本発明を図面に基づいて説明する。
[実施例1]
(1)画像形成装置の全体構成:図1は本発明に係る像加熱装置を搭載する画像形成装置の一例の横断面模式図である。この画像形成装置は電子写真方式のカラープリンタである。
本実施例1に示す画像形成装置は、画像形成装置の内部に並設されている第1、第2、第3、第4の画像形成部Py,Pm,Pc,Pbによって色の異なる4色のトナー像を帯電、露光、現像、転写の各プロセスを経て形成できるようになっている。
本実施例1の画像形成装置は、ホストコンピュータなどの外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて所定の画像形成シーケンスに従い画像形成動作を開始する。すなわち、各画像形成部Py,Pm,Pc,Pbが順次駆動され、像担持体としての感光ドラム1が矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転される。各画像形成部Py,Pm,Pc,Pbの感光ドラム1に跨るように駆動ローラ6aと従動ローラ6bとテンションローラ6cに掛け渡されている中間転写ベルト7は、駆動ローラ6aによって矢印方向へ各感光ドラム1の回転周速度と対応した周速度で回転される。
まず1色目のイエローの画像形成部Pyにおいて、感光ドラム1の表面は帯電器2によって所定の極性・電位に一様に帯電される。次に露光装置3が外部装置からの画像情報に応じたレーザ光を感光ドラム1表面の帯電面に走査露光する。これにより感光ドラム1表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そしてその潜像が現像装置4によってイエローのトナー(現像剤)を用いて現像され、感光ドラム1表面上にイエローのトナー画像(現像像)が形成される。つまり、感光ドラム1は、感光ドラム1表面にトナー画像を担持する。同様の帯電、露光、現像の各工程が、2色目のマゼンタの画像形成部Pm、3色目のシアンの画像形成部Pc、4色目のブラックの画像形成部Pbにおいても行われる。各画像形成部Py,Pm,Pc,Pbにおいて感光ドラム1表面に形成された各色のトナー画像は、中間転写ベルト7を挟んで各感光ドラム1と対向配置されている一次転写ローラ8によって中間転写ベルト7の外周面(表面)上に順番に重ねて転写される。
一方、給送カセット10から記録材Pが送り出しローラ11によりレジストローラ12に送られる。次いで記録材Pはレジストローラ12によって中間転写ベルト7と二次転写ローラ(転写部材)13間の二次転写ニップ部に搬送される。その記録材Pは二次転写ニップ部で中間転写ベルト7と二次転写ローラ13とにより挟持搬送され、その搬送過程において二次転写ローラ13により中間転写ベルト7表面上のフルカラーのトナー像が記録材Pの面上に転写される。これにより記録材Pには記録材Pの面上に未定着のフルカラーのトナー画像(トナー像)が担持される。そしてその記録材Pは記録材搬送方向上流側の像加熱ユニットとしての第1定着器14と記録材搬送方向下流側の像加熱ユニットとしての第2定着器15に順次導入される。そして第1定着器14と第2定着器15を通過することによって未定着のトナー画像は記録材P上に加熱定着される。そしてその記録材Pは画像形成装置外の排出トレイ16に排出される。
トナー像転写後の感光ドラム1は、感光ドラム1表面に残留している転写残トナーがドラムクリーナ5によって除去され、次の画像形成に供される。フルカラーのトナー像転写後の中間転写ベルト7は、中間転写ベルト7表面に残留している転写残トナーがベルトクリーナ9によって除去され、次の画像形成に供される。
(2)第1定着器と第2定着器の説明:以下の説明において、定着器及びこの定着器を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向をいう。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。長さとは長手方向の寸法をいう。幅とは短手方向の寸法をいう。記録材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向をいう。長さとは長手方向の寸法をいう。
