JP4702126B2 - 酸化亜鉛系透明導電膜及びそれを用いた液晶ディスプレイ並びに酸化亜鉛系スパッタリングターゲット - Google Patents

酸化亜鉛系透明導電膜及びそれを用いた液晶ディスプレイ並びに酸化亜鉛系スパッタリングターゲット Download PDF

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本発明は、フラットパネルディスプレイや太陽電池などに使用される透明導電膜に関する。
ITO(Indium Tin Oxide)薄膜は、低抵抗率で可視光に対して高い透過率を示すことから、液晶ディスプレイを中心としたフラットパネルディスプレイや太陽電池など透明電極として幅広く用いられている。しかし、近年、原材料であるインジウム価格の高騰、資源問題によりインジウムを使用しない透明導電膜(ITO代替材料)への関心が高まっている。ITO代替材料としては、酸化亜鉛、酸化スズを母材とした材料が知られている。中でも、酸化亜鉛に酸化アルミニウムを添加した膜(以下ZAOと略記する)では、190μΩcmというITOに匹敵する値が報告され(例えば非特許文献1参照)ている。
酸化亜鉛を母材とする膜の形成方法としては、rfマグネトロンスパッタリング法、dcマグネトロンスパッタリング法、パルスレーザーデポジション法、イオンプレーティング法、蒸着法などをあげることができる。上記、190μΩcmという値は、rfマグネトロンスパッタリング法により得られている。しかし、フラットパネルディスプレイの製造工程では、大面積均一成膜および高速成膜が必要とされ、dcマグネトロンスパッタリング法が採用されている。そのため既存の製造工程への対応を考えた場合には、このdcマグネトロンスパッタリング法で実用的特性を示す膜を形成する必要がある。
dcマグネトロンスパッタリング法で酸化亜鉛を母材とする膜を形成する際、ITOと比べて放電安定性に劣るという問題点があった。このような問題を解決する手段として、酸化亜鉛を母材とする焼結体の密度を高めるとともにバルクの抵抗率を低減させる方法(例えば特許文献1参照)や、複数の異なる元素を添加する方法(例えば特許文献2〜3参照)が考案された。
しかし、スパッタリング法で作製した酸化亜鉛を母材とする透明導電膜は、チャンバー内の残留ガス(主にHO)圧に依存して比抵抗などの物性変動を起こしやすいという問題が生じた。このような問題を解決するため、酸化亜鉛を母材として、InとIn以外の長周期型周期表の3族元素とが含有され、Znと前記3族元素との総和に対して、Inが0.5〜5at%、かつIn以外の3族元素が0.5〜15at%の割合で含有されることを特徴とする透明導電膜が提案されている(例えば特許文献4参照)。
特開H02−149459号公報 特開H11−236219号公報 特開H11−256321号公報 特開H11−297640号公報 T.Minami、H.Nanto and S.Takata、JpnJ.Appl.Phys.、23,280−282(1984).
