JP2004276666A - ストロークシミュレータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第2ピストン44に、第1ピストン42側に向かって突出する第1突起部444と、ストッパ45側に向かって突出する第2突起部445を設ける。これによると、第1突起部444の高さh1や第2突起部445の高さh2を変えることによって両ストロークS1、S2および全ストロークを調整することができる。また、切削加工によって各高さh1、h2を各突起部444、445毎に独立して変更することができる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキペダルの操作力に応じた大きさのストロークをブレーキペダルに発生させるストロークシミュレータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のストロークシミュレータは、図5に示すように、ブレーキペダルの操作力に応じた液圧に基づいて移動するピストン42およびリテーナ44aと、液圧上昇の際のリテーナ44aの最大移動範囲を規制するストッパ45と、液圧に対抗する向きにピストン42およびリテーナ44aを付勢する第1ばね46および第2ばね47とを備えている。第1ばね46はピストン42とリテーナ44aとの間に配設され、第2ばね47はリテーナ44aとストッパ45との間に配設されている。
【0003】
そして、液圧の上昇に伴って、第1ばね46を圧縮しつつピストン42がリテーナ44a側に移動し、次いで第2ばね47を圧縮しつつピストン42とリテーナ44aとが一体的にストッパ45側へ移動し、このときのばねの反発力により、運転者に所定のブレーキ操作感覚を与えるようにしている。
【0004】
また、リテーナ44aにはゴム製の緩衝弾性体90aが装着され、第1ばね46の圧縮終了間際、および第2ばね47の圧縮終了間際に、緩衝弾性体90aが圧縮されることにより、全体のばね特性を2次曲線的に滑らかに変化させて、運転者に良好なブレーキ操作感覚を与えるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−293229号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ブレーキペダルの操作力(以下、ペダル操作力という)とブレーキペダルのストローク(以下、ペダルストロークという)との関係、すなわちシミュレータ特性は、第1ばね46および第2ばね47の各ばね定数や、図5に示した第1ストロークS1や第2ストロークS2によって、基本的な特性が決定される。因みに、第1ストロークS1は、液圧0の時のピストン42とリテーナ44aとの間の移動方向の距離であり、第2ストロークS2は、液圧0の時のリテーナ44aとストッパ45との間の移動方向の距離である。
【0007】
シミュレータ特性は車種によって要求される特性が異なり、その要求特性を得るために、第1ストロークS1、第2ストロークS2、さらには全ストローク(=S1+S2)を変更する場合がある。
【0008】
上記従来のストロークシミュレータでは、第1ストロークS1を変更する場合、ピストン42またはリテーナ44aの寸法変更が必要であり、第2ストロークS2を変更する場合、リテーナ44aまたはストッパ45の寸法変更が必要である。
【0009】
ここで、全ストロークが変更されない場合は、リテーナ44aの寸法変更のみで対応することができる。また、リテーナ44aの底部の厚さが任意に設定可能であれば、リテーナ44aの底部の厚さ変更のみで両ストロークS1、S2を共に変更することができる。しかしながら、カップ状のリテーナ44aは一般的にはプレス成形されるため、リテーナ44aの底部の厚さを大幅に変更することは不可能であり、そのため、両ストロークS1、S2および全ストロークがいずれも変更される場合は2つの部材の寸法変更が必要である。
【0010】
