しかしながら、上記特許文献1に記載の画像形成装置は、中間転写ベルトに張力変動が生じてから遅れてその張力変動を吸収するため、中間転写ベルトに発生した張力変動を瞬時に抑制することができない。従って、中間転写ベルトに振動が発生するのを抑制するには不十分である。
また、上記特許文献2に記載の画像形成装置は、対向ローラの駆動を制御するための制御装置を必要とするため、構造が複雑化し、コスト等が増大する欠点がある。また、対向ローラの駆動制御のタイミングを適切なタイミングに調整することは容易ではないため、信頼性の点で問題がある。
また、上記特許文献3に記載の画像形成装置は、特許文献2と同様の問題があるに加え、パルスモータ以外のモータは適用できないため、設計の変更を行いにくい欠点がある。
本発明は、斯かる事情に鑑み、簡単な構造によって、中間転写ベルト等のベルト部材の張力変動に伴って生じる振動を抑制することができるベルト駆動装置、及びこれを備えた転写装置、転写定着装置、画像形成装置を提供しようとするものである。
請求項1の発明は、複数の張架ローラに張架されて一方向に周回走行する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材の外周面に圧接する圧接ローラと、前記複数の張架ローラの1つを構成すると共に前記圧接ローラに対向して前記ベルト部材の内周面に圧接する対向ローラを備え、前記圧接ローラと前記対向ローラによって前記ベルト部材を挟み込む圧接部にシート状部材を通過させるように構成したベルト駆動装置において、前記ベルト部材の走行方向を前方と呼称し、それと逆方向を後方と呼称する場合、前記対向ローラと対向ローラの1つ前方に配設した前記張架ローラによって前記ベルト部材を張架する前方ベルト張架区間において、前記ベルト部材の外周面又は内周面の一方に接触する第1張力調整部材と、前記対向ローラと対向ローラの1つ後方に配設した前記張架ローラによって前記ベルト部材を張架する後方ベルト張架区間において、前記第1張力調整部材が接触した前記ベルト部材の周面と同じ側の周面に接触する第2張力調整部材と、前記第1張力調整部材及び前記第2張力調整部材を保持すると共に、前記圧接ローラの回転軸又は前記対向ローラの回転軸あるいはこれらの回転軸と平行を成す軸線を中心に回動する回動部材と、前記圧接ローラ又は前記対向ローラの回転速度に応じて前記回動部材に前記第1張力調整部材を前記ベルト部材に圧接する方向の回動力を付与する動力伝達手段を備えたものである。
以下、シート状部材が圧接部に進入したときの作用について説明する。
シート状部材が圧接部に進入したとき、ベルト部材の走行を停止させようとする制動力が発生する。これにより、圧接ローラと対向ローラの回転速度が一時的に遅くなる。このため、対向ローラのベルト送り出し量が、前方の張架ローラのベルト送り出し量よりも少なくなり、前方ベルト張架区間において、ベルト部材に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなる。
一方、シート状部材が圧接部に進入したとき、圧接ローラと対向ローラの回転速度が一時的に遅くなることによって、動力伝達部材によって回動部材に伝達される回動力が低下する。このため、第1張力調整部材のベルト部材に対する圧接力が小さくなる。従って、前方ベルト張架区間において、ベルト部材のベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなるが、反対に第1張力調整部材によるベルト部材に対する圧接力は小さくなるので、ベルト部材に生じる張力変動を抑制することができる。
また、シート状部材が圧接部に進入したとき、対向ローラの回転速度が一時的に遅くなることによって、対向ローラのベルト送り出し量が後方の張架ローラのベルト送り出し量より少なくなる。このため、後方ベルト張架区間において、ベルト部材に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなる。また、上述のようにベルト部材に対する第1張力調整部材の圧接力が小さくなることにより、第1張力調整部材はベルト部材から押し返される。これにより、回動部材は第1張力調整部材をベルト部材に圧接する方向と逆方向に回動する。この回動によって、第2張力調整部材はベルト部材に圧接する方向に移動される。このため、第2張力調整部材によるベルト部材に対する圧接力が大きくなる。従って、後方ベルト張架区間Bにおいて、ベルト部材のベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなるが、反対に第2張力調整部材のベルト部材に対する圧接力は大きくなるので、ベルト部材に生じる張力変動を抑制することができる。
次に、シート状部材が圧接部から抜け出たときの作用について説明する。
シート状部材が圧接部から抜け出たとき、上記ベルト部材の走行を停止させようとする制動力は解除される。これにより、圧接ローラと対向ローラの回転速度が復帰して速くなる。このため、上記シート状部材の圧接部への進入時とは反対に、対向ローラのベルト送り出し量が増加し、前方ベルト張架区間において、ベルト部材に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなる。
一方、シート状部材が圧接部から抜け出たとき、圧接ローラと対向ローラの回転速度が復帰して速くなることによって、動力伝達部材によって回動部材に伝達される回動力は増加する。これにより、回動部材は第1張力調整部材をベルト部材に圧接する方向に回動するため、第1張力調整部材のベルト部材に対する圧接力が大きくなる。従って、前方ベルト張架区間において、ベルト部材のベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなるが、反対に第1張力調整部材によるベルト部材に対する圧接力は大きくなるので、ベルト部材に生じる張力変動を抑制することができる。
また、対向ローラの回転速度が復帰して速くなることによって、対向ローラのベルト送り出し量が増加する。このため、後方ベルト張架区間において、上記シート状部材の圧接部への進入時とは反対に、ベルト部材に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなる。上述のように、回動部材が第1張力調整部材をベルト部材に圧接する方向に回動することによって、第2張力調整部材はベルト部材に圧接する方向と逆方向に移動される。このため、第2張力調整部材によるベルト部材に対する圧接力が小さくなる。従って、後方ベルト張架区間Bにおいて、ベルト部材のベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなるが、反対に第2張力調整部材のベルト部材に対する圧接力が小さくなるので、ベルト部材に生じる張力変動を抑制することができる。
上記ベルト部材に生じるベルト走行方向(引張方向)の負荷は、対向ローラの回転速度の変化によって変動する。一方、このときの対向ローラ又は圧接ローラの回転速度変化に応じて、第1張力調整部材及び第2張力調整部材のベルト部材に対する圧接力が調整されるようになっている。すなわち、ベルト部材にベルト走行方向(引張方向)の負荷変動が生じるのとほぼ同時に、第1張力調整部材及び第2張力調整部材のベルト部材に対する圧接力の調整を行うことができる。従って、シート状部材が圧接部を通過する際に生じるベルト部材の張力変動を瞬時に抑制することができる。これにより、シート状部材が圧接部を通過する際に生じるベルト部材に振動を大幅に抑制することができ、ベルト部材を安定して走行させることが可能となる。
請求項2の発明は、請求項1に記載のベルト駆動装置において、前記第1張力調整部材及び前記第2張力調整部材を、前記ベルト部材の内周面に接触するように配設し、前記回動部材を前記圧接ローラの回転軸を中心に回動するように配設すると共に、前記回動部材と前記圧接ローラの間に前記動力伝達手段としての摩擦部材を介在させたものである。
圧接ローラが回転した際、圧接ローラと摩擦部材との間、及び回動部材と摩擦部材との間に摩擦力が生じることによって、圧接ローラの回転力を回動部材に伝達することができる。これにより、簡単な構成によって、回動部材に圧接ローラの回転速度に応じた回動力を付与することが可能となる。また、摩擦部材の摩擦係数を変えることによって、圧接ローラから回動部材へ伝達するトルク量を調整することもできる。
請求項3の発明は、請求項1に記載のベルト駆動装置において、前記第1張力調整部材及び前記第2張力調整部材を、前記ベルト部材の外周面に接触するように配設し、前記回動部材を前記対向ローラの回転軸を中心に回動するように配設すると共に、前記回動部材と前記対向ローラの間に前記動力伝達手段としての摩擦部材を介在させたものである。
対向ローラが回転した際、対向ローラと摩擦部材との間、及び回動部材と摩擦部材との間に摩擦力が生じることによって、対向ローラの回転力を回動部材に伝達することができる。これにより、簡単な構成によって、回動部材に対向ローラの回転速度に応じた回動力を付与することが可能となる。また、摩擦部材の摩擦係数を変えることによって、圧接ローラから回動部材へ伝達するトルク量を調整することもできる。
請求項4の発明は、請求項1に記載のベルト駆動装置において、前記第1張力調整部材及び前記第2張力調整部材を、前記ベルト部材の内周面に接触するように配設し、前記対向ローラに連動して当該対向ローラと逆方向に回転する回転方向変換部材を配設すると共に、前記回動部材を前記回転方向変換部材の回転軸を中心に回動するように配設し、前記回動部材と前記回転方向変換部材の間に前記動力伝達手段としての摩擦部材を介在させたものである。
対向ローラが回転した際、回転方向変換部材は対向ローラに連動して対向ローラと逆方向に回転する。そして、回転方向変換部材と摩擦部材との間、及び回動部材と摩擦部材との間に摩擦力が生じることによって、回転方向変換部材の回転力を回動部材に伝達される。回転方向変換部材を備えたことにより、回動部材を対向ローラの回転方向と逆方向に回動させることができる。これにより、第1張力調整部材及び第2張力調整部材がベルト部材の内周面に接触するように配設された場合であっても、対向ローラの回転速度に応じて、回動部材を第1張力調整部材がベルト部材に圧接する方向に回動させることが可能となる。また、摩擦部材の摩擦係数を変えることによって、回転方向変換部材から回動部材へ伝達するトルク量を調整することもできる。
請求項5の発明は、請求項2から4のいずれか1項に記載のベルト駆動装置において、前記回動部材を前記摩擦部材側へ付勢する弾性部材を設けたものである。
弾性部材が回動部材を摩擦部材側へ付勢することによって、回動部材と摩擦部材の相互間の密着度を高めることができ、摩擦部材が回動部材へ確実に動力を伝達することができる。また、弾性部材の弾発力を変えることによって、回動部材へ伝達するトルク量を調整することもできる。
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載のベルト駆動装置において、前記第1張力調整部材及び第2張力調整部材を、回転可能なローラで構成したものである。
これにより、第1張力調整部材及び第2張力調整部材は、ベルト部材の走行に伴って回転することができ、ベルト部材の円滑な走行を維持することが可能となる。
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載のベルト駆動装置において、前記第1張力調整部材及び前記第2張力調整部材の一方を前記ベルト部材側へ付勢して当該ベルト部材に所定の張力を付与する張力付与手段を配設したものである。
前記第1張力調整部材及び前記第2張力調整部材の一方が、張力調整手段としての機能と、張力付与手段としての機能を兼ねることによって、構造を簡素化することが可能である。また、ベルト部材を張架する張架ローラの少なくとも1つをベルト部材に所定の張力を付与するためのテンションローラとする必要が無くなる。これにより、ベルト部材の走行の安定性を一層向上させることができる。
請求項8の発明は、複数のローラに張架されて一方向に周回走行すると共に表面に画像を担持する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材の外周面に接触する圧接ローラと、前記圧接ローラに対向して前記ベルト部材の内周面に接触する対向ローラを備え、前記圧接ローラと前記対向ローラによって形成される接触部に記録媒体を通過させて当該記録媒体に前記ベルト部材が担持する画像を前記記録媒体に転写するように構成した転写装置において、請求項1から7のいずれか1項に記載のベルト駆動装置を備えたものである。
これにより、記録媒体が圧接部を通過する際に生じるベルト部材の振動を大幅に抑制することができ、ベルト部材を安定して走行させることができる。そして、ベルト部材に振動が生じることによって引き起こされる画像劣化を抑制することが可能となる。
請求項9の発明は、複数のローラに張架されて一方向に周回走行すると共に表面に画像を担持する無端状のベルト部材と、前記ベルト部材の外周面に接触する圧接ローラと、前記圧接ローラに対向して前記ベルト部材の内周面に接触する対向ローラと、前記ベルト部材を加熱する加熱源を備え、前記圧接ローラと前記対向ローラによって形成される接触部に記録媒体を通過させて当該記録媒体に前記ベルト部材が担持する画像を前記記録媒体に転写して定着するように構成した転写定着装置において、請求項1から7のいずれか1項に記載のベルト駆動装置を備えたものである。
これにより、記録媒体が圧接部を通過する際に生じるベルト部材の振動を大幅に抑制することができ、ベルト部材を安定して走行させることができる。そして、ベルト部材に振動が生じることによって引き起こされる画像劣化を抑制することが可能となる。
請求項10の発明は、請求項1から7のいずれか1項のベルト駆動装置を備えた画像形成装置である。
これにより、画像形成装置が備えるベルト駆動装置において、ベルト部材の走行の安定性を向上させることができる。
請求項11の発明は、請求項8に記載の転写装置及び請求項9に記載の転写定着装置の少なくとも一方を備えた画像形成装置である。
これにより、転写装置及び転写定着装置の少なくとも一方におけるベルト部材の走行の安定性を向上させることができ、ベルト部材に振動が生じることによって引き起こされる画像劣化を抑制することが可能となる。
