JP5433955B2 - 溶銑への脱硫剤供給装置及び脱硫剤供給方法 - Google Patents

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本発明は、溶銑への脱硫剤供給装置及び脱硫剤供給方法に係わり、詳しくは機械的撹拌手段を備えた取鍋に溶銑を保持し、該溶銑へ脱硫剤を添加して脱硫する技術に関する。
高炉から出銑された溶銑には、通常、鋼材の品質にマイナスの影響を与える不純成分としての硫黄が0.010〜0.050質量%程度含有されている。そのため、従来、製鋼工程の転炉操業では、要求される鋼材が許容される硫黄含有量(厳しいものでは、0.0010質量%以下)に応じて、素材である溶銑の脱硫が行われていた。近年、この転炉での脱硫負荷を低減する等の理由で、転炉へ供給される溶銑の硫黄を予め除去する所謂「溶銑予備処理」が普及している。この溶銑予備処理による脱硫技術の一つに、図2に例示するように、機械的撹拌手段(インペラーと称する耐火物製の回転翼)1を備えた取鍋2に溶銑3を保持し、該溶銑3へ脱硫剤4を添加して撹拌することで脱硫するものがある。
この脱硫剤4としては、脱硫反応をCaO+→(CaS)+として進行させるため、CaOを主成分とした物質が用いられる。ここで、( )はスラグ中にあること、下線は溶銑中に溶解していることを表す。そして、この脱硫剤は高融点で溶け難いので、その滓化(スラグ化)を促進するために、滓化促進剤として蛍石(CaF)が混合されたり、あるいは同時に添加されることが多かった。
ところで、溶銑脱硫処理時に発生するスラグは、セメント原料や石灰源として高炉等にリサイクルされて再利用されているが、フッ素を含有しているので、それが土壌へ侵食すると、環境上の問題が生じる恐れがある。従って、フッ素の環境へ与える悪影響が強く叫ばれるようになっている今日では、蛍石を使用せずに脱硫することが切望される。
そこで、本出願人は、蛍石を添加せずに、脱硫剤を従来より細粒にして取鍋に保持した溶銑へ供給するようにしている。細粒であると、脱硫剤が滓化し易く、効率が良いからである。そのような脱硫剤の供給装置を例示したのが図2であり、貯蔵タンク5からスクリュー・フィーダー6で切り出した脱硫剤4としての生石灰を、気体で加圧したリフトタンク7と称する搬送手段を介して取鍋2の上方に配設したサービス・タンク8に送り、計量ホッパー9で投入量を調整してからシュート10を経て、取鍋2へ自然落下させるものである。つまり、一言するならば、回転翼1を備えた取鍋2内に保持した溶銑3に自然落下で添加する脱硫剤4の搬送及び投入経路を備えた脱硫剤供給装置であった。
また、本出願人は、先に、粒、塊状の脱硫剤を添加するのに加えて、別の経路で反応性に優れた細粒の脱硫剤を上吹きランスを介して搬送用ガスで溶銑上に吹き付けて、脱硫する方法をも提案している(特許文献1参照)。
しかしながら、前者の脱硫剤供給装置(図2参照)では、溶銑3の上方からシュート10を介して細粒の脱硫剤4を添加するが、シュート10の落下端より溶銑3の表面まで距離があり、その空間で飛散して、溶銑3に到達する脱硫剤4の量が低下し、脱硫剤4の添加歩留りが著しく低下してしまったり、あるいは添加された脱硫剤が溶銑浴面上で凝集した後溶銑に浸入するので、反応界面積が小さく、脱硫効率が劣るという問題があった。また、後者の特許文献1記載の脱硫剤供給装置では、投射により、脱硫剤が凝集していない状態のまま溶銑浴面下に供給するので、細粒の脱硫剤の溶銑浴内での均一分散を図ることができる利点があるが、前者のような自然落下による脱硫剤供給設備を既に備えている脱硫装置の場合には、新たに脱硫剤投射用の設備全体を新設しなくては、そのような利点を享受することができない。そのため、建設のためのコストが嵩むという問題があった。
特開2005−179690公報
