JP5405084B2 - グラファイトフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池用セパレータ、ガスケット、発熱体、熱拡散フィルム、放熱材、耐熱材などに好適に使用されるグラファイトフィルムの製造方法に関する。
電気伝導性および熱伝導性に優れたグラファイトフィルムを得る方法として、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリチアゾール、ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、またはポリアミドなどの高分子フィルムをアルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気下や真空下で熱処理する高分子熱分解法が知られている(特許文献1、2、および3参照)。
この高分子熱分解法によるグラファイトフィルムの製造方法として、(方法1)枚葉の原料フィルムを黒鉛板に挟んで熱処理する方法、および(方法2)長尺の原料フィルムを円筒に巻き付けて熱処理する方法の二つの方法が知られている。これらの方法をより詳細に説明すれば、以下の通りである。
(方法1)枚葉の原料フィルムを黒鉛板に挟んで熱処理する方法:
特許文献1と2のそれぞれにおける発明の実施例1と2には、以下のように、枚葉で原料フィルムを熱処理する方法が開示されている。この方法では、PA(ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド))、PI(ポリ(ピロメリットイミド))、PBI(ポリ(m−フェニレンベンゾイミダゾール))、PBBI(ポリ(m−フェニレンベンゾビスイミダゾール))などの厚さ25ミクロンの各フィルムをステンレスの枠に固定し、電気炉を用いて、アルゴン中で毎分10℃の速度で室温から700℃まで予備的な加熱処理をする。
なお、ステンレス枠がない場合にはPAフィルムはこの温度領域で元の寸法の50%に縮むので、ステンレス枠による固定は徐々に張力を加えながら予備加熱処理をすることに相当する。
このようにして予備熱処理したフィルム(炭素質フィルムともいう)を黒鉛板でサンドイッチし、アルゴン気流中で毎分10℃の速度で昇温して、所望の温度(Tp)で1時間の熱処理を行なう。この熱処理後、毎分20℃の速度で降温させる。使用する炉は、カーボンヒータを用いた電気炉である。得られる黒色のフィルムは、Tpが1400℃以下では脆くてフレキシビリティのないものであるが、Tpが1800℃以上ではフレキシビリティのあるフィルムになる。
(方法2)長尺の原料フィルムを円筒に巻き付けて熱処理する方法:
特許文献3の発明の実施例1には、以下のように、長尺の原料フィルムを円筒に巻き付けて熱処理する方法が開示されている。この方法では、幅180mmで厚さ50μmのPODフィルムが、外径68mm、内径64mm、かつ長さ200mmのグラファイト質炭素円筒に3重に巻き付けられ、アルゴン気流中で室温から毎分10℃の速度で昇温され、所望の温度Tpで1時間処理され、そして毎分20℃の速度で降温させられる。使用する炉は、進成電炉社製46−6型カーボンヒータ炉である。得られる黒色のフィルムは、Tpが1600℃以下では脆くてフレキシビリティのないものであるが、Tpが1800℃以上ではフレキシビリティのあるフィルムになる。なお、得られるフィルムの大きさは、170mm×180mmである。

また、グラファイトフィルムは、耐熱性、耐薬品性、熱伝導性および電気伝導性が極めて高く、ガス透過性が低いため、燃料電池用セパレータ、ガスケット、発熱体、熱拡散フィルム、放熱材、耐熱材などに広く使用されている。
たとえば、固体高分子型燃料電池用セパレータは、燃料電池に流入する反応ガスの流路を確保し、燃料電池で発電した電気を外部に伝達し、燃料電池で生じた熱を放熱する役目を果たしている。したがって、燃料電池用セパレータには高い電気伝導度を持つこと、強靭であること、高いガスバリヤ性を持つこと、精密な溝加工が容易に行なえること、軽量であること、安価であること、などが求められる。
この様な燃料電池用セパレータとしては、炭素複合材料、純粋な炭素材料、金属材料が用いられる。炭素複合材料としてはグラファイト材料にフェノール樹脂などの樹脂を含浸したもの、グラファイト表面にガラス状炭素を被覆したものなどが用いられる。しかしながら、これらのセパレータは、ガスバリヤ性を確保するために何度も含浸と乾燥を繰り返す必要があり、高価なものとなると言う欠点があった。この様な問題点を解決するために、たとえば、特開平9−48666(特許文献4)では、膨張グラファイト粉末とフェノール樹脂、あるいは膨張グラファイトとカルボジイミド樹脂、あるいはそれらの焼結体からなる炭素複合材料およびその製造方法が開示されている。しかし、この様な炭素複合材料においては溝加工のためにあらかじめ金型でプレス加工したり、製造後に機械加工を施したりする必要があった。
一方、純粋なグラファイトフィルムは、上記の様な燃料電池用セパレータを始めとして、ガスケット、発熱体、熱拡散フィルム、放熱材、耐熱材などとして広く用いられている。たとえば、純粋な炭素材料のセパレータはリン酸型燃料電池ではしばしば用いられる。
純粋なグラファイトフィルムの最も簡単な製造方法は、高分子フィルムを直接グラファイト化することである。すなわち、グラファイトフィルムは、高分子フィルムを、窒素やアルゴンなどの不活性ガス中、あるいは真空中で、熱処理することにより、熱分解させ、グラファイト化させることにより得られる。しかし、高分子フィルムを直接グラファイト化させてグラファイトフィルムを製造する方法には大きな技術的な課題があった。
その技術的課題の第一は、高分子フィルムの熱処理の工程で、多くの高分子が分解しガス化して散逸し、炭素質フィルムが得られないという問題である。すなわち、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステルなどの高分子では、それらの熱処理工程でほとんどが分解ガスとなってしまい、グラファイトフィルムが得られなかった。良好なグラファイトフィルムが得られる高分子フィルムとしては、たとえば、熱硬化性高分子のフィルムがあり、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリベンゾイミダゾールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオキサゾールフィルムなどが挙げられる。
その技術的課題の第二は、上記の様なグラファイトフィルムが得られる高分子フィルムを用いたとしても、高分子フィルムは、その熱処理による炭素化工程において、大きく収縮する。このため、得られるグラファイトフィルムには、皺やひずみが発生し、場合によっては割れが発生するという問題である。

ところで、そもそもグラファイトは硬質で脆い材料であり、グラファイトフィルムに十分な柔軟性、耐屈曲性を付与するためには工夫が必要である。特許文献1、5、6に記載のグラファイトフィルムの製造方法において、柔軟性、耐屈曲性を有するグラファイトフィルム得るためのポイントは、「グラファイト化処理中のフィルムの発泡」と「グラファイト化処理後フィルムの圧縮処理」の2点である。フィルムに耐屈曲性を付与できるメカニズムは以下の通りである。
まず、「グラファイト化処理中のフィルムの発泡」とは、グラファイト化の最終段階(2600℃以上)でグラファイト骨格を形成しないN2、フィラー(リン酸系)などの内部ガス(以下、発泡ガスと記載)発生によりグラファイト層が膨らむことである。発泡の程度は、グラファイト化の際の昇温速度制御などによりコントロールすることができる。この処理により得られる発泡グラファイトフィルム(以下、グラファイト化処理後フィルムと記載)は、グラファイトの層間に空間を有しており、折り曲げ時にかかる歪をその空間に逃がすことができるため、ある程度の耐屈曲性を有する。
しかしながら、グラファイト化処理後フィルムの耐屈曲性は、近年の電子機器での使用に耐えうるほど十分なものとはいえない場合があった。
そこで、十分な耐屈曲性を付与するために「グラファイト化処理後フィルムの圧縮処理」が必要となる場合があった。ここでいう圧縮処理とは、グラファイト化処理後フィルムの上下方向(厚み方向)への加圧処理をいう。発泡したグラファイト化処理後フィルムを圧縮すると、耐屈曲性は劇的に改善される。基本的に、圧縮処理時の圧力が大きいほど薄いグラファイトフィルムが得られ、耐屈曲性が高まる。
特開昭61−275116公報 特開昭61−275117公報 特開昭63−256508公報 特開平9−048666号公報 特許公報 第2976481号 特開2000−178016号公報
(方法1の検討)
方法1で黒鉛化する設備は、ヒータが円筒状であるタンマン管式の黒鉛化炉が一般的である。図1において、黒鉛化炉に用いられるヒータの一例が模式的な断面図で示されている。なお、本願の図面において、長さ、幅、厚さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜に変更されており、実際の寸法関係を表してはいない。また、図面における同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表している。図1では、ヒータ2は発熱部4を含み、その発熱部4中でなるべく均熱的な熱処理ゾーン6が利用される。
このようなヒータを含む円筒炉で枚葉フィルムを熱処理する場合には、複数枚の原料フィルムを箱形容器にセットし、この箱形容器をヒータ内にセットして熱処理を行なう。図2の模式的な透視斜視図は、枚葉フィルムの積層態様の一例を示している。この図において、原料フィルム12は黒鉛板14と交互に積層され、各原料フィルム12が黒鉛板14によってサンドウィッチされている。積層された原料フィルム12と黒鉛板14は、図3の模式的な透視斜視図に示されているように、箱形容器16内に保持される。
円筒の炉内にできるだけ大きな容積の箱形容器を設置するためには、容器の断面は正方形であることが好ましい。例えば、内径200mmの円筒炉に箱形容器を設置する際には、箱形容器の断面は140×140mmが最も大きな面積となる。深さ140mm程度の箱形容器内に厚さ50μmの原料フィルムを厚さ1mmの黒鉛板と交互に積層して投入する場合では、133枚の原料フィルムをその容器内に投入することが可能である。また、黒鉛板の厚さを300μmに薄くした場合には、400枚の原料フィルムをその容器内に投入することが可能である。さらに、黒鉛板を介在させない場合には、2800枚の原料フィルムを直接重ねてその容器内に投入することが可能である。しかし、一度に100枚以上のフィルムを一つの箱形容器に投入した場合、容器内の上部と下部で熱履歴にバラツキが生じるので、熱処理されたフィルムの特性(平坦性、厚み、熱拡散率)にバラツキが生じやすい。
また、タンマン管式炉内に投入され得る原料フィルムの長さは、図1中に示されている熱処理ゾーン6の長さで制限されて、一般的には140mm程度となる。長さ140mmの原料フィルムを炉内に投入した場合、フィルム長の中心部と端部とでは、ヒータ中央からの距離の違いによって熱の伝わりに差が生じる。その結果、フィルム長の中央部と端部とでは、熱拡散率に差が出たり黒鉛化中にフィルムの伸びに差が生じ、端部に波打ちが生じたりする場合がある。
特に、図4の模式的断面図に示されているように、フィルム12と黒鉛板14を保持する容器16の下面はヒータの発熱部4と接触しており、容器16内でヒータと接触している部分近傍とヒータから離れている部分とでは熱履歴に差が生じ、熱処理されたフィルムの特性(平坦性、厚み、熱拡散率)にバラツキを生じやすい。また、フィルム端部ではガスが抜けやすく、フィルムの周辺端部で厚みが薄くなって硬くなったりし、フィルムの端部と中央部とで厚みバラツキが発生しやすい。その結果、フィルム周辺を幅1cm程度までカッティング除去する必要がある。特に、容器内にフィルムを100枚以上重ねて投入した場合には、この厚さのバラツキが顕著になりやすい。
(方法2の検討)
方法2では、図5の模式的な透視斜視図に示されているように、原料フィルム12がグラファイト質炭素の円筒18に巻き付けられる。そして、その原料フィルム12の外周には、図6の模式的な透視斜視図に示されているように、同じくグラファイト質炭素の外筒20が設けられる。このように原料フィルム12が巻き付けられた内筒18を収容した外筒20が、図7に示されているように、ヒータの発熱部4内にセットされて、熱処理が行なわれる。
より具体的には、特許文献3に開示されているように、外径68mm、内径64mm、および長さ200mmのグラファイト質炭素円筒に3重に巻き付けられた原料フィルムが、ヒータ内にセットされて熱処理される。他方、量産が望まれる場合には処理量を増やす必要があり、原料フィルムの巻き数を100周程度にまで増やすことが考えられる。しかし、グラファイト質炭素円筒に100重以上に巻き付けられたフィルムをヒータ内に投入した場合、巻き付けられた多重フィルムの内側部分と外側部分とで熱履歴にバラツキが生じ、熱処理されたフィルムの特性(平坦性、厚み、熱拡散率)にバラツキが生じやすい。
また、投入する原料フィルムの幅は、従来では170mm程度まで可能である。幅170mmの原料フィルムを熱処理する場合、フィルムの中央部と両端部とでは、ヒータからの距離の違いによって熱の伝わりに差が生じ得る。その結果、熱処理されるフィルムの中央部と両端部とでは、熱拡散率に差が生じたり、黒鉛化中にフィルムの伸びに差が生じて端部に波打ちが生じる場合がある。
特に、フィルムを保持する容器の下面(外周面)は、ヒータと接触または接近しているので熱が伝わりやすく、ヒータに対して近い部分と離れている部分とでは熱履歴に差が生じ、熱処理されたフィルムの特性(平坦性、厚み、熱拡散率)のバラツキを生じやすい。
また、多重に巻き付けられたフィルムの両端部や内周側と外周側ではガスが抜けやすく、フィルム厚みが薄くなったり硬くなったりし、フィルムの厚みにバラツキが発生しやすい。その結果、熱処理されたフィルムの周辺の幅1cm程度をカッティング除去する必要がある。特に、原料フィルムを100周以上重ねて熱処理した場合には、得られるフィルムの品質のバラツキが顕著になる。
以上のような方法1と方法2に関する検討結果から、以下のような4つの課題が認識され得る。
(課題1)容器内にセットされたフィルム位置に依存するフィルム品質のバラツキ:
箱形容器内に原料フィルムを100枚以上重ねてセットまたは円筒状グラファイト質炭素に原料フィルムを100周以上巻き付けてセットした場合、熱処理されたフィルムの周辺端部に波打ちが生じたり、フィルムの端部と中央部とにおいて厚みや熱拡散率などの特性にバラツキが生じやすい。
(課題2)フィルムの面内の品質バラツキ:
一辺が140cm以上で面積が300cm2以上、特に面積が750cm2を超える場合には、フィルムの中央部と端部または多重巻きされたフィルムの内周側と外周側とにおいて、平坦性、厚み、熱拡散率などの品質にバラツキが発生しやすい。特に、容器内の重ね枚数または巻き付け数が増えるにしたがって、よりフィルム品質のバラツキが生じやすくなる。
(課題3)容器がヒータに接触することによるヒータ寿命の低下:
フィルムを保持する容器がヒータと近づけば、容器とヒータの間で放電が生じて、容器およびヒータが消耗する。また、容器がヒータと接触していれば、ヒータに印加された電流の一部が容器に流れ、電流ムラが発生してヒータを劣化させる。
(課題4)フィルムからの発生ガスによるヒータ寿命の低下:
原料フィルムの黒鉛化過程では、そのフィルムから炭素、窒素、その他の無機物などのガスが発生する。これらのガスがヒータに接触して、ヒータ寿命を低下させることがある。
上述のような先行技術の状況に鑑み、以下に示す本発明(1)〜(24)は、平坦性、厚み、および熱拡散率のバラツキの少ないグラファイトフィルムを良好な生産性で製造し得る方法を提供することを目的としている。

また、以下に示す本発明の(9)〜(14)は、原料フィルムを、熱処理により炭素化させて、皺、ひずみおよび割れのない平面性の高いグラファイトフィルムが得られるグラファイトフィルムの製造方法を提供することを目的とする。

さらに、以下に示す本発明の(15)〜(21)は、後面状加圧工程における静電気の発生を抑制し、得られるグラファイトフィルムの外観および作業性を改善することを目的とするものである。
まず、従来技術での「グラファイト化処理後フィルムの圧縮処理」について説明する。特許文献1〜3では、発泡したグラファイト化処理後フィルムに後圧延工程を施こすことで耐屈曲性、柔軟性を付与している。後圧延工程とは2本のセラミック製あるいは金属製のローラーの間に、グラファイト化処理後フィルムを通すことにより圧縮する工程である。
しかしながら後圧延工程では、ローラーとグラファイト化処理後フィルムとの接触部で線状に圧力がかかるため、グラファイトフィルムが引き伸ばされたり、グラファイト層が破壊された結果、グラファイトフィルムの耐屈曲性、熱拡散性が低下する場合があった。また、部分的な密度のバラツキが生じるため(すなわち部分的に密度が高くなったり低くなったりするため)、グラファイトフィルムの耐屈曲性、熱拡散性のばらつきや、グラファイトフィルムが空気層を多く含むことによる耐屈曲性、熱拡散性の悪化の問題があった。さらに、グラファイトフィルムは、金属ローラーのような強度の高いものを用いて圧延すると、表面に傷や皺が入りやすく、凹みや縦スジが生じるという問題もあった。さらに、圧縮度を高めようと強い力で圧延した場合、グラファイト化処理後フィルムの波打ちを巻き込んで折れ皺(巻き込み皺)を発生させながら圧縮してしまう場合があった。ここで「波打ち」とは、グラファイト化処理後フィルムの表面が波打っているように見える現象をいう。波打ちの原因は、グラファイト化処理後フィルムの発泡の度合いが均一でないことによる。つまり、局所的に発泡度が高い部分があることや局所的なフィルムの長さが異なることにより、表面が波打っているように見える。
さらに、折れ皺が発生しないように慎重に後圧延工程するため、作業に時間がかかることや、一度に多くの処理をできないなど作業性にも問題があった。
このような諸課題を解決するために本発明者らが鋭意検討した結果、グラファイト化処理後フィルムを面状に加圧する後面状加圧工程をおこなうことが有効であることが明らかになった。後面状加圧工程では面方向への均一な加圧が可能なため、圧延工程と比較して耐屈曲性に優れ、厚みバラツキ、皺などの非常に少ない良質のグラファイトフィルムが作製可能である。
