以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電動ブレーキ装置が適用された車両用ブレーキシステムの車両における配置構成を示す図である。なお、車両Vの前後左右の方向を図1に矢印で示す。
本実施形態の車両用ブレーキシステム10は、通常時用として、電気信号を伝達してブレーキを作動させるバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、フェイルセイフ時用として、油圧を伝達してブレーキを作動させる旧来の油圧式のブレーキシステムの双方を備えて構成される。
図1に示すように、車両用ブレーキシステム10は、操作者(運転者)のブレーキ操作が入力される入力装置14と、少なくともブレーキ操作に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生する電動ブレーキ装置としてのモータシリンダ装置16と、モータシリンダ装置16で発生したブレーキ液圧に基づいて車両の挙動の安定化を支援する車両挙動安定化装置としてのビークルスタビリティアシスト装置18(以下、VSA装置18という、VSA;登録商標)とを備えて構成されている。
なお、モータシリンダ装置16は、運転者のブレーキ操作に応じた電気信号だけではなく、他の物理量に応じた電気信号に基づいてブレーキ液圧を発生するように構成されていてもよい。他の物理量に応じた電気信号とは、例えば、自動ブレーキシステムのような、運転者のブレーキ操作によらずに、ECU(Electronic Control Unit)が車両Vの周囲の状況をセンサ等で判断して、車両Vの衝突等を回避するための信号などである。
入力装置14は、ここでは右ハンドル車に適用するものであり、ダッシュボード2の車幅方向の右側にボルト等を介して固定されている。なお、入力装置14は、左ハンドル車に適用されるものであってもよい。モータシリンダ装置16は、例えば、入力装置とは逆側の車幅方向の左側に配置され、左側のサイドフレーム等の車体1に取付用ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。VSA装置18は、例えば、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能、加速時などの車輪空転を防ぐTCS(トラクション・コントロール・システム)機能、旋回時の横すべりを抑制する機能などを備えて構成されており、例えば、車幅方向の右側の前端に、ブラケットを介して車体に取り付けられている。なお、VSA装置18に代えて、ブレーキ時の車輪ロックを防ぐABS機能のみを有するABS装置を接続してもよい。入力装置14、モータシリンダ装置16、及びVSA装置18の内部の詳細な構成については後記する。
これらの入力装置14、モータシリンダ装置16、及びVSA装置18は、車両Vのダッシュボード2の前方に設けられたエンジンや走行用モータ等の構造物3が搭載される構造物搭載室Rに、配管チューブ22a〜22fを介して互いに分離して配置されている。なお、車両用ブレーキシステム10は、前輪駆動車、後輪駆動車、四輪駆動車のいずれにも適用可能である。また、バイ・ワイヤ式のブレーキシステムとして、入力装置14とモータシリンダ装置16とは、図示しないハーネスによってECU等の制御手段と電気的に接続されている。
図2は、車両用ブレーキシステムの概略構成図である。
液圧路について説明すると、図2中の連結点A1を基準として、入力装置14の接続ポート20aと連結点A1とが第1配管チューブ22aによって接続され、また、モータシリンダ装置16の出力ポート24aと連結点A1とが第2配管チューブ22bによって接続され、さらに、VSA装置18の導入ポート26aと連結点A1とが第3配管チューブ22cによって接続されている。
図2中の他の連結点A2を基準として、入力装置14の他の接続ポート20bと連結点A2とが第4配管チューブ22dによって接続され、また、モータシリンダ装置16の他の出力ポート24bと連結点A2とが第5配管チューブ22eによって接続され、さらに、VSA装置18の他の導入ポート26bと連結点A2とが第6配管チューブ22fによって接続されている。
VSA装置18には、複数の導出ポート28a〜28dが設けられる。第1導出ポート28aは、第7配管チューブ22gによって右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30aのホイールシリンダ32FRと接続される。第2導出ポート28bは、第8配管チューブ22hによって左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30bのホイールシリンダ32RLと接続される。第3導出ポート28cは、第9配管チューブ22iによって右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構30cのホイールシリンダ32RRと接続される。第4導出ポート28dは、第10配管チューブ22jによって左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構30dのホイールシリンダ32FLと接続される。