なお、ゴム製の緩衝弾性体90aは、前述したように全体のばね特性を2次曲線的に滑らかに変化させるためのものであり、基本的には、両ストロークS1、S2の設定に関与するものではない。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、ストロークシミュレータにおいて、両ストロークS1、S2および全ストロークがいずれも変更される場合でも、1部品の寸法変更のみで対応可能にすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ブレーキペダル(10)の操作力に応じた大きさのストロークをブレーキペダル(10)に発生させるためのストロークシミュレータであって、ハウジング(41)と、ハウジング(41)内に液密的に摺動自在に配設された第1ピストン(42)と、第1ピストン(42)の一端側に形成され、ブレーキペダル(10)の操作力に応じた液圧が供給される液圧室(43)と、第1ピストン(42)の他端側に配設され、第1ピストン(42)と一体的に移動可能な第2ピストン(44)と、液圧室(43)の容積が増加する向き(X)への第2ピストン(44)の移動範囲を規制するストッパ(45)と、第1ピストン(42)と第2ピストン(44)との間に配設され、液圧室(43)の容積が減少する向き(Y)に第1ピストン(42)を付勢する第1ばね(46)と、ばね定数が第1ばね(46)と異なるとともに、液圧室(43)の容積が減少する向き(Y)に第2ピストン(44)を付勢する第2ばね(47)とを備え、第2ピストン(44)は、第1ピストン(42)側に向かって突出して第1ピストン(42)と当接可能な第1突起部(444)、および、ストッパ(45)側に向かって突出してストッパ(45)と当接可能な第2突起部(445)を有し、第2ピストン(44)は、第1突起部(444)および第2突起部(445)を含む部位が非弾性部材にて形成され、液圧室(43)の容積が増加する向き(X)へ第1ピストン(42)が移動する際、第1ピストン(42)と第1突起部(444)とが当接した時点から第1ピストン(42)と第2ピストン(44)とが一体的に移動するとともに、第2突起部(445)がストッパ(45)に当接した時点で第2ピストン(44)の移動が規制されるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
これによると、液圧0の時の第1ピストンと第2ピストンとの間の移動方向の距離である第1ストロークは、非弾性部材にて形成された第1突起部の高さを変えることによって変更することができる。また、液圧0の時の第2ピストンとストッパとの間の移動方向の距離である第2ストロークは、非弾性部材にて形成された第2突起部の高さを変えることによって変更することができる。
【0014】
そして、第1突起部および第2突起部は突起状であるため、切削加工によってその高さを各突起部毎に独立して変更することができ、したがって、両ストロークおよび全ストロークがいずれも変更される場合でも、第2ピストンの寸法変更のみで対応することができる。
【0015】
なお、請求項2に記載の発明のように、第2ピストンは金属または硬質樹脂にて形成することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、ストッパ(45)は、第2ピストン(44)の移動方向に対して直交する方向への第2ピストン(44)の移動範囲を規制するガイド部(455)を有することを特徴とする。
【0017】
ところで、第2ピストンの移動方向に対して直交する方向への第2ピストンの移動量が過大になると、それに伴って第2ピストンが傾いてしまい、その結果、シミュレータ特性が安定しなくなるという問題が発生する。これに対し、請求項3の発明によれば、その問題の発生を防止することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明では、第1ばね(46)および第2ばね(47)はコイルばねであり、第1ピストン(42)は、第1ばね(46)の一端が嵌合されて第1ばね(46)の径方向の移動範囲を規制する第1嵌合部(423)を備え、第2ピストン(44)は、第1ばね(46)の他端が嵌合されて第1ばね(46)の径方向の移動範囲を規制する第2嵌合部(444)を備え、第1ばね(46)と第1嵌合部(423)との組み付けは圧入であり、第1ばね(46)と第2嵌合部(444)との組み付けは非圧入であることを特徴とする。
【0019】