しかしながら、上述のような優れた効果を発揮する後面状加圧工程おいても問題が発生する場合がある。それは、圧縮後にグラファイトフィルムを圧縮面(圧縮処理の際にグラファイトフィルムと接触している面)から取り外す際(グラファイトフィルムの独立回収工程)に、大きな静電気が発生することである。この静電気により、グラファイトフィルムに皺が発生したり、破けが発生したりしてグラファイトフィルムの外観の劣化を招くことがある。
静電気は、後面状加圧工程では面接触でフィルムを圧縮するために発生する。一般的に、2つの素材が密着すると一方の素材からもう一方の素材へ電荷の移動が起こる。密着した素材を引き剥がす際に一方の素材は電子を得て負に帯電し、もう片方は電子を失い正に帯電する。以上が圧縮処理による静電気の発生メカニズムと考えられる。したがって、特に圧縮圧力が高い場合、面積が大きい場合、圧縮時の接触面の表面粗さが小さい場合などは、圧縮面とグラファイトフィルムの密着性が高くなるために、グラファイトフィルムを圧縮面から剥がせないほど大きな静電気が発生し作業性を極端に低下させることがあった。
すなわち本発明は、後面状加圧工程における静電気の発生を抑制し、得られるグラファイトフィルムの外観および作業性を改善することを目的とするものである。
すなわち、本発明は以下の通りである。本発明における原料フィルムとしては、主に高分子フィルム又は炭素質フィルムが用いられる。
(1)本発明の第1は、ヒータを有する加熱炉を用いる熱処理によって原料フィルムをグラファイト化するグラファイトフィルムの製造方法であって、
前記原料フィルムの面積が200cm2以上であり、
前記原料フィルムを第1の容器内に保持し、
さらに前記第1容器を第2の容器内に保持し、
前記第2容器を前記ヒータ内に保持して前記原料フィルムを熱処理することを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法である。
(2)本発明の第2は、前記熱処理中に前記第2容器内に不活性ガスを流すことを特徴とする(1)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(3)本発明の第3は、前記熱処理中において前記第2容器と前記ヒータは互いに非接触の状態に維持されることを特徴とする(1)または(2)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(4)本発明の第4は、前記第2容器と前記ヒータとの間の距離が1cm以上であることを特徴とする(3)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(5)本発明の第5は、前記第1容器内に前記原料フィルムを100枚以上保持することを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(6)本発明の第6は、ヒータを有する加熱炉を用いる熱処理によって原料フィルムをグラファイト化するグラファイトフィルムの製造方法であって、
前記原料フィルムの面積が200cm2以上であり、
容器内に前記原料フィルムを保持し、
前記容器を前記ヒータ内に保持して前記原料フィルムを熱処理し、
その熱処理中において前記容器と前記ヒータは互いに非接触の状態に維持されることを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法である。
(7)本発明の第7は、前記容器と前記ヒータとの間の距離が1cm以上であることを特徴とする(6)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(8)本発明の第8は、前記容器内に前記原料フィルムを100枚以上保持することを特徴とする(6)または(7)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(9)本発明の第9は、1枚以上の原料フィルムと前記原料フィルムの熱分解温度以上の温度において耐熱性を有する耐熱性フィルムとを交互に積層して積層体を得る積層工程と、
不活性ガス中あるいは真空中で前記積層体を熱処理することを特徴とする(1)又は(6)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(10)本発明の第10は、熱処理時に、前記積層体に前記原料フィルムおよび前記耐熱性フィルムのフィルム面に垂直な方向に圧力を加えることを特徴とする(9)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(11)本発明の第11は、前記圧力の大きさが、0.98Pa以上9800Pa以下である(10)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(12)本発明の第12は、前記原料フィルムがポリイミドフィルムである(9)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(13)本発明の第13は、前記ポリイミドフィルムの、100℃〜200℃の範囲におけるフィルム面方向の平均線膨張係数が32×10-6-1以下である(12)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(14)本発明の第14は、前記ポリイミドフィルムの複屈折が0.10以上である(13)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(15)本発明の第15は、さらに、得られたグラファイトフィルムを、表面抵抗率が1×109Ω/□以下の圧縮面と接触させて加圧する後面状加圧工程を含むことを特徴とする(1)又は(6)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(16)本発明の第16は、前記後面状加圧工程の際に、フィルム面に垂直な方向に2MPa以上40MPa以下の圧力を加えることを特徴とする(15)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(17)本発明の第17は、前記圧縮面のJIS B0652に記載の光波干渉式表面粗さ測定法で得られる表面粗さRaが0.005〜3.000μmであることを特徴とする(15)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(18)本発明の第18は、前記圧縮面の材質が高分子であることを特徴とする(15)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(19)本発明の第19は、前記圧縮面の材質がカーボン系の導電性フィラーが練り込まれている、PS(ポリスチレン)系樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂、PP(ポリプロピレン)系樹脂、PE(ポリエチレン)系樹脂であることを特徴とする(15)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(20)本発明の第20は、前記圧縮面が50μm以上800μm以下のフィルム状媒体であることを特徴とする請求項15に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(21)本発明の第21は、 前記後面状加圧工程において、前記グラファイト化処理後フィルムと前記フィルム状媒体を複数枚同時に加圧することを特徴とする(15)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(22)本発明の第22は、前記原料フィルムを熱処理する際に、容器内の気体の圧力が、加熱炉の外部の気体の圧力よりも0.01kPa〜200kPa高くなる工程を含むことを特徴とする(1)又は(6)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
(23)本発明の第23は、ヒータを有する加熱炉を用いる熱処理によって原料フィルムをグラファイト化するグラファイトフィルムの製造方法であって、前記原料フィルムの面積が200cm2以上であり、容器内に前記原料フィルムを保持し、前記容器を前記ヒータ内に保持して前記原料フィルムを熱処理し、その熱処理中において前記ヒータが、加熱炉外に電流を流すことが可能な導電体と接触しないことを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法である。
(24)本発明の第24は、容器内に実質的に電流が流れないことを特徴とする(23)に記載のグラファイトフィルムの製造方法である。
ここで本発明(1)〜(8)を、さらに説明する。
本発明の一つの態様によれば、ヒータを有する加熱炉を用いる熱処理によって原料フィルムをグラファイト化するグラファイトフィルムの製造方法であって、原料フィルムの面積が200cm2以上であり、原料フィルムを第1の容器内に保持し、さらに第1容器を第2の容器内に保持し、第2容器をヒータ内に保持して原料フィルムを熱処理することを特徴としている。
なお、その熱処理中には、第2容器内に不活性ガスを流すことが好ましい。熱処理中において、第2容器とヒータは互いに非接触の状態に維持されることも好ましい。互いに非接触の第2容器とヒータとの間の距離は、1cm以上であることが好ましい。第1容器内には、原料フィルムを100枚以上保持することができる。
本発明の他の態様によれば、ヒータを有する加熱炉を用いる熱処理によって原料フィルムをグラファイト化するグラファイトフィルムの製造方法であって、原料フィルムの面積が200cm2以上であり、容器内に原料フィルムを保持し、容器をヒータ内に保持して原料フィルムを熱処理し、その熱処理中において容器とヒータは互いに非接触の状態に維持されることを特徴としている。この場合に、互いに非接触の容器とヒータとの間の距離は、1cm以上であることが好ましい。また、その容器内には、原料フィルムを100枚以上保持することができる。
本発明の(1)〜(24)によれば、平坦性、厚み、および熱拡散率のバラツキの少ないグラファイトフィルムを良好な生産性で製造することができる。
また本発明の(9)〜(14)によれば、皺、ひずみおよび割れのない平面性の高いグラファイトフィルムを提供することができる。
本発明の(15)〜(21)によれば、耐屈曲性、熱拡散性に優れ表面の厚みばらつき、皺、破けの少ないグラファイトフィルムの製造が可能である。また、圧縮工程の作業性を劇的に改善することができた。また本発明により、後面状加圧での大面積グラファイトフィルムの製造が可能となった。
<原料フィルム>
本発明によるグラファイトフィルムの製造方法において、原料フィルムとしては、高分子フィルムおよび/または炭素化した高分子フィルム(炭素質フィルムともいう)を用いることができる。
<高分子フィルム>
本発明おいて用いる高分子フィルムは特に限定はされないが、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリオキサジアゾール(POD)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBT)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾビスオキサザールポリベンゾビスオキサゾール(PBBO)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフェニレンベンゾイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾビスイミダゾール(PPBI)、ポリチアゾール(PT)などから選ばれる少なくとも1種を含む耐熱芳香族性高分子フィルムであることが、最終的に得られるグラファイトの電気伝導性および熱伝導性が良好になることから好ましい。これらの高分子フィルムは、公知の製造方法で得ることができる。なお、これらの高分子フィルムの中でもポリイミドフィルムは、種々の原料モノマーを適宜に選択することによって様々な構造および特性を有し得るので好ましい。
本発明においてグラファイトフィルムの原料となる高分子フィルムは、熱処理において、高分子中の炭素原子が、熱分解後もフィルム状の形態を保ったまま残存することが必要である。そのためには、熱処理において、高分子フィルム中の炭素原子は熱分解と同時に再結合して、高分子構造と炭素の六員環構造との中間の構造を有する炭素前駆体が形成される必要がある。したがって、熱処理工程において、熱分解により炭素原子のほとんどがガス化してグラファイトフィルムが得られない様な高分子フィルムは適さない。たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルムなどの高分子フィルムでは、熱処理により高分子が分解して、炭素原子のほとんどがガス状となって散逸し、グラファイトフィルムが得られない。良好なグラファイトフィルムを得るためには、高分子フィルムが熱硬化性高分子であることが好ましい。かかる観点から、高分子フィルムとして、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリベンゾイミダゾールフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオキサゾールフィルムなどの熱硬化性フィルムが好ましく挙げられる。さらに、強靭で高密度の炭素質フィルムが得られる観点から、高分子フィルムは、ポリイミドフィルムであることがより好ましい。こうして得られる炭素質フィルムを、さらに2400℃以上の高温で熱処理することにより、良質なグラファイトフィルムが得られる。
本発明において用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶剤溶液を、エンドレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延し、乾燥させ、イミド化させることにより製造される。本発明において用いられるポリアミド酸の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種を、実質的に等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。重合方法としては、あらゆる公知の方法を用いることができる。
ポリイミド重合に好適な酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)およびそれらの誘導体などが挙げられる。これらの酸無水物は、単独または、任意の割合で混合して好ましく用いられ得る。
これらの酸無水物のうち、本発明において用いられるポリイミド前駆体ポリアミド酸組成物に対して最も好適な酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物および/またはp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)であり、これらのうちいずれか単独もしくは両者の合計は、全酸二無水物に対して、40モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましい。
本発明にかかるポリイミド前駆体ポリアミド酸組成物において好適に用いられるジアミンとして、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの誘導体などが挙げられる。また、これらジアミン化合物の中で、4,4’−オキシジアニリンとp−フェニレンジアミンとを、(4,4’−オキシジアニリン):(p−フェニレンジアミン)のモル比で、4:6〜9:1の範囲で用いるのが好ましい。
ポリアミド酸を合成するための溶媒としては、アミド系溶媒、たとえば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
これらポリアミド酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法については、公知の方法を用いることができる。かかる方法として、熱イミド化法と化学イミド化法が挙げられる。熱イミド法は、ポリアミド酸溶液を熱処理することによりポリイミドフィルムを製造する方法である。化学イミド法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、無水酢酸などの酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどの第三級アミン類などに代表されるイミド化触媒とを作用させて化学的にポリイミドフィルムを製造する方法である。化学イミド化法に熱イミド化法を併用してもよい。
このようにして、100℃〜200℃の範囲におけるフィルム面方向の平均線膨張係数が32×10-6-1以下で初期引張弾性率が1.96GPa(200kgf/mm2)以上のポリイミドフィルムが得られる。また、強靭で内部に気孔がほとんどふくまれない良質の炭素質フィルムが得られる観点から、ポリイミドフィルムの100℃〜200℃の範囲におけるフィルム面方向の平均線膨張係数は、32×10-6-1以下が好ましく、20×10-6-1以下がより好ましく、15×10-6-1以下がさらに好ましい。100℃〜200℃の範囲におけるフィルム面方向の平均線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)を用いて、まず試料を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させたのち一旦室温(25℃)まで空冷し、再度10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させ、2回目の昇温時から100℃〜200℃の範囲において測定される。また、ひずみおよび割れの少ない炭素質フィルムが得られる観点から、ポリイミドフィルムの初期引張弾性率は、1.96GPa(200kgf/mm2)以上が好ましく、2.45GPa(250kgf/mm2)以上がより好ましく、2.94GPa(300kgf/mm2)以上がさらに好ましい。ここで、フィルムの初期引張弾性率は、ASTM D882に準拠して測定される。かかるポリイミドフィルム線膨張係数および初期引張弾性率の値は、炭素質フィルムの製造に大きな影響を与える。これらは出発原料である高分子フィルム内部での分子の配向性を反映したものであり、線膨張係数が小さいほど、また、初期引張弾性率の値が高いほど、分子の配向性が高くなる。特に、高分子フィルムであるポリイミドフィルムの線膨張係数が小さいほど、強靭な炭素質フィルムが得られやすい。
