JP5421946B2 - 車両用液圧発生装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の電動ブレーキ装置に使用する車両用液圧発生装置に関する。
バイ・ワイヤ(By Wire)式の電動ブレーキ装置は、運転者のブレーキペダルを介してのブレーキ操作を電気信号に変換し、その信号を利用した電気的な制御を行うことで制動力発生手段を作動させて車輪に必要な制動力を加えるものである。
このような電動ブレーキ装置としては、運転者のブレーキ操作力で液圧を発生させる液圧発生手段(マスタシリンダ)と、運転者のブレーキ操作に応じた反力を付与する反力付与手段(ストロークシミュレータ)とを有する液圧発生装置を備えたものが知られている(例えば、特許文献1ないし3参照)。
ストロークシミュレータは、ハウジングの内部に、マスタシリンダの圧力室に発生させた液圧を一端に受けて移動するピストン部材を組み込み、そのピストン部材の他端が臨む反力付与室(ばね室)に、ピストン部材に対してブレーキ操作量に応じた反力を付与するばね部材(コイルスプリング)を収容している。
特開2010−047039号公報 特開2004−276666号公報 特開2002−293229号公報
ところで、運転者がブレーキペダルを介してブレーキ操作を行う際のペダルフィールは、ばね部材を圧力付与室に組み込んだ際のばね部材の反発荷重(セット荷重)を低く抑えることで良好となる。その反面、運転者がブレーキ操作量を減じた際にピストン部材の戻りを良好にするためには、セット荷重を大きくする必要がある。つまり、この相反する要求を共に満足させるためには、組み込んだばね部材が、目標とするセット荷重を確実に発揮するように高い精度管理が求められる。
しかしながら、従来の反力付与手段(ストロークシミュレータ)では、セット荷重を高い精度で管理することが難しく、セット荷重のバラツキを低減することが望まれている。
そこで、本発明は、セット荷重のバラツキを低減することができる反力付与手段を有する車両用液圧発生装置を提供することにある。
記課題を解決した本発明は、運転者の操作に応じて液圧を発生させる液圧発生手段と、前記液圧発生手段と連通して反力を付与する反力付与手段と、を備える車両用液圧発生装置において、前記反力付与手段は、前記液圧発生手段からの吐出液圧に応じて作動するピストン部材と、前記ピストン部材に当接して反力を付与するばね部材と、を有し、
前記ばね部材は、不等ピッチであり、前記ばね部材の内周側で前記ピストン部材によって前記ばね部材の内側を移動可能な樹脂部材を有し、前記ばね部材は、前記ピストン部材に支持される側の前部のピッチを、これとは反対側の後部のピッチよりも大きくしたことを特徴とする。
この車両用液圧発生装置では、ばね部材を反力付与手段にセットするために縮めると、前記ばね部材のピッチの大きい部分よりも先にピッチの小さい部分が縮むこととなる。そして、この車両用液圧発生装置によれば、このピッチの小さい部分による反発力として現われるセット荷重を小さく抑えることができる。つまり、ピッチの小さい部分のセット長に対するセット荷重を小さくすることで、セット長のバラツキに対するセット荷重のバラツキが小さくなる。
また、この車両用液圧発生装置によれば、ばね部材を反力付与手段にセットした後に、ピッチの大きい部分の反発力を利用することで、ピストン部材の戻りを良好にすることができる。
また、この車両用液圧発生装置では、ピストン部材に押されてばね部材が縮む際に、ばね部材のピッチの大きい部分は、ばね部材のピッチの小さい部分よりも変位のストロークが大きく、ばね部材の径の変動も大きくなる。その結果、ばね部材のピッチの大きい部分は、ばね部材が縮む際に、ピストン部材に支持される樹脂部材(例えば、ブッシュ)と干渉する恐れがある。
これに対して、この車両用液圧発生装置によれば、ピストン部材によってばね部材が縮められた際に、樹脂部材は、ばね部材のピッチが大きい前部側から、そのピッチが小さく径の変動が小さい後部側に向かってばね部材の内側を移動するので、ばね部材と樹脂部材との干渉を防止することができる。また、ばね部材の内側での樹脂部材とばね部材との距離(隙間)を縮小できるので、車両用液圧発生装置のコンパクト化を図ることができる。
また、このような車両用液圧発生装置においては、前記ばね部材の後端を支持する底部から立ち上がってこのばね部材の外周を覆う周壁部を有するばね座を備え、前記ばね座の周壁部は、前記ばね部材の前部を覆う部分の軸線方向に直交する断面の内側断面積が、前記ばね部材の後部を覆う部分の内側断面積よりも大きい構成とすることができる。
この車両用液圧発生装置によれば、ピッチの大きいばね部材の前部を覆うばね座の周壁部の内側断面積が、ピッチの小さいばね部材の後部を覆うばね座の周壁部の内側断面積よりも大きいので、ピッチが大きく径の変動が大きい前記ばね部材の前部において、この前部とばね座との干渉を、より確実に防止することができる。
また、このような車両用液圧発生装置においては、前記ばね座の前記底部を軸線方向に貫通するロッド部材を備え、前記ロッド部材は、前記ばね座に対して軸線方向に相対移動可能に支持されると共に、当該ロッド部材の前記ピストン部材側に延びる先端が、前記樹脂部材に支持されている構成とすることができる。
この車両用液圧発生装置によれば、ピストン部材によってばね部材が縮められ、またその後に復元する場合に、ロッド部材は、ピストン部材及びばね部材の移動を軸線方向に案内することができる。その結果、この車両用液圧発生装置によれば、ピストン部材及びばね部材の移動動作を円滑に行うことができる。
本発明によれば、セット荷重のバラツキを低減することができる反力付与手段を有する車両用液圧発生装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る車両用液圧発生装置が適用された車両用ブレーキシステムの車両における配置構成を示す図である。 車両用ブレーキシステムの概略構成図である。 本発明の実施形態に係る車両用液圧発生装置の構成説明図である。 図3に示す車両用液圧発生装置を構成するストロークシミュレータ(反力付与手段)の部分拡大図である。 本発明の実施例及び比較例におけるばね部材のセット荷重のバラツキと、セット長のバラツキとの関係を示すグラフであり、横軸はばね部材のストローク量(長さ)を表し、縦軸はばね部材の荷重を表している。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の車両用液圧発生装置は、マスタシリンダ(液圧発生手段)とストロークシミュレータ(反力付与手段)とを備えて構成されており、当該ストロークシミュレータに内蔵されるばね部材が不等ピッチとなっていることを主な特徴点としている。
