JP5400033B2 - ホスホン酸銅化合物、並びにこれを含む赤外吸収材料及び積層体 - Google Patents

ホスホン酸銅化合物、並びにこれを含む赤外吸収材料及び積層体 Download PDF

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Description

本発明は、ホスホン酸銅化合物、並びにこれを含む赤外吸収材料及び積層体に関する。
金属イオンは、特定波長光に対する吸収特性を示すことができ、その特性を利用して光学材料に応用されている。なかでも、銅イオンは、赤外又はその近傍領域の波長の光(以下、「近赤外光」という)を吸収する特性を有していることが知られている。そこで、銅イオンを合わせガラス用の中間膜に含有させることで、近赤外光吸収特性を付与することが試みられている。このような銅イオンの特性を利用した光学材料としては、例えば、銅イオンと、ホスホン酸又はホスフィン酸とが、溶媒又は樹脂中に含有されてなるものが開示されている。
特開2002−006101
上述したような光学材料を合わせガラスの中間膜等として適用する場合は、優れた近赤外光吸収特性を有する一方、合わせガラスを通した視認性を十分に得るために、優れた可視光の透過性を有することも求められる。ところが、上記特許文献1に記載した光学材料は、熱的な安定性に優れ、しかも近赤外領域において幅広く且つ高い光吸収が可能なものではあったが、本発明者らの研究によると、可視光に対する透明性が不十分となり易い傾向にあることを見出した。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、近赤外領域で幅広く且つ優れた光の吸収性を発揮することができ、しかも、樹脂と混合した際に優れた可視光の透過性をも得ることができるホスホン酸銅化合物を提供することを目的とする。本発明はまた、かかるホスホン酸銅化合物を用いた赤外吸収材料及び合わせガラスを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のホスホン酸銅化合物は、銅イオンと、フッ素を含む側鎖を有する第1のホスホン酸と、アルキル構造からなる側鎖を有する第2のホスホン酸とを含有し、銅イオンに、第1のホスホン酸及び第2のホスホン酸が配位した銅錯体の形態となっていることを特徴とする。


本発明のホスホン酸銅化合物は、ホスホン酸として、フッ素を含む側鎖を有するホスホン酸及びアルキル構造からなる側鎖を有するホスホン酸を組み合わせて有するものである。このようなホスホン酸銅化合物は、まず、銅イオンとホスホン酸との組み合わせによって、近赤外領域で幅広く且つ高い吸収性を有するものとなる。また、かかるホスホン酸銅化合物は、上記の2種類のホスホン酸化合物を組み合わせて含むことから、合わせガラスの中間膜に用いられるような透明性の高い樹脂との屈折率が近いものとなり得る。そのため、樹脂と組み合わせた場合に優れた可視光透過性を発揮し得る。また、通常、フッ素を含む側鎖を有するホスホン酸は、単独では耐熱性が低い傾向があるにも関わらず、本発明のホスホン酸銅化合物は、アルキル構造からなる側鎖を有するホスホン酸を組み合わせて含むことによって、このアルキル構造からなる側鎖を有するホスホン酸を用いた場合に得られるのと同等の高い耐熱性を発揮することができる。
上記本発明のホスホン酸銅化合物としては、第1のホスホン酸が、下記一般式(1)で表される化合物であるものが好適である。また、第2のホスホン酸が、下記一般式(2)で表される化合物であるものが好適である。第1及び第2のホスホン酸がこれらの化合物であると、優れた可視光透過性及び耐熱性が一層得られ易くなる。
Figure 0005400033
[式中、mは0〜6の整数であり、nは1〜10の整数である。]
Figure 0005400033
[式中、pは1〜24の整数である。]
本発明はまた、上記本発明のホスホン酸銅化合物と、樹脂とを含有することを特徴とする赤外吸収材料を提供する。かかる赤外吸収材料は、上記本発明のホスホン酸銅化合物を含むことから、近赤外領域において幅広く且つ高い光の吸収性を示し、しかも、可視光透過性、耐熱性に優れるものとなる。
本発明はさらに、透光性基板と、この透光性基板の少なくとも一側に設けられた上記本発明の赤外吸収材料からなる赤外吸収層とを備える積層体を提供する。かかる積層体は、本発明の赤外吸収材料からなる赤外吸収層を例えば中間膜等として有することから、赤外光の遮蔽性に優れ、また、可視光透過性も高く、しかも高温、高湿条件で優れた耐久性を有しており、合わせガラスとして好適である。
本発明によれば、近赤外領域で幅広く且つ優れた光の吸収性を発揮することができ、しかも、樹脂と混合した際に優れた可視光の透過性をも得ることができるホスホン酸銅化合物を提供することが可能となる。また、このようなホスホン酸銅化合物を用いた赤外吸収材料及び積層体を提供することが可能となる。
合わせガラスの断面構成を模式的に示す図である。 反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。 透光性基板間に設けられた複数の層間に反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。 紫外吸収層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。 比較例1の合わせガラスの分光特性を示す図である。 比較例2の合わせガラスの分光特性を示す図である。 比較例3の合わせガラスの分光特性を示す図である。 比較例4の合わせガラスの分光特性を示す図である。 比較例5の合わせガラスの分光特性を示す図である。 比較例6の合わせガラスの分光特性を示す図である。 比較例7の合わせガラスの分光特性を示す図である。 実施例1の合わせガラスの分光特性を示す図である。 実施例2の合わせガラスの分光特性を示す図である。 実施例3の合わせガラスの分光特性を示す図である。 実施例4の合わせガラスの分光特性を示す図である。 実施例5の合わせガラスの分光特性を示す図である。
符号の説明
1…透光性基板、2…中間膜、10…合わせガラス、20…合わせガラス、21…透光性基板、22…赤外吸収層、23…反射層、30…合わせガラス、31…透光性基板、32…赤外吸収層、33…反射層、34…樹脂層、40…合わせガラス、41…透光性基板、42…赤外吸収層、43…紫外吸収層。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
(ホスホン酸銅化合物)
まず、好適な実施形態のホスホン酸銅化合物について説明する。
ホスホン酸銅化合物は、銅イオン、フッ素を含む側鎖を有するホスホン酸(以下、「第1のホスホン酸」という。)、及び、アルキル構造からなる側鎖を有するホスホン酸化合物(以下、「第2のホスホン酸」という。)を含有するものであり、例えば、銅イオンに、第1のホスホン酸及び/又は第2のホスホン酸が配位した銅錯体(銅塩)の形態となっている。
ホスホン酸銅化合物における銅イオンは、2価の銅イオンである。この銅イオンは、銅塩の形態で第1及び第2のホスホン酸と混合され、ホスホン酸銅化合物を形成する。この銅塩の具体例としては、酢酸銅、蟻酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅等の有機酸の銅塩無水物、水和物若しくは水化物、或いは、酸化銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩の無水物、水和物若しくは水化物、又は、水酸化銅が挙げられる。これらのなかでは、酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅、水酸化銅、塩基性炭酸銅が好ましく用いられる。なお、銅イオン源であるこれらの銅塩は、単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
第1のホスホン酸は、フッ素を含む側鎖を有するホスホン酸である。ここで、側鎖とは、ホスホン酸におけるリン原子に結合した基のうちのヒドロキシル基及び酸素原子以外の基である。第1のホスホン酸は、かかる側鎖の少なくとも一部にフッ素原子を有しており、側鎖に複数のフッ素原子を有するものがより好ましい。
第1のホスホン酸としては、特に、アルキル構造における水素原子の1つ以上、好ましくは2つ以上がフッ素原子によって置換された構造の側鎖を有するものが好ましく、このアルキル構造が直鎖状であるものがより好ましい。第1のホスホン酸としては、下記一般式(1)で表される化合物が特に好適である。
Figure 0005400033
上記式(1)中、mは0〜6の整数であり、2〜6の整数であると好ましい。また、nは1〜10の整数であり、2〜8の整数であると好ましい。このようなアルキル構造にフッ素原子が置換した側鎖を有する第1のホスホン酸においては、側鎖は、対応する無置換のアルキル構造における水素原子の好ましくは20%以上、より好ましくは40%以上がフッ素原子に置換された構造を有すると好適である。このような条件を満たす第1のホスホン酸は、第2のホスホン酸との組み合わせにより好適な屈折率となり易い。
第1のホスホン酸としては、具体的には、トリフルオロメチルホスホン酸、パーフルオロエチルホスホン酸、パーフルオロプロピルホスホン酸、パーフルオロブチルホスホン酸、パーフルオロペンチルホスホン酸、パーフルオロヘキシルホスホン酸、パーフルオロヘプチルホスホン酸、パーフルオロオクチルホスホン酸、パーフルオロノニルホスホン酸、パーフルオロデシルホスホン酸、1−(トリフルオロメチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロエチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロプロピル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロブチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロペンチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロヘキシル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロヘプチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロオクチル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロノニル)メチルホスホン酸、1−(パーフルオロデシル)メチルホスホン酸、2−(トリフルオロメチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロエチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロプロピル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロブチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロペンチル)メチルホスホン酸、2−(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロヘプチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロノニル)エチルホスホン酸、2−(パーフルオロデシル)エチルホスホン酸、3−(トリフルオロメチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロエチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロプロピル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロブチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロペンチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロヘキシル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロヘプチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロオクチル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロノニル)プロピルホスホン酸、3−(パーフルオロデシル)プロピルホスホン酸、4−(トリフルオロメチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロエチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロプロピル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロペンチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロヘキシル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロヘプチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロオクチル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロノニル)ブチルホスホン酸、4−(パーフルオロデシル)ブチルホスホン酸、5−(トリフルオロメチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロエチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロプロピル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロブチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロペンチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロヘキシル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロヘプチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロオクチル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロノニル)ペンチルホスホン酸、5−(パーフルオロデシル)ペンチルホスホン酸、6−(トリフルオロメチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロエチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロプロピル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロブチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロペンチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロへキシル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロヘプチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロオクチル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロノニル)ヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロデシル)ヘキシルホスホン酸等が挙げられる。なお、第1のホスホン酸としては、複数種類の化合物を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、下記化学式(3a)、(3b)又は(3c)で表されるホスホン酸が、近赤外光吸収材料とした場合の可視光透過性、耐熱性を向上できることから特に好ましい。
Figure 0005400033
一方、第2のホスホン酸は、アルキル構造からなる側鎖を有するホスホン酸であり、このアルキル構造からなる側鎖がフッ素原子その他の基によって置換されていないものである。側鎖のアルキル構造は、直鎖状でも分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であると、第1のホスホン酸との組み合わせによって好適な屈折率が得られ易くなる。
第2のホスホン酸としては、具体的には、下記一般式(2)で表される構造を有するものが好ましい。
Figure 0005400033
式中、pは1〜24の整数であり、2〜20の整数であると好ましく、2〜18の整数であるとより好ましい。
このような第2のホスホン酸としては、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ペンチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、ヘプチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ウンデシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、トリデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ペンタデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、ヘプタデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸等が挙げられる。なお、第2のホスホン酸としては、複数種類の化合物を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、下記化学式(4a)、(4b)又は(4c)で表されるホスホン酸が、近赤外光吸収材料とした場合の可視光透過性、耐熱性を向上できることから特に好ましい。
Figure 0005400033
本実施形態におけるホスホン酸銅化合物においては、第1のホスホン酸と第2のホスホン酸との組み合わせが、良好な可視光透過性、耐熱性等を得る観点から重要である。第1のホスホン酸と第2のホスホン酸との組み合わせとしては、例えば、次のような組み合わせが好適である。すなわち、パーフルオロプロピルホスホン酸とエチルホスホン酸、パーフルオロプロピルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、パーフルオロプロピルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、1−(パーフルオロプロピル)メチルホスホン酸とエチルホスホン酸、1−(パーフルオロプロピル)メチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、1−(パーフルオロプロピル)メチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、1−(パーフルオロヘキシル)メチルホスホン酸とエチルホスホン酸、1−(パーフルオロヘキシル)メチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、1−(パーフルオロヘキシル)メチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、2−(パーフルオロブチル)エチルホスホン酸とエチルホスホン酸、2−(パーフルオロブチル)エチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、2−(パーフルオロブチル)エチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、2−(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸とエチルホスホン酸、2−(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、2−(パーフルオロヘキシル)エチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、2−(パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸とエチルホスホン酸、2−(パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、2−(パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、3−(パーフルオロブチル)プロピルホスホン酸とエチルホスホン酸、3−(パーフルオロブチル)プロピルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、3−(パーフルオロブチル)プロピルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、3−(パーフルオロヘキシル)プロピルホスホン酸とエチルホスホン酸、3−(パーフルオロヘキシル)プロピルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、3−(パーフルオロヘキシル)プロピルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、3−(パーフルオロオクチル)プロピルホスホン酸とエチルホスホン酸、3−(パーフルオロオクチル)プロピルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、3−(パーフルオロオクチル)プロピルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、4−(パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸とエチルホスホン酸、4−(パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、4−(パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、4−(パーフルオロヘキシル)ブチルホスホン酸とエチルホスホン酸、4−(パーフルオロヘキシル)ブチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、4−(パーフルオロヘキシル)ブチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、4−(パーフルオロオクチル)ブチルホスホン酸とエチルホスホン酸、4−(パーフルオロオクチル)ブチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、4−(パーフルオロオクチル)ブチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、5−(パーフルオロブチル)ペンチルホスホン酸とエチルホスホン酸、5−(パーフルオロブチル)ペンチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、5−(パーフルオロブチル)ペンチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、5−(パーフルオロヘキシル)ペンチルホスホン酸とエチルホスホン酸、5−(パーフルオロヘキシル)ペンチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、5−(パーフルオロヘキシル)ペンチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、5−(パーフルオロオクチル)ペンチルホスホン酸とエチルホスホン酸、5−(パーフルオロオクチル)ペンチルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、5−(パーフルオロオクチル)ペンチルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、6−(パーフルオロブチル)ヘキシルホスホン酸とエチルホスホン酸、6−(パーフルオロブチル)ヘキシルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロブチル)ヘキシルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、6−(パーフルオロへキシル)ヘキシルホスホン酸とエチルホスホン酸、6−(パーフルオロへキシル)ヘキシルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロへキシル)ヘキシルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸、6−(パーフルオロオクチル)ヘキシルホスホン酸とエチルホスホン酸、6−(パーフルオロオクチル)ヘキシルホスホン酸とヘキシルホスホン酸、6−(パーフルオロオクチル)ヘキシルホスホン酸とオクタデシルホスホン酸といった組み合わせが好適である。
