JP5131870B2 - 溶銑の脱燐処理方法 - Google Patents

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本発明は、溶銑の脱燐処理方法に関し、具体的には、転炉を用いて高能率かつ高効率で溶銑を予備脱燐処理する方法に関する。
近年、製鋼プロセス全体が著しく高能率化かつ高効率化しており、溶銑脱燐処理においても、高能率化かつ高脱燐能化が強く求められている。この求めに応えるためには、溶銑脱燐反応は溶銑中の燐を酸化してスラグへ移行させる反応であるから、燐を酸化するための酸素源とスラグを生成して燐を吸収させるためのCaO源の供給を速くし、かつ、極力短時間でCaO源を滓化してスラグ組成を適切に調整しなければならない。しかし、短時間でCaO源を十分滓化させることは一般に困難であり、脱燐不良が問題になりがちである。また、酸素供給速度を上げるとスロッピングやスピッティングなどが発生し易くなる。
従来から、溶銑脱燐処理では溶銑温度が1300〜1400℃程度の低温で、10分間程度の酸素供給時間で脱燐率80%以上を達成するなどの効果を上げてきた。しかし、大概の場合、CaO源の滓化促進のために蛍石などの滓化促進剤を多用する必要があった。
しかし近年では、溶銑の脱燐処理後のスラグを含め、製鋼スラグの有効利用が重視されるようになってきており、その有効利用率を高めるために、スラグを土木材料や路盤材に用いる際の要請に配慮する必要がある。そのため、蛍石は既に実質的に使用できなくなっているし、その上、蛍石を使用せずに処理後のスラグ中の未反応CaO(フリーCaO、f.CaOともいう)の含有濃度を極力低減させる技術の必要性も高くなってきている。
そこで、近年、例えば特許文献1に開示されるように、CaO源を、粉状化して上吹きランスから酸素とともに溶銑に吹き付ける方法が多く利用されるようになっている。さらに、脱燐処理後のスラグ中f.CaOを一層低減させるために、取鍋スラグなどのAl含有スラグを蛍石に代わる滓化促進剤として使用する方法も利用されるようになっている。
しかし、特許文献1により開示された方法では、溶銑1トン当たりの上吹き酸素流量が0.5〜2.0Nm/minで、脱燐吹錬時間は7〜10分間である。最近では、この程度の処理時間でも長過ぎて不十分であるとされるようになってきた。この脱燐吹錬時間をさらに短縮するには、上吹き酸素の供給流量をさらに増やし、かつ、CaO源の滓化を合わせて速めなければならない。
この方法では、CaO源の滓化を促進するために、CaO源を粉状化して上吹きランスから酸素とともに溶銑に吹き付けている。しかし、一般に酸素供給速度を高めるだけでもスピッティングが増加する傾向にあるところ、この方法では酸素と同時に粉状CaO源の供給速度も高めることになるために、スピッティングが一層激しくなることが容易に予想される。そこで、その問題を回避するために、上吹きランスから供給する粉状CaO源の比率を減少させ、塊状のCaO源を転炉上から別途投入することによって供給する方法が考えられるが、そうすると別途供給した塊状のCaO源の滓化が遅れて、脱燐不良やf.CaO増加の問題が発生してしまう。その対策として、取鍋スラグなどのAl源の供給量を増やすと、スラグがフォーミングし易くなってスロッピングが発生してしまうなどの問題が現われてくる。
以上説明したように、溶銑脱燐処理の高能率化かつ高脱燐能化に絡む問題は多く、これらの問題が相互に関係しているので、それらの問題を総合的に解決することは容易ではない。そこで、特許文献2には、先ず取鍋スラグなどを添加して溶銑上にカバースラグを生成させ、その後、上吹きランスから酸素とともに粉状CaO源を吹き付けることによって、スピッティング量を低減する方法が開示されている。ただし、特許文献2には、この方法における上吹き酸素の好適な流量が溶銑1トン当たり0.5〜2.5Nm/minであると開示されているので、ある程度の高能率化が達成されていることは理解されるものの、この方法では本来の脱燐処理である粉体上吹き吹錬のための時間が制約を受けてしまっていて、さらに高能率化するための工夫の余地は残されていると考えられる。
