JP2008031352A - 重合性組成物及びその製造方法、並びに、重合体及び積層体 - Google Patents

重合性組成物及びその製造方法、並びに、重合体及び積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】 合わせガラス等に優れた耐貫通性を付与し得る重合性組成物及びこれを重合してなる重合体、並びに、この重合体からなる重合体層を中間膜等として備えており、合わせガラスとして適用できる積層体を提供すること。
【解決手段】 本発明の合わせガラス10(積層体)は、一対の透光性基板1と、この一対の透光性基板1に挟持された中間膜2(重合体層)とを備えるものである。この合わせガラス10における中間膜2は、重合性モノマーと、2価の銅イオンと、銅イオンと複合体を形成した第1のリン酸エステルと、銅イオンと複合体を形成していない第2のリン酸エステルとを含有する重合性組成物を重合してなる重合体からなるものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、重合性組成物及びその製造方法、並びに、この重合性組成物を重合してなる重合体及びこの重合体からなる重合体層を備える積層体に関する。
窓材等に用いるための光学部材としては、ガラス等からなる一対の透光性基板の間に、(メタ)アクリル系の樹脂からなる中間膜を挟んだ構造の合わせガラスが知られている。これらの合わせガラスは、透光性基板を単独で用いる場合に比して、衝撃を受けた際の破損が少ない等、耐久性の点で優れた特性を有している。
合わせガラスに対しては、赤外線又はその近傍領域の波長の光線(以下、「近赤外光」という)を遮断できる性質を付与することが試みられている。このような合わせガラスを窓材や壁材等に適用すれば、例えば太陽光における上記領域の波長を有する光線、すなわち熱線の室内への侵入を抑制することができ、これにより、室内が過度に高温となる等の不都合を低減できるようになる。近赤外光を遮断できる合わせガラスとしては、中間膜として、近赤外光を吸収する特性を有する樹脂材料等からなる層を有するものが知られている。
また、このような合わせガラスは、安全性等の観点からは、物体が窓材に衝突して突き抜けるのを抑止する性質(耐貫通性)に優れるという特性を有していると更に好ましい。優れた耐貫通性を有する合わせガラスとしては、(メタ)アクリル系モノマー、銅イオン、重合性官能基を有するとともに芳香環を有しないリン酸エステル化合物、及び、重合性官能基を有しないリン酸エステルのモノ・ジエステル混合物を含むリン酸エステル化合物を含む重合性組成物を中間膜に適用したものが開示されている(特許文献1参照)。
国際公開第2005/097848号パンフレット
上記従来の合わせガラスは、十分に実用的な耐貫通性を有するものであった。しかし、近年では、合わせガラスが適用される場面は多岐にわたっており、従来以上の耐貫通性が求められることも多くなっている。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、合わせガラス等に優れた耐貫通性を付与し得る重合性組成物及びこれを重合してなる重合体、並びに、この重合体からなる重合体層を中間膜等として備えており、合わせガラスとして適用できる積層体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の重合性組成物は、重合性モノマーと、2価の銅イオンと、銅イオンと複合体を形成した第1のリン酸エステルと、銅イオンと複合体を形成していない第2のリン酸エステルとを含有することを特徴とする。
本発明の重合性組成物は、2価の銅イオン及びリン酸エステルを含むことから、重合後に得られる膜は、優れた近赤外光吸収特性を示すものとなる。また、リン酸エステルとして、銅イオンと複合体を形成した第1のリン酸エステルに加え、銅イオンと複合体を形成していない第2のリン酸エステルを含有することから、従来に比して優れた耐貫通性を発揮し得るようになる。
上記本発明の重合性組成物において、第2のリン酸エステルは、第1のリン酸エステルよりも多い化学量論量含まれていることが好ましい。こうすれば、重合性組成物から得られる重合体の耐貫通性が一層向上するようになる。ここで、第1及び第2のリン酸エステルの化学量論量の大小は、これらのモル量を比較することで判別することができる。例えば、第1のリン酸エステルは銅イオンと複合体を形成しているが、この複合体におけるリン酸エステル部分のモル量が、「第1のリン酸エステルの化学量論量」に該当する。
また、第2のリン酸エステルは、分子中に重合性官能基を有しない非重合性リン酸エステルであると好ましい。第2のリン酸エステルとして非重合性エステルを含むことで、得られる重合体の耐貫通性が更に向上する。
第2のリン酸エステルとしては、重合性官能基を有する重合性リン酸エステル、及び、重合性官能基を有しない非重合性リン酸エステルを含むものも好ましい。これによっても、重合体の耐貫通性を向上し得る。
また、第1のリン酸エステルとしては、重合性官能基を有する重合性リン酸エステル、及び、重合性官能基を有しない非重合性リン酸エステルを含むものが好ましい。かかる組み合わせで第1のリン酸エステルを含むことで、重合体の透明性と耐貫通性の両方がバランスよく優れるようになる。
より具体的には、上述した非重合性リン酸エステルとしては、アルキルリン酸エステルが好ましい。第1のリン酸エステル及び/又は第2のリン酸エステルが非重合性リン酸エステルとしてアルキルリン酸エステルを含むと、得られる重合体の耐貫通性が一層良好となる。
また、第1のリン酸エステル及び第2のリン酸エステルは、同じリン酸エステルを含むと更に好ましい。この場合、第1のリン酸エステルと銅イオンとの複合体と、第2のリン酸エステルとの相溶性も良好となり、重合体の耐貫通性が良好となるほか、優れた透明性が得られるようになる。
本発明はまた、上記本発明の重合性組成物を重合して得られた重合体を提供する。このような重合体は、上記本発明の重合性組成物から得られるものであるため、優れた近赤外光吸収性を有するほか、従来に増して優れた耐貫通性も兼ね備えるものとなる。
また、本発明の重合性組成物の製造方法は、上記本発明の重合性組成物を好適に得るための方法であって、リン酸エステルと銅塩とを反応させて、このリン酸エステルと銅イオンとの複合体を形成する工程と、この複合体とリン酸エステルとを混合する工程とを有することを特徴とする。このような製造方法においては、複合体におけるリン酸エステルが上述した第1のリン酸エステルとなり、この複合体と混合したリン酸エステルが第2のリン酸エステルとなる。
本発明はさらに、上記本発明の重合体からなる重合体層を備える積層体を提供する。すなわち、本発明の積層体は、透光性基板と、この透光性基板の少なくとも一側に設けられた、上記本発明の重合体からなる重合体層とを備えることを特徴とする。このような積層体は、一対の透光性基板間に重合体層を備えた構成とすれば、いわゆる合わせガラスとして適用可能である。そして、この積層体は、上記本発明の重合体からなる重合体層を有していることから、優れた近赤外光吸収性のほか、優れた耐貫通性をも発揮し得るものとなる。
本発明によれば、合わせガラス等に優れた耐貫通性を付与し得る重合性組成物を提供することが可能となる。また、本発明によれば、上記本発明の重合性組成物を重合してなる重合体、並びに、この重合体からなる重合体層を中間膜等として備え、優れた耐貫通性を有する合わせガラスとして適用できる積層体を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[重合性組成物]