ホスホン酸銅化合物において、銅イオンと第1及び第2のホスホン酸との比率は、第1及び第2のホスホン酸の合計/銅イオンが、モル比で0.1〜10であると好ましく、0.1〜2であるとより好ましい。このような割合で銅イオンと第1及び第2のホスホン酸とが含まれると、ホスホン酸銅化合物による近赤外光の吸収性が優れるほか、良好な屈折率が得られ易くなる。
また、第1のホスホン酸及び第2のホスホン酸は、ホスホン酸銅化合物中のフッ素原子の含有率が、5〜50%となるような割合で含まれていると好ましく、10〜30%となるような割合で含まれていると好ましい。なお、ホスホン酸銅化合物中のフッ素原子の含有率とは、ホスホン酸銅化合物の合計質量に対するフッ素原子の質量の割合(%)である。このような条件を満たすように第1及び第2のホスホン酸が含まれていると、屈折率が良好な範囲となり、しかも、耐熱性等の特性が向上する傾向にある。なお、良好な可視光透過性を得る観点からは、ホスホン酸銅化合物の樹脂との屈折率の差が、±0.01の範囲であると好ましく、±0.005の範囲であるとより好ましい。ホスホン酸銅化合物のフッ素原子の含有率を指標とすることで、このような屈折率差に調整することができる。
ホスホン酸銅化合物は、例えば、まず、第1及び第2のホスホン酸を溶媒に溶解した後、得られた溶液に銅イオンの原料である銅塩を加え、必要に応じて加熱しながら攪拌等することによって製造することができる。ホスホン酸銅化合物は、通常、溶媒に対する溶解性が極めて低いため、このような製造方法では不溶物として析出する。溶媒としては、第1及び第2のホスホン酸を溶解できるものであれば特に制限されないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、THF、クロロホルムや、これらを更にトルエンや酢酸エチルと混合した混合溶媒等が好適である。
なお、第1のホスホン酸及び第2のホスホン酸を別に用いて上記の製造方法を行い、各ホスホン酸の銅化合物をそれぞれ形成した後、これらを混合することでも、銅イオン、第1及び第2のホスホン酸を含むホスホン酸銅化合物を得ることはできるが、このような製造方法では、第1及び第2のホスホン酸の組み合わせによる効果が十分に得られない場合がある。したがって、ホスホン酸銅化合物としては、上記の方法のように、第1及び第2のホスホン酸の混合物に、銅イオンの原料を加えて得られたものがより好ましい。
(赤外吸収材料)
次に、好適な実施形態の赤外吸収材料について説明する。
本実施形態の赤外吸収材料は、上述した実施形態のホスホン酸銅化合物と、樹脂とを含有する。赤外吸収材料において、ホスホン酸銅化合物は、樹脂への溶解性を殆ど有していないため、主に粒子状で分散された状態となる。赤外吸収材料中におけるホスホン酸銅化合物は、好ましくは0.01〜100μm程度、より好ましくは0.1〜10μm程度の平均粒径を有するものであると、樹脂への分散性に優れ、高い可視光透過性が得られ易くなる傾向にある。なお、ホスホン酸化合物を単独で用いた従来のホスホン酸銅塩粒子の場合、高い可視光透過率を得るためには通常100nm以下程度に少粒径化する必要があった。これに対し、本実施形態のホスホン酸銅化合物によれば、第1及び第2のホスホン酸を組み合わせて有することで良好な屈折率を有していることから、100nmを超えるような粒径、特に10μm程度の粒径まで大粒子化しても、高い透明性を維持することが可能となる。
樹脂は、上述したホスホン酸銅化合物を良好に分散(場合によっては溶解)でき、しかも、可視光を透過する性質に優れているものが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ノルボルネン樹脂等が挙げられる。
これらの樹脂のなかでも、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、特にポリビニルブチラール(PVB)が好ましい。これらは、後述する積層体(合わせガラス)における透光性基板に対する接着性に優れるほか、柔軟であり、しかも温度に依存して変形し難いという特性を有している。このため、ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、積層体を製造する際の成形加工が容易となる。また、得られる中間膜の透明性、耐侯性、ガラスに対する接着性等が優れるようになる。さらに、ポリビニルアセタール樹脂は、上述した赤外吸収材料を特に分散等し易いという特性も有している。このため、上記赤外吸収材料とポリビニルアセタール樹脂との組み合わせによれば、優れた可視光透過性及び耐久性を有する合わせガラスが得られるようになる。
ポリビニルアセタール樹脂は、必要な物性に応じて、適当な組み合わせにてブレンドされたものであってもよく、アセタール化時にアルデヒドを組み合わせてアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂であってもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂の分子量、分子量分布及びアセタール化度は特に限定されないが、アセタール化度は、一般に40〜85%であり、その好ましい下限は60%、上限は75%である。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドによりアセタール化することにより得ることができる。上記ポリビニルアルコール樹脂は、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られるものであり、鹸化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコール樹脂が一般的に用いられる。上記ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度は好ましい下限は200、上限は3000である。200未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下する。3000を超えると、樹脂膜の成形性が悪くなり、しかも樹脂膜の剛性が大きくなり過ぎ、加工性が悪くなる。より好ましい下限は500、上限は2500である。なお、ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度、及び鹸化度は、例えば、JISK 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定することができる。
アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、炭素数が1〜10のアルデヒド等が挙げられ、より具沐的には、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルテヒド、n−へキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−へキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が好ましい。より好ましくは、炭素数が4のブチルアルデヒドである。
このような構成を有する赤外吸収材料は、樹脂中にホスホン酸銅化合物を直接分散等させる方法や、樹脂の単量体中にホスホン酸銅化合物を分散等させた後、この単量体を重合させる方法等によって調製することができる。
前者の方法は、例えば、樹脂が熱可塑性を有するものである場合に有効である。具体的には、樹脂を加熱溶融した後、ホスホン酸銅化合物を混練する方法や、ホスホン酸銅化合物及び樹脂のいずれか一方を溶媒に分散等させた後、得られた混合液中にもう一方を添加・混合した後、溶媒を除去する方法によって実施することができる。
また、後者の方法は、樹脂が熱硬化性を有するものである場合に有効である。重合方法としては、ラジカル重合が一般的であり、この場合、ホスホン酸銅化合物と樹脂の単量体からかなる混合物中に、更に重合開始剤を含有させてもよい。なお、このような重合反応は、単量体と近赤外光吸収材料を混合した後すぐに実施する必要はなく、例えば、所定の基材上に塗布した後に実施することもできる。
さらに、赤外吸収材料は、上述したホスホン酸銅化合物及び樹脂に加え、樹脂との相溶性に優れる可塑剤を含有していると好ましい。可塑剤を含有していると、ホスホン酸銅化合物の樹脂への分散性が高められ、近赤外光の吸収特性や可視光透過性が向上する傾向にある。樹脂中にホスホン酸銅化合物を直接分散して赤外吸収材料を調製する場合、まず、ホスホン酸銅化合物を可塑剤に分散させ、これをそのまま又は溶媒に分散させた後、樹脂と混合することが好ましい。こうすれば、ホスホン酸銅化合物の樹脂への分散が更に良好となる。
可塑剤としては、中間膜用に一椴的に用いられている公知の可塑剤が挙げられる。例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、グリコール系可塑剤等が例示できる。より具体的には、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機系可塑剤;有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が好適に用いられる。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよく、樹脂の種類に応じて相溶性等を考慮して使い分けられる。
一塩基性有機酸エステルとしては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)又はデシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られるグリコール系エステル等が挙げられる。より具体的には、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2エチルブチレート(3GH)、ジヘキシルアジペート(DHA)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジヘプタノエート(3G7)等が例示できる。なかでも、3GO、3GH、3G7等が好ましい。
多塩基性有機酸エステルとしては特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸又はアゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖状又は分枝状アルコールとの反応によって得られるエステル等が挙げられる。例えば、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適である。
有機リン酸系可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
赤外吸収材料における可塑剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、1〜120質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましく、2〜80質量部であることが更に好ましい。可塑剤の含有量が、樹脂材料100質量部に対して1質量部未満であると、ホスホン酸銅化合物の分散性が低下して可視光透過性が不十分となる場合がある。一方、120質量部を超えると基材である樹脂が柔軟になり過ぎ、例えば合わせガラスにおける中間膜としての使用が困難となる傾向にある。
また、赤外吸収材料には、接着力調整剤が含有されていてもよい。なお、接着力調整剤は、後述する中間膜(赤外吸収層)の表面に塗布されてもよい。接着力調整剤としては、例えば、有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、変成シリコーンオイル等が挙げられる。上記有機酸としては特に限定されず、例えば、オクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸等が挙げられる。上記無機酸としては特に限定されず、例えば、塩酸、硝酸等が挙げられる。上記アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のなかでも、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましく、より好ましくは、炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩及びマグネシウム塩である。
上記炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩及びマグネシウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルへキサン酸マグネシウム、2−エチルへキサン酸カリウム等が好適である。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が供用されてもよい。
