以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
[車両用ブレーキシステム10における構成部材の配置構成]
図1は、電動ブレーキ装置が適用された車両用ブレーキシステムの車両における配置構成を示す図である。なお、車両Vの前後左右の方向を図1に矢印で示す。
車両用ブレーキシステム10は、通常時用として、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成される。
図1に示すように、車両用ブレーキシステム10は、操作者(運転者)のブレーキ操作がブレーキペダル(“ブレーキ操作部材”に相当する)12を介して入力される入力装置(“車両用反力発生装置”に相当する)14と、少なくともブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生するモータシリンダ装置16と、モータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧に基づいて車両の挙動の安定化を支援するビークルスタビリティアシスト装置18(以下、VSA装置18という。ただし、VSAは登録商標)とを備えて構成されている。
なお、モータシリンダ装置16は、運転者のブレーキ操作に応じた電気信号だけではなく、他の物理量に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生するように構成されていてもよい。他の物理量に応じた電気信号とは、例えば、自動ブレーキシステムのような、運転者のブレーキ操作によらずに、ECU(Electronic Control Unit)が車両Vの周囲の状況をセンサ等で判断して、車両Vの衝突等を回避するための信号などである。
入力装置14は、ここでは右ハンドル車に適用するものであり、ダッシュボード2の車幅方向の右側にボルト等を介して固定されている。なお、入力装置14は、左ハンドル車に適用されるものであってもよい。モータシリンダ装置16は、例えば、入力装置とは逆側の車幅方向の左側に配置され、左側のサイドフレーム等の車体1に取付用ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。VSA装置18は、例えば、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能、加速時などの車輪空転を防ぐTCS(トラクション・コントロール・システム)機能、旋回時の横すべりを抑制する機能などを備えて構成されており、例えば、車幅方向の右側の前端に、ブラケットを介して車体に取り付けられている。なお、VSA装置18に代えて、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS機能のみを有するABS装置を接続してもよい。入力装置14、モータシリンダ装置16、及びVSA装置18の内部の詳細な構成については後記する。
これらの入力装置14、モータシリンダ装置16、及びVSA装置18は、車両Vのダッシュボード2の前方に設けられたエンジンや走行用モータ等の構造物3が搭載される構造物搭載室Rに、配管チューブ22a〜22fを介して互いに分離して配置されている。なお、車両用ブレーキシステム10は、前輪駆動車、後輪駆動車、四輪駆動車のいずれにも適用可能である。また、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、入力装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスによってECU等の制御手段と電気的に接続されている。
[車両用ブレーキシステム10の概略構成]
図2は、車両用ブレーキシステムの概略構成図である。
液圧路について説明すると、図2中の連結点A1を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
図2中の他の連結点A2を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aのホイールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bのホイールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cのホイールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dのホイールシリンダ32FLと接続される。
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液(ブレーキフルード)がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
なお、車両用ブレーキシステム10は、例えば、レシプロエンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。
入力装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ(“液圧発生手段”に相当する)34と、マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する第2ピストン40a及び第1ピストン40bが摺動自在に配設される。第2ピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、第1ピストン40bは、第2ピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
この第2ピストン40a及び第1ピストン40bの外周面には、環状段部を介して一対のピストンパッキン44a、44bがそれぞれ装着される。一対のピストンパッキン44a、44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、第2ピストン40aと第1ピストン40bとの間には、ばね部材50aが配設され、第1ピストン40bとシリンダチューブ38の前端部との間には、他のばね部材50bが配設される。
なお、第2ピストン40a及び第1ピストン40bの外周面にピストンパッキン44a、44bをそれぞれ設ける代わりに、シリンダチューブ38の内周面にパッキンをそれぞれ設けてもよい。
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を発生させる第2圧力室56a及び第1圧力室56bが設けられる。第2圧力室56aは、第2液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第1圧力室56bは、第1液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第2液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第2液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第2液圧路58a上において、第2遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側の上流の液圧を検知するものである。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第1液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60bが設けられると共に、第1液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第1液圧路58b上において、第1遮断弁60bよりもホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL側の下流側の液圧を検知するものである。
