JP5424140B2 - 透明導電膜形成用スパッタリングターゲット - Google Patents

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この発明は、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、帯電防止導電膜コーティング、ガスセンサーなどに用いられる透明導電膜を形成するためのスパッタリングターゲット(以下、ターゲットと云う)に関するものである。
一般に、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、帯電防止導電膜コーティング、ガスセンサーなどに用いられる透明導電膜として、In−Sn複合酸化物(以下、ITOという)、Zn−Al複合酸化物(以下、AZOという)、(Zn−Ga複合酸化物(以下、GZOという)などの複合酸化物からなる透明導電膜が知られており、この透明導電膜を作製する方法の一つとしてスパッタリング法がある。このスパッタリング法により透明導電膜を形成するには、In−Sn合金ターゲット、Zn−Al合金ターゲット、Zn−Ga合金ターゲットなど合金ターゲットを用い、酸素を含むアルゴン雰囲気中でスパッタリングすることにより形成する。前記In−Sn合金ターゲットはSn:0.1〜30質量%を含有し、残部がInからなる組成を有し、Zn−Al合金ターゲットはAl0.1〜30質量%を含有し、残部がZnからなる組成を有し、さらにZn−Ga合金ターゲットはGa:0.1〜30質量%を含有し、残部がZnからなる組成を有することが知られている。
これら合金ターゲットを用いてスパッタリングを行なうと、合金ターゲットを構成する各成分のスパッタ率の違いによりスパッタ初期とそれ以降とでは得られる透明導電膜の組成比が変化することから目的とする膜組成に達するまでのプレスパッタ時間を長く取る必要がある。さらに、これら合金ターゲットを用いて安定して所定の酸素含有量を有する透明導電膜を得るには、いずれもスパッタリング雰囲気中の酸素量を厳しく制御する必要があることから安定的に成膜することが難しかった。
そのために、現在では、雰囲気をアルゴン雰囲気中または酸素制御を行なう必要のない酸素を含むアルゴン雰囲気中でITO複合酸化物、AZO複合酸化物、GZO複合酸化物などの複合酸化物ターゲットを用いてスパッタリングする方法が主流となっている。そして、前記ITO複合酸化物ターゲットは、SnO2:0.1〜20モル%を含有し、残部がIn23からなる組成を有し、前記AZO複合酸化物ターゲットは、Al23:0.1〜20モル%を含有し、残部がZnOからなる組成を有し、さらに、前記GZO複合酸化物ターゲットはGa23:0.1〜20モル%を含有し、残部がZnOからなる組成を有することが知られている(特許文献1、2、3参照)。
特開平5−179439号公報 特開平6−2130号公報 特開平7−138745号公報
しかし、近年、スパッタリング雰囲気中の酸素制御技術は以前に比べて格段に進歩し、スパッタリング雰囲気中の酸素量の制御は簡単になってきた。さらに合金ターゲットを用いるスパッタリング法の成膜速度は、複合酸化物ターゲットを用いる成膜速度よりも速いことから、コスト削減の目的で合金ターゲットを用いるスパッタリング法が再び注目され始めている。しかし、合金ターゲットを用いるスパッタリング法では形成される透明導電膜の成分組成が一定になるまでに時間がかかり過ぎ、そのためにプレスパッタ時間を長く取らなければならないという欠点は未だ解消されていない。
そこで、本発明者らは上述の合金ターゲットを用いるスパッタリング法の前記欠点を解消すべく研究を行った。その結果、Zn−Ga合金粉末の周囲をGZOの複合酸化物膜で包囲した組織を有するターゲットを用いてスパッタリングすると、得られた透明導電膜の成分組成が安定するまでの時間(すなわち、プレスパッタ時間)が格段に短くなり、したがって、透明導電膜の成膜時間が大幅に短縮される、などの研究結果が得られたのである。