上記有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の配合量の好ましい下限は、樹脂100重量部に対して0.001重量部、上限は0.5重量部である。0.001重量部未満であると、高湿度雰囲気下で周辺部の接着力が低下することがある。0.5重量部を超えると、膜の透明性が失われることがある。より好ましい下限は0.01重量部、上限は0.2重量部である。
変成シリコーンオイルとしては、例えば、エポキシ変成シリコーンオイル、エーテル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、これらの変性シリコーンオイルは、一般にポリシロキサンに、変性させるべき化合物を反応させることにより得られる。
変性シリコーンオイルの分子量の好ましい下限は800、上限は5000である。800未満であると、表面への局在化が不充分なことがある。5000を超えると、樹脂との相溶性が低下し、膜表面にブリードアウトしてガラスとの接着力が低下することがある。より好ましい下限は1500、上限は4000である。
変性シリコーンオイルの配合量の好ましい下限は、樹脂100重量部に対して0.01重量部、上限は0.2重量部である。0.01重量部未満であると、吸湿による白化を防止する効果が不充分となることがある。0.2重量部を超えると、樹脂との相溶性が低下し、膜表面にブリードアウトして樹脂とガラスとの接着力が低下することがある。より好ましい下限は0.03重量部、上限は0.1重量部である。
赤外吸収材料は、上記可塑剤や接着力調整剤のほか、他の添加剤を更に含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、色調を調整するための成分、物性を調整するための成分、赤外吸収材料を安定化するための成分、後述する積層体を形成させる際に透光性基板との密着性を向上するための成分等が挙げられる。その他、必要に応じて、押出機中での熱による変質を防止するための酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤等の添加剤が添加されていてもよい。
例えば、色調を調整するための成分としては、染料、顔料、金属化合物等が挙げられる。また、物性を調整するための成分としては、スチレン、ブタジエン、酢酸ビニル等のα,β−不飽和結合を有する(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系の樹脂と相溶性に優れるオリゴマーやポリマー等が挙げられる。
さらに、安定化するための成分としては、光安定剤、熱安定剤、抗酸化剤、紫外光吸収剤等が挙げられる。またさらに、透光性基板との密着性を向上するための成分としては、例えば、透光性基板としてガラス基板を用いる場合、ビニルシラン、アクリルシラン、エポキシシラン等のシランカップリング剤等のカップリング剤が例示できる。
紫外光吸収剤としては、ベンゾエート系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
より具体的には、ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。サリシレート系化合物としては、フェニルサリシレートやp−t−ブチルフェニルサリシレートが挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−5−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシエチルベンゾフェノン、4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタリミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメトキシベンゾイル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートやオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが挙げられ、シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドや2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドが挙げられる。また、トリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールが挙げられる。
また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や、Ni系化合物を適用可能である。特に、上述した紫外光吸収剤とこれらの光安定剤を併用すると、光に対する安定性が極めて良好となる傾向にある。
より具体的には、HALSとしては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケード、1−[2−[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]、ジメチルサシネートポリマ−with−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
また、Ni系の光安定剤としては、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル(II)、ニッケルジブチルジチオカーボネート、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−ブチルアミン−ニッケル(II)等が挙げられる。
(光学部材)
上述した赤外吸収材料を用いることにより、近赤外光を遮断する特性に優れる光学部材を得ることができる。このような光学部材としては、以下に示す第1及び第2の形態が挙げられる。
第1の形態:赤外吸収材料を加工して得られるシート状成形物。
第2の形態:透光性基板と、この透光性基板の少なくとも一側に設けられた赤外吸収材料からなる赤外吸収層とを有する積層体。
まず、第1の形態について説明する。第1の形態の光学部材は、上述した赤外吸収材料からなるシート状の成形物であり、具体的には、シートやフィルムが挙げられる。ここで、シートとは、250μmを超える厚さを有する薄板状のものである。また、フィルムとは、厚さ5〜250μmの薄い膜状のものである。これらのシート又はフィルムは、公知のシート又はフィルム形成方法を用いて作製可能である。かかるシート又はフィルム形成方法としては、溶融押出成形法、延伸成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、溶液キャスト法等が挙げられる。
次に、第2の形態について説明する。第2の形態の光学部材は、透光性基板と、この透光性基板に隣接して設けられた赤外吸収材料からなる赤外吸収層とを有する積層体である。
透光性基板は、可視光に対する透過性を有する基板であり、例えば、波長550nmの光を90%程度以上透過できる基板である。この透光性基板を構成する材料は、可視光透過性を有する材料であれば特に限定されず、光学部材の用途に応じて適宜選択可能である。良好な硬度、耐熱性、耐薬品性、耐久性等を得る観点からは、ガラスやプラスチックが好適に使用される。ガラスとしては、無機ガラス、有機ガラス等が挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン樹脂等が例示できる。なお、透光性基板が複数存在する場合には、各基板は、同じ種類の材料で構成されたものであってもよく、異なる材料で構成されたものであってもよい。
このような積層体は、例えば、上述した第1の形態の光学部材と同様のシートやフィルムを形成した後、これらのシート等と透光性基板とを貼り合わせることによって製造することができる。これらを貼り合わせる方法としては、プレス法、マルチロール法、減圧法等の加圧又は減圧により接着する手段、オートクレーブ等を用いて加熱することにより接着する手段、又は、これらを組み合わせた手段を用いることができる。
また、積層体の製造方法としては、予め形成したシートを貼り合わせる方法以外に、透光性基材上に、赤外吸収層を直接形成する方法も適用できる。かかる方法としては、例えば、上述した赤外吸収材料を適宜の溶媒に分散等させてコーティング剤とし、この溶液を透光性基板に塗布した後、溶媒を蒸発させることによって、透光性基材上に、赤外吸収材料からなる薄膜、被覆物又は薄層を形成する方法が例示できる。こうして形成された薄膜等は、コーティングと呼ばれるものである。このような方法を用いて赤外吸収層を形成する場合には、当該層の平坦性を高める目的で、レベリング剤、消泡剤といった各種の界面活性剤等の溶解補助剤を、上述したコーティング剤中に添加してもよい。
さらに、透光性基材上に赤外吸収層を直接形成する他の方法としては、樹脂の単量体に赤外吸収材料を分散等させた組成物を調製し、この組成物を透光性基材上に塗布した後、当該基材の表面上で単量体の重合反応を生じさせる方法も挙げられる。この場合、上記組成物中には更に溶媒を添加してもよい。
第2の形態の光学部材、すなわち積層体は、上述したような透光性基板と赤外吸収層とを一層ずつ備えるものに限定されず、これらの層を複数備えるものであってもよい。具体的には、一対の透光性基板と、この透光性基板間に配置された上記赤外吸収材料からなる中間膜(赤外吸収層)とを備えるものが挙げられる。このような積層体は、いわゆる合わせガラスと呼ばれるものである。
ここで、図1を参照して、好適な実施形態の合わせガラスについて説明する。
図1は、合わせガラスの断面構成を模式的に示す図である。図1に示される合わせガラス10は、一対の透光性基板1と、この一対の透光性基板1に挟持された中間膜2(赤外吸収層)とを備えるものである。中間膜2は、上記赤外吸収材料からなるものであり、透光性基板1としては、上述したものと同様のものが適用できる。
かかる構造の合わせガラス10は、例えば、一組の透光性基板の間に、上述した赤外吸収材料からなるシート状成形物を挟み、これを予備圧着して各層間に残存した空気を除去した後、本圧着してこれらを密着させる方法によって製造することができる。
なお、このような製造方法により合わせガラス10を製造する場合、中間膜2に、その保管時においてシート同士が合着して塊状となる、いわゆるブロッキング現象が生じていないことや、予備圧着における脱気性が良好であることが要求される。これらの要求を満たしている場合、透光性基材1とシートとを重ね合わせる際の作業性が良好となるほか、例えば脱気が不十分であるために生じた気泡等による可視光透過性の低下を防ぐことができる。
合わせガラス10には、近赤外光を遮断する特性のほか、可視光領域の光を透過する特性に優れることが求められる。このように優れた可視光透過性を得るためには、上述したように、透光性基板1と中間膜2との間に極力気泡を有していないことが好ましい。
このように気泡を低減する手段の一つとして、表面にエンボスと呼ばれる多数の微小な凹凸を有している中間膜2を用いる方法が知られている。このようなエンボスが施された中間膜2によれば、上述した予備圧着工程等における脱気性が極めて良好となる。その結果、合わせガラス10は、気泡による可視光透過性の低下が少ないものとなる。
このようなエンボスの形態としては、例えば、多数の凸部とこれらの凸部に対する多数の凹部とからなる各種凸凹模様、多数の凸条とこれらの凸条に対する多数の凹溝とからなる各種の凸凹模様、粗さ、配置、大きさ等の種々の形状因子に関し多様な値を有するエンボス形状がある。
これらのエンボスとしては、例えば、特開平6−198809号公報に記載された、凸部の大きさを変え、その大きさ、配置を規定したもの、特開平9−40444号公報に記載された、表面の粗さを20〜50μmとしたもの、特開平9−295839号公報に記載された、凸条が交差するように配置されたもの、或いは、特開2003−48762号公報に記載された、主凸部の上に更に小さな凸部を形成されたものが挙げられる。また、エンボス形状を施す方法として、特表2003−528749には、樹脂成形時に発生するメルトフラクチャーを利用する方法、特表2002−505211、特表平9−502755には架橋PVB粒子や造核剤を用いる方法等が提案されている。
また、近年、合わせガラス10に求められる他の特性として、遮音性がある。遮音性が優れる合わせガラスによれば、例えば、窓材に用いた場合に、周囲の騒音等の影響を低減できるようになり、更に室内環境を向上させ得る。一般に、遮音性能は、周波数の変化に応じた透過損失量として示され、その透過損失量は、JISA 4708では、500Hz以上において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で規定されている。
