例えば、電子写真式の画像形成装置の中には、ドラム状やベルト状の感光体の回転とともに、その感光体上に帯電、書込みを行って静電潜像を形成して後、現像装置でトナーを付着することにより可視像化してトナー画像を形成し、そのトナー画像を転写定着ベルト状の中間転写体に一次転写し、その中間転写体を介して間接的に二次転写して、搬送する用紙、OHPフィルム等の記録材に画像を記録するものがある。
例えば図12に示すように、画像担持装置Aの像担持ベルト1で担持する画像を第1転写ニップ位置aで、転写定着ベルト装置Bの転写定着ベルト2に一次転写し、その転写定着ベルト2で保持する画像を第2転写ニップ位置bで二次転写装置Cにより、矢示方向に搬送する記録材3に二次転写し、像担持ベルト1から記録材3へと画像を転写と同時に定着するものがある。
このような画像形成装置にあっては、転写定着ベルト2としてシームレスのものを使用すると、高価となることから、継ぎ目4のある転写定着ベルト2を使用してコストの低減を図ることが望まれている。ところが、継ぎ目4は凸状であることから、継ぎ目4のある転写定着ベルト2を使用すると、その継ぎ目4が第1転写ニップ位置aまたは第2転写ニップ位置bを通過するとき、負荷変動を発生して転写定着ベルト2の走行速度が変化し、転写定着ベルト2の安定走行を阻害する。
また、記録材3の先端が第2転写ニップ位置bに進入したり、後端が第2転写ニップ位置bから抜けたりするとき、同様に負荷変動を発生して転写定着ベルト2の走行速度が変化し、転写定着ベルト2の安定走行を阻害する。そして、その安定走行の乱れが、転写定着ベルト2を介して第1転写ニップ位置aに伝達されて転写乱れを生じ、いわゆるショックジターなどの画像ひずみを発生することとなった。
このような問題を解決すべく、転写定着ベルト装置Bを駆動する駆動源の出力を大きくしたり、駆動源の駆動力を伝達する減速機の駆動伝達剛性を高めたりすることが考えられる。また、従来の画像形成装置の中には、転写定着ベルト2を、ばね等で付勢するテンションローラに掛けまわし、そのテンションローラの位置を移動することによりトルク変動を吸収してショックをやわらげることが行われている。
特許第3294342号公報
特開平6‐115752号公報
特開2001‐215805号公報
特開平10‐268595号公報
ところが、駆動源の出力を大きくしたり、減速機の駆動伝達剛性を高めたりするものでは、大きさや重量などが嵩み、コスト高を招くおそれがある。また、転写定着ベルト2をテンションローラに掛けまわすものでは、ショックを吸収する部材の質量が大きくなると、応答性が悪くなって、周波数の高い急激な負荷変動には即座に対応することができず、十分な改善が得られなかった。
そこで、従来のものの中には、第2転写ニップ位置の前後で転写定着ベルトにたるみを生ずるようにその転写定着ベルトの送り速度を制御する駆動制御手段を備え、通常は、第2転写ニップ位置の上流または下流のいずれか一方にたわみを生ずるような速度設定で駆動する一方、第2転写ニップ位置に記録材が進入する直前に上流または下流のいずれか他方にたわみを移行するような速度変動を与えるものがある。
例えば、図13に示す画像転写定着装置500では、作像装置100b・100c・100m・100yでトナー画像を形成して、それぞれのドラム状の感光体10b・10c・10m・10yで担持するトナー画像を、中間転写装置200の中間転写体20に転写し、その中間転写体20で担持するトナー画像を第1転写ニップn1位置で、転写定着ベルト装置700の転写定着ベルト70に一次転写し、その転写定着ベルト70で担持するトナー画像を第2転写ニップn2位置で二次転写装置400の加圧ローラ40により記録材pに二次転写する。
転写定着ベルト装置700では、転写定着ベルト70を小ローラ71と大ローラ72との間にたるみtを持って掛けまわし、小ローラ71を転写定着ベルト70と中間転写体20を介して中間転写装置200の駆動ローラ22に押し当てる一方、大ローラ72を転写定着ベルト70を介して二次転写装置400の加圧ローラ40に押し当ててなる。
そして、転写定着ベルト装置700のまわりには、転写定着ベルト70で担持するトナー画像を加熱する加熱手段73を備え、その加熱手段73でトナー67を加熱して、加熱したトナー画像を二次転写装置400の加圧ローラ40で記録材pに転写して同時に定着する。加熱手段73は、例えばトナー画像を加熱するハロゲンヒータ74と、そのハロゲンヒータ74の熱を転写定着ベルト70に向けて反射する反射板75とで構成してなる。
また、この例では、第1駆動源76の駆動力を減速機77を介して駆動ローラ22に伝達して、従動ローラ23との間に掛けまわす中間転写体20を矢示方向に走行するとともに、第1転写ニップn1位置でその中間転写体20と摩擦接触する転写定着ベルト70を走行する一方、第2駆動源78の駆動力を減速機79を介して大ローラ72に伝達して転写定着ベルト70を矢示方向に走行するとともに、第2転写ニップn2位置でその転写定着ベルト70と摩擦接触する加圧ローラ40を矢示方向に従動回転する。そして、通常時は、第1転写ニップn1位置で転写定着ベルト70を走行する走行速度より、第2転写ニップn2位置で転写定着ベルト70を走行する走行速度を速くし、第2転写ニップn2の下流位置にたわみtを形成する。
ところで、記録材pの搬送方向における第2転写ニップn2の上流位置には、第2転写ニップn2を通過する記録材pを検知するフォトセンサ等の記録材検知手段80を備えてなる。そして、その記録材検知手段80の出力信号を入力する駆動制御手段81を備え、その出力信号に基づき第1駆動源76および第2駆動源78をフィードバック制御する。具体的には、駆動制御手段81では、記録材検知手段80で記録材pを検知したとき、第1転写ニップn1位置で転写定着ベルト70を走行する走行速度と、第2転写ニップn2位置で転写定着ベルト70を走行する走行速度とを等しくするか、または前者より後者を遅くする。