図2は本実施例1の画像形成装置が搭載するタンデムタイプの定着装置(像加熱装置)を構成している第1定着器と第2定着器の横断面模式図である。図3は本実施例1の定着装置の第1定着器と第2定着器との間で動作するループセンサフラグの動作説明図である。図4は本実施例1の定着装置の第1定着器と第2定着器を定着ローラの上方側から見た上面図である。
本実施例1に示す第1定着器14と第2定着器15は何れも熱ローラ方式の定着器である。第1定着器14は、定着ローラ(加熱回転体)21と、加圧ローラ(加圧回転体)22と、ハロゲンヒータ(加熱部材)23などを有している。定着ローラ21、加圧ローラ22及びハロゲンヒータ23は何れも長手方向に長い部材である。定着ローラ21は、外径φ30.0mmのFeから成る円筒状芯金21aの外周面上に厚み1.0mmのシリコーンゴムからなる弾性層21bが設けられている。そしてそのシリコーンゴムの外周面を離型性層21cとしての厚み30μmのPFAチューブにより被覆している。この定着ローラ21の外径はおよそφ32mmである。定着ローラ21の下方において定着ローラ21と並列に配置されている加圧ローラ22は、外径φ20mmのFeから成る棒状芯金22aの外周面上に厚み5mmのシリコーンゴムから成る弾性層22bが設けられている。そしてその弾性層22bの外周面を離型性層22cとしての厚み30μmのPFAチューブにより被覆している。この加圧ローラ22の外径はおよそφ30mmである。定着ローラ21と加圧ローラ22は、それぞれ、芯金21a,22aの長手方向両端部が定着装置のフレーム(不図示)に軸受(不図示)を介して回転自在に支持されている。そして加圧ローラ22の軸受を加圧ばねなどの加圧部材(不図示)により総圧392N(40kgf)の加圧力で定着ローラ21の母線方向と直交する方向へ付勢することによって加圧ローラの弾性層22bを定着ローラ21の長手方向に沿って弾性変形させている。これにより定着ローラ21の外周面(表面)と加圧ローラ22の外周面(表面)との間に所定幅のニップ部Nを形成している。定着ローラ21の芯金21aの内部に配設されているハロゲンヒータ23は、ハロゲンヒータ23の長手方向両端部の口金部(不図示)がフレームに支持されている。第2定着器15は、第1定着器14と同じ構成としてある。本実施例1では、第1定着器14と同じ部材・部分に同一の符号を付して再度の説明を省略する。
第1定着器14と第2定着器15のニップ部N・N間の距離は、本実施例1の画像形成装置に使用可能な各種サイズの記録材Pのうち所定の大サイズの記録材(以下、大サイズ記録材と記す)Paの長さよりも小さい。本実施例1では、第1定着器14と第2定着器15のニップ部間の距離を90mmに設定してタンデムタイプの定着装置の小型化を図っている。大サイズ記録材Paの長さは450mmである。従って大サイズ記録材Paが担持する未定着のトナー画像tの加熱定着を行う場合には、図3に示すように、大サイズ記録材Paは記録材搬送方向の先端部側が第2定着器15のニップ部Nに、後端部側が第1定着器14のニップ部Nに、それぞれ挟持される。そして大サイズ記録材Paはその状態に搬送される。大サイズ記録材Paを第1定着器14と第2定着器15のニップ部N・Nで挟持しその状態に搬送するため、第1定着器14と第2定着器15との間で大サイズ記録材Paが引っ張られたり、撓んだりすることがある。大サイズ記録材Paが引っ張られたり、或いは撓み過ぎたりすることに起因して、第1定着器14で大サイズ記録材Paの面上に加熱定着されている定着画像に剥がれや欠損などの画像劣化が発生する可能性がある。本実施例1では、画像劣化の発生を防止するために、大サイズ記録材Paの撓み量(ループ量)をループセンサ31(図3)で検知し、これに応じて第2定着器15の定着ローラ21の回転速度を後述のように変更するようにしている。