ところが、合わせガラスの透光性基板として一般的に用いられるガラス板の遮音性能は、2000Hzを中心とする周波数領域ではコインシデンス効果により著しく低下する傾向にある。ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射した時、ガラス板の剛性と慣性によって、ガラス板状を横波が伝播してこの横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。よって、一般的な合わせガラスでは、2000Hzを中心とする周波数領域において、かかるコインシデンス効果による遮音性能の低下を避け難く、この点の改善が求められている。
これに関し、人間の聴覚は、等ラウドネス曲線から、1000〜6000Hzの範囲では他の周波数領域に比べ非常に良い感度を示すことが知られている。従って、コインシデンス効果による上記遮音性能の落ち込みを解消することは、防音性能を高める上で重要となる。このような観点から、合わせガラス10の遮音性能を高めるには、上記コインシデンス効果による遮音性能の低下を緩和し、コインシデンス効果によって生じる透過損失の極小部の低下を防ぐ必要がある。
合わせガラス10に遮音性を付与する方法としては、合わせガラス10の質量を増大させる方法、透光性基板1となるべきガラスを複合化する方法、このガラス面積を細分化する方法、ガラス板支持手段を改善する方法などがある。また、遮音性能は、中間膜2の動的粘弾性により左右され、特に貯蔵弾性率と損失弾性率との比である損失正接に影響されることがあることから、この値を制御することによっても合わせガラス10の遮音性能を高めることができる。
後者のように損失正接の値を制御する手段としては、例えば、特定の重合度を有する樹脂膜を用いる方法、特開平4−2317443号公報に記載されるような樹脂の構造を規定する方法、特開2001−220183号公報に記載されるような樹脂中の可塑剤量を規定する方法等が挙げられる。また、異なる2種以上の樹脂を組み合わせて中間膜を形成することによっても、広い温度範囲にわたって合わせガラス10の遮音性能を高め得ることが知られている。例えば、特開2001−206742号公報に記載された、複数種の樹脂をブレンドする方法、特開2001−206741号公報、特開2001−226152号公報に記載された、複数種の樹脂を積層する方法、特開2001−192243号公報に記載された、中間膜中の可塑剤量に偏向を持たせる方法等が挙げられる。これらの技術を採用し、樹脂構造の改質、可塑剤の添加、2種以上の樹脂の組み合わせ等といった手段を適宜組み合わせて実施することで、中間膜2を形成すべき樹脂材料の損失正接の値、すなわち遮音性を制御することが可能となる。
さらに、合わせガラス10は、上述したような近赤外光を吸収すること以外によって遮熱性を発揮し得る特性を更に有していると好ましい。このように合わせガラス10の遮熱性を高める方法としては、中間膜2中に、遮熱機能を有する金属、酸化物微粒子、金属ホウ素化物等を更に含有させるか、またはこれらを含む層を合わせガラスの積層構造中に導入する方法が挙げられる。このような方法としては、例えば、特開2001−206743号公報、特開2001−261383号公報、特開2001−302289号公報、特開2004−244613号公報、国際公開第02/060988号パンフレット等に記載された方法を適用できる。
遮熱性を高め得る酸化物微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等が挙げられる。また、ホウ化物微粒子としてはYB、LaB、CeB、PrB、NdB、SmB、EuB、GdB、TbB、DyB、HoB、ErB、TmB、YbB、LuB、ZrB、BaB、SrB、CaB等の6ホウ化物微粒子が挙げられる。なお、上述した酸化物微粒子が含有された中間膜2は、可視光透過性が低下しやすい傾向にあることから、酸化物微粒子の粒径を規定したり(特許第271589号公報、特開2002−293583号公報)、分散性を高めたりして、透光性を良好に維持するための方法を適用してもよい。後者のように酸化物微粒子の分散性を高めるための方法としては、当該微粒子を機械的に分散させることや、分散剤を用いること等の公知の微粒子分散技術が適用できる。
なお、合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、上述した酸化物微粒子等を含有させる方法以外に、例えば、有機系の遮熱機能を有する染料・顔料を含有させる方法や、遮熱性能を有する透光性基板を用いる方法も挙げられる。前者の有機系の遮熱機能を有する染料・顔料を含有させる方法としては、特開平7−157344号公報、特許第319271号公報に記載された方法が挙げられる。このような染料・顔料としては、具体的には、フタロシアニン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、シアニン系、ナフタロシアニン系、ピロール系、イモニウム系、ジチオール系、メルカプトナフトール系等の染料・顔料が挙げられる。
また、後者のような遮熱性能を有する透光性基板としては、例えば、特開2001−151539号公報に記載されているようなFe含有ガラス(例えば、グリーンガラス等)、特開2001−261384号公報、特開2001−226148号公報に記載されているような金属、金属酸化物を積層したガラス板が挙げられる。
このように、上述した実施形態の合わせガラスは、中間膜に含まれる赤外吸収材料が近赤外光領域の光線を吸収することによって、熱線である近赤外光を遮断する特性を発揮するものであるが、本発明の合わせガラス(積層体)は、更なる近赤外光遮断特性の向上を目的として、近赤外光吸収層に加えて、近赤外光を反射する特性を有する層(反射層)を更に有していてもよい。
図2は、反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。合わせガラス20は、透光性基板21、赤外吸収層22、反射層23及び透光性基板21をこの順に備える構造を有している。透光性基板21及び赤外吸収層22は、上述した合わせガラス10におけるものと同様のものが適用できる。
反射層23としては、金属や金属酸化物から構成される層が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、ケイ素、クロム、チタン、インジウム、アンチモン等の金属単体、合金、混合物又は酸化物が例示できる。
このような反射層23を有する合わせガラス20は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、透光性基板21の一面に反射層23を設けたものを準備する。ここで、透光性基板21上に反射層23を形成する方法としては、金属や金属酸化物を透光性基板21上に蒸着する方法等が挙げられる。次に、赤外吸収層22となるべきシートの一方の面側に、反射層23が形成された透光性基板21をその反射層23が接するように配置するとともに、他方の面側に透光性基板21のみを配置する。そして、これらを圧着することによって、合わせガラス20を得ることができる。
ところで、このように透光性基板21と赤外吸収層22との間に反射層23を形成すると、反射層23と赤外吸収層22との接着性が低下してしまう場合がある。こうなると、例えば合わせガラス20が破損した場合に透光性基板21が剥離・飛散し易くなり、安全性の点で問題が生じることとなる。かかる問題を避ける観点からは、例えば、赤外吸収層22と反射層23との間に、両者の接着力を向上させ得る層を更に設けることが好ましい。こうすることで、反射層23と赤外吸収層22との接着性を改善することが可能となる。
このように接着力を向上させる手段としては、例えば、赤外吸収層22に含まれる樹脂成分がポリビニルアセタールである場合、赤外吸収層22よりも高いアセタール度を有するポリビニルアセタールからなる層(特開平7−187726号公報、特開平8−337446号公報)、所定の割合のアセトキシ基を有するPVBからなる層(特開平8−337445号公報)、所定のシリコーンオイルからなる層(特開平7−314609号広報)等を形成する方法が採用できる。
また、反射層23としては、上述したような金属や金属酸化物を含む層以外に、特表平09−506837、特表2000−506082、特表2000−506084、特表2004−525403、特表2003−515754、特開2002−231038、特表2004−503402等で示されるような、光の干渉を利用して特定波長を反射する高分子多層フィルムを用いることも出来る。
なお、反射層は、合わせガラスにおいて、必ずしも上述したように透光性基板と赤外吸収層との間に設けられている必要はなく、例えば、透光性基板の間に複数の樹脂からなる層が形成されている場合は、これらの層の間に設けられた形態であってもよい。
図3は、透光性基板間に設けられた複数の層間に反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。合わせガラス30は、透光性基板31、赤外吸収層32、反射層33、樹脂層34、赤外吸収層32、透光性基板31をこの順に備える構造を有している。かかる合わせガラス30において、透光性基板31、赤外吸収層32及び反射層33としては、上述したのと同様のものが適用できる。また、樹脂層34としては、公知の樹脂材料からなるものが適用でき、このような樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等が挙げられる。なお、このような構造の合わせガラス30においては、赤外吸収層32は少なくとも一層設けられていればよいため、例えば、上述した赤外吸収層32のうちの一層は、近赤外光を吸収する特性を有しない樹脂材料からなる層であってもよい。
このように、赤外吸収層(中間膜)に加えて更に反射層を設けることで、両層の効果により、合わせガラスに対して更に優れた近赤外光を遮断する特性を付与することができる。また、上述したような、反射層と赤外吸収層との接着性を改善する方法を採用すれば、このような近赤外光の遮断特性に加え、優れた強度を有する合わせガラスを得ることも可能となる。
さらに、合わせガラスは、赤外吸収層のほか、紫外光を吸収する層(紫外吸収層)を更に有していてもよい。紫外吸収層を有することで、合わせガラスに紫外光をカットする特性を付与できるほか、赤外吸収層の紫外線等による劣化を抑制することもでき、一層優れた耐光性が得られ、長期にわたってより安定した赤外吸収特性が得られるようになる。紫外吸収層としては、例えば、樹脂中に上述したような紫外光吸収剤を分散させた構成を有する層が挙げられる。このような紫外吸収層は、合わせガラスの表面に設けてもよく、透光性基板間の任意の位置に設けてもよい。赤外吸収層の劣化を効果的に防止する観点からは、紫外吸収層は、合わせガラスにおいて赤外吸収層よりも光が入射される側に位置していると好適である。
図4は、紫外吸収層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。合わせガラス40は、透光性基板41、赤外吸収層42、紫外吸収層43及び透光性基板41をこの順に備える構造を有している。透光性基板41及び赤外吸収層42は、上述した合わせガラス10におけるものと同様のものが適用できる。このような合わせガラス40は、紫外光による赤外吸収層42の劣化を抑制するため、紫外吸収層43が形成されている側が光の入射側となるように用いることが好適である。なお、紫外吸収層43は、このような形態に限られず、透光性基板41の外側表面上に設けられてもよく、また透光性基板41間に赤外吸収層42以外の層が複数ある場合、そのいずれであってもよい。
上述した構成を有する合わせガラス等の積層体においては、太陽光等の熱線成分を含む光が入射すると、中間膜である赤外吸収層が発現する近赤外光の吸収特性によって、近赤外光領域(波長700〜1200nm程度)の熱線が遮断される。一般に、この波長領域の光線は、肌が焼きつくようなジリジリとした刺激的な暑さを感じさせる傾向にあるが、上述した積層体を透過する光線は、このような近赤外光が遮断されているため主として可視光線となる。よって、かかる積層体を窓材等に用いれば、可視光を効率良く取り込みつつ、室内や屋内の温度上昇を抑えることができる。
なお、可視光の取り込みを十分に行う観点から、合わせガラスは、そのヘーズが50%以下であると好ましく、40%以下であるとより好ましく、35%以下であると更に好ましい、このヘーズが50%を超えると、合わせガラスの透光性が低下し、可視光の取り込みが不十分となる傾向にある。
