13で説明したように、巻き終わり後の導線供給装置28の後退量を適宜設定することによって、巻き終わりリード線の長さを自由に変更することができる。
更にまた、コイルをステータコア65に挿入したとき、各リード線はステータコア65の同じ側の端面から取り出されるので、リード線処理作業が容易となる。
そして、この実施形態においては、巻枠連結体50を2組並列して配置し、2つの巻枠連結体50に同時に巻線を施すので、巻線作業を更に高速化することができる。
図21〜図32には、本発明によるコイル巻線装置の他の実施形態が示されている。この実施形態は、全体的な構成は前記実施形態と同じであり、巻枠連結体と、その支持構造だけが相違するので、各図には、その要部だけを示すことにする。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略することにする。
図21〜図23に示すように、このコイル巻線装置10aの巻枠連結体50aは、回転基板42を介して連結された一対の巻枠44からなる連結体が、中間回転板75を介して2組連結されるように構成されている。
回転基板42にヒンジ43を介して連結された一対の巻枠44が、それらの上端面を回転基板42の対向面に当接させて、それらの回転軸を一致させて、同軸的に配置された状態(図21,22参照)と、それらの巻軸が回転基板42の平面に沿ってほぼ平行に配置された状態(図23参照)とで、回動可能に支持されている点は前記実施形態と同様である。しかし、この実施形態では、上記一対の巻枠44と、一つの回転基板42からなる連結体が、中間回転板75を介して2組、同軸的に配置されている点が異なっている。
各巻枠44が、それらの上端面を対応する回転基板42の対向面に当接させて、同軸的に配置された状態では、中間回転板75の対向面に、その両側に位置する巻枠44の下端面が当接し、更に両端に位置する巻枠44の下端面に、回転押え板36が当接するようになっている。こうして4つの巻枠44を、巻軸を一致させて同軸的に配置し、それらの両端部を一対の回転押え板36で保持して、4つの巻枠44に連続して巻線を施すことができる。
なお、図示していないが、この実施形態では、上記4つの巻枠44を連結してなる巻枠連結体50aが2組平行に配置され、2つの巻枠連結体50aに同時に巻線が施され、1つのサイクルで合計8つの巻枠に巻線されるようになっている。このように、巻枠連結体を2組平行に配置して、それぞれの巻枠連結体に同時に巻線を施して巻線スピードを高めることができるが、導線を2つの巻枠連結体に順次巻き付けて連続して巻き付けることにより、多数の巻枠に連続して巻線を施すこともできる。更に、装置コストを低減させる場合には、巻枠連結体50aを1つだけ設け、1つの巻枠連結体50aに巻線を施す作業を2回繰り返すことにより、合計8つの巻枠に巻線されるようにしてもよい。
各巻枠連結体50aの各巻枠44を、それらの下端面がコイル受け治具60側に向くように回動させたとき、それらの配置は図23で示すような位置となる。この状態では、各巻枠44に巻き付けられたコイルは、コイル受け治具60のブレード63の所定の間隙に対応しておらず、各巻枠44がコイル受け治具60のホルダ62の所定の間隙に整合するように、巻枠44を移動させる必要がある。この移動は、回転基板42を保持する回転支持枠40(図25参照)を移動させることによって行われる。
図24及び図25に示すように、回転支持枠40は、天板13の下面に配設された支持板76を介して取付けられている。支持板76はガイド溝76aを有し、このガイド溝76aに回転支持枠40に取付けられたガイドローラ77が嵌合して保持されている。ガイドローラ77は、ガイド溝76aに沿って移動可能とされている。
図26を併せて参照すると、天板13の下面には、エアシリンダ78が取付けられており、その作動ロッド79の先端が、回転ホルダ80を介して、回転支持枠40に取付けられた支軸81に連結されている。すなわち、回転支持枠40は、エアシリンダ78の作動ロッド79と、ガイド溝76aに嵌合するガイドローラ77とによって、支持板76の下面に取付けられている。
図23〜図26は、巻枠連結体50aに巻線が施され、各巻枠44が回転基板42の平面に沿ってそれらの巻軸をほぼ平行にされた状態を示しているが、この状態において、各回転支持枠40及び回転基板42は、巻枠連結体50aの巻軸に対して垂直に配置されている。
図27〜図30は、エアシリンダ78を作動させて、回転支持枠40を移動させた状態を示している。すなわち、エアシリンダ78の作動ロッド79を延出させると、その先端にある回転ホルダ80が押し出され、回転支持枠40の支軸81が押し出される。
しかしながら、回転支持枠40の一端にはガイドローラ77が設けられ、このガイドローラ77がガイド溝76aに嵌合しているため、各回転支持枠40は、図27及び図30に示すように、その一端がコイル受け治具60の中心に向かうように移動し、各回転支持枠40がほぼ90度の角度をなして放射状に配列される。
その結果、回転支持枠40に保持されている回転基板42を介して連結された各巻枠44は、それぞれほぼ45度の角度をなして放射状に配列される。そして、各巻枠44の前端部両側縁が、コイル受け治具60のブレード63の所定の間隙に整合するように配置される。