(3)第1定着器と第2定着器の加熱定着動作:図2と図3を参照して、未定着のトナー画像tを担持する大サイズ記録材Paにトナー画像tを加熱定着する場合を説明する。CPUとROMやRAMなどのメモリとからなる制御部(制御手段)50は、プリント指令に応じて、第1定着モータM1(図4)と第2定着モータM2(図4)を略同時に駆動する。制御部50では、第2定着モータM2を駆動するに当り、第2定着モータM2の回転速度を第1定着モータM1の回転速度よりも遅くするための所定の制御を実行している。第1定着モータM1の駆動により出力軸の回転が減速ギア列(不図示)を介して第1定着器14の定着ローラ21に伝達され、これにより定着ローラ21が所定の回転速度で矢印方向へ回転する。また第2定着モータM2の駆動により出力軸の回転が減速ギア列(不図示)を介して第2定着器15の定着ローラ21に伝達され、これにより定着ローラ21が第1定着器14の定着ローラ21の回転速度よりも遅い回転速度で矢印方向へ回転する。本実施例1では、感光ドラム1、中間転写ベルト7及び第1定着器14の定着ローラ21の回転速度(プロセススピード)を135mm/secに設定している。従って第2定着器15の定着ローラ21の回転速度Vbは、第1定着器14の定着ローラ21の設定回転速度(135mm/sec)Vaよりも遅くなっている。
第1定着器14及び第2定着器15において、定着ローラ21の回転はニップ部Nを通じて加圧ローラ22に伝達される。これによって加圧ローラ22は定着ローラ21の回転に追従して定着ローラ21の回転速度Va,Vbと等しい回転速度で矢印方向へ回転する。ハロゲンヒータ23には所定の給電制御部(不図示)から給電され、これによりハロゲンヒータ23は点灯して発熱する。ハロゲンヒータ23の発熱により定着ローラ21は芯金21aの内側から加熱される。加熱された定着ローラ21の表面温度は定着ローラ21の表面近傍に設けられているサーミスタなどの温度検知部材(不図示)によって検知され、その温度検知部材の出力信号を制御部50が取り込む。制御部50は温度検知部材の出力信号に基づいて、定着ローラ21の表面温度が所定の定着温度(目標温度)を維持するように給電制御部の制御を行う。本実施例1では定着温度を170℃に設定している。
第1定着モータM1及び第2定着モータM2が駆動され、ハロゲンヒータ23に給電している状態において、第1定着器14のニップ部Nに未定着のトナー画像tを担持した大サイズ記録材Paが導入される。この大サイズ記録材Paは、第1定着器14のニップ部Nで定着ローラ21表面と加圧ローラ22表面により挟持されその状態に搬送される。その搬送過程においてトナー画像tに定着ローラ21の熱とニップ部Nのニップ圧が付与され、そのトナー画像tは定着ローラ21の熱により加熱されるとともにニップ圧により加圧される。これによってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の多重トナー画像が溶融混色するとともにその溶融混色したトナー画像に定着ローラ21表面の光沢が転写されフルカラー画像として大サイズ記録材Paの面上に加熱定着される。そしてトナー画像tが加熱定着された大サイズ記録材Paは、大サイズ記録材Paの先端部側から第1定着器14のニップ部Nより排出された後に第2定着器15のニップ部Nへと導入される。第2定着器15のニップ部Nでは大サイズ記録材Paの先端部側が定着ローラ21表面と加圧ローラ22表面とにより挟持されその状態に搬送される。つまり、大サイズ記録材Paは、大サイズ記録材の先端部側が第2定着器15の定着ローラ21表面と加圧ローラ22表面とにより挟持され、後端部側が第1定着器14の定着ローラ21表面と加圧ローラ22表面とにより挟持されその状態に搬送される(図3)。
ここで、第1定着器14と第2定着器15との間で大サイズ記録材Paが引っ張られたり、撓み過ぎたりしないように制御部50によって第2定着器15の定着ローラ21の回転速度を変更する制御を説明する。上述の大サイズ記録材Paの搬送過程において、第2定着器15の定着ローラ21の回転速度Vbが第1定着器14の定着ローラ21の設定回転速度Vaよりも遅くなっているため、大サイズ記録材Paは第1定着器14と第2定着器15との間で撓み始める。その大サイズ記録材Paの撓み量は搬送量が増すに連れて徐々に大きくなる。そして大サイズ記録材Paの撓み量が所定の撓み規制量を超えたとき、大サイズ記録材の非画像担持面側に設けられているループセンサフラグ25に大サイズ記録材Paが接触してループセンサフラグ25を一点鎖線にて示すように回転させるよう動作させる。