JPWO2006009211A1 - 近赤外光吸収材料及び積層体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、合わせガラスの近赤外光吸収層に適用でき、しかも、従来以上に優れた近赤外光遮断特性を付与することが可能な近赤外光吸収材料を提供することを目的とする。本発明の合わせガラス10(積層体)は、一対の透光性基板1と、この一対の透光性基板1に挟持された中間膜2(近赤外光吸収層)とを備えるものである。この中間膜2は、近赤外光吸収材料から構成され、この近赤外光吸収材料は、ポリビニルアセタール、銅イオン、及び、希土類金属イオンを含有するものである。
Description
本発明は、近赤外光吸収材料及び積層体に関する。
窓材等に用いるための光学部材としては、ガラス等からなる一対の透光性基板の間に、樹脂からなる中間膜を挟んだ構造の合わせガラスが知られている。このような合わせガラスは、高強度、高耐久性等の優れた特性を有していることから頻繁に用いられている。
近年、これらの合わせガラスには、赤外線又はその近傍領域の波長の光線(以下、「近赤外光」という)を遮断し得る特性が求められている。かかる特性を有する合わせガラスを窓材や壁材等に適用すれば、例えば太陽光における上記領域の波長を有する光線、すなわち熱線の室内への侵入を抑制することができる。これにより、室内が過度に高温となることを抑制して室内環境を快適に保つことができるようになり、しかも冷房等にかかるコストを低減することも可能となる。
このように近赤外光を遮断できる合わせガラスとしては、中間膜として、近赤外光を吸収する特性を有する材料からなる層(近赤外光吸収層)を備えるものが知られている。このような合わせガラスとして、例えば、近赤外光吸収層が、銅イオン、ポリビニルブチラール及び2−エチルヘキシルホスフェートを含有する材料によって構成されたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−211220号公報(第7頁)
上述した合わせガラスは、十分に近赤外光を遮断することができるものであったが、近年、合わせガラスに対して、今まで以上に近赤外光を遮断する特性に優れることが求められている。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、合わせガラスの近赤外光吸収層に適用でき、しかも、従来以上に優れた近赤外光遮断特性を付与することが可能な近赤外光吸収材料を提供することを目的とする。本発明はまた、かかる近赤外光吸収材料からなる近赤外光吸収層を備える積層体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の近赤外光吸収材料は、ポリビニルアセタール、銅イオン、及び、希土類金属イオンを含有することを特徴とする。
上記従来技術の合わせガラスのように、所定の樹脂中の銅イオンは、近赤外光吸収性を有することが知られている。本発明者らが、かかる銅イオンの特性について詳細な検討を行ったところ、近赤外光吸収材料中における銅イオンの含有量を多くするほど、より優れた近赤外光吸収特性が得られるようになることが判明した。しかしながら、近赤外光吸収材料において、このように銅イオンの含有量を増加させると、優れた近赤外光吸収特性が得られるようになる反面、かかる材料からなる近赤外光吸収層の安定性が低下する傾向にあることが判明した。このため、このような近赤外光吸収層を備える合わせガラス等は、長期使用によって当該層に濁りが生じて可視光透過性が低下するといった新たな問題が発生することを見出した。
そこで、本発明者らは、近赤外光吸収材料に含有させる金属イオンについて更に検討を行った結果、銅イオンと希土類金属イオンとを組み合わせて含有させることによって、銅イオンの含有量を増加させなくとも近赤外光吸収特性を高め得るという新たな知見を得た。
ここで、上述の如く、所定の樹脂中において、銅イオンは、近赤外光吸収特性を有することが知られている。一方、希土類金属(例えば、ネオジムイオン)は、人の目が眩しさを感じる波長領域(例えば580nm付近)の光を吸収する特性を有しており、これにより眩しさを抑える特性(防眩性)を付与し得ることが知られている。本発明の近赤外光吸収材料は、上述した特性を発揮し得る2種の金属イオンを組み合わせて含有しているため、かかる材料からなる近赤外光吸収層は、優れた近赤外光吸収特性を有するばかりでなく、優れた防眩性をも有するものとなる。
また、本発明の近赤外光吸収材料は、樹脂成分としてポリビニルアセタールを含有するものである。従来、近赤外光吸収材料に適用し得る樹脂成分としては、ポリビニルアセタールのほかにアクリル系樹脂が知られている。しかしながら、本発明者らの検討によると、銅イオン及び希土類イオンを含む近赤外光吸収材料において、樹脂成分としてアクリル系樹脂を適用すると、可視光領域の光をも吸収してしまう場合があることが判明した。このため、かかる材料から構成される近赤外光吸収層を備える合わせガラス等には、可視光の透過性が低いものもあり、高い可視光透過率が必要とされる窓材等に対しては適用が困難である場合があることが判明した。これに対し、樹脂成分としてポリビニルアセタールを用いた本発明の近赤外光吸収材料によれば、近赤外領域の光を選択的に吸収することが可能であり、十分な可視光透過性を維持しつつ優れた近赤外光吸収特性が得られるようになる。