この第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(消磁(非通電)時の弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図2において、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bは励磁時の状態を示す(後記する第3遮断弁62も同様)。
マスタシリンダ34と第1遮断弁60bとの間の第1液圧路58bには、前記第1液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、反力発生手段に相当する第1ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(消磁(非通電)時の弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。
この第1ストロークシミュレータ64の概要について、図2を参照して説明する。ただし、図2中の第1ストロークシミュレータ64は、細部の構造が簡略化して描かれている。図2に示すように、第1ストロークシミュレータ64は、第1液圧路58b上であって、第1遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記第1ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられる。この液圧室65を介してマスタシリンダ34の第1圧力室56bで生じたブレーキ液圧が印加可能に構成されている。
また、第1ストロークシミュレータ64は、その本体部64aに、シミュレータピストン67と、第1のリターンスプリング68aと、第2のリターンスプリング68bとを備える。なお、第1ストロークシミュレータ64内部の詳細構造については後に詳述する。
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第2圧力室56aと複数のホイールシリンダ32FR、32RLとを接続する第2液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第1圧力室56bと複数のホイールシリンダ32RR、32FLとを接続する第1液圧系統70bとから構成される。
第2液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第2液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、VSA装置18の導出ポート28a、28bと各ホイールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
第1液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第1液圧路58bと、入力装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、VSA装置18の導出ポート28c、28dと各ホイールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
モータシリンダ装置16は、電動式のモータ72の駆動力によって第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを軸方向に駆動することによりブレーキ液圧を発生する電動ブレーキ装置である。なお、モータシリンダ装置16において、ブレーキ液圧を発生させる(上昇させる)ときの第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの移動方向(図2中矢印X1方向)を「前」とし、その反対方向(図2中矢印X2方向)を「後」とする。
モータシリンダ装置16は、軸方向に移動可能な第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを内蔵するシリンダ部76と、第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを駆動するためのモータ72と、モータ72の駆動力を第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bに伝達するための駆動力伝達部73とを備えている。
駆動力伝達部73は、モータ72の回転駆動力を伝達するギア機構(減速機構)78と、この回転駆動力をボールねじ軸(スクリュー)80aの軸方向に沿った直線方向駆動力に変換するボールねじ構造体80と、を含む駆動力伝達機構74を有している。
シリンダ部76は、略円筒形状のシリンダ本体82と、前記シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。
シリンダ本体82内には、前記シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bが摺動自在に配設される。第2スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの前端に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に変位する。また、第1スレーブピストン88bは、第2スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
第2スレーブピストン88aの外周面と駆動力伝達機構74との間を液密にシールすると共に、第2スレーブピストン88aをその軸方向に対して移動可能にガイドする環状のガイドピストン230が、第2スレーブピストン88aの外周面に対向するように配置されている。ガイドピストン230の内周面にはスレーブピストンパッキン90cが装着される。また、第2スレーブピストン88aの前端側の外周面には、環状段部を介してスレーブピストンパッキン90bが装着される。スレーブピストンパッキン90cとスレーブピストンパッキン90bとの間には、後記するリザーバポート92aと連通する第2背室94aが形成される。そして、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2のリターンスプリング96aが配設される。
一方、第1スレーブピストン88bの外周面には、環状段部を介して一対のスレーブピストンパッキン90a、90bがそれぞれ装着される。一対のスレーブピストンパッキン90a、90bの間には、後記するリザーバポート92bと連通する第1背室94bが形成される。そして、第1スレーブピストン88bとシリンダ本体82の前端部と間には、第1のリターンスプリング96bが配設される。
シリンダ部76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bとが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内のリザーバ室と連通するように設けられる。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホイールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第2液圧室98aと、他の出力ポート24bからホイールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第1液圧室98bとが設けられる。