この場合、各導出ポート28a〜28dに接続される配管チューブ22g〜22jによってブレーキ液(ブレーキフルード)がディスクブレーキ機構30a〜30dの各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに対して供給され、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL内の液圧が上昇することにより、各ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動し、対応する車輪(右側前輪、左側後輪、右側後輪、左側前輪)に対して制動力が付与される。
なお、車両用ブレーキシステム10は、例えば、エンジン(内燃機関)のみによって駆動される自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車等を含む各種車両に対して搭載可能に設けられる。
入力装置14は、運転者によるブレーキペダル12の操作によって液圧を発生可能なタンデム式のマスタシリンダ34と、前記マスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36とを有する。このマスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、前記シリンダチューブ38の軸方向に沿って所定間隔離間する第2ピストン40a及び第1ピストン40bが摺動自在に配設される。第2ピストン40aは、ブレーキペダル12に近接して配置され、プッシュロッド42を介してブレーキペダル12と連結される。また、第1ピストン40bは、第2ピストン40aよりもブレーキペダル12から離間して配置される。
この第2ピストン40a及び第1ピストン40bの外周面には、環状段部を介して一対のカップシール44a、44bがそれぞれ装着される。一対のカップシール44a、44bの間には、それぞれ、後記するサプライポート46a、46bと連通する背室48a、48bが形成される。また、第2ピストン40aと第1ピストン40bとの間には、ばね部材50aが配設され、第1ピストン40bとシリンダチューブ38の前端部との間には、他のばね部材50bが配設される。
なお、第2ピストン40a及び第1ピストン40bの外周面にカップシール44a、44bをそれぞれ設ける代わりに、シリンダチューブ38の内周面にシール部材をそれぞれ配設してもよい。
マスタシリンダ34のシリンダチューブ38には、2つのサプライポート46a、46bと、2つのリリーフポート52a、52bと、2つの出力ポート54a、54bとが設けられる。この場合、各サプライポート46a(46b)及び各リリーフポート52a(52b)は、それぞれ合流して第1リザーバ36内の図示しないリザーバ室と連通するように設けられる。
また、マスタシリンダ34のシリンダチューブ38内には、運転者がブレーキペダル12を踏み込む踏力に対応したブレーキ液圧を発生させる第2圧力室56a及び第1圧力室56bが設けられる。第2圧力室56aは、第2液圧路58aを介して接続ポート20aと連通するように設けられ、第1圧力室56bは、第1液圧路58bを介して他の接続ポート20bと連通するように設けられる。
マスタシリンダ34と接続ポート20aとの間であって、第2液圧路58aの上流側には圧力センサPmが配設されると共に、第2液圧路58aの下流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第2遮断弁60aが設けられる。この圧力センサPmは、第2液圧路58a上において、第2遮断弁60aよりもマスタシリンダ34側の上流の液圧を検知するものである。
マスタシリンダ34と他の接続ポート20bとの間であって、第1液圧路58bの上流側には、ノーマルオープンタイプ(常開型)のソレノイドバルブからなる第1遮断弁60bが設けられると共に、第1液圧路58bの下流側には、圧力センサPpが設けられる。この圧力センサPpは、第1液圧路58b上において、第1遮断弁60bよりもホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL側の下流側の液圧を検知するものである。
この第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bにおけるノーマルオープンとは、ノーマル位置(消磁(非通電)時の弁体の位置)が開位置の状態(常時開)となるように構成されたバルブをいう。なお、図2において、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bは励磁時の状態を示す(後記する第3遮断弁62も同様)。
マスタシリンダ34と第1遮断弁60bとの間の第1液圧路58bには、前記第1液圧路58bから分岐する分岐液圧路58cが設けられ、前記分岐液圧路58cには、ノーマルクローズタイプ(常閉型)のソレノイドバルブからなる第3遮断弁62と、ストロークシミュレータ64とが直列に接続される。この第3遮断弁62におけるノーマルクローズとは、ノーマル位置(消磁(非通電)時の弁体の位置)が閉位置の状態(常時閉)となるように構成されたバルブをいう。
このストロークシミュレータ64は、第1液圧路58b上であって、第1遮断弁60bよりもマスタシリンダ34側に配置されている。前記ストロークシミュレータ64には、分岐液圧路58cに連通する液圧室65が設けられ、前記液圧室65を介して、マスタシリンダ34の第1圧力室56bから導出されるブレーキ液が吸収可能に設けられる。