上記本発明の近赤外光吸収材料は、上述した成分に加え、ホスフィン酸化合物、ホスホン酸化合物、ホスホン酸モノエステル化合物、リン酸モノエステル化合物及びリン酸ジエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物を更に含有するものであると好ましい。このようなリン化合物を含有することにより、より優れた近赤外光吸収特性が得られるようになるほか、かかる材料からなる近赤外光吸収層の安定性を更に向上させることができる。
また、上記希土類金属イオンとしては、ネオジムイオン及び/又はプラセオジムイオンが好ましい。希土類金属イオンとしてこれらのものを含有すると、近赤外光吸収特性が向上するばかりでなく、より優れた防眩性が得られるようになる。
さらに、上記本発明の近赤外光吸収材料は、銅イオンを0.1〜5質量%含有し、且つ、希土類金属イオンを0.5〜10質量%含有していることが好ましい。これらの範囲の銅イオン及び希土類金属イオンを含有することにより、優れた近赤外光吸収特性及び防眩性が得られるようになる。
より具体的には、上記リン化合物としては、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物が好ましい。なお、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物としては、下記の官能基を有するものを単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
[式中、nは1又は2であり、R1は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基又は(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基を示し、これらの基の炭素数は、それぞれ1〜30である。なお、これらの基は、当該基における少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基又はエステル基で置換されていてもよい。]
本発明はまた、透光性基板と、この透光性基板上に設けられた、上記本発明の近赤外光吸収材料からなる近赤外光吸収層とを備える積層体を提供する。かかる積層体は、上記本発明の近赤外光吸収性組成物からなる近赤外光吸収層を備えていることから、近赤外光を遮断する特性に優れるのみならず、防眩性にも優れるという特性を有している。また、この積層体を、一対の透光性基板で近赤外光吸収層を挟む構成とすれば、近赤外光遮断特性及び防眩性の両方に優れる合わせガラスを得ることができる。
本発明によれば、合わせガラスの近赤外光吸収層に適用でき、十分な可視光透過性を維持しつつ、従来以上に優れた近赤外光遮断特性を付与することが可能であり、しかも、合わせガラスに対して優れた防眩性をも付与できる近赤外光吸収材料を提供することが可能となる。また、かかる近赤外光吸収材料からなる近赤外光吸収層を備える積層体を提供することが可能となる。
1…透光性基板、2…中間膜、10…合わせガラス、20…合わせガラス、21…透光性基板、22…近赤外光吸収層、23…反射層、30…合わせガラス、31…透光性基板、32…近赤外光吸収層、33…反射層、34…樹脂層。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
(近赤外光吸収材料)
(近赤外光吸収材料)
実施形態の近赤外光吸収材料は、ポリビニルアセタール、銅イオン及び希土類金属イオンを含むものである。
まず、近赤外光吸収材料中のポリビニルアセタールとしてはポリビニルブチラール(PVB)が好ましい。ポリビニルアセタールは、後述する積層体における透光性基板に対する接着性に優れるほか、柔軟であり、しかも温度に依存して変形し難いという特性を有している。このため、積層体を製造する際の成形加工を容易化することができる。また、ポリビニルアセタールは、銅イオンや希土類金属イオン等の他の成分を良好に溶解及び/又は分散し易いという特性を有しているため、優れた可視光透過性を有する近赤外光吸収層を形成し得る。なお、樹脂成分としては、ポリビニルアセタールを主成分として含む限り、例えば、エチレン−酢酸ビニル系共重合体やアクリル系樹脂等を組み合わせて含有していてもよい。特に、ポリビニルアセタールのなかでも、ポリビニルブチラールは、中間膜とした場合に、透明性及び耐侯性に優れるほか、ガラスに対する接着性も優れるものとなる。
なお、上記ポリビニルアセタールは、必要な物性に応じて、適当な組み合わせでブレンドされたものであってもよく、また、アセタール化時に複数種のアルデヒドを組み合わせてアセタール化することにより得られたものであってもよい。ポリビニルアセタールの分子量、分子量分布及びアセタール化度は特に限定されないが、好適なアセタール化度は40〜85%であり、より好ましい下限は60%、上限は75%である。
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより好適に得ることができる。この反応に用いるポリビニルアルコールは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られるものであり、鹸化度が80〜99.8モル%であるポリビニルアルコールが好適である。また、アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、炭素数が1〜10のアルデヒド等が挙げられ、より具体的には、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルテヒド、n−へキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−へキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が好ましい。より好ましくは、炭素数が4のブチルアルデヒドである。