これによると、第1ばねと第1嵌合部との組み付けは圧入であるため、第1ピストンと第1ばねを一体化した状態でそれらを同時にハウジングに組み付けることができる。一方、第1ばねと第2嵌合部との組み付けは非圧入であるため、第1ピストンおよび第1ばねをハウジングに組み付けた後、第2ピストンを組み付ける際に、第1ばねの他端が第2ピストンのばね受け面に当たる位置まで、第2嵌合部を第1ばねに挿入させることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明のように、液圧室(43)の液圧が0の時の第1ピストン(42)と第2ピストン(44)との間の移動方向の距離を第1ストローク、液圧室(43)の液圧が0の時の第2ピストン(44)とストッパ(45)との間の移動方向の距離を第2ストローク、第1ストロークと第2ストロークとの和を全ストロークとしたとき、第2ピストン(44)における第1ピストン(42)および第2突起部(445)の高さを調整することで、第1ストローク、第2ストローク、全ストロークのいずれのストロークも変更することができる。
【0021】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態になるストロークシミュレータ40を用いたブレーキ装置を示す。図1にはブレーキ装置の液圧回路を4輪分示しているが、各輪のブレーキ液圧制御に関わる部分の構成および作動は共通しているため、ここでは左前輪(FL)側についてのみ説明し、他の輪に関する構成および作動の説明は省略する。
【0024】
図1において、ブレーキペダル10は、車両に制動力を加える際に乗員によって踏み込まれるものである。ストロークセンサ20は、ブレーキペダル10のストローク(以下、ペダルストロークという)を検出するもので、ペダルストロークに応じた電気信号を発生する。
【0025】
マスタシリンダ30は、ブレーキペダル10の踏み込みによりブレーキ液圧を発生し、このブレーキ液圧は、管路Aを介して後述するストロークシミュレータ40に伝達されると共に、管路Bを介して左前輪のホイールシリンダ50に伝達されるようになっている。
【0026】
管路Aには、管路Aを開閉する第1カット弁80が配設されている。なお、第1カット弁80は、常閉型電磁弁である。
【0027】
管路Bには、常開型電磁弁にて構成されて、管路Bを開閉する第2カット弁61が配設されている。以下、管路Bにおいて、第2カット弁61とマスタシリンダ30との間をM/C側管路B1といい、第2カット弁61とホイールシリンダ50との間をW/C側管路B2という。
【0028】
M/C側管路B1には、M/C側管路B1中のブレーキ液圧を検出する第1圧力センサ62が配設され、この第1圧力センサ62はブレーキ液圧に応じた電気信号を発生する。また、W/C側管路B2には、W/C側管路B2中のブレーキ液圧を検出する第2圧力センサ63が配設され、この第2圧力センサ63はブレーキ液圧に応じた電気信号を発生する。
【0029】
W/C側管路B2には管路Cが接続されている。この管路Cには、ブレーキ液圧を発生する液圧源70として、ポンプ71、アキュムレータ72、リリーフ弁73、および管路Cのブレーキ液圧を検出する第3圧力センサ74が配設され、この第3圧力センサ74はブレーキ液圧に応じた電気信号を発生する。液圧源70は、電動モータによって駆動されるポンプ71により、マスタシリンダ30のリザーバからブレーキ液を吸入して吐出し、吐出された高圧のブレーキ液をアキュムレータ72に蓄えると共に、ブレーキ液の圧力を第3圧力センサ74で検出し設定圧に調整する。
【0030】
管路Cにおいて、第3圧力センサ74からW/C側管路B2に接続される部位までの増圧管路C1中には、増圧管路C1を開閉する増圧弁81が配設されている。増圧弁81が開弁すると、液圧源70からホイールシリンダ50に高圧のブレーキ液が供給され、ホイールシリンダ50のブレーキ液圧が上昇する。なお、増圧弁81は、常閉型電磁弁である。
【0031】
管路Cにおいて、W/C側管路B2に接続される部位から液圧源70の吸入側までの減圧管路C2中には、減圧管路C2を開閉する減圧弁82が配設されている。減圧弁82が開弁すると、ホイールシリンダ50内のブレーキ液が液圧源70の吸入側ないしはマスタシリンダ30のリザーバに戻され、ホイールシリンダ50のブレーキ液圧が低下する。なお、減圧弁82は、常閉型電磁弁である。
【0032】
次に、図2に基づいてストロークシミュレータ40について説明する。なお、図2は、後述する液圧室43の圧力が0(すなわち、大気圧)の時の状態を示している。
【0033】