また、ストロークシミュレータ64は、互いに直列に配置されたばね定数の高い第1リターンスプリング66aとばね定数の低い第2リターンスプリング66bと、前記第1及び第2リターンスプリング66a、66bによって付勢されるシミュレータピストン68とを備え、ブレーキペダル12の踏み込み前期時にペダル反力の増加勾配を低く設定し、踏み込み後期時にペダル反力を高く設定してブレーキペダル12のペダルフィーリングを既存のマスタシリンダと同等となるように設けられている。
液圧路は、大別すると、マスタシリンダ34の第2圧力室56aと複数のホイールシリンダ32FR、32RLとを接続する第2液圧系統70aと、マスタシリンダ34の第1圧力室56bと複数のホイールシリンダ32RR、32FLとを接続する第1液圧系統70bとから構成される。
第2液圧系統70aは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54aと接続ポート20aとを接続する第2液圧路58aと、入力装置14の接続ポート20aとモータシリンダ装置16の出力ポート24aとを接続する配管チューブ22a、22bと、モータシリンダ装置16の出力ポート24aとVSA装置18の導入ポート26aとを接続する配管チューブ22b、22cと、VSA装置18の導出ポート28a、28bと各ホイールシリンダ32FR、32RLとをそれぞれ接続する配管チューブ22g、22hとによって構成される。
第1液圧系統70bは、入力装置14におけるマスタシリンダ34(シリンダチューブ38)の出力ポート54bと他の接続ポート20bとを接続する第1液圧路58bと、入力装置14の他の接続ポート20bとモータシリンダ装置16の出力ポート24bとを接続する配管チューブ22d、22eと、モータシリンダ装置16の出力ポート24bとVSA装置18の導入ポート26bとを接続する配管チューブ22e、22fと、VSA装置18の導出ポート28c、28dと各ホイールシリンダ32RR、32FLとをそれぞれ接続する配管チューブ22i、22jとを有する。
モータシリンダ装置16は、電動式のモータ72の駆動力によって第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを軸方向に駆動することによりブレーキ液圧を発生する電動ブレーキ装置である。なお、モータシリンダ装置16において、ブレーキ液圧を発生させる(上昇させる)ときの第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの移動方向(図2中矢印X1方向)を「前」とし、その反対方向(図2中矢印X2方向)を「後」とする。
モータシリンダ装置16は、軸方向に移動可能な第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを内蔵するシリンダ部76と、第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを駆動するためのモータ72と、モータ72の駆動力を第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bに伝達するための駆動力伝達部73とを備えている。
駆動力伝達部73は、モータ72の回転駆動力を伝達するギア機構(減速機構)78と、この回転駆動力をナット80cが受けてボール80bを介してナット80cと係合するボールねじ軸(スクリュー)80aの軸方向に沿った直線方向駆動力に変換するボールねじ構造体80と、を含む駆動力伝達機構74を有している。
シリンダ部76は、略円筒状のシリンダ本体82と、前記シリンダ本体82に付設された第2リザーバ84とを有する。第2リザーバ84は、入力装置14のマスタシリンダ34に付設された第1リザーバ36と配管チューブ86で接続され、第1リザーバ36内に貯留されたブレーキ液が配管チューブ86を介して第2リザーバ84内に供給されるように設けられる。
シリンダ本体82内には、前記シリンダ本体82の軸方向に沿って所定間隔離間する第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bが摺動自在に配設される。第2スレーブピストン88aは、ボールねじ構造体80側に近接して配置され、ボールねじ軸80aの先端に当接して前記ボールねじ軸80aと一体的に矢印X1又はX2方向に変位する。また、第1スレーブピストン88bは、第2スレーブピストン88aよりもボールねじ構造体80側から離間して配置される。
第2スレーブピストン88aの外周面と駆動力伝達機構74との間を液密にシールすると共に、第2スレーブピストン88aをその軸方向に対して移動可能にガイドする環状のガイドピストン230が、第2スレーブピストン88aの外周面に対向するように配置されている。ガイドピストン230の内周面にはカップシール90cが装着される。また、第2スレーブピストン88aの前端側の外周面には、環状段部を介してスレーブカップシール90bが装着される。カップシール90cとスレーブカップシール90bとの間には、後記するリザーバポート92aと連通する第2背室94aが形成される。そして、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2リターンスプリング96aが配設される。