実施形態に係る重合性組成物は、重合性モノマー、2価の銅イオン、第1のリン酸エステル、及び、第2のリン酸エステルを少なくとも含有するものである。まず、実施形態に係る重合性組成物に含まれる各成分について説明する。
(重合性モノマー)
重合性モノマーは、重合によりポリマーを生じ得るモノマーであり、得られるポリマーが高い可視光透過性を発揮し得るものが好ましい。重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル基を一つ又は二つ以上有するモノマーである。ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」の表記は、「アクリル」及び「メタクリル」の両者をまとめて示すものであり、これらのうちいずれか一方又は両方を含むものを包含する。また、本明細書においては、「(メタ)アクリレート」も同様に、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者をまとめて示すものである。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルにおいて、エステル結合の酸素に結合される官能基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。また、これらの基が、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合等を介して複数結合してなる官能基であってもよい。さらに、当該官能基には、更に、水酸基、アミノ基、チオール基、エポキシ基等が結合していてもよい。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、具体的には、以下に示す化合物が挙げられる。すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロシキエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロシキプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、上述したものを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、上述したなかでも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。特に、エステル結合の酸素に結合される官能基が炭素数4〜12のアルキル基であるものが好ましく、6〜10のアルキル基であるものがより好ましい。すなわち、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。式中、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数4〜12のアルキル基、好ましくは炭素数6〜10のアルキル基を示す。重合性組成物に含まれる(メタ)アクリル系モノマーが、下記一般式(1)で表される化合物を50〜100質量%、好ましくは60〜100質量%含むものであると、かかる(メタ)アクリル系モノマーを含む重合性組成物の柔軟性が良好となる傾向にある。
Figure 2008031352
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で又は複数種組み合わせて用いることができる。
上述したような重合性モノマーとしては、重合後に得られる重合体のガラス転移温度(Tg)が−20〜0℃となるものを選択することが特に好ましい。また、重合性モノマーとしては、複数種類を組み合わせて用いてもよく、この場合、これらのモノマーの共重合体が上記範囲のTgを有することが好ましい。
(2価の銅イオン)
次に、2価の銅イオンについて説明する。2価の銅イオンは、重合性組成物中に、例えば、銅塩として供給される。このような銅塩の具体例としては、酢酸銅、蟻酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅等の有機酸の銅塩無水物、水和物若しくは水化物、或いは、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩の無水物、水和物若しくは水化物、又は、水酸化銅が挙げられる。これらのなかでは、酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅、水酸化銅、塩基性炭酸銅が好ましく用いられる。なお、銅イオン源であるこれらの銅塩は、単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
銅イオンは、重合性組成物に含有されて、当該組成物又はその重合体に近赤外光を吸収する特性を付与し得るものである。また、かかる銅イオンは、後述するリン酸エステルと組み合わせて含有されることによって、重合性組成物中での溶解性が極めて良好なものとなる。よって、このような形態で銅イオンが配合された本発明の重合性組成物は、近赤外光を吸収する特性に優れるほか、優れた透明性をも有するものとなる。
(第1のリン酸エステル)
第1のリン酸エステルとしては、特に制限されず、下記一般式(2)で表されるような通常のリン酸エステルを適用できる。
Figure 2008031352
上記式中、qは1又は2であり、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基又は(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基を示す。これらの基の炭素数は、それぞれ1〜30である。なお、これらの基は、少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基又はエステル基で置換されていてもよい。なお、qが1である場合、2つのRは同一でも異なっていてもよい。また、第1のリン酸エステルは、一つの種類の化合物から構成されてもよく、複数種類の化合物から構成されてもよい。
第1のリン酸エステルは、重合性組成物において、上述した2価の銅イオンと複合体を形成している。この複合体とは、第1のリン酸エステルと2価の銅イオンとの間でイオン結合や配位結合が形成されてなるものである。複合体としては、例えば、リン酸エステル−銅錯体が挙げられる。複合体を形成したリン酸エステルは、例えば、元素分析や分光光度計による分析によって確認することができる。具体的には、複合体の原料の状態から複合体を形成した状態までを測定しておき、この結果と比較することによって確認できる。
第1のリン酸エステルとしては、重合性官能基を有する重合性リン酸エステルと、重合性官能基を有しない非重合性リン酸エステルとの組み合わせが好ましい。第1のリン酸エステルをこのような組み合わせで含む場合、重合性組成物には、通常、重合性リン酸エステルと非重合性リン酸エステルとがそれぞれ別の銅イオンと結合等した複合体が含まれるが、一つの銅イオンに対して重合性及び非重合性リン酸エステルの両方が結合等した複合体が含まれていてもよい。
重合性リン酸エステルは、例えば、下記一般式(3)で表すことができる。
Figure 2008031352