ストロークシミュレータ40は、ブレーキペダル10の操作力に応じた大きさのペダルストロークを発生させるためのものである。そして、ストロークシミュレータ40のハウジング41には、円柱状の2つの穴411、412が形成されている。これらの穴411、412は、同軸状に直列に配置されている。
【0034】
第1穴411には、S45C等の非弾性部材にて形成された略円柱状の第1ピストン42が摺動自在に配設されている。なお、本明細書でいう非弾性部材は、ゴムと比較して弾性変形量が著しく少なく、実用上剛体とみなせるものであり、金属や硬質樹脂がそれに相当する。
【0035】
第1ピストン42には、第1穴411の内周面と第1ピストン42の外周面との間をシールするカップシール421が配設されており、このカップシール421は、例えばエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)よりなる。
【0036】
第1穴411の底部と第1ピストン42の一端面との間に液圧室43が形成され、この液圧室43には、管路Aを介してマスタシリンダ30からブレーキ液圧が伝達されるようになっている。
【0037】
第2穴412には、鍔付き円柱状の第2ピストン44が、第1ピストン42の他端面と対向して配設されている。この第2ピストン44は、ブレーキ液圧の上昇に伴って液圧室43の容積が増加する向きX(以下、容積増加向きXという)へ第1ピストン42が移動する際、第1ピストン42と第2ピストン44とが当接した時点から第1ピストン42と一体的に移動するようになっている。
【0038】
第2ピストン44は、非弾性部材にて形成されており、第2ピストン44の具体的な材質としては、例えばS15C等の金属、あるいは、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の硬質樹脂が望ましい。また、これらの硬質樹脂は、ガラス繊維等の強化剤を含有させたものがさらに望ましく、強化剤の含有率は30%程度が望ましい。
【0039】
第2穴412の開口部には、アルミニウム等の非弾性部材にて形成された略円柱状のストッパ45が、第2ピストン44の他端面と対向して配設されている。このストッパ45は、容積増加向きXへの第2ピストン44の移動範囲を規制するものである。ストッパ45の外周部には、例えばエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)よりなるOリング451が配設され、ストッパ45の端部には、ストッパ45の抜け止め用のサークリップ452が配設されている。第2穴412は、貫通穴413によって大気に開放されており、この貫通穴413には、第2穴412への水の浸入を防止するための防水パイプ414が装着されている。
【0040】
第1ピストン42と第2ピストン44との間には、液圧室43の容積が減少する向きY(以下、容積減少向きYという)に第1ピストン42を付勢する第1ばね46が配設されている。この第1ばね46は、例えばばね鋼よりなる、円筒形の圧縮コイルばねである。
【0041】
第2ピストン44とストッパ45との間には、容積減少向きYに第2ピストン44を付勢する第2ばね47が配設されている。この第2ばね47は、例えばばね鋼よりなる、円筒形の圧縮コイルばねである。また、第2ばね47は、ばね定数が第1ばね46と異なっており、第2ばね47のばね定数は第1ばね46のばね定数よりも大きく(例えば10倍程度に)設定されている。
【0042】
第1ピストン42における第2ピストン44と対向する面には、第1ばね46の一端を支持するばね受け面422と、第1ばね46の一端が嵌合されて第1ばね46の径方向の移動範囲を規制する円柱状の第1嵌合部423が形成されている。第1嵌合部423の外径寸法は、第1ばね46の自由状態における内径寸法よりも大きく設定されており、したがって、第1ばね46は第1嵌合部423に圧入して組み付けられている。
【0043】
第2ピストン44は、その軸方向中間部に円盤状の鍔部441を有しており、鍔部441の一方のばね受け面442で第1ばね46の他端を支持し、鍔部441の他方のばね受け面443で第2ばね47の一端を支持するようになっている。
【0044】
第2ピストン44は、鍔部441から第1ピストン42側に向かって突出して、第1ピストン42の嵌合部423先端面と当接可能な円柱状の第1突起部444、鍔部441からストッパ45側に向かって突出して、ストッパ45の移動範囲規制面454(詳細後述)と当接可能な円柱状の第2突起部445を有する。
【0045】