本発明のベルト駆動装置によれば、ベルト部材のベルト走行方向(引張方向)の負荷変動の発生とほぼ同時に、第1張力調整部材及び第2張力調整部材のベルト部材に対する圧接力を調整することが可能である。これにより、シート状部材が圧接部を通過する際に生じるベルト部材の振動を大幅に抑制することができ、ベルト部材を安定して走行させることができる。また、本発明のベルト駆動装置によれば、ベルト部材に発生する振動を簡単な構成によって抑制することができる。これにより、低コストで信頼性の高いベルト駆動装置を提供することが可能となる。
また、前記ベルト駆動装置を備えた転写装置、転写定着装置、及び画像形成装置においても、上記と同様の効果を奏することができる。
以下、本発明に係るベルト駆動装置を画像形成装置に設けた転写装置に適用した実施例について説明する。
図1は、前記画像形成装置の概略構成図である。図1に示すように、画像形成装置は、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの異なる色の現像剤によって画像を形成するための4つの画像形成部1Y,1C,1M,1Bkを有する。各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkは、互いに異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。そこで、1つの画像形成部1Yを例にその構成を説明する。
画像形成部1Yは、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム2と、感光体ドラム2の表面を帯電させる帯電ローラ3と、感光体ドラム2の表面の静電潜像に対してトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体ドラム2の表面に付着した残留トナーを除去するクリーニングブレード5、感光体ドラム2の表面を除電する除電ランプ6等を備えている。画像形成部1Yの前記各構成要素は、画像形成装置に対して着脱可能なケーシングに一体的に保持されたプロセスユニットとして構成されている。
各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkの上方には、感光体ドラム2の表面に静電潜像を形成する露光装置7が配設されている。また、各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkの下方には、転写装置(中間転写装置)8が配設されている。転写装置8は、テンションローラ9と、対向ローラ10と、駆動ローラ11と、中間転写ベルト12と、4つの一次転写ローラ13と、二次転写ローラ(圧接ローラ)14を備える。
中間転写ベルト12は無端状のベルト部材で構成され、テンションローラ9、対向ローラ10及び駆動ローラ11の張架ローラによって張架されている。駆動ローラ11が回転駆動することによって、中間転写ベルト12は図の矢印Yで示す一方向に周回走行するようになっている。また、テンションローラ9には、図示しないバネ等の付勢手段が配設してある。この付勢手段によってテンションローラ9を中間転写ベルト12へ押圧して、中間転写ベルト12に所定の張力を付与している。また、転写装置8は、中間転写ベルト12の張力を調整する張力調整手段20を備える。
上記各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkが有する4つの感光体ドラム2は、中間転写ベルト12の外周面に接触して配設されている。これら感光体ドラム2に対向した位置で、4つの一次転写ローラ13が、中間転写ベルト12の内周面に圧接している。そして、感光体ドラム2と一次転写ローラ13が中間転写ベルト12を介して圧接した圧接部に、一次転写ニップN1を形成している。
二次転写ローラ14は、対向ローラ10に対向した位置で中間転写ベルト12の外周面に圧接している。一方、対向ローラ10は中間転写ベルト12の内周面に圧接される。そして、二次転写ローラ14と対向ローラ10が中間転写ベルト12を介して圧接した圧接部において、二次転写ニップN2を形成している。
画像形成装置の下部には、記録媒体供給部15が配設されている。記録媒体供給部15は、紙又はOHPシート等の記録媒体Pを複数枚重ねて収容可能な給紙カセットと、給紙カセットから記録紙Pを搬出する給紙ローラとを有する(図示省略)。
記録媒体供給部15と転写装置8の間に、一対のレジストローラ16a、16bと、駆動ローラ及び従動ローラに張架された搬送ベルトによって構成された記録媒体搬送装置17と、定着装置18が配設されている。また、画像形成装置の本体の外壁には、外部へ排出した記録媒体Pをストックするための排出トレイ19が付設されている。
定着装置18は、例えば、定着ローラ18aと、加熱ローラ18bと、これらのローラに張架された定着ベルト18cと、加圧ローラ18dを備える。定着ローラ18aと加圧ローラ18dは、定着ベルト18cを介して互いに圧接し、その圧接部に定着ニップN3を形成している。
以下、図1に示す画像形成装置の基本動作について説明する。
まず、画像形成部1Yにおいて、感光体ドラム2の表面を帯電ローラ3によって均一な高電位に帯電させる。この感光体ドラム2の帯電面に、露光装置7が画像データに基づいてレーザビームを照射し、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム2の表面の静電潜像が形成された部分に、現像装置4によって帯電させたトナーを静電的に転移させ、イエローのトナー画像(可視画像)を形成する。
一次転写ローラ13に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、一次転写ローラ13と感光体ドラム2との間の一次転写ニップN1において電界(転写電界)を形成する。そして、一次転写ニップN1において、回転する感光体ドラム2上のトナー画像を、矢印Yの方向に走行する中間転写ベルト12に一次転写する。
その他の各画像形成部1C,1M,1Bkにおいても、同様にして感光体ドラム2上にトナー画像を形成し、4色のトナー画像を互いに重なり合うように中間転写ベルト12に一次転写する。この一次転写を終えた後、クリーニングブレード5によって、感光体ドラム2の表面に付着している残留トナーを除去する。また、除電ランプ6によって感光体ドラム2の除電を行う。
一方、給紙部15の図示しない給紙ローラを回転させて、給紙カセットから記録媒体Pを送り出す。給紙カセットから送り出された記録媒体Pは、レジストローラ16a,16bによって一旦停止される。
二次転写ニップN2において、二次転写ローラ14にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加して転写電界を形成する。あるいは、対向ローラ10にトナーの帯電極性と同極性の電圧を印加して、同様の転写電界を形成してもよい。その後、レジストローラ16a,16bの駆動を再開し、中間転写ベルト12上のトナー画像とタイミング(同期)をとって転写媒体Pを二次転写ニップN2へ送る。そして、二次転写ニップN2において形成された転写電界によって、中間転写ベルト12上のトナーを記録媒体P側へ移動させて、トナー画像を記録媒体P上に一括して二次転写する。