式中、Rは重合性官能基を有する有機基を示し、sは1又は2を示す。sが1である場合、2つのRは同一でも異なっていてもよい。重合性官能基としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等を生じ得る官能基が挙げられる。この重合性官能基としては、重合性を有する不飽和結合を含む官能基が挙げられ、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリル基がより好ましい。ここで、Rとしては、これらの重合性官能基そのものや、重合性官能基を構造中に含む有機基が挙げられる。後者の場合、Rは、重合性官能基を末端又は内部のいずれに有するものであってもよい。
このような重合性リン酸エステルとしては、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。ただし、式(4)中のRは、下記一般式(5)で表される基である。nが1である場合、2つのRは同じでも異なっていてもよい。
Figure 2008031352

Figure 2008031352
式(5)中、R51は、水素原子又はメチル基であり、R52は、アルキレン基又はアリーレン基であり、Xは、単結合又は酸素原子である。また、mは、0〜10の整数である。R52で表されるアルキレン基としては炭素数2〜97のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜20のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基が更に好ましい。また、R52で表されるアリーレン基としては炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。さらに、Xとしては、酸素原子が好ましく、mは1〜5の整数であると好ましい。Xが単結合である場合、mは1以上であると好ましい。
なかでも、上記一般式(4)で表される重合性リン酸エステルは、Rとして、下記一般式(6)で表される基を有していると更に好ましい。
Figure 2008031352
式(6)中、R61は水素原子又はメチル基、R62は炭素数1〜6のアルキレン基、pは0〜10の整数を示す。特に、R62は、炭素数1〜4のアルキレン基であると好ましく、pは、1〜5の整数であるとより好ましい。
具体的には、上記一般式(4)で表される重合性リン酸エステルとしては、例えば、Rが、(メタ)アクリロイルオキシエチル基、(メタ)アクリロイルオキシブチル基、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(メタ)アクリロイルポリ(オキシエチル)基、(メタ)アクリロイルポリ(オキシブチル)基、及び、(メタ)アクリロイルポリ(オキシプロピル)基からなる群より選ばれるいずれか1種の基であるものが挙げられる。なお、これらの重合性リン酸エステルは、1種類を単独で含有していてもよく、複数種類を組み合わせて含有していてもよい。
一方、非重合性リン酸エステルは、上述したような重合性官能基を分子中に有していないリン酸エステル化合物である。このような非重合性リン酸エステルは、下記一般式(7)で表すことができる。
Figure 2008031352
式中、Rは重合性官能基を有しない有機基を示し、tは1又は2である。tが1である場合、2つのRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。なお、非重合性リン酸エステルとしては、1種類を単独で用いてもよく、また複数種類を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(7)で表される化合物において、Rで表される有機基としては、エーテル結合又はエステル結合を有していてもよい炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、重合性官能基を有してしない基が好適である。当該炭化水素基における水素原子は、その一部がハロゲン原子に置換されていてもよい。また、Rで表される基としては、Oに結合する炭素原子が、芳香環を構成する炭素原子ではないものが好ましい。つまり、上記「−OR」で表される基においては、Oと芳香環とが直接結合していないことが好ましい。
このような官能基としては、例えば、以下に示す化学式(8)〜(13)で表される基が例示できる。
Figure 2008031352


Figure 2008031352


Figure 2008031352


Figure 2008031352


Figure 2008031352


Figure 2008031352

非重合性リン酸エステルとしては、なかでも、上記一般式(7)で表される化合物において、Rがアルキル基であるアルキルリン酸エステルが好ましい。このアルキルリン酸エステルにおけるアルキル基は炭素数1〜20のアルキル基であると更に好適である。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、及び、ステアリル基からなる群より選ばれるいずれか1種の基が挙げられる。
(第2のリン酸エステル)
第2のリン酸エステルとしては、上記第1のリン酸エステルと同様の通常のリン酸エステルを適用できる。この第2のリン酸エステルは、第1のリン酸エステルとは異なり、重合性組成物中で2価の銅イオンと複合体を形成していないものである。このような複合体を形成していないリン酸エステルは、例えば、元素分析等による分析により上述したような第1のリン酸エステルと区別することができ、これによって重合性組成物中に含まれているかどうかを確認することができる。
第2のリン酸エステルとしては、非重合性リン酸エステルが好ましく、アルキルリン酸エステルがより好ましい。非重合性リン酸エステル及びアルキルリン酸エステルとしては、上述した第1のリン酸エステルの説明で述べたものと同じものを適用できる。
また、第2のリン酸エステルは、第1のリン酸エステルとして含まれるものと同じリン酸エステルを含むと好ましい。例えば、第1のリン酸エステルが、上述したように重合性リン酸エステルと非重合性リン酸エステルとを組み合わせて含む場合は、第2のリン酸エステルは、第1のリン酸エステルに含まれるのと同じ非重合性リン酸エステルと含有していることが好ましい。この場合の非重合性リン酸エステルは、アルキルリン酸エステルであると特に好適である。
(重合性組成物)
重合性組成物は、上記の重合性モノマー、2価の銅イオン、第1のリン酸エステル及び第2のリン酸エステルを含むものである。上述の如く、重合性組成物において、銅イオンは、第1のリン酸エステルと複合体を形成した状態で含まれるが、一部が2価の銅イオンのままの状態で存在していてもよい。
この重合性組成物においては、第2のリン酸エステルが、第1のリン酸エステルよりも多い化学両論量含まれていると好ましい。具体的には、第2のリン酸エステルは、第1のリン酸エステルに対して1〜2倍モル量含まれていると好ましく、1.35〜1.6倍モル量含まれているとより好ましい。このように、第2のリン酸エステルが第1のリン酸エステルよりも多く含まれることで、重合性組成物から得られる重合体の耐貫通性が特に良好となる傾向にある。
また、重合性組成物中における、銅イオンに対する第1及び第2のリン酸エステル化合物の合計含有量は、これらのリン酸エステル化合物が水酸基を有している場合、水酸基の合計量/Cuが、モル比で、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、更に好ましくは1.5〜2.5となるようにする。この比率が1未満であると、近赤外光吸収性能や透光性が低下する傾向にある。一方、6を超えると、銅イオンとの配位結合又はイオン結合に関与しない水酸基の量が過大となり、吸湿性が大きくなりすぎる傾向にある。
(その他の成分)
