JP5428126B2 - 非水電解液系エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂組成物、これを用いた非水電解液系エネルギーデバイス電極及び非水電解液系エネルギーデバイス - Google Patents
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Description
また、正極の活物質としては、リチウム含有金属複合酸化物が主に用いられる。
しかし、PVDFは、負極の集電体(銅箔)との接着性に乏しいため、PVDFを用いて負極を作製する場合、合剤層と集電体との界面の接着性を確保するには、負極活物質に対してPVDFを多量に配合しなければならず、リチウム電池の高容量化を妨げる要因となっている。
一方、特許文献2には、(メタ)アクリロニトリル系重合体と、フッ化ビニリデン系重合体をブレンドしたバインダ樹脂組成物が提案されているが、上記(メタ)アクリロニトリル系重合体は、二トリル基の含有量が少ないので、電解液に対する充分な耐膨潤性が得られにくい。
また、特許文献1と同様、活物質表面を覆いやすく、電池の充放電反応を阻害しやすい問題があった。
また、本発明は、前記のバインダ樹脂組成物を用いることにより、高容量で、なおかつ、充放電サイクルにおける容量低下が小さい充放電特性に優れた非水電解液系エネルギーデバイス、特にリチウム電池の電極及びリチウム電池を提供するものである。
また、本発明は、前記ニトリル基含有単量体が、アクリロニトリルである前記の非水電解液系エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂組成物に関する。
また、本発明は、前記ニトリル系重合体が、ニトリル基含有単量体由来の繰り返し単位と、カルボキシル基含有単量体由来の繰り返し単位、及び/又は式(I)
また、本発明は、前記式(I)で表される単量体がメトキシトリエチレングリコールアクリレートである前記の非水電解液系エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂組成物に関する。
また、本発明は、前記ニトリル基含有単量体由来の繰り返し単位1モルに対して、前記カルボキシル基含有単量体由来の繰り返し単位が0.01〜0.2モル及び/又は前記式(I)で表される単量体由来の繰り返し単位が0.001〜0.2モルである前記の非水電解液系エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂組成物に関する。
また、本発明は、前記の非水電解液系エネルギーデバイス電極を含む、非水電解液系エネルギーデバイスに関する。
さらに、本発明は、非水電解液系エネルギーデバイスが、リチウム電池である前記の非水電解液系エネルギーデバイスに関する。
本発明の非水電解液系エネルギーデバイス用バインダ樹脂組成物は、ニトリル基含有単量体由来の繰り返し単位を80質量%以上含むニトリル系重合体と、フッ化ビニリデン系重合体を含むことを特徴とする。
本発明におけるニトリル系重合体としては、電解液に対する耐膨潤性等の点から、ニトリル基含有単量体由来の繰り返し単位を、ニトリル系重合体に含まれる全繰り返し単位100質量%に対して、80質量%以上含むものであれば、特に制限はなく、ニトリル基含有単量体の単独重合体をはじめ、20質量%以下の割合で他の単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体が挙げられる。例えば、ニトリル系重合体に含まれる全繰り返し単位の質量を100とする場合、ニトリル基含有単量体由来の繰り返し単位/他の単量体由来の繰り返し単位の質量比は、80/20〜100/0、好ましくは、85/15〜99/1、より好ましくは、90/10〜95/5であることが適当である。
本発明に用いられるニトリル基含有単量体としては、特に制限はないが、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルのようなアクリル系ニトリル基含有単量体、α−シアノアクリレート及びジシアノビニリデンのようなシアン系ニトリル基含有単量体、フマロニトリルのようなフマル系ニトリル基含有単量体などが挙げられる。これらの中では、重合のし易さ、コストパフォーマンス、電極の柔軟性・可とう性等の点で、アクリロニトリルが好ましい。
本発明の二トリル基含有単量体としてアクリロニトリルとメタクリロニトリルとを使用する場合、ニトリル基含有単量体の全量に対して、アクリロニトリルを、例えば、5〜95質量%、好ましくは、50〜95質量%含むことが適当である。