なお、液圧0の状態での、第1ピストン42の嵌合部423先端面と第2ピストン44の第1突起部444先端面との間の移動方向距離S1が第1ストロークである。また、液圧0の状態での、第2ピストン44の第2突起部445先端面とストッパ45の移動範囲規制面454との間の移動方向距離S2が第2ストロークS2である。
【0046】
第2ピストン44における第1突起部444は、第1ばね46の他端が嵌合されて第1ばね46の径方向の移動範囲を規制するもので、本発明の第2嵌合部に相当する。第1突起部444の外径寸法は、第1ばね46の自由状態における内径寸法よりも小さく設定されており、したがって、第1ばね46は第1突起部444に非圧入状態で組み付けられている。
【0047】
ストッパ45における第2ピストン44との対向面には、第2ばね47の他端を支持するばね受け面453と、第2ピストン44の第2突起部445先端が当接可能な移動範囲規制面454と、ばね受け面453および移動範囲規制面454から第2ピストン44側に向かって突出する円筒状のガイド部455が形成されている。このガイド部455の内周部に第2ピストン44の第2突起部445が摺動自在に挿入されており、それにより、第2ピストン44の移動方向に対して直交する方向への第2ピストン44の移動範囲を規制するようになっている。
【0048】
次に、ストロークシミュレータ40の組み付け方法について説明する。まず、第1ピストン42の第1嵌合部423に第1ばね46を圧入して第1ピストン42と第1ばね46を一体化し、それらを一体化した状態でハウジング41の第1穴411に組み付ける。以下、第2ピストン44、第2ばね47、ストッパ45を第2穴412に挿入し、サークリップ452を組み付ける。
【0049】
この組み付けの際、第1ばね46と第1嵌合部423との組み付けは圧入であるため、第1ピストン42と第1ばね46を一体化した状態でそれらを同時にハウジング41に組み付けることができる。一方、第1ばね46と第2ピストン44の第1突起部444との組み付けは非圧入であるため、第1ピストン42および第1ばね46をハウジング41に組み付けた後、第2ピストン44を組み付ける際に、第1ばね46の他端が第2ピストン44のばね受け面442に当たる位置まで、第1突起部444を第1ばね46に挿入させることができる。
【0050】
次に、上記構成になるブレーキ装置の作動について説明する。
【0051】
まず、ストロークシミュレータ40を除く部分の作動を、図1に基づいて説明する。ブレーキ装置に異常がない状態のときにブレーキペダル10が踏み込まれると、ブレーキペダル10が踏み込まれたことをストロークセンサ20により検知し、第2カット弁61を閉弁させて管路Bを閉じる。
【0052】
また、ストロークセンサ20および第1圧力センサ62からの信号に基づいて、ホイールシリンダ50に印加するブレーキ液圧の目標値を演算し、増圧弁81および減圧弁82の作動を制御することにより、ホイールシリンダ50のブレーキ液圧をその目標値になるように制御する。具体的には、増圧弁81を開弁させてホイールシリンダ50のブレーキ液圧を上昇させ、減圧弁82を開弁させてホイールシリンダ50のブレーキ液圧を低下させ、増圧弁81および減圧弁82をともに閉弁させてホイールシリンダ50のブレーキ液圧を保持することにより、ホイールシリンダ50のブレーキ液圧を制御する。
【0053】
ここで、制動中に車輪ロック傾向が発生した場合には、いわゆるアンチロック制御を行う。すなわち、まず減圧弁82を開弁させてホイールシリンダ50のブレーキ液圧を低下させ、車輪ロック傾向を回避する。続いて、車輪のスリップ率が所定の範囲になるように、増圧弁81および減圧弁82の作動を制御してホイールシリンダ50のブレーキ液圧を制御する。
【0054】
ブレーキペダル10の踏み込みが解除されると、ブレーキペダル10の踏み込みが解除されたことをストロークセンサ20により検知し、第2カット弁61を開弁させて管路Bを開く。
【0055】
次に、図2および図3に基づいてストロークシミュレータ40の作動について説明する。なお、図3は、ペダル操作力とペダルストロークとの関係を示すシミュレータの特性図である。
【0056】
まず、ブレーキ装置に異常がない状態のときにブレーキペダル10が踏み込まれると、ブレーキペダル10が踏み込まれたことをストロークセンサ20により検知し、ストロークシミュレータ40の第1カット弁80を開弁させて管路Aを開き、管路Aを介してマスタシリンダ30から液圧室43にブレーキ液圧が伝達されるようにする。