重合性組成物中には、上述した重合性モノマー、2価の銅イオン、並びに、第1及び第2のリン酸エステルのほかに、これら以外の添加剤等のその他の成分を更に含有していてもよい。以下、重合性組成物に含まれていてもよいその他の成分について説明する。
その他の成分としては、まず、重合性組成物やその重合体の紫外光に対する安定性を更に向上させるために、紫外光吸収剤を含有させることができる。紫外光吸収剤としては、ベンゾエート系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
より具体的には、ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートが挙げられ、サリシレート系化合物としては、フェニルサリシレートやp−t−ブチルフェニルサリシレートが挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−5−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシエチルベンゾフェノン、4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタリミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメトキシベンゾイル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートやオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが挙げられ、シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドや2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドが挙げられる。また、トリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールが挙げられる。
また、重合性組成物は、光に対する安定性を更に向上させるための光安定剤を含有することもできる。特に、上述した紫外光吸収剤とこの光安定剤を併用すると、光に対する安定性が極めて良好となる傾向にある。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や、Ni系化合物を適用可能である。
より具体的には、HALSとしては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケード、1−[2−[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]、ジメチルサシネートポリマ−with−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
また、Ni系の光安定剤としては、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル(II)、ニッケルジブチルジチオカーボネート、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−ブチルアミン−ニッケル(II)等が挙げられる。
その他、重合性組成物を安定化するための成分として、抗酸化剤、熱安定剤等を含有させてもよく、色調を調整するための成分として、染料、顔料、金属化合物等を添加してもよい。さらに、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤等を添加してもよい。
また、上記重合性組成物を合わせガラスの中間膜に適用することを考慮して、ガラス等の透光性基板に対する密着性を調整するための成分を更に添加することもできる。アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、シラン化合物等を添加することもできる。
アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられる。有機酸としては、オクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸等が例示できる。無機酸としては、塩酸、硝酸等が例示できる。また、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のなかでも、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩又はマグネシウム塩がより好ましい。炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩及びマグネシウム塩としては、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルへキサン酸マグネシウム、2−エチルへキサン酸カリウム等が好適である。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が供用されてもよい。
有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の配合量の好ましい下限値は、重合性モノマー100質量部に対して0.001質量部であり、好ましい上限値は、0.5重量部である。この配合量が0.001質量部未満であると、高湿度雰囲気下で接着力が低下するおそれがある。一方、0.5質量部を超えると、重合性組成物からなる中間膜の透明性が低下する場合がある。このような観点から、上記配合両のより好ましい下限値は0.01質量部であり、より好ましい上限値は0.2質量部である。
また、上記シラン化合物としては、変成シリコーンオイルが例示できる。変性シリコーンオイルとしては、例えば、エポキシ変成シリコーンオイル、エーテル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、これらの変性シリコーンオイルは、一般にポリシロキサンに、変性させるべき化合物を反応させることによって得ることができる。
これらの変性シリコーンオイルの分子量の好ましい下限値は800であり、上限値は5000である。変性シリコーンオイルの分子量が800未満であると、800以上である場合に比して、シリコーンオイルの表面への局在化が不十分となる場合がある。一方、5000を超えると、(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性が低下してしまい、中間膜表面にブリードアウトしてガラスとの接着力を低下させる場合がある。このような観点から、変性シリコーンオイルの分子量のより好ましい下限値は1500であり、より好ましい上限値は4000である。
また、変性シリコーンオイルの配合量の好ましい下限値は、(メタ)アクリル系モノマー100質量部に対して0.01質量部であり、上限値は0.2質量部である。変性シリコーンオイルの配合量が0.01質量部未満であると、0.01質量部以上である場合に比して、吸湿による白化を防止する効果が不充分となって、中間膜の透明性が低下する原因となる場合がある。一方、0.2質量部を超えると、重合性モノマーとの相溶性が低下してしまい、中間膜表面にブリードアウトしてガラスとの接着力を低下させる場合がある。このような観点から、変性シリコーンオイルのより好ましい下限値は0.03質量部であり、より好ましい上限値は0.1質量部である。
