JP5419243B2 - ポリ乳酸系樹脂発泡粒子及びポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体 - Google Patents
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Description
本発明は、型内成形時の融着性に優れるポリ乳酸系樹脂発泡粒子を提供することを、課題とするものである。
[1] ポリ乳酸系樹脂発泡粒子であって、該発泡粒子1〜4mgを測定試料として、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、加熱速度10℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる1回目のDSC曲線と、次いで該融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/minにて40℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線には、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を基準に、該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピークと、該基準の頂点温度よりも低温側(該基準の頂点温度を含む)に頂点温度を有する融解ピークとが現れると共に該高温側に頂点温度を有する融解ピークの総吸熱量が25J/g以下である結晶構造を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
[2] 前記基準の頂点温度よりも高温側に頂点温度を有する融解ピークの総吸熱量が、1〜15J/gであることを特徴とする前記1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
[3] JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して下記の条件1にて求められる前記発泡粒子表層の吸熱量(Brs:endo)[J/g]及び前記発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)[J/g]が下記(1)式を満足することを特徴とする前記1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
(Brc:endo)>(Brs:endo)≧0 ・・・(1)
条件1
[測定試料の調整]
(発泡粒子表層の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面を含む表層部分を切削処理して表層部分を集めて測定試料とする。なお、切削処理にあたっては1個の発泡粒子の表面全面から、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/6〜1/4の重量の測定試料を採取することとする。
(発泡粒子中心部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。
[吸熱量の測定]
それぞれの吸熱量、(Brs:endo)と(Brc:endo)の測定値は、前記発泡粒子表層の吸熱量測定試料または前記発泡粒子中心部の吸熱量測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線に基づいて求められる値とする。
[4] JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して下記の条件2にて求められる前記発泡粒子中心部の吸熱量(Bfc:endo)[J/g]と発熱量(Bfc:exo)[J/g]とが下記(2)式を満足することを特徴とする前記3に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
40>[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]>10 ・・・(2)
条件2
[吸熱量および発熱量の測定]
吸熱量(Bfc:endo)と発熱量(Bfc:exo)の測定値は、前記条件1の発泡粒子中心部の吸熱量測定試料の調整方法と同様にして採取された発泡粒子中心部の測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、加熱速度2℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線に基づいて求められる値とする。
[5]ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の見かけ密度が25〜400g/Lであることを特徴とする前記1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
[6] ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の平均気泡径が30〜500μmであることを特徴とする前記1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
[7] 前記1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を型内成形してなる嵩密度15〜300g/Lのポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体。