銅イオンは、2価の銅イオンである。この銅イオンは、銅塩の形態で近赤外光吸収材料中に供給することができる。銅塩の具体例としては、酢酸銅、蟻酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅等の有機酸の銅塩無水物、水和物若しくは水化物、或いは、酸化銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩の無水物、水和物若しくは水化物、又は、水酸化銅が挙げられる。これらのなかでは、酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅、水酸化銅、塩基性炭酸銅が好ましく用いられる。なお、銅イオン源であるこれらの銅塩は、単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
希土類金属イオンとしては、ランタノイド系、すなわち、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、エルビウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等の金属イオンが挙げられる。なかでも、プラセオジム、ネオジム、エルビウム、ホルミウム、ユーロピウムは、ポリビニルアセタールへの溶解性に優れることから好ましく、プラセオジム又はネオジムが特に好ましい。プラセオジム又はネオジムは、銅イオンと組み合わせて近赤外光吸収材料に含有させた場合に、特に優れた近赤外光吸収性及び防眩性を付与できる傾向にある。
このような希土類金属イオンは、希土類金属化合物の形態で近赤外光吸収材料中に供給することができる。希土類金属化合物としては、上述した希土類金属と、酢酸、安息香酸、シュウ酸等の有機酸、若しくは、硫酸、塩酸、硝酸、フッ素酸等の無機酸とから構成される金属塩の無水物又は水和物や、希土類金属の酸化物や水酸化物等が挙げられる。
近赤外光吸収材料は、上述した各成分に加えて、所定のリン化合物を更に含有していると好ましい。リン化合物としては、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物、下記一般式(2)で表されるホスフィン酸化合物、下記一般式(3)で表されるホスホン酸化合物、並びに、下記一般式(4)で表されるホスホン酸モノエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物が挙げられる。
上記式中、nは1又は2であり、R1、R21、R22、R3、R41及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基又は(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基を示し、これらの基の炭素数は、それぞれ1〜30である。なお、これらの基は、当該基における少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基又はエステル基で置換されていてもよい。なお、上記式(1)〜(4)で表されるリン化合物は、それぞれについて、上述した官能基を有するものを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、リン化合物としては、上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物(リン酸モノエステル化合物及び/又はリン酸ジエステル化合物)が好ましい。上記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物において、R1で表される基としては、アルキル基、アルケニル基又は下記一般式(5)で表される重合性官能基が挙げられる。なお、下記一般式(5)中、Xは、水素原子又はメチル基を示し、pは2〜6の整数であり、mは0〜5の整数である。
R1で表される官能基として上述したもののうち、アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜18のアルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられ、なかでも、2−エチルヘキシル基が好ましい。また、アルケニル基としては、オレイル基が好ましい。
実施形態の近赤外光吸収材料がこのようにリン化合物を含有する場合、近赤外光吸収材料においては、銅イオン、希土類金属イオン及びリン化合物の各成分は、単に混合物として存在していてもよく、また、銅イオン及び希土類金属イオンがそれぞれリン化合物と反応して、リン含有銅化合物及びリン含有希土類金属化合物(以下、これらをまとめて「リン含有金属化合物」という)を形成した状態で存在していてもよい。
後者の場合、リン含有金属化合物は、リン化合物におけるリン含有基(例えば、リン酸エステルにおけるリン酸基)と各金属イオンとが、イオン結合及び/又は配位結合することにより生じたものであると好ましい。このようなリン含有金属化合物は、例えば、銅イオン及び希土類金属イオンの原料とリン化合物とを混合してこれらを反応させるか、または、まず銅イオンとリン化合物、及び、希土類金属イオンとリン化合物をそれぞれ反応させて各金属イオンに対応するリン含有金属化合物を得た後、これらを混合することによって調製することができる。