以下に、車両用液圧発生装置が適用された車両用ブレーキシステムについて説明した後に、車両用液圧発生装置について説明する。
<車両用ブレーキシステム>
図1は、本発明の実施形態に係る車両用液圧発生装置が適用された車両用ブレーキシステムの車両における配置構成を示す図である。なお、車両Vの前後左右の方向を図1に矢印で示す。
本実施形態の車両用ブレーキシステム10は、通常時用として、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成される。
図1に示すように、車両用ブレーキシステム10は、操作者(運転者)のブレーキ操作が入力される車両用液圧発生装置14と、少なくともブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生する電動ブレーキ装置としてのモータシリンダ装置16と、モータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧に基づいて車両の挙動の安定化を支援する車両挙動安定化装置としてのビークルスタビリティアシスト装置18(以下、VSA装置18という、VSA;登録商標)とを備えて構成されている。
なお、モータシリンダ装置16は、運転者のブレーキ操作に応じた電気信号だけではなく、他の物理量に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生するように構成されていてもよい。他の物理量に応じた電気信号とは、例えば、自動ブレーキシステムのような、運転者のブレーキ操作によらずに、ECU(Electronic Control Unit)が車両Vの周囲の状況をセンサ等で判断して、車両Vの衝突等を回避するための信号などである。
車両用液圧発生装置14は、ここでは右ハンドル車に適用するものであり、ダッシュボード2の車幅方向の右側にボルト等を介して固定されている。モータシリンダ装置16は、例えば、車両用液圧発生装置14とは逆側の車幅方向の左側に配置され、左側のサイドフレーム等の車体に取付用ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。VSA装置18は、例えば、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能、加速時などの車輪空転を防ぐTCS(トラクション・コントロール・システム)機能、旋回時の横すべりを抑制する機能などを備えて構成されており、例えば、車幅方向の右側の前端に、ブラケットを介して車体に取り付けられている。なお、VSA装置18に代えて、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS機能のみを有するABS装置を接続してもよい。車両用液圧発生装置14、モータシリンダ装置16、及びVSA装置18の内部の詳細な構成については後記する。
これらの車両用液圧発生装置14、モータシリンダ装置16、及びVSA装置18は、車両Vのダッシュボード2の前方に設けられたエンジンや走行用モータ等の構造物3が搭載される構造物搭載室Rに、配管チューブ22a〜22fを介して互いに分離して配置されている。なお、車両用ブレーキシステム10は、前輪駆動車、後輪駆動車、四輪駆動車のいずれにも適用可能である。また、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、車両用液圧発生装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスによってECU等の制御手段と電気的に接続されている。
図2は、車両用ブレーキシステムの概略構成図である。なお、図2に示す車両用液圧発生装置14では、その構成部品であるマスタシリンダ34及びストロークシミュレータ64を模式的に示しており、より詳細なマスタシリンダ34及びストロークシミュレータ64の様子は、図3で示すものとする。
液圧路について説明すると、図2中の連結点A1を基準として、車両用液圧発生装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
図2中の他の連結点A2を基準として、車両用液圧発生装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aのホイールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bのホイールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cのホイールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dのホイールシリンダ32FLと接続される。
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液(フルード)がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
なお、車両用ブレーキシステム10は、例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。
車両用液圧発生装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、前記マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34は、特許請求の範囲にいう「液圧発生手段」に相当する。
このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する第2ピストン40a及び第1ピストン40bが摺動自在に配設される。第2ピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、第1ピストン40bは、第2ピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
この第2ピストン40a及び第1ピストン40bが配置されるシリンダチューブ38の内周面との間には、一対のピストンパッキン44a、44bがそれぞれ装着される。一対のピストンパッキン44a、44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、第2ピストン40aと第1ピストン40bとの間には、ばね部材50aが配設され、第1ピストン40bとシリンダチューブ38の前端部との間には、他のばね部材50bが配設される。