また、重合性組成物は、更なる特性を得ることを目的として、上述した銅イオン以外の金属イオンを更に含んでいてもよい。金属イオンとしては、例えば、希土類金属、鉄、マンガン、ニッケル、クロム、インジウム、チタン、アンチモン、スズ等の金属イオンが挙げられる。なかでも、希土類金属は、希土類イオンのf軌道の電子遷移によって特定波長光(580nm近傍や520nm近傍)の吸収特性が優れている。これらの波長域は、人間の眼球の視細胞が有する最大応答波長を合致することから、希土類元素を含有させることで、重合性組成物又はその重合体に防眩性を付与することができる。希土類元素としては、ネオジム、プラセオジム又はホルミニウムが例示できる。
[重合性組成物の製造方法]
次に、上述した重合性組成物の好適な製造方法について説明する。重合性組成物は、リン酸エステルと銅塩とを反応させて、かかるリン酸エステルと銅イオンとの複合体を形成する工程と、この複合体とリン酸エステルとを混合する工程とを有する製造方法によって得ることができる。
より具体的には、重合性組成物の製造においては、まず、第1のリン酸エステルと2価の銅イオンとの複合体を調製する。複合体は、例えば、上述したような2価の銅イオンの供給源である銅塩を、所定の溶媒中に溶解又は分散させた混合物を準備した後、これに第1のリン酸エステルの原料となるリン酸エステルを加えて、銅塩と原料のリン酸エステルとを反応させることによって調製することができる。この際、原料である銅塩及びリン酸エステルの使用量は、目的とする複合体に合わせた当量とすることが好ましい。すなわち、例えば、目的とする複合体が、銅イオンと第1のリン酸エステルとの1:1の複合体である場合、原料である銅塩とリン酸エステルとは等モルずつ用いることになる。
この反応において、複合体の形成は、例えば、銅塩に由来する副生成物が生じているかどうかで確認することができる。そして、目的とする複合体を確実に得るために、反応は、この副生成物が用いた銅塩に対応するモル量生じた時点で完了とすることが好ましい。
次に、このように得られた複合体、重合性モノマー及び第2のリン酸エステルを混合する。これによって、重合性組成物が得られる。この際、第2のリン酸エステルは、上述した複合体の調整に用いた第1のリン酸エステルの原料よりも多い化学両論量用いることが好ましい。こうすれば、重合性組成物において、第2のリン酸エステルが第1のリン酸エステルよりも確実に多い化学両論量含まれることとなり、優れた耐貫通性を発揮し得る重合性組成物が得られるようになる。
なお、重合性組成物が、上述したようなその他の成分を含むものである場合、その他の成分は、複合体、重合性モノマー及び第2のリン酸エステルを混合する際又はこの混合後に加えることができる。
また、重合性組成物は、必ずしも上述した製造方法に限定されず、例えば、第1及び第2のリン酸エステルの原料となるリン酸エステル、銅塩及び重合性モノマーを一度に混合等することで製造してもよい。この場合、原料のリン酸エステルを、少なくとも複合体の形成に用いられる理論量よりも過剰の化学両論量用いる。その結果、重合性組成物においては、原料のリン酸エステルのうち、銅イオンとの複合体を生じたリン酸エステルが第1のリン酸エステルとなり、複合体を生じなかったリン酸エステルが第2のリン酸エステルとなる。
かかる製造方法により、重合性組成物中に第2のリン酸エステルが第1のリン酸エステルよりも多い化学両論量含まれるようにするためには、原料のリン酸エステルを、複合体の形成に供される理論量の2倍よりも多いモル量用いる。
なお、このように銅塩、並びに、第1及び第2のリン酸エステルの原料を一度に混合する方法では、原料のリン酸エステルのうち、第1及び第2のリン酸エステルとなるものを選択するのが極めて困難となる。そのため、重合性組成物は、上述したような複合体の形成を経る方法によって製造することがより好ましい。
[重合体]
次に、上述した重合性組成物を重合して得られる重合体について説明する。かかる重合体は、シート状成形物とすることにより近赤外光吸収性を有するフィルム等として適用できる。また、一対の透光性基板間に配置することにで、近赤外光吸収性を有する合わせガラス用の中間膜として適用できる。
このような重合体は、例えば、上述した重合性モノマーからなる構造単位を有するポリマーと、このポリマー中に溶解又は分散した銅イオンと第1のリン酸エステルとの複合体及び第2のリン酸エステルを含むものである。重合性モノマーからなる構造単位を有するポリマーは、例えば、重合性モノマーが(メタ)アクリル系モノマーである場合、これが重合してなるポリマーであり、(メタ)アクリル系モノマーのみからなるホモポリマーであってもよく、他の単量体成分と組み合わせてなるコポリマーであってもよい。
重合体は、例えば、上述した、重合性組成物に重合触媒を添加し、重合性組成物中に含まれる重合性モノマーを重合させることによって得ることができる。重合触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物が例示できる。この重合の際には、重合性組成物及び重合触媒を含む混合物を加熱してもよい。また、重合触媒として上述した過酸化物を用いる場合、還元剤等と組み合わせてレドックス触媒とし、このような触媒の存在下、常温で重合を行ってもよい。さらに、紫外線硬化剤等を含有させて、紫外線を照射することにより重合を行ってもよい。
[光学部材]
上述した重合性組成物を用いることにより、近赤外光を遮断する特性に優れる種々の光学部材を得ることができる。このような光学部材としては、以下に示す第1及び第2の形態が挙げられる。
第1の形態:重合性組成物を加工して得られるシート状成形物。
第2の形態:透光性基板と、この透光性基板に隣接して設けられた重合性組成物からなる重合性組成物層とを有する積層体。
(シート状成形物)
まず、第1の形態のシート状成形物について説明する。シート状成形物は、上記重合性組成物の重合体からなるものである。シート状成形物の形態としては、具体的には、シートやフィルムが挙げられる。ここで、シートとは、250μmを超える厚さを有する薄板状のものである。また、フィルムとは、厚さ5〜250μmの薄い膜状のものである。これらのシート又はフィルムは、公知のシート又はフィルム形成方法を用いて作製可能である。具体的には、溶融押出成形法、延伸成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、溶液キャスト法等が挙げられる。
(積層体)
次に、第2の形態の積層体について説明する。積層体は、透光性基板と、この透光性基板の少なくとも一側に設けられた重合性組成物の重合体からなる重合体層とを少なくとも有している。
積層体において、透光性基板を構成する材料は、可視光透過性を有する透光性材料であれば特に限定されず、積層体の用途に応じて適宜選択可能である。良好な硬度、耐熱性、耐薬品性、耐久性等を得る観点からは、ガラスやプラスチックが好適に使用される。ガラスとしては、無機ガラス、有機ガラス等が挙げられ、目的に応じて、色ガラス、透過率に波長依存性のあるUVカットガラス、又は、グリーンガラス等の遮熱機能を有するガラスといった特定の機能を有するガラスを用いることもできる。また、プラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン樹脂等が例示でき、これらもガラスと同様、特定の機能を有するものを適宜選択して用いてもよい。なお、透光性基板が複数存在する場合には、各基板は、同じ種類の材料で構成されたものであってもよく、異なる材料で構成されたものであってもよい。
このような積層体は、例えば、以下のようにして製造可能である。すなわち、まず、上述したシート状成形物であるシートやフィルムを形成した後、このシート等と透光性基板とを張り合わせることによって製造することができる。これらを張り合わせる方法としては、プレス法、マルチロール法、減圧法等の加圧又は減圧により接着する手段、オートクレーブ等により加熱して接着する手段、又は、これらを組み合わせた手段が例示できる。