また、本発明の発泡粒子成形体は発泡粒子相互の融着性に優れるものであり、寸法安定性、機械的強度において改善効果が確認できるものである。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を構成する基材樹脂は、ポリ乳酸系樹脂である。該ポリ乳酸系樹脂は、ポリ乳酸、或いはポリ乳酸と他の樹脂との混合物からなる。なお、該ポリ乳酸は、乳酸に由来する成分単位を50モル%以上含むポリマーであることが好ましい。該ポリ乳酸としては、例えば(a)乳酸の重合体、(b)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(c)乳酸と脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(d)乳酸と脂肪族多価カルボン酸とのコポリマー、(e)乳酸と脂肪族多価アルコールとのコポリマー、(f)これら(a)〜(e)の何れかの組合せによる混合物等が包含される。また、該ポリ乳酸には、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ステレオブロックポリ乳酸と呼ばれるものも包含される。なお、乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの環状2量体であるL−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド又はそれらの混合物が挙げられる。
具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミドなどの芳香族モノカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製Stabaxol 1−LF)、芳香族ポリカルボジイミド(例えば、ラインケミー社製Stabaxol P、ラインケミー社製Stabaxol P400など)、ポリ(4−4'−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)などの脂肪族ポリカルボジイミド(例えば、日清紡ケミカル(株)製カルボジライトLA−1)などが挙げられる。
これらの末端封鎖剤は単独で使用しても良く、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。
また、末端封鎖剤の配合量は、ポリ乳酸100重量部あたりに0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
前記添加剤の配合量は、添加剤の種類によっても異なるが、通常、基材樹脂100重量部に対して0.001〜20重量部、更に0.01〜5重量部とすることが好ましい。
本発明の発泡粒子は、高温ピークを有することにより、型内成形時において、発泡粒子の二次発泡速度が抑制されるか、発泡粒子が過度に二次発泡することが抑制されること、或いはこれら両方が抑制されることになると考えられるため、成形型内での加熱媒体の発泡粒子間の通過が遮られることが低減される。その結果、発泡粒子の型内成形時の融着性が向上し、最終的に得られるポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体は、厚みが厚いものや形状が複雑なものであっても融着性に優れるものとなる。
このような発泡粒子の1回目のDSC曲線(I)に高温ピークが現れる現象は、樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る際の熱履歴により形成される二次結晶に起因するものであると考えることができる。
また、本明細書において前記2回目のDSC曲線(I)における最も面積の大きな融解ピークの頂点温度、即ち融解ピークcの頂点温度をポリ乳酸系樹脂の融点(Tm)、融解ピークの高温側の裾がベースラインに戻った点の温度を融解終了温度(Te)とする。
本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子としては、前記低温ピークと高温ピークを有することに加え、熱流束示差走査熱量測定法により下記条件1で求められる、熱処理後の発泡粒子表層の吸熱量(Brs:endo)[J/g]と熱処理後の発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)[J/g]との関係が下記(1)式を満足する発泡粒子が好ましい。
(Brc:endo)>(Brs:endo)≧0 ・・・(1)
一方、発泡粒子表層部のポリ乳酸は、充分な熱処理によっても結晶化度は、発泡粒子中心部より低いことから発泡粒子表面の軟化点が低いものであることを意味する。したがって、発泡粒子製造前後の熱履歴によらず型内成形時の発泡粒子相互の熱融着性において優れた融着性を発現できる発泡粒子であることを意味している。かかる観点から、発泡粒子の融着性をより向上させるために、発泡粒子表層の吸熱量(Brs:endo)は35J/g以下(0も含む)がより好ましい。また、発泡粒子の耐熱性、機械的強度を向上させるために、発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)は30J/g以上、更に35J/g以上が好ましい。また、(Brc:endo)の上限は、概ね70J/g、好ましくは60J/gである。
また、(Brc:endo)と(Brs:endo)とは、3J/g以上の熱量差、更に4J/g以上の熱量差を有することが好ましい。なお、前記(1)式を満足する範囲において、発泡粒子表層部を構成しているポリ乳酸は、非晶性ポリ乳酸でも非晶性ポリ乳酸と結晶性ポリ乳酸との混合樹脂であってもよい。