なお、第2ピストン40a及び第1ピストン40bの外周面にピストンパッキン44a、44bがそれぞれ設けられる構成であってもよい。
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を発生させる第2圧力室56a及び第1圧力室56bが設けられる。第2圧力室56aは、第2液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第1圧力室56bは、第1液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第2液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第2液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第2液圧路58a上において、第2遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側の上流の液圧を検知するものである。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第1液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60bが設けられると共に、第1液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第1液圧路58b上において、第1遮断弁60bよりも下流側(本実施形態では、図2に示すように、ホイールシリンダ32FL,32RR側)の液圧を検知するものである。
この第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(消磁(非通電)時の弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図2において、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bは励磁時の状態を示す(後記する第3遮断弁62も同様)。
マスタシリンダ34と第1遮断弁60bとの間の第1液圧路58bには、前記第1液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。
このストロークシミュレータ64は、特許請求の範囲にいう「反力付与手段」に相当し、マスタシリンダ34と連通して、運転者のブレーキ操作に応じた反力を付与するように構成されている。このストロークシミュレータ64の内部構造については、後に更に詳しく説明する。
第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(消磁(非通電)時の弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。
第1液圧路58b上であって、第1遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられ、前記液圧室65を介して、マスタシリンダ34の第1圧力室56bから導出されるブレーキ液が吸収可能に設けられる。
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第2圧力室56aと複数のホイールシリンダ32FR、32RLとを接続する第2液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第1圧力室56bと複数のホイールシリンダ32RR、32FLとを接続する第1液圧系統70bとから構成される。
第2液圧系統70aは、車両用液圧発生装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第2液圧路58aと、車両用液圧発生装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、VSA装置18の導出ポート28a、28bと各ホイールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
第1液圧系統70bは、車両用液圧発生装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第1液圧路58bと、車両用液圧発生装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、VSA装置18の導出ポート28c、28dと各ホイールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
モータシリンダ装置16は、電動式のモータ72の駆動力によって第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを軸方向に駆動することによりブレーキ液圧を発生する電動ブレーキ装置である。なお、モータシリンダ装置16において、ブレーキ液圧を発生させる(上昇させる)ときの第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの移動方向(図2中矢印X1方向)を「前」とし、その反対方向(図2中矢印X2方向)を「後」とする。
モータシリンダ装置16は、軸方向に移動可能な第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを内蔵するシリンダ部76と、第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを駆動するためのモータ72と、モータ72の駆動力を第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bに伝達するための駆動力伝達部73とを備えている。
駆動力伝達部73は、モータ72の回転駆動力を伝達するギア機構(減速機構)78と、この回転駆動力をボールねじ軸(スクリュー)80aの軸方向に沿った直線方向駆動力に変換するボールねじ構造体80と、を含む駆動力伝達機構74を有している。
シリンダ部76は、略円筒状のシリンダ本体82と、前記シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、車両用液圧発生装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。