【0057】
液圧室43に伝達されたブレーキ液圧は第1ピストン42に作用し、第1ピストン42を容積増加向きXに付勢する。そして、第1ピストン42は、ブレーキ液圧の上昇に伴って、第1ばね46および第2ばね47のばね力に抗して容積増加向きXに移動する。
【0058】
容積増加向きXへの第1ピストン42の移動の際、第1ピストン42の嵌合部423先端面が第2ピストン44の第1突起部444先端面に当接するまでの間は、ばね定数が小さい第1ばね46が主に圧縮されるため、図3に示すように、ペダル操作力の変化量に対するペダルストロークの変化量は大きくなる。
【0059】
第1ピストン42と第2ピストン44とが当接した時点からは、第1ピストン42と第2ピストン44は、第2ピストン44の第2突起部445先端面がストッパ45の移動範囲規制面454に当接するまでの間、一体的に移動する。このときは、ばね定数が大きい第2ばね47が圧縮されるため、図3に示すように、ペダル操作力の変化量に対するペダルストロークの変化量は小さくなる。
【0060】
そして、第2ピストン44の第2突起部445先端面がストッパ45の移動範囲規制面454に当接した後は、図3に示すように、ペダル操作力が増加してもペダルストロークは変化しない。
【0061】
第2ピストン44が移動する際、第2ピストン44の第2突起部445はストッパ45のガイド部455により案内される。これにより、第2ピストン44の移動方向に対して直交する方向への第2ピストン44の移動範囲が規制されると共に、第2ピストン44の傾きが防止されるため、シミュレータ特性が安定する。
【0062】
このストロークシミュレータ40によると、第1ストロークS1は、第2ピストン44における一方のばね受け面442からの第1突起部444の高さh1を変えることによって変更することができる。因みに、例えば第1突起部444の高さh1を高くして第1ストロークS1を短くした場合は、図3に破線で示すような特性になる。
【0063】
また、第2ストロークS2は、第2ピストン44における他方のばね受け面443からの第2突起部445の高さh2を変えることによって変更することができる。因みに、例えば第2突起部445の高さh2を高くして第2ストロークS2を短くした場合は、図3に一点鎖線で示すような特性になる。
【0064】
そして、第1突起部444および第2突起部445は突起状であるため、切削加工によってその高さh1、h2を各突起部毎に独立して変更することができ、したがって、両ストロークS1、S2および全ストロークがいずれも変更される場合でも、第2ピストン44の寸法変更のみで対応することができる。
【0065】
次に、ブレーキ装置に異常が発生した場合の作動を、図1に基づいて説明する。例えば液圧源70故障等の異常が発生した場合は、第1カット弁80、増圧弁81、および減圧弁82を閉弁させ、第2カット弁61を開弁させる。この状態では、ブレーキペダル10が踏み込まれると、管路Bを介してマスタシリンダ30からホイールシリンダ50にブレーキ液が供給され、通常の制動を行わせることができる。
【0066】
本実施形態によると、第2ピストン44における第1突起部444の高さh1や第2突起部445の高さh2を変えることによって両ストロークS1、S2および全ストロークを調整することができるため、両ストロークS1、S2および全ストロークがいずれも変更される場合でも、第2ピストン44の寸法変更のみで対応することができる。
【0067】
また、図5に示す従来のストロークシミュレータ40では、ピストン42とリテーナ44a間、あるいはリテーナ44aとストッパ45間に、緩衝弾性体90aが挟まれてしまうため、緩衝弾性体90aの摩耗や塑性変形により、各ストロークS1、S2が変化してしまうという問題がある。
【0068】
これに対し、本実施形態のストロークシミュレータ40では、第1ピストン42と第2ピストン44間、あるいは第2ピストン44とストッパ45間に、緩衝弾性体は挟まれないため、各ストロークS1、S2が変化することはない。
【0069】
また、第2ピストン44の第2突起部445はストッパ45のガイド部455により案内されるため、第2ピストン44の移動方向に対して直交する方向への第2ピストン44の移動範囲が規制されると共に、第2ピストン44の傾きが防止され、シミュレータ特性が安定する。