なお、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bの最大離間区間と最小離間区間とを規制する規制手段100が設けられ、さらに、第1スレーブピストン88bには、前記第1スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第2スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられる。これによって、特にマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するときのバックアップ時において、一系統の失陥時に他の系統の失陥が防止される。
VSA装置18は、周知のものからなり、右側前輪及び左側後輪のディスクブレーキ機構30a、30b(ホイールシリンダ32FR、ホイールシリンダ32RL)に接続された第2液圧系統70aを制御する第2ブレーキ系110aと、右側後輪及び左側前輪のディスクブレーキ機構30c、30d(ホイールシリンダ32RR、ホイールシリンダ32FL)に接続された第1液圧系統70bを制御する第1ブレーキ系110bとを有する。
なお、第2ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、左側後輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第2ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
この第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第2ブレーキ系110aと第1ブレーキ系110bとで対応するものには同一の参照符号を付すと共に、第2ブレーキ系110aの説明を中心にして、第1ブレーキ系110bの説明を括弧書きで適宜付記する。
第2ブレーキ系110a(第1ブレーキ系110b)は、ホイールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114を有する。VSA装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられる吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなるサクションバルブ142とを備える。
なお、第2ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する液圧路上には、モータシリンダ装置16の出力ポート24aから出力され、前記モータシリンダ装置16の第2液圧室98aで発生したブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。各圧力センサPm、Pp、Phで検出された検出信号は、図示しない制御手段に導入される。
[車両用ブレーキシステム10の動作]
車両用ブレーキシステム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
車両用ブレーキシステム10が正常に機能する正常時には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bが励磁で弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁で弁開状態となる(図2参照)。従って、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bによって第2液圧系統70a及び第1液圧系統70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
このとき、マスタシリンダ34の第1圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由して第1ストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン67がリターンスプリング68a、68bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力が創り出されてブレーキペダル12にフィードバックされる。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキ操作感が得られる。
このようなシステム状態において、図示しない制御手段は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、モータシリンダ装置16のモータ72を駆動させ、モータ72の駆動力を、駆動力伝達機構74を介して伝達し、第2のリターンスプリング96a及び第1のリターンスプリング96bのばね力に抗して第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを図2中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの変位によって第2液圧室98a及び第1液圧室98b内のブレーキ液がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
このモータシリンダ装置16における第2液圧室98a及び第1液圧室98bのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪に所望の制動力が付与される。
換言すると、車両用ブレーキシステム10では、モータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する図示しないECU等の制御手段が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との連通を第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。このため、車両用ブレーキシステム10では、例えば、電気自動車(燃料電池車を含む)やハイブリッド自動車等のように、内燃機関での負圧発生が少ないか、もしくは内燃機関による負圧が存在しない車両、または内燃機関自体がない車両等に好適に適用することができる。
一方、モータシリンダ装置16等が作動不能となる異常時では、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bをそれぞれ弁開状態とし、且つ、第3遮断弁62を弁閉状態としてマスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に伝達して、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
[本発明の第1実施形態に係る第1ストロークシミュレータ64の詳細構造]
次に、本発明の第1実施形態に係る第1ストロークシミュレータ64について詳細に説明する。図3は、第1ストロークシミュレータの断面図である。図4は、第1ストロークシミュレータに内装される第1ブッシュの説明図であり、図4(a)は、第1ストロークシミュレータに内装される第1ブッシュの平面図、図4(b)は、図4(a)のB−B線について矢印方向に観た第1ブッシュの断面図、図4(c)は、図4(a)のC方向から観た第1ブッシュの外観図である。図5は、第1ブッシュ周辺の取り付け状態を示す分解斜視図である。