本発明は、かかる事情に鑑み、小規模な設備改造だけで安価に、細粒の脱硫剤の添加歩留りを従来より向上可能な溶銑への脱硫剤供給装置及び脱硫剤供給方法を提供することを目的としている。
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
すなわち、本発明は、回転翼を備えた取鍋内に保持した溶銑に、貯蔵タンクに貯めた脱硫剤を切り出し、気体で加圧したリフト・タンクを介して、取鍋上方のサービス・タンクに送り、計量ホッパーで投入量を調整してからシュートを経て自然落下で添加する脱硫剤の搬送及び投入経路を備えた溶銑への脱硫剤供給装置において、前記貯蔵タンクの下流に前記脱硫剤の受け入れ容器を設け、該受け入れ容器から前記リフト・タンクに前記脱硫剤を気送する搬送経路の途中で脱硫剤の供給管を分岐して、別の搬送経路を形成する供給管を設けると共に、該分岐した供給管を経由して脱硫剤を溶銑に吹き付ける上吹きランスを前記取鍋の上方に追設することを特徴とする溶銑への脱硫剤供給装置である。この場合、前記自然落下で添加する搬送経路と前記別の搬送経路の各配管には、それぞれの配管内を通過する脱硫剤及び搬送用ガスの量を調整する流量調整弁を設けてなることが好ましい。
また、本発明は、回転翼を備えた取鍋に溶銑を保持し、回転翼で撹拌しつつ脱硫剤を添加して該溶銑の脱硫を行うに際して、請求項1記載の装置を用い、前記自然落下で添加する搬送経路と前記別の搬送経路とを用いて脱硫剤を供給し、前記上吹きランスを介しての溶銑への吹き付けを行うと共に、脱硫を行う前の除滓後に取鍋内に残留するスラグ量に応じて、前記シュートから脱硫剤を投入することを特徴とする溶銑への脱硫剤供給方法である。この場合、前記脱硫剤の粒径を1mm以下としたり、あるいは前記脱硫剤が、蛍石を含まないものであることが好ましい。さらに、前記上吹きランス先端の溶銑面からの高さh(m)を、該上吹きランスのノズル径D(m)に対して、h≦48.0Dとするのが一層良い。
本発明では、既存の装置に簡単な工夫を凝らすだけで、細粒の脱硫剤を溶銑中に吹き付ける機能を備えるようにしたので、滓化促進剤としてフッ素を含有する蛍石を用いずとも、効率良く溶銑の脱硫ができるようになる。また、脱硫剤の添加歩留りが従来より格段に向上する。
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の最良の実施形態を説明する。
既設の脱硫剤供給装置は、図2に示したように、貯蔵タンク5と、該貯蔵タンク5から切り出された脱硫剤4を搬送するスクリュー・フィーダー6と、該脱硫剤4を回転翼1を備えた取鍋2の上方に配設したサービス・タンク8に送るため、気体で加圧されたリフトタンク7と、前記サービス・タンク8の直下に設けられ、取鍋2への脱硫剤4の投入量を調整する計量ホッパー9と、計量された脱硫剤4を取鍋2へ自然落下させるシュート10とからなる搬送及び投入経路を備えるものであった。
そこで、発明者は、溶銑への脱硫剤の添加歩留りを向上させるには、自然落下による飛散を低減させる必要があると考え、特許文献1に記載されているような溶銑への脱硫剤の吹き付けを加えることにした。ただし、引用文献1の脱硫剤供給装置のように、大掛かりな吹き付け用脱硫剤の搬送経路と自然落下させる脱硫剤の搬送経路とを2系列で個別に設けるのでは、設備費が増大するので、既設の装置の改造だけで小型化を図ることにした。
そして、図1に示すように、搬送経路の途中、つまり気送に必要な前記リフトタンク7の上流側で脱硫剤4の供給管を分岐させ、別の搬送経路を形成する分配手段11を設けると共に、該分岐した方の脱硫剤4の供給管に、溶銑3に吹き付ける上吹きランス12を前記取鍋2の上方に追設するようにしたのである。このような改造であれば、既設設備のレイアウトを大幅に変更する必要がなく、容易に行えるからである。