(Br:endo)>25 ・・・(3)
前記(3)式において、(Br:endo)が25[J/g]超であることは、発泡粒子を構成しているポリ乳酸の結晶化が充分に進む条件にて熱処理した場合、該ポリ乳酸による発泡粒子の結晶成分の量が多い状態になることを意味している。すなわち、充分な熱処理により多層樹脂粒子の芯層部分に相当する発泡粒子の大部分を構成しているポリ乳酸の結晶化度を高めることにより、結晶化度の高められた発泡粒子成形体を得ることができることを意味する。したがって、最終的に得られる発泡粒子成形体の機械的強度、高温時の圧縮強さ等の耐熱性が高められることが期待できる。このような観点から、(Br:endo)は、30J/g以上、更に35J/g以上が好ましい。また、(Br:endo)の上限は、概ね70J/g、好ましくは60J/gである。
[測定試料の調整]
(発泡粒子全体の吸熱量測定試料)
発泡粒子を基本的には切断することなく測定試料とすることとする。
(発泡粒子表層の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面を含む表層部分を切削処理して表層部分を集めて測定試料とする。なお、切削処理にあたっては1個の発泡粒子の表面全面から切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/6〜1/4の重量の測定試料を採取することとする。具体的には、表層部分をカッターナイフ等を用いて切削処理を行い、該表層部分を集めて測定に供すればよい。但し、この際の留意点としては、1個の発泡粒子の該表層部分全面をできるだけ発泡粒子表面から同じ厚みで、且つ1個の発泡粒子から切除される該表層部分の重量が切削処理前の発泡粒子の粒子重量の6分の1〜4分の1の範囲内で切除して測定試料を得ることである。
(発泡粒子中心部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。具体的には、発泡粒子の表面を含まない内部の発泡層を切り出すことを目的にカッターナイフ等で切削処理を行い、該発泡粒子中心部を測定に供すればよい。但し、この際の留意点としては、1個の発泡粒子の表面全面を必ず切除し、発泡粒子の中心とできる限り同じ中心をもつようにして切削処理前の発泡粒子の粒子重量の5分の1〜3分の1の範囲内で発泡粒子中心部を切り出し、且つ切り出された測定試料は、切削処理前の発泡粒子の形状とできる限り相似の関係にあるようにすることである。
それぞれの吸熱量、(Br:endo)、(Brs:endo)、又は(Brc:endo)の測定値は、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、1〜4mgの前記の発泡粒子全体の吸熱量測定試料、発泡粒子表層の吸熱量測定試料または発泡粒子中心部の吸熱量測定試料を融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線(以下、2回目のDSC曲線(II)ともいう。)に基づいて求められる値とする。なお、(Brs:endo)、(Brc:endo)の測定試料採取にあたり、1個の発泡粒子から得られる測定試料が1〜4mgに満たない場合には前記測定試料採取操作を複数個の発泡粒子に対して行い1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。また、(Br:endo)の測定試料採取にあたり、1粒の発泡粒子の重量が4mgを超える場合には発泡粒子を2等分するなど同形状に等分して1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。
更に、前記発泡粒子全体が特定の吸熱量(Br:endo)を有する発泡粒子を用いることにより、熱処理した発泡粒子の型内成形、或いは発泡粒子の型内成形後の発泡粒子成形体の熱処理にて、前記高温ピークによる効果に加えて更に機械的物性に優れる発泡粒子成形体が得られる。
40>[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]>10 ・・・(2)
[測定試料の調整]
(発泡粒子中心部の吸熱量および発熱量測定試料)
前記条件1の発泡粒子中心部の吸熱量測定試料の調整方法と同様に発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。
[吸熱量および発熱量の測定]
吸熱量(Bfc:endo)および発熱量(Bfc:exo)の測定は、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、前記の発泡粒子中心部の測定試料1〜4mgを加熱速度2℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線(1回目のDSC曲線(II))に基づいて求められる値とする。なお、1個の発泡粒子から得られる測定試料が1〜4mgに満たない場合は前記測定試料採取操作を複数個の発泡粒子に対して行い1〜4mgの範囲内で測定試料を調整する必要がある。