本発明における他の単量体としては、ニトリル基を含まない単量体であれば特に制限はないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等の短鎖(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5)の(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アリルスルホン酸ナトリウム、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩などの単量体が挙げられる。
特に、本発明における他の単量体としては、ニトリル基を含まないカルボキシル基含有単量体及び式(I)で表される単量体が好ましく用いられる。
これらの中では、電極の柔軟性・可とう性の向上等の点で式(I)で表される単量体が好ましく、電極の集電体との接着性の向上等の点でカルボキシル基含有単量体が好ましい。
これらの他の単量体は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いることができる。他の単量体として上記カルボキシル基含有単量体及び式(I)で表される単量体を組み合わせて使用するときは、例えば、他の単量体由来の繰り返し単位全体の質量を100とする場合、カルボキシル基含有単量体由来の繰り返し単位/式(I)で表される単量体由来の繰り返し単位の質量比は、99/1〜1/99、好ましくは、80/20〜20/80、より好ましくは、50/50であることが適当である。
本発明に用いられるカルボキシル基含有単量体としては、ニトリル基を含まないものであれば特に制限はないが、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸のようなアクリル系カルボキシル基含有単量体、クロトン酸のようなクロトン系カルボキシル基含有単量体、マレイン酸及びその無水物のようなマレイン系カルボキシル基含有単量体、イタコン酸及びその無水物のようなイタコン系カルボキシル基含有単量体、シトラコン酸及びその無水物のようなシトラコン系カルボキシル基含有単量体などが挙げられる。これらの中では、重合のし易さ、コストパフォーマンス、電極の柔軟性・可とう性等の点で、アクリル酸が好ましい。
本発明のカルボキシル基含有単量体としてアクリル酸とメタクリル酸とを使用する場合、カルボキシル基含有単量体の全量に対して、アクリル酸を、例えば、5〜95質量%、好ましくは、50〜95質量%含むことが適当である。
二トリル基含有単量体由来の繰り返し単位と、カルボキシル基含有単量体由来の繰り返し単位と、式(I)で表される単量体由来の繰り返し単位とのモル比は、例えば、ニトリル基含有単量体由来の繰り返し単位1モルに対して、カルボキシル基含有単量体由来の繰り返し単位が存在するときは、この単位が0.01〜0.2モル、好ましくは0.02〜0.1、より好ましくは、0.03〜0.06モルであり、式(I)で表される単量体由来の繰り返し単位が存在するときは、この単位が0.001〜0.2モル、好ましくは0.003〜0.05モル、より好ましくは0.005〜0.02モルである。
カルボキシル基含有単量体由来の繰り返し単位が0.01〜0.2モル、式(I)で表される単量体由来の繰り返し単位が0.001〜0.2モルであれば、電解液に対する耐膨潤性を維持した状態で、電極の柔軟性・可とう性の向上並びに集電体、特に銅箔を用いた負極集電体との接着性の向上を図ることができる。
本発明におけるフッ化ビニリデン系重合体としては、特に制限はないが、フッ化ビニリデン系重合体に含まれる全繰り返し単位100質量%に対し、フッ化ビニリデン由来の繰り返し単位を80質量%以上含むものが好ましい。例えば、フッ化ビニリデンの単独重合体をはじめ、20質量%以下の割合でエチレン、プロピレン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロアルキルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエステル、不飽和二塩基酸モノエステル、ビニレンカーボネート等の、フッ化ビニリデン以外の単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体が挙げられる。これらの共重合を構成する繰り返し単位は、二種類以上を組み合わせて用いることができる。例えば、フッ化ビニリデン系重合体に含まれる全繰り返し単位の質量を100とする場合、フッ化ビニリデン由来の繰り返し単位/フッ化ビニリデン以外の単量体由来の繰り返し単位の質量比は、80/20〜100/0、好ましくは、85/15〜99/1、より好ましくは、90/10〜95/5であることが適当である。