シリンダ本体82内には、前記シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bが摺動自在に配設される。第2スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの前端に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に変位する。また、第1スレーブピストン88bは、第2スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
第2スレーブピストン88aの外周面と駆動力伝達機構74との間を液密にシールすると共に、第2スレーブピストン88aをその軸方向に対して移動可能にガイドする環状のガイドピストン230が、第2スレーブピストン88aの外周面に対向するように配置されている。ガイドピストン230の内周面にはスレーブピストンパッキン90cが装着される。また、第2スレーブピストン88aの前端側の外周面には、環状段部を介してスレーブピストンパッキン90bが装着される。スレーブピストンパッキン90cとスレーブピストンパッキン90bとの間には、後記するリザーバポート92aと連通する第2背室94aが形成される。そして、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2リターンスプリング96aが配設される。
一方、第1スレーブピストン88bの外周面には、環状段部を介して一対のスレーブピストンパッキン90a、90bがそれぞれ装着される。一対のスレーブピストンパッキン90a、90bの間には、後記するリザーバポート92bと連通する第1背室94bが形成される。そして、第1スレーブピストン88bとシリンダ本体82の前端部と間には、第1リターンスプリング96bが配設される。
シリンダ部76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bとが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内のリザーバ室と連通するように設けられる。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホイールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第2液圧室98aと、他の出力ポート24bからホイールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第1液圧室98bとが設けられる。
なお、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bの最大離間距離と最小離間距離とを規制する規制手段100が設けられ、さらに、第1スレーブピストン88bには、前記第1スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第2スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられ、これによって、特にマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するときのバックアップ時において、一系統の失陥時に他の系統の失陥が防止される。
VSA装置18は、周知のものからなり、右側前輪及び左側後輪のディスクブレーキ機構30a、30b(ホイールシリンダ32FR、ホイールシリンダ32RL)に接続された第2液圧系統70aを制御する第2ブレーキ系110aと、右側後輪及び左側前輪のディスクブレーキ機構30c、30d(ホイールシリンダ32RR、ホイールシリンダ32FL)に接続された第1液圧系統70bを制御する第1ブレーキ系110bとを有する。
なお、第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bと、各ディスクブレーキ機構30a,30b,30c,30dとの接続の組み合わせは、前記した組み合わせに限定されず、互いに独立した2系統が担保されれば、次のような組合せとすることができる。
つまり、図示はしないが、第2ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、左側後輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第2ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。また、第2ブレーキ系110aは、右側前輪及び左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、右側後輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
この第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第2ブレーキ系110aと第1ブレーキ系110bとで対応するものには同一の参照符号を付すと共に、第2ブレーキ系110aの説明を中心にして、第1ブレーキ系110bの説明を括弧書きで適宜付記する。
第2ブレーキ系110a(第1ブレーキ系110b)は、ホイールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114を有する。VSA装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられる吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなるサクションバルブ142とを備える。
なお、第2ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する液圧路上には、モータシリンダ装置16の出力ポート24aから出力され、前記モータシリンダ装置16の第2液圧室98aで発生したブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。各圧力センサPm、Pp、Phで検出された検出信号は、図示しない制御手段に導入される。
<車両用液圧発生装置>
次に、本発明の実施形態に係る車両用液圧発生装置について更に詳しく説明する。図3は、本発明の実施形態に係る車両用液圧発生装置の構成説明図である。図4は、図3に示す車両用液圧発生装置を構成するストロークシミュレータ(反力付与手段)の部分拡大図である。
図3に示すように、車両用液圧発生装置14は、マスタシリンダ34(液圧発生手段)とストロークシミュレータ64(反力付与手段)とを備えている。
マスタシリンダ34は、車両V(図1参照)の前後方向(図1及び図3に示す前後方向)に延在すると共に、後に詳しく説明するストロークシミュレータ64と一体となるように並設されている。