このように、特許文献2には、取鍋スラグをカバースラグの生成のために利用する方法は開示されているものの、酸素流量を高速化した場合の滓化促進やスロッピング防止と取鍋スラグの利用方法との関係については、開示も示唆もされていない。
一方、特許文献3には、溶銑脱燐炉に溶銑を装入する前に0.05質量%程度の溶銑脱珪処理を行って適当量のカバースラグを予め生成させておく方法が開示されている。この方法により酸素上吹き時間を全部で9分間とし、その内で粉体CaOを伴わないカバースラグ生成処理時間を1分間に短縮した場合に、上吹き酸素流量が溶銑1トン当たり1.4Nm/minでスピッティングは全く観察されなかったことが開示されている。しかし、さらに酸素上吹き時間を短縮して溶銑脱燐処理を行う場合に関する課題や効果、並びにその課題の解決方法は、全く開示されていない。
さらに、特許文献4には、スラグ塩基度(=質量比[%CaO/%SiO],以下同様)を1.0以上2.5未満にしてCaO源の滓化を促進し、送酸速度を1.5〜5.0Nm/min/tonにしてもスピッティングやダストの発生量の増大を防ぐことができる溶銑の脱燐処理方法が開示されている。特許文献4では、単純にスラグ塩基度を低下させると脱燐能力が低下してしまうところ、送酸速度を高めてスラグの酸素ポテンシャルを高めることによって脱燐能力を補うことが開示されており、さらに粉粒状の精錬剤や固体酸素源を気体酸素とともに溶銑に吹き付けることによって、脱燐反応を効率的に促進できることが開示されている。つまり、この方法ではスラグの塩基度を下げる代わりにFeO濃度の上昇を図っているものと解される。
しかしこの方法では、低塩基度かつ高(T.Fe)のスラグが形成されることでスラグのフォーミングを助長し、スロッピングの頻度が増加する懸念がある。その上、粉状精錬剤を上吹きランスから酸素をキャリアガスとして溶銑に吹き付けて脱燐処理すると、特許文献2、3に開示されるようにスピッティングが増加する傾向があって何らかの工夫を必要とすると考えられるところ、特許文献4にはそのような工夫は何ら開示されていない。
特許第3557910号明細書 特許第3687433号明細書 特許第4196997号明細書 特開2008−266666号公報
従って、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解決し、スピッティングやダストの発生の抑制と、スロッピングの発生の抑制とを両立して高速送酸処理を実現しつつ、さらに高脱燐能を得ることができる溶銑の脱燐処理方法を提供することである。
スピッティングやダストの発生量を抑制しつつ送酸速度の増加を実現するためには、添加するCaO源の滓化を促進させるための対策が必要となる。そこで、本発明者らは、CaO粉を上吹きランスより溶銑に吹き付けるとともに取鍋スラグを添加しつつ、送酸速度2.0Nm/min/ton以上とする試験を行って、その時使用した取鍋スラグの粒度構成および添加タイミングと、脱燐処理スラグの滓化・スピッティング・ダストの発生・スロッピング発生および脱燐結果との関係を調べた結果、以下に列記する事項を知見し、本発明を完成した。
(1)取鍋スラグの最大粒径を制限し、かつ、脱燐処理時間(上吹き酸素の供給時間)中の早い段階でこの取鍋スラグを転炉内へ投入することによって、上吹き酸素の供給中の全期間にわたって溶銑上にカバースラグを形成させることができ、スピッティングの発生を抑制することができる。