また、このように予め形成したシートを張り合わせる方法以外に、透光性基材上に、重合体層を直接形成する方法も適用できる。このような方法としては、例えば、重合性組成物を適宜の溶媒に溶解及び/又は分散させてコーティング剤とし、この溶液を透光性基板に塗布した後、溶媒を蒸発させて、透光性基材上に重合性組成物からなる薄膜、被覆物又は薄層を形成する方法が挙げられる。こうして形成された薄膜等は、コーティングと呼ばれる。このような方法を用いて重合体層を形成する場合には、当該層の平坦性を高める目的で、レベリング剤、消泡剤といった各種の界面活性剤等の溶解補助剤を、上述したコーティング剤中に添加してもよい。
(合わせガラス)
積層体は、上述したような透光性基板と重合体層とを一層ずつ備えるものに限定されず、これらの層を複数備えるものであってもよい。具体的には、一対の透光性基板と、この透光性基板間に配置された重合性組成物の重合体からなる中間膜(重合体層)とを備えるものが挙げられる。このような積層体は、いわゆる合わせガラスと呼ばれ、強度等に優れるという特性を有しており、窓材等として好適に用いることができる。
ここで、図1を参照して、好適な実施形態の合わせガラスについて説明する。
図1は、実施形態の合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。図1に示される合わせガラス10は、一対の透光性基板1と、この一対の透光性基板1に挟持された中間膜2(重合体層)とを備えるものである。中間膜2は、上述した実施形態の重合性組成物の重合体から構成される層である。また、透光性基板1としては、上述した積層体と同様のものが適用できる。
かかる構造の合わせガラス10は、例えば、一組の透光性基板1の間に、上述した重合性組成物からなるシート状成形物を挟み、これを予備圧着して各層間に残存した空気を除去した後、本圧着してこれらを密着させる方法によって製造することができる。また、一組の透光性基板を所定の間隔をおいて配置し、この間に重合前の液状の重合性組成物を導入した後、かかる重合性組成物を重合させる方法によって製造することもできる。
なお、前者のように、シート状成形物を挟む方法により合わせガラス10を製造する場合、中間膜2となるシート状成形物には、その保管時に、当該シート同士が合着して塊状となる、いわゆるブロッキング現象が生じていないことや、予備圧着における脱気性が良好であること等が求められる。これらの要求を満たしている場合、透光性基材1とシート等とを重ね合わせる際の作業性が良好となるほか、例えば脱気が不十分であるために生じた気泡等による透光性の低下を防ぐことができる。
窓材等に適用する観点からは、合わせガラス10には、近赤外光を遮断する特性のほか、可視光透過性、すなわち可視光領域の光を透過する特性に優れることが求められる。そして、優れた可視光透過性を得るためには、中間膜2自身の透光性が良好であることのほか、透光性基板1と中間膜2との間に、濁りの原因となる気泡が極力残存していないことが好ましい。中間膜2による気泡の発生は、重合性組成物の種類や粘弾性等の物性により左右されるが、中間膜2の表面形状によっても大きく左右される傾向にある。
表面形状を変化させることにより気泡の発生を低減する手段の一つとして、表面にエンボスと呼ばれる多数の微小な凹凸を有する中間膜2を用いる方法が知られている。エンボスが施された中間膜2によれば、上述した予備圧着工程等における脱気性が良好となるほか、残存する気泡が極めて微小となって中間膜2中に取り込まれ易くなる。その結果、合わせガラス10は、透光性基板1と中間膜2との間の気泡の残存が少ないものとなり、気泡による透光性の低下が極めて少ないものとなる。
エンボスの形態としては、例えば、多数の凸部とこれらの凸部に対する多数の凹部とからなる各種凸凹模様、多数の凸条とこれらの凸条に対する多数の凹溝とからなる各種の凸凹模様、粗さ、配置、大きさ等の種々の形状因子に関し多様な値を有するエンボス形状がある。
これらのエンボスとしては、例えば、特開平6−198809号公報に記載された、凸部の大きさを変え、その大きさ、配置を規定したもの、特開平9−40444号公報に記載された、表面の粗さを20〜50μmとしたもの、特開平9−295839号公報に記載された、凸条が交差するように配置されたもの、或いは、特開2003−48762号公報に記載された、主凸部の上に更に小さな凸部を形成されたものが挙げられる。また、エンボス形状を施す方法としては、例えば、特表2003−528749に、樹脂成形時に発生するメルトフラクチャーを利用する方法が記載され、また、特表2002−505211、特表平9−502755等に、架橋PVB粒子や造核剤を用いる方法が記載されている。
また、近年、合わせガラス10に求められている他の特性として、遮音性が挙げられる。遮音性が優れる合わせガラスによれば、例えば、窓材に用いた場合に、周囲の騒音等の影響を低減できるようになり、更に室内環境を向上させ得る。一般に、遮音性能は、周波数の変化に応じた透過損失量として示され、その透過損失量は、JISA 4708では、500Hz以上において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で規定されている。
一般の合わせガラスにおける透光性基板として頻繁に用いられるガラス板は、2000Hzを中心とする周波数領域では、その遮音性能が、コインシデンス効果により著しく低下する傾向にある。ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射した時、ガラス板の剛性と慣性によって、ガラス板状を横波が伝播してこの横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。したがって、一般的な合わせガラスでは、2000Hzを中心とする周波数領域において遮音性能の低下を避け難く、この点の改善が求められている。
これに関し、人間の聴覚は、等ラウドネス曲線から、1000〜6000Hzの範囲では他の周波数領域に比べ非常に良い感度を示すことが知られている。従って、上述したコインシデンス効果による遮音性能の落ち込みを解消することは、防音性能を高める上で重要となる。このような観点から、合わせガラス10の遮音性能を高めるには、コインシデンス効果による遮音性能の低下を緩和し、このコインシデンス効果に起因する透過損失の極小部の低下を防ぐ必要がある。
ここで、合わせガラス10に遮音性を付与する方法としては、合わせガラス10の質量を増大させる方法、透光性基板1となるべきガラスを複合化する方法、このガラス面積を細分化する方法、ガラス板支持手段を改善する方法などがある。このほか、遮音性能は、中間膜2の動的粘弾性により左右され、特に貯蔵弾性率と損失弾性率との比である損失正接に影響されることがあることが知られており、この値を制御することによっても合わせガラス10の遮音性能を高めることができる。