トナー画像を転写された記録媒体Pは、定着装置18へと搬送される。定着装置18に送り込まれた記録媒体Pは、定着ローラ18aと加圧ローラ18d間に挟まれて加熱・加圧される。これにより、トナー画像が記録媒体P上に定着される。その後、記録媒体Pは排出トレイ19に排出されストックされる。
図2は、上記転写装置8の第1実施例を示す概略構成図である。図2において、図1と同一の符号は、図1と同一の部材を示す。転写装置8は、中間転写ベルト12の張力を調整する張力調整手段20を備える。張力調整手段20は、一対の張力調整部材21,22と、回動部材23と、動力伝達手段24を有している。
回動部材23は、V字型に折り曲げられた板状部材で構成されている。その折り曲げられた回動部材23の中間部が、二次転写ローラ14の回転軸14aに取り付けられている。回動部材23は二次転写ローラ14の回転軸14aを中心に回動するように構成されている。また、回動部材23の両端部には、張力調整部材21,22が1つずつ保持されている。一対の張力調整部材21,22は、回動部材23に対して回転可能に付設したローラで構成されている。
ここで、対向ローラ10とテンションローラ9によって中間転写ベルト12を張架する区間Aは、転写ニップN2に対して中間転写ベルト12の走行方向Yの前方にあるため、以下、前記区間Aを前方ベルト張架区間と呼ぶ。また、対向ローラ10と駆動ローラ11によって中間転写ベルト12を張架する区間Bは、転写ニップN2に対して中間転写ベルト12の走行方向Yの後方にあるため、以下、区間Bを後方ベルト張架区間と呼ぶことにする。
図2に示すように、一方の張力調整部材21は、前方ベルト張架区間Aにおいて張架される中間転写ベルト12に接触している。また、他方の張力調整部材22は、後方ベルト張架区間Bにおいて張架される中間転写ベルト12に接触している。また、2つの張力調整部材21,22は、どちらも中間転写ベルト12の内周面に接触している。
図3は、図2の要部を拡大した図であって、動力伝達手段24の一実施例を示す図である。図3に示すように、二次転写ローラ14の回転軸14aの端部には、2つのフランジ部14b,14cが形成されている。2つのフランジ部14b,14c間の回転軸14aに、回動部材23が軸受部材25を介して回動可能に取り付けられている。回動部材23と軸方向内側のフランジ部14bとの間には、摩擦部材26を介在させている。この摩擦部材26は、二次転写ローラ14の回転力を得て回動部材23に回動する方向の力を付与する上記動力伝達手段24として機能する。詳しくは、二次転写ローラ14が回転した際、回動部材23と摩擦部材26との間、及びフランジ部14bと摩擦部材26との間に摩擦力が生じることによって、二次転写ローラ14の回転力が回動部材23に伝達されるようになっている。
また、図3に示すように、回動部材23と軸方向外側のフランジ部14cとの間には、圧縮バネ等から成る弾性部材27が嵌め込まれている。この弾性部材27の弾発力によって、回動部材23は摩擦部材26側へ付勢されている。弾性部材27が回動部材23を付勢することによって、回動部材23と摩擦部材26の間、及び摩擦部材26とフランジ部14bとの間の密着度を高めることができ、二次転写ローラ14から回動部材23へ確実に動力を伝達するようにしている。また、弾性部材27の弾発力又は摩擦部材26の摩擦係数を変えることによって、二次転写ローラ14から回動部材23へ伝達するトルク量を調整することもできる。
以上、図3を参照して、二次転写ローラ14の一端における回動部材23の取付構造について説明したが、回転軸14aの前記一端と反対側の他端においても、同様に構成されている。
また、図4は、動力伝達手段24の他の実施例を示す。なお、図4において、図3と同一の符号は、図3と同一の部材を示す。図4に示す実施例は、動力伝達手段24として、二次転写ローラ14の回転トルク(回転力)を制御して回動部材23へ伝達するトルク伝達制御装置28を備える。例えば、トルク伝達制御装置28として、電磁パウダークラッチを採用することができる。一般に、電磁パウダークラッチは、内部のコイルを励磁することにより、磁性粉体とローターとの間に摩擦力を発生させトルクを伝達する構造となっている。図4に示すように、二次転写ローラ14の回転軸14aに電磁パウダークラッチを配設すると共に、電磁パウダークラッチの出力部であるローター28aに回動部材23を付設している。電磁パウダークラッチのコイルを励磁する電流値を調節することによって、二次転写ローラ14の回転トルクを任意のトルク量で回動部材23に伝達することができる。
図5は、転写装置8の第2実施例を示す概略構成図である。また、図5において、図2と同一の符号は、図2と同一の部材を示す。図5に示す転写装置8は、一対の張力調整部材21,22と、回動部材23と、動力伝達手段24と、回転方向変換部材29を有している。回転方向変換部材29は、長手状の回転体で構成される。この回転方向変換部材29の回転軸29aに、回動部材23の中間部が取り付けられ、回動部材23は回転方向変換部材29の回転軸29aを中心に回動するようになっている。また、回動部材23の両端部には、張力調整部材21,22が1つずつ回転可能に保持されている。
また、一方の張力調整部材21は、前方ベルト張架区間Aにおいて張架される中間転写ベルト12の内周面に接触し、他方の張力調整部材22は、後方ベルト張架区間Bにおいて張架される中間転写ベルト12の内周面に接触している。
図6は、図5の要部を拡大した図である。図6に示すように、回転方向変換部材19は、対向ローラ10と平行を成すように配設されている。回転方向変換部材29と対向ローラ10は、互いに噛合する第1ギア31及び第2ギア32によって連動連結されている。第1ギア31は、回転方向変換部材29の回転軸29aに付設され、第2ギア32は、対向ローラ10の回転軸10aに付設されている。これにより、回転方向変換部材29は、回転する対向ローラ10に連動して対向ローラ10と逆方向に回転するように構成されている。
また、図6に示すように、回転方向変換部材29の回転軸29aの端部には、2つのフランジ部29b,29cが形成されている。2つのフランジ部29b,29c間の回転軸29aに、回動部材23が軸受部材33を介して回動可能に取り付けられている。回動部材23と軸方向内側のフランジ部29bとの間には、動力伝達手段24としての摩擦部材30を介在させている。また、回動部材23と軸方向外側のフランジ部29cとの間には、圧縮バネ等から成る弾性部材34が嵌め込まれている。この弾性部材34の弾発力によって、回動部材23は摩擦部材30側へ付勢されている。
以上、図6を参照して、対向ローラ10の一端と回転方向変換部材29の一端の連結構造、及び回転方向変換部材29の一端における回動部材23の取付構造について説明したが、前記一端と反対側の他端においても、同様に構成されている。また、第2実施例の転写装置8が備える動力伝達手段24として、図4で説明したトルク伝達制御装置28を適用することも可能である。