また、本発明において用いられるポリイミドフィルムの複屈折Δnは、強靭で内部に気孔がほとんど含まれない良質の炭素質フィルムが得られる観点から、0.10以上が好ましく、0.13がより好ましく、0.15以上がさらに好ましい。かかる複屈折Δnは、フィルム面方向の分子の配向性を直接反映する物性値であり、分子の配向性が高いほど、複屈折が大きくなる。
ここでいう複屈折とは、フィルム面内の任意の方向の屈折率と厚さ方向の屈折率との差を意味し、フィルム面内の任意の方向の複屈折Δnは以下の式(1)
Δn=(フィルム面内の任意の方向の屈折率Nx)−(厚さ方向の屈折率Nz)(1)
で与えられる。具体的な測定方法は、以下のとおりである。すなわち、フィルムから試料片をくさび形に切り出して、試料片の切り出し面にナトリウム光を当てて、偏光顕微鏡で観察すると干渉縞がみられる。この干渉縞の数をnとすると、複屈折Δnは、
Δn=n×λ/d (2)
で表される。ここで、λはナトリウム光の波長589nm、dは試料片の巾(nm)である。詳しくは「新実験化学講座」第19巻(丸善(株))などに記載されている。
<炭素化した高分子フィルム>
本発明では、いったん炭素化した高分子フィルム(炭素質フィルムともいう)を製造し、その後、さらに加熱することによりグラファイトフィルムを製造することができる。本発明における炭素化した高分子フィルムは、高分子フィルムを減圧下または不活性ガス中で予備加熱処理して得られる。この予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度保持を行なうことが望ましい。
<グラファイト化>
このようにして得られた炭素化した高分子フィルムを、さらに加熱してグラファイト化(黒鉛化ともいう)することができる。グラファイト化温度としては最低でも2400℃以上が必要であり、好ましくは2700℃以上、より好ましくは2800℃以上、さらに好ましくは2900℃以上である。
<グラファイト化の際の容器内の気体の圧力>
本発明では、前記原料フィルムを熱処理する際に、容器内の気体の圧力が、加熱炉の外部の気体の圧力よりも0.1kPa〜200kPa高くなる工程を含むことが好ましい。この圧力は、2kPa〜100kPa高くなることがより好ましく、5kPa〜50kPa高くなることがさらに好ましい。圧力を加熱炉の外部の気体の圧力よりも高くすることにより、加熱炉内部(ヒータ等)の劣化を抑止できる場合がある。
<原料フィルムのサイズ>
本発明で使用する原料フィルムの形態として、枚葉と長尺の2通りの場合がある。箱形容器に重ねて原料フィルムをセットする場合には、枚葉フィルムが好ましい。円筒に原料フィルムを巻き付ける場合には、長尺フィルムが好ましい。
枚葉フィルムの場合では、一辺が長いほどまた面積が大きいほど熱履歴にバラツキが発生するので、従来では一辺の長さが14cm未満で面積が200cm2未満の場合であっても、熱処理されたフィルムの特性(平坦性、厚み、熱拡散率)にバラツキが生じやすかった。しかし、本発明の方法では、一辺が14cm以上、さらには20cm以上、またさらに30cm以上であって、面積が200cm2、さらには500cm2、またさらには750cm2の高分子フィルムを用いても、平坦性、厚み、および熱拡散率のバラツキが小さいグラファイトフィルムを得ることが可能である。
フィルムが長尺の場合には、幅および長さが大きくなるほどまた面積が大きくなるほど熱履歴にバラツキが発生するので、従来では一辺の長さが20cm未満で面積が200cm2未満の場合でも、熱処理されたフィルムの特性(平坦性、厚み、熱拡散率)にバラツキが生じやすかった。しかし、本発明の方法では、幅が20cm以上さらには25cm以上で、長さが1m、さらには5m、またさらには20m、また面積が0.2m2、さらには1m2、またさらには5m2の高分子フィルムを用いても、平坦性、厚み、および熱拡散率のバラツキが小さいグラファイトフィルムを得ることが可能である。
<原料フィルムの厚み>
原料フィルムの厚みが薄くなるほど、当然ながらフィルム強度が弱くなり、熱履歴のバラツキに起因する熱処理後のフィルム特性のバラツキが発生しやすくなる。特に、原料フィルムの厚みが75μm以下の場合には、熱処理されたフィルムの特性(平坦性、厚み、熱拡散率)にバラツキが生じやすい。しかし、本発明の方法では、厚みが75μm以下、さらには50μm以下、またさらには25μm以下の高分子フィルムを用いても、平坦性、厚み、および熱拡散率のバラツキが小さいグラファイトフィルムを得ることが可能である。
<第1容器内の原料フィルムの保持方法>
本発明において、第1容器内に原料フィルムを保持する方法には、(1)枚葉の原料フィルムを箱形容器にセットする方法、および(2)長尺の原料フィルムを円筒に巻き付けてセットする方法がある。枚葉の原料フィルムの複数を箱形容器にセットする場合、それらの原料フィルムの間に黒鉛板を挟んでもよく、原料フィルムの複数枚を直接重ねてもよい。また、積層された原料フィルムの上には、黒鉛板の重しを加えてもよい。長尺の原料フィルムを円筒に巻き付ける場合には、内筒に巻き付けても、外筒に沿わせて巻き付けてもよい。第1容器としては、内筒だけを用いてもよいし、外筒だけを用いてもいいし、内筒と外筒の両方を用いてもよい。
<第1容器を第2容器内に保持する方法>
第1容器を第2容器内に保持しない場合、すなわち容器を2つ使用せずに1つの容器のみを使用して原料フィルムをグラファイト化する場合、ヒータに近い部分とヒータから離れた部分とにおいてフィルムに加わる熱履歴に差が生じ、熱処理されたフィルムの品質にバラツキが発生しやすい。
しかし、本発明では、原料フィルムを保持した第1容器をさらに第2容器内に保持することによって、第2容器を介して第1容器に熱が加わる過程で伝熱を均一化することができるので、第1容器中で作製されたグラファイトフィルムの品質にはバラツキが生じにくくなる。
なお、もしも第1容器と第2容器とが一体化していたとしても、本発明の作用・効果を奏する場合は、本発明については別々の容器であると判断する(すなわち第2容器内に第1容器が保持されたと判断する)。例えば、第1容器と第2容器とが一体成型により製造されたものであっても、本発明については別々の容器であると判断する。また本発明の第1の容器は、原料フィルムや原料フィルムの積み重なったもの(原料フィルムだけの積層体、原料フィルムと耐熱性フィルムからなる積層体など)が、加熱中に加熱炉内で移動したり崩れたりしないように保持する機能を有するものであればよく、一般に容器といわれる形状のものである必要はない。
<第2容器内の不活性ガス>
本発明においては、第2容器内に不活性ガスを流すことが好ましい。原料フィルムの黒鉛化過程では、そのフィルムから炭素、窒素、無機物などのガスが発生する。これらのガスがヒータに接触すれば、ヒータ寿命を低下させることがある。したがって、第2容器内に不活性ガスを流すことは、原料フィルムから発生する不所望なガスを炉内から効果的に押し出すことができるので好ましい。すなわち、原料フィルムから発生した不所望なガスをヒータと接触させないように取り出すことにより、そのガスによるヒータの消耗を防止することができる。また、第2容器内の不活性ガスは温度分布の均一化にも役立ち、特性バラツキが少ないグラファイトフィルムを得る観点からも好ましい。
第2容器内へ不活性ガスを注入する部分およびそこから抜き出す部分は、それぞれ1箇所またはそれ以上であってもよい。他方、第2容器には不活性ガスを注入する部分だけ設けられて、不活性ガスは容器の隙間から漏れ出すような設定であってもよい。しかし、第2容器から不活性ガスを抜き出す部分が存在する方が、原料フィルムから発生する不所望なガスを効果的に熱処理部から取り除くことができるので好ましい。
不活性ガスとしては、アルゴンや高純度アルゴンが好ましく用いられ得る。また、2000℃以下の領域では、窒素ガスを用いてもよい。特に、ヒータが窒素との反応性の低い材質である場合には、アルゴンに比べて安価である観点から窒素ガスが好ましい。
<容器とヒータの非接触>
本発明による原料フィルムのグラファイト化の熱処理過程では、容器とヒータは非接触であることが好ましい。本発明におけるヒータとは、発熱体のみに限定されず、発熱体を覆うものがある場合は、その覆われたもの全体をいう。また本発明における非接触とは、容器とヒータの加熱面とが空間(気体の層あるいは真空空間)により隔てられている状態をいう。(なお、もしも容器とヒータが一部分で接触していたとしても、本発明の作用・効果を奏する場合は、本発明については非接触と判断する。)容器とヒータが非接触であれば、ヒータ内での均一な通電発熱が可能となり、そのヒータによる加熱は容器内で部分的な偏りなしに均一に生じる。その結果、容器内で、品質のバラツキがない優れたグラファイトフィルムを得ることが可能になる。
他方、ヒータが容器に接触している状態でヒータに電気を印加すれば、その接触領域で容器への通電も生じるので、ヒータに発熱ムラが生じて容器の均一加熱が達成されず、原料フィルムのグラファイト化の均一性が充分にはなりにくい。
<容器とヒータの距離>
本発明において、互いに非接触の容器とヒータとの距離は、1cm以上、好ましくは2cm以上、さらに好ましくは3cm以上である。容器がヒータと近づけば、容器とヒータとの間で放電が生じて、容器およびヒータが消耗する。さらに、容器がヒータと接触していれば、ヒータに印加された電流の一部が容器に流れ、電流ムラが発生してヒータを劣化させる。容器とヒータとを1cm以上離すことによって放電を防止することができ、容器およびヒータの消耗を防止することができる。
<容器>
本発明において使用される容器の形状には特に制約を受けず、箱形や円筒状などの形状を適用することができる。容器の材質としては、例えばタングステン製、モリブデン製、黒鉛製などであり得る。本発明におけるように2500℃の温度領域まで通電ヒータによって加熱される用途の容器としては、取り扱いの容易さや工業的な入手の容易さなどの観点から黒鉛容器が特に好ましい。また、この場合の黒鉛は上記の温度領域まで加熱され得る限りにおいて主に黒鉛を含む種々の材料を含む広い概念であり、例えば等方性黒鉛や押出製黒鉛なども含まれ、電気伝導性と熱伝導性に優れかつ均質性にも優れる等方性黒鉛が容器の材質として特に好ましい。本発明おいて使用される容器の材質の熱伝導率は、5〜500W/(cm・K)、好ましくは20〜300W/(cm・K)、更に好ましくは50〜200W/(cm・K)である。
<ヒータと導電体の非接触>
本発明による原料フィルムのグラファイト化の熱処理過程では、前記ヒータは、加熱炉外に電流を流すことが可能な導電体と接触しないことが好ましい。本発明の導電体とは、電気抵抗率102〜109Ωmであるものをいう。加熱炉外に電流を流すことが可能な導電体とヒータが接触すると、漏電しヒータ電力を制御している機器に異常をきたしたり、ヒータ温度が上昇しないなどの問題が発生したりする場合がある。また、ヒータと導電体の接触部付近で放電(アーク)が発生し、ヒータあるいは接触している導電体が破壊される場合もある。またこの場合、容器内に実質的に電流が流れないことが好ましい。容器内電流が流れると、容器内に保持しているサンプルに、破れ、汚れなどのダメージを与える場合がある。
<グラファイトフィルムの平坦性>
本発明の方法で作製されるグラファイトフィルムの平坦性は、フィルムの波打ち高さが3mm以下、好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下である。波打ちが大きければ、グラファイト化後にフィルムの圧縮処理をした場合に、波打ち部が折れ重なって厚みが大きくなる。その結果、波打ちが大きなフィルム外周部を幅1cm程度でカッティング除去することが必要になり、グラファイトフィルムの収率が低下する。
<グラファイトフィルムの厚みとそのバラツキ>
本発明の方法で作製されるグラファイトフィルムの厚みは、原料フィルムに比べて60%以下になることが好ましく、さらに好ましくは55%以下である。そして、グラファイトフィルムの厚みのバラツキは、平均値に対して±5%以下である。
<グラファイトフィルムの熱拡散率とそのバラツキ>
本発明の方法で作製されるグラファイトフィルムの熱拡散率は、7.5cm2/s以上、好ましくは8.0cm2/s以上、さらに好ましくは9.0×10-42/s以上である。さらに、本発明においては、容器内の上部、中部、および下部の各位置において作製されたグラファイトフィルム(計3枚)のそれぞれの左上、左中、左下、右上、右中、右下、および中央(各フィルムについて7点)の総計21点に関して、熱拡散率のバラツキが±5%以下である。すなわち、どのフィルムのどこから取り出した部分においても、品質のバラツキが小さい。
以上のように、(1)原料フィルムを保持する第1容器を第2容器内に保持して第2容器内に不活性ガスを流し、(2)容器とヒータとを非接触にしてそれらの距離を1cm以上に保つにより、平坦性、厚み、および熱拡散率のバラツキの小さいグラファイトフィルムを生産性よく作製することが可能となる。
<耐熱性フィルム>
ここで、主に本発明の(9)〜(14)に用いる耐熱性フィルムについて説明する。
本発明において用いられる耐熱性フィルムは、グラファイトフィルム作製に用いられる高分子フィルムの熱分解温度以上の温度(すなわち、高分子フィルムが熱処理される温度)において、耐熱性を有すること(すなわち、熱分解しないこと)が必要である。ここで、高分子フィルムの熱分解温度は、その高分子フィルムを形成する高分子の種類によって異なるが、通常、高分子フィルムの熱分解および炭素化においては通常700℃以上の温度まで熱処理される。したがって、かかる熱処理温度、すなわち700℃以上の耐熱性を有することが好ましい。
ここで、本発明において用いられる耐熱性フィルムは、面積の大きい主面を有する形状のものであれば厚さに特に限定はなく、フィルムに限定されず、シート、板などが含まれる。
このような耐熱性フィルムとしては、特に制限はないが、銅、鉄、ステンレスなどの金属フィルム(金属シート、金属板を含む。以下同じ。)、アルミナなどのセラミック板、炭素フィルム(炭素シート、炭素板を含む。以下同じ。)などが挙げられる。ここで、炭素フィルムは、金属フィルムに比べて、高い耐熱性を有し、製造されるグラファイトフィルムへの金属不純物の混入が少ないという利点を有する。また、炭素フィルムは、セラミックス板に比べて、強靭であり、高い耐熱性を有するという利点を有する。かかる観点から、上記の耐熱性フィルム中において、炭素フィルムが好ましい。また、炭素フィルムにおいては、グラファイトフィルム(グラファイトシート、グラファイト板を含む。以下同じ。)がより好ましい。グラファイトフィルムは、高い耐熱性に加えて、高い熱伝導性を有する。このため、積層体中の高分子フィルムを均一に熱処理でき、フィルムにおける皺およびひずみの発生を抑制できる。耐熱性フィルムとしてのグラファイトフィルムの面方向の熱伝導率は、通常5〜500W/(cm・K)、好ましくは20〜300W/(cm・K)、更に好ましくは50〜200W/(cm・K)である。また、グラファイトフィルムは、柔らかく、かつ、高い摺動性を有するため、高分子フィルムの熱処理による炭素化工程において、フィルムの収縮による割れを防止できる。
これらのグラファイトフィルムとしては、等方性グラファイトフィルム(等方性グラファイトシート、等方性グラファイト板を含む。)、押し出し成型グラファイトフィルム(押し出し成型グラファイトシート、押し出し成型グラファイト板を含む。)、C/Cコンポジットフィルム(C/Cコンポジットシート、C/Cコンポジット板を含む。)、膨張グラファイトフィルム(膨張グラファイトシート、膨張グラファイト板を含む。)などが挙げられる。ここで、C/Cコンポジットとは、グラファイトを炭素繊維で補強した炭素繊維強化炭素複合材料をいう。これらのグラファイトフィルムは、市販品として入手が可能である。たとえば、東洋炭素(株)社製等方性グラファイトシート(商品名:IG−11、ISEM−3など)、東洋炭素(株)社製C/Cコンポジット板(商品名:CX−26、CX−27など)、SECカーボン(株)社製押し出しグラファイト板(商品名:PSG−12、PSG−332など)、東洋炭素(株)社製膨張グラファイトシート(商品名:PERMA−FOIL(グレード名:PF、PF−R2、PF−UHPL))などが挙げられる。
<グラファイトフィルムの製造方法>
ここで、主に本発明の(9)〜(14)におけるグラファイトフィルムの製造方法について説明する。
1)積層工程
本発明の一実施形態であるグラファイトフィルムの製造方法は、1枚以上の原料フィルム(高分子フィルム又は炭素質フィルム)と耐熱性フィルムとを交互に積層して積層体を得る積層工程を備える。
ここで、「交互に積層」とは、耐熱性フィルムと原料フィルムが1枚ずつ交互に積層されていてもよく、耐熱性フィルムの間に複数枚の原料フィルムが挟まれて積層されていてもよい。また、耐熱性フィルムに挟まれる原料フィルムの枚数が、場所によって異なっていてもよい。積層体において、耐熱性フィルムの間に挟まれる原料フィルムの枚数が増加するほど、グラファイトフィルムの製造効率は高くなるが、原料フィルムを挟む効果が小さくなるため製造されるグラファイトフィルムに皺またはひずみが発生しやすくなる。かかる観点から、耐熱性フィルムの間に挟まれる原料フィルムの枚数は、1枚〜50枚が好ましく、1枚〜20枚がより好ましく、1枚〜5枚がさらに好ましい。
また、原料フィルムを均一に炭素化させて、グラファイトフィルムに皺またはひずみが発生するのを抑制する観点から、耐熱性フィルムの大きさ(フィルム面の大きさをいう、以下同じ。)は、原料フィルムの大きさ(フィルム面の大きさをいう、以下同じ。)と同じか、原料フィルムの大きさより大きい方が好ましい。すなわち、原料フィルムの大きさと同じかまたはより大きい耐熱性フィルムの周縁以内に原料フィルムを積層させることが好ましい。ここで、原料フィルムの周縁は、耐熱性フィルムの周縁から5mm以上内側にあることが好ましい。たとえば、耐熱性フィルムと原料フィルムとの間の周縁間距離Lは5mm以上であることが好ましい。