一方、第1スレーブピストン88bの外周面には、環状段部を介して一対のスレーブカップシール90a、90bがそれぞれ装着される。一対のスレーブカップシール90a、90bの間には、後記するリザーバポート92bと連通する第1背室94bが形成される。そして、第1スレーブピストン88bとシリンダ本体82の前端部と間には、第1リターンスプリング96bが配設される。
シリンダ部76のシリンダ本体82には、2つのリザーバポート92a、92bと、2つの出力ポート24a、24bとが設けられる。この場合、リザーバポート92a(92b)は、第2リザーバ84内のリザーバ室と連通するように設けられる。
また、シリンダ本体82内には、出力ポート24aからホイールシリンダ32FR、32RL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第2液圧室98aと、他の出力ポート24bからホイールシリンダ32RR、32FL側へ出力されるブレーキ液圧を発生させる第1液圧室98bとが設けられる。
なお、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bとの間には、第2スレーブピストン88aと第1スレーブピストン88bの最大離間距離と最小離間距離とを規制する規制手段100が設けられ、さらに、第1スレーブピストン88bには、前記第1スレーブピストン88bの摺動範囲を規制して、第2スレーブピストン88a側へのオーバーリターンを阻止するストッパピン102が設けられ、これによって、特にマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧で制動するときのバックアップ時において、一系統の失陥時に他の系統の失陥が防止される。
VSA装置18は、周知のものからなり、右側前輪及び左側後輪のディスクブレーキ機構30a、30b(ホイールシリンダ32FR、ホイールシリンダ32RL)に接続された第2液圧系統70aを制御する第2ブレーキ系110aと、右側後輪及び左側前輪のディスクブレーキ機構30c、30d(ホイールシリンダ32RR、ホイールシリンダ32FL)に接続された第1液圧系統70bを制御する第1ブレーキ系110bとを有する。
なお、第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bと、各ディスクブレーキ機構30a,30b,30c,30dとの接続の組み合わせは、前記した組み合わせに限定されず、互いに独立した2系統が担保されれば、次のような組み合わせとすることができる。つまり、図示はしないが、第2ブレーキ系110aは、左側前輪及び右側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、左側後輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。さらに、第2ブレーキ系110aは、車体片側の右側前輪及び右側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、車体片側の左側前輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。また、第2ブレーキ系110aは、右側前輪及び左側前輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統からなり、第1ブレーキ系110bは、右側後輪及び左側後輪に設けられたディスクブレーキ機構に接続された液圧系統であってもよい。
この第2ブレーキ系110a及び第1ブレーキ系110bは、それぞれ同一構造からなるため、第2ブレーキ系110aと第1ブレーキ系110bとで対応するものには同一の参照符号を付すと共に、第2ブレーキ系110aの説明を中心にして、第1ブレーキ系110bの説明を括弧書きで適宜付記する。
第2ブレーキ系110a(第1ブレーキ系110b)は、ホイールシリンダ32FR、32RL(32RR、32FL)に対して、共通する第1共通液圧路112及び第2共通液圧路114を有する。VSA装置18は、導入ポート26aと第1共通液圧路112との間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなるレギュレータバルブ116と、前記レギュレータバルブ116と並列に配置され導入ポート26a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から導入ポート26a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第1チェックバルブ118と、第1共通液圧路112と第1導出ポート28aとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第1インバルブ120と、前記第1インバルブ120と並列に配置され第1導出ポート28a側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第1導出ポート28a側へのブレーキ液の流通を阻止する)第2チェックバルブ122と、第1共通液圧路112と第2導出ポート28bとの間に配置されたノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2インバルブ124と、前記第2インバルブ124と並列に配置され第2導出ポート28b側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2導出ポート28b側へのブレーキ液の流通を阻止する)第3チェックバルブ126とを備える。