ちなみに、本実施形態でのマスタシリンダ34が有するマスタシリンダハウジング34a内には、前記したように、第1及び第2ピストン40b、40aが配置されると共に、第1ピストン40bの前方には第1圧力室56bが形成され、第2ピストン40aの前方には第2圧力室56aが形成されている。このようなマスタシリンダハウジング34aは、ストロークシミュレータ64が有するシミュレータハウジング64aと一体成形(本実施形態では鋳造)されて車両用液圧発生装置14のハウジング14aを構成している。
そして、車両用液圧発生装置14は、このハウジング14aに設けられたスタッドボルト303によってダッシュボード2に取り付けられている。
なお、このハウジング14aの上方(図3の紙面の手前)には、マスタシリンダ34とストロークシミュレータ64との間で前後方向に延在するように、細長の外形を有する第1リザーバ36(図2参照)が配置されることとなる。
そして、ハウジング14aには、図2に示すリリーフポート52a、52b及び接続ポート20a、20bが形成されている。また、ハウジング14aの中実部には、穿設孔によって、図2に示す第1液圧路58b及び第2液圧路58a、並びに分岐液圧路58cが形成されている。
図3に示すように、マスタシリンダ34の後端部は、前記したように、ブレーキペダル12(図2参照)をその一端側に連結したプッシュロッド42の他端側を受け入れる構成となっている。図3中、符号306は、マスタシリンダ34とプッシュロッド42とに亘って配置されるブーツである。そして、このブーツ306が取り付けられるマスタシリンダ34の後部は、ダッシュボード2を貫通して車室C内に延在することとなる。
また、図3中、符号300は、センサバルブユニットである。これは、図2に示す第1遮断弁60b、第2遮断弁60a、第3遮断弁62、圧力センサPp、及び圧力センサPm、並びにこの圧力センサPp、Pmからの検出信号を電気的に処理して前記液圧を演算する圧力検出回路を搭載する回路基板(図示省略)等を収納する。また、符号307は、センサバルブユニット300の筐体内に臨む通気孔であり、符号307cは、この通気孔307の開口に配置される防水通気部材(例えばゴアテックス(登録商標)等)である。
以上のような車両用液圧発生装置14は、マスタシリンダ34、ストロークシミュレータ64、液圧路に残存する空気を抜くためのエア抜き用のブリーダ(図示省略)を有することもできる。
次に、ストロークシミュレータ64について更に詳しく説明する。
図3に示すストロークシミュレータ64は、前記したように、運転者のブレーキ操作に応じた反力を付与するものであり、マスタシリンダ34の右側(図1の車両Vの車幅方向の外側)で横並びに配置されている。
このストロークシミュレータ64のシミュレータハウジング64a内には、その前方に液圧室65が形成されていると共に、その後方にばね室63が形成されている。液圧室65は、前記したように、マスタシリンダ34の第1圧力室56bと連通している。
液圧室65は、円柱形状の空間で形成されており、ばね室63は、液圧室65の空間よりも大径の円柱形状の空間で形成されている。この液圧室65とばね室63とは一体となって、段付き円柱形状の空間を形成している。
そして、シミュレータハウジング64aの後端には、段付き円柱形状の空間に臨むように開口が形成され、この開口にはサークリップ69によってプラグ67が支持されている。
このような液圧室65には、シミュレータピストン68が配置されると共に、ばね室63には、第1ばね座631及び第2ばね座632と、第1ばね座631及び第2ばね座632によって支持される第1リターンスプリング66a及び第2リターンスプリング66bと、が配置されている。
なお、本実施形態では、第2リターンスプリング66bが特許請求の範囲にいう「ばね部材」に相当する。但し、後に説明する他の実施形態において、不等ピッチの第1リターンスプリング66aは、特許請求の範囲にいう「ばね部材」に相当する。
シミュレータピストン68は、液圧室65を構成する小径の円柱形状の空間に収まる円柱形状の外形を有するピストン本体部681と、このピストン本体部681の後端に設けられるばね受け部682とで主に構成されている。
このシミュレータピストン68は、マスタシリンダ34の操作液圧が発生していない初期状態においては、液圧室65にそのピストン本体部681が収っている。そして、このシミュレータピストン68は、運転者がブレーキペダル12を介して荷重を入力した際に発生するマスタシリンダ34の液圧によって、後記する第1リターンスプリング66a及び第2リターンスプリング66bの反発力(反力)に抗しながらばね室63内に進入可能となっている。言い換えれば、シミュレータピストン68は、マスタシリンダ34が発生する液圧の増減によって、シミュレータピストン68の軸線方向に前記反力を受けながら往復移動可能となっている。
ばね受け部682は、ピストン本体部681の後端に設けられて、後記する第2リターンスプリング66bの前端を受け止めて支持するようになっている。このばね受け部682の詳細については、第2リターンスプリング66b(ばね部材)と共に後に説明する。
第1ばね座631及び第2ばね座632は、ばね室63内の前側から後側に向かってこの順番で配置されている。
第1ばね座631及び第2ばね座632のそれぞれは、いわゆるハット形状を呈しており、軸線方向に直交するように配置される円盤状の底板631a、632aと、この底板631a、632aの周縁から立ち上がる筒状部631b、632bと、この筒状部631b、632bの端縁から径方向の外側に延出するフランジ部631c、632cと、で構成されている。
なお、第1ばね座631の底板631aは、特許請求の範囲にいう「ばね部材の後端を支持する底部」に相当し、第1ばね座631の筒状部631bは、特許請求の範囲にいう「ばね座の周壁部」に相当する。
そして、第1ばね座631及び第2ばね座632は、その底板631a、632a同士が向き合うようにばね室63内に配置されている。
また、第1ばね座631及び第2ばね座632のフランジ部631c、632cは、第1リターンスプリング66aの前端及び後端のそれぞれを支持している。そして、第1ばね座631及びと第2ばね座632の筒状部631b、632bのそれぞれは、第1リターンスプリング66aの両端でその内周側に配置されている。なお、第1ばね座631の筒状部631bの内側には、後に詳しく説明する第2リターンスプリング66bが配置されている。この第1ばね座631については、後に詳しく説明する。