図7は、転写装置8の第3実施例を示す概略構成図である。なお、図7において、図2と同一の符号は、図2と同一の部材を示す。図7に示す転写装置8は、図2に示す実施例と同様に張力調整手段20を備えている。また、図7に示す転写装置8は、張力調整手段20を構成する回動部材23に、バネ等から成る張力付与手段35を設けている。この張力付与手段35の弾発力によって、張力調整部材21,22の一方(図7では張力調整部材21)を中間転写ベルト12へ付勢するように構成している。これにより、中間転写ベルト12に所定の張力が付与される。また、張力付与手段35は、回動部材23に付設する以外に、例えば張力調整部材21,22の一方の回転軸に付設してもよい。図7の実施例では、ローラ9を上記実施例のようにテンションローラとする必要がないため、ローラ9を変位しない従動ローラとしている。これにより、構造を簡素化することができる。また、ローラ9を変位しない従動ローラとすることによって、特に駆動ローラ11と従動ローラ9との間での中間転写ベルト12の走行を安定させることが可能となる。また、図7に示す第3実施例の転写装置8は、図2に示す第1実施例の転写装置8に張力付与手段35を設けたものであるが、図5に示す第2実施例の転写装置8に張力付与手段35を設けることも可能である。
次に、本発明に係るベルト駆動装置を画像形成装置に設けた転写定着装置に適用した実施例について説明する。
図8は転写定着装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。図8に示すように、画像形成装置は、例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの異なる色の現像剤によって画像を形成するための4つの画像形成部41Y,41C,41M,41Bkを有する。各画像形成部1Y,1C,1M,1Bkは、感光体ドラム42と、帯電ローラ43と、現像装置44と、クリーニングブレード45、図示しない除電手段等を備えている。また、画像形成装置は、露光装置47と、転写装置(中間転写装置)48と、転写定着装置49と、記録媒体供給部54と、一対のレジストローラ55a,55b等を備える。
転写装置48は、駆動ローラ50と、従動ローラ51と、これらのローラに張架された中間転写ベルト52と、4つの一次転写ローラ53を備える。感光体ドラム42と一次転写ローラ53によって中間転写ベルト52を挟み込んだ圧接部に、一次転写ニップN1が形成されている。
転写定着装置49は、転写定着ローラ56と、二次転写ローラ57と、加熱ローラ58と、転写定着ベルト59と、加圧ローラ60を有する。加熱ローラ58は、転写定着ベルト59を加熱するための加熱源を有している。転写定着ベルト59は、無端状のベルト部材で構成される。定着ローラ56、二次転写ローラ57及び加熱ローラ58の各ローラは、転写定着ベルト59を張架する張架ローラである。二次転写ローラ57と従動ローラ51が対向する箇所において、転写定着ベルト59と中間転写ベルト52が互いに圧接しており、この圧接部において二次転写ニップN2を形成している。
加圧ローラ60は、転写定着ローラ56に対向した位置で転写定着ベルト59の外周面に圧接される。一方、転写定着ローラ56は、転写定着ベルト59の内周面に圧接されている。言い換えれば、加圧ローラ60を転写定着ベルト59に圧接する圧接ローラとすると、転写定着ローラ56は圧接ローラを対向して受ける対向ローラとなっている。加圧ローラ60と転写定着ローラ56が転写定着ベルト59を挟んで互いに圧接する圧接部において、転写定着ニップN4を形成している。また、転写定着装置55は、定着ベルト59の張力を調整するための張力調整手段61を備えている。
以下、図8に示す画像形成装置の基本動作について説明する。
上記図1で説明した基本動作と同様に、各画像形成部41Y,41C,41M,41Bkにおいてトナー画像を形成し、一次転写ニップN1において中間転写ベルト52にトナー画像を転写する。中間転写ベルト52の走行に伴って、二次転写ニップN2に至ったトナー画像は、中間転写ベルト52から転写定着ベルト59へ転写される。
一方、給紙部54から記録媒体Pを送り出し、送り出された記録媒体Pはレジストローラ55a,55bによって一旦停止される。その後、レジストローラ55a,55bの駆動を再開し、転写定着ベルト59上のトナー画像とタイミング(同期)をとって転写媒体Pを転写定着ニップN4へ送る。そして、転写定着ニップN4において、転写定着ベルト59のトナーを記録媒体Pに転写すると共に定着する。
図9は、転写定着装置49の第1実施例を示す概略構成図である。図9において、図8と同一の符号は、図8と同一の部材を示す。図9に示すように、張力調整手段61は、一対の張力調整部材62,63と、回動部材64と、動力伝達手段65を有している。
回動部材64は、加圧ローラ60の回転軸60aを中心に回動可能に付設されている。また、回動部材64の両端部には、張力調整部材62,63が1つずつ保持されている。一対の張力調整部材62,63は、回動部材64に対して回転可能に付設したローラで構成されている。また、動力伝達手段65は、回動部材64と加圧ローラ60との間に介在した摩擦部材66を有している。
図9において、転写定着ローラ56と二次転写ローラ57によって転写定着ベルト59を張架する区間Cは、転写定着ニップN4に対して転写定着ベルト59の走行方向Zの前方にあるので、以下、前記区間Cを前方ベルト張架区間と呼ぶ。また、転写ローラ57と加熱ローラ58によって転写定着ベルト59を張架する区間Dは、転写定着ニップN4に対して転写定着ベルト59の走行方向Zの後方にあるので、以下、区間Dを後方ベルト張架区間と呼ぶことにする。
図9に示すように、一方の張力調整部材62は、前方ベルト張架区間Cにおいて張架される転写定着ベルト59に接触している。また、他方の張力調整部材63は、後方ベルト張架区間Dにおいて張架される転写定着ベルト59に接触している。また、2つの張力調整部材62,63は、どちらも転写定着ベルト59の内周面に接触している。
また、加圧ローラ60と回動部材64の取付構造は、図3又は図4に示す二次転写ローラ14と回動部材23の取付構造を適用することができる。
図10は、転写定着装置49の第2実施例を示す概略構成図である。なお、図10において、図9と同一の符号は、図9と同一の部材を示す。図10に示す転写定着装置49は、一対の張力調整部材62,63と、回動部材64と、動力伝達手段65と、回転方向変換部材67を有している。回転方向変換部材67は、回転する転写定着ローラ56と連動して転写定着ローラ56と逆方向に回転するようになっている。回転方向変換部材67の回転軸67aには、回動部材64が回動可能に取り付けられている。また、回動部材64の両端部には、張力調整部材62,63が1つずつ回転可能に保持されている。
一方の張力調整部材62は、前方ベルト張架区間Cにおいて張架される転写定着ベルト59の内周面に接触し、他方の張力調整部材63は、後方ベルト張架区間Dにおいて張架される転写定着ベルト59の内周面に接触している。
また、定着ローラ56と回転方向変換部材67の連結構造、及び回転方向変換部材67における回動部材64の取付構造は、図6に示す対向ローラ10の一端と回転方向変換部材29の一端の連結構造、及び回転方向変換部材29の一端における回動部材23の取付構造を適用することができる。