さらに、VSA装置18は、第1導出ポート28aと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第1アウトバルブ128と、第2導出ポート28bと第2共通液圧路114との間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第2アウトバルブ130と、第2共通液圧路114に接続されたリザーバ132と、第1共通液圧路112と第2共通液圧路114との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へのブレーキ液の流通を許容する(第1共通液圧路112側から第2共通液圧路114側へのブレーキ液の流通を阻止する)第4チェックバルブ134と、前記第4チェックバルブ134と第1共通液圧路112との間に配置されて第2共通液圧路114側から第1共通液圧路112側へブレーキ液を供給するポンプ136と、前記ポンプ136の前後に設けられる吸入弁138及び吐出弁140と、前記ポンプ136を駆動するモータMと、第2共通液圧路114と導入ポート26aとの間に配置されたノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなるサクションバルブ142とを備える。
なお、第2ブレーキ系110aにおいて、導入ポート26aに近接する液圧路上には、モータシリンダ装置16の出力ポート24aから出力され、前記モータシリンダ装置16の第2液圧室98aで発生したブレーキ液圧を検知する圧力センサPhが設けられる。各圧力センサPm、Pp、Phで検出された検出信号は、図示しない制御手段に導入される。
本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
車両用ブレーキシステム10が正常に機能する正常時には、ノーマルオープンタイプのソレノイドバルブからなる第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bが励磁で弁閉状態となり、ノーマルクローズタイプのソレノイドバルブからなる第3遮断弁62が励磁で弁開状態となる(図2参照)。従って、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bによって第2液圧系統70a及び第1液圧系統70bが遮断されているため、入力装置14のマスタシリンダ34で発生したブレーキ液圧がディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達されることはない。
このとき、マスタシリンダ34の第1圧力室56bで発生したブレーキ液圧は、分岐液圧路58c及び弁開状態にある第3遮断弁62を経由してストロークシミュレータ64の液圧室65に伝達される。この液圧室65に供給されたブレーキ液圧によってシミュレータピストン68がリターンスプリング66a、66bのばね力に抗して変位することにより、ブレーキペダル12のストロークが許容されると共に、擬似的なペダル反力が発生してブレーキペダル12に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
このようなシステム状態において、図示しない制御手段は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込みを検出すると、モータシリンダ装置16のモータ72を駆動させ、モータ72の駆動力を駆動力伝達機構74を介して伝達し、第2リターンスプリング96a及び第1リターンスプリング96bのばね力に抗して第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを図2中の矢印X1方向に向かって変位させる。この第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bの変位によって第2液圧室98a及び第1液圧室98b内のブレーキ液がバランスするように加圧されて所望のブレーキ液圧が発生する。
このモータシリンダ装置16における第2液圧室98a及び第1液圧室98bのブレーキ液圧は、VSA装置18の弁開状態にある第1、第2インバルブ120、124を介してディスクブレーキ機構30a〜30dのホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLに伝達され、前記ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FLが作動することにより各車輪に所望の制動力が付与される。