第2ばね座632の後側には、シミュレータハウジング64aに支持された前記プラグ67が配置されている。このプラグ67は、その前側に配置される第2ばね座632を支持している。
第1リターンスプリング66a及び第2リターンスプリング66bは、圧縮コイルばねで形成されている。本実施形態での第1リターンスプリング66aは、第2リターンスプリング66bよりもその線径が太くなるように形成されることで、第1リターンスプリング66aのばね定数は、第2リターンスプリング66bのばね定数よりも大きくなっている。
第1リターンスプリング66aは、前記したように、第1ばね座631及び第2ばね座632の間で支持されている。そして、第2リターンスプリング66bは、前記したように、第1ばね座631の筒状部631bの内側に配置されて、その後端が第1ばね座631の底板631aに支持されている。また、第2リターンスプリング66bの前端は、前記したシミュレータピストン68のばね受け部682に支持されている。
このばね受け部682は、ハット形状を呈しており、軸線方向に直交するように配置される円盤状の底板682aと、この底板682aの周縁から立ち上がる筒状部682bと、この筒状部682bの端縁から径方向の外側に延出するフランジ部682cと、で構成されている。このばね受け部682は、そのフランジ側でピストン本体部681の後端に接続されると共に、その底板682aが、次に説明する第1ばね座631の底板631aに対向するように配置されている。
そして、このばね受け部682は、フランジ部682cで第2リターンスプリング66bの前端を支持すると共に、筒状部682bが第2リターンスプリング66bの前部の内周側に配置されている。
以上のように、第1リターンスプリング66a及び第2リターンスプリング66bは、第2ばね座632とシミュレータピストン68のばね受け部682との間で直列に配置されることとなる。
なお、図3中、符号633は、軸線方向に延在して第1ばね座631及び第2ばね座632の底板631a、632aの中心を貫通するロッド部材である。このロッド部材633は、これらの第1ばね座631及び第2ばね座632に対して前後方向(軸線方向)に相対移動可能となっていると共に、第2リターンスプリング66b(ばね部材)の内周側に配置される樹脂部材634にその一端が支持されている。ちなみに、本実施形態での樹脂部材634は、合成ゴム等の弾性材料で形成されており、シミュレータピストン68のばね受け部682(底板632a)に当接して支持されて、入力荷重に対する変位を緩和するいわゆるブッシュとして機能している。
このように互いにばね定数が異なり、直列に配置された第1リターンスプリング66a及び第2リターンスプリング66bの組み合わせは、ブレーキペダル12(図2参照)の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低く設定し、踏み込み後期時にペダル反力を高く設定することで、このストロークシミュレータ64において擬似的にブレーキ反力を形成するものであっても、ブレーキペダル12(図2参照)のペダルフィールを既存のマスタシリンダで生じるペダルフィールと同等とすることができる。
次に参照する図4は、図3に示すストロークシミュレータ(反力付与手段)の部分拡大図である。
図4に示すように、第1ばね座631は、更に詳しく説明すると、前記した筒状部631bが、底板631a寄りに形成された小径部6311と、フランジ部631c寄りに形成されてこの小径部6311よりも拡径した大径部6312とで構成される段付き筒形状となっている。そして、小径部6311内には、第2リターンスプリング66bの後部SRが配置され、大径部6312内には、第2リターンスプリング66bの前部SFが配置されている。言い換えれば、第1ばね座631の筒状部631b(周壁部)は、第2リターンスプリング66bの前部SFを覆う部分の軸線方向に直交する断面の内側断面積S2が、第2リターンスプリング66bの後部SRを覆う部分の軸線方向に直交する断面の内側断面積S1よりも大きくなっている。
ちなみに、本実施形態での第2リターンスプリング66bにおける後部SR及び前部SFの区別は、概ねスプリング長の中央よりも後寄りに位置するスプリング部分が後部SRであり、その中央よりも前寄りに位置するスプリング部分が前部SFである。
なお、図4中、符号66aは第1リターンスプリング66aであり、符号68はシミュレータピストンであり、符号633はロッド部材であり、符号634は樹脂部材である。
そして、この第2リターンスプリング66bは、そのスプリング長方向に、ばね定数の大きい領域が前部SFに形成され、この領域の後側に、この前部SFよりもばね定数の小さい領域として後部SRが形成されている。本実施形態での第2リターンスプリング66bは、不等ピッチとなっており、換言すると、単位長さの線材の巻き数(有効巻き数)が異なる領域を複数有している。つまり、具体的には、前部SFの第2リターンスプリング66bのピッチP1は、後部SRの第2リターンスプリング66bのピッチP2よりも大きくなって、P1>P2の関係を満たしている。言い換えれば、前部SFの第2リターンスプリング66bのばね定数k1は、後部SRの第2リターンスプリング66bのばね定数k2よりも大きくなって、k1>k2となっている。ちなみに、本実施形態でのばね定数の調整は、ピッチを調節することで行っているが、ばね定数kを表す下記式(1)のパラメータG、d、Na及びDの少なくともいずれかを調節することで、そのばね定数kを調整することができる。
k=G・d/(8Na・D) ・・・式(1)
(但し、Gは、ばね材料の横弾性係数であり、dは、ばねの線径であり、Naは、ばねの有効巻き数であり、Dは平均コイル径である)
ちなみに、特許請求の範囲にいうピッチの大小関係は、第2リターンスプリング66bをストロークシミュレータ64にセットした状態での大小関係を意味しているが、第2リターンスプリング66bは、ストロークシミュレータ64にセットする前においても、ピッチの大小関係は同じになる。つまり、ストロークシミュレータ64にセットする前の伸張状態の第2リターンスプリング66bをそのセット長に縮める場合には、ばね定数の小さい、小ピッチのばね領域が、ばね定数の大きい、大ピッチのばね領域よりも先に(優先的に)縮められるためである。
本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