さらに、銅イオン及び希土類金属イオンの合計量と、リン化合物の含有量の割合は、これらのリン化合物が水酸基又は水酸基由来の酸素原子を有している場合、(水酸基又は酸素原子の合計量)/(銅イオン及び希土類金属イオンの合計量)が、モル比で、1〜12であると好ましく、1〜8であるとより好ましく、1.5〜4となる量であると更に好ましい。この比率が1未満となる場合、近赤外光吸収性や可視光透過性が低下する傾向にある。一方、12を超える場合、銅イオン又は希土類金属イオンとの配位結合又はイオン結合に関与しない水酸基の量が過大となり、吸湿性が大きくなり過ぎる傾向にある。
上述した各成分を含有する近赤外光吸収材料は、例えば、ポリビニルアセタール中に、上述した銅イオン及び希土類金属の原料やリン化合物を溶解及び/又は分散させることにより調製することができる。より具体的には、ポリビニルアセタールや金属イオンの原料等を加熱溶融して混練する方法や、ポリビニルアセタールを溶媒に溶解及び/又は分散させ、この溶液中に金属イオンの原料等を添加・混合した後、溶媒を除去する方法が例示できる。
実施形態の近赤外光吸収材料は、上述した各成分のほか、ポリビニルアセタールとの相溶性に優れる可塑剤を更に含有していると好ましい。このように可塑剤を含有していると、金属イオン等のポリビニルアセタールに対する溶解及び/又は分散性が更に高められる傾向にあり、近赤外光吸収性や可視光透過性を一層向上させることができる。このような可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機系可塑剤や、有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が好適に用いられる。より具体的には、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、グリコール系可塑剤等が挙げられる。
一塩基性有機酸エステルとしては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)又はデシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られるグリコール系エステル等が挙げられる。より具体的には、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、ジヘキシルアジペート(DHA)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジヘプタノエート(3G7)等が例示でき、なかでも、3GO、3GH又は3G7が好ましい。
また、多塩基性有機酸エステルとしては特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸又はアゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖状又は分枝状アルコールとの反応によって得られるエステル等が挙げられる。例えば、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適に用いられる。さらに、有機リン酸系可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
さらに近赤外光吸収材料は、その他の添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、色調を調整するための成分、物性を調整するための成分、近赤外光吸収材料を安定化させる成分、後述する積層体を形成する際の透光性基板との密着性を調整するための成分等が挙げられる。その他、近赤外光吸収材料には、必要に応じて、中間膜等を形成する際の押出機中での熱による変質を防止するための酸化防止剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、或いは、耐湿剤等の添加剤が更に添加されていてもよい。以下、これらの添加剤の一部についてより具体的に説明する。
まず、上記色調を調整するための成分としては、染料、顔料、金属化合物等が挙げられる。また、近赤外光吸収材料を安定化するための成分としては、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、抗酸化剤等が挙げられる。
より具体的には、上記紫外線吸収剤としては、ベンゾエート系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。なかでも、ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートが挙げられ、サリシレート系化合物としては、フェニルサリシレートやp−t−ブチルフェニルサリシレートが挙げられる。
また、ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−5−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシエチルベンゾフェノン、4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