(2)カバースラグが存在する条件下で粉状CaO源を酸素とともに溶銑へ吹き付けることによって、溶銑上のスラグが早期に比較的高い塩基度まで上昇させられ、かつ、そのAl濃度とT.Fe濃度とを適切な範囲にコントロールすることも合わせた総合的効果によって、スロッピングの発生を抑制することができる。
(3)最終的にスラグの化学組成を比較的高い塩基度とし、そのAl濃度とT.Fe濃度を適切な範囲にコントロールすることによって、溶銑中の燐濃度を十分低位にすることができる。
本発明は、上底吹き型の転炉を用い、スラグ生成剤として取鍋スラグをこの転炉内に投入し、上吹き酸素とともに粉状CaO源をこの転炉内の溶銑へ吹き付けて溶銑を脱燐処理する方法であって、取鍋スラグには最大粒径を30mm以下に調整したものを用い、上吹き酸素の供給速度を溶銑トン当たり2.0〜4.0Nm/minとし、かつ取鍋スラグの転炉内への投入を上吹き酸素の供給時間が30%経過する時点より前に完了させて、脱燐処理終了時点におけるスラグの化学組成を、塩基度(CaO質量%/SiO質量%):2.5〜3.5、Al質量濃度:3〜10%、T.Fe質量濃度:3〜15%に制御することを特徴とする溶銑の脱燐処理方法である。
本発明によれば、上吹き酸素流量2.0〜4.0Nm/min/tonとすることで脱燐処理における上吹き酸素の供給時間を3.0〜5.0分と高能率化しても、スピッティングやダストの発生およびスロッピングの発生を抑制しつつ溶銑脱燐率90%以上を達成することができるとともに、処理後のスラグ中の未反応CaO濃度が5質量%以下であるような、高能率かつ高効率の溶銑脱燐処理を実施することができる。
図1は、実施例において脱燐処理の対象とした溶銑トン当たりの上吹き酸素流量と脱燐率との関係を、取鍋スラグの調査条件で層別して示すグラフである。 図2は、実施例において脱燐処理の対象とした溶銑トン当たりの上吹き酸素流量とダスト発生量との関係を、取鍋スラグの調査条件で層別して示すグラフである。 図3は、実施例において脱燐処理の対象とした溶銑トン当たりの上吹き酸素流量と処理後スラグ中のフリーCaO濃度との関係を、取鍋スラグの調査条件で層別して示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明では、上吹きランスから酸素を溶銑トン当たり2.0Nm/min以上4.0Nm/min以下の流量で溶銑に吹き付ける。本発明では、上吹き酸素の吹付け時間を5分間以下という短時間で行うことを目的としているので、少なくとも溶銑トン当たり2.0Nm/min以上で安定して操業することができないと、この目標を達成することができないからである。しかし、それが4.0Nm/minを超えると、後述するように本発明をもってしてもスラグ生成コントロールが困難になり、脱燐率の低下やスピッティングやスロッピングの発生の増大をきたして、安定操業を行うことができなくなる。
また、本発明では、脱燐処理の早い段階で溶銑上にカバースラグを生成させ、かつ、別途供給するCaO源の溶融滓化を促進するために、スラグ生成剤として最大粒径30mm以下に調整した取鍋スラグを投入する。
この取鍋スラグは、連続鋳造終了後に取鍋内に残存したスラグであり、概ね表1に示す範囲の組成を有するものである。この表1で濃度を示す%表示は全て質量%である。これらの組成の内、特にAl濃度とT.Fe濃度は取鍋スラグ自身の融点を下げてその溶融性を高め、かつ、脱燐処理中の転炉内スラグの融点を低く維持するために重要であって、Al質量濃度は10%以上、T.Fe質量濃度は9%以上であることが好ましい。なお、取鍋スラグとしての特性上、Al質量濃度は30%以下、T.Fe質量濃度は16%以下が普通である。