これにより、記録材pが第2転写ニップn2位置に進入する前は、第2転写ニップn2の下流位置で転写定着ベルト70にたわみを発生し、記録材pが第2転写ニップn2位置に進入するときの転写定着ベルト70のトルク変動を吸収する。一方、第2転写ニップn2を通過する記録材pを検知したときは、第1駆動源76および第2駆動源78をフィードバック制御して第2転写ニップn2の上流位置で転写定着ベルト70にたわみを発生し、記録材pが第2転写ニップn2位置を抜けたときの転写定着ベルト70のトルク変動を吸収し、トルク変動により転写定着ベルト70の走行速度が変化してその変化が第1転写ニップn1位置に影響することを有効に阻止することができる。
すなわち、記録材pが第2定着ニップn2に進入すると、転写定着ベルト70の走行速度が遅くなり、速度変動が発生する。このとき、第2転写ニップn2の下流位置で転写定着ベルト70がたわんでいることから、転写定着ベルト70の走行速度が遅くなってもそのたわみ量が変化するだけで第1転写ニップn1位置の転写定着ベルト70の走行速度に何ら影響を及ぼすことはない。
また、記録材pが第2定着ニップn2に進入する前後のタイミングで、転写定着ベルト70の走行速度を遅くすることにより、第2転写ニップn2の上流位置で転写定着ベルト70にたわみを生ずる。この状態で、記録材pの後端が第2転写ニップn2から抜けると、記録材pの走行速度は速くなり、速度変動を発生するが、第2転写ニップn2の上流位置で転写定着ベルト70がたわんでいることから、転写定着ベルト70の走行速度が速くなってもそのたわみ量が変化するだけで第1転写ニップn1位置の転写定着ベルト70の走行速度に何ら影響を及ぼすものではない。
また、図14に示す画像転写定着装置500では、カラー作像装置800の感光体10上のトナー画像を、第1転写ニップn1位置で転写定着ベルト装置700の転写定着ベルト70に一次転写し、その転写定着ベルト70で担持するトナー画像を、第2転写ニップn2位置で二次転写装置400の加圧ローラ40により記録材pに二次転写して同時に定着するものである。
画像担持装置であるカラー作像装置800では、ベルトでもよいが、図示例ではドラムの感光体10のまわりに、イエロ・シアン・マゼンタ・ブラックの4つ現像装置12y・12c・12m・12bを、感光体10に非接触で備える。そして、記録材pにフルカラー画像を記録するときには、感光体10の図中矢示方向の回転とともに、まず不図示の帯電装置で帯電して露光装置で書込みを行うことにより感光体10上に第1色目の静電潜像を形成し、第1色目の現像装置で現像を行って感光体10上に第1色目のトナー画像を形成する。
次いで、1回転後、同様に不図示の帯電装置で帯電して露光装置で書込みを行うことにより感光体10上に第2色目の静電潜像を形成し、第2色目の現像装置で現像を行って感光体10上に、第1色目のトナー画像に重ねて第2色目のトナー画像を形成する。同じように、第3色目、第4色目のトナー画像を形成することにより、感光体10上にフルカラー画像を形成する。図中符号86は、フルカラー画像を形成するトナーを模式的に示す。
転写定着ベルト装置700では、誘導発熱層を有する転写定着ベルト70を、ベルト支持部材である大ローラ72と小ローラ71間に掛けまわしてなり、そのまわりに、誘導コイルを備える誘導加熱装置87を設ける。そして、その誘導加熱装置87の誘導コイルで、図中矢示方向に回転する転写定着ベルト70の誘導発熱層を発熱し、第1転写ニップn1位置で、転写定着ベルト装置700の転写定着ベルト70に一次転写したフルカラー画像を加熱する。
第2転写ニップn2には、図示省略するが、例えば同様に記録材トレイから供給ローラで繰り出した記録材pをレジストローラでタイミングを取って送り込む。そして、その記録材pに、加熱したフルカラー画像を、第2転写ニップn2位置で二次転写装置400の加圧ローラ40により二次転写して加圧し、転写と同時に定着する。
この画像転写定着装置500でも、第1転写ニップn1位置での転写定着ベルト70の走行速度と、第2転写ニップn2位置での転写定着ベルト70の走行速度とを適宜に設定して、第1転写ニップn1位置と第2転写ニップn2位置間で中間転写体20に常にたわみを発生する。
このようにすると、特に画像担持装置であるカラー作像装置800の感光体10で担持する画像を第1転写ニップn1位置で、転写定着ベルト装置700の転写定着ベルト70に一次転写し、その転写定着ベルト70で担持する画像を第2転写ニップn2位置で記録材pに二次転写すると同時に定着するタイプの画像転写定着装置500において、転写定着ベルト70の継ぎ目が転写ニップ位置を通過するときなどに生ずる転写定着ベルト70のトルク変動を、転写定着ベルト70に発生するたわみで吸収し、そのトルク変動により転写定着ベルト70の走行速度が変化してその変化が他方の転写ニップ位置に影響することを有効に阻止することができる。同様に、記録材pが第2転写ニップn2を通過するときに生ずる速度変動も吸収することができる。
ところが、上述したように、転写定着ベルト70に常にたるみを発生すると、ベルト駆動振動やベルトの巻きくせなども加わって、走行する転写定着ベルト70のたわみが変動してベルトが振動し、加熱手段73や誘導加熱装置87との距離を一定に保つことができず、転写定着ベルト70の温度上昇不良や温度ムラを発生するとともに、転写定着ベルト70と、第2転写ニップ位置に進入する記録材pとを重ね合わせるときの交わり角度を一定に保持することができないことから、安定した転写定着を行うことができず、定着不良を生ずる問題があった。