本発明の第1実施形態に係る第1ストロークシミュレータ64は、図3に示すように、液導ポート64bと、略円筒形状の液圧室65を画成するシリンダ部66と、このシリンダ部66内を進退自在に移動可能なシミュレータピストン(“ピストン”に相当する)67と、第1の弾性係数K1 を有するコイル状の第1のリターンスプリング(“第1の弾性部材”に相当する)68aと、第1の弾性係数K1 よりも大きい第2の弾性係数K2 を有するコイル状の第2のリターンスプリング(“第2の弾性部材”に相当する)68bとを備える。液導ポート64bを介して分岐液圧路58cに連通する液圧室65には、第3遮断弁(常時閉)62の弁体が開位置に切り替えられた場合に、液導ポート64bを介してブレーキ液が出入りするように導かれる。
シリンダ部66は、シミュレータピストン67の退避方向(図3中の左方向、以下、この方向を“後”と定義する)の側に配設される第1のシリンダ66aと、シミュレータピストン67の進出方向(図3中の右方向、以下、この方向を“前”と定義する)の側に配設される第2のシリンダ66bとを、同軸上に連通させて構成されている。第1のシリンダ66aの円周状の内径は、第2のシリンダ66bの円周状の内径よりも小さく形成されている。
第1のシリンダ66aの内壁には、その前側に環状溝66a1が形成されている。この環状溝66a1には、例えばシリコーンゴム製のシールリング66a2が嵌装されている。これにより、シールリング66a2が発揮する液密性によって、液圧室65に充填されたブレーキ液が、シールリング66a2よりも前側にもれださないようになっている。
シミュレータピストン67には、その後ろ側(退避方向)に向けて開口した略円筒形状の肉抜き部67aが形成されている。この肉抜き部67aは、液圧室65の体積を増やして、ブレーキ液の畜液量を増やす役割を果たす。シミュレータピストン67の前端壁67bには、第1のばね座部材69が溶接等の接合手段によって固着されている。
第1のばね座部材69は、その縦断面が略ハット状に形成されている。この第1のばね座部材69は、中央部分が肉抜きされた円板形状のフランジ部69aと、このフランジ部69aの内周部分から前側に立ち上がる円筒形状の側壁部69bと、この側壁部69bの頂部を覆う頂壁部69cとを備える。側壁部69bは、フランジ部69aの内周部分から頂壁部69cに向かって徐々に外径が小さくなる先細り状に形成されている。第1のばね座部材69のうちフランジ部69aの前端壁69a1は、第1のリターンスプリング68aの後端側を受け止める役割を果たす。
第1のばね座部材69に対向する前側には、第1のばね座部材69と同様に、その縦断面が略ハット状に形成された第2のばね座部材71が配設されている。この第2のばね座部材71は、中央部分が肉抜きされた円板形状のフランジ部71aと、このフランジ部71aの内周部分から前側に立ち上がる円筒形状の側壁部71bと、この側壁部71bの頂部を覆う頂壁部71cとを備える。側壁部71bは、フランジ部71aの内周部分から頂壁部71cに向かって徐々に外径が小さくなる先細り状に形成されている。第2のばね座部材71のうちフランジ部71aの前端側71a2は、第2のリターンスプリング68bの後端側を受け止める役割を果たす。
第2のばね座部材71のサイズは、第1のばね座部材69のサイズと比べて全体的に大きく形成されている。具体的には、第1のばね座部材69の側壁部69bおよび頂壁部69cにより形成されるハット部69dの外径サイズは、第2のばね座部材71の側壁部71bおよび頂壁部71cにより形成されるハット部71dの内径サイズと比べてじゅうぶんに大きく形成されている。第2のばね座部材71のうち頂壁部71cの後端壁71c1は、第1のリターンスプリング68aの前端側を受け止める役割を果たす。
第1のばね座部材69のうち頂壁部69cの前端壁69c1には、“弾性部材”および“第3の弾性部材”に相当する第1ブッシュ75が、第1のリターンスプリング68aの内方に収容されるように設けられている。これにより、限りある空間資源を有効に活用するとともに、第1のリターンスプリング68aに対して第1ブッシュ75を並列に配設することができる。
ここで、第1のばね座部材69のうちフランジ部69aの前端壁69a1と、第2のばね座部材71のうちフランジ部71aの後端壁71a1との間には、第1の区間l1 が置かれている。一方、第1ブッシュ75の前側頂部75aと、第2のばね座部材71のうち頂壁部71cの後端壁71c1との間には、第3の区間l3 が置かれている。第1の区間l1 は、第3の区間l3 と比べて大きく設定されている。これにより、第1の区間l1 から第3の区間l3 を差し引いた第2の区間l2 において、第1のリターンスプリング68aの圧縮変形に加えて、第1ブッシュ75が潰れて圧縮変形するように構成されている。このような第1〜第3の区間の設定を前提として、第1ブッシュ75は、ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性を非線形なものとして創り出す重要な役割を果たす。なお、第1ブッシュ75周りの詳細構成および作用については後述する。
第2のばね座部材71に対向する前側には、第1および第2のばね座部材69,71と同様に、その縦断面が略ハット状に形成された第3のばね座部材77が配設されている。この第3のばね座部材77は、中央部分が肉抜きされた円板形状のフランジ部77aと、このフランジ部77aの内周部分から後ろ側に向かって立ち上がる円筒形状の側壁部77bと、この側壁部77bの頂部を覆う頂壁部77cとを備える。側壁部77bは、その基部77b1を除いて、フランジ部77aの内周部分から頂壁部77cに向かって徐々に外径が小さくなる先細り状に形成されている。第3のばね座部材77のうちフランジ部77aの後端側77a1は、第2のリターンスプリング68bの前端側を受け止める役割を果たす。
第1〜第3のばね座部材69,71,77のうち頂壁部69c,71c,77cのそれぞれには、その中央部分に通孔69e,71e,77eが開設されている。また、第1ブッシュ75は、円柱形状の中空部75bを有する筒状の本体部75cにより実質的に形成されている。通孔69e,71e,77e、および、第1ブッシュ75の中空部75bのそれぞれを貫通するように、これら通孔69e,71e,77e、および、第1ブッシュ75の中空部75bの内径と比べてわずかに小さい外径を有する第1ロッド部材79が設けられている。第1ロッド部材79の後端側79aは、第1のばね座部材69のうち頂壁部69cの後端側において、後述する係止部材80により係止されている。第1ロッド部材79の前端側79bには、第3のばね座部材77のうち頂壁部77cに開設された通孔77eと比べて大径の肥大部79b1が形成されている。これにより、第1ロッド部材79の前端側79bと、第3のばね座部材77の頂壁部77cに開設された通孔77eとの間の結合関係が容易に外れないようになっている。
第3のばね座部材77を固定するために、第1ストロークシミュレータ64の本体部64aのうち前端側には、例えば金属製の略円板形状の蓋部81が設けられている。この蓋部81には、その外周壁81aに環状溝部81a1が刻設されている。この環状溝部81a1には、例えばシリコーンゴム製のシールリング81a2が嵌装されている。これにより、シールリング81a2が発揮する気密性によって、第2のシリンダ66b内に充満している空気やブレーキ液等の流体が、シールリング81a2よりも前側にもれださないようになっている。