この発明は、かかる研究結果に基づいて成されたものであって、
(1)Ga:0.1〜30質量%を含有し、残部がZnからなる組成を有するZn−Ga合金結晶粒をZn−Ga複合酸化物が包囲している組織を有する透明導電膜形成用スパッタリングターゲット、に特徴を有するものである。
前記ZnおよびGaの含有量は、従来から知られているZn−Ga合金ターゲットに含まれる含有量と同じであり、すでに知られている範囲であるのでその限定理由の説明は省略する。
この発明の透明導電膜形成用スパッタリングターゲットを作製するには、まず、平均粒径:0.1〜250μmを有するZn−Ga合金粉末を用意する。この合金粉末は、ガスアトマイズ粉末であってもよく、また機械粉砕粉末であってもよい。つぎに、この合金粉末を酸素雰囲気中で加熱処理することによりZn−Ga合金粉末の表面にGZO複合酸化物膜を形成したGZO被覆Zn−Ga合金粉末を作製する。また、ガスアトマイズにより粉末を作製する際、ガスとしてAr+10%O等の酸化性ガスを用いてガスアトマイズすることにより作製することができる。このとき合金粉末の表面に形成される酸化膜は厚さ:20〜1000nmの範囲内にあることが好ましい。酸化膜の厚さが20nm未満ではターゲット製造プロセスにおける成形過程で初期の粉末形状を保った状態で成形することが困難となるので好ましくなく、一方、1000nmを越えるようになると極端にスパッタ速度が低下し、量産に不向きとなるので好ましくないからである。このようにして得られたGZO被覆Zn−Ga合金粉末をホットプレス、熱間静水圧プレスまたは冷間静水圧プレスを行なうことにより作製する。
この発明の組織を有する透明導電膜形成用ターゲットは、プレスパッタ時間を大幅に短縮することができ、透明導電膜の製造コストを大幅に下げることができるなど優れた効果を奏するものである。
つぎに、この発明の透明導電膜形成用ターゲットを具体的に説明する。まず、原料粉末として、いずれもガスアトマイズして得られたGa:10質量%を含有し、残部がZnからなる成分組成のZn−Ga合金ガスアトマイズ粉末を用意する。このZn−Ga合金ガスアトマイズ粉末を大気中:温度:100℃、3時間保持の条件で加熱することにより、Zn−Ga合金ガスアトマイズ粉末の表面にGZO複合酸化物膜を形成したGZO被覆Zn−Ga合金粉末を作製し用意した。
〔実施例〕
先に作製したGZO被覆Zn−Ga合金粉末をゴム型に充填した状態で、冷間静水圧プレス装置に装入し、圧力:100MPa、保持時間:1時間保持の条件で冷間静水圧プレスすることにより、直径:154mm×厚さ:6mmの寸法をもった本発明ターゲットを作製した。この本発明ターゲットの断面を金属顕微鏡で観察したところ、Zn−Ga合金結晶粒相互が結合している部分も見られたが、大部分のZn−Ga合金結晶粒はGZO複合酸化膜が包囲している組織が見られた。
一方、先に作製したZn−Ga合金ガスアトマイズ粉末をゴム型に充填した状態で、冷間静水圧プレス装置に装入し、圧力:100MPa、保持時間:1時間保持の条件で冷間静水圧プレスすることにより、直径:154mm×厚さ:6mmの寸法をもった従来ターゲット1を作製した。この従来ターゲット1の断面を金属顕微鏡で観察したところ、Zn−Ga合金結晶粒が集合した焼結合金組織が見られた。
得られた本発明ターゲットおよび従来ターゲット1を無酸素銅製の水冷バッキングプレートにハンダ付けした状態で、直流マグネトロンスパッタリング装置に装着し、まず装置内を真空排気装置にて1×10-6Torr以下に排気したのち、Ar+10%Oガスを導入して装置内雰囲気を1.5×10-3Torrのスパッタガス圧とした。また、厚さ:0.6mmのポリカーボネート基板をターゲットとの間隔:70mmにて配置した。
かかる状態で本発明ターゲットおよび従来ターゲット1に、直流電源にてスパッタ電力:0.1kWを印加し、スパッタリング開始から5分ごとに作製した前記ポリカーボネート基板表面に形成された厚さ:50nmを有する透明導電膜サンプルのZnおよびGaの成分組成を測定し、この測定結果を表1に示した。