車両用ブレーキシステム10が正常に機能する正常時には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bが励磁で弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁で弁開状態となる(図2参照)。従って、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bによって第2液圧系統70a及び第1液圧系統70bが遮断されているため、車両用液圧発生装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
このとき、マスタシリンダ34の第1圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68が第1及び第2リターンスプリング66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力が発生してブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィールが得られる。
そして、本実施形態に係る車両用液圧発生装置14を適用した車両用ブレーキシステム10は、運転者に対してこのような違和感のない良好なブレーキフィールを確実に提供するべく、従来のストロークシミュレータ(例えば、前記した特許文献1ないし3参照)と比較して、第2リターンスプリング66bのセット荷重のバラツキを低減するものである。この作用効果については、更に詳しく後に説明する。
そして、本実施形態での車両用ブレーキシステム10においては、図示しない制御手段は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、モータシリンダ装置16のモータ72を駆動させ、モータ72の駆動力を駆動力伝達機構74を介して伝達し、第2リターンスプリング96a及び第1リターンスプリング96bのばね力に抗して第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを図2中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの変位によって第2液圧室98a及び第1液圧室98b内のブレーキ液がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
このモータシリンダ装置16における第2液圧室98a及び第1液圧室98bのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪に所望の制動力が付与される。
換言すると、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10では、電動ブレーキ装置(動力液圧源)として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する図示しないECU等の制御手段が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との連通を第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。このため、本実施形態では、例えば、電気自動車等のように、旧来から用いられていた内燃機関による負圧が存在しない車両に好適に適用することができる。
一方、モータシリンダ装置16等が作動不能となる異常時では、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bをそれぞれ弁開状態とし、且つ、第3遮断弁62を弁閉状態としてマスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に伝達して、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
次に、本実施形態に係る車両用液圧発生装置14の奏する作用効果について説明する。参照する図5は、本発明の実施例及び比較例におけるばね部材のセット荷重のバラツキと、セット長のバラツキとの関係を示すグラフであり、横軸はばね部材のストローク量(長さ)を表し、縦軸はばね部材の荷重を表している。
なお、比較例でのばね部材は、従来のストロークシミュレータ(例えば、前記した特許文献1ないし3参照)に使用される、ばねの線径、ばねの有効巻き数、及び平均コイル径がそのスプリング長に亘って一定である圧縮コイルばねを想定している。これに対して、本発明の実施例でのばね部材は、本実施形態での前記した第2リターンスプリング66bであり、図4に示すその前部SFのピッチP1が比較例のばね部材と略同じに設定されると共に、その後部SRのピッチP2が前部SFよりも小さくなるように設定された不等ピッチとなっている。ちなみに、この実施例での第2リターンスプリング66bは、そのばね材料、ばねの線径及び平均コイル径が比較例でのばね部材と略同じに設定されている。
従来のストロークシミュレータ(比較例)においては、シミュレータピストンの戻りを良好にすると共に良好なペダルフィールを実現するために、目標とするセット荷重を確実に発揮するようにその高い精度管理が求められていることは、前記したとおりである。
ここでは、図5に示すように、従来のストロークシミュレータ(比較例)で使用されるばね部材を、所定のセット長L1でストロークシミュレータに組み込んで、目標とするセット荷重N1に設定しようとする場合を想定する。
このような従来のストロークシミュレータ(比較例)で使用されるばね部材は、そのばね定数がスプリング長方向に一定であることから、そのセット長がL1に対してA2の範囲でバラツキを生じると、セット荷重は、目標のN1に対してB2の範囲でバラツキを生じることとなる。
つまり、従来のストロークシミュレータ(比較例)では、そのセット荷重がB2の範囲の下限値となってシミュレータピストンの戻りが悪くなる場合があると共に、逆にそのセット荷重がB2の範囲の上限値となって、良好なペダルフィールを実現することができない場合がある。
これに対して、本実施形態での第2リターンスプリング66b(ばね部材)は、比較例のばね部材とピッチが略同じの前部SFで、ブレーキ反力を第1リターンスプリング66aと協働して発生する。つまり、この前部SFは、ストロークシミュレータ64で本来のブレーキ反力を形成する部分となる。この前部SFにおけるストロークシミュレータ64のストローク量に対するストロークシミュレータ64の荷重の関係は、図5に示す比較例と同じ勾配となる線分で示されている。
一方、第2リターンスプリング66bの後部SRは、前部SFよりもピッチが小さくなって、そのばね定数が小さいので、この前部SFにおける第2リターンスプリング66bのストローク量に対する第2リターンスプリング66bの荷重の関係は、図5に示すように、比較例よりも勾配が緩い線分で示されることとなる。