2)炭素化工程
本発明では、いったん炭素質フィルム製造し、その後、さらに加熱することによりグラファイトフィルムを製造することができる。不活性ガス中あるいは真空中で、高分子フィルムの熱分解温度以上の温度で、積層体を熱処理することにより、高分子フィルムを炭素化して炭素質フィルムを得ることができる。
炭素質フィルム製造する際に、上記積層工程により作製される高分子フィルムの積層体は、たとえば、グラファイト製の箱の中にセットされる。このとき、高分子フィルムは、グラファイト製の箱と直接接触しないことが好ましい。高分子フィルムがグラファイト製箱と直接接触していると、グラファイト製箱から高分子フィルムに直接熱が伝わり、高分子フィルムのフィルム面内において、熱分布が不均一となり、温度差が生じるため、フィルムに皺またはひずみが発生しやすい。高分子フィルムの大きさよりも大きい耐熱性フィルムの周縁内に高分子フィルムを積層させることによって、高分子フィルムがグラファイト製箱に直接接触することを防止できる。
上記の積層体を保持するための容器としては、上記のグラファイト製箱に限定されない。積層体を保持するための容器は、グラファイトフィルムを製造する際の最高熱処理温度以上の耐熱性を有している材料であればよい。たとえば、金属製の箱、セラミック製の箱などが挙げられる。工業的な入手が容易であり、質量が小さく取り扱いが容易である観点から、グラファイト製の箱がより好ましい。
以下、炭素質フィルムの原料(すなわちグラファイトフィルムの原料でもある)となる高分子フィルムの代表例として、ポリイミドフィルムをとりあげて、炭素質グラファイトフィルムの製造方法について説明する。
ポリイミドフィルムを、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中、または、真空中で、ポリイミドフィルムの熱分解以上の温度で熱処理することにより、炭素化する。ここで、不活性ガス中または真空中で熱処理するのは、熱分解の際の炭素原子のガス化を防止して、炭素化を促進させるためである。真空中の真空度は、50Pa以下が好ましく、20Pa以下がより好ましく、10Pa以下がさらに好ましい。また、炭素化工程における熱処理は、熱分解の際の炭素原子のガス化を防止して、炭素化を促進させる観点から、昇温速度は0.1℃/分以上20℃/分以下が好ましく、最高熱処理温度で10分間以上60分間以下程度保持することが好ましい。
また、炭素化工程においては、皺およびひずみの少ない炭素質フィルムを得る観点から、フィルムの破壊が起きない程度に、積層体の高分子フィルムおよび耐熱性フィルムのフィルム面に垂直な方向に圧力を印加することが好ましい。圧力が小さすぎると、フィルムに皺またはひずみが発生するのを抑制する効果が小さくなる。圧力が大きすぎると、炭素化工程におけるフィルムの収縮のためにフィルムの破壊がおこる。かかる観点から、印加される圧力の大きさは、0.98Pa(0.01gf/cm2)以上9800Pa(100gf/cm2)以下が好ましく、0.98Pa(0.01gf/cm2)以上4900Pa(50gf/cm2)以下がより好ましい。ここで、印加される圧力の大きさとは、原料である高分子フィルムの面積に対する圧力の大きさではなく、製造された炭素質フィルムの面積に対する圧力の大きさをいう。積層体に圧力を印加する方法は、特に制限はなく、最も簡単な方法としては、耐熱性フィルムと高分子フィルムの積層体の上部に、適当な質量の重りを載せるだけでもよい。ここで、重りとして用いられる材料としては、特に制限はなく、ステンレスなどの金属板、アルミナなどのセラミック板、または炭素板などを用いることができる。また、重りの主面の大きさは、高分子フィルムの大きさと同じかまたはより大きいことが好ましい。すなわち、高分子フィルムの大きさと同じかまたはより大きい主面を有する重りの周縁以内に高分子フィルムを積層させることが好ましい。ここで、高分子フィルムの周縁は、重りの周縁から5mm以上内側にあることが好ましい。これにより、重りによる圧力が高分子フィルムに均一に加えられ、炭素化工程においてフィルムに皺、ゆがみまたは割れが発生するのを抑制することができる。
炭素質フィルムを製造する場合には、炭素化工程における最高熱処理温度は、700℃〜1600℃程度であり、耐熱性フィルムとして、銅、鉄、ステンレスなどの金属フィルム(金属シート、金属板を含む。)、アルミナなどのセラミック板、炭素フィルム(炭素シート、炭素板を含む。)など、広範囲の材料のフィルムを用いることができる。フィルムとして、グラファイトフィルムを製造する場合には、炭素化工程における最高熱処理温度は2400℃〜3200℃程度となるため、このような高温に耐えられる耐熱性フィルムとしては、事実上グラファイトフィルムが唯一の材料となる。
また、炭素質フィルムを製造する場合、原料である高分子フィルムの分子配向性が、製造される炭素質フィルムの物性に影響を与え、強靭性、機械的強度または密度の異なる炭素質フィルムが得られる。すなわち、同じ条件で熱処理した場合であっても、ポリイミドフィルムのフィルムの面方向の二次元的な分子配向性が異なるポリイミドフィルムを用いると、炭素配列が異なり物性が異なる炭素質フィルムが得られる。
以下では、主に本発明の(15)〜(21)におけるグラファイトフィルムの製造方法について説明する。
<グラファイト化処理後フィルムの圧縮>
本発明では、発泡したグラファイト化処理後フィルムを圧縮することで、耐屈曲性が非常に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。耐屈曲性の高まるメカニズムは、次の通りである。
グラファイト化工程の発泡ガスにより持ち上げられたグラファイト層は波状にうねっており、かなりの部分が面方向から大きく傾いている(はみ出している)場合がある。このようなグラファイト層は柔軟性に欠けるので、グラファイト化処理後フィルムは耐屈曲性は十分でない。
そこで、十分な耐屈曲性を付与するために、グラファイト化処理後フィルムの圧縮処理が必要となる。ここでいう圧縮処理とは、上下方向(厚み方向)への加圧処理をいう。発泡したグラファイト化処理後フィルムを圧縮すると、図2のようにグラファイト層を面方向に揃えることができるため、耐屈曲性が改善される。基本的には、圧縮処理時の圧力が大きいほど、薄いグラファイトフィルムが得られ、耐屈曲性が良くなる。
<後圧延工程>
グラファイト化処理後フィルムを圧縮する方法としては、後圧延工程と後面状加圧工程が考えられるが、本発明では、後面状加圧工程をおこなう。以下の点で、後面状加圧工程は後圧延工程よりも優れている。
グラファイト化処理後フィルムの圧縮方法として、上記特許文献5に記載の後圧延工程がある。具体的には、セラミック製やステンレス製の2本のローラーを通す方法が記載されている。後圧延工程の問題点は、上記の通りである。
<後面状加圧工程>
後圧延工程の問題点は、グラファイト化処理後フィルムを面状に加圧する後面状加圧工程により解決された。
後面状加圧工程では面全体に均一に加圧できるため、圧延工程と比較して耐屈曲性に優れ、厚みバラツキ、皺なども少ない良質のグラファイトフィルムを製造することが可能である。後面状加圧工程は、次の1〜6のような理由で後圧延工程より優れている。
(理由1)密度の小さなグラファイト化処理後フィルム(すなわち発泡度が高いグラファイト化処理後フィルム)は波打ちが多いため、後圧延工程により折れ皺(巻き込み皺)が発生する場合がある。一方、後面状加圧工程では、このような折れ皺(巻き込み皺)は発生し難い。
(理由2)密度の小さなグラファイト化処理後フィルムは厚みバラツキも大きいため、後圧延工程では均一に加圧することが難しい。一方、後面状加圧工程では、面接触で加圧するために、このような厚みバラツキに関係なく均一に加圧できる。
(理由3)後圧延工程では、金属ローラーのような強度の高いものでグラファイト化処理後フィルムを巻き込ませながら圧縮するためグラファイトフィルムを傷つけやすい。後面状加圧工程では、グラファイト化処理後フィルムを面状に加圧するために、圧力を強めてもグラファイトフィルムを傷つけ難い。
(理由4)密度の小さなグラファイト化処理後フィルムを薄くするためには、大きな圧縮圧力が必要となる。しかしながら後圧延工程では、圧縮圧力を大きくすると、線接触であるためグラファイトを傷つけやすい、折れ皺(巻き込み皺)も多く発生するという問題が発生する。一方、後面状加圧工程では、面接触であるために圧力を強めてもグラファイトを傷つけ難く、折れ皺(巻き込み皺)も発生しない。
(理由5)後圧延工程は、ニップ幅が固定されるために圧縮圧力の調節が難しい。一方、後面状加圧は、圧縮圧力の調節が可能であり、グラファイト化処理後フィルムの状態に応じて、圧力を調節できる。また、圧力を徐々に強めたり弱めたり調節が可能であり、グラファイト化処理後フィルムの状態に応じた圧縮が可能である。
(理由6)後圧延工程は、皺などが入り易いために慎重に処理する必要があり、作業に時間がかかる。一方、後面状加圧工程では、皺などが入りにくいために、作業性がよく、短時間での圧縮が可能である。また後述するように、フィルム状媒体と交互にグラファイト化処理後フィルムを積層して圧縮するなど、複数枚同時の圧縮も可能である。
本発明に係るグラファイトフィルムの製造方法においては、前記グラファイト化工程を経てグラファイト化した高分子フィルム、つまりグラファイト化処理後フィルムを、さらに、面状に加圧する(後面状加圧工程)。この工程により、耐屈曲性、熱拡散率に優れ、表面の傷、凹みが少なく、皺が少なく、平坦性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。この工程は、特に耐屈曲性を向上させるためには重要である。後面状加圧工程は、室温でも行うことができる。後面状加圧工程においては、前記グラファイト化処理後フィルム以外のフィルム状媒体とともに、面状に加圧することが好ましい。
また、前記グラファイトフィルムが複数枚積層され配置された状態で面状に加圧することが好ましく、グラファイトフィルム自体が緩衝材の役割を果たすので、表面の傷が少なく、平坦性に優れたグラファイトフィルムを得ることができる。
後面状加圧は、単板プレス、真空プレス等で実施され得る。より具体的には、グラファイトフィルムを圧縮成型機、プレス機、ホットプレス機、単板プレス機といった面状に加圧できる装置を用いて加圧する方法やプラスチック板、セラミック板、金属板にグラファイトフィルムを挟みボルトで締め付ける方法が挙げられる。これらの方法を用いることにより、面状に一様に加圧することが可能となり、グラファイト層が破損することなく圧縮され、熱拡散率の低下を引き起こさず、熱拡散率の高い、密度が高く、表面の傷が少なく、皺の少ないグラファイトフィルムを得ることができる。
また、加圧工程では、加圧中に圧力を変化させることや、加圧を数段階に別けて実施することも可能である。波打ちの大きなグラファイト化処理後フィルムについては、はじめから大きな圧力で加圧すると、皺や折れ皺(巻き込み皺)を引き起こす場合があり、このような場合、まず始めに弱い圧力で予備加圧し、予備加圧後更に大きな圧力で加圧するとよい。また、単板プレス機、フィルム状媒体などの厚み公差により圧縮むらが発生する場合もあるが、このような場合は、一度加圧し、グラファイト化処理後フィルムの位置を変更し、再度加圧すると厚みバラツキの少ないグラファイトフィルムが得られる。
<後面状圧縮工程の課題>
しかしながら、本発明者らの検討により、後面状加圧工程にも、静電気発生の問題があることが明らかになった。すなわち静電気により、グラファイトフィルムに皺が発生したり、破けが発生したり、グラファイトフィルムの外観が劣化する場合がある。静電気の発生は後面状加圧工程が、面接触でフィルムを圧縮することに由来する。特に圧縮圧力が高い場合、面積が大きい場合、圧縮時の接触面の表面粗さが小さい場合などは、グラファイトフィルムを圧縮媒体から剥がせないほどに非常に大きな静電気が発生し、作業性を極端に低下させることがあった。
<圧縮面>
圧縮面とは、グラファイト化処理後フィルムの後面状加圧工程において、圧縮の際、グラファイト化処理後フィルムと面状に接触している面である。例えば、単板プレス機を使用して後面状加圧工程を実施する場合、圧縮面は、圧縮時にグラファイト化処理後フィルムと接触している面である。また、高分子フィルムでグラファイト化処理後フィルムを挟んで、それを単板プレス機を使用して後面状加圧工程を実施する場合は、圧縮面は高分子フィルムの表面である。
<圧縮面の表面抵抗率>
後面状加圧工程を実施後、圧縮面からのグラファイトフィルムの引き剥がす工程(独立回収工程)では、強い静電気が発生する。この静電気により、独立回収工程の作業性が悪くなるばかりか、グラファイトフィルムに皺、破けが発生する場合もあり、静電気によるグラファイトフィルムと圧縮面の貼りつきは深刻な問題であることが明らかになった。
そこで、本発明では、グラファイトフィルムと圧縮面との静電気を抑制するため、圧縮面の表面抵抗率を小さくした。一般的に、表面の電気抵抗が小さいと帯電した電子(あるいはホール)が自由に移動できるために静電気が発生しにくいと言われている。通常静電気を除去するために求められる表面抵抗率は1×109Ω/□〜1×1012Ω/□であると言われている。
しかしながら、本発明の後面状加圧工程における圧縮圧力は非常に大きなもので、発生する静電気の量も大きいため、表面抵抗率が1×109Ω/□〜1×1012Ω/□では不十分であることがわかった。特に後面状加圧工程の圧縮圧力が大きな場合、グラファイトフィルムのサイズが大きい場合、圧縮面の表面粗さが小さい場合ほど、発生する静電気量は大きいため、表面抵抗率が小さな圧縮面を使用したほうがよい。
本発明の後面状加圧工程における圧縮面の表面抵抗率は1×109Ω/□以下、好ましくは1×107Ω/□以下、さらに好ましくは1×105Ω/□以下である。圧縮面の表面抵抗率が1×109Ω/□より大きい場合、静電気の発生量が大きく、グラファイトフィルムと圧縮面を引き剥がし難くなる。特に、面状に圧力8MPa以上で加圧した場合は、圧縮面の表面抵抗率は1×107Ω/□以下がよい。
<後面状加圧工程の圧力>
本発明の後面状加圧工程のグラファイト化処理後フィルムを面状に加圧する圧力は、2MPa以上40MPa以下であり、好ましくは4MPa以上20MPa以下、更に好ましく8MPa以上15MPa以下である。グラファイト化処理後フィルムを面状に加圧する圧力が2MPaより小さい場合は、圧力が小さすぎて十分に圧縮処理できず、耐屈曲性の悪いグラファイトフィルムとなる。一方、グラファイト化処理後フィルムを面状に加圧する圧力が40MPaより大きいと、圧力が大きすぎて圧縮処理時にグラファイトフィルムが破壊されてしまい、耐屈曲性、熱拡散性、外観の悪いグラファイトフィルムとなる。また、圧力が大きい方が圧縮面からのグラファイトフィルム引き剥がし性が悪くなる傾向がある。
<圧縮面の表面粗さRa>
後面状加圧工程において、圧縮面とグラファイト化処理後フィルムを接触させて圧縮するために、圧縮面の表面粗さRaが出来上がりのグラファイトフィルムの表面平滑性を左右する。圧縮面の表面粗さが大きい場合は、出来上がりのグラファイトフィルムの表面粗さも大きくなり、表面平滑性が悪くなる。圧縮面の表面粗さが小さい場合は出来上がりのグラファイトフィルムの表面粗さも小さくなり、表面平滑性がよくなる。出来上がりのグラファイトフィルムの表面平滑性が良い方が、他材料との複合の際に有利であり、また耐屈曲性や引っ張り強度などの機械特性も優れている。したがって接触面の表面粗さRaは小さいものがよい。
本発明の圧縮面のJIS B0652に記載の光波干渉式表面粗さ測定法で得られる表面粗さRaは、通常0.005〜3.000μm、好ましくは0.007〜2.000μm、さらに好ましくは0.015〜1.500μmである。圧縮面の表面粗さが3.000μmより大きい場合、出来上がりのグラファイトフィルムの表面性が悪くなる。一方、圧縮面の表面粗さが0.005μmより小さい場合、発生する静電気の量が大きくなり、圧縮面からのグラファイトフィルム引き剥がし性が悪くなる。
<グラファイト化処理後フィルムの面積>
本発明では、大面積のグラファイト化処理後フィルムを用いて、大面積のグラファイトフィルムを得ることが好ましい。グラファイト化処理後フィルムの面積が小さいと発生する静電気は小さいが、得られるグラファイトフィルムのサイズも小さくなるという問題がある。一方、静電気が発生しやすいものの、グラファイト化処理後フィルムの面積が大きいと、サイズの大きいグラファイトフィルムを製造できるので好ましい。
したがって、本発明で使用されるグラファイト化処理後フィルムの面積は、通常、100cm2以上10000cm2以下、好ましくは225cm2以上6400cm2以下、更に好ましくは400cm2以上2500cm2以下である。
本発明では各種検討の結果、100cm2以上のグラファイト化処理後フィルムの製造が可能となった。後面状加圧工程を施すグラファイト化処理後フィルムの面積が100cm2以上になると、静電気発生の問題が顕著に現れてくるが、上述のような圧縮面を使用することで、静電気を抑制した状態で後面状加圧工程を施すことができることがわかった。(また今回、面積が100cm2より小さい場合は、静電気の発生が問題になりにくいこともわかった。)グラファイト化処理後フィルムの面積が10000cm2以下までは、静電気を抑制した状態で後面状加圧工程を施すことが比較的容易である。
<圧縮面の材質>
本発明の圧縮面の材質としては、例えば、高分子、セラミック、金属、ゴムなどが挙げられるが、表面抵抗率が1×109Ω/□以下であれば、その材質は特に限定されない。
<金属材料>
金属材料は非常に小さな表面抵抗率(1×105Ω/□以下)を示すことが知られており、後面状加圧工程後のグラファイトフィルムと圧縮面の引き剥がし性が優れている。しかしながら本発明のように非常に大きな圧力で圧縮する場合、金属は硬く柔軟性に欠けるため、金属がグラファイトフィルムを傷つけることがある。また金属は延性と展性を示すために塑性変形しやすく、いったん塑性変形してしまうと、その後は圧縮面の平坦性を保つことができず、繰り返しの使用が困難な場合がある。
<高分子材料>