中間膜2の損失正接の値を制御する手段としては、例えば、特定の重合度を有する樹脂膜を用いる方法、特開平4−2317443号公報に記載されるような樹脂の構造を規定する方法、特開2001−220183号公報に記載されるような樹脂中の可塑剤量を規定する方法等が挙げられる。また、異なる2種以上の樹脂を組み合わせて中間膜を形成することによっても、広い温度範囲にわたって合わせガラス10の遮音性能を高め得ることが知られている。例えば、特開2001−206742号公報に記載された、複数種の樹脂をブレンドする方法、特開2001−206741号公報、特開2001−226152号公報に記載された、複数種の樹脂を積層する方法、特開2001−192243号公報に記載された、中間膜中の可塑剤量に偏向を持たせる方法等が挙げられる。これらの技術を適宜採用し、樹脂構造の改質、可塑剤の添加、2種以上の樹脂の組み合わせ等といった手段を組み合わせて実施することで、中間膜2を形成すべき樹脂材料の損失正接の値を良好に制御することが可能となり、所望の遮音性を得ることが容易となる。
さらに、合わせガラス10は、近赤外光を遮断すること以外による遮熱性を更に発現し得るものであると好ましい。合わせガラス10の遮熱性を高める方法としては、中間膜2中に、遮熱機能を有する酸化物微粒子を更に含有させる方法が挙げられる。このような方法としては、例えば、特開2001−206743号公報、特開2001−261383号公報、特開2001−302289号公報等に記載された方法を適用できる。また、合わせガラス中に、酸化物微粒子等を含む層を更に設けることによっても遮熱性を向上し得る。
酸化物微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等が挙げられる。なお、酸化物微粒子が含有された中間膜2は、透光性が低下しやすい傾向にあることから、十分な透光性が得られるように酸化物微粒子の粒径を規定する方法や(特開2002−293583号公報)、酸化物微粒子の分散性を高める方法等を適用してもよい。後者のように酸化物微粒子の分散性を高めるための方法としては、当該微粒子を機械的に分散させることや、分散剤を用いること等の公知の微粒子分散技術が適用できる。
合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、上述した酸化物微粒子を含有させる方法以外に、例えば、遮熱機能を有する有機系の染料・顔料を含有させる方法や、遮熱性能を有する透光性基板を用いる方法も挙げられる。遮熱機能を有する有機系の染料・顔料を含有させる方法としては、特開平7−157344号公報、特許第319271号公報に記載された方法が挙げられる。有機染料・顔料としてはフタロシアニン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、シアニン系、ナフタロシアニン系、ピロール系、イモニウム系、ジチオール系、メルカプトナフトール系等が例示できる。
また、遮熱性能を有する透光性基板としては、例えば、特開2001−151539号公報に記載されたFe等の遷移金属を含有するガラス(例えば、グリーンガラス等)、特開2001−261384号公報、特開2001−226148号公報に記載された金属、金属酸化物を多層コーティングしたガラス板が挙げられる。
このように、上述した実施形態の合わせガラス10は、中間膜2に含まれる近赤外光吸収材料が近赤外光領域の光線を吸収することによって、熱線である近赤外光を遮断する特性を発揮するものであるが、合わせガラス10は、更なる近赤外光遮断特性の向上を目的として、近赤外光吸収性を有する中間膜2に加えて、近赤外光を反射する特性を有する層(赤外反射層)を更に備えていてもよい。このような赤外反射層は、合わせガラスの任意の位置に導入することができる。
図2は、反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。合わせガラス20は、透光性基板21、中間膜22、赤外反射層23及び透光性基板21をこの順に備える構造を有している。透光性基板21及び中間膜22は、上述した合わせガラス10における透光性基板1及び中間膜2と同様のものが適用できる。
赤外反射層23としては、金属や金属酸化物から構成される層が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、ケイ素、クロム、チタン、インジウム、アンチモン等の金属単体、合金、混合物又は酸化物が例示できる。このような赤外反射層23は、例えば、当該層23を形成すべき面上に、例えば、金属や金属酸化物を蒸着することによって形成することが可能である。また、赤外反射層23としては、特表平09−506837、特表2000−506082、特表2000−506084、特表2004−525403、特表2003−515754、特開2002−231038、特表2004−503402等に示されるような、光の干渉を利用して特定波長を反射する高分子多層フィルムを適用してもよい。
ここで、上述した合わせガラス20のように、透光性基板21と中間膜22との間に赤外反射層23を形成すると、この赤外反射層23とこれに隣接する層(例えば、中間膜22)との接着性が低下してしまう場合がある。こうなると、例えば合わせガラス20が破損した場合に、透光性基板21が剥離・飛散し易くなり、安全性の点で問題が生じることとなる。
そこで、このような接着性の低下を避けるために、中間膜22と赤外反射層23との間には、両者の接着力を向上させ得る層を更に設けることもできる。両層間の接着力を調整する手段としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。すなわち、合わせガラス20のように、中間膜22と赤外反射層23とが隣接する場合には、これらの間に、中間膜22よりも高いアセタール度を有するポリビニルアセタールからなる層(特開平7−187726号公報、特開平8−337446号公報)を設ける方法、所定の割合のアセトキシ基を有するPVBからなる層(特開平8−337445号公報)を設ける方法、又は、所定のシリコーンオイルからなる層(特開平7−314609号広報)を設ける方法等が採用できる。なお、合わせガラスにおいて、赤外反射層は、上述したように透光性基板と中間膜との間に設けられている必要は必ずしもなく、透光性基板の間に複数の樹脂からなる層が形成されている場合等は、これらの層の間に設けられた形態であってもよい。
このように、合わせガラスにおいては、近赤外光吸収性を有する中間膜に加えて、近赤外光反射性を有する反射層を更に設けることで、両層の効果により、合わせガラスに対して極めて優れた近赤外光遮断特性を付与することができる。また、上述したような、赤外反射層と中間膜(赤外吸収層)との接着性を改善する方法を採用すれば、近赤外光遮断特性に加え、より優れた強度を有する合わせガラスを得ることも可能となる。
上述した構成を有する合わせガラス等の積層体においては、太陽光等の熱線成分を含む光が入射すると、本発明の重合性組成物からなる中間膜が発現する近赤外光吸収性によって、近赤外光領域(波長700〜1200nm程度)の熱線が遮断される。一般に、この波長領域の光線は、肌が焼きつくようなジリジリとした刺激的な暑さを感じさせる傾向にあるが、上述した積層体を透過する光線は、このような近赤外光が遮断されることとなる。よって、かかる積層体を窓材等に用いれば、室内や屋内の温度上昇を抑えることができる。
また、上記積層体(合わせガラス)の中間膜を形成する重合性組成物は、上述の如く、銅イオンと複合体を形成した第1のリン酸エステルと、銅イオンと複合体を形成していない第2のリン酸エステルとの両方を含有している。このような重合性組成物は、重合体を形成した場合に柔軟で且つ高い強度を有するものとなる。したがって、かかる重合体を中間膜等として適用した合わせガラスは、従来に比して優れた耐貫通性を発現し得るものとなる。