さらに、ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタリミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメトキシベンゾイル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物等が挙げられる。
さらにまた、シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートやオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが挙げられる。また、シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドや2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドが挙げられる。さらに、トリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールが挙げられる。
また、上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や、Ni系化合物が適用可能である。これらの光安定剤と添加することで、光に対する安定性を更に向上させることができる。特に、上述した紫外光吸収剤とこの光安定剤を併用すると、光に対する安定性が極めて良好となる傾向にある。
より具体的には、上記HALSとしては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケード、1−[2−[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]、ジメチルサシネートポリマ−with−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
一方、Ni系の光安定剤としては、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル(II)、ニッケルジブチルジチオカーボネート、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−ブチルアミン−ニッケル(II)等が挙げられる。
さらに、透光性基板との密着性を調整するための成分としては、例えば、透光性基板としてガラス基板を用いる場合、シラン化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が例示できる。より具体的には、例えば、有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩や、変成シリコーンオイル等が挙げられる。有機酸としては、例えば、オクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸等が挙げられる。また、無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸等が挙げられる。さらに、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩としては、炭素2〜16の有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩又はマグネシウム塩がより好ましい。炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩及びマグネシウム塩としては、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルへキサン酸マグネシウム、2−エチルへキサン酸カリウム等が好適である。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が供用されてもよい。
有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の配合量の好ましい下限は、樹脂100重量部に対して0.001重量部であり、上限は0.5重量部である。この配合量が0.001重量部未満であると、高湿度雰囲気下で周辺部の接着力が低下するおそれがある。一方、0.5重量部を超えると、中間膜等を形成した場合に透明性が低くなる場合がある。これらの不都合を低減する観点から、上記配合量のより好ましい下限は0.01重量部であり、上限は0.2重量部である。
また、変成シリコーンオイルとしては、例えば、エポキシ変成シリコーンオイル、エーテル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、これらの変性シリコーンオイルは、一般にポリシロキサンに、変性させるべき化合物を反応させることにより得られる。
この変性シリコーンオイルの分子量の好ましい下限は800であり、上限は5000である。この分子量が800未満であると、表面への局在化が不充分なことがある。一方5000を超えると、樹脂との相溶性が低下し、膜表面にブリードアウトしてガラスとの接着力が低下することがある。より好ましい下限は1500であり、上限は4000である。