ループセンサフラグ25は回転することによってループセンサ26の検知領域に進入し、そのループセンサフラグ25をループセンサ26が検知して信号を出力する。制御部50は、ループセンサ26からの出力信号を取り込み、その出力信号に基づいて第2定着モータM2の回転速度を第1定着モータM1の回転速度よりも速くするための所定の制御を実行する。これにより第2定着器15の定着ローラ21の回転速度Vbが第1定着器14の定着ローラ21の設定回転速度Vaよりも速くなり、大サイズ記録材Paの第2定着器15による先端部側の搬送量が第1定着器14による後端部側の搬送量よりも大きくなる。そのため大サイズ記録材Paは搬送中に第1定着器14と第2定着器15とにより記録材搬送方向に引っ張られてループセンサフラグ25から離れる。大サイズ記録材Paが離れることに応じてループセンサフラグ25は一点鎖線の位置から実線にて示す元の位置まで回転しループセンサ26の検知領域から退避し、これによってループセンサ26は信号の出力を停止する。制御部50は、ループセンサ26から信号が出力されないことに基づいて第2定着モータM2の回転速度を第1定着モータM1の回転速度よりも遅くするための所定の制御を再度実行する。これにより第2定着器15の定着ローラ21の回転速度Vbが第1定着器14の定着ローラ21の設定回転速度Vaよりも遅くなり、大サイズ記録材Paの第2定着器15による先端部側の搬送量が第1定着器14による後端部側の搬送量よりも小さくなる。そのため大サイズ記録材Paは搬送中に第1定着器14と第2定着器15との間で再び撓み始める。そして大サイズ記録材Paの撓み量が所定の撓み規制量を超えると、大サイズ記録材Paは再びループセンサフラグ25と接触してループセンサフラグ25を回転させるよう動作させる。ループセンサ26は、ループセンサフラグ25がループセンサ26の検知領域に再び進入したことを検知し信号を出力する。制御部50は、ループセンサ26からの出力信号に基づいて第2定着モータM2の回転速度を第1定着モータM1の回転速度よりも速くするための所定の制御を再度実行する。このように制御部50は、大サイズ記録材Paの後端部側が第1定着器14のニップ部Nから排出されるまで上述の2つの所定の制御を交互に実行することによって第2定着器15の定着ローラ21の回転速度を変更している。これによって第1定着器14と第2定着器15との間で大サイズ記録材Paが引っ張られたり、撓み過ぎたりすることに起因して発生する画像劣化を防止できる。
第2定着器15のニップ部Nでは、定着ローラ21表面と加圧ローラ22表面により大サイズ記録材Paを大サイズ記録材Paの先端部側から挟持しその状態に搬送する。その搬送過程において、大サイズ記録材Paの面上に加熱定着されている定着トナー画像taに定着ローラ21の熱とニップ部Nのニップ圧が付与され、その定着トナー画像tは定着ローラ21の熱により加熱されるとともにニップ圧により加圧される。その定着トナー画像taは定着ローラ21の熱により加熱され軟化し、その軟化した定着トナー画像taにはニップ圧によって定着ローラ21表面の光沢が転写される。これによる定着トナー画像taの表面に光沢が付与される。第2定着器15のニップ部Nで定着トナー画像taの表面に光沢が付与された大サイズ記録材Paはニップ部Nから排出される。
(4)大サイズ記録紙のアコーディオン変形の発生を防止するための構成:本実施例1の画像形成装置は、画像形成装置に動作異常が発生した場合に、制御部50より第1定着モータM1と第2定着モータM2とに略同時に駆動停止信号を出力する。画像形成装置の動作異常の例として、例えば画像形成装置内で紙詰まりが発生したとき、定着温度異常が発生したとき、各種モータの動作異常が発生したときなどがある。本実施例1では、画像形成装置内で紙詰まりが発生したとき、第1定着モータM1と第2定着モータM2とに略同時に駆動停止信号を出力して第1定着モータM1と第2定着モータM2の駆動を停止する場合を説明する。記録材Pの紙詰まりを検知するために、複数の紙詰まりセンサ(不図示)をカセット給送部や2次転写ニップ部前後の搬送経路に配設している。