上記のように各種問題は解決され、酸化亜鉛を母材とする材料が、ITOの代替材料として採用可能と思われた。しかし、実際に液晶ディスプレイに適応する際には、膜厚200nm以下という薄い膜厚で使用しなければならない。このような薄い膜厚で、各種薄膜特性を調べたところ、
1)薄膜の抵抗率が、膜厚が薄くなるのにともない急激に増加する。
2)大気中での高温(例えば250℃)処理により抵抗率が増加する。
3)多湿(例えば60℃、90%)処理により抵抗率が増加する。
4)アルカリ溶液(フォトリソグラフィー工程で使用される現像液、剥離液)により溶解する。
といった問題点が明らかとなった。
上述のように、200nmより薄い膜厚領域において、低抵抗率で、耐熱、耐湿性に優れ、耐薬品性が良好な酸化亜鉛を母材とする薄膜は未だ報告されていない。
本発明の課題は、上記問題を全て解決する酸化亜鉛を母材とする薄膜を提供することにある。
本発明者らは、上記問題を解決するため、低抵抗率を示すことでよく知られるアルミニウム添加酸化亜鉛(以下ZAOと記載)に添加する添加剤について鋭意検討を行った。
その結果、ZAOにインジウムを添加し、その添加量をアルミニウムがAl/(Zn+Al+In)の原子比で2%を超え6%未満かつインジウムがIn/(Zn+Al+In)の原子比で0.1%を超え1%未満とすることで、上記課題を解決できることを見いだした。
すなわち本発明は、実質的に亜鉛、アルミニウム、インジウムおよび酸素からなり、アルミニウムがAl/(Zn+Al+In)の原子比で2%を超え6%未満の割合で含有され、かつインジウムがIn/(Zn+Al+In)の原子比で0.1%を超え1%未満の割合で含有されていることを特徴とする透明導電膜を提供するものである。
アルミニウムの含有量は、上記の原子比で2%を超え6%未満である。これは、この範囲外では、薄膜の抵抗率が高くなるためである。特に、2.4%以上5.3%以下とすることがさらに好ましい。
インジウムの添加量は、0.1%を超え1%未満である。0.1%以下の場合は、本発明による優れた低抵抗率、耐熱性、耐湿性、耐薬品性が得難く、1%以上では、得られる薄膜の抵抗率が高くなるためである。特に、0.2%以上0.8%以下とすることがさらに好ましい。
次にインジウムの添加効果について説明する。本発明者は、ZAO膜の耐熱、耐湿性悪化要因について調べた。その結果、ZAO膜表面には膜の粒界付近に大きな窪みが存在し、この部分に酸素あるいは水分が吸着することによりZAO膜の抵抗率が増加するとの知見を得た。そして、ZAO膜にインジウムを微量添加することによりこの窪みの数および深さが減少し、酸素あるいは水分の吸着を防ぐことで、耐熱、耐湿性を向上できることを見いだした。薄膜の表面粗さを測定したところ従来のZAO薄膜の場合2.4nm、本発明による薄膜の場合、1.0nmであった。
また、薬液による膜の溶解も粒界から発生することが知られており、上記窪みを減少させることにより耐薬品性も向上できることを見いだした。
上記効果は、インジウムの添加量を1%以上に増加させても得ることができるが、薄膜の抵抗率が増加し、液晶ディスプレイなどに適応できなくなる。
本発明の透明導電膜は、酸化亜鉛、酸化アルミニウムおよび酸化インジウムを含む焼結体からなるターゲットを用い、スパッタ法により作製することができる。また、亜鉛、アルミニウム、インジウムを含む金属ターゲットを用い、酸素を含有する雰囲気中で反応性スパッタリング法により作製することも可能である。
本発明の酸化亜鉛系スパッタリングターゲットは、例えば、酸化亜鉛粉末、酸化アルミニウム粉末及び酸化インジウム粉末を目的とする組成となるように混合し、プレス等により成形した後、焼成することで焼結体を得、必要に応じて、整形・研磨した後、バッキングプレートにボンディングして得られる。具体的には、ターゲット中のアルミニウムの含有量をAl/(Zn+Al+In)の原子比で2%を超え6%未満とし、かつ、ターゲット中のインジウムの量をIn/(Zn+Al+In)の原子比で0.1%を超え1%未満とする。
本発明の透明導電膜の作製は、例えば以下のようにして行う。上記の酸化亜鉛系スパッタリングターゲットをスパッタリング装置内に設置し、真空排気する。良好な結晶を得るため、基板温度は180℃以上とすることが好ましい。より好ましくは、180℃〜240℃である。基板温度が低いと、得られる膜の結晶性が向上せず、本発明の効果が得がたくなる。また、基板温度が高いと装置に対する負荷が大きくなり好ましくない。