換言すると、本実施形態に係る車両用ブレーキシステム10では、電動ブレーキ装置(動力液圧源)として機能するモータシリンダ装置16やバイ・ワイヤ制御する図示しないECU等の制御手段が作動可能な正常時において、運転者がブレーキペダル12を踏むことでブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ34と各車輪を制動するディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)との連通を第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bで遮断した状態で、モータシリンダ装置16が発生するブレーキ液圧でディスクブレーキ機構30a〜30dを作動させるという、いわゆるブレーキ・バイ・ワイヤ方式のブレーキシステムがアクティブになる。このため、本実施形態では、例えば、電気自動車等のように、旧来から用いられていた内燃機関による負圧が存在しない車両に好適に適用することができる。
一方、モータシリンダ装置16等が作動不能となる異常時では、第2遮断弁60a及び第1遮断弁60bをそれぞれ弁開状態とし、且つ、第3遮断弁62を弁閉状態としてマスタシリンダ34で発生するブレーキ液圧をディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)に伝達して、前記ディスクブレーキ機構30a〜30d(ホイールシリンダ32FR、32RL、32RR、32FL)を作動させるという、いわゆる旧来の油圧式のブレーキシステムがアクティブになる。
次に、モータシリンダ装置16についてさらに詳細に説明する。図3は、モータシリンダ装置の側面図である。図4は、モータシリンダ装置の分解斜視図である。図5は、駆動力伝達部の分解斜視図である。
図3に示すように、モータシリンダ装置16は、前記した通り、シリンダ部76と、モータ72と、駆動力伝達部73とを備えている。モータ72は、図示しない制御手段からの電気信号に基づいて駆動する。
ここで、モータ72は、シリンダ部76の上方に位置されている。このように構成すれば、駆動力伝達部73内のグリス等の油成分が重力の作用でモータ72内に入り込んで図示しない電気部品等に侵入することを防止できる。
図4に示すように、モータ72、駆動力伝達部73、及びシリンダ部76は、互いに分離可能に構成されている。モータ72は、図示しないハーネスが接続される基部161を有しており、基部161にはボルト201が挿通される貫通孔162が複数形成されている。また、シリンダ部76のシリンダ本体82の駆動力伝達部73側の端部には、フランジ部82aが設けられており、フランジ部82aにはボルト202が挿通される貫通孔82bが複数形成されている。
駆動力伝達部73は、ギア機構78及びボールねじ構造体80を含む駆動力伝達機構74(図5参照)を内部に収容するハウジング171を有しており、ハウジング171は、シリンダ部76側に配置されるケース172と、ケース172のシリンダ部76と反対側の開口端を覆うカバー173とを備えている。駆動力伝達部73のケース172及びカバー173は、アルミニウム合金等の軽金属から形成されている(シリンダ部76のシリンダ本体82も同様)。
駆動力伝達部73のケース172には、モータ72を駆動力伝達部73に取り付けるためのモータ取付用ねじ孔174が複数形成されている。また、ケース172のシリンダ部76側の端部には、フランジ部175が設けられており、フランジ部175には、シリンダ部76を駆動力伝達部73に取り付けるためのシリンダ部取付用ねじ孔176が複数形成されている。
そして、モータ72は、ボルト201を貫通孔162に挿通させてモータ取付用ねじ孔174にねじ込むことによって、駆動力伝達部73に取り付けられて固定される。また、シリンダ部76は、ボルト202を貫通孔82bに挿通させてシリンダ部取付用ねじ孔176にねじ込むことによって、駆動力伝達部73に取り付けられて固定される。
図5に示すように、ハウジング171(図4参照)の内部に、ギア機構78とボールねじ構造体80とが収容されている。ギア機構78は、モータ72の出力軸に固定されたピニオンギア78a(図2参照)と、ピニオンギア78aに噛合されるアイドルギア78bと、アイドルギア78bに噛合されるリングギア78cとを備えている。
ボールねじ構造体80は、モータ72の回転駆動力を受けることにより回転するナット80cと、ナット80cと係合(螺合)して軸方向に移動可能に設けられると共に先端が第2スレーブピストン88aに当接して第2スレーブピストン88a(ピストン)を押圧するボールねじ軸80a(スクリュー)と、ボールねじ軸80a上のねじ溝に転動可能に配置されるボール80b(図2参照)とを備えている。
そして、ナット80cは、リングギア78cの内周面と例えばキー78d(図7参照)を介して係合されている。但し、ナット80cとリングギア78cの係合は、キーを媒介とした係合に限定されるものではなく、例えばナット80cの外周面をリングギア78cの内周面に圧入してもよい。これにより、ギア機構78から伝達される回転駆動力は、ナット80cに入力された後、ボールねじ構造体80によって直線方向駆動力に変換され、ボールねじ軸80aが軸方向に沿って移動可能とされている。
ハウジング171(図4参照)のケース172とカバー173とは、互いに分離可能に構成されている。第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88b(図2参照)の中心軸CL(図4参照)周りに位置するように、ケース172にはボルト203が挿通される貫通孔177が複数形成されており、カバー173の貫通孔177と対応する位置には、ケース取付用ねじ孔178が複数形成されている。そして、ボルト203を貫通孔177に挿通させてケース取付用ねじ孔178にねじ込むことによって、ケース172とカバー173とが互いに結合されている。