そこで、この発明の第1の目的は、画像担持装置で担持する画像を、第1転写ニップ位置および第2転写ニップ位置で転写しながら、転写定着ベルト装置を介して記録材に転写と同時に定着する画像転写定着装置、またはそれを備える画像形成装置において、たるみを持たせて走行する転写定着ベルトの振動をなくして安定した転写定着を可能とし、定着不良の発生を防止することにある。
ところで、図13に示すような構成とすると、例えば用紙ジャムが発生して転写定着ベルト70の走行が停止されたとき、加熱手段73の電源が遮断されたとしても、ハロゲンヒータ74の余熱と反射板75の反射効果によって転写定着ベルト70が瞬時に燃焼するおそれがあり、火災等に対する安全性に重大な問題があった。また、転写定着ベルト70に巻き付いた記録材pがハロゲンヒート74と反射板75との間に入り込んで、火災等につながるおそれがあるとともに、そのようなおそれを解消するために回避手段を設けると、複雑化、大型化、高コスト化するという不具合があった。
そこで、この発明の第2の目的は、例えば用紙ジャムが発生して転写定着ベルトの走行が停止されたときにも、記録媒体が転写定着ベルトに巻き付くようなことがあったとしても、火災等の発生するおそれをなくして使用の安全性を確保することにある。
このため、請求項1に記載の発明は、上述したこの発明の第1の目的を達成すべく、
ベルト支持部材である一次転写ローラと転写定着ローラとに無端の転写定着ベルトを掛けまわして転写定着ベルト装置を構成し、
前記一次転写ローラ位置で前記転写定着ベルト装置との間に第1転写ニップを形成して画像担持装置を備える一方、前記転写定着ローラ位置で前記転写定着ベルト装置との間に第2転写ニップを形成して二次転写装置を備え、
前記転写定着ローラが駆動されて前記転写定着ベルトが走行され、前記画像担持装置で担持する画像を、前記転写定着ベルトの走行とともにその転写定着ベルトに前記第1転写ニップ位置で一次転写し、その転写定着ベルトで保持する画像を第2転写ニップ位置で、用紙、OHPフィルム等の記録材に二次転写すると同時に定着する画像転写定着装置において、
前記転写定着ベルトを掛けまわして前記第1転写ニップ位置から前記第2転写ニップ位置に向かう前記転写定着ベルトを暖める加熱ローラを備え、
前記第1転写ニップ位置の前後で前記転写定着ベルトにたるみを生ずるようにその転写定着ベルトの送り速度を制御する駆動制御手段を備えるとともに、
前記第1転写ニップ位置から前記第2転写ニップ位置に向かう前記転写定着ベルトに走行負荷を付与する走行負荷付与部材を設けて、その走行負荷付与部材から前記第2転写ニップ位置に向かう前記転写定着ベルトを張り渡してそれらの間のたるみをなくしてなる、ことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、上述したこの発明の第2の目的を達成すべく、請求項1に記載の画像転写定着装置において、前記加熱ローラに熱源を内蔵してなる、ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、上述したこの発明の第1の目的を達成すべく、請求項1または2に記載の画像転写定着装置において、前記走行負荷付与部材として、前記加熱ローラに前記転写定着ベルトを押し付ける摩擦負荷部材を設けてなる、ことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、上述したこの発明の第1の目的を達成すべく、請求項1ないし3のいずれか1に記載の画像転写定着装置において、無端の前記転写定着ベルトに内周側から押し当てて前記転写定着ベルトのたるみを取る加圧手段を備えてなる、ことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、上述したこの発明の第1の目的を達成すべく、請求項4に記載の画像転写定着装置において、前記加圧手段に、回転自在な加圧コロと、それを前記転写定着ベルトに押し当てる弾性部材とを備えてなる、ことを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、上述したこの発明の第1の目的を達成すべく、請求項4に記載の画像転写定着装置において、前記加圧手段として、前記転写定着ベルトに押し当てるスポンジコロを回転自在に備えてなる、ことを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、上述したこの発明の第1の目的を達成すべく、請求項1ないし6のいずれか1に記載の画像転写定着装置において、前記駆動制御手段により、立ち上げ時に、前記第2転写ニップの上流位置で前記転写定着ベルトのたるみをなくすように、その転写定着ベルトの送り速度を制御してなる、ことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、上述したこの発明の第1の目的を達成すべく、請求項1ないし7のいずれか1に記載の画像転写定着装置を備えてなることを特徴とする、画像形成装置である。
請求項1に記載の発明によれば、駆動制御手段により定着ベルトの送り速度を制御して転写定着ベルトにたるみを形成し、その転写定着ベルトのたるみによって、記録材が第2転写ニップ位置を通過するときに、転写定着ベルトに生ずる速度変動を吸収し、またベルトの継ぎ目によって生ずる速度変動も吸収して、第1転写ニップ位置での一次転写ずれを防止することができる。
さらに、走行負荷付与部材で、第2転写ニップ位置に向かう転写定着ベルトに走行負荷を付与することにより、第2転写ニップ位置に向かう転写定着ベルトのたるみをなくし、その転写定着ベルトと、第2転写ニップ位置に進入する記録材とを重ね合わせるときの交わり角度を一定として安定した転写定着を行うことができる。加えて、転写定着ベルトを加熱ローラに密着して転写定着ベルトの浮き上がりをなくし、加熱ローラにより転写定着ベルトを安定して加熱し、温度上昇不良や温度むらなどの不具合の発生をなくすことができる。