また、変性シリコーンオイルの配合量の好ましい下限は、樹脂100重量部に対して0.01重量部であり、上限は0.2重量部である。この配合量の下限値が0.01重量部未満であると、中間膜を形成した場合に吸湿による白化を防止する効果が充分に得られなくなる場合がある。一方、0.2重量部を超えると、樹脂との相溶性が低下し、得られる中間膜表面に変性シリコーンオイルがブリードアウトして、樹脂とガラスとの間の接着力の低下を招くおそれがある。かかる不都合を低減する観点から、変性シリコーンオイルの配合量のより好ましい下限は0.03重量部であり、上限は0.1重量部である。
本実施形態の近赤外光吸収材料は、上述した各成分を含むものであるが、当該材料中における各成分は、以下に示す割合で配合されていると好ましい。すなわち、銅イオンは、近赤外光吸収材料の全質量中、0.1〜5質量%含まれていると好ましく、0.1〜3.5質量%含まれているとより好ましい。また、希土類金属イオンは、近赤外光吸収材料の全質量中、0.5〜10質量%含まれていると好ましく、0.5〜8質量%含まれているとより好ましい。さらに、ポリビニルアセタールは、近赤外光吸収材料の全質量中、30〜96質量%含まれていると好ましく、40〜96質量%含まれているとより好ましい。なお、上述したように可塑剤が更に含まれる場合には、ポリビニルアセタールと可塑剤の合計量が、上述したポリビニルアセタールの含有量を満たすことが好ましい。
(光学部材)
次に、好適な実施形態の光学部材について説明する。上述した近赤外光吸収材料を用いることにより、近赤外光を遮断する特性に優れる光学部材を得ることができる。このような光学部材としては、以下に示す第1及び第2の形態が挙げられる。
第1の形態:近赤外光吸収性組成物を加工して得られるシート状成形物。
第2の形態:透光性基板と、この透光性基板に隣接して設けられた近赤外光吸収材料からなる近赤外光吸収層とを有する積層体。
次に、好適な実施形態の光学部材について説明する。上述した近赤外光吸収材料を用いることにより、近赤外光を遮断する特性に優れる光学部材を得ることができる。このような光学部材としては、以下に示す第1及び第2の形態が挙げられる。
第1の形態:近赤外光吸収性組成物を加工して得られるシート状成形物。
第2の形態:透光性基板と、この透光性基板に隣接して設けられた近赤外光吸収材料からなる近赤外光吸収層とを有する積層体。
まず、第1の形態について説明する。第1の形態の光学部材は、上述した近赤外光吸収材料からなるシート状の成形物であり、具体的には、シートやフィルムが挙げられる。ここで、シートとは、250μmを超える厚さを有する薄板状のものである。また、フィルムとは、厚さ5〜250μmの薄い膜状のものである。これらのシート又はフィルムは、公知のシート又はフィルム形成方法を用いて作製可能である。かかるシート又はフィルム形成方法としては、溶融押出成形法、延伸成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、溶液キャスト法等が挙げられる。
次に、第2の形態について説明する。第2の形態の光学部材は、透光性基板と、この透光性基板に隣接して設けられた、近赤外光吸収材料からなる近赤外光吸収層とを有する積層体である。
透光性基板を構成する材料は、可視光透過性を有する透光性材料であれば特に限定されず、光学部材の用途に応じて適宜選択可能である。良好な硬度、耐熱性、耐薬品性、耐久性等を得る観点からは、ガラスやプラスチックが好適に使用される。ガラスとしては、無機ガラス、有機ガラス等が挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン樹脂等が例示できる。なお、透光性基板が複数存在する場合には、各基板は、同じ種類の材料で構成されたものであってもよく、異なる材料で構成されたものであってもよい。
このような積層体は、例えば、上述した第1の形態の光学部材と同様のシートやフィルムを形成した後、このシート等と透光性基板とを張り合わせることによって製造することができる。これらを張り合わせる方法としては、プレス法、マルチロール法、減圧法等の加圧又は減圧により接着する手段、オートクレーブ等を用いて加熱することにより接着する手段、又は、これらを組み合わせた手段を用いることができる。
また、積層体の製造方法としては、予め形成したシートを張り合わせる方法以外に、透光性基材上に、近赤外光吸収層を直接形成する方法も適用できる。かかる方法としては、例えば、上述した近赤外光吸収材料を適宜の溶媒に溶解及び/又は分散させてコーティング剤とし、この溶液を透光性基板に塗布した後、溶媒を蒸発することによって、透光性基材上に、近赤外光吸収材料からなる薄膜、被覆物又は薄層を形成する方法が例示できる。こうして形成された薄膜等は、コーティングと呼ばれる。このような方法を用いて近赤外光吸収層を形成する場合には、当該層の平坦性を高める目的で、レベリング剤、消泡剤といった各種の界面活性剤等の溶解補助剤を、上述したコーティング剤中に添加してもよい。
第2の形態の光学部材、すなわち積層体は、上述したような透光性基板と近赤外光吸収層とを一層ずつ備えるものに限定されず、これらの層を複数備えるものであってもよい。具体的には、一対の透光性基板と、この透光性基板間に配置された上記近赤外光吸収材料からなる中間膜(近赤外光吸収層)とを備えるものが挙げられる。このような積層体は、いわゆる合わせガラスと呼ばれるものである。
ここで、図1を参照して、好適な実施形態の合わせガラスについて説明する。
図1は、実施形態の合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。図1に示される合わせガラス10は、一対の透光性基板1と、この一対の透光性基板1に挟持された中間膜2(近赤外光吸収層)とを備えるものである。中間膜2は、上記近赤外光吸収材料からなるものであり、透光性基板1としては、上述した透光性基板と同様のものが適用できる。