つまり、この第2リターンスプリング66bをストロークシミュレータ64に組み込むために縮めると、その前部SFよりも後部SRが、比較例よりも緩い勾配の図5に示す線分に沿うように、先に(優先的に)縮むこととなる。
したがって、本実施形態での第2リターンスプリング66bでは、図5に示すように、所定のセット長L2でストロークシミュレータ64に組み込んで、目標とするセット荷重N1に設定しようとする際に、そのセット長がL2に対してA1(但し、A1=A2)の範囲でバラツキを生じたとしても、そのセット荷重は、目標のN1に対して、比較例のバラツキB2よりも小さいバラツキB1に抑えられる(図5中、B1<B2)。
このようなストロークシミュレータ64を備える本実施形態に係る液圧発生装置14によれば、第2リターンスプリング66bのセット荷重のバラツキを小さくすることができるので、高い精度管理を実現することができる。つまり、セット荷重の設定を高い精度でかつ簡単に行うことができるので、本実施形態に係る液圧発生装置14によれば、これを適用する車両用ブレーキシステム10の性能を一段と向上させることができるのは勿論のこと、その製造工程を簡略化できると共に、その製造コストを低減することができる。
また、本実施形態に係る液圧発生装置14によれば、第2リターンスプリング66bをストロークシミュレータ64にセットした後に、ピッチの大きい部分(第2リターンスプリング66bの前部)の大きい反発力を利用することで、シミュレータピストン68の戻りを良好にすることができる。
また、車両用液圧発生装置14によれば、シミュレータピストン68によって第2リターンスプリング66bが縮められた際に、樹脂部材634は、第2リターンスプリング66bのピッチが大きい前部SF側から、そのピッチが小さく径の変動が小さい後部SR側に向かって第2リターンスプリング66bの内側を移動するので、第2リターンスプリング66bと樹脂部材634との干渉を防止することができる。また、第2リターンスプリング66bの内側での樹脂部材634と第2リターンスプリング66bとの距離(隙間)を縮小できるので、車両用液圧発生装置14のコンパクト化を図ることができる。
また、この車両用液圧発生装置14によれば、ピッチP1の大きい第2リターンスプリング66bの前部SFを覆う第1ばね座631の大径部631の内側断面積S2が、ピッチP2の小さい第2リターンスプリング66bの後部SRを覆う第1ばね座631の小径部6311の内側断面積S1よりも大きいので、ピッチP1が大きく径の変動が大きい第2リターンスプリング66bの前部SFと第1ばね座631との干渉を防止することができる。
また、この車両用液圧発生装置14によれば、シミュレータピストン68によって第2リターンスプリング66bが縮められ、またその後に復元する場合に、ロッド部材633は、シミュレータピストン68及び第2リターンスプリング66bの移動を軸線方向に案内することができる。その結果、この車両用液圧発生装置14によれば、シミュレータピストン68及び第2リターンスプリング66bの移動動作を円滑に行うことができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記実施形態では、第2リターンスプリング66bの前部SFと後部SRとで相互に異なるピッチP1、P2を形成することで、2段のばね定数を設定しているが、本発明は3以上の多段ではね定数を変更する構成であってもよい。
また、前記実施形態では、第2リターンスプリング66bのばね定数を多段に変更して構成しているが、本発明は第1リターンスプリング66aのばね定数を多段に変更して構成することもできる。この構成によれば、第1リターンスプリング66aが特許請求の範囲にいう「ばね部材」に相当する。また、本発明は、第1リターンスプリング66a及び第2リターンスプリング66bのばね定数をそれぞれ多段に変更することもできる。
また、本発明は、ばね定数を多段に設定する際に、スプリング長方向にばね定数の大きい順番で、又は小さい順番でばね定数の異なる領域を設定することもできるし、ばね定数の異なる領域をランダムに配置することもできる。
また、本発明は、ばね定数の変更を前記したピッチで行うもの以外に、ばね材料の横弾性係数(G)、ばねの線径(d)、及び平均コイル径(D)のいずれかによりばね定数を変更し、またはこれらから選択された2以上をそれぞれ変更してばね定数を変更したものであってもよい。
12 ブレーキペダル
13 ストロークセンサ(操作量検出手段)
14 車両用液圧発生装置
16 モータシリンダ装置(電気的液圧発生手段)
34 マスタシリンダ(液圧発生手段)
64 ストロークシミュレータ(反力発生手段)
66b 第2リターンスプリング(ばね部材)
68 シミュレータピストン(ピストン部材)
631 第1ばね座(ばね座)
631b 筒状部(周壁部)
633 ロッド部材
634 樹脂部材
V 車両

Claims (3)

  1. 運転者の操作に応じて液圧を発生させる液圧発生手段と、
    前記液圧発生手段と連通して反力を付与する反力付与手段と、
    を備える車両用液圧発生装置において、
    前記反力付与手段は、前記液圧発生手段からの吐出液圧に応じて作動するピストン部材と、
    前記ピストン部材に当接して反力を付与するばね部材と、を有し、
    前記ばね部材は、不等ピッチであり、
    前記ばね部材の内周側で前記ピストン部材によって前記ばね部材の内側を移動可能な樹脂部材を有し、
    前記ばね部材は、前記ピストン部材に支持される側の前部のピッチを、これとは反対側の後部のピッチよりも大きくしたことを特徴とする車両用液圧発生装置。
  2. 請求項1に記載の車両用液圧発生装置において、
    前記ばね部材の後端を支持する底部から立ち上がってこのばね部材の外周を覆う周壁部を有するばね座を備え、
    前記ばね座の周壁部は、前記ばね部材の前部を覆う部分の軸線方向に直交する断面の内側断面積が、前記ばね部材の後部を覆う部分の内側断面積よりも大きいことを特徴とする車両用液圧発生装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両用液圧発生装置において、
    前記ばね座の前記底部を軸線方向に貫通するロッド部材を備え、
    前記ロッド部材は、前記ばね座に対して軸線方向に相対移動可能に支持されると共に、
    当該ロッド部材の前記ピストン部材側に延びる先端が、前記樹脂部材に支持されていることを特徴とする車両用液圧発生装置。
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