発泡粒子の発熱量(Bfc:exo)は1回目のDSC曲線(II)の発熱ピーク(結晶化ピークと同義)の低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点cとし、発熱ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点dとして、点cと点dとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる発熱量を示す部分の面積から求められる値とする。また、発泡粒子の吸熱量(Bfc:endo)は、1回目のDSC曲線(II)の融解ピーク(吸熱ピークと同義)の低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点eとし、融解ピークが高温側のベースラインへ戻る点を点fとして、点eと点fとを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる吸熱量を示す部分の面積から求められる値とする。但し、1回目のDSC曲線(II)におけるベースラインはできるだけ直線になるように装置を調節することとする。また、どうしてもベースラインが湾曲してしまう場合は、発熱ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから発熱ピークが離れる点を点c、発熱ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ発熱ピークが戻る点を点dとする。更に、融解ピークの低温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して高温側へ延長する作図を行い、該湾曲した低温側のベースラインから融解ピークが離れる点を点e、融解ピークの高温側の湾曲したベースラインをその曲線の湾曲状態を維持して低温側へ延長する作図を行い、該湾曲した高温側ベースラインへ融解ピークが戻る点を点fとする。
なお、外層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点は、発泡粒子の取り扱い性および得られる発泡粒子成形体の高温時の機械的強度の観点から、芯層を構成するポリ乳酸系樹脂の軟化点との関係が前記範囲であると共に、50℃以上、更に55℃以上、特に65℃以上が好ましい。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置して養生する。次に、同恒温室内にて、約500mlの養生後の発泡粒子群の重量W1(g)を測定し、重量を測定した発泡粒子群を金網などの道具を使用して温度23℃の水の入ったメスシリンダー中に沈める。次に、水面下の該道具の体積を差し引いた、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の体積V1(リットル:L)を測定し、メスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1を体積V1で割り算(W1/V1)することにより見かけ密度を求める。
発泡粒子を略二等分した切断面を顕微鏡で撮影した拡大写真に基づき、以下のとおり求める。発泡粒子の切断面拡大写真において発泡粒子の一方の表面から他方の表面に亘って、気泡切断面の略中心を通る4本の線分を引く。ただし、該線分は、気泡切断面の略中心から切断粒子表面へ等間隔の8方向に伸びる放射状の直線を形成するように引くこととする。次いで前記4本の各線分と交わる気泡の数(n1〜n4)をカウントし、各線分と交わる気泡の数の総和N=n1+n2+n3+n4(個)を求める。次いで4本の各線分の長さの総和L(μm)を求め、総和Lを総和Nで除した値(L/N)を発泡粒子1個の平均気泡径とする。この作業を10個の発泡粒子について行い、各発泡粒子の平均気泡径を相加平均した値を発泡粒子の平均気泡径とする。
発泡粒子を大気圧下、相対湿度50%、23℃の条件の恒温室内にて10日間放置し養生する。次に同恒温室内にて、養生後の嵩体積約20cm3の発泡粒子を測定用サンプルとし水没法により正確に見かけの体積Vaを測定する。見かけの体積Vaを測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM−D2856−70に記載されている手順Cに準じ、東芝・ベックマン株式会社製空気比較式比重計930により測定される測定用サンプルの真の体積Vxを測定する。そして、これらの体積Va及びVxを基に、下記の(4)式により独立気泡率を計算し、N=5の平均値を発泡粒子の独立気泡率とする。
ただし、
Vx:前記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の体積と発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(cm3)
Va:発泡粒子を、水の入ったメスシリンダーに沈めて、水位上昇分から測定される発泡粒子の見かけの体積(cm3)
W:発泡粒子測定用サンプルの重量(g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(g/cm3)
本発明の発泡粒子として、好ましくは分散媒放出発泡方法が挙げられる。分散媒放出発泡方法によれば、前記高温ピークの生成、高温ピーク熱量の制御を容易に行なうことができる。なお、本発明のポリ乳酸系樹脂発泡粒子の製造方法としては、本発明の発泡粒子の構成を満足するものが得られる範囲内で、含浸発泡法、押出発泡法などのその他の発泡粒子製造方法を採用しても構わない。
なお、本発明においては、前記(1)式を満足することが要求される場合には、芯層と外層とからなる多層樹脂粒子を製造することが好ましい。該芯層と外層とからなる多層樹脂粒子は、例えば、特公昭41−16125号公報、特公昭43−23858号公報、特公昭44−29522号公報、特開昭60−185816号公報等に記載された共押出成形法技術を利用して製造することができる。