取鍋スラグの投入目的の一つは早期に溶銑上にカバースラグを生成させることであるから、そのスラグ生成剤としての投入は、上吹き酸素の吹付け時間がその吹付け全時間の30%経過する時までに済ませなければならない。その投入方法は、スクラップシュートを用いて上吹き酸素の吹付けを開始する前に転炉内に一括して投入してもよいし、転炉の上に設置されたバンカーから上吹き酸素の吹付け中に転炉内に適宜分割投入してもよい。
また、取鍋スラグのサイズは、その早期滓化を確実に行うために最大粒径が30mm以下であるように予め篩い分けておく。さらに、上記した投入方法を用いるために、最大粒径が5mm未満の細かなスラグは除外しておく方が、脱燐処理後のスラグ成分の調整精度を高める上で好ましい。
さらに、本発明では、上記したスラグ生成剤としての取鍋スラグの投入に加えて、精錬用副原料としてCaO源を用いる。このCaO源には、CaOを40質量%以上含有している物質であって、生石灰や石灰石などの副原料のほか、転炉スラグも例示される。ただし、本発明では脱燐処理終了後のスラグ成分として塩基度(CaO質量%/SiO質量%)やAl%を所定の範囲に調整しなければならないので、表1のような組成を有する取鍋スラグをこの精錬用副原料としてのCaO源に用いることは、実際上適当ではない。また、転炉スラグも、そのスラグの組成が一定ではないために多用し難い。
Figure 0005131870
そこで、本発明では、スラグ生成剤としての取鍋スラグの投入量を確保した上で、さらに追加して投入する副原料として取鍋スラグと生石灰や石灰石などの天然鉱物起源の副原料とを用いて、処理後のスラグ成分を調整することが好ましい。
また、精錬用副原料としてCaO源の投入は、少なくともその一部を粉状として上吹き酸素とともに溶銑に吹き付ける必要がある。溶銑脱燐処理においてCaO源の溶融滓化を速くするためには、それらを粉状にして上吹き酸素とともに溶銑に吹き付けることが好適であると分かっているからである。特に、CaO源として生石灰または石灰石を用いる場合には、それらの全量を粉状として上吹き酸素とともに溶銑に吹き付けることが望ましい。
粉状CaO源のサイズは、酸素や窒素などのキャリアガスで安定して搬送できるためには最大粒径が1mm以下であることが望ましく、その滓化が速い方が脱燐促進に好ましいことからそれが0.1mm以下であることが一層望ましい。
粉状CaO源の吹付け時期は、上吹き酸素の吹付け中であればいつでもよいのであるが、本発明では上吹き酸素の吹付け時間が3.0分間以上5.0分間以下と短いために、上吹き酸素の吹付け開始とほぼ同時に開始し、その終了とほぼ同時に終了するという態様が実際的であり、望ましい。
本発明では、上記した諸要件により、上吹き酸素の供給開始直後からカバースラグを溶銑上に生成させ、かつ、そのスラグ組成を比較的に高塩基度にも関わらず低融点となる組成に脱燐処理中にも維持し、最終的に次に示すスラグ組成になるように制御して、スピッティングやスロッピングの発生を抑制しつつ、3.0分間以上5.0分間以下と短い処理時間により溶銑脱燐率90%以上で、処理後スラグ中のフリーCaO質量濃度が5%以下とする。
そのためのスラグ組成としては、先ず、処理後スラグの塩基度が2.5以上3.5以下でなければならない。この塩基度が2.5未満の条件では、本発明においてはスラグ中のT.Fe質量濃度が15%以上25%以下と比較的高い濃度でばらつき易いために、スロッピングの発生を抑えることが難しくなるからである。また、短い脱燐処理時間で脱燐率90%以上を達成するためにも、2.5以上の比較的高い塩基度の溶融スラグが必要である。一方、この塩基度が3.5を超えると、本発明のようにAl質量濃度を3〜10%かつT.Fe質量濃度を3〜15%とする条件下にあってもスラグの融点が高過ぎて溶融不十分になり易く、却って脱燐不良になる場合が発生する。また、そのような場合には、スピッティング増加も伴うので不適当である。