なお、図5中の符号179は、モータ72の出力軸の先端を回転可能に支持する軸受を示しており、この軸受179は、カバー173に形成された穴部180に嵌着される。また、図5中の符号210は、ボールねじ軸80aの廻り止めのためにカバー173に装着されるスリーブを示す。
図6は、モータシリンダ装置の斜め下方から見た斜視図である。
図6に示すように、モータシリンダ装置16には、当該モータシリンダ装置16をサイドフレーム等の車体1(図1参照)に取り付けるためのマウント部181が設けられている。マウント部181は、中心軸CL(図4参照)方向のカバー173側から見て、左方に位置する左マウント穴182、右方に位置する右マウント穴183、及び下方に位置する下マウント穴184を有する。左右下の各マウント穴182〜184は、それぞれフローティング支持のためのゴムブッシュ(図示せず)を装着可能な円柱状の凹部を呈している。また、マウント部181は、左マウント穴182と右マウント穴183との共通軸心に沿って形成され中心軸CL(図4参照)に直交する軸心を有する貫通孔185を有している。
マウント部181は、モータシリンダ装置16の重心近傍に設けられている。ここでは、駆動力伝達部73のケース172に、マウント部181が設けられている。このような構成によれば、モータシリンダ装置16の重心近傍を支持することができ、振動等の力を受けた場合でも振れを少なくすることができる。
そして、モータシリンダ装置16は、マウント部181により、取付用ブラケット(図示せず)を介して、サイドフレーム等の車体1(図1参照)に取り付けられる。ここで、左マウント穴182及び右マウント穴183は、貫通孔185に挿通される1本のボルト204により車体側に締結可能に構成されており、モータシリンダ装置16の取付作業が容易となっている。このようなマウント部181を使用することにより、モータシリンダ装置16の左右下の三点を支持してモータシリンダ装置16を車体側に取り付けることが可能である。
次に、図7及び図8を参照して、ボールねじ構造体80におけるボールねじ軸80aの回転防止構造について説明する。図7は、ボールねじ軸周辺の拡大断面図である。図8は、ボールねじ軸周辺の分解斜視図である。
図7及び図8に示すように、ボールねじ軸80aの後端近傍に、ボールねじ軸80aの軸方向に垂直な方向に沿う貫通孔80dが形成されている。そして、ボールねじ軸80aの回り止めのための規制部としての円柱形状のピン220が、貫通孔80dに圧入されることによって、ボールねじ軸80aに設けられている。
ピン220は、その両端が貫通孔80dの両側開口から略均等にそれぞれ突出するように位置決めされる。但し、ピン220は、貫通孔80dに遊嵌された後に、例えば止めねじの先端をピン220の側面に押し当てるべくボールねじ軸80aの後端面又は側面に形成されたねじ孔にねじ込むことによって、固定されてもよい。
一方、ハウジング171は、ピン220をボールねじ軸80aの軸方向に対して移動可能に支持するガイド部としての摺動溝211を備えたスリーブ210を有している。摺動溝211は、スリーブ210の軸方向に延在しており、スリーブ210の内面の対向する位置に一対形成されている。摺動溝211の幅寸法は、ピン220の直径よりも僅かに大きく設定され、摺動溝211の深さ寸法は、ピン220が摺動溝211内を摺動するときに摺動溝211の底面とピン220の軸方向端面との間に僅かに隙間が形成されるように設定される。また、ここでは、摺動溝211のみに、表面加工が施されている。表面加工には、クロムメッキやニッケルメッキ等の表面処理、焼入れや窒化処理等の熱処理、研磨等の表面仕上げ加工等が含まれる。
スリーブ210は、ボールねじ軸80aの軸方向後方においてカバー(本体部)173に形成された凹部215に組み付けられて装着される。ここで、スリーブ210は、スリーブ210の外周面に形成された軸スプライン213をカバー173に形成された穴スプライン216に係合させることによって、カバー173に組み付けられる。
軸スプライン213及び穴スプライン216は、例えばインボリュート歯型を呈しており、両者が例えば歯面で当接して位置決めされる。但し、歯型は任意であり、両者が例えば大径面で当接して位置決めされてもよい。また、ボールねじ軸80aの前進時にスリーブ210をカバー173の凹部215内に押し込む方向にスラスト力が働くように、軸スプライン213及び穴スプライン216の歯すじ方向をスリーブ210の軸方向に対して傾斜させてねじれ角を持たせるように構成してもよい。
このようなスリーブ210とカバー173とのスプライン嵌合は、圧入であることが好ましい。また、スリーブ210がカバー173の凹部215から離脱しないように、例えばカシメ等の固定手段によりスリーブ210を凹部215内に固定してもよい。
また、スリーブ210は、摺動溝211とは独立に設けられ、スリーブ210をカバー173の凹部215に組み付けるための工具と係合する工具用係合部212(図8参照)を備えている。工具用係合部212は、例えば、スリーブ210の開放端方向及び内方に開口すると共に、スリーブ210の内面の対向する位置に一対形成された凹状部である。このように構成すれば、スリーブ210をカバー173に組み付ける際に、スリーブ210を工具用係合部212で把持して組付け作業を行うことができる。