本発明の非水電解液系エネルギーデバイス用バインダ樹脂組成物におけるニトリル系重合体とフッ化ビニリデン系重合体のブレンド比は、特に制約はないが、例えば、質量比でニトリル系重合体/フッ化ビニリデン系重合体が5/95〜95/5、好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは40/60〜80/20であることが適当である。
(2−1)バインダ樹脂組成物の形態
本発明のバインダ樹脂組成物は、通常、ニトリル系重合体とフッ化ビニリデン系重合体を個別に、あるいは両方一緒に、溶媒に溶解したワニスの形態で使用される。ワニス状のバインダ樹脂組成物の調製に用いる溶媒としては、特に制限はないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチルウレア等のウレア類、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン類、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル類、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、スルホラン等のスルホン類、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類、水などが挙げられる。
本発明のバインダ樹脂組成物には、必要に応じて他の材料、例えば、電解液に対する耐膨潤性を補完するための架橋成分、電極の柔軟性・可とう性を補完するためのゴム成分、スラリーの電極塗工性を向上させるための増粘剤、沈降防止剤、消泡剤、レベリング剤といった各種添加剤などを配合することもできる。これらの添加剤は、例えば、本発明のバインダ樹脂組成物全体の乾燥質量に対して、0.01〜100質量%、好ましくは、0.1〜30質量%であることが適当である。
本発明のバインダ樹脂組成物は、エネルギーデバイス、特に非水電解液系のエネルギーデバイスに好適に利用される。
非水電解液系エネルギーデバイスとは、水以外の電解液を用いる蓄電又は発電デバイス(装置)を言う。非水電解液系エネルギーデバイスとしては、例えば、リチウム電池、電気二重層キャパシタ、太陽電池等があげられる。
なお、本発明のバインダ樹脂組成物は、非水電解液系エネルギーデバイスのみならず、塗料、接着剤、硬化剤、印刷インキ、ソルダレジスト、研磨剤、電子部品の封止剤、半導体の表面保護膜や層間絶縁膜、電気絶縁用ワニス、バイオマテリアル等の各種コーティングレジンや成形材料、繊維などに幅広く利用できる。
以下、非水電解液系エネルギーデバイス用電極及びこの電極を用いたリチウム電池を例にとって説明する。
本発明の非水電解液系エネルギーデバイス用電極は、集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層を有するものである。本発明のバインダ樹脂組成物は、この合剤層を構成する材料として使用され得る。
本発明における集電体は、導電性を有する物質であればよく、例えば、金属が使用できる。具体的な金属としては、アルミニウム、銅及びニッケル等が使用できる。
さらに、集電体の形状は、特に限定はないが、非水電解液系エネルギーデバイスであるリチウム電池の高エネルギー密度化という点から、薄膜状が好ましい。集電体の厚みは、例えば、5〜30μm、好ましくは、8〜25μmである。
本発明における合剤層は、活物質及び/又は導電性フィラ等を含む上記バインダ樹脂組成物からなる。合剤層は、例えば、本発明のバインダ樹脂組成物と、活物質及び/又は導電性フィラとを溶媒に溶解してスラリーを調製し、このスラリーを前記集電体に塗布し、溶媒を乾燥除去することによって得られる。
本発明で使用される活物質は、例えば、非水電解液系エネルギーデバイスであるリチウム電池の充放電により可逆的にリチウムイオンを挿入・放出できるものであれば特に制限はない。
しかしながら、正極は、充電時にリチウムイオンを放出し、放電時にリチウムイオンを受け取るという機能を有する一方、負極は、充電時にリチウムイオンを受け取り、放電時にリチウムイオンを放出するという正極とは逆の機能を有するので、正極及び負極で使用される活物質は、通常、それぞれの有する機能にあわせて、異なる材料が使用される。
一方、正極活物質としては、例えば、リチウム及び鉄、コバルト、ニッケル、マンガンから選ばれる1種類以上の金属を少なくとも含有するリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。リチウム含有金属複合酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム等が挙げられる。これらの活物質は単独で又は二種以上組み合わせて用いられる。
活物質の平均粒径(レーザー回析式粒度分布測定装置(例えば、(株)島津製作所製SALD-3000J)で得られる粒度分布の累積50%粒径(D50)の値)は、例えば1μm〜100μm、好ましくは、5〜50μmである。