請求項2に記載の発明によれば、熱源により加熱された加熱ローラにより転写定着ベルトを間接的に暖めるので、例えば用紙ジャムが発生して転写定着ベルトの走行が停止されたときにも、熱源の余熱によって転写定着ベルトが燃焼するおそれがなく、安全性を保つことができる。
また、加熱ローラに熱源を内蔵する構成とすると、転写定着ベルトに巻き付いた記録材が熱源に触れるようなことがなく、火災等につながるおそれがないとともに、そのようなおそれを解消するための回避手段を設けて複雑化、大型化、高コスト化を招くといった不具合をなくすことができる。
請求項3に記載の発明によれば、走行負荷付与部材として、加熱ローラに転写定着ベルトを押し付ける摩擦負荷部材を設けるので、第2転写ニップ位置に向かう転写定着ベルトを張り渡してたるみをなくし、その転写定着ベルトと、第2転写ニップ位置に進入する記録材とを重ね合わせるときの交わり角度を一定として安定した転写定着を行うことができるとともに、転写定着ベルトを加熱ローラに密着して転写定着ベルトの浮き上がりを押さえ、加熱ローラに密着して加熱効率を向上することができる。
請求項4に記載の発明によれば、無端の転写定着ベルトに内周側から押し当てて転写定着ベルトのたるみを取る加圧手段を備えるので、加圧手段によって、ベルト駆動振動やベルトの巻きくせなどによるベルトのたるみ変動を吸収して加熱ローラに対する密着度合いを一定とすることができる。また、転写定着ベルトのたるみを検出するたるみ量検出手段の検出ばらつきを解消することができる。さらには、転写定着ベルトの両側にウレタン製等のサイドガイドを取り付け、それらのサイドガイドを、転写定着ベルトを掛けまわすローラの両端に当ててベルトの蛇行を防止する構成である場合に、転写定着ベルトのたわみによって、サイドガイドが、転写定着ベルトを掛けまわすローラに乗り上げることを防止することができる。
請求項5に記載の発明によれば、加圧手段に、回転自在な加圧コロと、それを転写定着ベルトに押し当てる弾性部材とを備えるので、転写定着ベルトに対する加圧コロの接触面積を小さくすることにより加圧コロへの熱伝達を少なくして転写定着ベルトの熱損失を低減し、また熱伝達により生ずる、転写定着ベルトの幅方向における温度むらの発生を少なくすることができる。
請求項6に記載の発明によれば、加圧手段として、転写定着ベルトに押し当てるスポンジコロを回転自在に備えるので、コロ軸を加圧する必要なく簡単な構成であり、空気層のある熱伝達係数の低いコロで転写定着ベルトを張り渡すことができる。また、厚紙などの厚さのある記録材が第2転写ニップ位置を通過するとき、反発力の低いスポンジの変形によって速度変動を吸収することができる。
請求項7に記載の発明によれば、駆動制御手段により、立ち上げ時に、第2転写ニップの上流位置で転写定着ベルトのたるみをなくすように、その転写定着ベルトの送り速度を制御するので、第2転写ニップ位置に向かう転写定着ベルトのたるみをなくし、その転写定着ベルトと、第2転写ニップ位置に進入する記録材とを重ね合わせるときの交わり角度を一定として安定した転写定着を行うことができる。加えて、転写定着ベルトを加熱ローラに密着して転写定着ベルトの浮き上がりをなくし、加熱ローラに対する密着を良好として加熱効率を向上し、立ち上げ時間を短くすることができる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項1ないし7のいずれか1に記載の画像転写定着装置を備えてなるので、駆動制御手段により定着ベルトの送り速度を制御して転写定着ベルトにたるみを形成し、その転写定着ベルトのたるみによって、記録材が第2転写ニップ位置を通過するときに、転写定着ベルトに生ずる速度変動を吸収し、またベルトの継ぎ目によって生ずる速度変動も吸収し、第1転写ニップ位置での一次転写ずれを防止することができる。
さらに、走行負荷付与部材で、第2転写ニップ位置に向かう転写定着ベルトに走行負荷を付与することにより、第2転写ニップ位置に向かう転写定着ベルトのたるみをなくし、その転写定着ベルトと、第2転写ニップ位置に進入する記録材とを重ね合わせるときの交差角度を一定として安定した転写定着を行うことができる。加えて、転写定着ベルトを加熱ローラに密着して転写定着ベルトの浮き上がりをなくし、加熱ローラにより転写定着ベルトを安定して加熱し、温度上昇不良や温度むらなどの不具合の発生をなくすことができる。
以下、図面を参照しつつ、この発明の実施の最良形態につき説明する。
図1には、複写機、プリンタ、ファクシミリまたはそれらの複合機などの画像形成装置における内部機構の要部構成を示す。
図示画像形成装置では、複数の作像装置100b・100c・100m・100yでそれぞれの感光体10b・10c・10m・10y上に作像したトナー画像を、画像担持装置である中間転写装置200の中間転写体20に転写し、その中間転写体20上のトナー画像を転写定着ベルト装置300の転写定着ベルト30上に転写し、その転写定着ベルト30上のトナー画像を二次転写装置400で、用紙・OHPフィルム等の記録材pに転写する。
作像装置100としては、中間転写装置200のベルト状中間転写体20の張り渡し方向に沿って、ブラック・シアン・マゼンタ・イエロの4つもの100b・100c・100m・100yを横に並べてタンデム型に備える。各作像装置100b・100c・100m・100yには、ドラム状の感光体10b・10c・10m・10yを互いに平行に並べて設け、ともに同じ反時計まわりに回転可能とする。
そして、各感光体10b・10c・10m・10yのまわりには、それぞれ帯電装置11b・11c・11m・11y、現像装置12b・12c・12m・12y、転写装置13b・13c・13m・13y、感光体クリーニング装置14b・14c・14m・14yを配置する。また、それら4つの各作像装置100上には、露光装置15を備える。