表1に示される結果から、Zn−Ga合金結晶粒をGZO複合酸化膜が包囲している組織を有する本発明ターゲットを用いて形成された透明導電膜サンプルは、スパッタリング時間が10分経過後からはZnおよびGaの含有量がほぼ一定となることからプレスパッタ時間は10分必要となることがわかる。一方、従来ターゲット1を用いて形成した透明導電膜サンプルはスパッタリング時間が30分経過後からはZnおよびGaの含有量がほぼ一定となるのでプレスパッタ時間は30分必要となることがわかる。
したがって、本発明ターゲットのプレスパッタ時間と従来ターゲット1のプレスパッタ時間を比較すると、本発明ターゲットのプレスパッタ時間は従来ターゲット1のプレスパッタ時間に比べて格段に短いことがわかる。
〔参考例〕
Al:4質量%を含有し、残部がZnからなる成分組成のZn−Al合金ガスアトマイズ粉末を用意し、これを大気中:温度:200℃、3時間保持の条件で加熱し、Zn−Al合金ガスアトマイズ粉末の表面にAZO複合酸化物膜を形成したAZO被覆Zn−Al合金粉末を得た。
このAZO被覆Zn−Al合金粉末を金型に充填した状態で、ホットプレス装置に装入 し、雰囲気:1×10-2Torrの真空雰囲気、温度:200℃、圧力:30MPa、保持時間:3時間保持の条件でホットプレスすることにより、直径:154mm×厚さ:6mmの寸法をもった参考例ターゲットを作製した。この参考例ターゲットの断面を金属顕微鏡で観察したところ、Zn−Al合金結晶粒相互が結合している部分も見られたが、大部分のZn−Al合金結晶粒はAZO複合酸化膜が包囲している組織が見られた。
一方、先に作製したZn−Al合金ガスアトマイズ粉末を金型に充填した状態で、ホットプレス装置に装入し、雰囲気:1×10-2Torrの真空雰囲気、温度:200℃、圧力:30MPa、保持時間:3時間保持の条件でホットプレスすることにより、直径:154mm×厚さ:6mmの寸法をもった従来ターゲット2を作製した。この従来ターゲット2の断面を金属顕微鏡で観察したところ、Zn−Al合金結晶粒が集合した焼結合金組織が見られた。
得られた参考例ターゲットおよび従来ターゲット2を無酸素銅製の水冷バッキングプレートにハンダ付けした状態で、直流マグネトロンスパッタリング装置に装着し、まず装置内を真空排気装置にて1×10-6Torr以下に排気したのち、Ar+10%Oガスを導入して装置内雰囲気を1.5×10-3Torrのスパッタガス圧とした。また、厚さ:0.6mmのポリカーボネート基板をターゲットとの間隔:70mmにて配置した。
かかる状態で参考例ターゲットおよび従来ターゲット2に、直流電源にてスパッタ電力:0.1kWを印加し、スパッタリング開始から5分ごとに作製した前記ポリカーボネート基板表面に形成された厚さ:50nmを有する透明導電膜サンプルのZnおよびAlの成分組成を測定し、この測定結果を表2に示した。

表2に示される結果から、Zn−Al合金結晶粒をAZO複合酸化膜が包囲している組織を有する参考例ターゲットを用いて形成された透明導電膜サンプルは、スパッタリング時間が10分経過後からはZnおよびAlの含有量がほぼ一定となることからプレスパッタ時間は10分必要となることがわかる。
一方、従来ターゲット2で形成した透明導電膜サンプルはスパッタリング時間が30分経過後からはZnおよびAlの含有量がほぼ一定となるのでプレスパッタ時間は30分必要となることがわかる。したがって、参考例ターゲットのプレスパッタ時間と従来ターゲット2のプレスパッタ時間を比較すると、参考例ターゲットのプレスパッタ時間は従来ターゲット2のプレスパッタ時間に比べて格段に短いことがわかる。


Claims (1)

  1. Ga:0.1〜30質量%を含有し、残部がZnからなる組成を有するZn−Ga合金結晶粒をZn−Ga複合酸化物が包囲している組織を有することを特徴とする透明導電膜形成用スパッタリングターゲット。



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