図11に、本発明に係るベルト駆動装置のさらに別の実施例を示す。図11に示す実施例は、回動部材78が対向ローラ73の回転方向を同方向に回動するように構成されている点において、上記各実施例と異なる。以下、このベルト駆動装置の構成を詳しく説明する。
ベルト駆動装置は、複数の張架ローラ71,72,73に張架されて一方向に周回走行する無端状のベルト部材70を備える。複数の張架ローラの1つを構成する対向ローラ73に、圧接ローラ74がベルト部材70を介して圧接している。この圧接ローラ74と対向ローラ73によってベルト部材70を挟み込む圧接部N5に、シート状部材Qを通過させるように構成されている。
また、図11に示すベルト駆動装置は、ベルト部材70の張力を調整するための張力調整手段75を備えている。張力調整手段75は、一対の張力調整部材76,77と、回動部材78と、動力伝達手段79を有している。回動部材78は、対向ローラ73の回転軸73aに回動可能に取り付けられている。回動部材78の両端には、張力調整部材76,77が1つずつ回転可能に付設されている。動力伝達手段79は例えば摩擦部材80を有し、その摩擦部材80を回動部材78と対向ローラ73の間に介在させている。また、対向ローラ73と回動部材78の取付構造は、図3又は図4に示す二次転写ローラ14と回動部材23の取付構造を適用することができる。
図11において、ベルト部材70の走行方向Xを前方と呼称し、それと逆方向を後方と呼称する場合、対向ローラ73とそれの1つ前方の張架ローラ72によってベルト部材70を張架する区間Eを、以下、前方ベルト張架区間という。また、対向ローラ73とそれの1つ後方の張架ローラ71によってベルト部材70を張架する区間Fを、以下、後方ベルト張架区間という。図11に示すように、一方の張力調整部材76は、前方ベルト張架区間Eにおいて張架されたベルト部材70に接触している。また、他方の張力調整部材77は、後方ベルト張架区間Fにおいて張架されたベルト部材70と接触している。この場合、一対の張力調整部材76,77は、どちらもベルト部材70の外周面に接触している。
以下、本発明の特徴部分である張力調整手段の作用について説明する。
まず、図2、図12及び図13を参照して、第1実施例の転写装置8が備える張力調整手段20の作用について説明する。また、以下の説明において、前方ベルト張架区間において張架された中間転写ベルトに接触する張力調整部材を、第1張力調整部材といい、後方ベルト張架区間において張架された中間転写ベルトに接触する張力調整手段を、第2張力調整手段ということにする。
図2に示すように、中間転写ベルト12が矢印Yの方向に走行すると、二次転写ローラ14は図の時計回りに回転する。このとき、二次転写ローラ14と回動部材23との間に介在させた摩擦部材26によって、二次転写ローラ14と回動部材23の間で摩擦が発生する。この摩擦によって、二次転写ローラ14の回転力が回動部材23に伝達され、回動部材23を図の時計回りに回動させようとする力が生じる。回動部材23が図の時計回りに回動しようとすることによって、前方ベルト張架区間Aにおいて第1張力調整部材21は、中間転写ベルト12に圧接する方向に力を受ける。この二次転写ローラ14の回転速度が速いほど、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力は大きくなる。反対に、二次転写ローラ14の回転速度が遅いほど、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力は小さくなる。
図12を参照して、記録媒体Pが二次転写ニップN2に進入したときの作用について説明する。
図12に示すように、記録媒体Pが二次転写ニップN2に進入したとき、中間転写ベルト12の走行を停止させようとする制動力が発生する。これにより、二次転写ローラ14と対向ローラ10の回転速度が一時的に遅くなる。このため、対向ローラ10のベルト送り出し量が、前方のテンションローラ9のベルト送り出し量よりも少なくなる。そして、前方ベルト張架区間Aにおいて、中間転写ベルト12に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなり、中間転写ベルト12の走行経路は、符号a1に示す走行経路から符号a2に示す走行経路へと張られるように変化する。
一方、記録媒体Pが二次転写ニップN2に進入したとき、二次転写ローラ14の回転速度が一時的に遅くなることによって、摩擦部材26を介して二次転写ローラ14から回動部材23に伝達される回動力は低下する。このため、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力が小さくなる。従って、前方ベルト張架区間Aにおいて、中間転写ベルト12に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなるが、反対に第1張力調整部材21による中間転写ベルト12に対する圧接力は小さくなるので、中間転写ベルト12に生じる張力変動が抑制される。
また、記録媒体Pが二次転写ニップN2に進入したとき、対向ローラ10の回転速度が一時的に遅くなることによって、対向ローラ10のベルト送り出し量が、後方の駆動ローラ11の送り出し量より少なくなる。そして、後方ベルト張架区間Bにおいて、中間転写ベルト12に生じるベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなり、中間転写ベルト12の走行経路は、符号b1に示す走行経路から符号b2に示す走行経路へと撓むように変化する。また、上述のように中間転写ベルト12に対する第1張力調整部材21の圧接力が小さくなることにより、第1張力調整部材21は中間転写ベルト12から押し返される。これにより、回動部材23は、第1張力調整部材21を中間転写ベルト12に圧接する方向と逆方向(図12の反時計回り)に若干回動する。この回動によって、第2張力調整部材22は中間転写ベルト12に圧接する方向に移動される。このため、第2張力調整部材22による中間転写ベルト12に対する圧接力が大きくなる。従って、後方ベルト張架区間Bにおいて、中間転写ベルト12のベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなるが、反対に第2張力調整部材22の中間転写ベルト12に対する圧接力は大きくなるので、中間転写ベルト12に生じる張力変動が抑制される。
次に、図13を参照して、記録媒体Pが二次転写ニップN2から抜け出たときの作用について説明する。
図13に示すように、記録媒体Pが二次転写ニップN2から抜け出たとき、上記中間転写ベルト12の走行を停止させようとする制動力は解除される。従って、二次転写ローラ14と対向ローラ10の回転速度が復帰して速くなる。このため、上記記録媒体Pのニップ進入時とは反対に、対向ローラ10のベルト送り出し量が増加し、前方ベルト張架区間Aにおいて、中間転写ベルト12の負荷が小さくなる。そして、中間転写ベルト12の走行経路は、符号a3に示す走行経路から符号a4に示す走行経路へと撓むように変化する。