導電性フィラは、電極の合剤層における電子の伝導性を向上するために使用される。本発明で使用される導電性フィラとしては、特に制限はないが、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、通常、正極側において、導電助剤として使用される。これらの導電性フィラは、単独又は二種類以上組み合わせて使用してもよい。
導電性フィラの平均一次粒径(電子顕微鏡により観察した際の平均値)は、例えば、1〜200nm、好ましくは、10〜100nmである。
合剤層の形成に用いられる溶媒としては、特に制限はなく、バインダ樹脂組成物を均一に溶解または分散できる溶媒であればよい。
このような溶媒としては、バインダ樹脂組成物を溶解してワニスを調製する際に用いられる溶媒がそのまま使用される。例えば、水、有機溶媒等の種々の溶媒を使用することができる。これらのうちでは、アミド類、ウレア類あるいはラクトン類又はそれを含む混合溶媒が好ましく、これらの中でもN−メチル−2−ピロリドン又はそれを含む混合溶媒がより好ましい。
これらの溶媒は、単独で又は二種類以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の非水電解液系エネルギーデバイス用電極は、特に制限なく公知の電極の製造方法を利用して製造することができる。例えば、上記バインダ樹脂組成物、溶媒及び活物質及び/又は導電性フィラ等を含むスラリーを集電体の少なくとも1面に塗布し、次いで溶媒を乾燥除去し、必要に応じて圧延して集電体表面に合剤層を形成することにより製造することができる。
[(負極理論容量mA/g)×(負極塗布量g/cm2)]÷[(正極理論容量mA/g)×(正極塗布量g/cm2)]
から求めることができる。単位面積あたりの負極/正極理論容量比が1以上であれば、最初の充電で負極に取り込まれたまま放電で放出されないLiイオンをおぎなうことができる。
スラリーの塗布量は、例えば、合剤層の乾燥質量が、例えば、2〜30mg/cm2、好ましくは8〜15mg/cm2となる量である。溶媒の除去は、例えば50〜150℃、好ましくは、80〜120℃で、1〜20分間、好ましくは、3〜10分間乾燥することによって行われる。
本発明の非水電解液系エネルギーデバイス用電極は、さらに電解液と組み合わせることにより、非水電解液系エネルギーデバイスであるリチウム電池を製造することができる。
本発明で使用する電解液としては、例えば、非水電解液系エネルギーデバイスであるリチウム電池としての機能を発揮させるものであれば特に制限はない。
電解液としては、水以外の電解液、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、トリメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2−エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン等のオキソラン類、アセトニトリル、ニトロメタン、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、リン酸トリエステル等のエステル類、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、スルホラン等のスルホン類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類、1,3−プロパンスルトン、4−ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類などの有機溶媒に、LiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3、SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li[(CO2)2]2Bなどの電解質を溶解した溶液などが挙げられる。これらの中では、カーボネート類にLiPF6を溶解した溶液が好ましい。電解液は、例えば上記有機溶媒と電解質を、それぞれ単独で又は二種類以上組み合わせて調製し、用いられる。
本発明の非水電解液系エネルギーデバイスであるリチウム電池の製造方法については特に制約はないが、いずれも公知の方法を利用できる。例えば、まず、正極と負極の2つの電極を、ポリエチレン微多孔膜からなるセパレータを介して捲回する。このとき、各電極は、合剤層側が電解液と接するように配置する。
得られたスパイラル状の捲回群を電池缶に挿入し、予め負極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池缶底に溶接する。得られた電池缶に電解液を注入し、さらに予め正極の集電体に溶接しておいたタブ端子を電池の蓋に溶接し、蓋を絶縁性のガスケットを介して電池缶の上部に配置し、蓋と電池缶とが接した部分をかしめて密閉することによって電池を得る。
