JP5427839B2 - 加工食品素材並びにそれを用いた食品及びその食品の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の加工食品素材は、天然多糖類、水及び乳化剤を含有するコロイド状分散媒と、その分散媒に分散されてなる天然多糖類の熱不可逆性ゲル及び気泡とを含む。外相(連続相)がコロイド状、即ちゾル又はゲルであり、内相の中の一種が気泡であるので、以下においては、「含気性コロイド」ということがある。
本発明の加工食品素材の製造方法は、特に制限されず、各成分を任意の順序で混合すればよいが、通常は以下のようにして製造する。
天然多糖類を水に分散させ、水分散液(分子コロイド)を調製する。混合時の温度は制限されないが、常圧の場合、通常は0℃以上、好ましくは4℃以上であり、且つ、通常は100℃以下、好ましくは80℃以下である。また、混合時の圧力も制限されないが、通常は常圧又は減圧である。混合の方法も制限されないが、通常は撹拌又は振盪である。混合の時間も制限されず、均一な水分散液が得られるまで行えばよい。
(1)で得られた水分散液に、乳化剤及び天然多糖類の熱不可逆性ゲルを加え、得られた混合物を、気泡を形成する気体の存在下で撹拌する。このようにして、コロイド状分散媒中に、熱不可逆性ゲルと気泡とが均一に分散してなる、本発明の加工食品素材を調製する。
本発明の食品は、本発明の加工食品素材を含んでなるものである。換言すれば、本発明の加工食品素材は、任意の食品に対して添加剤として使用することが可能なのである。本発明の加工食品素材は、特に、冷凍することを意図した食品に添加することが好ましい。これにより、マイクロウェーブ波照射、即ち電子レンジでの解凍及び/又は加熱を行っても、好適に食し得る食品が提供される。
以下の原料を用い、本発明の加工食品素材を製造した。
A.原料
(1)グルコマンナンを原料とした粒径100〜200μmの微粒子状熱不可逆性ゲル(製造元:壽高原食品株式会社) 100g
(2)カラギーナン(製造元:三菱商事フードテック株式会社) 2g
(3)酵素分解レシチン(製造元:太陽化学株式会社) 1g
(4)バター(製造元:六甲バター株式会社) 120g
(5)液卵(発売元:日本生活協同組合連合会) 120g
(6)脱脂粉乳(製造元:明治乳業株式会社) 20g
(7)水 350g
原料(1)乃至(6)を(7)に添加し、得られた混合物を常温にて攪拌した。その後、ホモゲナイザー(サンヨー電気製;型式SM−DM)を用い、回転数11,100rpmで5分間攪拌し、本発明の加工食品素材である含気性コロイド(以降、「コロイドA」と称する場合がある)を得た。
(パンの製造)
実施例1で製造したコロイドAを用い、下記する配合及び工程により、中種法にて製パンを行い、バンズA及びロールパンAを得た。
表1に示す材料を混捏し、中種を作製した。ミキサー(フジサワ・マルゼン社製;横型方式F)を用い、低速で2分間、その後中速で2分間、混捏を行った。混捏時の温度は24℃であった。
得られた中種を、温度27℃、相対湿度75%で4時間発酵させた。
中種に、表2に示す材料を加えて混捏し、生地を作製した。ミキサー(フジサワ・マルゼン社製;横型方式F)を用い、低速で2分間、その後中速で6分間、最後に高速で1分間、混捏を行った。混捏時の温度は26℃であった。
得られた生地を、温度27℃、相対湿度75%にて、15分間のフロアータイムに供した。その後、本種を60gずつに分割し、バンズ及びロールパンの形状に成形した。成形後、15乃至20分間放置した(ベンチタイム)。次に、最終発酵を、温度38℃、相対湿度80%にて60分間行った。
最終発酵後の生地を、連続オーブン(フジサワ・マルゼン社製)でを用い、上火190℃、下火180℃で、11乃至12分間焼成した。
得られたバンズA及びロールパンAを、−20℃にて24時間冷凍保存した。これらを、凍結状態のままで、専門パネラー6人に試食させた。パネラー全員が、歯切れがよく、且つソフトで滑らかな食感であるとの評価を下した。
また、凍結状態のバンズA及びロールパンAを、出力900Wの家庭用電子レンジで30秒間加熱して解凍した後に、同一のパネラー6人に試食させた。パネラー全員が、出来たてのパンにほぼ近い食感であるとの評価を下した。
(パンの製造)
実施例2の中種作製(中捏)の手順において、コロイドAを使用せず、その他は全て実施例2と同一の配合及び手順で製パンを行い、バンズB及びロールパンBを得た。