蓋部81の後端側81bは、第3のばね座部材77のうちフランジ部77aの前端側77a2に固着されている。蓋部81の前端側周側部81cは、中央部分に開口部を有する円板状に形成された係止環83の後部周側壁に当接支持されている。この係止環83は、第2のシリンダ66bの内壁に刻設された環状溝85に係合するように設けられている。これにより、第2のリターンスプリング68bの前端側が、第1ストロークシミュレータ64の本体部64aに対して確実に固定されるようになっている。
要するに、第2のリターンスプリング68bの前端側が、第1ストロークシミュレータ64の本体部64aに対して当接支持される一方、その後端側が、第2のばね座部材71のフランジ部71aに対して当接支持される。また、第1のリターンスプリング68aの前端側が、第2のばね座部材71の前端側頂壁部71c1に対して当接支持される一方、その後端側が、第1のばね座部材69のフランジ部69aに対して当接支持される。そして、第1のばね座部材69がシミュレータピストン67の前端壁67bに固着される。その結果、シミュレータピストン67は、第1及び第2のリターンスプリング68a、68bによって後ろ側(退避方向)に付勢される。
第1および第2のリターンスプリング68a、68bは、相互に力学的に直列に配置されている。第1および第2の弾性係数K1 ,K2 は、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低くし、踏み込み後期時にペダル反力を高くするように設定してある。これは、ブレーキペダル12のストローク量に対する反力特性を従来型のそれと同等とすることにより、従来型のブレーキシステムが搭載されているのか、または、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムが搭載されているのかを運転者に意識させることなく運転に集中させることを狙った設計思想に基づく。
次に、第1ブッシュ75の周辺構成について、図4および図5を参照して説明する。ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性を非線形なものとして創り出すといったきわめて重要な役割を担う第1ブッシュ75は、図4(a)〜(c)に示すように、円柱形状の中空部75bを有する筒状の本体部75cにより実質的に形成されている。第1ブッシュ75は、例えば合成樹脂などによりつくられる。第1ブッシュ75は、第2の弾性係数K02よりも小さい範囲の値をとる第3の弾性係数K03(ただし、K03は可変の値をとる。)を有する。第1ブッシュ75は、第1のリターンスプリング68aに対して力学的に並列に配設されている。
ここで、第3の弾性係数K03を、第2の弾性係数K02よりも小さい範囲の値に設定したのは、第3の弾性係数K03を第2の弾性係数K02よりも大きい範囲の値に設定した場合、第2のリターンスプリング68bと第1ブッシュ75との力関係から、第3の弾性係数K03を有する第1ブッシュ75が非線形の反力特性を創り出すように作動する場面は生じないからである。なお、第3の弾性係数K03は、第1の弾性係数K02よりも小さい範囲の値に設定してもよい。第1ブッシュ75は、ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性に係る違和感を緩和する目的で設けられる。この目的達成を考慮すると、第1ブッシュ75による非線形な反力特性の創出は、わずかでも足りる場合があるからである。
第1ブッシュ75における軸方向の一側(“ピストンの反対側”に相当する)には、第1の易変形部75d1が一体に形成されている。この第1の易変形部75d1は、相互に等しい間隔をおいて凸部75d1aおよび凹部75d1bを交互に設けて構成される。凸部75d1aでは、圧縮変形の方向に直交する方向の凸部75d1aそれ自体の断面積が、圧縮変形の方向(図4(b)中の矢印で示すX3の方向)に沿って漸減するよう形成されている。これに対し、凹部75d1bでは、圧縮変形の方向に直交する方向の凹部75d1bがつくりだす空間の断面積が、圧縮変形の方向(X3の方向)に沿って漸増するよう形成されている。
要するに、第1の易変形部75d1は、圧縮変形の方向に直交する方向の断面積が、圧縮変形の方向に沿って漸減または漸増するよう形成されている。これにより、第1ブッシュ75の第1の易変形部75d1は、圧縮変形の進行に伴って、圧縮変形の方向に直交する方向の断面積が小さい部分(つまり、弾性係数の小さい部分)から順に潰れてゆくように作用する。この潰れによる第1ブッシュ75の圧縮変形は、その圧縮変形力に応じた反力を創り出す。これは、第1ブッシュ75によって、非線形な反力特性が創り出されることを意味する。
また、この潰れが進行してゆく過程で、第1ブッシュ75の第1の易変形部75d1は、第1ブッシュ75における中空部75bの内周壁と、ロッド79の外周壁との間の摩擦力を増加させるようにはたらく。この摩擦力の増加は、第1ブッシュ75における外周壁の膨張が、第1のリターンスプリング68aの内径によって拘束されていることなどに基づく。この摩擦力の増加は、第1ブッシュ75により創り出される反力特性について、非線形性を向上させるように機能する。
第1ブッシュ75の中空部75bには、環状段部75eおよび環状受け部75fが圧縮変形の方向(X3の方向)に所定の間隔を置いて設けられている。前者の環状段部75eは、中空部75bの内周側面に沿って環状に連なった傾斜面75e1により形成されている。この環状段部75eの存在意義は、第2の易変形部として、第1ブッシュ75に圧縮変形力が加えられた場合に生じる反力特性を非線形にする機能と、第1ブッシュ75のうち第1の易変形部75d1の存する側から、第1ロッド部材79を中空部75bに挿通させようと試みた場合に、第1ロッド部材79のうち後端側79aが環状の傾斜面75e1に突き当たった後、中空部75b内に第1ロッド部材79を導く機能とに基づく。従って、環状段部75eによれば、中空部75b内への第1ロッド部材79の挿通を円滑に行わせることができる。
第1ブッシュ75の中空部75bに存する環状受け部75fは、中空部75bの内周側面に沿って環状に連なった傾斜面75f1により形成されている。一方、第1ロッド部材79のうちシミュレータピストンの反対側(前側)には、図5に示すように、外径が小径となる環状段部79cが形成されている。第1ロッド部材79の後端側79aには、その外周側面に周回状の環状溝79dが設けられている。この環状溝79dには、例えばC字形状のクリップ等からなる係止部材80により係止されている。環状受け部75fの存在意義は、第1ブッシュ75によって創り出された非線形な反力特性を、第1ロッド部材79に確実に伝える機能の発揮に基づく。
また、仮に、第1ブッシュ75を正規の方向とは逆向きに(倒立させて)組付けることを誤って試みた場合、第1ロッド部材79の環状段部79cが、第1ブッシュ75のうち環状受け部79c以外の部位に突き当たるため、かかる場合に、中空部75bへの第1ロッド部材79の挿通は阻止されることに基づく。従って、環状受け部75fによれば、第1ブッシュ75によって創り出された非線形な反力特性を、第1ロッド部材79に確実に伝えること、および、第1ブッシュ75を正規の方向とは逆向きに組付けることを未然に防止することができる。
第1ブッシュ75の中空部75bに存する第1のテーパー部75gは、図4(b)に示すように、中空部75bの内周側面に沿う環状の傾斜曲面75g1により形成されている。一方、第1ブッシュ75の外周側面に存する第2のテーパー部75hは、図4(b)に示すように、第1ブッシュ75の外周側面に沿う環状の傾斜曲面75h1により形成されている。第1および第2のテーパー部75g,75hの存在意義は、第3の易変形部として、第1ブッシュ75に圧縮変形力が加えられた場合に生じる反力特性を非線形にする機能の発揮に基づく。
次に、第1ブッシュ75の作用について説明する。