一方、高分子は粘弾性体であるために、圧縮面に使用すると、グラファイトフィルムを傷つけることなく圧縮できる(高分子の弾性変形により、局所的な加圧が緩和されるため、均一な加圧が可能となる)。また、金属と違って原子位置の流動による変形がないため、繰り返しの使用が可能である。
しかしながら、通常の高分子の表面抵抗率は非常に大きく、後面状加圧工程後のグラファイトフィルムと圧縮面の引き剥がし性が悪いといった短所もある。しかし下記の通り、この問題は克服可能である。
本発明で使用される高分子材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)系樹脂、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)系樹脂、PVAc(ポリ酢酸ビニル)系樹脂、アクリル系樹脂、PP(ポリプロピレン)系樹脂、PE(ポリエチレン)系樹脂、PS(ポリスチレン)系樹脂、ABS系樹脂などの汎用樹脂をはじめ、PC(ポリカーボネート)系樹脂、PF(ポリフェノール)系樹脂、EP(エポキシ)系樹脂、MF(メラミン)系樹脂、PA(ポリアミド)系樹脂、PI(ポリイミド)系樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)系樹脂、PAN(ポリアクリルニトリル)系樹脂、または、これらの共重合体などを挙げることができる。また、圧縮面として使用した場合にグラファイトフィルムを傷つけにくいという理由から、PP(ポリプロピレン)系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)系樹脂、PE(ポリエチレン)系樹脂、PS(ポリスチレン)系樹脂が好ましい。
<導電性、静電気防止高分子>
導電性あるいは静電気防止の効果がある高分子材を圧縮面として使用すると、グラファイトフィルムを傷つけず、圧縮面からのグラファイトフィルムの引き剥がしの作業性もよくなる。また、高分子であるため、圧縮面の変形もなく、繰り返しの使用が可能である。
導電性高分子材料には、電子の移動を可能にする化学構造を持った、いわゆる導電性ポリマーと、界面活性剤、電解質などの化合物や金属粉、カーボンブラックなどの導電性フィラーを練り込んだ、導電性樹脂組成物とがある。
実用化という点では、フィラー系導電性樹脂組成物が最も先行しており、次いで、界面活性剤や親水ポリマーを練り込んだ化合物系導電樹脂組成物が、静電気防止・帯電防止・制電性材料として一般的に使用されている。例えば、太平化学製品株式会社より入手が可能な、PS素材にカーボン系のフィラーを練り込んだタイプのシート(グレード:CMPS1050E)の表面抵抗率は1×104Ω/□以下であり、静電気防止効果が大きい。フィラー系導電性樹脂組成物の表面抵抗率は、一般的に他の導電性高分子材料よりも低いので、本発明の圧縮面に適している。
導電性ポリマーとしては、例えばポリピロール、ポリチオフェン、およびポリアニリンなどを挙げることができる。これらの導電性ポリマーを単独で使用したもの、あるいは絶縁性のポリマーとブレンドした高分子材料が実用化されている。例えば(株)アキレスから入手できるSTポリは、導電性ポリマーであるポリピロールをPET基材に薄くコーティングしたものであり、表面抵抗率は1×106Ω/□以下であり、静電気防止効果が大きい。化合物系導電性樹脂組成物では、 界面活性剤および親水性ポリマーを用いたものは、半導体のレベルであり、主として帯電防止や静電気対策を必要とする分野で使用されている。
<各種導電性高分子の耐久性>
後面状加圧工程に、導電性ポリマーや界面活性剤など導電性の媒体を表面にコーティングしたタイプのシートを用いた場合、耐久性が良くないことが多い。圧縮処理の際、非常に大きな圧力でグラファイトフィルムと圧縮面を密着させるため、圧縮のたびに表面コーティングが少しずつ剥がれていき、静電気抑制効果が低下するものと考えられる。
一方、導電性フィラーを練り込むタイプのシート、すなわちフィラー系導電性樹脂組成物からなるシートは、シートの内部に含有されている導電性フィラーを介して電子が移動するため、後面状加圧工程において耐久性がある。また導電性ポリマー(高分子材料そのものが導電性を示すもの)もシート内部を電子が移動できるために、同様に耐久性がある。
したがって、本発明で使用される圧縮面としては、耐久性の観点から導電性フィラーを樹脂中に練り込んだタイプのもの、導電性ポリマーなどが適している。
<導電性フィラー>
フィラー系導電性樹脂組成物中の導電性フィラーとして、銅、銅合金、銀、ニッケル、低融点合金(ハンダなど)の金属微粒子、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウムなどの金属酸化物微粒子、各種のカーボンブラック、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマー粒子、金属を被覆したポリマー微粒子、貴金属を被覆した銅や銀の微粒子、金属繊維、炭素繊維など、極めて多種多様なものを使用することができる。
特に、グラファイトフィルムの後面状加圧工程においては、同じ炭素材料であるカーボンブラックなどのカーボン系のフィラーを用いることが好ましい。これは、圧縮されるグラファイトフィルムと同等の硬度を示すカーボン系のフィラーであれば、圧縮時にグラファイトフィルムを傷つけないために、非常に表面性のよいものが得られる。また、グラファイトフィルムと同等の帯電列であるため、静電気の発生も効果的に抑制できる。
<本発明における導電性、静電気防止高分子の圧縮面での使用の利点>
本発明の後面状加圧工程において使用される圧縮面として、上述したような導電性、静電気防止高分子材料の使用は非常に優れている。圧縮面として導電性、静電気防止高分子材料を使用した場合、金属材料、絶縁性の高分子材料を使用した場合より次の点で優れている。
1)静電気が発生しにくいので、後面状加圧工程後のグラファイトフィルムと圧縮面の引き剥がしがスムーズとなる。
2)高分子材料は粘弾性を示す材料であるため、後面状加圧工程時にグラファイトフィルムを傷つけない。(金属材料の場合、傷がつく)
3)高分子材料は変形に対しても強く、後面状加圧工程後に圧縮面の変形がないため繰り返しの使用が可能である。(金属材料の場合、一度の圧縮で変形し、その変形が次の圧縮の際に傷、押ムラの原因となる)
4)また、高分子材料は金属材料と比較して軽いために、作業が容易である。この差は、特に複数のグラファイト化処理後フィルムや圧縮面を同時にプレスする際に顕著となる(後述)。
<フィルム状媒体>
本発明の後面状加圧工程における圧縮面を持つ媒体として、フィルム状媒体を用いることができる。フィルム状媒体の素材としては、例えば上述したようなPS(ポリスチレン)系樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂、PP(ポリプロピレン)系樹脂、PE(ポリエチレン)系樹脂などの高分子材料が挙げられる。また、銅、アルミニウム、鉄、それらの合金などの金属材料、セラミック、ゴム材なども用いることができる。フィルム状媒体を使用したグラファイト化処理後フィルムの圧縮例を図5に示す。図5の51がフィルム状媒体であり、フィルム状媒体でグラファイト化処理後フィルムを挟み、それを単板プレス機を使用して面状に圧縮する。
<フィルム状媒体の厚み>
本発明の後面状加圧工程において使用するフィルム状媒体の厚みは、通常、50μm以上800μm以下であり、好ましくは200μm以上600μm以下、さらに好ましくは200μm以上400μm以下である。フィルム状媒体の厚みが50μmより薄い場合は、フィルムが薄すぎてこしがないために、図6の(61)のような外部の凹凸をグラファイトフィルムに転写してしまう。一方、フィルム状媒体の厚みが800μmより厚い場合は、後述するように複数枚同時に処理する場合に嵩張ってしまう。また、フィルム状媒体の重量が重くなると作業性が悪くなるので、フィルム媒体の厚みは800μm以下がよい。
<フィルム状媒体とグラファイト化処理後フィルムの接触方法>
本発明のフィルム状媒体とグラファイト化処理後フィルムの接触方法として、例えば、〔フィルム状媒体/1枚のグラファイト化処理後フィルム/フィルム状媒体〕をサンドイッチ状に挟む方法を例示することができる。フィルム状媒体とグラファイト化処理後フィルムの積層体を単板プレス機などで面状に圧縮することで、後面状加圧工程が実施できる。
<フィルム状媒体とグラファイト化処理後フィルムの接触方法(複数枚同時)>
一度に複数枚のグラファイト化処理後フィルムの後面状加圧工程をおこなうことにより、グラファイトフィルムの生産性を向上させることが可能である。例えば、〔フィルム状媒体/1枚のグラファイト化処理後フィルム〕を交互に積み重ねる方法、〔フィルム状媒体/複数枚のグラファイト化処理後フィルム/フィルム状媒体〕をサンドイッチ状に挟む方法、〔フィルム状媒体/複数枚のグラファイト化処理後フィルム〕を積み重ねる方法などを例示することができる。
このように積層したフィルム状媒体とグラファイト化処理後フィルムの接触体を単板プレス機などで面状に圧縮することで、後面状加圧工程が実施できる。
この複数枚積層して後面状加圧工程を実施することで、一度に多くのグラファイトフィルムが作製できると同時に、積層したフィルム状媒体とグラファイト化処理後フィルムの接触体自体がクッション材として作用し、フィルムの圧縮ムラも改善できる。
<後面状加圧工程後のグラファイトフィルムの傷>
グラファイトフィルムに傷があると、傷の部分に折り曲げに対する応力が集中するために耐屈曲性が悪くなる場合がある。また、熱拡散性、電気伝導度、引っ張り強度などグラファイトフィルムの優れた特性が損なわれる原因となる。後面状加圧工程におけるグラファイトフィルムの傷の発生は、圧縮面に金属などの硬い材料を使用した場合などに起こりやすい。また、後面状加圧工程時に大きな静電気が発生した場合は、圧縮面からグラファイトフィルムを取り外す際に傷が発生する場合がある。
<後面状加圧工程後のグラファイトフィルムの厚みムラ>
グラファイトフィルムに厚みムラがあると、厚みの厚い部分に折り曲げに対する応力が集中するために耐屈曲性が悪くなる場合がある。また、熱拡散性、電気伝導度、引っ張り強度などグラファイトフィルムの優れた特性が損なわれる原因となる。
密度の小さなグラファイト化処理後フィルムは厚みバラツキも大きいため、後圧延工程では均一に加圧することが難しい。しかしながら、後面状加圧工程では、面状に加圧するので、厚みバラツキがあっても均一に加圧できる。
<用途など>
本発明のグラファイトフィルムは、柔軟性、電気伝導性に優れるため、この特徴を活かした用途に特に適している。グラファイトフィルムの熱伝導に優れるという特徴は、熱を移動させる、熱を逃がす、熱を広げる、熱を均一にする、熱応答を早くする、早く暖める、早く冷ますといった効果が必要な用途には適している。熱を瞬時に広げることで急激な温度変化を防止緩和したり、局所的な熱の集中を回避したりすることが可能である。またその逆で、急激な変化を起こさせたり、わずかな熱の変化を検知したりする用途に使用することが可能である。熱が緩和されることで高温環境下においても強度、接着性を確保できる。また、均一かつ正確に熱を伝えることにより、液晶ディスプレイなどの高精度、高品位、高画質といった特性改善も可能になる。各種製品の製造装置に用いた場合には、熱を早く、大量に輸送できる特長を活かし、コンタクトタイム短縮、加熱・冷却効率改善、乾燥効率改善、高速化、待ち時間短縮といった生産性の向上が可能になる。また、熱の均一化や素早い輸送により、不良低減、保温機能も高めることが可能となる。また、様々な機器に採用することで、省スペース化、薄膜化、軽量化、機構の単純化、設置の自由度改善を可能とし、余計な部品を無くすことで、省電力化、静音化も可能となる。また、熱を逃がすことが可能なため、ヒートサイクル環境試験やアニ−ル処理でも特性劣化なく、半田耐熱、接着層の密着性、耐熱性、信頼性、耐久性が改善でき、また断熱性を高めたり、熱に弱い部品から守ったりすることも可能となる。その結果、メンテナンスレス、コストダウンにつながり、安全性も改善することが可能となる。
具体的な用途として、以下のものがあげられる。例えば、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン、ワードプロセッサ、キーボード、ゲーム等の電子機器、ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機器、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器。液晶ディスプレイ、透過型液晶表示装置、反射型LCDパネル、プラズマディスプレイ、SED、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクター、リアプロジェクター、液晶パネル、バックライト装置(ばらつき防止、温度ムラ改善)、TFT基板、電子放出素子、電子源基板とフェースプレート(軽量化)、表示パネルフレームとの複合、発光素子、電荷注入型発光素子、時計等の光学・表示機器及びその部品。レーザー、半導体レーザー、発光ダイオード、蛍光灯、白熱電球、発光ドット、発行素子アレー、照明ユニット、平面発光装置、原稿照明装置等の発光・照明装置。インクジェット(熱エネルギーを利用してインクを途出する)用の単体もしくは複数からなる記録ヘッド(ヒータ、断熱材、蓄熱層等)、ラインヘッド、長尺インクヘッド、固体インクジェット装置、インクジェットヘッド用放熱板、インクカートリッジ、インクジェットヘッド用シリコン基板、インクジェット駆動ドライバ、インクジェット記録紙を加熱するための加熱源(ハロゲンランプヒータ)等のインクジェットプリンタ(インクヘッド)装置及びその部品。トナーカートリッジ、レーザー光源を有する装置、走査光学装置(光線出射ユニット、偏向走査ポリゴンミラー、ポリゴンミラー回転駆動モーター、感光体ドラムへ導く光学部品)、露光装置、現像装置(感光ドラム、光受容部材、現像ローラ、現像スリーブ、クリーニング装置)、転写装置(転写ロール、転写ベルト、中間転写ベルト等)、定着装置(定着ロール(芯、外周部材、ハロゲンヒータ等)、サーフヒータ、電磁誘導加熱ヒータ、セラミックヒータ、定着フィルム、フィルム加熱装置、加熱ローラ、加圧ローラ・加熱体、加圧部材、ベルトニップ)、シート冷却装置、シート載置装置、シート排出装置、シート処理装置等からなる電子写真装置・画像形成装置及びその部品。定着装置ではグラファイトフィルムの使用による熱特性の改善効果は顕著であり、幅方向の画質ムラ、画質欠陥、連続通紙における画質バラツキ、立ち上がり・下がり時間、リアルタイム対応、温度の高追従性、通紙部と非通紙部の温度差、皺、強度、省電力、オンデマンド加熱、高温オフセット及び低温オフセット、ヒータ周辺部材の過昇温、ヒータ割れが大幅に改善できる。熱転写式記録装置(リボン)、ドットプリンタ、昇華プリンタ等のその他記録装置。半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、液晶表示素子駆動用半導体チップ、CPU、MPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品。プリント基板、リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、実装基板、高密度実装プリント基板、(テープキャリアパッケージ)、TAB、ヒンジ機構、摺動機構、スルーホール、樹脂パッケージング、封止材、多層樹脂成形体、多層基板等の配線基板。CD、DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ブルーレイディスク、DRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、光記録再生装置、磁気記録再生装置、光磁気記録再生装置、情報記録媒体、光記録ディスク、光磁気記録媒体(透光性基板、光干渉層、磁壁移動層、中間層、記録層、保護層、放熱層、情報トラック)、受光素子、光検出素子、光ピックアップ装置、磁気ヘッド、光磁気記録用磁気ヘッド、半導体レーザチップ、レーザダイオード、レーザー駆動IC等の記録装置、記録再生装置及びその部品。デジタルカメラ、アナログカメラ、デジタル一眼レフカメラ、アナログ一眼レフカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、カメラ一体型VTR用、カメラ一体型VTR用IC、ビデオカメラ用ライト、電子閃光装置、撮像装置、撮像管冷却装置、撮像装置、撮像素子、CCD素子、レンズ鏡筒、イメージセンサ及びそれを用いた情報処理装置、X線吸収体パターン、X線マスク構造体、X線撮影装置、X線露光装置、X線平面検出器、X線デジタル撮影装置、X線エリアセンサー基板、電子顕微鏡用試料冷却ホルダ、電子ビーム描画装置(電子銃、電子銃、電子ビーム描画装置)、放射線検出装置及び放射線撮像システム、スキャナー、画像読取装置、動画用撮像素子と静止画用撮像素子、顕微鏡等の画像記録装置及びその部品。アルカリ電池、マンガン電池等の一次電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素、鉛蓄電池等の二次電池、電気二重層キャパシタ、電解コンデンサ、組電池、太陽電池、太陽電池モジュール設置構造体、光電変換基板、光起電力素子アレー、発電素子、燃料電池(発電セル、筐体外部、燃料タンク内部)等のバッテリー機器等の放熱材料。電源(整流ダイオード、トランス)、DC/DCコンバータ、スイッチング電源装置(フォワード型)、電流リ−ド、超電導装置システム等の電源及びその部品。モーター、リニアモーター、平面モーター、振動波モーター、モーターコイル、回転制御駆動用の回路ユニット、モータドライバ、インナーロータモーター、振動波アクチュエーター等のモーター及びその部品。真空処理装置、半導体製造装置、蒸着装置、薄膜単結晶半導体層製造装置、プラズマCVD、マイクロ波プラズマCVD、スパッタリング装置、減圧チャンバー、真空ポンプ、クライオトラップ・クライオポンプ等の真空排気装置、静電チャック、真空バキュームチャック、ピンチャック型ウエハチャック、スパッタリング用ターゲット、半導体露光装置、レンズ保持装置及び投影露光装置、フォトマスク、等の堆積膜製造装置(温度一定、品質安定)及びその部品。抵抗加熱・誘導加熱・赤外線加熱による熱処理装置、乾燥機、アニール装置、ラミネート装置、リフロー装置、加熱接着(圧着)装置、射出成型装置(ノズル・加熱部)、樹脂成形金型、LIM成型、ローラ成型装置改質ガス製造(改質部、触媒部、加熱部等)スタンパ、(フィルム状、ロール状、記録媒体用)、ボンディングツール、触媒反応器、チラー、カラーフィルタ基板の着色装置、レジストの加熱冷却装置、溶接機器、磁気誘導加熱用フィルム、結露防止ガラス、液体残量検知装置、熱交換装置等の種々製造装置及びその部品。断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置。各種電子・電気機器、製造装置のシャーシ、筐体、外装カバー。放熱器、開口部、ヒートパイプ、ヒートシンク、フィン、ファン、放熱用コネクタ等の放熱部品。ペルチェ素子、電気熱変換素子、水冷部品等の冷却部品。温度調節装置、温度制御装置、温度検出装置及び部品。サーミスタ、サーモスイッチ、サーモスタット、温度ヒューズ、過電圧防止素子、サーモプロテクタ、セラミックヒータ、フレキシブルヒータ、ヒータと熱伝導板と断熱材の複合品、ヒータコネクタ・電極端子部品等の発熱体関連部品。高放射率を有する放射部品、電磁波遮蔽、電磁波吸収体等の電磁シールド部品、アルミ、銅、シリコン等の金属との複合品、窒化ケイ素、窒化ホウ素、アルミナ等のセラミックとの複合品として好適である。