かかる構造の合わせガラス10は、例えば、一組の透光性基板の間に、上述した近赤外光吸収性組成物からなるシート状成形物を挟み、これを予備圧着して各層間に残存した空気を除去した後、本圧着してこれらを密着させる方法によって製造することができる。
なお、このような製造方法により合わせガラス10を製造する場合、中間膜2に、その保管時においてシート同士が合着して塊状となる、いわゆるブロッキング現象が生じていないことや、予備圧着における脱気性が良好であることが要求される。これらの要求を満たしている場合、透光性基材1とシートとを重ね合わせる際の作業性が良好となるほか、例えば脱気が不十分であるために生じた気泡等による透光性の低下を防ぐことができる。
このような合わせガラス10には、近赤外光を遮断する特性のほか、可視光透過性、すなわち可視光領域の光を透過する特性に優れることも求められる。このように優れた可視光透過性を得るためには、上述したように、透光性基板1と中間膜2との間に極力気泡を有していないことが好ましい。
この気泡を低減する手段の一つとして、表面にエンボスと呼ばれる多数の微小な凹凸を有している中間膜2を用いる方法が知られている。エンボスが施された中間膜2によれば、上述した予備圧着工程等における脱気性が極めて良好となる。その結果、合わせガラス10は、気泡による透光性の低下が少ないものとなる。
エンボスの形態としては、例えば、多数の凸部とこれらの凸部に対する多数の凹部とからなる各種凸凹模様、多数の凸条とこれらの凸条に対する多数の凹溝とからなる各種の凸凹模様、粗さ、配置、大きさ等の種々の形状因子に関し多様な値を有するエンボス形状がある。
これらのエンボスとしては、例えば、特開平6−198809号公報に記載された、凸部の大きさを変え、その大きさや配置を規定したもの、特開平9−40444号公報に記載された、表面の粗さを20〜50μmとしたもの、特開平9−295839号公報に記載された、凸条が交差するように配置されたもの、或いは、特開2003−48762号公報に記載された、主凸部の上に更に小さな凸部を形成されたもの等が挙げられる。
また、近年、合わせガラス10に求められる他の特性としては、遮音性がある。遮音性が優れる合わせガラスによれば、例えば、窓材に用いた場合に、周囲の騒音等の影響を低減できるようになり、更に室内環境を向上させ得る。一般に、遮音性能は、周波数の変化に応じた透過損失量として示され、その透過損失量は、JISA 4708では、500Hz以上において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で規定されている。
ところが、合わせガラスの透光性基板として一般的に用いられるガラス板の遮音性能は、2000Hzを中心とする周波数領域ではコインシデンス効果により著しく低下する傾向にある。ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射した時、ガラス板の剛性と慣性によって、ガラス板状を横波が伝播してこの横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。よって、一般的な合わせガラスでは、2000Hzを中心とする周波数領域において、かかるコインシデンス効果による遮音性能の低下を避け難く、この点の改善が求められている。
これに関し、人間の聴覚は、等ラウドネス曲線から、1000〜6000Hzの範囲では他の周波数領域に比べ非常に良い感度を示すことが知られている。従って、コインシデンス効果による上記遮音性能の落ち込みを解消することは、防音性能を高める上で重要となる。このような観点から、合わせガラス10の遮音性能を高めるには、上記コインシデンス効果による遮音性能の低下を緩和し、コインシデンス効果によって生じる透過損失の極小部の低下を防ぐ必要がある。
合わせガラス10に遮音性を付与する方法としては、合わせガラス10の質量を増大させる方法、透光性基板1となるべきガラスを複合化する方法、このガラス面積を細分化する方法、ガラス板支持手段を改善する方法などがある。また、遮音性能は、中間膜2の動的粘弾性により左右され、特に貯蔵弾性率と損失弾性率との比である損失正接に影響されることがあることから、この値を制御することによっても合わせガラス10の遮音性能を高めることができる。
後者のように損失正接の値を制御する手段としては、例えば、特定の重合度を有する樹脂膜を用いる方法、特開平4−2317443号公報に記載されるような樹脂の構造を規定する方法、特開2001−220183号公報に記載されるような樹脂中の可塑剤量を規定する方法等が挙げられる。また、異なる2種以上の樹脂を組み合わせて中間膜を形成することによっても、広い温度範囲にわたって合わせガラス10の遮音性能を高め得ることが知られている。例えば、特開2001−206742号公報に記載された、複数種の樹脂をブレンドする方法、特開2001−206741号公報や特開2001−226152号公報に記載された、複数種の樹脂を積層する方法、特開2001−192243号公報に記載された、中間膜中の可塑剤量に偏向を持たせる方法等が挙げられる。これらの技術を採用し、樹脂構造の改質、可塑剤の添加、2種以上の樹脂の組み合わせ等といった手段を適宜組み合わせて実施することで、中間膜2を形成すべき樹脂材料の損失正接の値、すなわち遮音性を制御することが可能となる。