中間転写装置200は、エンドレスベルト状の中間転写体20を、図示例では各1つの駆動ローラ22と従動ローラ23間に掛けまわして図中時計まわりに走行可能に設ける。前述の転写装置13b・13c・13m・13yは、ローラ状で、中間転写体20の内側に設け、感光体10b・10c・10m・10yとの間で中間転写体20を挟んで備える。また、中間転写体20まわりには、図示例では、駆動ローラ22の左に、転写後に中間転写体20上に残留する残留トナーを除去する転写体クリーニング装置25を設け、従動ローラ23の横に転写定着ベルト装置300を配置する。
転写定着ベルト装置300は、無端の転写定着ベルト30を、ベルト支持部材である転写定着ローラ31と一次転写ローラ32とに掛けまわし、さらに加熱ローラ33に適度な巻き付け角度(好適には90度以上)で掛けまわしてなる。加熱ローラ33は、転写定着ベルト30に連れまわりするヒートローラ34に、熱源としてのハロゲンヒータ35を内蔵して構成してなる。
加熱ローラ33には、第2転写ニップn2位置に向かう転写定着ベルト30に走行負荷を付与する走行負荷付与部材として、例えば板ばねよりなる摩擦負荷部材を設けてなる。図示例では、板ばねの先端にコルク材等の摩擦部材を貼り付け、その摩擦部材を直接加熱ローラ33のヒートローラ34に適度な圧力で押し付けてなる摩擦負荷部材36と、板ばねの先端にコルク材等の摩擦部材を貼り付け、その摩擦部材を転写定着ベルト30の画像担持領域外に押し当てて、加熱ローラ33のヒートローラ34に転写定着ベルト30を適度な圧力で押し付けてなる摩擦負荷部材37との双方を設けるが、いずれか一方だけを設けるようにしてもよい。
そして、転写定着ベルト装置300は、転写定着ベルト30および中間転写体20を介して一次転写ローラ32を従動ローラ23に押し当て、画像担持装置である中間転写装置200との間に第1転写ニップn1を形成する。他方、転写定着ベルト30を介して転写定着ローラ31に外側から二次転写装置400の加圧ローラ40を押し当て、転写定着ベルト装置300と二次転写装置400との間に第2転写ニップn2を形成する。
以上のような中間転写装置200や転写定着ベルト装置300の下には、記録材pを積載して収容する記録材トレイ50と、その記録材トレイ50内に積載する記録材pの最上位の記録材の先端に接触して記録材pを上から順に一枚ずつ分離して繰り出す供給ローラ51と、その供給ローラ51で繰り出した記録材pを案内するガイド部材52と、そのガイド部材52で案内する記録材pをタイミングを取って第2転写ニップn2位置へと送り出すレジストローラ53などを備える。
さて、いまこの画像形成装置を用いて記録材pにカラー画像を記録するときは、複写機であれば不図示のスタートスイッチの操作により、プリンタであればホストからの画像信号に基づき、またファクシミリであれば電話回線を通して送られてくる画像信号に基づき、適宜のタイミングで各作像装置100のそれぞれの感光体10、中間転写装置200の中間転写体20、転写定着ベルト装置300の転写定着ベルト30、供給ローラ51などを回転駆動する。
そして、それぞれの感光体10の回転とともに、帯電装置11で感光体10の表面を一様に帯電して後、原稿読取装置からの読取信号やホストからの画像信号や電話回線を通しての画像信号に基づき、露光装置15で書込み光を照射して書込みを行い、感光体10上に静電潜像を形成し、それから現像装置12でそれぞれ別個のトナーを付着してその静電潜像を可視像化し、個々の感光体10上にそれぞれブラック・シアン・マゼンタ・イエロの単色トナー画像を形成する。
各感光体10上の単色トナー画像は、それぞれ転写装置13に所定の転写バイアスを印加して中間転写体20上に順次重ねて転写し、中間転写体20上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の各感光体10は、感光体クリーニング装置14で残留トナーを除去して表面を清掃し、図示しない除電装置で除電することにより初期化して再度の画像形成に備える。
一方、画像担持装置である中間転写体20で担持する合成カラー画像は、転写バイアスを印加することにより第1転写ニップn1位置において転写電界を形成し、第1転写ニップn1位置で転写定着ベルト30上に静電的に一次転写する。このとき、転写バイアスに交流成分またはパルス成分を重畳すると、トナーに及ぼす静電力が振動し、その振動によりトナーの付着力を弱めてトナーを移動しやすくすることができる。画像転写後の中間転写体20は、転写体クリーニング装置25で残留トナーを除去して表面を清掃し、初期化して再度の画像転写に備える。
転写定着ベルト30上に一次転写したトナー画像は、加熱ローラ33で、第1転写ニップn1位置から第2転写ニップn2位置に向かう転写定着ベルト30を暖めることにより溶融する。
他方、供給ローラ51の回転とともに、記録材トレイ50内に積載する記録材pの最上位の記録材pから一枚ずつ分離して繰り出し、ガイド部材52で案内して搬送し、レジストローラ53でタイミングを取って第2転写ニップn2に導く。そして、第2転写ニップn2位置で二次転写装置400の加圧ローラ40に転写バイアスを印加することにより、加熱ローラ33で加熱して溶融した転写定着ベルト30上のトナー画像を、第2転写ニップn2でそこを通過する記録材pに二次転写すると同時に定着し、記録材pにカラー画像を記録する。
なお、以上の説明では、記録材pにカラー画像を記録する場合について説明したが、上述した画像形成装置では、選択された単色モードまたは複数色モードにしたがい、適宜作像装置100のいくつかを選択使用し、モノクロ画像またはカラー画像を任意に形成することができるようになっている。
図2には、転写定着ベルト装置300の詳細構成を示す。