なお、本発明では、前記分配手段11を特に限定するものではない。しかしながら、図1に示したような脱硫剤4の受け入れ容器13と、該容器13から切り出された脱硫剤4を気送する搬送用ガスを供給するコンプレッサー14と、前記自然落下で添加する搬送経路と前記別の搬送経路の各配管内を通過する脱硫剤及び搬送用ガスの量を調整する流量調整弁16とで形成するのが良い。このような分配手段11は、粉体の気送手段としての利用実績があり、信頼性があるからである。また、本発明では、搬送及び投入経路で利用する脱硫剤の貯蔵容器、搬送手段、投入手段等も特に限定するものではない。例えば、貯蔵容器がホッパー、タンク等、搬送手段がスクリュー・フィーダー、チェーン・コンベアー等、シュートが樋状、平板状、円筒状等でのいずれであっても良いからである。
次に、上記した脱硫剤供給装置を用いる脱硫剤の供給方法を説明する。
それは、回転翼1を備えた取鍋2に溶銑3を保持し、回転翼1で撹拌しつつ脱硫剤4を添加して該溶銑3の脱硫を行うに際して、前記脱硫剤4の添加を、シュート10を介した自然落下投入と、上吹きランス12を介しての溶銑3への吹き付けとのいずれか一方、若しくは双方を併用して行うものである。
基本的には、脱硫剤の利用効率の高い、投射法を主として行う。すなわち、分配手段11から上吹ランス12に脱硫剤を供給し、シュート10からの供給を停止する。なお、脱硫前の溶銑は、その前の、高炉スラグや溶銑脱珪スラグ等が残存しないように、予め除滓を行うが、100%の除滓は困難である。除滓が不充分である場合には、そのようなスラグが、脱硫反応でスラグ中に移行したCaSを再度酸化し、Sが溶銑中に戻る、所謂「復硫」を生じせしめることになる。このような場合には、機械撹拌脱硫を行う前、あるいは行っている間に、シュートから脱硫剤を投入して、浴面上のスラグを改質(CaOの添加によって塩基度を高め、復硫しがたい条件とすること)が好ましい。
また、本発明では、脱硫剤の吹き付け速度(搬送ガスの流速で評価)を10(m/秒)以上とする。10m/秒未満では、遅すぎて飛散防止効果が小さいからである。脱硫剤の吹付け速度の上限は特に定めるものでないが、高速化するためには、搬送ガスの供給圧を高めたり、ランス内の磨耗対策が難しくなるので、設備上の制約から100m/秒以下程度にとどめるのが良い。なお、上吹きランスの角度は特に限定しないが、通常は湯面に垂直で良い。
本発明で用いる脱硫剤としては、石灰系の生石灰(CaO)が好ましく、石灰石(CaCO)やドロマイトを利用しても良い。また、脱硫処理後の取鍋から回収したスラグを再利用して使用しても良い(リサイクル脱硫という)。滓化促進剤としては、フッ素含有物質をできるだけ使用しない観点からは、アルミナ含有物質が好ましく使用できる。特にアルミニウムの精錬や溶解の際に発生するアルミ滓は、安価でしかも金属アルミニウム分を含むため、溶銑中の溶存酸素を低減し、脱硫反応に有利な還元雰囲気に保持する効果も得られるので、特に好ましく使用できる。なお、特にS含有量の上限が厳しく制限される超極低硫鋼(S含有量が5ppm未満)を溶製するための溶銑については、環境に負荷を与えない程度の少量の蛍石を併用することを妨げない。また、脱硫剤の粒径を1mm以下とすると、反応界面積の増大と併せて、滓化の促進を図ることができるので、好ましい。
さらに、本発明では、上吹きランス先端の溶銑面からの高さh(m)を、該上吹きランスのノズル径D(m)に対して、h≦48.0Dとするのが一層良い。この条件を満足すると、先に出願人が特願2007−249421号にて知見し開示したように、脱硫効率が高いからである。
本発明に係る図1の機械撹拌式脱硫装置を用い、溶銑3の予備脱硫処理を行った。取鍋2内の溶銑保持量は280トン(記号:t)とした。この処理対象の溶銑3は、高炉から出銑された後、他の予備処理装置で脱珪及び脱燐が施されており、その平均組成は、[Si]:0.20〜0.50質量%、[C]:4.0〜4.5質量%、[Mn]:0.15〜0.35質量%、[P]:0.080〜0.150質量%、[S]:0.010〜0.040質量%であり、脱硫時の溶銑の温度は1250〜1400℃で、回転翼の回転数を80〜140rpmとした。