次に、処理後スラグのAl質量濃度は3%以上10%以下に調整しなければならない。このようにコントロールすることによって、取鍋スラグおよびCaO源の溶融滓化が容易になり、スピッティングを抑制できるとともに、粉状CaO源を吹き付けた際にスラグを適度に高塩基度化することができ、そのことによってスロッピングを抑制することができる。
さらに、T.Fe質量濃度を3%以上15%以下とすることで、上記したAl濃度調整の効果と相俟って、スピッティングおよびスロッピングを抑制することができる。このT.Fe濃度は、本発明のように上吹き酸素の流量が多い場合には高めになり易い上に、そのバラツキも大きくなり易い。しかし、底吹きガス流量を適切に調整することにより、T.Fe質量濃度を3〜15%の範囲に調整することが可能である。この底吹きガス流量は特に定めておく必要はないが、通常は溶銑トン当たり0.1Nm/min以上0.3Nm/min以下である。また、ガスの種類は転炉の底吹きガスとして慣用されているものを用いればよく、例えばNやCO又はCOの他、O等も挙げられる。
なお、上吹き酸素の吹付け終了時点の溶銑温度は、CaO源の溶融滓化を促進しスラグの反応性を高める意味では高めの方がよいが、一方、スラグの脱燐能力は低めの方が一般的に好ましいことがよく知られている。本発明では、CaO源の溶融滓化を促進してスラグの反応性を高めることを優先し、上吹き酸素の吹付け終了時点の溶銑温度を1350℃以上1400℃以下程度に制御することが好ましい。
本発明に係る取鍋スラグの使用条件を、従来条件(取鍋スラグを使用しない)、調査条件A(取鍋スラグの最大粒径が30mmを超えているものを、脱燐処理時間が30%経過する前に転炉内に投入)、調査条件B(取鍋スラグの最大粒径が30mm以下に調整されているものを、脱燐処理時間が30%経過した後に転炉内に投入)、調査条件C(取鍋スラグの最大粒径が30mm以下に調整されているものを、脱燐処理時間が30%経過する前に転炉内に投入)に大別して、上吹き酸素の流量を溶銑トン当たり1.3〜4.3Nm/minの範囲で比較し、本発明に係る発明特定要件の効果を確認した。
この調査において共通する条件を、先にまとめて説明する。
高炉から出銑された溶銑約260トンを適宜脱硫処理や脱珪処理した後、スクラップ約30トンを、粉状CaO供給機能を備えた上底吹き型転炉に装入し、続けてその溶銑をその転炉に装入した。その溶銑成分は、質量%で、C:4.0〜4.8%、Si:0.15〜0.70%、Mn:0.20〜0.40%、P:0.090〜0.130%、S:0.003〜0.03%であった。
溶銑を装入後に底吹きガスとしてNを溶銑トン当たり0.15〜0.25Nm/minの範囲で流しつつ転炉を正立させ、直ちに転炉内に上吹きランスを挿入して、上吹き酸素を溶銑トン当たり1.3〜4.3Nm/minの範囲で溶銑への吹付けを開始した。この酸素流量は、この調査ではそれぞれの処理中において一定とした。
また、この上吹き酸素の吹付け開始と同時に、最大粒径0.1mm以下の粉状生石灰の溶銑への吹付けを開始した。その酸素の吹付けは、酸素流量に応じて2.6〜10.1分間で終了させ、それと同時に粉状生石灰の吹き付けも終了した。
この調査においては、脱燐処理に使用する副原料として、上記した粒径0.1mm以下の粉状生石灰と取鍋スラグのみを使用し、それ以外の副原料は使用しなかった。
これらの投入量は、溶銑を含めた各使用原料の成分および使用量から、その直近数日間における実績値を参考にして、取鍋スラグを使用する調査条件A〜Cでは処理後のスラグ塩基度が2.5〜3.5であって、そのスラグ中Al質量濃度が3〜10%、かつ、T.Fe質量濃度が3〜15%の範囲になるように計算により決めた。一方、取鍋スラグを使用しない従来条件では処理後のスラグ塩基度が2.5〜3.5であって、そのスラグ中T.Fe質量濃度が3〜15%の範囲になるように計算したが、Al質量濃度については調整対象から除外した。