スパッタリングガスとしては、不活性ガスの例えばArを使用する。必要に応じて、酸化性ガスや還元性ガスを導入しても良い。
スパッタリング方式は、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法、ACスパッタリング法またはこれらを組みあわせた方法が使用可能である。
本発明により、特に液晶ディスプレイに好適な、200nmより薄い領域において、低抵抗率で、耐熱、耐湿性に優れ、耐薬品性が良好な酸化亜鉛を母材とする透明導電膜が提供可能となる。
以下に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1〜7および比較例1〜12)
平均粒径が1μmの酸化亜鉛粉末と、平均粒径が0.2μmの酸化アルミニウム粉末と、平均粒径が0.5μmの酸化インジウム粉末とを所定量ポットに入れ、乾式ボールミルにより48時間混合し、混合粉末を作製した。この混合粉末を金型に入れ、300kg/cmの圧力でプレスを行い成形体とした。この成形体を3ton/cmの圧力でCIPによる緻密化処理を行った。次に該成形体を以下の条件で焼結した。
(焼結条件)
焼結温度:1500℃
昇温速度:50℃/hr
保持時間:5時間
焼結雰囲気:窒素雰囲気中
得られた焼結体を4インチφ×6mmtに加工し、インジウム半田を用いて無酸素銅製のバッキングプレートにボンディングした。
このターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリング法により以下に示す条件で、AlおよびIn含有量の異なる透明導電膜を作製した。
(スパッタリング成膜条件)
装置:dcマグネトロンスパッタ装置
磁界強度:1000Gauss(ターゲット直上、水平成分)
基板温度:200℃
到達真空度:5×10−5Pa
スパッタリングガス:Ar
スパッタリングガス圧:0.5Pa
DCパワー:300W
膜厚:100nm
使用基板:無アルカリガラス(コーニング社製#1737ガラス)
得られた薄膜の抵抗率をホール効果測定装置を用いて測定した。結果を表1に示す。アルミニウムが原子比で2%を超え6%未満かつインジウムがIn/(Zn+Al+In)の原子比で0.1%を超え1%未満の範囲で1000μΩcm以下の低抵抗率の膜を得ることができた。
得られた薄膜の高温処理(大気中、250℃の環境下に30分間保持)および多湿処理(60℃、90%RHの環境下に1000時間保持)後の抵抗率を表1に纏めた。本発明の組成を有する膜においては、処理後においても1000μΩcm以下の低抵抗率を示した。一方、処理前に低抵抗率を示していた比較例4,6,8,10のサンプルは抵抗率が増加し、1000μΩcm以上となった。
さらに、得られた薄膜のアルカリ溶解性(25℃の2%KOH水溶液に4分間浸漬した際の膜厚の減少量)を調べた。この処理により溶解した膜厚を表1に纏めた。本発明の組成を有する膜においては、アルカリ処理による溶解膜厚が20nm以下であり、耐アルカリ性も著しく向上している。
Figure 0004702126

Claims (5)

  1. 実質的に亜鉛、アルミニウム、インジウムおよび酸素からなり、アルミニウムがAl/(Zn+Al+In)の原子比で2%を超え6%未満の割合で含有され、かつインジウムがIn/(Zn+Al+In)の原子比で0.1%を超え1%未満の割合で含有されていることを特徴とする透明導電膜。
  2. 膜の厚さが200nm未満であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
  3. 請求項1または請求項2に記載の透明導電膜を含んでなる液晶ディスプレイ。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜を含んでなる機器。
  5. 実質的に亜鉛、アルミニウム、インジウムおよび酸素からなり、アルミニウムがAl/(Zn+Al+In)の原子比で2%を超え6%未満の割合で含有され、かつインジウムがIn/(Zn+Al+In)の原子比で0.1%を超え1%未満の割合で含有されている酸化亜鉛系焼結体をターゲット材として用いたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成用酸化亜鉛系スパッタリングターゲット。
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