一方、記録媒体Pが二次転写ニップN2から抜け出た際、二次転写ローラ14の回転速度が復帰して速くなることによって、摩擦部材26を介して二次転写ローラ14から回動部材23に伝達される回動力は増加する。このため、回動部材23は、第1張力調整部材21を中間転写ベルト12に圧接する方向(図13の時計回り)に回動し、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力が大きくなる。従って、前方ベルト張架区間Aにおいて、中間転写ベルト12のベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなるが、反対に第1張力調整部材21による中間転写ベルト12に対する圧接力は大きくなることによって、中間転写ベルト12に生じる張力変動が抑制される。
また、対向ローラ10の回転速度が復帰して速くなることによって、対向ローラ10のベルト送りだし量が増加する。これにより、後方ベルト張架区間Bにおいて、上記記録媒体Pの進入時とは反対に、中間転写ベルト12に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなる。従って、中間転写ベルト12の走行経路は、符号b3に示す走行経路から符号b4に示す走行経路へと張られるように変化する。また、上述のように回動部材23が第1張力調整部材21を中間転写ベルト12に圧接する方向に回動することによって、第2張力調整部材22は中間転写ベルト12に圧接する方向と逆方向に移動される。このため、第2張力調整部材22による中間転写ベルト12に対する圧接力が小さくなる。従って、後方ベルト張架区間Bにおいて、中間転写ベルト12のベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなるが、反対に第2張力調整部材22の中間転写ベルト12に対する圧接力は小さくなることによって、中間転写ベルト12に生じる張力変動が抑制される。
なお、図12及び図13において、負荷変動による中間転写ベルト12の張り具合(撓み具合)の変化を便宜的に大きく表している。
上記中間転写ベルト12に生じるベルト走行方向(引張方向)の負荷は、対向ローラ10の回転速度変化に伴って変動する。一方、このときの対向ローラ10又は二次転写ローラ14の回転速度変化に応じて、第1張力調整部材21及び第2張力調整部材22の中間転写ベルト12に対する圧接力が調整されるようになっている。すなわち、中間転写ベルト12にベルト走行方向(引張方向)の負荷変動が生じるのとほぼ同時に、第1張力調整部材21及び第2張力調整部材22の中間転写ベルト12に対する圧接力の調整を行うことができる。従って、記録媒体Pが二次転写ニップN2を通過する際に生じる中間転写ベルト12の張力変動を瞬時に抑制することができ、中間転写ベルト12に振動が発生するのを防止することができる。これにより、中間転写ベルト12を安定して走行させることができ、「色ずれ」や「色むら」等の画像劣化の発生を防止することが可能となる。
次に、図5、図14及び図15を参照して、第2実施例の転写装置8が備える張力調整手段20の作用について説明する。
図5に示すように、中間転写ベルト12が矢印Yの方向に走行すると、対向ローラ10は図の反時計回りに回転する。また、回転方向変換部材29は、対向ローラ10の回転力を受けて対向ローラ10の回転方向と反対方向(図5の時計回り)に回転する。このとき、回転方向変換部材29と回動部材23との間に介在させた摩擦部材30によって、回転方向変換部材29と回動部材23の間で摩擦が発生する。この摩擦によって、回転方向変換部材29の回転力が回動部材23に伝達され、回動部材23を図の時計回りに回動させようとする力が生じる。回動部材23が図の時計回りに回動しようとすることによって、前方ベルト張架区間Aにおいて第1張力調整部材21は、中間転写ベルト12に圧接する方向に力を受ける。従って、回転方向変換部材29の回転速度が速いほど、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力は大きくなる。反対に、回転方向変換部材29の回転速度が遅いほど、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力は小さくなる。なお、回転方向変換部材29と対向ローラ10は同じ回転速度となるため、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力は、対向ローラ10の回転速度に応じて変化するといえる。
図14を参照して、記録媒体Pが二次転写ニップN2に進入したときの作用について説明する。
図14に示すように、記録媒体Pが二次転写ニップN2に進入したとき、上記図12に示す実施例と同様に、前方ベルト張架区間Aにおいて、中間転写ベルト12に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなる。これにより、中間転写ベルト12の走行経路は、符号a1に示す走行経路から符号a2に示す走行経路へと張られるように変化する。
このとき、二次転写ローラ14の回転速度が一時的に遅くなることによって、回転方向変換部材29の回転速度も遅くなる。このため、摩擦部材30を介して回転方向変換部材29から回動部材23に伝達される回動力は低下し、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力が小さくなる。従って、前方ベルト張架区間Aにおいて、中間転写ベルト12に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなるが、反対に第1張力調整部材21による中間転写ベルト12に対する圧接力は小さくなることによって、中間転写ベルト12に生じる張力変動が抑制される。
また、記録媒体Pが二次転写ニップN2に進入したとき、上記図12に示す実施例と同様に、後方ベルト張架区間Bにおいて、中間転写ベルト12に生じるベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなる。これにより、中間転写ベルト12の走行経路は、符号b1に示す走行経路から符号b2に示す走行経路へと撓むように変化する。上述のように中間転写ベルト12に対する第1張力調整部材21の圧接力が小さくなることにより、第1張力調整部材21は中間転写ベルト12から押し返される。このため、回動部材23が(図14の反時計回りに)若干回動し、第2張力調整部材22が中間転写ベルト12に圧接する方向に移動される。これにより、第2張力調整部材22による中間転写ベルト12に対する圧接力が大きくなる。従って、後方ベルト張架区間Bにおいて、中間転写ベルト12のベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなるが、反対に第2張力調整部材22の中間転写ベルト12に対する圧接力は大きくなることによって、中間転写ベルト12に生じる張力変動が抑制される。
次に、図15を参照して、記録媒体Pが二次転写ニップN2から抜け出たときの作用について説明する。
図15に示すように、記録媒体Pが二次転写ニップN2から抜け出たとき、上記図13に示す実施例と同様に、前方ベルト張架区間Aにおいて、中間転写ベルト12の負荷が小さくなる。これにより、中間転写ベルト12の走行経路は、符号a3に示す走行経路から符号a4に示す走行経路へと撓むように変化する。