<バインダ樹脂組成物の調製>
合成例1
[ニトリル系重合体1]
撹拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を装備した3リットルのセパラブルフラスコに、精製水1804gを仕込み、窒素ガス通気量200ml/分の条件下、撹拌しながら、74℃まで昇温した後、窒素ガスの通気を止めた。
続いて、90℃まで昇温し、系の温度を90±2℃に保ちながら、1時間反応を進めた後、過硫酸アンモニウム0.968gを精製水8gに溶かした水溶液を追加添加し、同温度で更に1時間反応を進めた。
[ニトリル系重合体2]
ニトリル基含有単量体のアクリロニトリルを150.0g、カルボキシル基含有単量体のアクリル酸を25.0g(アクリロニトリル1モルに対して0.123モルの割合)及び式(I)で表される単量体のメトキシトリエチレングリコールアクリレートを25.0g(アクリロニトリル1モルに対して0.041モルの割合)使用する以外は、合成例1と同様にして、ニトリル基含有単量体由来の繰り返し単位の含有量が80質量%未満のニトリル系重合体2(二トリル基含有単量体由来の繰り返し単位:75質量%)の精製粉末を得た。
撹拌機、温度計、冷却管及び窒素ガス導入管を装備した3リットルのセパラブルフラスコに合成例1で得られたニトリル系重合体1の精製粉末100g、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)1567gを仕込み、極微量(5ml/分以下)の窒素ガス通気下、攪拌しながら70℃に昇温した。同温度で6時間保持して、ニトリル系重合体をNMPに溶解させた後、常温まで冷却し、ニトリル系重合体1のワニス(樹脂分6質量%)を調製した。
比較例1で調製したニトリル系重合体1のワニス(樹脂分6質量%)1000gに、フッ化ビニリデン系重合体としてPVDFのワニス(呉羽化学工業(株)製、商品名:KF9130、NMP溶液、樹脂分13質量%)462gを加えてブレンド〔ニトリル系重合体/フッ化ビニリデン系重合体=50/50(質量比)〕し、本発明のバインダ樹脂組成物のワニスを調製した。
ニトリル系重合体1の精製粉末の代わりに、合成例2で得られたニトリル系重合体2の精製粉末100gを使用する以外は、比較例1と同様にして、ニトリル系重合体2のワニス(樹脂分6質量%)を調製した。
ニトリル系重合体1のワニスの代わりに、比較例2で調製したニトリル系重合体2のワニス(樹脂分6質量%)1000gを使用する以外は、実施例1と同様にして、ブレンドワニスを調製した。
比較例4
実施例1で用いたPVDFのワニスを用意した。
表A
*1)ニトリル系重合体の単位は、ニトリル系重合体に含まれる全繰り返し単位を100質量%とした場合の質量%である
*2)フッ化ビニリデン系重合体の単位は、ニトリル系重合体+フッ化ビニリデン系重合体を100質量%とした場合の質量%である
(1)電解液に対する耐膨潤性
実施例1、比較例1〜4の各ワニスを、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)シートにキャストし、100℃のホットプレート上で5時間乾燥した。その後、乾燥した残部をPETシートから剥がして、120℃の真空乾燥機で5時間真空熱処理し、樹脂フィルムを得た。
次いで、得られたフィルムを1.5cm角で4枚切り出し、アルゴンガス充填雰囲気下のグローブボックス中に移して乾燥質量を測定した後、電解液(キシダ化学(株)製、1Mの濃度でLiPF6を溶解したエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート及びジエチルカーボネートの等体積混合溶液、以下同様)に2つの条件下(23℃で24時間、50℃で24時間)で浸漬した。
膨潤度が小さい程、電解液に対する耐膨潤性に優れると判断できる。
実施例1、比較例1〜4の各ワニスと、負極活物質(日立化成工業(株)製、商品名:MAG、塊状人造黒鉛、平均粒径20μm、比表面積4m2/g)を、固形分換算(前記ワニス中の樹脂分と負極活物質との合計を固形分100質量部とする)で前記ワニス中の樹脂分が3.6質量部、負極活物質が96.4質量部となるように配合した後、NMPを全固形分が45.5質量%となるように加えて混練し、スラリーを調製した。
続いて、塗工物を、90℃の熱風乾燥機で1時間乾燥して合剤層を形成した後、長さ10cm×幅2cmの寸法で短冊状に切り出した。負極集電体との接着性は、上記短冊状の試験片(合剤層の乾燥質量7mg/cm2)について、両端を合剤層形成面を外側にして合わせたときに、合剤層が負極集電体から剥がれない場合を良好、剥がれる場合を不良と評価した。