複数の各紙詰まりセンサは記録材Pの先端と後端を検知する毎に信号を出力し、制御部50は各紙詰まりセンサからの出力信号を取り込む。制御部50では、所定のタイミングの範囲で各紙詰まりセンサから出力信号を取り込んでいるか否かを監視する。そして所定のタイミングの範囲で出力信号を取り込んでいる場合に、記録材ジャム(紙詰まり)は発生していないと判断する。所定のタイミングの範囲で出力信号を取り込んでいない場合には、記録材ジャムが発生したと判断し、第1定着モータM1と第2定着モータM2に同時に或いは略同時に駆動停止信号を出力して第1定着モータM1と第2定着モータM2の駆動を停止する。例えば複数の大サイズ記録材Paに連続して画像形成を行っている途中で、第1定着モータと第2定着モータに同時に或いは略同時に駆動停止信号を出力しても、第1定着器14の定着ローラ21が第2定着器15の定着ローラ21よりも先に停止することがある。このとき、大サイズ記録材Paが第1定着器14と第2定着器15のニップ部N,Nに挟持されていると、前述したように第1定着器14がその大サイズ記録材を第2定着器15に向けて送り出すため、その大サイズ記録材はアコーディオン形状に変形してしまう。
そこで、本実施例1では、第2定着器15の定着ローラ21の芯金21aの長手方向一端部に、定着ローラ21の駆動慣性力をあげるための部材としてフライホイール27を設けている。これにより、第2定着器15が大サイズ記録材の搬送動作を停止するときの定着ローラと加圧ローラの回転における慣性力を、第1定着器14が大サイズ記録材の搬送動作を停止するときの定着ローラと加圧ローラの回転における慣性力よりも大きくできる。従って、第1定着モータM1と第2定着モータM2に対して同時に或いは略同時に駆動停止信号を出力しても、第1定着器14の定着ローラと加圧ローラの回転動作が終了した後に第2定着器15の定着ローラと加圧ローラの回転動作が終了する。つまり、第1定着モータM1と第2定着モータM2に対して同時に或いは略同時に入力された駆動停止信号に対して、第2定着器15が第1定着器14より遅く搬送動作を停止する。このため、大サイズ記録材Paが第1定着器14と第2定着器15のニップ部N,Nに挟持されていても、第1定着器14がその大サイズ記録材を第2定着器15に向けて送り出すことを防止できる。よって、第1定着器14と第2定着器15との間での大サイズ記録材Paのアコーディオン変形の発生を防止できる。
第2定着器15の定着ローラ21の駆動慣性力をあげるための部材はフライホイール27に限られず定着ローラ21自体の重量を第1定着器14の定着ローラ21よりも増大させて第2定着器15の定着ローラ21の駆動慣性力をあげるようにしてもよい。
[実施例2]
タンデムタイプの定着装置の他の例を説明する。本実施例2では、説明の簡略化のため、実施例1のタンデムタイプの定着装置と同じ部材及び部分に同一の符号を付して再度の説明を省略する。実施例3、実施例4においても同様とする。図5は本実施例2の定着装置の第1定着器と第2定着器の横断面模式図である。図6は本実施例2の定着装置の第1定着器の離間機構による加圧ローラの動作説明図である。
本実施例2の定着装置は、第2定着器にフライホイールを設けていない点、及び第1定着器の定着ローラと加圧ローラとを離間させる手段としての離間機構を第1定着器に設けた点を除いて、実施例1の定着装置と同じ構成としてある。図5において28は第1定着器14の加圧ローラ22の芯金22aの長手方向両端部に設けられている軸受である。軸受28はフレームに上下方向(記録材搬送方向と直交する方向)に移動自在に支持されている。離間機構30は、軸受28を付勢する加圧部材29を支持している揺動可能なレバー31と、そのレバー31を加圧ローラ22に対して揺動させる円盤状の回転式偏心カム32と、を有している。回転式偏心カム32の所定の偏心位置にはカム軸32aが設けられており、回転式偏心カム32はそのカム軸32aを介してカムモータM3により回転される。カムモータM3は制御部50により駆動され、そのカムモータM3の駆動によって回転式偏心カム32は所定の停止位置から一定量回転して停止される。このときの回転式偏心カム32の停止位置は回転式偏心カム32の外周カム面32bにおいてカム軸32aから最も遠く離れた領域32b1がレバー31と接触する位置である(図5)。その回転式偏心カム32の回転に応じてレバー31は所定の停止位置から支軸31aを支点として加圧ローラ22側に向けて一定量揺動して停止する。このレバー31の揺動に応じて加圧部材29が軸受28を定着ローラ21の母線方向と直交する方向へ付勢することにより加圧ローラ22の弾性層22bを定着ローラ21の長手方向に沿って弾性変形させている。これにより加圧ローラ22表面と定着ローラ21表面との間に所定幅のニップ部Nを形成している。