該平均重量が軽すぎる場合には、樹脂粒子の製造が特殊なものになる。一方、該平均重量が重すぎる場合には、得られる発泡粒子の密度分布が広くなったり、型内成形時の充填性が悪くなったりするおそれがある。
該樹脂粒子の形状は、円柱状、球状、角柱状、楕円球状、円筒状等を採用することができる。かかる樹脂粒子を発泡して得られる発泡粒子は、発泡前の樹脂粒子形状に略対応した相似形状となる。
分散媒放出発泡方法においては例えば前記樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒及び物理発泡剤と共に分散させて加熱したり、或いは樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒と共に分散させて加熱し、次いで物理発泡剤を前記耐圧容器内へ圧入したりすることにより、樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とする。次いで、該発泡性樹脂粒子を耐圧容器内よりも低い圧力下に分散媒と共に放出することにより発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得ることができる。
前記発泡助剤のうち、本発明では、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンワックス、架橋ポリスチレン等が好ましく、更に、疎水性のポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
該分散剤としては、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、カオリン、マイカ、及びクレー等の無機物質や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロースなどの水溶性高分子保護コロイド剤が挙げられる。また、分散助剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤などを分散媒に添加することもできる。
これら分散剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.05〜3重量部使用することができ、これら分散助剤は、樹脂粒子100重量部あたり0.001〜0.3重量部使用することができる。
なお、無機系物理発泡剤を主成分とするとは、全物理発泡剤100モル%中の無機系物理発泡剤が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上含まれることを意味する。
例えば、従来公知の発泡粒子成形金型を用いる、圧縮成形法、クラッキング成形法、加圧成形法、圧縮充填成形法、常圧充填成形法(例えば、特公昭46−38359号公報、特公昭51−22951号公報、特公平4−46217号公報、特公平6−22919号公報、特公平6−49795号公報等参照)などが挙げられる。
内径65mmの芯層形成用押出機および内径30mmの外層形成用押出機の出口側に多層ストランド形成用の共押ダイを付設した押出機を用いた。
芯層形成用押出機および外層形成用押出機に、それぞれ表1に示す芯層および外層を形成するポリ乳酸系樹脂を、夫々の押出機に供給し溶融混練した。それらの溶融混練物を押出機先端に取り付けた前記の共押ダイに導入してダイ内で合流させて共押ダイの口金の細孔から、表1に示す割合で芯層の側面に外層が形成された多層ストランドとして共押出し、共押出されたストランドを、水槽を通過させることにより水冷し、その後、ペレタイザーで重量が2mgとなるように切断し、乾燥して多層樹脂粒子を得た。
なお、気泡調整剤マスターバッチを前記芯層形成用押出機へポリ乳酸系樹脂と共に供給することにより、芯層のポリ乳酸系樹脂には、気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(商品名:TFW−1000、(株)セイシン企業製)を1000重量ppm含有させた。
まず、前記のようにして得られた樹脂粒子1kgを分散媒としての水3Lと共に撹拌機を備えた内容量5Lの耐圧容器内に仕込み、更に分散媒中に、分散剤として酸化アルミニウム0.1重量部、界面活性剤(商品名:ネオゲンS−20F、第一工業製薬社製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を有効成分量として0.01重量部を添加した。次いで、撹拌下で表1に示す発泡温度より5℃低い温度まで昇温し、耐圧容器内に発泡剤としての二酸化炭素を表1に示す耐圧容器内圧力より0.2MPa(G)低い圧力になるまで圧入しその温度で15分間保持した。次いで、発泡温度まで昇温し、表1に示す耐圧容器内圧力になるまで二酸化炭素を圧入し、表1に示す発泡温度で15分間保持した。その後、二酸化炭素にて背圧を加えて容器内の圧力が一定になるようにして内容物を大気圧下に放出して表1に示す見かけ密度のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を得た。なお、分散剤、界面活性剤の添加量(重量部)は、ポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対する量である。
また、得られた発泡粒子の高温ピークの吸熱量、見かけ密度、独立気泡率、平均気泡径などの諸物性を測定した結果を表1に示す。
内径65mmの押出機の出口側にストランド形成用のダイを付設した押出機を用いた。