したがって、この状態で各巻枠44に巻線されたコイルを、コイル受け治具60に落とし込むことにより、合計8極のコイルを、コイル受け治具60に落とし込んで保持させることができる。
この実施形態のコイル巻線装置10aによれば、各巻枠連結体50aによって、4つのコイルを連続して巻線することができ、巻線速度を更に向上させることができると共に、コイルの結線箇所を少なくすることができる。
図31〜図36には、本発明によるコイル巻線装置の更に他の実施形態が示されている。なお、この実施形態においても、巻枠連結体の構造を除く部分は、前記各実施形態と同様であるため、図面にはその要部だけを示し、前記実施形態と共通する部分には、同符号を付してその説明を省略することにする。
図31及び図32に示すように、この巻枠連結体50bは、回転基板42を介して連結された一対の巻枠44が、合計4組、同軸的に連結可能に配列されて構成されている。各組の巻枠44同士が当接する部分には、前記実施形態と同様に中間回転板75が配置されている。その結果、この実施形態の巻枠連結体50bは、合計8つの巻枠44を同軸的に連結可能に構成されている。
図31及び図32における実線は、各巻枠44をそれらの巻軸を一致させて、同軸的に配置された状態を示し、同図の想像線は、各巻枠44をそれらの巻軸が回転基板42の平面に沿って互いにほぼ平行に配置された状態を示している。したがって、この実施形態においては、合計8つの巻枠44を同軸的に配置させた状態で、その一端から他端に向けて8つの巻枠44に連続して巻線を施すことができる。
図33は、巻枠連結体50bに巻線を施し、各巻枠44を回転基板42の平面に沿って、それらの巻軸を平行に配置させた状態を示している。各巻枠44を支持する合計4つの回転基板42は、巻枠連結体50bの巻軸に対してほぼ垂直にかつ互いに平行に配置されている。この状態では、各巻枠44は、コイル受け治具60のブレード63の所定の間隙に整合するように配置されていないので、前記実施形態と同様に、回転支持枠40を移動させて、各巻枠44をコイル受け治具60に整合させる必要がある。
この移動手段について説明すると、巻枠連結体50bの中心に配置された中間回転板75aの両側には、2つの回転支持枠40a、40bと、それらの間に配置された1つの中間回転板75bとがそれぞれ配置されている。この実施形態では、上記左右にある2つの回転支持枠40a、40bと1つの中間回転板75bとが、第1支持板85、第2支持板86、第3支持板87によって支持されている。
第1支持板85は、図示しない天板13の下面に、後述する態様で移動可能に取付けられている。第1支持板85には、巻枠連結体50bの中心に配置された中間回転板75aの両側に位置する回転支持枠40aが取付けられると共に、第2支持板86が、第1支持板85に対して後述する態様で移動可能に取付けられている。第2支持板86には、両側の中間回転板75bが取付けられると共に、第2支持板86に対して第3支持板87が後述する態様で移動可能に取付けられている。そして、この第3支持板87に、最も外側に位置する回転支持枠40bが取付けられている。
そして、この実施形態では、各巻枠44に巻き付けられたコイルをコイル受け治具60に整合させるため、上記各支持板85、86、87が次のように動作する。
図34に示すように、まず第1支持板85が移動し、内側の回転支持枠40aを、中心に配置された中間回転板75aに対して、ほぼ45度の角度をなすように移動させる。その結果、各回転支持枠40aの回転基板42に支持された、それぞれの巻枠44は、コイル受け治具60のブレード63の所定の間隙に、それらの前端部両側が整合するように配置され、各巻枠44に巻き付けられたコイルが上記間隙に整合する位置となる。
次いで図35に示すように、第1支持板85に対して第2支持板86が移動し、第2支持板86に取付けられた中間回転板75bが、上記回転支持枠40aに対してほぼ45度の角度をなすように配置される。その結果、各中間回転板75bは、中心に配置された中間回転板75aに対して、90度の角度をなして放射状に配置される。
更に、図36に示すように、第2支持板86に対して第3支持板87が移動し、第3支持板87に取付けられた回転支持枠40bが、中間回転板75bに対してほぼ45度の角度をなすように配置される。その結果、各回転支持枠40bの回転基板42に支持された巻枠44が、コイル受け治具60のブレード63の所定の間隙に、それらの前端面両側部を整合させるように配置される。
その結果、各巻枠44に巻き付けられたコイルが、上記ブレード63の所定の間隙に整合する。こうして、合計8つの各44に巻き付けられたコイルが、コイル受け治具60のブレード63の対応する間隙に整合するように配置され、以後は前記実施形態と同様にして、コイルがコイル受け治具60のブレード63の所定の間隙に落とし込まれる。
このようにこの実施形態によれば、合計8つの巻枠44を同軸的に連結可能に配置した巻枠連結体50bを用いることにより、8つの巻枠44に連続して巻線を施すことができ、それぞれの巻枠44に巻き付けられたコイルを、コイル受け治具60のブレード63の対応する所定の間隙に整合させて、コイル受け治具60に落とし込むことが可能となる。その結果、巻線操作を高速で行うことができると共に、リード線の取出しを2箇所で行うことが可能となる。