紙詰まりが発生したときの緊急停止時には、制御部50は第1定着モータM1と第2定着モータM2とに同時に或いは略同時に駆動停止信号を出力し、その駆動停止信号の出力と同時に或いは略同時にカムモータM3に駆動信号を出力する。カムモータM3は制御部50からの駆動信号により駆動され、そのカムモータM3の駆動によって回転式偏心カム32は図5にて示す停止位置から一定量回転して停止する。このときの回転式偏心カム32の停止位置は回転式偏心カム32の外周カム面32bにおいてカム軸32aから最も近い領域32b2がレバー31と接触する位置である。その回転式偏心カム32の回転に応じてレバー31は図5にて示す停止位置から支軸31aを支点として加圧ローラ22と反対側に向けて一定量揺動して停止する。このレバー31の揺動に応じて加圧部材29が軸受28を牽引し加圧ローラ22を定着ローラ21から引き離して離間させる。加圧ローラ22が定着ローラ21から離間することにより、定着ローラ21表面と加圧ローラ22表面とによる大サイズ記録な材Paの挟持状態が解除されるため、第1定着器14による大サイズ記録材Paの搬送動作は終了する。従って、第1定着モータM1と第2定着モータM2に対して略同時に駆動停止信号を出力するとともに第1定着器14の加圧ローラ22と定着ローラ21との離間が行われるので、第2定着器15が第1定着器14より遅く搬送動作を停止する。つまり、第1定着モータM1と第2定着モータM2に対して同時に或いは略同時に入力された駆動停止信号に対して、第2定着器15が第1定着器14より遅く搬送動作を停止する。よって、本実施例2の定着装置においても実施例1の定着装置と同じ作用効果を得ることができる。
[実施例3]
タンデムタイプの定着装置の他の例を説明する。図7は本実施例3の定着装置の第1定着器と第2定着器の横断面模式図である。
本実施例3の定着装置は、第2定着器にフライホイールを設けていない点、第1定着器の加圧ローラに代えてエンドレスベルトを用いた点、及びそのエンドレスベルトの内側に加圧パッドを配した点を除いて、実施例1の定着装置と同じ構成としてある。
加圧回転体としてのエンドレスベルト41は、長手方向に長い筒状の可撓性筒状であり、ポリイミド等の耐熱樹脂材料、またはSUS等の金属材料からなっている。このエンドレスベルト41の外径はおよそφ30mmである。そしてエンドレスベルト41の長手方向両端部はフレームに設けられているエンドレスベルト保持用のフランジ(不図示)によって回転自在に保持されている。パッド部材としての加圧パッド42は、長手方向に長い部材であり、シリコーンゴム等の耐熱弾性体からなっている。この加圧パッド42の長手方向両端部は上記フランジを介してフレームに支持されている。そしてその加圧パッド42の長手方向両端部を加圧部材(不図示)によって定着ローラ21の母線方向と直交する方向に付勢している。これにより加圧パッド42はエンドレスベルト41の外周面(表面)を定着ローラ21表面に加圧し、これによってエンドレスベルト41が定着ローラ21の長手方向に沿って変形する。これにより定着ローラ21表面とエンドレスベルト41表面との間に所定幅のニップ部Nを形成している。