転写定着ベルト装置300には、図1に示す構成に加えて、転写定着ベルト30のたわみ量を検出するたわみ量検出手段として、第2転写ニップn2の下流位置にマイクロスイッチ60を設け、そのマイクロスイッチ60の出力信号に基づき、駆動源61をフィードバック制御する駆動制御手段62を備える。
そして、マイクロスイッチ60のオンオフにより転写定着ベルト30のたわみ量を検出し、それらのマイクロスイッチ60の出力信号を駆動制御手段62に入力して、その駆動制御手段62の出力信号に基づき駆動源61をフィードバック制御し、減速機63を介して転写定着ローラ31を回転することにより転写定着ベルト30の送り速度を制御する。これにより、第1転写ニップn1位置での転写定着ベルト30の走行速度と第2転写ニップn2位置での転写定着ベルト30の走行速度とをゆるやかに異ならしめ、第2転写ニップn2位置の前後で、転写定着ベルト30に2〜4mm程度のたるみを生ずるようにする。また、立ち上げ時には、第2転写ニップn2の上流位置で転写定着ベルト30のたるみをなくすように、その転写定着ベルト30の送り速度を制御する。
このようにすることにより、転写定着ベルト30に生ずるトルク変動を、転写定着ベルト30に発生するたわみで吸収し、そのトルク変動を吸収することで転写定着ベルト30のたわみ量が減少しても、その減少をたわみ量検出手段であるマイクロスイッチ60で検知する。また、第2転写ニップn2位置を記録材pが通過するとき、転写定着ベルト30の走行速度が不安定となってたわみ量が乱れたときも、その乱れをマイクロスイッチ60で検出する。そして、駆動制御手段62で駆動源61をフィードバック制御することにより、たわみ量をゆるやかに元に戻して次のトルク変動発生時にも、そのトルク変動を確実に吸収するようにし、転写定着ベルト30に連続してトルク変動が発生するときにも、一方の転写ニップ位置で生じた転写定着ベルト30のトルク変動が他方の転写ニップ位置に影響することを常に有効に阻止する。
なお、図示例では、たわみ量検出手段であるマイクロスイッチ60を第2転写ニップn2の下流位置に設けたが、これに限らず、第2転写ニップn2の上流位置に設けるなど、たわみ量検出手段を2つ以上設けてもよい。
また、図示例では、無端の転写定着ベルト30に内周側から押し当てて外側に向けて押し、転写定着ベルト30を微弱なテンションで張り渡して転写定着ベルト30のたるみを取る加圧手段90を設ける。
図3には、加圧手段90の一例を示す。
帯板状の本体部91の両端部92を同一方向に折り曲げてその三角形状の一先端頂点にピン93を互いに対向するように形成するとともに、両端部92間の中央に2つのガイド部94を突出して互いに平行に形成し、それらのガイド部94にそれぞれ先端から本体部91に向かう切欠き95を形成してなる。それらの切欠き95にコロ軸96が入り込むようにして両ガイド部94間に加圧コロ97を配置し、互いに対向するピン93とコロ軸96とを両端内に挿入して両端をそれぞれ両端部92とガイド部94に押し当ててコイルスプリング状の弾性部材98を設けてなる。そして、それらの弾性部材98で、加圧コロ97を回転自在に支持するとともに、矢示方向に移動自在に支持して転写定着ベルト30の内周面に軽く押し当て、転写定着ベルト30を微弱なテンションで張り渡し、ショックジターの速度変動を良好に吸収してなる。
なお、図3では、理解を容易とするため、転写定着ベルト30に対して加圧コロ97を大きく示したが、実際の加圧ローラ97は、転写定着ベルト30に対して相対的にもう少し小さく、また転写定着ベルト30の幅方向に複数を備えるようにする。
図4には、加圧手段90の他例を示す。
この例では、コロ軸64まわりにスポンジ65を有するスポンジコロ66を固定位置に回転自在に設け、スポンジ65の周面を転写定着ベルト30の内周面に押し当ててスポンジ65を変形し、スポンジ65の復元力により転写定着ベルト30を微弱なテンションで張り渡し、ショックジターの速度変動を良好に吸収してなる。
ところで、上述した例では、加熱ローラ33に、熱源としてハロゲンヒータ34を内蔵する構成とした。このような構成とすると、ハロゲンヒータ34により加熱された加熱ローラ33により転写定着ベルト30を間接的に暖めることとなるので、例えば用紙ジャムが発生して転写定着ベルトの走行が停止されたときにも、ハロゲンヒータ34の余熱によって転写定着ベルト30が燃焼するおそれがなく、安全性を保つことができる。
また、加熱ローラ33にハロゲンヒータ34を内蔵する構成とすると、転写定着ベルト30に巻き付いた記録材pがハロゲンヒータ34に触れることがなく、火災等につながるおそれがないとともに、そのようなおそれを解消するための回避手段を設けて複雑化、大型化、高コスト化を招くといった不具合をなくすことができる。
しかし、加熱ローラ33に熱源を内蔵する構成に限らず、外部に設ける熱源を用いて外部から加熱ローラを熱するようにしてもよいし、例えば図14に示す例のように転写定着ベルト70に誘導発熱層を設け、転写定着ベルト70のまわりに、誘導コイルを備える誘導加熱装置87を配置し、誘導加熱装置87の誘導コイルで、転写定着ベルト70の誘導発熱層を発熱して転写定着ベルト70上のフルカラー画像を加熱するようにしてもよい。
次に、図5には、第2転写ニップn2の下流側のみにたわみを設けた場合の速度計測例を示す。
上述した図13を用いて説明すると、中間転写体20と転写定着ベルト70は、ともに平均速度、約165mm/secで駆動されている。記録材pの先端が第2転写ニップn2に突入する際は、図5中楕円で囲った部分から判るように、小ローラ71に掛けまわされている転写定着ベルト70の速度が、140mm/sec付近まで遅くなった後、反動で200mm/secまで速度上昇する振動的な速度変動挙動を示す。一方、第1転写ニップn1において、1.5kg/cm2で加圧され、同速にて駆動されている駆動ローラ22近傍の中間転写体20は、ほとんど速度変動を発生していない。このとき、本来同速で駆動されている駆動ローラ22に掛けまわされている中間転写体20と、小ローラ71に掛けまわされている転写定着ベルト70とは、お互いがスリップしながら駆動されている。