[第1ブッシュ75の作用の説明]
図6は、第1ブッシュ75に係る実施例の作用を説明するための説明図である。
まず、運転者によりブレーキペダル12が操作されると液圧を生じ、この液圧がシリンダ部66内のシミュレータピストン67に伝わる。すると、ピストン67がシリンダ部66内を移動する。ピストン67の移動によって、弾性係数の大きい第2のリターンスプリング68bに比べて、弾性係数の小さい第1のリターンスプリング68aの圧縮変形が主として行われる。この区間が第1の区間(図6中の点Oから点Q0 に至る区間を参照)l1 である。
言い換えると、シミュレータピストン67の進出方向への移動に伴って、第1のばね座部材69が前側へ移動してゆくと、ついには、第1のばね座部材69のうちフランジ部69aの前端壁69a1が、第2のばね座部材71のうちフランジ部71aの後端壁71a1に突き当たる。要するに、第1のばね座部材69が前側への移動を開始してから、第2のばね座部材71の側に突き当たるまでが、第1の区間l1 に相当する。
この第1の区間l1 は、第2の区間l2 および第3の区間l3 に分けることができる。このうち、第2の区間l2 とは、シミュレータピストン67の進出方向への移動に伴って、第1ブッシュ75の前側頂部75aが、第2のばね座部材71のうち頂壁部71cの後端壁71c1に突き当たった後の区間をいう。一方、第3の区間l3 とは、シミュレータピストン67の進出方向への移動に伴って、第1のばね座部材69が前側への移動を開始してから、第1ブッシュ75の前側頂部75aが、第2のばね座部材71のうち頂壁部71cの後端壁71c1に突き当たる直前までの区間をいう。
換言すれば、第2の区間l2 は、第1の区間l1 の途中点(シミュレータピストン67の進出方向への移動に伴って、第1ブッシュ75の前側頂部75aが、第2のばね座部材71のうち頂壁部71cの後端壁71c1に突き当たった時点;図6中の点P参照)を始点とする一方、第1の区間l1 のうち反力特性の切換点(相互に異なる第1の弾性係数K1 および第2の弾性係数K2 による線形の反力特性が切り換わる点、または、第2のリターンスプリング68bの圧縮変形が主として行われるように切り換わる点;図6中の点Q参照)を共通の終点とする。従って、第1ブッシュ75の圧縮変形は、第1の区間l1 の途中点(図6中の点P参照)から上記の切換点(図6中の点Q参照)に至る第2の区間l2 において、第1のリターンスプリング68aの圧縮変形と並列に遂行される。
第2の区間l2 において、ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性は、第1のリターンスプリング68aの圧縮変形により創り出される線形の反力特性と、第1ブッシュ75の圧縮変形により創り出される非線形の反力特性との和により描かれる。これにより、第2の区間l2 (図6中の点Pから点Q1 に至る区間を参照)における反力特性は、一対の線形の反力特性の間を緩やかにつなぐように補正される。この補正は、図6に示すように、第1のリターンスプリング68aの圧縮変形により創り出された線形の反力特性に対して、第1ブッシュ75の並列介挿により得られた非線形の反力特性を積み上げるように加算することで実現される。
具体的には、第1ブッシュ75の圧縮変形初期では、第1〜第3の易変形部75d1,75e,75hのうち、圧縮変形の方向に直交する方向の横断面積(以下、“横断面積”と省略する)が小さい部分(つまり、弾性係数の小さい部分)から順に潰れてゆく。この場合において、第1のリターンスプリング68aの圧縮変形により創り出された線形の反力特性に対して、第1ブッシュ75の圧縮変形により積み上げられる部分はわずかである。これに対し、第1ブッシュ75の圧縮変形の中期以降では、第1〜第3の易変形部75d1,75e,75hのうち横断面積が比較的小さい部分から順に潰れてゆくのは同じであるが、第1の易変形部75d1のうち残っているのは、比較的横断面積の大きい部分ばかりとなる。この場合において、第1のリターンスプリング68aの圧縮変形により創り出された線形の反力特性に対して、第1ブッシュ75の圧縮変形により積み上げられる部分は、第1ブッシュ75の圧縮変形が進行してゆくにつれて大きくなる。
また、第1ブッシュ75の圧縮変形が進行してゆく過程で、第1ブッシュ75の第1の易変形部75d1は、第1ブッシュ75における中空部75bの内周壁と、ロッド79の外周壁との間の摩擦力を増加させるようにはたらく。この摩擦力の増加は、第1ブッシュ75における外周壁の膨張が、第1のリターンスプリング68aの内径によって拘束されていることなどに基づく。この摩擦力の増加は、第1ブッシュ75により創り出される反力特性について、非線形性を向上させるように機能する。
したがって、本第1実施形態に係る発明によれば、ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性において、何らの解決手段をも採用しない場合に、相互に異なる第1および第2の弾性係数K1 ,弾性係数K2 による線形の反力特性が切り換わる切換点に生じていたくの字状の特異点(図6中の点Q0 参照)に起因するブレーキ操作時の違和感を緩和させることができる。
また、第1ブッシュ75は、第3の弾性係数として第1ブッシュ75の圧縮変形の進行に伴って漸増する可変値をとることにより、非線形な反力特性を創り出す構成を採用してもよい。このように構成すれば、第1ブッシュ75は、非線形な反力特性を創り出すため、上記切換点の範囲について、一対の線形の反力特性の間を非線形な反力特性をもって緩やかにつなぐように補正することができる。
また、第1および第2の弾性部材を第1および第2のリターンスプリング68a,68bによりそれぞれ構成し、第3の弾性部材を合成樹脂等の弾性体からなる第1ブッシュ75により構成したため、簡素な構成をもって効果の高い第1ストロークシミュレータ64を具現化することができる。
また、第1ブッシュ75は、円柱形状を有して第1のリターンスプリング68aの内方に収容されるとともに、円柱形状の軸方向端部のうち少なくともいずれか一方に第1〜第3の易変形部75d1,75e,75g,75hを有し、これら第1〜第3の易変形部75d1,75e,75g,75hは、圧縮変形の方向に直交する方向の断面積が、圧縮変形の方向に沿って漸減または漸増するよう形成される構成を採用してもよい。この場合、第1ブッシュ75は、非線形な反力特性を創り出すように作用する。従って、簡素な構成をもって良好な反力特性を有する第1ストロークシミュレータ64を具現化することができる。
また、第1および第2の易変形部75d1,75eは、第1ブッシュ75のうちピストン67の反対側に設けられているため、第1ブッシュ75が圧縮変形を開始するに際し、その前方側に存する第1および第2の易変形部75d1,75eが最初に潰れるように作用させることができる。
また、第1ブッシュ75の中空部75bには、第1ブッシュ75の軸方向の移動を案内する円柱形状の第1ロッド部材79が挿通されているため、第1ブッシュ75の軸方向の移動を円滑に案内することができる。
また、第1ロッド部材79のうちピストン67の反対側には、外径が小径となる環状段部79cが形成される一方、第1ブッシュ75の中空部75b内壁には、第1ロッド部材79の環状段部79cが突き当たる環状受け部75fが形成されている。このため、第1ブッシュ75によって創り出された非線形な反力特性を、第1ロッド部材79に確実に伝えることができる。また、仮に、第1ブッシュ75を正規の方向とは逆向きに(倒立させて)組付けることを試みた場合、第1ロッド部材79の環状段部79cが、第1ブッシュ75のうち環状受け部75f以外の部位に突き当たる。この場合、中空部75bへの第1ロッド部材79の挿通は阻止される。従って、第1ブッシュ75を正規の方向とは逆向きに組付けることを未然に防止することができる。