<本発明の(1)〜(8)の実施例>
以下においては、本発明の種々の実施例が、いくつかの比較例と共に説明される。それらの実施例と比較例においては、高分子フィルムとして、ポリイミドフィルムが作製された。
具体的には、まず4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液にビロメリット酸二無水物の1当量を溶解して、ポリアミド酸溶液(18.5wt%)が調製された。
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加して脱泡した。
次に、この混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布された。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンおよび遠赤外線ヒータを用いて乾燥された。
仕上がり厚みが50μmの場合におけるフィルム作製用の乾燥条件は、以下のようであった。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで120℃において240秒間乾燥されて、自立性を有するゲルフィルムにされた。このゲルフィルムは、アルミ箔から引き剥がされてフレームに固定された。さらに、固定されたゲルフィルムは、熱風オーブンにて120℃で20秒間、275℃で27秒間、400℃で29秒間、450℃で33秒間、さらに遠赤外線ヒータにて460℃で15秒間だけ段階的に加熱されて乾燥された。
以上のようにして、厚さ50μmのポリイミドフィルム(弾性率3.1GPa、吸水率2.5%、複屈折0.10、線膨張係数3.0×10-5/℃)が作製された。
(実施例1)
本発明の実施例1においては、上述のようにして作製された20cm×30cm(600cm2)のポリイミドフィルムを黒鉛板に挟み、電気炉を用いて窒素雰囲気下で1000℃まで昇温した後、その1000℃で1時間熱処理して炭化フィルムを得た。
その後、図8の模式的な断面図に示されているように、100枚の炭化フィルム12が、厚み約0.25mmの黒鉛板14で交互に挟まれた状態で、約4cmの高さの箱形(直方体)の第1容器42内に保持された。なお、本願の図面においは、図面の明瞭化と簡略化のために、限られた枚数のフィルムのみが示されており、実際の枚数とは対応していない。
第1容器42は、さらに第2容器44内に保持されて、炉4内にセットされた。この場合、図8に示されているように、第2容器44は、ヒータ42に接触させてセットされている。そして、この第2容器44内に高純度アルゴンガス32を注入してその容器から排気ガス34を排出しながら2900℃まで加熱し、炭化フィルム12からグラファイトフィルムが作製された。
この実施例1における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況が表1にまとめて示されている。なお、表1において、グラファイトフィルムの種々の特性およびヒータの損傷状況は相対的評価で示されており、三角印は並の評価、丸印は好ましい評価、二重丸印はより好ましい評価、2つの二重丸印は最も好ましい評価、そしてバツ印は不良の評価を表している。
(実施例2)
実施例においては、幅20cm×長さ30m(6m2)のポリイミドフィルムを切り取り、外径6cmの黒鉛製円筒の外周に約160周巻き付け、電気炉を用いて窒素雰囲気下で1000℃まで昇温した後、その1000℃で1時間熱処理して炭化フィルムを得た。
その後、図9の模式図に示されているように、炭化フィルム12が第1容器42に含まれる黒鉛製円筒の外周に106周巻き付けられて黒鉛製外筒内に収容された。それらの内外筒を含む第1容器が、さらに黒鉛製の第2容器44内に保持されてヒータ4内にセットされた。そして、この第2容器44内に高純度アルゴンガス32を注入してその容器から排気ガス34を排出しながら2900℃まで加熱し、炭化フィルム12からグラファイトフィルムが作製された。
この実施例2における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
(実施例3)
図10の模式的断面図は、実施例3によるグラファイトフィルムの作製方法を示している。図10と図8との対比から理解されるであろうように、本実施例3においては、実施例1に比べて、第2容器44がヒータ4に接触しないように支持板24によって保持されていることのみにおいて本質的に異なっている。なお、その支持板24も、ヒータ4に接触していない。
この実施例3における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
(実施例4)
図11の模式図は、実施例4によるグラファイトフィルムの作製方法を示している。図11と図9との対比から理解されるであろうように、本実施例4においては、実施例2に比べて、第2容器44がヒータ4に接触しないように支持板24によって保持されていることのみにおいて本質的に異なっている。なお、その支持板24も、ヒータ4に接触していない。
この実施例4における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
(実施例5)
図12の模式的断面図は、実施例5によるグラファイトフィルムの作製方法を示している。図12と図10との対比から理解されるであろうように、本実施例5においては、実施例3に比べて、第2容器44内に高純度アルゴンガス32を強制的に注入することなく、ヒータ4内に高純度アルゴンガスを流しながら熱処理したことのみにおいて異なっていた。
この実施例5における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
(実施例6)
図13の模式図は、実施例6によるグラファイトフィルムの作製方法を示している。図13と図11との対比から理解されるであろうように、本実施例6においては、実施例4に比べて、第2容器44内に高純度アルゴンガス32を強制的に注入することなく、ヒータ4内に高純度アルゴンガスを流しながら熱処理したことのみにおいて異なっていた。
この実施例6における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
参考例7)
図14の模式的断面図は、参考例7によるグラファイトフィルムの作製方法を示している。図14と図12との対比から理解されるであろうように、本参考例7においては、実施例5に比べて、第2容器44が省略されたことのみにおいて異なっていた。
この参考例7における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
参考例8)
図15の模式図は、参考例8によるグラファイトフィルムの作製方法を示している。図15と図13との対比から理解されるであろうように、本参考例8においては、実施例6に比べて、第2容器44が省略されたことのみにおいて異なっていた。
この参考例8における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
(比較例1)
図16の模式的断面図は、比較例1によるグラファイトフィルムの作製方法を示している。図16と図8との対比から理解されるであろうように、本比較例1においては、実施例1に比べて、第2容器44が省略されたことのみにおいて異なっていた。なお、ヒータ4内には高純度アルゴンガスが流された状態で熱処理された。
この比較例1における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
(比較例2)
図17の模式図は、比較例2によるグラファイトフィルムの作製方法を示している。図17と図9との対比から理解されるであろうように、本比較例2においては、実施例2に比べて、第2容器44が省略されたことのみにおいて異なっていた。なお、ヒータ4内には高純度アルゴンガスが流された状態で熱処理された。
この比較例2における熱処理の条件、得られたグラファイトフィルムの種々の特性、およびヒータの損傷状況も表1にまとめて示されている。
(表1の結果の検討)
表1に示されている比較例1および2に対する実施例1および2の比較から明らかなように、箱形と円筒のいずれの容器を使用する場合であっても、第1容器を収容する第2容器を付加的に使用してその第2容器内へ高純度アルゴンガスを強制注入することによって、得られるグラファイトフィルムの種々の特性およびヒータの損傷状況が改善され得ることが分かる。なお、いずれの場合においても、ヒータ内には高純度アルゴンガスが供給されている。
また、実施例1および2に対する参考例7および8の比較から明らかなように、箱形と円筒のいずれの容器を使用する場合においても、第2容器を使用しなくても第1容器とヒータとを非接触状態にすることによって、得られるグラファイトフィルムの種々の特性およびヒータの損傷状況がさらに改善され得ることが分かる。
さらに、参考例7および8に対する実施例5および6の比較から明らかなように、箱形と円筒のいずれの容器を使用する場合においても、ヒータに非接触の付加的な第2容器内に第1容器を収容するだけで、得られるグラファイトフィルムの種々の特性およびヒータの損傷状況がさらに改善され得ることが分かる。
さらにまた、実施例5および6に対する実施例3および4の比較から明らかなように、箱形と円筒のいずれの容器を使用する場合においても、ヒータに非接触の第2容器内へ高純度アルゴンガスを強制的に注入することによって、ヒータの損傷状況がさらに改善され得ることが分かる。
<本発明の(9)〜(14)の実施例>
(実施例9)
高分子フィルムとして、A4サイズ(210mm×297mm)にカットした東レ・デュポン社製ポリイミドフィルム(商品名:カプトンHフィルム、厚さ50μmおよび25μmの2種類)を準備した。このポリイミドフィルムの100〜200℃の範囲における平均線膨張係数は30×10-6-1であり、複屈折は0.10〜0.11であった。また、耐熱性フィルムとして、230mm×320mmの大きさの東洋炭素(株)製膨張グラファイトシート(商品名:PERMA−FOIL(グレード名:PF−UHPL)、厚さ200μm)を準備した。上記膨張グラファイトシート(耐熱性フィルム)と上記ポリイミドフィルム(高分子フィルム)とを、一枚ずつ交互に、ポリイミドフィルムが200枚となるまで積層して積層体を得た。このとき、積層体の最上層および最下層は膨張グラファイトシートとしたため、膨張グラファイトシートの枚数は201枚であった。
上記積層体をグラファイト製の箱(内寸:縦250mm×横340mm×高さ100mm)の中に積層体が箱の壁に接触しないように配置した。積層体の上に重さ2000g(314Pa(3.2gf/cm2)に相当)の質量の炭素製の重りを載せた。積層体が配置されたグラファイト箱を炭素化炉中に配置した。そしてさらに、この箱をグラファイト製の別の容器内に保持した。容器とヒータの加熱面とは、空間により、互いに非接触の状態に維持されており、これらの間隔は約5cmであった。
アルゴンガス雰囲気下で、室温(25℃)から2℃/分の速度で昇温させ、最高温度(HTT)で10分間程度の保持を行なった後に、20℃/分の速度で降温させ、温度が400℃に達した後にヒータをオフとして後は自然冷却した。最高熱処理温度を700℃、1000℃、1200℃、1400℃または1600℃として、グラファイトフィルムを作製した。得られたグラファイトフィルムの皺、ひずみ、および割れの有無を目視で観察した。グラファイトフィルムの皺および割れの有無は、目視観察により判断した。また、グラファイトフィルムのひずみの有無は、フラットな平面にグラファイトフィルムを置いて、グラファイトフィルム面上に顔を投影したときにその顔の投影像にひずみが観察されるか否かで判断した。
皺の有無に関しては、皺の発生が全くないものを優、皺の発生がわずかに認められるものを良、皺の発生が認められるがその程度が小さく使用に耐えるものを可、皺の発生が認められその程度が大きく使用に耐えないものを不可とした。また、ひずみの有無に関しては、ひずみの発生が全くないものを優、ひずみの発生がわずかに認められるものを良、ひずみの発生が認められるがその程度が小さく使用に耐えるものを可、ひずみの発生が認められその程度が大きく使用に耐えないものを不可とした。また、割れの有無に関しては、割れの発生が全くないものを優、割れの発生がわずかに認められるものを良、割れの発生が認められるがその程度が小さく使用に耐えるものを可、割れの発生が認められその程度が大きく使用に耐えないものを不可とした。それらの結果を表2にまとめた。
また、表2には、得られたグラファイトフィルムの密度、電気伝導度、および曲げ強度の値もあわせてまとめた。ここで、電気伝導度は、JIS K7194に準拠して測定した。また、曲げ強度は、オートグラフを用いて室温(25℃)の大気圧雰囲気下10mm/分の曲げ速度で測定した。
表2を参照して、最高熱処理温度700℃で作製したグラファイトフィルムにはわずかなひずみが観察されたが、それ以外のグラファイトフィルムは鏡面を有する、皺およびひずみの全くないグラファイトフィルムであった。また、いずれのグラファイトフィルムにも割れは全く認められなかった。なお、積層体の下部に積層されたグラファイトフィルムと上部に積層されたグラファイトフィルムの間にも品質の差は観察されなかった。
(実施例10)
積層体を内寸が縦250mm×横340mm×高さ350mmのグラファイト製箱の中に配置し、その積層体の上に重さ50000g(7850Pa(80gf/cm2)に相当)の炭素製の重りを載せた以外は、実施例9と同様にしてグラファイトフィルムを作製した。得られたグラファイトフィルムの皺、ひずみおよび割れを観察した。結果を表3にまとめた。
表3を参照して、最高熱処理温度700℃で作製したグラファイトフィルムにはわずかなひずみが観察されたが、それ以外のグラファイトフィルムは鏡面を有する、皺およびひずみの全くないグラファイトフィルムであった。また、いずれのグラファイトフィルムにも割れは全く認められなかった。なお、積層体の下部に積層されたグラファイトフィルムと上部に積層されたグラファイトフィルムの間にも品質の差は観察されなかった。
(実施例11)
膨張グラファイトシート(耐熱性フィルム)間に挟まれる厚さ50μmのポリイミドフィルム(高分子フィルム)の枚数を、2枚、3枚、5枚、10枚、20枚、30枚、50枚として、最高熱処理温度1000℃または1400℃としたこと以外は、実施例9と同様にして、グラファイトフィルムを作製した。ここで、ポリイミドフィルムの総枚数は200枚であり、膨張グラファイトシート(耐熱性フィルム)間のポリイミドフィルム(高分子フィルム)の積層枚数が3枚の場合は最上部のみ2枚、積層枚数が30枚の場合は最上部のみ20枚とした。得られたグラファイトフィルムの皺、ひずみおよび割れの有無を観察した。結果を表4にまとめた。
表4を参照して、高分子フィルムの積層枚数が10枚以下の場合には、最高熱処理温度1000℃および1400℃のいずれであっても、グラファイトフィルムには皺およびひずみは全く認められなかった。高分子フィルムの積層枚数が20枚および30枚の場合は、最高熱処理温度が1000℃のとき皺およびひずみが若干認められ、最高熱処理温度が1400℃のとき皺は認められなかったが若干のひずみが認められた。高分子フィルムの積層枚数が50枚の場合は、最高熱処理温度が1000℃のとき皺およびひずみが認められ、最高熱処理温度が1400℃のとき皺およびひずみが若干認められた。
(実施例12)
以下の6種類の耐熱性フィルム(A〜H)を準備し、厚さ50μmのポリイミドフィルムを用いて、最高熱処理温度を700℃または1200℃としたこと以外は、実施例9と同様にして、グラファイトフィルムの作製を行なった。ここで、準備した耐熱性フィルムは、A:厚さ1mmのステンレス板、B:厚さ1mmの圧延銅板、C:厚さ200μmの一般品膨張グラファイトシート(東洋炭素(株)製PERMA−FOIL(グレード名:PF))、D:厚さ200μmの耐熱向上品膨張グラファイトシート(東洋炭素(株)製PERMA−FOIL(グレード名:PF−R2))、E:厚さ200μmの高純度化品膨張グラファイトシート(東洋炭素(株)製PERMA−FOIL(グレード名:PF−UHPL))、F:厚さ1mmの等方性グラファイト板(東洋炭素(株)製、商品名:ISEM−3)、G:厚さ1mmの押し出し成型グラファイト板(SECカーボン(株)製、商品名:PSG−12)、H:厚さ0.9mmのC/Cコンポジット板(東洋炭素(株)製、商品名:CX−26)である。得られたグラファイトフィルムの皺、ひずみおよび割れの有無を観察した。結果を表5にまとめた。
表5を参照して、耐熱性フィルムが炭素材料のフィルムである場合は、炭素材料以外のフィルムである場合に比べて、皺、ひずみおよび割れの少ないグラファイトフィルムが得られた。特に、耐熱性フィルムが膨張グラファイトシートの場合は、皺、ひずみおよび割れのほとんどないグラファイトフィルムが得られた。これは、本実施例で使用した膨張グラファイトシートは、面方向に200W・m-1・K-1程度の優れた熱伝導性を有しており、高分子フィルムの熱処理が均一に行なわれるため、また膨張グラファイトシートは柔らかくしかも表面摺動性に優れるためと考えられる。