このように、上述した実施形態の積層体(合わせガラス)は、優れた近赤外光の遮断性能を有していることから、太陽光等の自然光その他の外光を取り入れるための建材(建築物の部材に限定されない)、例えば、自動車、船舶、航空機又は電車(鉄道)車両の窓材、アーケード等の通路の天蓋材、カーテン、カーポートやガレージの天蓋、サンルームの窓又は壁材、ショーウィンドウやショーケースの窓材、テント又はその窓材、ブラインド、定置住宅や仮設住宅等の屋根材や天窓その他窓材、道路標識等の塗装面の被覆材、パラソル等の日除け具材、その他熱線の遮断が必要とされる種々の部材に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[第1のホスホン酸の合成]
((パーフルオロブチル)エチルホスホン酸(PFBEPA)の合成)
まず、50mlのナスフラスコに、8.97g(54.0mmol)の亜リン酸トリエチル、20.1g(53.9mmol)の1−(パーフルオロブチル)−2−ヨードエタンを入れ、160℃の油浴中で2時間加熱還流した。次いで、8.90g(53.6mmol)の亜リン酸トリエチルを添加し、2.5時間加熱還流した。得られた反応液を減圧蒸留(99−105℃/8mmHg)して、(パーフルオロブチル)エチルホスホン酸ジエチルとエチルホスホン酸ジエチルとの混合物(3:1)を無色油状物として得た。生成物の収量は7.15g(収率26%)であった。上記混合物をH‐NMR及び31P‐NMRで分析した結果は次の通りである。
H‐NMR(400MHz,CDCl):1.32(t,J=8.0Hz,6H),1.90−2.00(m,2H),2.32−2.38(m,2H),4.04−4.15(m,4H)
31P‐NMR(162MHz,CDCl):27.9
次に、ジムロートを付した200mlのナスフラスコに、4.01g(7.8mmol)の上記で得られた(パーフルオロブチル)エチルホスホン酸ジエチルとエチルホスホン酸ジエチルとの混合物(3:1)、及び、100mlの濃塩酸を入れ、加熱還流下、17時間撹拌した。これを室温で一晩静置した後、析出した結晶を濾別し、(パーフルオロブチル)エチルホスホン酸(PFBEPA)を無色固体として得た。生成物の収量は2.29g(収率89%)であった。得られた生成物をH‐NMR及び31P‐NMRで分析した結果は次の通りである。
H‐NMR(400MHz,CDOD):1.75−1.84(m,2H),2.26−2.32(m,2H)
31P‐NMR(162MHz,CDOD):24.9
((パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸(PFOEPA)の合成)
まず、50mlのナスフラスコに5.90g(35.5mmol)の亜リン酸トリエチル、20.1g(35.0mmol)の1−(パーフルオロオクチル)−2−ヨードエタンを入れ、170℃の油浴中で4時間加熱還流した。次いで、5.90g(35.5mmol)の亜リン酸トリエチルを添加し、2時間加熱還流した。得られた反応液を減圧蒸留(127−144℃/5mmHg)し、(パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸ジエチルとエチルホスホン酸ジエチルの混合物(3:1)を無色油状物として得た。生成物の収量は8.15g(収率30%)であった。上記混合物をH‐NMR及び31P‐NMRで分析した結果は次の通りである。
H‐NMR(400MHz,CDCl):1.33(t,J=8.0Hz,6H),1.91−2.00(m,2H),2.28−2.41(m,2H),4.07−4.17(m,4H)
31P‐NMR(162MHz,CDCl):28.0
次に、ジムロートを付した200mlのナスフラスコに、4.11g(5.3mmol)の上記で得られた(パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸ジエチルとエチルホスホン酸ジエチルとの混合物(3:1)、及び、100mlの濃塩酸を入れ、加熱還流下、11時間撹拌した。これを室温で一晩静置した後、析出した結晶を濾別し、さらにクロロホルムで洗浄した後、乾燥して(パーフルオロオクチル)エチルホスホン酸(PFOEPA)を無色固体として得た。生成物の収量は2.88g(収率100%)であった。得られた生成物をH‐NMR及び31P‐NMRで分析した結果は次の通りである。
H‐NMR(400MHz,CDOD):1.80−1.90(m,2H),2.25−2.42(m,2H)
31P‐NMR(162MHz,CDOD):24.9
((パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸(PFBBPA)の合成)
まず、50mlのナスフラスコに2.26g(13.6mmol)の亜リン酸トリエチル、5.47g(13.6mmol)の1−(パーフルオロブチル)−4−ヨードブタンを入れ、160℃の油浴中で3時間加熱還流した。次いで、2.26g(13.6mmol)の亜リン酸トリエチルを添加し、2時間加熱還流した。減圧蒸留によりエチルホスホン酸ジエチルを分離し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)にて精製して(パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸ジエチルを無色油状物として得た。生成物の収量は2.53g(収率45%)であった。得られた生成物をH‐NMR及び31P‐NMRで分析した結果は次の通りである。
H‐NMR(400MHz,DMSO−d6):1.22(t,J=7.1Hz,6H),1.56−1.62(m,4H),1.76−1.82(m,2H),2.19−2.31(m,2H),3.91−4.03(m,4H)
31P‐NMR(162MHz,DMSO−d6):32.6
次に、ジムロートを付した100mlのナスフラスコに、2.53g(6.1mmol)の上記で得られた(パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸ジエチル、及び、25mlの濃塩酸を入れ、加熱還流下、7時間撹拌した。これを室温で一晩静置した後、析出した結晶を濾別し、さらにクロロホルムで洗浄した後、乾燥して(パーフルオロブチル)ブチルホスホン酸(PFBBPA)を無色固体として得た。生成物の収量は1.22g(収率56%)であった。得られた生成物をH‐NMR及び31P‐NMRで分析した結果は次の通りである。
H‐NMR(400MHz,DMSO−d6):1.53−1.62(m,6H),2.18−2.28(m,2H)
31P‐NMR(162MHz,DMSO−d6):27.2
[比較例1;EPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
ジムロートを付した3Lのナスフラスコに、34.0g(0.309mol)のエチルホスホン酸(EPA)と1.02LのTHFを入れて溶解させた。そこへ61.7g(0.309mol)の酢酸銅(II)一水和物を添加し、4時間加熱還流した。不溶物を濾別し、乾燥して、ホスホン酸銅化合物であるEPA銅塩を水色固体として得た。生成物の収量は51.4g(収率97%)であった。このEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、82.4mg(0.748mmol)のEPAを量り取り、1gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、149mg(0.748mmol)の酢酸銅(II)一水和物と4.5gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、3時間攪拌を続けて、EPA銅塩及び3GOを含む混合液を得た。反応により生じた酢酸及び溶媒であるDMFを、90℃の湯浴を用いたエバポレーターにより減圧留去した後、反応液の入ったフラスコごと90℃で2時間減圧乾燥して、EPA銅塩及び3GOを含む混合液を得た。
次いで、300mlビーカーに300gの塩化メチレンを量り取り、これをスターラーで攪拌した。この塩化メチレン中に、上記混合液を滴下し、さらに20gの塩化メチレンを洗浄用に添加した後、6.38gのPVBを添加して30分間攪拌を続けて、赤外吸収材料の粘性溶液を得た。
それから、得られた粘性溶液をテフロン板上に広げ、室温で一晩放置して揮発成分を除去した後、さらに90℃で3時間減圧乾燥した。これにより形成された薄膜をテフロン板から剥がし、このうちの8gを取り出して120℃、15MPaでプレスし、ホスホン酸銅化合物及びPVBを含む赤外吸収材料からなる0.76mm厚のシートを作成した。
得られたシートを70℃に温め、2枚のスライドガラスで挟んだ後、アルミ箔に包んだ。そして、これをオートクレーブに入れ、窒素圧を1.5MPaとして、130℃で30分加熱した後、冷却して、合わせガラスを得た。
[比較例2;HPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
300mlの三角フラスコに、3.99g(20.0mmol)の酢酸銅(II)一水和物と200gのEtOHを入れて溶解させた(A液)。また、500mlの三角フラスコに3.32g(20.0mmol)のヘキシルホスホン酸(HPA)、50gのEtOHを入れて溶解させた。この溶液に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、3時間攪拌を続けた。不溶物を濾別し、ホスホン酸銅化合物であるHPA銅塩を水色固体として得た。生成物の収量は4.39g(収率96%)であった。このHPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、124mg(0.748mmol)のHPAを量り取り、1gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、149mg(0.748mmol)の酢酸銅(II)一水和物と4.5gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、4.5時間攪拌を続け、HPA銅塩及び3GOを含む混合液を得た。
そして、この混合液を得た以後は、比較例1と同様にして、シート及び合わせガラスを作製した。
[比較例3;ODPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
ジムロートを付した50mlのナスフラスコに、0.98g(2.93mmol)のオクタデシルホスホン酸(ODPA)と20mlのTHFを入れて攪拌した。そこへ0.61g(3.06mmol)の酢酸銅(II)一水和物を添加し、2.5時間加熱還流した。不溶物を濾別し、ホスホン酸銅化合物であるODPA銅塩を淡緑色固体として得た。生成物の収量は0.67g(収率58%)であった。このODPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、250mg(0.748mmol)のODPAを量り取り、2gのEtOH、1.5gのTHFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、149mg(0.748mmol)の酢酸銅(II)一水和物と7.5gのEtOHを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのTHFを洗浄用に添加した後、4時間攪拌を続けて、ODPA銅塩及び3GOを含む混合液を得た。
そして、この混合液を得た以後は、比較例1と同様にして、シート及び合わせガラスを作製した。
[比較例4;PFBEPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
ジムロートを付した50mlのナスフラスコに、1.66g(5.06mmol)のPFBEPA、20mlのTHFを入れて溶解させた。そこへ1.00g(5.00mmol)の酢酸銅(II)一水和物を添加して、4時間加熱還流した。不溶物を濾別し、ホスホン酸銅化合物であるPFBEPA銅塩を水色固体として得た。生成物の収量は0.78g(収率40%)であった。このPFBEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、155mg(0.472mmol)のPFBEPAを量り取り、1gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、94.3mg(0.472mmol)の酢酸銅(II)一水和物と3gのDMFを入れて溶解させた後、可塑剤として2.43gの3GO(トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート)を添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、3.5時間攪拌を続けて、PFBEPA銅塩を含む混合液を得た。