この押出機に表1に示すポリ乳酸系樹脂を供給し溶融混練した。その溶融混練物を押出機先端に取り付けた前記のダイに導入してダイの口金の細孔から、ストランドとして押出し、押出されたストランドを、実施例1と同様にして水冷し、ペレタイザーで重量が2mgとなるように切断し、乾燥して樹脂粒子を得た。前記以外は実施例1と同様にポリ乳酸系樹脂発泡粒子を作製した。
なお、気泡調整剤マスターバッチを前記押出機へポリ乳酸系樹脂と共に供給することにより、ポリ乳酸系樹脂には、気泡調整剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末(商品名:TFW−1000、(株)セイシン企業製)を1000重量ppm含有させた。
また、得られた発泡粒子の諸物性を測定した結果を表1に示す。
縦200mm、横250mm、厚さ70mmの平板成形型を取り付けた汎用の発泡粒子成形機を使用し、実施例、比較例で得られた発泡粒子に表2に示す内圧を付与し、内圧を高めた発泡粒子を平板成形型のキャビティー内に充填し、スチーム加熱による型内成形を行なって板状の発泡粒子成形体を得た。前記スチーム加熱手順は、固定側と移動側の型のドレン弁を開放した状態でスチームを5秒間供給して予備加熱を行ったのち、固定側の型のドレン弁を開放した状態で移動側の型から成形型のキャビティー内にスチームを5秒間供給し、次いで移動側のドレン弁を開放した状態で固定側の型から成形型のキャビティー内にスチームを10秒間供給した後、固定側と移動側の型のドレン弁を閉じた状態で、両方の型から成形型のキャビティー内の圧力が表2に示す成形蒸気圧になるまでスチームを供給して加熱を行なった。
得られた発泡粒子成形体について、外観、50%圧縮応力、融着率、収縮率などの各種物性を評価し、その結果を表2に示す。
「発泡粒子内圧」
発泡粒子成形体を作製する際の発泡粒子の内圧は、型内成形機充填直前の発泡粒子の一部(以下、発泡粒子群という)を使用して次のように測定した。
加圧タンク内にて内圧が高められた型内成形機充填直前の発泡粒子群を加圧タンクから取り出してから60秒以内に、発泡粒子は通過させないが空気は自由に通過できるサイズの針穴を多数穿設した袋の中に収容して気温23℃、相対湿度50%の大気圧下の恒温恒湿室に移動した。続いてその恒温恒湿室内の秤に発泡粒子群の入った袋を乗せて重量をよみとった。この重量の測定は、前記した発泡粒子群を加圧タンクから取り出してから120秒後におこなった。この時の重量をQ(g)とした。続いてその発泡粒子群の入った袋を同恒温恒湿室に10日間放置した。発泡粒子内の加圧空気は時間の経過とともに気泡膜を透過して外部に抜け出すため発泡粒子群の重量はそれに伴って減少し、10日間後では平衡に達しているのでその重量は安定していた。よって、この10日間後の発泡粒子群の入った袋の重量を同恒温恒湿室内にて再度測定し、この重量をU(g)とした。Q(g)とU(g)の差を増加空気量W(g)とし、下記の(5)式により発泡粒子の内圧P(MPa)を計算した。
但し、上式中、Mは空気の分子量であり、ここでは28.8(g/モル)の定数を採用する。Rは気体定数であり、ここでは0.0083(MPa・L/(K・mol))の定数を採用する。Tは絶対温度を意味し、23℃の雰囲気を採用されているので、ここでは296(K)の定数である。V(L)は発泡粒子群の見かけ体積から発泡粒子群中に占める基材樹脂の体積を差し引いた体積を意味する。
なお、以上の測定においては、前記発泡粒子群重量(U(g)とZ(g)との差)が0.5000〜10.0000gで、かつ体積Yが50〜90cm3となる量の複数個の発泡粒子群が使用される。
なお、本明細書において二段発泡する際の発泡粒子の内圧も前記の方法と同様の方法にて測定することができる。
発泡粒子成形体の嵩密度は、次のように測定した。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置した発泡粒子成形体の外形寸法から嵩体積を求めた。次いで該発泡粒子成形体の重量(g)を精秤した。発泡粒子成形体の重量を嵩体積にて除し、単位換算することにより発泡粒子成形体の嵩密度(g/L)求めた。
発泡粒子成形体の表面を肉眼で観察し以下の基準にて評価した。
◎:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙が殆ど認められず、良好な表面状態を示す。
○:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙が著しくはないが認められる。
×:発泡粒子成形体の表面に粒子間隙が著しい。
平板成形型の寸法に対する養生後の発泡粒子成形体の横方向の寸法変化を、下式にて求めた。
収縮率(%)=(1−(養生後の発泡粒子成形体の横方向の最小寸法(mm)/250mm))×100
融着率の測定は、発泡粒子成形体を破断した際の破断面に露出した発泡粒子のうち、材料破壊した発泡粒子の数の割合(融着率)に基づいて行った。具体的には、発泡粒子成形体の表層部及び内部から、各々、縦50mm、横50mm、厚み20mmの試験片を切り出し、カッターナイフで各試験片に約5mmの切り込みを入れた後、切り込み部から発泡粒子成形体を破断させた。次に、発泡粒子成形体の表層部及び内部のそれぞれの破断面に存在する発泡粒子の個数(n)と、材料破壊した発泡粒子の個数(b)を測定し、(b)と(n)の比(b/n)を百分率で表して融着率(%)とした。
発泡粒子成形体から縦50mm、横50mm、厚み25mmの試験片(表皮なし)を切り出し、JIS K6767(1999)に基づき、圧縮速度10mm/分にて試験片を厚み方向に圧縮する圧縮試験を行い発泡粒子成形体の50%圧縮応力を求めた。