また、第1ブッシュ75の少なくとも一部に切り欠き部75d2を設けたため、仮に、第1ブッシュ75をブレーキ液等の液体で満たす構成を採用した場合に、第1ブッシュ75それ自体に混入したエアを速やかに抜くことができる。
また、第1の易変形部75d1は、円柱形状の周方向に間隔をおいて複数設けられており、相互に隣接する複数の第1の易変形部75d1の間隙を切り欠き部75d2とするため、簡素な構成をもって、非線形な反力特性の創出、および、エア抜きを両立させることができる。
また、第1の易変形部75d1は、ドーム形状の凹部もしくは凸部またはこれらの組み合わせにより形成されるため、簡素な構成をもって良好な反力特性を有するストロークシミュレータを具現化することができる。
また、第1ブッシュ75は、第1ブッシュ75の円柱形状における軸方向の端縁に形成されたテーパー部75g1,75h1を有するため、簡素な構成をもって良好な反力特性を有するストロークシミュレータを具現化することができる。
一方、本発明の第1実施形態に係る車両用反力発生装置(入力装置14)は、運転者によるブレーキペダル12の操作量に応じた液圧を発生させるマスタシリンダ(液圧発生手段)34と、マスタシリンダ34に連通されて、ブレーキペダル12の操作量に応じた反力を発生させる第1ストロークシミュレータ(反力発生手段)64と、を備えた車両用反力発生装置である。第1ストロークシミュレータ64は、マスタシリンダ34で発生した液圧に応じて進出方向または退避方向に作動されるシミュレータピストン(ピストン)67と、シミュレータピストン67の進出方向の側に設けられた弾性部材と、を有する。この弾性部材は、第1の弾性係数を有する第1のリターンスプリング(第1の弾性部材)68a、第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する第2のリターンスプリング(第2の弾性部材)68b、および、第2の弾性係数よりも小さい範囲の値をとる第3の弾性係数を有する第1ブッシュ(第3の弾性部材)75からなる。第1のリターンスプリング68aと第2のリターンスプリング68bとを相互に直列に設け、第1ブッシュ75を第1のリターンスプリング68aに対して並列に配設する。第1ブッシュ75は、シミュレータピストン67の退避方向の側の接触面積を、シミュレータピストン67の進出方向の側の接触面積と比べて異なるように設定する。
ここで、“第1ブッシュ75は、シミュレータピストン67の退避方向の側の接触面積を、シミュレータピストン67の進出方向の側の接触面積と比べて異なるように設定する”とは、第1ブッシュ75の相手部材に対する接触面積を、前側と後側とで異ならせることを意味する。具体的には、図3に示すように、第1ブッシュ75の後端側では、第1のばね座部材69のうち頂壁部69cの前端壁69c1が接触対象となる相手部材に相当する。一方、第1ブッシュ75の前端側(前側頂部75a)では、第2のばね座部材71のうち頂壁部71cの後端壁71c1が接触対象となる相手部材に相当する。要するに、図3に示す例では、シミュレータピストン67の退避方向の側の接触面積は、シミュレータピストン67の進出方向の側の接触面積と比べて大きく設定されている。
本発明の第1実施形態に係る車両用反力発生装置では、運転者がブレーキペダルを操作すると、マスタシリンダ34は、その操作量に応じた液圧を発生させる。マスタシリンダ34に連通された第1ストロークシミュレータ64は、ブレーキペダル12の操作量に応じた反力を、シミュレータピストン67と弾性部材との連携により発生させる。すなわち、ブレーキペダル12の操作量が小さい場合、弾性係数の大きい第2のリターンスプリングに比べて、弾性係数の小さい第1のリターンスプリングの圧縮変形が主として行われる。一方、ブレーキペダル12の操作量が大きい場合、第2のリターンスプリングの圧縮変形が主として行われる。そして、ブレーキペダル12の操作量が中ほどの場合、第1のリターンスプリングの圧縮変形と並列に、第1ブッシュ75の圧縮変形が遂行される。
このため、第1の弾性係数による線形の反力特性と、第2の弾性係数による線形の反力特性とが切り換わる切換点の近傍範囲において、ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性は、第1の弾性部材の圧縮変形により創り出される反力特性と、第1ブッシュ75の圧縮変形により創り出される反力特性との和により描かれる。これにより、切換点の近傍範囲において、ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性は、一対の線形の反力特性の間を緩やかにつなぐように補正される。
したがって、本発明の第1実施形態に係る車両用反力発生装置によれば、ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性において、何らの解決手段をも採用しない場合に、相互に異なる第1および第2の弾性係数による線形の反力特性が切り換わる切換点に生じていたくの字状の特異点に起因するブレーキ操作時の違和感を緩和させることができる。
しかも、第1ブッシュ75は、シミュレータピストン67の退避方向の側の接触面積を、シミュレータピストン67の進出方向の側の接触面積と比べて異なるように設定したため、接触面積の大きい側では、第1ブッシュ75それ自体の座屈を防ぐとともに、接触面積の小さい側では、ブレーキペダル12の操作量に対する反力特性を非線形にすることができる。
[本発明の第2実施形態に係る第2ストロークシミュレータ164の詳細構造]
次に、本発明の第2実施形態に係る第2ストロークシミュレータ164について、図面を参照して説明する。図7は、第2ストロークシミュレータの断面図である。
本発明の第1実施形態に係る第1ストロークシミュレータ64(図3参照)と、本発明の第2実施形態に係る第2ストロークシミュレータ164(図7参照)とでは、両者間で基本的な構成要素が共通している。そこで、両者間で実質的に共通の構成要素には共通の符号を付してその説明を省略し、両者間の相違点に注目して説明を進めることとする。
また、両者間で対応する構成要素については、その対応関係を一見して容易に把握できるように、次の規則に従って符号付けを行うこととする。すなわち、第1実施形態に係る構成要素に付された符号と、第2実施形態に係る構成要素に付された符号とでは、その下二桁を共通とする。そして、第2実施形態に係る構成要素に付された符号の先頭に、符号“1”を付する。具体的には、例えば、第1実施形態に係る第1ストロークシミュレータと、第2実施形態に係る第2ストロークシミュレータとは、両者間で対応する構成要素に相当するが、前者に符号“64”を付し、後者に符号“164”を付する要領である。
さて、第1実施形態および第2実施形態間の第1の相違点は、第3のばね座部材177および蓋部181の周辺構造である。第1実施形態では、蓋部81は、第3のばね座部材77とは別体に構成されていたのに対し、第2実施形態では、蓋部181は、第3のばね座部材177と一体に、第3のばね座部材177の一部をなすように構成されている。
詳しく述べると、第2実施形態では、第2ストロークシミュレータ164の本体部164aのうち前端側には、第1ストロークシミュレータ64と同様に、例えば金属製の略円板形状の蓋部181が設けられている。この蓋部181は、第3のばね座部材177と一体に、第3のばね座部材177の一部をなすように形成されている。蓋部181は、第2のリターンスプリング68bの前端側を受け止める役割を果たす。