次いで、300mlビーカーに300gの塩化メチレンを量り取り、これをスターラーで攪拌した。この塩化メチレン中に、上記混合液を滴下し、さらに20gの塩化メチレンを洗浄用に添加した後、6.38gのPVBを添加して30分間攪拌を続けて、赤外吸収材料の粘性溶液を得た。
それから、得られた粘性溶液をテフロン板上に広げ、室温で一晩放置して揮発成分を除去した後、さらに90℃で3時間減圧乾燥した。これにより形成された薄膜をテフロン板から剥がし、このうちの8gを取り出して120℃、15MPaでプレスし、ホスホン酸銅化合物及びPVBを含む赤外吸収材料からなる0.76mm厚のシートを作成した。
得られたシートを70℃に温め、2枚のスライドガラスで挟んだ後、アルミ箔に包んだ。そして、これをオートクレーブに入れ、窒素圧を1.5MPaとして、130℃で30分加熱した後、冷却して、合わせガラスを得た。
[比較例5;PFOEPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
ジムロートを付した50mlのナスフラスコに、1.32g(2.50mmol)のPFOEPA、15mlのTHF、5mlのMeOHを入れて溶解させた。そこへ0.50g(2.50mmol)の酢酸銅(II)一水和物を添加して、50℃で4時間加熱した。不溶物を濾別し、ホスホン酸銅化合物であるPFOEPA銅塩を水色固体として得た。生成物の収量は1.30g(収率88%)であった。このPFOEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、171mg(0.324mmol)のPFOEPAを量り取り、2gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、64.6mg(0.324mmol)の酢酸銅(II)一水和物と2gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに1gのDMFを洗浄用に添加した後、2時間攪拌を続けた。反応により生じた酢酸及び溶媒であるDMFを、90℃の湯浴を用いたエバポレーターにより減圧留去した後、反応液の入ったフラスコごと90℃で2時間減圧乾燥して、PFOEPA銅塩及び3GOを含む混合液を得た。
次いで、300mlビーカーに300gの塩化メチレンを量り取り、これをスターラーで攪拌した。この塩化メチレン中に、上記混合液を20gの塩化メチレンで希釈した分散液を滴下し、さらに6.38gのPVBを添加して30分間攪拌を続けて、赤外吸収材料を含む粘性溶液を得た。
そして、この粘性溶液を得た以後は、比較例1と同様にしてシート及び合わせガラスを作製した。
[比較例6;PFBBPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
10mlのバイアルに、84.1mg(0.421mmol)の酢酸銅(II)一水和物と4.2gのEtOHを入れて溶解させた(A液)。また、20mlの試験管に150mg(0.421mmol)のPFBBPA及び1gのEtOHを入れて溶解させた。この溶液に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのEtOHを洗浄用に添加した後、3時間攪拌を続けた。不溶物を遠心分離し、乾燥して、ホスホン酸銅化合物であるPFBBPA銅塩を淡青色固体として得た。生成物の収量は123mg(収率70%)であった。このPFBBPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、150mg(0.421mmol)のPFBBPAを量り取り、0.5gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、84.1mg(0.421mmol)の酢酸銅(II)一水和物と2.5gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、4時間攪拌を続けて、PFBBPA銅塩及び3GOを含む混合液を得た。
そして、この混合液を得た以後は、比較例1と同様にして、シート及び合わせガラスを作製した。
[比較例7;PFEPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
ジムロートを付した50mlのナスフラスコに、0.89g(4.45mmol)のパーフルオロエチルホスホン酸(PFEPA)と15mlのTHFを入れて溶解させた。そこへ0.89g(4.45mmol)の酢酸銅(II)一水和物を添加し、4時間加熱還流した。不溶物を濾別し、ホスホン酸銅化合物であるPFEPA銅塩を水色固体として得た。生成物の収量は0.81g(収率69%)であった。このPFEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、98.7mg(4.93mmol)のPFEPAと1gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、98.5mg(4.93mmol)の酢酸銅(II)一水和物と3gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、その後、3時間攪拌を続けた。反応により生成した酢酸及び溶媒であるDMFを、90℃の湯浴を用いたエバポレーターにより減圧留去して、PFEPA銅塩及び3GOを含む混合液を得た。
次いで、300mlビーカーに280gのクロロホルムを量り取り、これを攪拌羽根で攪拌した。このクロロホルム中に、上記PFEPA銅塩の3GO分散液を滴下し、さらに6.38gのPVBを添加し30分間攪拌を続けて、赤外吸収材料を含む粘性溶液を得た。
そして、この粘性溶液を得た以後は、比較例1と同様にしてシート及び合わせガラスを作製した。
[実施例1;EPA−PFBEPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
20mlのバイアルに、0.27g(2.4mmol)のEPA、0.40g(1.2mmol)のPFBEPA、5gのEtOHを入れて溶解させた(A液)。また、200mlのナスフラスコに0.73g(3.7mmol)の酢酸銅(II)一水和物と37gのEtOHを入れて溶解させた。この溶液に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに1.7gのEtOHを洗浄用に添加した後、2時間攪拌を続けた。不溶物を遠心分離し、乾燥して、ホスホン酸銅化合物であるEPA−PFBEPA銅塩(EPA:PFBEPA=2:1)を淡青色固体として得た。生成物の収量は0.80g(収率89%)であった。このEPA−PFBEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、54.9mg(0.499mmol)のEPA、81.8mg(0.249mmol)のPFBEPAを量り取り、1gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、149mg(0.748mmol)の酢酸銅(II)一水和物と4.5gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、3.5時間攪拌を続け、EPA−PFBEPA銅塩(EPA:PFBEPA=2:1)及び3GOを含む混合液を得た。
そして、この混合液を得た以後は、比較例1と同様にして、シート及び合わせガラスを作製した。
[実施例2;HPA−PFBEPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
10mlのバイアルに、45.6mg(0.274mmol)のHPA、90.0mg(0.274mmol)のPFBEPA、0.5gのEtOHを入れて溶解させた(A液)。また、20mlの試験管に109mg(0.548mmol)の酢酸銅(II)一水和物と5.5gのEtOHを入れて溶解させた。この溶液に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのEtOHを洗浄用に添加した後、4時間攪拌を続けた。不溶物を遠心分離し、乾燥して、HPA−PFBEPA銅塩(HPA:PFBEPA=1:1)を淡青色固体として得た。生成物の収量は144mg(収率85%)であった。このHPA−PFBEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、62.1mg(0.374mmol)のHPA、123mg(0.374mmol)のPFBEPAを量り取り、0.5gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、149mg(0.748mmol)の酢酸銅(II)一水和物と4.5gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、2.5時間攪拌を続けて、HPA−PFBEPA銅塩(HPA:PFBEPA=1:1)及び3GOを含む混合液を得た。
そして、この混合液を得た以後は、比較例1と同様にして、シート及び合わせガラスを作製した。
[実施例3;ODPA−PFBEPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
10mlのバイアルに、81.5mg(0.244mmol)のODPA、80.0mg(0.244mmol)のPFBEPA、0.5gのEtOH、0.7gのTHFを入れ、加熱して溶解させた(A液)。また、20mlの試験管に97.4mg(0.488mmol)の酢酸銅(II)一水和物と4.9gのEtOHを入れて溶解させた。この溶液に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.7gのTHFを洗浄用に添加した後、4時間攪拌を続けた。不溶物を遠心分離し、乾燥して、ODPA−PFBEPA銅塩(ODPA:PFBEPA=1:1)を淡青色固体として得た。生成物の収量は128mg(収率67%)であった。このODPA−PFBEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、125mg(0.374mmol)のODPA、123mg(0.374mmol)のPFBEPAを量り取り、0.5gのEtOH、1gのTHFを入れて加熱溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、149mg(0.748mmol)の酢酸銅(II)一水和物と7.5gのEtOHを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、30℃の油浴中で、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのTHFを洗浄用に添加した後、2時間攪拌を続けて、ODPA−PFBEPA銅塩(ODPA:PFBEPA=1:1)及び3GOを含む混合液を得た。
そして、この混合液を得た以後は、比較例1と同様にして、シート及び合わせガラスを作製した。
[実施例4;EPA−PFOEPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
10mlのバイアルに、150mg(1.36mmol)のEPA、180mg(0.341mmol)のPFOEPA、3.3gのEtOHを入れ、加熱して溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに340mg(1.70mmol)の酢酸銅(II)一水和物と17gのEtOHを入れて溶解させた。この溶液に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに1gのEtOHを洗浄用に添加した後、2時間攪拌を続けた。不溶物を遠心分離し、乾燥して、EPA−PFOEPA銅塩(EPA:PFOEPA=4:1)を淡青色固体として得た。生成物の収量は401mg(収率92%)であった。このEPA−PFOEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、65.9mg(0.598mmol)のEPA、79.0mg(0.150mmol)のPFOEPAを量り取り、1gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、149mg(0.748mmol)の酢酸銅(II)一水和物と4.5gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、4時間攪拌を続けて、EPA−PFOEPA銅塩(EPA:PFOEPA=4:1)及び3GOを含む混合液を得た。
そして、この混合液を得た以後は、比較例1と同様にして、シート及び合わせガラスを作製した。
[実施例5;EPA−PFBBPA銅塩]
(ホスホン酸銅化合物の合成)