図6には、図5をX軸の時間で積分して速度→距離換算にした上で、平均速度と時間を乗じた平均移動距離位置との差分を位置変動としてプロットして示す。
これによると、速度が140mm/sec付近まで遅くなって平均速度に戻る時が位置変動の最大値となり、計測された位置ずれ量、すなわち小ローラ71部と駆動ローラ22部の差分は、図中二点鎖線で示すように、200μm相当の落ち込み(平均移動距離より少なくなる)となった。経験的に位置変動が80μmを越えると、視覚的にジターが目立つようになるため、この位置ずれ量では、著しく目立つショックジター画像となってしまう。
図7には、大ローラ72に掛けまわされている部分の転写定着ベルト70と、小ローラ71に掛けまわされている部分の転写定着ベルト70の速度変動を計測した結果を示す。
これによると、記録材突入による第2転写ニップn2の速度変動が、そのまま第1転写ニップn1に伝達していることが判る。
上記駆動方式では、第2転写ニップn2の加圧力は、定着性を確保するため、7kg/cm2程度の高圧が設定される。一方、第1転写ニップの加圧力は、1.5kg/cm2程度の軽圧でトナー像を転写定着ベルト70に転写することができる。このため、第2転写ニップn2における転写定着ベルトの搬送力(加圧力×摩擦係数)は第1転写ニップの搬送力よりも強大な力になる。このように、駆動状態におけるベルトへの作用力と速度設定を考え合わせると、小ローラ71に掛けまわされている転写定着ベルト70は、常に大ローラ72に引っ張られながら、つまりは助力を得ながら駆動されている。このため、記録材突入によって大ローラ72に掛けまわされている転写定着ベルト70の速度が低下すると、大ローラ72の強大な搬送力が一瞬、消失するため、これにつられて小ローラ71に掛けまわされている転写定着ベルト70の速度も低下する。
幾何学的には、第2転写ニップn2の下流側にたるみtがあれば、これが繰り出されて速度低下が伝達されないように見えるが、実際の駆動状態では、上記のような搬送力の伝達を加味しないと挙動が把握できない。第2転写ニップn2の上流側が張っている状態であると、搬送力の大きな大ローラ72によって、図7に示すようなあたかも一体で駆動されるような速度変動が現れる。
そこで、一層好ましくは、第2転写ニップn2の上流側にもたわみを設けるよう速度制御するとよい。両側にたわみを設ける方式は、ここでは、たわみを検出するセンサの構成を極力簡単にするために、通常の駆動時は、図13における第2転写ニップn2の下流側のみベルトをたわませるものである。
図8には、その速度制御の具体例を示す。
この例では、駆動ローラ22および小ローラ71は、常に一定の速度162mm/secで駆動されている。このため、上述した図13における第1駆動源76は、駆動制御手段81を介して駆動する必要がないため、専用の駆動源を設けることなく、例えば外部の駆動源から駆動伝達手段を介して一定速度で駆動する構成にしてもよい。
通常、記録材pが第2転写ニップn2を通過しないとき、大ローラ72は、駆動ローラ22および小ローラ71より1%程度速い速度(図8では162.9mm/sec)で駆動されている。このため、転写定着ベルト70は、第2転写ニップn2の下流側にたわみtを持たせながら回転駆動される。記録材検知手段80が記録材pの先端を検知すると、大ローラ72は、図8のような速度変動が与えられる。記録材先端が突入してからしばらくの間、大ローラ72の回転速度は、等速:162mm/secより若干遅い速度で回転駆動される。これによって、転写定着ベルト70のたわみは、第2転写ニップn2の下流側から上流側に移行して両側にたわみが生じるようになる。設定速度と等速との差分に時間を乗じた距離が転写定着ベルト70のたわみとなる。これを図8に、変動(μm)として一緒にプロットして一点差線で示している。図中+方向が第2転写ニップn2の下流側へのたわみ、−方向が上流側へのたわみとすると、記録材p先端が第2転写ニップn2に突入する際(約550msec)の変動、すなわち上流側へのたわみは、500μm相当になる。これは、先に述べた記録材突入時の位置変動(速度変動を積分して平均移距離から差し引いた量)である約200μmよりも充分大きいので、大ローラ72の位置変動を上記たわみで吸収することができるようになる。
次に、図9および図10には、比較のため、この例における速度変動と位置変動の結果を示す。
ベルトである中間転写体20と転写定着ベルト70は、ともに平均速度、約165mm/secで駆動されている。記録材pの先端が第2転写ニップn2に突入する際は、図中楕円で囲った部分から判るように小ローラ71部分の速度が150mm/sec付近まで遅くなった後、反動で170mm/secまで速度上昇する振動的な速度変動挙動が現れる。一方、第1転写ニップにおいて1.5kg/cm2で加圧され、同速で駆動されている駆動ローラ22は、ほとんど速度変動を発生していない。
図10には、図6と同様にX軸の時間で積分して速度→距離換算にした上で、平均速度と時間を乗じた平均移動距離位置との差分を位置変動(位置ずれ量)としてプロットして示す。
計測された位置変動、すなわち転写定着ベルト70の位置ずれ量である、小ローラ71と駆動ローラ22の差分は、図中二点鎖線で示すように、50μm相当の落ち込み(平均移動距離より少なくなる)であって、図6の値である200μm相当と比べると、位置ずれ量を大きく低減することができた。以上の位置ずれ量であれば、視覚的にジターが目立つようなことがなく、良好な画像を提供することができる。