蓋部181には、その外周壁181aに環状溝部181a1が刻設されている。環状溝部181a1には、例えばシリコーンゴム製のシールリング181a2が嵌装されている。これにより、シールリング181a2が発揮する気密性によって、第2のシリンダ166b内に充満している空気やブレーキ液等の流体が、シールリング181a2よりも前側にもれださないようになっている。
第2実施形態に係る第3のばね座部材177は、中央部分が肉抜きされた円板形状のフランジ部177aと、このフランジ部177aの内周部分から後ろ側に向かって周回状に立ち上がる側壁部177bと、この側壁部177bの頂部を覆う頂壁部177cとを備える。第3のばね座部材177のうちフランジ部177aは、前記の蓋部181に連なって一体に設けられている。つまり、フランジ部177aは、蓋部181でもある。
前記の側壁部177bは、第2のリターンスプリング68bの内径と比べてわずかに小さい外径を有する基部177b1と、基部177b1と比べてわずかに小さい外径を有する小径部177b2とを備えている。
蓋部181の前端側周側部181cは、第1実施形態に係る蓋部81と同様に、係止環83の後部周側壁に当接支持されている。この係止環83は、第2のシリンダ166bの内壁に刻設された環状溝85に係合するように設けられている。これにより、第3のばね座部材177は、蓋部181を介して第2ストロークシミュレータ164の本体部164aに固定されている。また、第2のリターンスプリング68bの前端側が、第2ストロークシミュレータ164の本体部164aに対して確実に固定されるようになっている。
また、第1実施形態では、第3のばね座部材77の頂壁部77cのうち略中央部分に通孔77eが設けられていたのに対し、第2実施形態では、第3のばね座部材177の頂壁部177cのうち略中央部分に、第1実施形態に係る通孔77eに相当する孔部に代えて、第2ロッド部材179のうち肥大部179b1の進出を受け入れる凹形状の受入部177が形成されている。これは、後記するように、第2ロッド部材179それ自体(第2ロッド部材179の長さが短縮化)およびその周辺構造が変更されたことに基づく。第3のばね座部材177および蓋部181が有する基本的な機能や動作は、第1実施形態と共通である。
第1実施形態および第2実施形態間の第2の相違点は、第2ロッド部材179それ自体、および、その周辺構造である。第1実施形態に係る第1ロッド部材79は、図3に示すように、第1〜第3の各ばね座部材69,71,77の略中央部分に開設された通孔69e,71e,77e、および、第1ブッシュ75の中空部75bをそれぞれ貫通するように設けられていた。これに対し、第2実施形態に係る第2ロッド部材179は、図7に示すように、第1および第2の各ばね座部材69,71の各頂壁部69c,71cのうち略中央部分にそれぞれ開設された通孔69e,71e、および、第1ブッシュ75の中空部75bをそれぞれ貫通するように設けられている。
要するに、第2ロッド部材179は、その長さが短縮化されている。第2ロッド部材179の支持機構は、第1実施形態に係るロッド部材79の支持機構と共通である。具体的には、第2ロッド部材179の後端側179aは、第1のばね座部材69のうち頂壁部69cの後端側において、係止部材80により係止されている。第2ロッド部材179の前端側179bには、第2のばね座部材71のうち頂壁部71cに開設された通孔71eと比べて大径の肥大部179b1が形成されている。これにより、第2ロッド部材179の前端側179bと、第2のばね座部材71の頂壁部71cに開設された通孔71eとの間の結合関係が容易に外れないようになっている。
[第2ストロークシミュレータ164の作用効果]
次に、第2ストロークシミュレータ164の作用効果について、第1ストロークシミュレータ64との相違部分に注目して説明する。第2ストロークシミュレータ164では、第2ロッド部材179は、第1ストロークシミュレータ64が有する第1ロッド部材79と比べて、その長さが短縮化されている。そのため、第2ストロークシミュレータ164は、次のように作用する。
すなわち、まず、運転者によりブレーキペダル12が操作されると液圧を生じ、この液圧がシリンダ部66内のシミュレータピストン67に伝わる。すると、ピストン67がシリンダ部66内を移動する。シミュレータピストン67の進出方向への移動に伴って、第1のばね座部材69が前側へ移動してゆくと、この移動に伴って、第2ロッド部材179は、進出方向へと、第2のばね座部材71の頂壁部71cから突き出すように伸びてゆく。
運転者によりブレーキペダル12が強く操作されると、ついには、第1のばね座部材69のうちフランジ部69aの前端壁69a1が、第2のばね座部材71のうちフランジ部71aの後端壁71a1に突き当たるに到る。さらに、運転者によりブレーキペダル12が一層強く操作されると、第2のばね座部材71は、第2のリターンスプリング68bが有する弾性力に抗して、第3のばね座部材177の側へと移動してゆく。この移動に伴って、第2ロッド部材179は、進出方向へと、第2のばね座部材71の頂壁部71cから突き出すように伸びてゆく。
ところが、第3のばね座部材177の頂壁部177cには、凹形状の受入部177が形成されている。このため、第2ロッド部材179が、進出方向へと、第2のばね座部材71の頂壁部71cから突き出すように伸びた場合でも、受入部177は、第2ロッド部材179のうち肥大部179b1の進出を受け入れるように作用する。従って、第2ロッド部材179と、第2のばね座部材71の頂壁部71cとの干渉を未然に回避することができる。
また、第2実施形態では、蓋部181は、第3のばね座部材177と一体に、第3のばね座部材177の一部をなすように構成されている。従って、部品点数を削減し、かつ、軽量化を実現可能な第2ストロークシミュレータ164を得ることができる。
以上説明した実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。従って、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
例えば、本第1および第2実施形態において、第1ブッシュ75の軸方向のうち一側に易変形部75d1aを設ける例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限定されない。第1ブッシュ75の軸方向のうち両側に易変形部75d1aを設ける構成を採用してもよい。また、第1ブッシュ75の軸方向のうち一側に4つの易変形部75d1aを設ける例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限定されない。第1ブッシュ75の軸方向のうち一側に単一の(周方向に連なった)、または、2,3,5個等の任意の数の易変形部75d1aを設ける構成を採用してもよい。
また、本実施形態において、第1ブッシュ75が非線形の反力特性を有する例を挙げて説明したが、本発明はこの例に限定されない。第1ブッシュ75に線形の反力特性をもたせて、第2の区間l2 の範囲内において、第1のリターンスプリング68aの圧縮変形により創り出される線形の反力特性と、第1ブッシュ75の圧縮変形により創り出される線形の反力特性とを相互に加算する。これにより、3段階の線形特性をつなぎ合わせたブレーキペダル12の操作量に対する反力特性を得ることができる。こうした実施例も、本発明の技術的範囲の射程に包含される。
なお、請求項2に記載の“相互に異なる第1の弾性係数(K1 )および第2の弾性係数(K2 )による線形の反力特性が切り換わる切換点(点Q)を含む区間”とは、第2の区間l2 を包摂する概念である。