このとき、二次転写ローラ14の回転速度が復帰して速くなることによって、回転方向変換部材29の回転速度も速くなる。このため、摩擦部材26を介して回転方向変換部材29から回動部材23に伝達される回動力は増加する。これにより、回動部材23は、第1張力調整部材21を中間転写ベルト12に圧接する方向に回動し、第1張力調整部材21の中間転写ベルト12に対する圧接力が大きくなる。従って、前方ベルト張架区間Aにおいて、中間転写ベルト12のベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなるが、反対に第1張力調整部材21による中間転写ベルト12に対する圧接力は大きくなることによって、中間転写ベルト12に生じる張力変動が抑制される。
また、後方ベルト張架区間Bにおいて、上記図13に示す実施例と同様に、中間転写ベルト12に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなる。これにより、中間転写ベルト12の走行経路は、符号b3に示す走行経路から符号b4に示す走行経路へと張られるように変化する。また、上述のように回動部材23が第1張力調整部材21を中間転写ベルト12に圧接する方向に回動することによって、第2張力調整部材22は中間転写ベルト12に圧接する方向と逆方向に移動される。このため、第2張力調整部材22による中間転写ベルト12に対する圧接力が小さくなる。上述のように、後方ベルト張架区間Bにおいて、中間転写ベルト12のベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなるが、反対に第2張力調整部材22の中間転写ベルト12に対する圧接力は小さくなることによって、中間転写ベルト12に生じる張力変動が抑制される。
なお、図14及び図15において、負荷変動による中間転写ベルト12の張り具合(撓み具合)の変化を便宜的に大きく表している。
このように、第2実施例の転写装置8においても、記録媒体Pが二次転写ニップN2を通過する際に生じる中間転写ベルト12の張力変動を瞬時に抑制することができ、中間転写ベルト12に振動が発生するのを防止することができる。これにより、中間転写ベルト12を安定して走行させることができ、「色ずれ」や「色むら」等の画像劣化の発生を防止することが可能となる。
また、図9及び図10に示す転写定着装置49においても、記録媒体Pが転写定着ニップN4に進入するときに、転写定着ベルト59にベルト走行方向(引張方向)の負荷変動が生じる。また、記録媒体Pが転写定着ニップN4から抜け出たときも、転写定着ベルト59にベルト走行方向(引張方向)の負荷変動が生じる。しかし、上記と同様に、張力調整手段61によって、2つの張力調整部材62,63の転写定着ベルト59に対する圧接力の調整を、上記ベルト走行方向(引張方向)の負荷変動が生じるのとほぼ同時に行うことができる。従って、転写定着装置49において、記録媒体Pが転写定着ニップN4を通過する際に生じる転写定着ベルト59の張力変動を瞬時に抑制することができ、転写定着ベルト59に振動が発生するのを防止することができる。これにより、転写定着ベルト59を安定して走行させることができ、「色ずれ」や「色むら」等の画像劣化の発生を防止することが可能となる。
また、図11に示すベルト駆動装置は、図5に示す実施例と比べて、回転方向変換部材29を介さずに、対向ローラ73の回転力を回動部材78に伝達している点で異なっている。図11において、ベルト部材70の走行に伴って対向ローラ73が図の反時計回りに回転すると、対向ローラ73の回転力が摩擦部材80を介して回動部材78に伝達される。これにより、回動部材78は対向ローラ73の回転方向と同方向に回動し、前方ベルト張架区間Eおいて、張力調整部材76はベルト部材70に圧接する方向に力を受ける。この張力調整部材76のベルト部材70に対する圧接力は、対向ローラ73の回転速度に応じて変化するようになっている。
以下、図11に示すベルト駆動装置の動作について、簡単に説明する。
シート状部材Qが圧接部N5に進入した際、上記と同様に、前方ベルト張架区間Eにおいて、ベルト部材70に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなる。このとき、対向ローラ73の回転速度が一時的に遅くなるため、前方ベルト張架区間Eにおいて、第1張力調整部材76のベルト部材70の圧接力が小さくなる。これにより、前方ベルト張架区間Eにおけるベルト部材70に生じる張力変動を抑制することができる。
また、シート状部材Qが圧接部N5に進入した際、上記と同様に、後方ベルト張架区間Fにおいては、ベルト部材70に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなる。このとき、対向ローラ73の回転速度が一時的に遅くなることにより、後方ベルト張架区間Fにおいて、第2張力調整部材77のベルト部材70の圧接力が大きくなる。これにより、後方ベルト張架区間Fにおけるベルト部材70に生じる張力変動を抑制することができる。
その後、シート状部材Qが圧接部N5から抜け出た際、上記と同様に、前方ベルト張架区間Eにおいて、ベルト部材70に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が小さくなる。このとき、対向ローラ73の回転速度が復帰して速くなるため、前方ベルト張架区間Eにおいて、第1張力調整部材76のベルト部材70の圧接力が大きくなる。これにより、前方ベルト張架区間Eにおけるベルト部材70に生じる張力変動を抑制することができる。
また、シート状部材Qが圧接部N5から抜け出た際、上記と同様に、後方ベルト張架区間Fにおいては、ベルト部材70に作用するベルト走行方向(引張方向)の負荷が大きくなる。このとき、対向ローラ73の回転速度が復帰して速くなることにより、後方ベルト張架区間Fにおいて、第2張力調整部材77のベルト部材70の圧接力が小さくなる。これにより、後方ベルト張架区間Fにおけるベルト部材70に生じる張力変動を抑制することができる。
上述のように、図11に示すベルト駆動装置においても、張力調整手段75によって、2つの張力調整部材76,77のベルト部材70に対する圧接力の調整を、上記ベルト走行方向(引張方向)の負荷変動が生じるのとほぼ同時に行うことができる。従って、ベルト駆動装置において、シート状部材Qが圧接部N5を通過する際に生じるベルト部材70の張力変動を瞬時に抑制することができ、ベルト部材70に振動が発生するのを防止することができる。
また、本発明に係るベルト駆動装置は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明に係るベルト駆動装置を、転写装置や転写定着装置以外に、図1に示す定着装置18に適用してもよい。また、本発明に係るベルト駆動装置を、表面に記録媒体を保持して搬送する搬送ベルトを備えた画像形成装置や、表面にトナー画像が形成される感光体ベルトを備えた画像形成装置等にも適用可能である。あるいは、本発明の構成を、画像形成装置以外の装置が備えるベルト駆動装置に適用することも可能である。