図8に示す速度変動は、連続作像時の紙間距離を加えた画像記録1サイクルの間に、先に述べた通常の状態(転写定着ベルト70が第2転写ニップn2の下流側にたわみtを持たせながら回転駆動され、上流にはたわみがない状態。)になるよう制御される。具体的には、図8において紙間距離を加えた2600msecまでの間に位置変動が+、つまりは積算たわみ量が下流側にシフトするように大ローラ72の駆動速度を後半、徐々に速めている。急激な速度変動を避けるため、図8では、0.5%ずつ速度をアップするとともに速度変動時は50msecの加速時間を与えている。そして、最終的に位置変動が+になっていれば、転写定着ベルト70は、通常の状態に復帰でき、連続作像時の2枚目以降も同様の速度制御で同様なたわみを形成することができる。
以上の構成によれば、上記速度設定が安定して継続していれば、転写定着ベルト70のたわみは、特に検出しなくても、連続作像中に常に同じたわみを形成できる。ただし、経時や熱でローラ径が変動した場合はその限りでない。このため、作像中以外の、装置が休止状態の時、ローラ径の変動確認動作を行うようにするとよい。
転写定着ベルト70のたわみを検出するセンサは、上述した図2に示すようなマイクロスイッチ60で、どちらか片側だけでよい。どちらか一方に充分たわませるような速度設定を与えた後、逆方向の速度変動を与える。これによって、転写定着ベルト70のたわみが移行してマイクロスイッチ信号がONからOFFまたはOFFからONに変更される。この変更までの時間を計測することで、ローラ径の変動を検出することができる。変更時間が長くなった場合は、初期設定速度の差が縮まった時、逆に短くなった場合は、初期設定速度の差が広がった場合なので、速度をそれぞれ逆になるよう設定する。
この方式では、以上の速度設定を行った後、しばらくの期間は、同じ速度設定制御で連続作像が行える。
転写定着ベルト70のたわみを常に検出すると、ベルトの剛性が低い場合、不安定要因となることが多い。このため、ベルト検出部材の精度やベルトの安定保持機構が要求される。一方で、上記方式であれば、一定の駆動条件でベルトたわみを検出するので、上記精度や安定保持機構を簡単に(安価に)構成することが可能となる。
さらには、画像形成装置によっては、定期的なメンテナンスサービスが実施されるので、その都度、最適な速度設定を与えるようにメンテナンスされていれば、装置内にセンサを設けなくても経時変化に対応することが可能となる。ベルト剛性が低くてセンサ検出が困難な場合でも、目視によるメンテナンスサービスで速度設定が可能となる。
以上は、記録材の先端突入における速度変動軽減について示したが、これに限るものでなく、後端抜けの速度変動にも同様に適用できる。後端が抜ける場合、大ローラ72回転速度が増加するが、このときのベルト両側のたわみが増速による位置変動より充分大きくなるように速度設定を行えばよい。
図11には、(A)に同一駆動源と同一被駆動体との間に設ける駆動伝達手段を、(B)にその駆動伝達手段を構成するギア群中の一方のアイドラギアの構成を示す。
図中符号190は、駆動ギアであり、駆動軸198のまわりに2種類の歯数が刻まれた歯部190−1、190−2を有する2段ギアである。駆動ギア190は、直接またはさらなる駆動伝達手段を介して第2駆動源78であるモータで駆動される。歯部190−1、190−2には、各々噛み合うようにアイドルギア191、192が配置され、両アイドルギア191、192から等距離の噛み合い最適位置に従動ギア193が備えられている。従動ギア193は、中心軸197に固定されて、被駆動体である例えば図12における大ローラ72を駆動する。駆動ギア190の歯数が多い(速い)歯部190−2には、同軸上に電磁クラッチ194が結合され、選択的に回転駆動される。一方、駆動ギア190の歯数の少ない歯部190−1は、常時回転駆動される。
歯数の少ない歯部190−1に噛み合うアイドラギア191は、右側に示すように2体構造になっており、第1歯部191−1上に第2歯部191−2を設けてなる。第1歯部191−1と第2歯部191−2の歯部自体は、同形状、同歯数のギアで、駆動伝達方向に回転する時にロックするような一方向クラッチ195を介して連結されている。第1歯部191−1は、中心軸196に回転自在に係合される。第1歯部191−1は駆動ギア190の歯部190−1、第2歯部191−2は従動ギア93にかみ合うように、それぞれのギア高さが設定されている。
次に、動作について説明する。電磁クラッチ194がOFFのとき、中心軸197(および連結されるローラ)は、駆動ギア190の歯部190−1からアイドラギア191を介して回転駆動される。このとき、アイドラギア191の第2歯部191−2は、一方向クラッチ195のロック方向で一緒に同速駆動され、この速度(通常速度)が従動ギア193に駆動伝達される。
反対に、電磁クラッチ194がONされると、中心軸197(および連結されるローラ)は、駆動ギア190の歯数が多い(速い)歯部190−2からアイドラギア192を介して、OFFの時より(駆動ギア190の歯数比だけ)高速で回転駆動される。
以上の構成を用いれば、駆動伝達手段に、一部に一方向クラッチ195を有し、回転伝達速度を異にする複数の伝達経路を設け、その複数の伝達経路を切り換えて一つの駆動源の駆動力を、選択した回転速度で同一の被駆動体に伝達して速度変動を与えることができるようになり、複数の駆動源を設けるよりは(クラッチは必要になるが)安価に装置を構成できるようになる。
図8における速度制御を行う場合、図11の駆動伝達手段を用いれば、少なくとも2つの速度設定を容易に達成できる。さらに3〜4つの速度設定を行う場合は、クラッチのON−OFFデューティで調整することもできる。例えば、歯部190−1に対して歯部90−2を+1%の歯数にした場合、電磁クラッチ194がONされると、駆動伝達速度も+1%となるが、ON−OFFを短時間で切り換えて例えば50%ONとすれば、+0.5%の速度設定が行えるようになる。