10mlのバイアルに、46.4mg(0.421mmol)のEPA、100mg(0.281mmol)のPFBBPA、0.5gのEtOHを入れて溶解させた(A液)。また、20mlの試験管に140mg(0.702mmol)の酢酸銅(II)一水和物と7gのEtOHを入れて溶解させた。この溶液に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのEtOHを洗浄用に添加した後、2.5時間攪拌を続けた。不溶物を遠心分離し、乾燥して、EPA−PFBBPA銅塩(EPA:PFBBPA=1.5:1)を淡青色固体として得た。生成物の収量は156mg(収率82%)であった。このEPA−PFBBPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
(合わせガラスの作製)
まず、10mlのバイアルに、49.4mg(0.449mmol)のEPA、106mg(0.299mmol)のPFBBPAを量り取り、0.5gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに、149mg(0.748mmol)の酢酸銅(II)一水和物と4.5gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、2時間攪拌を続けて、EPA−PFBBPA銅塩(EPA:PFBBPA=1.5:1)及び3GOを含む混合液を得た。
そして、この混合液を得た以後は、比較例1と同様にして、シート及び合わせガラスを作製した。
[実施例6;EPA−PFBEPA銅塩(ブラベンダー法による合わせガラスの製造)]
(合わせガラスの作製)
まず、20mlのバイアルに、324mg(2.94mmol)のEPA、482mg(1.47mmol)のPFBEPAを量り取り、5gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、200mlのナスフラスコに880mg(4.41mmol)の酢酸銅(II)一水和物と26gのDMFを入れて溶解させた後、14.3gの3GOを添加した。この混合物に、室温で攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに1gのDMFを洗浄用に添加した後、2.5時間攪拌を続けた。反応により生じた酢酸及び溶媒であるDMFを、90℃の湯浴を用いたエバポレーターにより減圧留去した。その後、反応液の入ったフラスコごと90℃で3時間減圧乾燥して、EPA−PFBEPA銅塩(EPA:PFBEPA=2:1)及び3GOを含む混合液を得た。このEPA−PFBEPA銅塩は、ホスホン酸と銅イオンとの比率(ホスホン酸/銅イオン、モル比)が1.0であるものである。
得られた混合液を塩化メチレンを用いてプラスチック容器に移し替え、室温で一晩放置して揮発成分を除去した後、40℃で1時間減圧乾燥した。そこへ、37.4gのPVBを添加し、薬さじで十分かき混ぜた後、200℃に設定したブラベンダーに6分かけて添加した。添加終了後、15分間混練し(内温210℃まで上昇)、その後、得られた赤外吸収材料を取り出した。
この赤外吸収材料を得た後は、比較例1と同様にしてシート及び合わせガラスを作製した。
[特性評価]
(屈折率の測定)
実施例1〜5及び比較例1〜7で合成した各ホスホン酸銅塩について、偏光顕微鏡(OLYMPAS DP12)を用い、ベッケ法によりそれぞれの屈折率を測定した。得られた結果を表1に示す。
(分光測定)
実施例1〜5及び比較例1〜7で作製した各合わせガラスについて、分光光度計『U−4000』((株)日立製作所製)を用い、波長250〜2500nmにおける分光透過度を測定した。これに基づいて、各合わせガラスの分光特性及び黄色度(YI)を評価した。比較例1〜7の合わせガラスで得られた分光特性を図5〜11に、実施例1〜5の合わせガラスで得られた分光特性を図12〜16にそれぞれ示す。
分光特性は、日射透過率(Ts)により評価し、Ts<60%であった場合をA、Ts≧60であった場合をBとした。このTs値が小さいほど、赤外吸収特性が高いことを意味する。また、YI値は、分光光度計を用いた測定により、JIS Z8701に準拠した方法で求められるXYZ表色系の三刺激値(X,Y,Z)に基づいて、下記式(A)に従って算出することができる。得られた評価結果を表1に示す。
YI値=100×(1.28X−1.06Z)/Y …(A)
(ヘイズの測定)
実施例1〜5及び比較例1〜7で作製した各合わせガラスについて、濁り度計(NDH−1001DP,日本電色工業社製)を用いてそれぞれのヘイズを測定した。得られた結果を表1に示す。
(耐熱性評価)
実施例1〜5及び比較例1〜7の各合わせガラスの製造過程で作製した近赤外吸収材料のシートの一部を切り取り、それぞれについて200℃10MPaで15分間の加熱・加圧処理を施した。その後、かかる処理後の各シートを用いて、同様にして合わせガラスを作製した。そして、各実施例又は比較例に対応する合わせガラスについて、シートの加熱・加圧処理を行わなかった場合に得られたYI値(YI)と、行った場合に得られたYI値(YI)との差(ΔYI=YI−YI)を求めた。得られた結果を表1に示す。この値が小さいほど、加熱・加圧処理によるシートの劣化が小さく、耐熱性が優れることを意味している。また、この加熱・加圧処理後の各合わせガラスの分光特性を上記と同様に測定し、図5〜16中に併せて示した。図中、「200℃」の表記が付されたものがこれに該当する。
Figure 0005400033
なお、表中、F(フッ素原子)含有量とは、ホスホン酸銅塩(ホスホン酸銅化合物)中の、フッ素原子の含有率(%)である。また、銅塩含有量は、シート中のホスホン酸銅塩の含有率(%)である。
表1に示すように、側鎖にフッ素原子を含むホスホン酸銅化合物及びアルキル構造からなる側鎖を有するホスホン酸銅化合物を組み合わせて用いた実施例の合わせガラスは、分光特性が良好であることから赤外吸収性に優れ、ヘイズが小さいことから可視光透過性も高く、YI値が低いことから着色も少なく、しかもΔYI値も低いことから、耐熱性にも優れていることが確認された。これに対し、ホスホン酸銅化合物を単独で用いた比較例の合わせガラスは、上記の特性が不十分な傾向にあることが判明した。また、図5〜図16に示されるように、実施例の合わせガラスは、比較例の合わせガラスに比して、加熱・加圧処理前後の分光特性の変化が少ないことも判明した。
[実施例7;紫外光吸収剤を含む赤外吸収層を有する合わせガラスの作製]
(赤外及び紫外光吸収シートの作製)
10mLのバイアルに、54.9mgのEPA、81.8mgのPFBEPAを量り取り、1gのDMFを入れて溶解させた(A液)。また、50mlのナスフラスコに149mgの酢酸銅(II)一水和物と4.5gのDMFを入れて溶解させた後、2.43gの3GOを添加した。この混合物を100℃で加熱攪拌しながら、上記A液をゆっくりと滴下し、さらにバイアルに0.5gのDMFを洗浄用に添加した後、2時間攪拌を続けた。反応により生じた酢酸及び溶媒であるDMFを、90℃の湯浴を用いたエバポレーターにより減圧留去した。その後、反応液の入ったフラスコごと90℃で2時間減圧乾燥して、EPA−PFBEPA銅塩及び3GOを含む混合液を得た。
また、300mLのビーカーに270gの塩化メチレンを量り取り、スターラーで攪拌した。そこに、13mgのTinuvin−234(紫外光吸収剤)を添加して溶解させた。
上記で得られたEPA−PFBEPA銅塩及び3GOを含む混合液を、50gの塩化メチレンで希釈した後、この希釈液を、Tinuvin−234を含む塩化メチレン溶液中に滴下し、さらに6.38gのPVBを添加して30分間攪拌を続けた。得られた溶液をテフロン(登録商標)板上に広げ、室温で一晩放置して揮発成分を除去した後、90℃で3時間減圧乾燥した。得られた薄膜を板から剥がして、紫外光吸収剤を更に含む赤外吸収材料からなる赤外及び紫外光吸収シートを得た。
(合わせガラスの作製)
得られた赤外及び紫外光吸収シートを、赤外吸収材料からなるシートに代えて用いたこと以外は、比較例1と同様にして、スライドガラス、赤外及び紫外光吸収シート(紫外光吸収剤を含む赤外吸収層)及びスライドガラスをこの順に有する合わせガラスを得た。
[実施例8;紫外吸収層を表面に有する合わせガラスの作製]
(紫外光吸収シートの準備)
紫外光吸収シートとして、株式会社クレハ製KFCフィルムFT−50Y(表面層(4μmのPVDF)と基材層(PMMA中にTinuvin−234を含有させた46μmのシート)との積層構造を有する)を準備した。
(合わせガラスの作製)
実施例6で作製した合わせガラスの表面上に、上記の紫外光吸収シートを貼り付けて、スライドガラス、赤外吸収層、スライドガラス及び紫外光吸収シート(紫外吸収層)をこの順に備える合わせガラスを得た。
[実施例9;紫外吸収層を内側に有する合わせガラスの作製]
(紫外光吸収シートの作製)
4.2g(100phr)のPVB、1.6g(38phr)の3GO、及び0.15g(3.5phr)のTinuvin234(紫外光吸収剤)を混合し、120℃で1分加熱した後、120℃、15MPaで3分間プレスした。この操作を5回繰り返すことにより混練を行った。得られた混練品を、50×50×1mmのSUS型枠を使用して、プレス温度120℃で、1分余熱後、15MPaで3分の条件でプレスして、紫外光吸収シートを得た。
(赤外吸収材料からなるシートの作製)
実施例6と同様にして混練までを行い、EPA−PFBEPA銅塩を含む赤外吸収材料を調製した後、これを50×50×1mmのSUS型枠を使用してプレス温度120℃で、1分余熱後、15MPaで3分の条件でプレスして、赤外吸収材料からなるシートを得た。
(合わせガラスの作製)
50×50×1.5mmのSUS型枠を使用し、紫外光吸収シート及び赤外吸収材料からなるシートを1枚ずつこの型枠にはめ込み、プレス温度120℃で、1分余熱後、15MPaで3分の条件でプレスして、積層体を作製した。
得られた積層体を70℃に加熱し、これを2枚のスライドガラスで挟んだ後、アルミ箔に包んだ。これをオートクレーブに入れ、窒素圧を1.5MPaとして130℃で30分加熱した後、冷却して、スライドガラス、赤外吸収材料からなるシート(赤外吸収層)、紫外光吸収シート(紫外吸収層)及びスライドガラスをこの順に有する合わせガラスを得た。
[特性評価]
(耐光性の評価)
まず、実施例6〜9で得た合わせガラスについて、上記と同様にして分光測定を行い、これに基づいて可視光透過率(Tv(%))を評価するとともに、上記と同様にしてヘイズ(H)を測定した。これらの値を、合わせガラスの作製直後の値とする。
次いで、各合わせガラスに対し、キセノンウェザーメーター(アトラスC135、東洋精機械製作所社製;照射強度:0.75W/m、ブラックパネル温度63℃)を用い、100時間の紫外光照射を行った。なお、紫外光は、実施例6、7の合わせガラスについては、任意の一方のスライドガラスの側の面から照射し、実施例8、9の合わせガラスについては、紫外光吸収層に近い側の面から照射した。
それから、紫外光照射後の各合わせガラスに付いて、上記と同様に分光測定を行い、これに基づいて可視光透過率及びヘイズを評価した。これらの値を、紫外光照射後の値とする。
そして、可視光透過率(Tv)及びヘイズ(H)について、それぞれ作製直後の値と紫外光照射後の値との差を求め、得られた値をそれぞれΔTv及びΔHとした。得られた結果をまとめて表2に示す。
Figure 0005400033
表2に示すように、紫外光吸収剤を含む赤外吸収層を備える実施例7、紫外光吸収層を別途設けた実施例8及び9によれば、紫外光の照射による特性の変化が更に小さくなり、一層優れた耐光性が得られるようになることが確認された。

Claims (5)

  1. 銅イオンと、
    下記一般式(1)で表される第1のホスホン酸と、
    下記一般式(2)で表される第2のホスホン酸と、
    を含有し、
    前記銅イオンに、前記第1のホスホン酸及び前記第2のホスホン酸が配位した銅錯体の形態となっている、ことを特徴とするホスホン酸銅化合物。
    Figure 0005400033
    [式中、mは0〜6の整数であり、nは1〜10の整数である。]
    Figure 0005400033
    [式中、pは1〜24の整数である。]
  2. 請求項に記載のホスホン酸銅化合物と、樹脂と、を含有する、ことを特徴とする赤外吸収材料。
  3. 紫外光吸収剤を更に含有する、ことを特徴とする請求項記載の赤外吸収材料。
  4. 透光性基板と、
    前記透光性基板の少なくとも一側に設けられた、請求項又は記載の赤外吸収材料からなる赤外吸収層と、
    を備えることを特徴とする積層体。
  5. 紫外光を吸収する紫外吸収層を更に備える、ことを特徴とする請求項記載の積層体。
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