使用した取鍋スラグの化学組成は表1に示したものと同じであり、その粒径分布(粒度構成)は表2に示すもので、調査条件Aでは表2の取鍋スラグ(1)を用い、調査条件BおよびCでは表2の取鍋スラグ(2)を用いた。
Figure 0005131870
この調査における各脱燐処理毎の具体的な条件とその処理結果を、表3にまとめて示す。
Figure 0005131870
表3に記載が無い、脱燐処理後のスラグ中Al質量濃度は、取鍋スラグを使わなかった従来条件では1〜3%であり、取鍋スラグを使った比較条件A,B,Cでは、いずれも3〜10%に制御されていた。また、スラグ中T.Fe質量濃度は3〜15%に全て制御されていた。
また、上吹き酸素吹付けを終了した直後の溶銑温度は、1350〜1400℃であった。
表3における例1〜5に示した従来条件では、上吹き酸素流量の増加に従って脱燐率が低下し、スピッティングが多くなり、ダスト発生量が増加していた。上吹き酸素流量の増加に従って処理後スラグの(f.CaO)が増加していたことから、CaO源の滓化が悪化していたことが分かる。また、この条件では上吹き酸素流量≧2.0Nm/min/tonとなると、スロッピングが発生することが分かる。
表3における例6〜10に示した調査条件Aでは、上吹き酸素流量1.4Nm/min/tonの低い酸素流量時には脱燐率が高く、スピッティングも無く、ダスト発生量も少なかった。処理後スラグの(f.CaO)が低かったことから、CaO源の滓化が十分に進行していたことが分かる。しかし、従来条件と比べて上吹き酸素流量が同一の場合には概ね脱燐率が高く、スピッティングやダスト発生量も少ない傾向にはあったものの、酸素流量の増加により従来条件と同様な悪化傾向が確認された。特に、酸素流量が2.0Nm/min/ton以上の場合にはスピッティングが激しいとともにスロッピングも発生し、操業に耐えられる状況では無かった。
表3における例11〜15に示した調査条件Bでは、全体として調査条件Aと同様な結果であって、特に本発明の目的としている上吹き酸素流量2.0Nm/min/ton以上での脱燐処理において、脱燐率、スピッティング、ダスト発生量の目標達成が不十分であって、処理後スラグのf.CaO%が高かったことからCaO源の滓化が十分に進んでいなかったことが分かった。また、スロッピングの発生を防止することができず、操業に耐えられる状況では無かった。
表3における例16〜20に示した調査条件Cでは、調査した全範囲で従来条件よりも良好な成績であり、特に上吹き酸素流量が2.0Nm/min/tonを超えても、それが3.8Nm/min/tonまでは脱燐率、スピッティング、ダスト発生量が良好なレベルで維持されており、処理後スラグのf.CaO%も低位に安定していた。特に、上吹き酸素流量が3.8Nm/min/tonになってもスロッピングの発生を抑えることができたことが特徴的である。
これにより上吹き酸素流量3.8Nm/min/tonでの溶銑脱燐処理が可能となり、上吹き酸素流量1.3Nm/min/tonの場合と比べて処理時間6.9分の短縮が可能となった。
次に、本発明に係る発明特定事項を満たしたことによる効果を、この表3に示した調査結果に基づいて作成した図1〜3のグラフを併用して説明する。
(1)脱燐率:(脱P率(%)=100×(脱P前[P]−脱P後[P])÷脱P前[P])
本発明は溶銑脱燐処理の高能率かつ高効率化を目的とするものであるから、処理時間が短く、かつ、脱燐率が十分に高いことが前提とも言える基本的事項である。