また、工具用係合部212を摺動溝211とは独立に設けることにより、摺動溝211がピン220をガイドする性能への影響を低減できる。ここでは、工具用係合部212と摺動溝211との周方向位置が90度ずれるように設定されており、ガイド性能への影響を最小化している。
また、スリーブ210は、ボールねじ軸80aの第2スレーブピストン88aとは反対側の端部である後端と当接して荷重を受ける荷重受け部214(図7参照)を備えている。このように構成すれば、第2スレーブピストン88aが後方へ移動する際に、ハウジング171のカバー173にボールねじ軸80aの後端が当接して、当接時の荷重によってハウジングのカバー173が変形することを確実に防止できる。また、ハウジング構造の保護により、ブレーキ液圧の制御精度をより良好に維持できる。
前記したように、本実施形態では、モータ72の駆動力によって第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを軸方向に駆動することによりブレーキ液圧を発生する電動ブレーキ装置において、駆動力伝達機構74は、モータ72の回転駆動力を受けることにより回転するナット80cと、ナット80cと係合して軸方向に移動可能に設けられると共に第2スレーブピストン88aを押圧するボールねじ軸80aとを備え、ボールねじ軸80aの回り止めのためのピン220がボールねじ軸80aに設けられ、ピン220をボールねじ軸80aの軸方向に対して移動可能に支持する摺動溝211を備えたスリーブ210が、駆動力伝達機構74を収容するハウジング171のカバー173に設けられている。
このように構成されたボールねじ軸80aの回転防止構造は、以下のように作用する。すなわち、モータ72の回転駆動力をナット80cが受け、ナット80cに係合されたボールねじ軸80aが軸方向に前進して第2スレーブピストン88aを押圧するとき、ガイド部としての摺動溝211によってピン220がボールねじ軸80aの軸方向に対して移動可能に支持されるため、ボールねじ軸80aの回転が規制される。これにより、ボールねじ軸80aから第2スレーブピストン88aに対して、安定した軸方向の力が付加される。
したがって本実施形態によれば、第2スレーブピストン88aからブレーキ液への荷重入力をより安定化させることができる。これにより、ブレーキ液圧の制御精度を良好に維持可能となる。
また本実施形態では、ハウジング171は、摺動溝211を有するスリーブ210と、スリーブ210と別体のカバー173とを備えている。したがって、ピン220からの荷重によってハウジング171のカバー173が変形することを防止できる。また、ハウジング構造の保護により、ブレーキ液圧の制御精度を長期にわたり良好に維持できる。さらに、ピン220からの荷重により摺動溝211が変形等を生じないように、耐摩耗性に優れたスリーブ210を例えば車種に合わせて選択的に用いることができる。ここで、スリーブ210は例えば鉄鋼で構成することができる。また、カバー173を例えばアルミニウム合金等の軽金属で構成することにより、強度を維持しつつ軽量化を図ることができる。但し、摺動溝211をカバー173の凹部215に直接形成してもよいことは勿論である。
また本実施形態では、摺動溝211のみに、メッキ、熱処理、表面仕上げ加工等の表面加工が施されている。したがって、摺動溝211の表面の硬度を高めたり摺動溝211のピン220との摺動抵抗を低減したりできるため、摺動溝211の表面の摩耗を防止できる。このように、摺動溝211のみに表面加工を施すことが、製造コストや工数の低減の観点から好ましい。但し、スリーブ210全体に表面加工を施してもよいことは勿論である。
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
例えば、前記実施形態では、ボールねじ軸80aに貫通孔80dを形成し、ピン220をその両端が貫通孔80dの両側開口から略均等に突出するように固定したが、本発明はこれに限定されるものではない。ボールねじ軸80aに単数又は複数の有底穴を形成し、当該有底穴に単数又は複数のピンを圧入してピンの端部が有底穴の開口から所定距離突出するように固定してもよい。また、ピン220の代わりに例えばキー等の規制部をボールねじ軸80aに固定して、キーを摺動溝211内で軸方向に対して移動可能に支持するように構成してもよい。
また、前記実施形態では、スリーブ210とカバー173との組付け方法としてスプライン嵌合を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スリーブ210は、カバー173の凹部215内に、インサート成形、キーを媒介とした係合、ピンを媒介とした係合、スリーブ210外周面の凹部215内周面への圧入嵌合等の各種の組付け方法によって固定されてもよい。
また、前記実施形態では、中心軸CL方向(図4参照)に並んで配置される第2スレーブピストン88a及び第1スレーブピストン88bを備える、いわゆるタンデム式のシリンダ部76について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ピストンとその前方に形成される液圧室を一つずつ備えたシリンダ部を有する電動ブレーキ装置にも勿論適用可能である。