紙詰まりが発生したときの緊急停止時には、制御部50は第1定着モータM1と第2定着モータM2とに同時に或いは略同時に駆動停止信号を出力して第1定着モータM1と第2定着モータM2の駆動を停止する。第1定着モータM1に駆動停止信号を出力してから第1定着モータM1の駆動が停止する間、第1定着器14の定着ローラ21とエンドレスベルト41は減速回転を行う。また第2定着モータM2に駆動停止信号を出力してから第2定着モータM2の駆動が停止する間、第2定着器15の定着ローラ21と加圧ローラ22は減速回転を行う。このとき減速回転を行っているエンドレスベルト41には加圧パッド42の加圧力が制動力(ブレーキ力)として作用する。従って、第1定着モータM1と第2定着モータM2に対して同時に或いは略同時に駆動停止信号を出力しても、第1定着器14の定着ローラとエンドレスベルトの回転動作が終了した後に第2定着器15の定着ローラと加圧ローラの回転動作が終了する。つまり、第1定着モータM1と第2定着モータM2に対して同時に或いは略同時に入力された駆動停止信号に対して、第2定着器15が第1定着器14より遅く搬送動作を停止する。よって、本実施例3の画像形成装置においても実施例1の画像形成装置と同じ作用効果を得ることができる。
本実施例3の定着装置は、上述の構成の定着装置に限られず第1定着器14の定着ローラに代えてエンドレスベルトを用いるとともにそのエンドレスベルトの内側に加圧パッドを配する構成を採用しても、上述の構成の定着装置と同様の作用効果を得られる。
[実施例4]
タンデムタイプの定着装置の他の例を説明する。図8は本実施例4の定着装置の第1定着器と第2定着器を定着ローラの上方側から見た上面図である。図8は本実施例4の定着装置の第1定着器と第2定着器を定着ローラの上方側から見た上面図である。
本実施例4の定着装置は、第2定着器にフライホイールを設けていない点、及び第1定着モータの停止能力を第2定着モータの停止能力よりも高めた点を除いて、実施例1の定着装置と同じ構成としてある。
第1定着モータM1の停止能力を高める停止方法として、1つは、意図的に定着モータM1を逆回転するように電流を流すことで、矢印方向に回転している定着ローラ21に対して急ブレーキ効果をもたらす逆転ブレーキがある。逆転ブレーキは定着モータM1に対する減速効果(停止能力)が最も大きい。他の1つは、定着モータM1の駆動電流が流れる回路をモータ内部でショートさせることで、駆動電流をOFFした後に惰性で回り続ける出力軸が発生させる起電力によりブレーキ効果をもたらすショートブレーキがある。ショートブレーキは逆転ブレーキに比べると減速効果は大きくない。そして他の1つは、単に定着モータM1を流れる電流をOFFすることで、定着モータM1に対するいかなる減衰機構も用いないで自然に停止させる方法もある。通常、上記のように定着駆動モータの停止時間は電流OFF>ショートブレーキ>逆転ブレーキとなる。本実施例4では、第1定着モータの停止方法にショートブレーキを、第2定着モータM2の停止方法に電流OFFを、それぞれ用いた。
紙詰まりが発生したときの緊急停止時には、制御部50は第1定着モータM1と第2定着モータM2とに同時に或いは略同時に駆動停止信号を出力して第1定着モータM1と第2定着モータM2の駆動を停止する。そのとき、第1定着モータM1は、図9に示すように、SW1がモータ駆動結線側P1からショートブレーキ結線側P2へ切り替わり、出力軸の惰性回転により発生する、誘導起電力が短絡され、電気子巻き線に電流が流れる。このときの電流の方向は回転中とは逆方向になるので、第1定着モータM1にはブレーキ力が加わり、第1定着器14の停止時間が早くなる。また、第2定着モータM2は、スイッチがOFFされるだけなので、出力軸の惰性回転により惰性で第2定着器15の定着ローラ21と加圧ローラ22は回転し、やがて停止する。その結果、第2定着器15が第1定着器14より遅く搬送動作を停止する。つまり、第1定着モータM1と第2定着モータM2に対して同時に或いは略同時に入力された駆動停止信号に対して、第2定着器15が第1定着器14より遅く搬送動作を停止する。よって、本実施例4の定着装置においても実施例1の定着装置と同じ作用効果を得ることができる。
本実施例4の定着装置は、上述の構成の定着装置に限られず第1定着駆動モータの停止時間が第2定着駆動モータの停止時間よりも短くなるように所定の回路を用いる構成を採用しても、上述の構成の定着装置と同様の作用効果を得られる。
実施例1〜4の定着装置では、紙詰まりが発生したときの緊急停止時に第2定着器が第1定着器より遅く搬送動作を停止しているが、緊急停止時は紙詰まりが発生したときに限られず定着温度異常、或いは各種モータの動作異常などが発生したときでもよい。