溶銑脱燐処理に要する時間は、従来の知見に基づいて酸素供給時間により決まると分かっている。そこで、脱燐処理の対象とした溶銑トン当たりの上吹き酸素流量と脱燐率との関係を、上記した取鍋スラグの調査条件で層別して図1にグラフで示す。なお、図1のグラフのみならず後述する図2、3のグラフにおいて、従来条件は白丸印により示し、調査条件Aは三角印により示し、調査条件Bは四角印により示し、さらに、調査条件Cは黒丸印により示す。
本発明では上吹き酸素流量2.0Nm/min/ton以上を目指しているところ、図1のグラフに示すように、本発明に係る取鍋スラグ使用条件を満たしている調査条件Cにおいて、上吹き酸素流量2.0Nm/min/ton以上4.0Nm/min/ton以下の範囲で、脱燐率が90%以上を維持できていたことが分かる。
(2)スピッティング発生状況
脱燐処理時間を短縮するために上吹き酸素流量を増やすと、特に上吹き酸素とともに粉状CaO源を吹き付ける溶銑脱燐法において、スピッティングの増加が問題になり易い。本発明ではCaO源の溶融滓化を速めて短時間に脱燐し、かつ、処理後スラグに含まれるフリーCaO濃度を低下させるために、粉状CaO源を上吹き酸素とともに溶銑に吹き付けることを基本にしているので、スピッティングの発生を抑制することが重要である。
このスピッティングの発生状況は目視により判定できるのであるが、その目視判定は定量的に表現することが困難である。ただし、従来の知見に基づいてスピッティングの発生と転炉排ガスに混じって排出されるダスト発生量とが高い相関関係を有すると分かっている。そこで、脱燐処理の対象とした溶銑トン当たりの上吹き酸素流量とダスト発生量との関係を、上記した取鍋スラグの調査条件で層別して図2にグラフで示す。
本発明では上吹き酸素流量2.0Nm/min/ton以上を目指しているところ、図2のグラフに示すように、本発明に係る取鍋スラグ使用条件を満たしている調査条件Cにおいて、上吹き酸素流量2.0Nm/min/ton以上4.0Nm/min/ton以下の範囲で、ダスト発生量が5kg/ton以下であったことが分かる。
(3)処理後スラグ中のフリーCaO濃度
本発明は、処理時間が短く、かつ、脱燐率が十分に高いことが基本的事項であるが、そのために必要なCaO量が増加したり、投入したCaOが処理後スラグに未反応のまま残されたりしたのでは、効率的な脱燐処理とは言えない。また、処理後スラグ中のフリーCaO質量濃度が5%を超えると、そのスラグを土木材料などに利用しようとする際に困難が生じ、スラグ処理まで含めた脱燐処理全体としての効率が下がり、コストが上昇してしまう。
そこで、脱燐処理の対象とした溶銑トン当たりの上吹き酸素流量と処理後スラグ中のフリーCaO濃度との関係を、上記した取鍋スラグの調査条件で層別して図3にグラフで示す。
本発明では上吹き酸素流量2.0Nm/min/ton以上を目指しているところ、図3のグラフに示すように、本発明に係る取鍋スラグ使用条件を満たしている調査条件Cにおいて、上吹き酸素流量2.0Nm/min/ton以上4.0Nm/min/ton以下の範囲で、フリーCaOの質量濃度が5%以下であったことが分かる。

Claims (1)

  1. 上底吹き型の転炉を用い、スラグ生成剤として取鍋スラグを該転炉内に投入し、上吹き酸素とともに粉状CaO源を該転炉内の溶銑へ吹き付けて溶銑を脱燐処理する方法であって、
    前記取鍋スラグには最大粒径を30mm以下に調整したものを用い、
    前記上吹き酸素の供給速度を溶銑トン当たり2.0〜4.0Nm/minとし、かつ
    該取鍋スラグの転炉内への投入を該上吹き酸素の供給時間が30%経過する時点より前に完了させて、
    脱燐処理終了時点におけるスラグの化学組成を、塩基度(CaO質量%/SiO質量%):2.5〜3.5、Al質量濃度:3〜10%、T.Fe質量濃度:3〜15%に制御すること
    を特徴とする溶銑の脱燐処理方法。
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