(実施例13)
実施例9において、最高熱処理温度1400℃で作製したグラファイトフィルムが入ったグラファイト箱を炭素化炉から取り出し、グラファイト製の別の容器内に保持したものをグラファイト化炉に配置して、アルゴンガス雰囲気下でさらに高温で熱処理してグラファイト化させた。容器とヒータの加熱面とは、空間により、互いに非接触の状態に維持されており、これらの間隔は約5cmであった。グラファイト化のための熱処理最高温度を2000℃、2400℃、2600℃、2800℃、2900℃または3000℃とし、それぞれの最高熱処理温度で10分保持後、1600℃まで降温し、その後ヒータをオフとして自然冷却した。実施例9と同じ方法で、得られたグラファイトフィルム(グラファイトフィルム)の皺、ひずみおよび割れの有無を観察した。最高熱処理温度がいずれの場合でも、グラファイトフィルムの皺、ひずみおよび割れの発生は全く認められず、本発明のグラファイトフィルムの製造方法は、グラファイトフィルムの製造にも有効であることがわかった。
(実施例14)
ピロメリット酸二無水物、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびp−フェニレンジアミンを、モル比で4:3:1の割合で反応させてポリアミド酸を合成した。このポリアミド酸の18質量%のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)溶液100gに、無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合し、攪拌して、遠心分離により脱泡した後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは、溶液を0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層物を120℃で150秒間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを、300℃で30秒間、400℃で30秒間、500℃で30秒間、段階的に加熱して、ポリイミドフィルムPI−A(高分子フィルム)を製造した。得られたポリイミドフィルムPI−Aは、厚さが25μm、50μmの2種類であり、100℃〜200℃の平均線膨張係数が16×10-6-1、複屈折が0.13〜0.14であった。
上記のようにして得られたポリイミドフィルム(高分子フィルム)を用いて、積層体に印加する圧力を4900Pa(50gf/cm2)とし、最高熱処理温度を700℃、1000℃または1600℃とした以外は、実施例9と同様にして、グラファイトフィルムを作製した。得られたグラファイトフィルムは、X線回折装置による回折X線を測定したところ、炭素原子がガラス状に配列している炭素質フィルムであった。得られたグラファイトフィルムの皺、ひずみおよび割れの有無を観察した。結果を表6にまとめた。また、表6には、得られたグラファイトフィルムの密度、電気伝導度、および曲げ強度の値もあわせてまとめた。
表6を参照して、得られた炭素質フィルムは、皺、ひずみおよび割れが全くなく、高い平面性を有していた。また、本実施例においては、最高熱処理温度が700℃で作製されたグラファイトフィルムにおいても、フィルム中の炭素はガラス状態に転化しており、密度、曲げ強度のいずれもが高くなった。
(実施例15)
ピロメリット酸二無水物、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよびp−フェニレンジアミンを、モル比で3:2:1の割合で反応させてポリアミド酸を合成した。このポリアミド酸の18質量%のDMF溶液100gに、無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合し、攪拌して、遠心分離により脱泡した後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは、溶液を0℃に冷却しながら行った。その後は、実施例14と同様にしてポリイミドフィルムPI−B(高分子フィルム)を製造した。ポリイミドフィルムPI−Bを製造した。得られたポリイミドフィルムPI−Bは、厚さが25μm、50μmの2種類であり、100℃〜200℃の平均線膨張係数が10×10-6-1であり、複屈折が0.15〜0.16であった。このポリイミドフィルムPI−Bを用いたこと以外は、実施例14と同様にして、グラファイトフィルムを作製した。得られたグラファイトフィルムは、X線回折装置による回折X線を測定したところ、炭素原子がガラス状に配列している炭素質フィルムであった。得られたグラファイトフィルムの皺、ひずみおよび割れの有無を観察した。結果を表7にまとめた。また、表7には、得られたグラファイトフィルムの密度、電気伝導度、および曲げ強度の値もあわせてまとめた。
表7を参照して、得られた炭素質フィルムは、皺、ひずみおよび割れが全くなく、高い平面性を有していた。また、本実施例においては、最高熱処理温度が700℃で作製されたグラファイトフィルムにおいても、フィルム中の炭素はガラス状態に転化しており、密度、曲げ強度のいずれもが高くなった。
(実施例16)
ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、パラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、モル比で1:1:1:1の割合で反応させてポリアミド酸を合成した。このポリアミド酸の18質量%のDMF溶液100gに、無水酢酸20gとイソキノリン10gからなる硬化剤を混合し、攪拌して、遠心分離により脱泡した後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは、溶液を0℃に冷却しながら行った。その後は、実施例14と同様にしてポリイミドフィルムPI−C(高分子フィルム)を製造した。得られたポリイミドフィルムのPI−Cは、厚さが25μm、50μmの2種類であり、100℃〜200℃の平均線膨張係数が9×10-6-1、複屈折が0.16〜0.17であった。このポリイミドフィルムPI−Cを用いたこと以外は、実施例14と同様にして、グラファイトフィルムを作製した。得られたグラファイトフィルムは、X線回折装置による回折X線を測定したところ、炭素原子がガラス状に配列している炭素質フィルムであった。得られたグラファイトフィルムの皺、ひずみおよび割れの有無を観察した。結果を表8にまとめた。また、表8には、得られたグラファイトフィルムの密度、電気伝導度、および曲げ強度の値もあわせてまとめた。
表8を参照して、得られた炭素質フィルムは、皺、ひずみおよび割れが全くなく、高い平面性を有していた。また、本実施例においては、最高熱処理温度が700℃で作製されたグラファイトフィルムにおいても、フィルム中の炭素はガラス状態に転化しており、密度、曲げ強度のいずれもが高くなった。
<本発明の(15)〜(21)の実施例>
[ポリイミドフィルムAの作製方法]
4,4’−オキシジアニリンの1当量を溶解したDMF(ジメチルフォルムアミド)溶液に、ビロメリット酸二無水物の1当量を溶解してポリアミド酸溶液(18.5wt%)を得た。
この溶液を冷却しながら、ポリアミド酸に含まれるカルボン酸基に対して、1当量の無水酢酸、1当量のイソキノリン、およびDMFを含むイミド化触媒を添加し脱泡した。次にこの混合溶液が、乾燥後に所定の厚さになるようにアルミ箔上に塗布した。アルミ箔上の混合溶液層を、熱風オーブン、遠赤外線ヒータを用いて乾燥した。
以下に出来上がり厚みが75μmの場合におけるフィルム作製をする場合の乾燥条件を示す。アルミ箔上の混合溶液層は、熱風オーブンで120℃において240秒乾燥して、自己支持性を有するゲルフィルムにした。そのゲルフィルムをアルミ箔から引き剥がし、フレームに固定した。さらに、ゲルフィルムを、熱風オーブンにて120℃で30秒、275℃で40秒、400℃で43秒、450℃で50秒、および遠赤外線ヒータにて460℃で23秒段階的に加熱して乾燥した。
なお、その他厚みのフィルムを作製する場合には、厚みに比例して焼成時間を調整した。例えば厚さ50μmのフィルムの場合には、75μmの場合よりも焼成時間を2/3倍に設定した。なお、厚みが厚い場合には、ポリイミドフィルムの溶媒やイミド化触媒蒸発による発泡を防ぐために低温での焼成時間を十分とる必要がある。
<後面状加圧工程に用いるフィルム状媒体>
本発明の実施例、比較例で使用したフィルム状媒体を表9に示す。なお、表に記載の表面抵抗値は、株式会社ダイアインスツルメンツ社から入手可能な抵抗率計・ロレスタGTを用いて測定した(JIS−K7194準拠)。また、表面粗さRaはJIS B0652に記載の光波干渉式表面粗さ測定法で測定した値である。
フィルムA
フィルムAはベース材であるPETフィルムの表面に、導電性ポリマーであるポリピロールをコーティングしたフィルムである。
ロレスタGTで測定した表面抵抗値は1×106Ω/□であり、フィルムの総厚みは400μmである。表面粗さはRa0.050μmである。
フィルムB
フィルムBはベース材であるPETフィルムの表面に、界面活性剤を塗布して静電気を抑制したフィルムである。
ロレスタGTで測定した表面抵抗値は1×109Ω/□であり、フィルムの総厚みは400μmである。表面粗さはRa0.100μmである。
フィルムC
フィルムCは導電性フィラーであるカーボンの粉末をベース材であるPS樹脂に練り込みフィルム化したものである。
ロレスタGTで測定した表面抵抗値は1×105Ω/□であり、フィルムの総厚みは400μmである。表面粗さはRa0.800μmである。
フィルムC‘
フィルムC‘は導電性フィラーであるカーボンの粉末をベース材であるPS樹脂に練り込みフィルム化したものである。
ロレスタGTで測定した表面抵抗値は1×105Ω/□であり、フィルムの総厚みは400μmである。表面粗さはRa0.010μmである。
フィルムC“
フィルムC“は導電性フィラーであるカーボンの粉末をベース材であるPS樹脂に練り込みフィルム化したものである。
ロレスタGTで測定した表面抵抗値は1×105Ω/□であり、フィルムの総厚みは50μmである。表面粗さはRa0.800μmである。
フィルムD
フィルムDは導電性フィラーであるAlの粉末をベース材であるPET樹脂に練り込みフィルム化したものである。
ロレスタGTで測定した表面抵抗値は1×105Ω/□であり、フィルムの総厚みは400μmである。表面粗さはRa0.100μmである。
フィルムE
フィルムEはAl板である。
ロレスタGTで測定した表面抵抗値は1×103Ω/□であり、フィルムの総厚みは400μmである。表面粗さはRa0.100μmである。
<各種物性測定条件>
<グラファイト化処理後フィルムの厚み測定>
グラファイト化処理後フィルムの厚みの測定方法としては、10cm×10cmのフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて測定した。測定箇所は、グラファイトフィルムの左下の末端を(0,0)とした場合、(1,1)、(1,5)、(1,9)、(5,1)、(5,5)、(5,9)、(9,1)、(9,5)、(9,9)の9点を測定し、平均して測定値とした。〔例えば(1,5)は、左下の末端から右に1cm、上に5cmの点を、(9,1)は、左下の末端から右に9cm、上に1cmの点を表す。〕
<グラファイト化処理後フィルムの密度測定>
グラファイト化処理後フィルムの密度は、10cm角のグラファイト化処理後フィルムの重量(g)をグラファイト化処理後フィルムの縦(10cm)、横(10cm)、厚みの積で算出した体積(cm3)の割り算により算出された。
<グラファイト化処理後フィルムの面方向の熱拡散率測定>
グラファイト化処理後フィルムの面方向の熱拡散率測定は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社から入手可能な「LaserPit」)を用いて、グラファイトフィルムを4×40mmのサンプル形状に切り取り、20℃の雰囲気下、10Hzにおいて測定された。
<グラファイトフィルムの厚み測定>
グラファイトフィルムの厚みの測定方法としては、10cm×10cmのフィルムを厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温25℃の恒温室にて測定した。測定箇所は、グラファイトフィルムの左下の末端を(0,0)とした場合、(1,1)、(1,5)、(1,9)、(5,1)、(5,5)、(5,9)、(9,1)、(9,5)、(9,9)の9点を測定し、平均して測定値とした。〔例えば(1,5)は、左下の末端から右に1cm、上に5cmの点を、(9,1)は、左下の末端から右に9cm、上に1cmの点を表す。〕
<グラファイトフィルムの密度測定>
グラファイトフィルムの密度は、10cm角のグラファイトフィルムの重量(g)をグラファイトフィルムの縦(10cm)、横(10cm)、厚みの積で算出した体積(cm3)の割り算により算出された。
<後面状加圧工程後のグラファイトフィルムの圧縮面からの引き剥がし性>
後面状加圧工程後にグラファイトフィルムの圧縮面から引き剥がし性は静電気の発生の程度により異なっている。引き剥がし性を、圧縮面を水平方向から徐々に傾けてグラファイトフィルムが滑り落ちるかどうかで判断した。傾ける速度は1°/秒で実施した。0〜45°傾けている間にグラファイトフィルムが滑りおちるものを◎、45〜90°間に滑り落ちるものを○とした。また、90°まで傾けたところで固定し、60秒以内で滑りおちるものを△、滑り落ちないものを×とした。
圧縮面の後面状加圧工程による劣化のしやすさを評価するために、同じ圧縮面を使用して後面状加圧工程を10回実施した後の引き剥がし性も評価した。
<後面状加圧工程後の圧縮面の変形>
後面状加圧工程後の圧縮面の変形について評価した。後面状加圧工程後に圧縮面に凹みが発生する場合があるが、この凹みの深さが周囲の高さを基準として、深さが0〜3μmを◎、3〜5μmを○、5〜8μmを△、8μmより大きい場合は×とした。
<グラファイトフィルムの傷>
後面状加圧工程後のグラファイトフィルムの傷について評価した。特に金属などの硬い材料を使用した際は傷が付きやすかった。
後面状加圧工程後のグラファイトフィルム傷は、長さ2mm以上の傷の有無を目視にて判断した。得られる200×200mmのグラファイトフィルム中に傷が0〜2個確認されるものを◎、3〜5個確認されるものを○、6〜30個確認されるものを△、31個以上確認されるものを×として評価した。
<グラファイトフィルムの厚みムラ>
グラファイトフィルムの厚みムラは、グラファイトフィルムの厚み測定で測定した9点の最大値と最小値の差で評価した。厚みの差が0〜2μmを◎、2〜4μmを○、4〜6μmを△、6μmより大きい場合は×とした。
今回、発明者・出願人が測定した実施例、比較例で使用したグラファイト化処理後フィルムおよび圧縮後のグラファイトフィルムの製造条件や各種物性を、表10、表11にまとめた。なお、以下の実施例及び比較例では、ポリイミドフィルムおよび/または炭化フィルムを第1の容器内に保持したものを、さらに第2の容器内に保持してから、第2の容器を加熱してグラファイトフィルムを製造した。第2の容器とヒータは、空間により、互いに非接触の状態に維持されており、これらの間隔は約5cmであった。
(実施例17)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムAを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムAが26枚、一番上部と下部はフィルムAとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例18)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムBを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムBが26枚、一番上部と下部はフィルムBとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧は10MPaとした。
(実施例19)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムCを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムCが26枚、一番上部と下部はフィルムCとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例20)
厚さ75μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムCを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムCが26枚、一番上部と下部はフィルムCとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例21)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムDを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムDが26枚、一番上部と下部はフィルムDとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例22)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムEを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムEが26枚、一番上部と下部はフィルムEとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例23)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムAを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムAが26枚、一番上部と下部はフィルムAとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は5MPaとした。