得られたバンズB及びロールパンBを、−20℃にて24時間冷凍保存した。これらを、凍結状態のままで、実施例2と同一のパネラー6人に試食させた。いずれのパネラーも、氷状の表面に歯が立たず、食することができなかった。
また、凍結状態のバンズA及びロールパンAを、出力900Wの家庭用電子レンジで加熱したところ、30秒では解凍されず、解凍に2分以上を要した。解凍後のバンズB及びロールパンBは、表面がしわ状になると共に、離水も生じており、食するには値しないとの評価となった。
(ハンバーガーの製造)
牛挽肉に、牛挽肉100重量部に対して5重量部のコロイドAと、適量のパン粉、牛乳、調味料、香辛料を加え、得られた混合物を均一に練り合わせた。次いで、得られた混合物を10等分し、各々について、空気抜きを行い、平たく丸めた。これらを、うすく油をひいたフライパンで焼成し、さらに蒸し焼きを行い、10個のパテA(各45g)を得た。パテAを実施例2により得られたバンズAにセットし、ハンバーガーAを得た。
得られたハンバーガーAを、−20℃にて24時間冷凍保存した。その後、チルド室に移し、6時間放置した。チルド状態で、オーブンレンジ(フジマック株式会社製;機種:ウェブスター)を用い、出力900Wの電子レンジ機能で45秒間加熱した後に、専門パネラー6人に試食させた。パネラー全員が、出来たてのハンバーガーにほぼ近い食感であるとの評価を下した。
(ハンバーガーの製造)
コロイドAを使用しない以外は、すべて実施例3と同一の配合及び手順で、10個のパテB(各45g)を得た。パテBを、比較例1により得られたバンズBにセットすることにより、ハンバーガーBを得た。
得られたハンバーガーBを、−20℃にて24時間冷凍保存した。その後、チルド室に移し、6時間放置した。チルド状態で、オーブンレンジ(フジマック株式会社製;機種:ウェブスター)を用い、出力900Wの電子レンジ機能で45秒間加熱した後に、実施例3と同一のパネラー6人に試食させた。パネラー全員が、パンの劣化とハンバーグからの離水が生じており、満足な食感は得られなかったと評価した。
(シーフード・ホットドッグの製造)
スケトウダラを原料としたすり身に、そのすり身100重量部に対して5重量部のコロイドAを加え、これに、通常の製法による豚脂、調味料、香辛料、品質改良剤を練り合わせた原料を加え、得られた混合物を均一に練り合わせた。このようにして得られた原料混合物をケーシングに充填し、10本のウインナーソーセージA(各35g)を得た。ウインナーシーセージAを沸騰水中でゆでた後、実施例2により得られたロールパンAにセットし、シーフード・ホットドッグAを得た。
得られたシーフード・ホットドッグAを、−20℃にて24時間冷凍保存した。その後、チルド室に移し、6時間放置した。チルド状態で、出力1500Wの家庭用電子レンジで30秒間加熱した後に、専門パネラー6人に試食させた。その結果、冷凍後レンジ・アップしたにもかかわらず、通常通り焼成したパン及びボイルしたウインナーからなるホットドッグと、さほど差異はないとの評価を得た。
(シーフード・ホットドッグの製造)
コロイドAを使用しない以外は、すべて実施例4と同一の配合及び手順で、10本のウインナーソーセージB(各35g)を得た。ウインナーソーセージBを沸騰水中でゆでた後、比較例1により得られたロールパンBにセットすることにより、シーフード・ホットドッグBを得た。
得られたシーフード・ホットドッグBを、−20℃にて24時間冷凍保存した。その後、チルド室に移し、6時間放置した。チルド状態で、出力1500Wの家庭用電子レンジで30秒間加熱した後に、実施例4と同一の専門パネラー6人に試食させた。その結果、食感の点で、通常通り焼成したパン及びボイルしたウインナーからなるホットドッグと比べると劣るとの評価であった。したがって、シーフード・ホットドッグAの優位性が立証される結果となった。
(冷凍ローストビーフ・サンドイッチの製造)
生の塊の牛肉500gを、コロイドA10gに少量の香辛料を加えた液に浸漬し、その後、ローストを行い(芯温:56℃、65分)、ローストビーフを得た。次に、その中から60gをスライスし、実施例2で得られたバンズAに挟み、ローストビーフ・サンドイッチAを作製した。
得られローストビーフ・サンドイッチAを、−20℃にて24時間冷凍保存した。これを、冷凍のまま、オーブンレンジ(フジマック株式会社製;機種:ウェブスター)を用い、出力900Wの電子レンジ機能で40秒間加熱した後に、専門パネラー6人に試食させた。その結果、パネラー全員が、パンとローストビーフのソフトな食感とがよくマッチし、美味しいとの評価を下した。