このように、本発明の積層体(合わせガラス)は、優れた近赤外光遮断性能を有していることから、太陽光等の自然光その他の外光を取り入れるための建材(建築物の部材に限定されない)、例えば、自動車、船舶、航空機又は電車(鉄道)車両の窓材、アーケード等の通路の天蓋材、カーテン、カーポートやガレージの天蓋、サンルームの窓又は壁材、ショーウィンドウやショーケースの窓材、テント又はその窓材、ブラインド、定置住宅や仮設住宅等の屋根材や天窓その他窓材、道路標識等の塗装面の被覆材、パラソル等の日除け具材、その他熱線の遮断が必要とされる種々の部材に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[2−エチルヘキシルリン酸−銅錯体の調製]
酢酸銅・一水和物199.7gに2−エチルヘキシルメタクリレート416.6gを加えた。この混合物に、モノ(2−エチルヘキシル)リン酸とジ(2−エチルヘキシル)リン酸との混合物(東京化成社製、混合比50:50(モル比)、以下、「2EHP」と略す)355.1gを加えた後、この混合物を100℃にて1時間加熱した。加熱後の混合溶液を、減圧下でエバポレートすることにより酢酸および水を溜去した。これにより、第1のリン酸エステルと銅イオンとの複合体である2−エチルヘキシルリン酸−銅錯体(以下、「2EHP−C」と略す)、及び、2−エチルヘキシルメタクリレートを含む混合物(混合比50:50(質量比))833.2gを得た。
[2−メタクリロイルオキシエチルリン酸−銅錯体の調製]
酢酸銅・一水和物199.7gにメチルメタクリレート400gを加え、さらにこの混合物に、2−メタクリロイルオキシエチルリン酸とビス(2−メタクリロイルオキシエチル)リン酸との混合物(共栄社化学株式会社製、混合比50:50(モル比))354.9gを加えた後、この混合物を100℃にて1時間加熱した。加熱後の混合溶液を、減圧下でエバポレートすることにより酢酸、水及びメチルメタクリレートを溜去した。これにより、第1のリン酸エステルと銅イオンとの複合体である2−メタクリロイルオキシエチルリン酸−銅錯体(以下、「P2M−C」と略す)416.5gを得た。
[重合性組成物の調製]
(実施例1〜6、比較例1〜4)
表1及び表2にしたがって、上記調製例で得られた2EHP−C及びP2M−C、並びに、重合性モノマー及び第2のリン酸エステルを配合し、実施例1〜6及び比較例1〜4の重合性組成物を調製した。なお、表中の数字は、いずれも重量部である。
Figure 2008031352


Figure 2008031352

なお、表1及び2中の略号は以下に次に示す通りである。すなわち、2EH−MAは2−エチルヘキシルメタクリレート、MMAはメチルメタクリレート、nB−Aはn−ブチルアクリレート、2EH−Aは2−エチルヘキシルアクリレート、POはt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートをそれぞれ示す。
[合わせガラスの作製]
(実施例7〜12、比較例5〜8)
次に、実施例1〜6及び比較例1〜4の重合性組成物をそれぞれ用い、以下に示すようにして合わせガラスの製造を行った。すなわち、まず、厚さ3mm、300mm×300mmのサイズを有するフロート板ガラスを2枚準備し、これらを互いに対向して配置させ、端面を厚さ1mm、幅5mmのアクリルテープでシーリングした。
次いで、フロート板ガラス間の領域に重合性組成物を注入した。この重合性組成物が注入された状態のガラス板をオーブン内に静置して、このオーブン内温度を70℃で3時間保持した。その後、1時間かけてオーブン内温度を100℃に上昇させた後、同温度で1時間維持して、重合性組成物の重合・硬化を行い、これにより重合性組成物の重合体からなる重合体層を形成させた。これにより、一対のフロート板ガラス間に重合性組成物の重合体からなる中間膜を備える合わせガラスを得た。
[特性評価]
実施例7〜12及び比較例5〜8の合わせガラスをそれぞれ用い、以下に示す方法にしたがって、各合わせガラスの耐貫通性の評価及びヘーズの測定を行った。得られた結果をまとめて表3に示す。
(耐貫通性の評価)
まず、合わせガラスを、JIS R3205に従いステンレス製枠2枚で挟み、水平に固定した。耐貫通性の評価は、この固定された合わせガラスに、クロム製鋼球を200cmの高さから合わせガラスの中心部近傍に自由落下させることで行った。そして、合わせガラスのうち、鋼球が貫通しなかったものをA、貫通したものをBと評価した。なお、この試験は、各実施例又は比較例に対応する合わせガラスについて、それぞれ3つずつサンプルを準備し、1Kgの鋼球を用いた場合(耐貫通試験1)、1.5Kgの鋼球を用いた場合(耐貫通試験2)、及び、2.3Kgの鋼球を用いた場合(耐貫通試験3)の3通りの条件で行った。
(ヘーズの測定)
実施例7、8及び10、並びに、比較例5及び6で得られた合わせガラスの出来上がり時のヘーズを、JISK 7136に準拠した方法により測定した。
Figure 2008031352

表3より、第1の及び第2のリン酸エステルを組み合わせて含む重合性組成物を用いた実施例7〜12の合わせガラスは、第2のリン酸エステルを用いなかった比較例5〜8のものに比して、優れた耐貫通性を有していることが確認された。
合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。 反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。
符号の説明
1…透光性基板、2…中間膜、10…合わせガラス、20…合わせガラス、21…透光性基板、22…中間膜、23…赤外反射層。

Claims (10)

  1. 重合性モノマーと、
    2価の銅イオンと、
    前記銅イオンと複合体を形成した第1のリン酸エステルと、
    前記銅イオンと複合体を形成していない第2のリン酸エステルと、
    を含有することを特徴とする重合性組成物。
  2. 前記第2のリン酸エステルは、前記第1のリン酸エステルよりも多い化学量論量含まれている、ことを特徴とする請求項1記載の重合性組成物。
  3. 前記第2のリン酸エステルは、重合性官能基を有しない非重合性リン酸エステルである、ことを特徴とする請求項1又は2記載の重合性組成物。
  4. 前記第2のリン酸エステルは、重合性官能基を有する重合性リン酸エステル、及び、重合性官能基を有しない非重合性リン酸エステルを含む、ことを特徴とする請求項1又は2記載の重合性組成物。
  5. 前記第1のリン酸エステルは、重合性官能基を有する重合性リン酸エステル、及び、重合性官能基を有しない非重合性リン酸エステルを含む、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  6. 前記非重合性リン酸エステルは、アルキルリン酸エステルである、ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  7. 前記第1のリン酸エステル及び前記第2のリン酸エステルは、同じリン酸エステルを含む、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の重合性組成物を重合して得られる重合体。
  9. リン酸エステルと銅塩とを反応させて、該リン酸エステルと銅イオンとの複合体を形成する工程と、
    前記複合体と、リン酸エステルと、を混合する工程と、
    を有することを特徴とする重合性組成物の製造方法。
  10. 透光性基板と、
    前記透光性基板の少なくとも一側に設けられた、請求項8記載の重合体からなる重合体層と、
    を備えることを特徴とする積層体。
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