(実施例24)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムAを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムAが26枚、一番上部と下部はフィルムAとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は20MPaとした。
(実施例25)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムBを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムBが26枚、一番上部と下部はフィルムBとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は5MPaとした。
(実施例26)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムBを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムBが26枚、一番上部と下部はフィルムBとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は20MPaとした。
(実施例27)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムCを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムCが26枚、一番上部と下部はフィルムCとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は5MPaとした。
(実施例28)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムCを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムCが26枚、一番上部と下部はフィルムCとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は20MPaとした。
(実施例29)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムDを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムDが26枚、一番上部と下部はフィルムDとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は5MPaとした。
(実施例30)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムDを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムDが26枚、一番上部と下部はフィルムDとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は20MPaとした。
(実施例31)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムEを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムEが26枚、一番上部と下部はフィルムEとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は5MPaとした。
(実施例32)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムEを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムEが26枚、一番上部と下部はフィルムEとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は20MPaとした。
(実施例33)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムCを交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が1枚、フィルムCが2枚、一番上部と下部はフィルムCとなるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例34)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)を、直接、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例35)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)を、直接、圧縮成型機(上下の単板材質はAl)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例36)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)を、直接、圧縮成型機(上下の単板材質はカーボン粉末を練り込んだ導電性のポリスチレン)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例37)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムC’を交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムC’が26枚、一番上部と下部はフィルムC’となるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
(実施例38)
厚さ50μmのポリイミドフィルムA(PI−A)(縦250mm×横250mm)を黒鉛板に挟み、電気炉を用いて、1000℃まで2℃/minで昇温して炭化処理をおこなった。炭化処理により得られた炭化フィルムを、縦250mm×横250mm×厚み250μmの膨張黒鉛シートで上下から挟み、グラファイト化炉を用いて2900℃まで1℃/minで昇温してグラファイト化処理をおこなった。室温まで冷却後、熱処理後のグラファイト化処理後フィルム(縦200mm×横200mm)と、縦250mm×横250mm×厚み400μmのフィルムC“を交互に積層し(グラファイト化処理後フィルムの枚数が25枚、フィルムC”が26枚、一番上部と下部はフィルムC”となるように積層した)、積層体を、圧縮成型機(上下の単板材質はSUS)を用いて後面状加圧工程を実施した。加えた圧力は10MPaとした。
●圧縮面からのグラファイトフィルムの引き剥がし性
実施例17〜38の圧縮面からグラファイトフィルムの引き剥がし性は△以上であり優れている。これは、実施例は圧縮面の表面抵抗率が1×109以下であるために、静電気を抑制できたからである。
圧縮面の表面抵抗率との相関
フィルム状媒体を圧縮面として使用した実施例17〜22を比較すると、表面抵抗率が小さいほど、引き剥がし性がよくなっていることがわかる。実施例19〜22は表面抵抗率が1×105Ω/□以下と小さいために、引き剥がし性が非常によい。一方、絶縁材料の場合は、引き剥がし性は非常に悪い。
また、実施例34〜36のように、フィルム状媒体を使用しない場合も、表面抵抗が1×109Ω/□以下である方が引き剥がし性がよい。
圧縮圧力との相関
圧縮圧力が大きいほど、グラファイトフィルムの引き剥がし性は悪くなる。実施例17〜32を比較する。実施例23、25、27、29、31のように圧縮圧力が5MPaの時は表面抵抗率が1×109Ω/□以下であれば、引き剥がし性は十分であるが、圧縮圧力が10MPaのとき(実施例17〜22)は、実施例18のように、表面抵抗が1×109Ω/□のときは引き剥がし性が足りない。また、圧縮圧力が20MPaのとき(実施例24、26、28、30、32)は、表面抵抗が1×105Ω/□以下が求められる。
圧縮面の表面粗さとの相関
上記の通り圧縮面の表面粗さが小さい程、でき上がったグラファイトフィルムの表面平滑性がよくなるが、一方、圧縮面の表面粗さが小さいほど、グラファイトフィルムの引き剥がし性は悪くなる。実施例19および37を比較すると表面粗さが小さいほど、グラファイトフィルムの引き剥がし性は悪いことがわかる。本発明により、表面平滑性のよいグラファイトフィルムを効率よく製造することが可能となった。
●圧縮面の耐久性
また数回使用することで圧縮面の表面抵抗率が上昇し、圧縮面の静電気抑制能力が劣化してくる場合がある。実施例17〜22を比較すると、実施例17〜18のように、表面のみに導電性材料が形成されている材料では、1回目の使用と比較して10回目の使用の方がグラファイトフィルムの引き剥がし性は悪くなる。これは、後面状加圧工程を繰り返すたびにフィルム状媒体の表面に形成された導電材料部分が剥がれていくためである。
●後面状加圧工程後の圧縮面の変形
また塑性変形し易いAlなどの材料を圧縮面として使用した場合、一回の処理で圧縮面が変形してしまう場合がある。実施例17〜22および実施例34〜36を比較すると、実施例22、35は表面の変形が大きいため、2回目以降、この変形が圧縮時にグラファイトフィルムに傷を与えてしまう。
●グラファイトフィルムの傷
後面状加圧工程における圧縮面が金属のように非常に硬質なものでは、グラファイトフィルムに傷が発生することが多い。実施例22、31、32、34、35は圧縮面が金属であるため、引き剥がし性は非常によいものの、グラファイトフィルムに傷が発生した。一方、樹脂フィルムを圧縮面として使用した場合は傷が発生しにくい。
また、実施例19と実施例33を比較するとわかるように、グラファイトフィルムとフィルム状媒体の積層枚数が少ない場合も、傷が発生し易い傾向にある。これは、実施例19がフィルムを複数枚積層しているために、フィルムが局所的にかかる荷重を緩和してくれるためである。
●グラファイトフィルムの厚みムラ
実施例17〜38をみると、圧縮面が硬く、一度に処理するグラファイトフィルムの枚数が少ないと厚みムラが発生しやすい。これは、圧縮面が硬く、一度に処理するグラファイトフィルムの枚数が少ないと、圧縮時にグラファイトフィルムに局所的にかかる荷重を緩和することができないからである。
以上のように、本発明の後面状加圧工程においては、表面抵抗率が1×109以下の接触面を使用することが必須となる。圧縮圧力が大きい場合は、更に表面抵抗率を小さくする必要がある。また、グラファイトフィルムの表面性、圧縮面の耐久性を考慮すると、表面抵抗率の小さな樹脂フィルムを使用し、グラファイトフィルムとフィルム状媒体を複数枚交互に積層して圧縮処理を施すとよい。
以上のように、本発明によれば、平坦性、厚み、および熱拡散率のバラツキの少ないグラファイトフィルムを良好な生産性で製造し得る方法を提供することができる。
慣用的ヒータの一例を示す模式的断面図である。 枚様原料フィルムの積層方法の一例を示す模式的透視斜視図である。 枚様原料フィルムの積層を容器内へセットする方法を示す模式的透視斜視図である。 枚様原料フィルムのグラファイト化方法の従来例を示す模式的断面図である。 長尺原料フィルムのセット方法の一例を示す模式的透視斜視図である。 長尺原料フィルムの容器へのセット方法を示す模式的透視斜視図である。 長尺原料フィルムのグラファイト化方法の従来例を示す模式図である。 実施例1のグラファイト化方法を示す模式的断面図である。 実施例2のグラファイト化方法を示す模式図である。 実施例3のグラファイト化方法を示す模式的断面図である。 実施例4のグラファイト化方法を示す模式図である。 実施例5のグラファイト化方法を示す模式的断面図である。 実施例6のグラファイト化方法を示す模式図である。 参考例7のグラファイト化方法を示す模式的断面図である。 参考例8のグラファイト化方法を示す模式図である。 比較例1のグラファイト化方法を示す模式的断面図である。 比較例2のグラファイト化方法を示す模式図である。
符号の説明
2 ヒータ、4 ヒータの発熱部、6 熱処理ゾーン、12 原料フィルムまたは炭素化フィルム、14 黒鉛板、16 原料フィルムを保持する箱形容器、18 原料フィルムを保持する内筒、20 原料フィルムを保持する外筒、32 不活性ガス、34 排気バス、42 第1容器、44 第2容器。

Claims (19)

  1. ヒータを有する加熱炉を用いる熱処理によって原料フィルムをグラファイト化するグラファイトフィルムの製造方法であって、
    前記原料フィルムの面積が200cm以上であり、
    前記原料フィルムを第1容器内に保持し、
    さらに前記第1容器を第2容器内に保持し、
    前記第2容器を前記ヒータ内に保持して前記原料フィルムを熱処理し、
    前記熱処理中に前記第2容器内に不活性ガスを流すことを特徴とするグラファイトフィルムの製造方法。
  2. 前記熱処理中において前記第2容器と前記ヒータは互いに非接触の状態に維持されることを特徴とする請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  3. 前記第2容器と前記ヒータとの間の距離が1cm以上であることを特徴とする請求項2に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  4. 前記第1容器内に前記原料フィルムを100枚以上保持することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  5. 1枚以上の原料フィルムと前記原料フィルムの熱分解温度以上の温度において耐熱性を有する耐熱性フィルムとを交互に積層して積層体を得る積層工程と、
    不活性ガス中あるいは真空中で前記積層体を熱処理することを特徴とする請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  6. 熱処理時に、前記積層体に前記原料フィルムおよび前記耐熱性フィルムのフィルム面に垂直な方向に圧力を加えることを特徴とする請求項5に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  7. 前記圧力の大きさが、0.98Pa以上9800Pa以下である請求項6に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  8. 前記原料フィルムがポリイミドフィルムである請求項5に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  9. 前記ポリイミドフィルムの、100℃〜200℃の範囲におけるフィルム面方向の平均線膨張係数が32×10−6−1以下である請求項8に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  10. 前記ポリイミドフィルムの複屈折が0.10以上である請求項9に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  11. さらに、得られたグラファイトフィルムを、表面抵抗率が1×10Ω/□以下の圧縮面と接触させて加圧する後面状加圧工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  12. 前記後面状加圧工程の際に、フィルム面に垂直な方向に2MPa以上40MPa以下の圧力を加えることを特徴とする請求項11に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  13. 前記圧縮面のJIS B0652に記載の光波干渉式表面粗さ測定法で得られる表面粗さRaが0.005〜3.000μmであることを特徴とする請求項11に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  14. 前記圧縮面の材質が高分子であることを特徴とする請求項11に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  15. 前記圧縮面の材質がカーボン系の導電性フィラーが練り込まれている、PS(ポリスチレン)系樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)系樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)系樹脂、PP(ポリプロピレン)系樹脂、PE(ポリエチレン)系樹脂であることを特徴とする請求項11に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  16. 前記圧縮面が50μm以上800μm以下のフィルム状媒体であることを特徴とする請求項11に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  17. 前記後面状加圧工程において、前記熱処理後のグラファイト化処理後フィルムと前記フィルム状媒体を複数枚同時に加圧することを特徴とする請求項16に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  18. 前記原料フィルムを熱処理する際に、容器内の気体の圧力が、加熱炉の外部の気体の圧力よりも0.1kPa〜200kPa高くなる工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
  19. 前記熱処理中に前記第2容器内に不活性ガスを流すことによって、前記原料フィルムから発生するガスを前記加熱炉内から押し出すことを特徴とする請求項1〜18の何れか1項に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
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