初回充放電特性は、初回充放電時の放電容量、不可逆容量及び充放電効率から判断されるリチウム電池の充放電特性の指針である。初回充放電時の放電容量は、作製された電池の容量の指針となり、初回充放電時の放電容量が大きいほど、容量の大きな電池であるといえる。
また、初回充放電時の充放電効率は、次式から求められる。
初回充放電時の充放電効率が大きいほど、充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こり難く優れた電池であると判断される。
これとは別に、表面を軽く磨いた厚さ1mmの金属リチウム(三井金属工業(株)製)を対極として準備した。
得られた積層体の上面及び下面にステンレス製の治具を取り付けて積層体が剥離しないように固定した後、ガラス製の容器に入れて密閉構造の単極セルを作製した。
なお、この定電流充電は、対極がリチウム金属であるので、電位の関係上、作用極が正極になるため、正確には放電である。
上記各ワニスの諸特性の評価結果を表1に示す。
また、単極セルの初回充放電特性が良好(放電容量及び充放電効率が大きく、不可逆容量が小さい)であり、比較例1〜4に比べ特性バランスに優れていることがわかる。
(1)負極の作製
実施例2
上記(2)における、実施例1のバインダ樹脂組成物のワニスを用いて調製したスラリーを、合剤層の乾燥質量が29mg/cm2となるように負極集電体(日立電線(株)製、圧延銅箔、厚み10μm、200×100mm)の両側表面に転写ロールで均一に塗布した。
バインダ樹脂組成物として比較例3のワニスを用いる以外は、実施例2と同様にして負極を得た。
作製例1
バインダ樹脂組成物としてPVDFのワニス(呉羽化学工業(株)製、KF1120、NMP溶液、樹脂分12質量%)と、正極活物質としてコバルト酸リチウム(平均粒径10μm)を、人造黒鉛系導電助剤(日本黒鉛工業(株)製、商品名:JSP、平均粒径3μm)及びカーボンブラック系導電助剤(電気化学工業(株)製、商品名:デンカブラックHS−100、平均粒径48nm)を、固形分換算(前記ワニス中の樹脂分:正極活物質:人造黒鉛系導電助剤:カーボンブラック系導電助剤)で3.2:86.0:9.0:1.8(質量比)となるように配合し、ここにNMPを全固形分が60.0質量%となるように加え、混練してスラリーを調製した。
次いで、塗工物を、120℃のコンベア炉で5分間乾燥して合剤層を形成した後、ロールプレス機で合剤層のかさ密度が3.2g/cm3となるように圧縮成形した。これを54mm幅に裁断して短冊状のシートを作製し、120℃の真空乾燥機で5時間真空熱処理して正極を得た。
上記実施例2、比較例5及び作製例1で得られた負極及び正極の集電体露出部にニッケル製の集電タブを超音波溶着した後、これらをセパレーターを介して自動捲回機で捲回し、スパイラル状の捲回群を作製した。この捲回群を電池缶に挿入し、負極の集電タブ端子を電池缶底に溶接した後、正極の集電タブ端子を蓋に溶接した。このとき、負極及び正極は、合剤層側が電解液と接するように配置した。
放電容量維持率が、85%以上、好ましくは、90%以上であれば、電池が充放電サイクルを繰り返しても容量低下が起こりにくいため、充放電サイクル特性に優れていると判断できる。その結果を表2に示す。
Claims (5)
- アクリロニトリル由来の繰り返し単位を80質量%以上含むニトリル系重合体と、フッ化ビニリデン系重合体を含有し、前記ニトリル系重合体が、アクリロニトリル由来の繰り返し単位と、アクリル酸由来の繰り返し単位と、メトキシトリエチレングリコールアクリレート由来の繰り返し単位とを含有してなる、非水電解液系エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂組成物。
- 前記アクリロニトリル由来の繰り返し単位1モルに対して、前記アクリル酸由来の繰り返し単位が0.01〜0.2モル及び/又は前記メトキシトリエチレングリコールアクリレート由来の繰り返し単位が0.001〜0.2モルである請求項1に記載の非水電解液系エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂組成物。
- 集電体と、該集電体の少なくとも1面に設けられた合剤層とを有し、該合剤層が、活物質及び/又は導電性フィラを含む請求項1又は2に記載の非水電解液系エネルギーデバイス電極用バインダ樹脂組成物からなる、非水電解液系エネルギーデバイス電極。
- 請求項3記載の非水電解液系エネルギーデバイス電極を含む、非水電解液系エネルギーデバイス。
- 非水電解液系エネルギーデバイスが、リチウム電池である請求項4記載の非水電解液系エネルギーデバイス。
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