発泡粒子成形体の耐熱性を加熱寸法変化率にて評価した。JIS K6767(1999)に記載されている熱的安定性(高温時の寸法安定性・B法)に準拠して、120℃に保ったギアオーブン内に試験片を入れ22時間加熱を行った後取り出し、23℃、相対湿度50%の恒温恒湿室に1時間放置し、加熱前後の寸法より下式を用いて面方向の加熱寸法変化率を求めた。
加熱寸法変化率(%)=(加熱後の寸法−加熱前の寸法)/加熱前の寸法 ×100
Claims (7)
- ポリ乳酸系樹脂発泡粒子であって、該発泡粒子1〜4mgを測定試料として、JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、加熱速度10℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる1回目のDSC曲線と、次いで該融解ピーク終了時よりも30℃高い温度にて10分間保った後、冷却速度10℃/minにて40℃まで冷却し、再度、加熱速度10℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られる2回目のDSC曲線において、該1回目のDSC曲線には、2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度を基準に、該基準の頂点温度よりも高温側(該基準の頂点温度を含まず)に頂点温度を有する融解ピークと、該基準の頂点温度よりも低温側(該基準の頂点温度を含む)に頂点温度を有する融解ピークとが現れると共に該高温側に頂点温度を有する融解ピークの総吸熱量が25J/g以下である結晶構造を有することを特徴とするポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
- 前記基準の頂点温度よりも高温側に頂点温度を有する融解ピークの総吸熱量が、1〜15J/gであることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
- JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して下記の条件1にて求められる前記発泡粒子表層の吸熱量(Brs:endo)[J/g]及び前記発泡粒子中心部の吸熱量(Brc:endo)[J/g]が下記(1)式を満足することを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
(Brc:endo)>(Brs:endo)≧0 ・・・(1)
条件1
[測定試料の調整]
(発泡粒子表層の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面を含む表層部分を切削処理して表層部分を集めて測定試料とする。なお、切削処理にあたっては1個の発泡粒子の表面全面から、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/6〜1/4の重量の測定試料を採取することとする。
(発泡粒子中心部の吸熱量測定試料)
発泡粒子の表面全面を切削除去し、切削処理前の発泡粒子の粒子重量の1/5〜1/3の重量となる発泡粒子残部を測定試料として採取することとする。
[吸熱量の測定]
それぞれの吸熱量、(Brs:endo)と(Brc:endo)の測定値は、前記発泡粒子表層の吸熱量測定試料または前記発泡粒子中心部の吸熱量測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、冷却速度2℃/minにて110℃まで冷却し、その温度に120分間保った後、冷却速度2℃/minにて40℃まで冷却する熱処理後、再度、加熱速度2℃/minにて融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線に基づいて求められる値とする。 - JIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して下記の条件2にて求められる前記発泡粒子中心部の吸熱量(Bfc:endo)[J/g]と発熱量(Bfc:exo)[J/g]とが下記(2)式を満足することを特徴とする請求項3に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
40>[(Bfc:endo)−(Bfc:exo)]>10 ・・・(2)
条件2
[吸熱量および発熱量の測定]
吸熱量(Bfc:endo)と発熱量(Bfc:exo)の測定値は、前記条件1の発泡粒子中心部の吸熱量測定試料の調整方法と同様にして採取された発泡粒子中心部の測定試料1〜4mgをJIS K7122(1987)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して、加熱速度2℃/minにて23℃から融解ピーク終了時よりも30℃高い温度まで加熱溶融させる際に得られるDSC曲線に基づいて求められる値とする。 - ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の見かけ密度が25〜400g/Lであることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
- ポリ乳酸系樹脂発泡粒子の平均気泡径が30〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂発泡粒子を型内成形してなる嵩密度15〜300g/Lのポリ乳酸系樹脂発泡粒子成形体。
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