脱硫剤4は、生石灰単未とし、粒径を1mm以下に調整したものである。搬送ガスとしては、流量5〜20m(標準状態)/分として不活性なアルゴン・ガスを用いた。なお、発明の効果を確認するため、図2に示した従来の脱硫剤供給装置を用い、脱硫剤4の自然落下で脱硫処理することも行った。この場合に用いる溶銑3は、上記した本発明のものと同一である。
操業結果を一括して表1に整理した。
Figure 0005433955
なお、表1における脱硫剤4の添加歩留りは、下記で定義した値であり、溶銑3の脱硫効率は、脱硫処理前後の溶銑中の差を、処理開始前の溶銑中に対して百分率で示した値である。
脱硫効率(%)=[処理後スラグ中CaO(kg/t)]/[装入した脱硫剤中のCaO(kg/t)]×100
ここで、脱硫剤にはリサイクルスラグを含めても良い。
表1より、本発明によれば、脱硫剤の添加歩留りが70〜85の範囲で、脱硫効率が67〜96%と、従来操業より非常に良い操業結果が達成されることが確認できた。
本発明に係る脱硫剤供給装置を示す側断面図である。 従来の脱硫剤供給装置を示す側断面図である。
符号の説明
1 機械的撹拌手段(回転翼)
2 取鍋
3 溶銑
4 脱硫剤
5 貯蔵タンク
6 スクリュー・フィーダー
7 リフト・タンク
8 サービス・タンク
9 計量ホッパー
10 シュート
11 分配手段
12 上吹きランス
13 受け入れ容器
14 コンプレッサー
15 チェーン・コンベアー
16 流量調整弁

Claims (6)

  1. 回転翼を備えた取鍋内に保持した溶銑に、貯蔵タンクに貯めた脱硫剤を切り出し、気体で加圧したリフト・タンクを介して、取鍋上方のサービス・タンクに送り、計量ホッパーで投入量を調整してからシュートを経て自然落下で添加する脱硫剤の搬送及び投入経路を備えた溶銑への脱硫剤供給装置において、
    前記貯蔵タンクの下流に前記脱硫剤の受け入れ容器を設け、該受け入れ容器から前記リフト・タンクに前記脱硫剤を気送する搬送経路の途中で脱硫剤の供給管を分岐して、別の搬送経路を形成する供給管を設けると共に、該分岐した供給管を経由して脱硫剤を溶銑に吹き付ける上吹きランスを前記取鍋の上方に追設することを特徴とする溶銑への脱硫剤供給装置。
  2. 前記自然落下で添加する搬送経路と前記別の搬送経路の各配管には、それぞれの配管内を通過する脱硫剤及び搬送用ガスの量を調整する流量調整弁を設けてなることを特徴とする請求項1記載の溶銑への脱硫剤供給装置。
  3. 回転翼を備えた取鍋に溶銑を保持し、回転翼で撹拌しつつ脱硫剤を添加して該溶銑の脱硫を行うに際して、
    請求項1記載の装置を用い、前記自然落下で添加する搬送経路と前記別の搬送経路とを用いて脱硫剤を供給し、前記上吹きランスを介しての溶銑への吹き付けを行うと共に、脱硫を行う前の除滓後に取鍋内に残留するスラグ量に応じて、前記シュートから脱硫剤を投入することを特徴とする溶銑への脱硫剤供給方法。
  4. 前記脱硫剤の粒径を1mm以下とすることを特徴とする請求項3記載の溶銑への脱硫剤供給方法。
  5. 前記脱硫剤が、蛍石を含まないものであることを特徴とする請求項3又は4記載の溶銑への脱硫剤供給方法。
  6. 前記上吹きランス先端の溶銑面からの高さh(m)を、該上吹きランスのノズル径D(m)に対して、h≦48.0Dとすることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の溶銑への脱硫剤供給方法。
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