【0070】
また、第1ばね46と第1嵌合部423との組み付けは圧入であるため、第1ピストン42と第1ばね46を一体化した状態でそれらを同時にハウジング41に組み付けることができる。一方、第1ばね46と第2ピストン44の第1突起部444との組み付けは非圧入であるため、第1ピストン42および第1ばね46をハウジング41に組み付けた後、第2ピストン44を組み付ける際に、第1ばね46の他端が第2ピストン44のばね受け面442に当たる位置まで、第1突起部444を第1ばね46に挿入させることができる。
【0071】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態になるストロークシミュレータ40を示す。本実施形態は、2つの緩衝弾性体90、100を設けた点が第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
図4において、第1ピストン42における嵌合部423側に穴424が形成され、この穴424に円柱状の第1緩衝弾性体90が挿入されている。第1緩衝弾性体90の一端は、液圧0の状態では第2ピストン44側に向かって穴424から突出している。
【0073】
第2ピストン42における第2突起部445外周には、円筒状の第2緩衝弾性体100が配設されている。第2緩衝弾性体100の一端は、液圧0の状態では、第2突起部445先端面よりもストッパ45の移動範囲規制面454側に向かって突出している。
【0074】
第1緩衝弾性体90および第2緩衝弾性体100は、金属や硬質樹脂と比較して弾性変形量が著しく大きい材質、より詳細には、ゴム、さらに詳細には、例えばエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴム(EPDM)よりなる。
【0075】
上記構成において、容積増加向きXへの第1ピストン42の移動の際、第1ピストン42と第2ピストン44とが当接する前に、第1緩衝弾性体90が第2ピストン44の第1突起部444に当接し、第1緩衝弾性体90が圧縮される。そして、第1ピストン42と第2ピストン44とが当接した時点では、第1緩衝弾性体90の全体が穴424内に埋没している。したがって、第1ピストン42と第2ピストン44とが当接した後にペダル操作力が増加しても、第1緩衝弾性体90に作用する負荷は増加しない。
【0076】
第1ピストン42と第2ピストン44とが容積増加向きXへさらに移動する際、第2ピストン44の第2突起部445先端面がストッパ45の移動範囲規制面454に当接する前に、第2緩衝弾性体100が移動範囲規制面454に当接し、第2緩衝弾性体100が圧縮される。そして、第2突起部445先端面が移動範囲規制面454に当接した時点では、第2緩衝弾性体100の一端は、第2突起部445先端面まで押し戻されている。したがって、第2突起部445先端面が移動範囲規制面454に当接した後にペダル操作力が増加しても、第2緩衝弾性体100に作用する負荷は増加しない。
【0077】
本実施形態によれば、第1緩衝弾性体90および第2緩衝弾性体100の作用により、全体のばね特性を2次曲線的に滑らかに変化させて、運転者に良好なブレーキ操作感覚を与えることができる。
【0078】
ところで、図5に示す従来のストロークシミュレータ40では、緩衝弾性体90aは、ピストン42とリテーナ44a間、あるいはリテーナ44aとストッパ45間に挟まれるため、ペダル操作力の増加に伴って緩衝弾性体90aに作用する負荷が増加してしまう。したがって、緩衝弾性体90aの摩耗や塑性変形が発生しやすく、シミュレータ特性が変化しやすいという問題がある。
【0079】
これに対し、本実施形態のストロークシミュレータ40では、第1ピストン42と第2ピストン44とが当接した後にペダル操作力が増加しても、第1緩衝弾性体90に作用する負荷は増加しない。また、第2突起部445先端面が移動範囲規制面454に当接した後にペダル操作力が増加しても、第2緩衝弾性体100に作用する負荷は増加しない。したがって、本実施形態では、第1緩衝弾性体90および第2緩衝弾性体100の摩耗や塑性変形が発生しにくく、シミュレータ特性が変化し難いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態になるストロークシミュレータ40を用いたブレーキ装置の構成図である。