(冷凍ローストビーフ・サンドイッチの製造)
実施例5のローストビーフ・サンドイッチAの作製手順において、コロイドAを使用せず、バンズには比較例1で得られたバンズBを使用した以外は、実施例5と同一の配合及び手順により、ローストビーフ・サンドイッチを作製し、ローストビーフ・サンドイッチBを得た。
得られたローストビーフ・サンドイッチBを、−20℃にて24時間冷凍保存した。これを、冷凍のまま、オーブンレンジ(フジマック株式会社製;機種:ウェブスター)を用い、出力900Wの電子レンジ機能で40秒間加熱した。加熱後の状態を観察したところ、パンにしわがよるとともに、一部には離水も見られた。また、加熱後のローストビーフ・サンドイッチBを実施例5と同一の専門パネラー6人に試食させたところ、その全員が、具材の一部が凍結されたままで、サンドイッチとしての食感には程遠い品質であると評価した。
(冷凍アボカド・シュリンプロールの製造)
市販のボイルしたシュリンプ50gと、メキシコ産熟成アボカドの果肉ペースト20gにコロイドA5g及び少量の香辛料を加えて均一に混合したものとを混合し、具材Aを得た。この具材Aを実施例2で得られたロールパンAに挟むことにより、アボカド・シュリンプロールAを得た。
得られたアボカド・シュリンプロールを、−20℃にて24時間冷凍保存した。これを、冷凍のまま、出力900Wの電子レンジで45秒間加熱した後に、専門パネラー6人に試食させた。その結果、パネラー全員が、食感・味ともに優れているとの高い評価を下した。
(冷凍アボカド・シュリンプロールの製造)
実施例6のアボカド・シュリンプロールAの作製手順において、コロイドAを使用せず、バンズには比較例1で得られたバンズBを使用した以外は、実施例6と同一の配合及び手順により、アボカド・シュリンプロールを作製し、アボカド・シュリンプロールBを得た。
得られたアボカド・シュリンプロールBを、−20℃にて24時間冷凍保存した。これを、冷凍のまま、出力900Wの電子レンジで45秒間加熱した。これを、実施例6と同一の専門パネラー6人に試食させたところ、その全員が、実施例6のアボカド・シュリンプロールAと比べて大きく劣ると評価した。
以上の結果から、実施例1で得られた本発明の加工食品素材(含気性コロイド)をパンや具材に配合することにより、電子レンジ等で加熱しても好適に食し得る食品が得られることが明らかとなった。
Claims (7)
- グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、カードラン及びカラギーナンの少なくともいずれかの天然多糖類と水と乳化剤を含有するコロイド状分散媒と、
そのコロイド状分散媒に分散されてなる、グルコマンナンを原料とした微粒子状の熱不可逆性ゲル、及び気泡とを含み、
該気泡は、酸素ガス、窒素ガス及び炭酸ガスの少なくともいずれかのガス成分を有し、且つ、前記コロイド状分散媒と前記熱不可逆性ゲルとの合計量を基準として、20乃至500容積%であり、
冷凍保存後のマイクロウェーブ波照射加熱によって調理後の食感を保持できる食品を提供する
ことを特徴とする加工食品素材。 - 前記熱不可逆性ゲルが100乃至200μmの粒径を有する、請求項1に記載の加工食品素材。
- 前記熱不可逆性ゲルが、コンニャクを中和し、酵素処理し、その後に微粒子化してなり、その微粒子が二次凝集していない微粒子コンニャクである、請求項1又は2に記載の加工食品素材。
- 前記天然多糖類は、前記コロイド状分散媒を構成する水性溶媒全量を基準として、0.05乃至1質量%である、請求項1乃至3の何れか一項に記載の加工食品素材。
- 前記熱不可逆性ゲルは、前記コロイド状分散媒全量を基準として、5乃至50質量%である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の加工食品素材。
- 前記気泡は、前記コロイド状分散媒と前記熱不可逆性ゲルの合計量を基準として、50乃至250容積%である、請求項1乃至5の何れか一項に記載の加工食品素材。
- 請求項1乃至6の何れか一項に記載の加工食品素材を含んでなる電子レンジで加熱される食品。
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