【図2】図1のストロークシミュレータ40の断面図である。
【図3】ペダル操作力とペダルストロークとの関係を示す特性図である。
【図4】本発明の第2実施形態になるストロークシミュレータ40の断面図である。
【図5】従来のストロークシミュレータ40の断面図である。
【符号の説明】
10…ブレーキペダル、41…ハウジング、42…第1ピストン、43…液圧室、44…第2ピストン、45…ストッパ、46…第1ばね、47…第2ばね、444…第1突起部、445…第2突起部。
Claims (5)
- ブレーキペダル(10)の操作力に応じた大きさのストロークを前記ブレーキペダル(10)に発生させるためのストロークシミュレータであって、
ハウジング(41)と、
前記ハウジング(41)内に液密的に摺動自在に配設された第1ピストン(42)と、
前記第1ピストン(42)の一端側に形成され、前記ブレーキペダル(10)の操作力に応じた液圧が供給される液圧室(43)と、
前記第1ピストン(42)の他端側に配設され、前記第1ピストン(42)と一体的に移動可能な第2ピストン(44)と、
前記液圧室(43)の容積が増加する向き(X)への前記第2ピストン(44)の移動範囲を規制するストッパ(45)と、
前記第1ピストン(42)と前記第2ピストン(44)との間に配設され、前記液圧室(43)の容積が減少する向き(Y)に第1ピストン(42)を付勢する第1ばね(46)と、
ばね定数が前記第1ばね(46)と異なるとともに、前記液圧室(43)の容積が減少する向き(Y)に前記第2ピストン(44)を付勢する第2ばね(47)とを備え、
前記第2ピストン(44)は、前記第1ピストン(42)側に向かって突出して前記第1ピストン(42)と当接可能な第1突起部(444)、および、前記ストッパ(45)側に向かって突出して前記ストッパ(45)と当接可能な第2突起部(445)を有し、
前記第2ピストン(44)は、前記第1突起部(444)および前記第2突起部(445)を含む部位が非弾性部材にて形成され、
前記液圧室(43)の容積が増加する向き(X)へ前記第1ピストン(42)が移動する際、前記第1ピストン(42)と前記第1突起部(444)とが当接した時点から前記第1ピストン(42)と前記第2ピストン(44)とが一体的に移動するとともに、前記第2突起部(445)が前記ストッパ(45)に当接した時点で前記第2ピストン(44)の移動が規制されるように構成されていることを特徴とするストロークシミュレータ。 - 前記非弾性部材は、金属または硬質樹脂のいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載のストロークシミュレータ。
- 前記ストッパ(45)は、前記第2ピストン(44)の移動方向に対して直交する方向への前記第2ピストン(44)の移動範囲を規制するガイド部(455)を有することを特徴とする請求項1または2に記載のストロークシミュレータ。
- 前記第1ばね(46)および前記第2ばね(47)はコイルばねであり、
前記第1ピストン(42)は、前記第1ばね(46)の一端が嵌合されて前記第1ばね(46)の径方向の移動範囲を規制する第1嵌合部(423)を備え、前記第2ピストン(44)は、前記第1ばね(46)の他端が嵌合されて前記第1ばね(46)の径方向の移動範囲を規制する第2嵌合部(444)を備え、前記第1ばね(46)と前記第1嵌合部(423)との組み付けは圧入であり、前記第1ばね(46)と前記第2嵌合部(444)との組み付けは非圧入であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のストロークシミュレータ。 - 前記液圧室(43)の液圧が0の時の前記第1ピストン(42)と前記第2ピストン(44)との間の移動方向の距離を第1ストローク、前記液圧室(43)の液圧が0の時の前記第2ピストン(44)と前記ストッパ(45)との間の移動方向の距離を第2ストローク、前記第1ストロークと前記第2ストロークとの和を全ストロークとしたとき、
前記第2ピストン(44)における前記第1ピストン(42)および前記第2突起部(445)の高さを調整することで、前記第1ストローク、前記第2ストローク、前記全ストロークのいずれのストロークも変更可能であることを特徴とする請求項1に記載のストロークシミュレータ。
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