さらに、合わせガラス10は、上述したような近赤外光を遮断すること以外による遮熱性を更に有していると好ましい。このように合わせガラス10の遮熱性を高める方法としては、中間膜2中に、遮熱機能を有する金属、金属酸化物微粒子、金属ホウ化物微粒子等を更に含有させる方法や、これらを含有する層を合わせガラス10の積層構造に導入する方法が挙げられる。このような方法としては、例えば、特開2001−206743号公報、特開2001−261383号公報、特開2001−302289号公報、特開2004−244613号公報、国際公開WO02/060988号パンフレット等に記載された方法を適用できる。
遮熱性を高め得る金属酸化物微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等が挙げられる。また、ホウ化物微粒子としては、YB6、LaB6、CeB6、PrB6、NdB6、SmB6、EuB6、GdB6、TbB6、DyB6、HoB6、ErB6、TmB6、YbB6、LuB6、ZrB6、BaB6、SrB6、CaB6等の6ホウ化物微粒子が挙げられる。なお、上記のように金属酸化物微粒子等が含有された中間膜2は、透光性が低下しやすい傾向にある。そこで、透光性の低下が生じないように酸化物微粒子の粒径を規定したり(特許271589号公報、特開2002−293583号公報)、酸化物微粒子の分散性を高めたり等の、透光性を良好に維持するための方法を適用してもよい。後者のように酸化物微粒子の分散性を高めるための方法としては、当該微粒子を機械的に分散させることや、分散剤を用いること等の公知の微粒子分散技術が適用できる。
なお、合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、上述した酸化物微粒子を含有させる方法以外に、例えば、有機系の遮熱機能を有する染料・顔料を含有させる方法や、これらが含有された遮熱性能を有するガラスを合わせガラス10の透光性基板1として用いる方法も挙げられる。前者の有機系の遮熱機能を有する染料を含有させる方法としては、特開平7−157344号公報、特許第319271号公報に記載された有機系の遮熱機能を有する染料・顔料を用いる方法が挙げられる。このような有機系の染料・顔料としては、フタロシアニン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、シアニン系、ナフタロシアニン系、ピロール系、イモニウム系、ジチオール系、メルカプトナフトール系等が挙げられる。
また、後者のような遮熱性能を有するガラスとしては、例えば、特開2001−151539号公報に記載されているようなFe等の遷移金属含有ガラス(例えば、グリーンガラス等)、特開2001−261384号公報、特開2001−226148号公報に記載されているような金属、金属酸化物を多層コーティング(積層)したガラス板が挙げられる。
このように、上述した実施形態の合わせガラスは、中間膜に含まれる近赤外光吸収材料が近赤外光領域の光線を吸収することによって、熱線である近赤外光を遮断する特性を発揮するものであるが、本発明の合わせガラス(積層体)は、更なる近赤外光遮断特性の向上を目的として、近赤外光を吸収する層に加えて、近赤外光を反射する特性を有する層(反射層)を更に有していてもよい。このような反射層は、合わせガラスを構成する積層構造の任意の位置に導入することができる。
図2は、反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。合わせガラス20は、透光性基板21、近赤外光吸収層22、反射層23及び透光性基板21をこの順に備える構造を有している。透光性基板21及び近赤外光吸収層22は、上述した合わせガラス10における透光性基板1及び中間膜2と同様のものが適用できる。
反射層23としては、金属や金属酸化物から構成される層が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、ケイ素、クロム、チタン、インジウム、アンチモン等の金属単体、合金、混合物又は酸化物からなる層が例示できる。かかる層は、例えば、当該層を形成させるべき対象物の上に、上記金属や金属酸化物を蒸着することにより形成することができる。
このような反射層23を有する合わせガラス20は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、透光性基板21の一面に反射層23を設けたものを準備する。ここで、透光性基板21上に反射層23を形成する方法としては、金属や金属酸化物を透光性基板21上に蒸着する方法等が挙げられる。次に、近赤外光吸収層22となるべきシートの一方の面側に、反射層23が形成された透光性基板21をその反射層23が接するように配置するとともに、他方の面側に透光性基板21のみを配置する。そして、これらを圧着することによって、合わせガラス20を得ることができる。
ところで、上記のように合わせガラスに積層構造中に反射層を導入すると、この反射層とその両側にある層との接着性が低下し、これらの剥離が生じ易くなる場合がある。例えば、透光性基板21と近赤外光吸収層22との間に反射層23を形成すると、反射層23と近赤外光吸収層22との接着性が低下してしまう場合がある。こうなると、例えば合わせガラス20が破損した場合に透光性基板21が剥離・飛散し易くなり、安全性の点で問題が生じることとなる。かかる問題を避ける観点からは、例えば、反射層とこれに隣接する層との間の接着力を調整する手段を適宜採用することが好ましい。上記の例で言えば、近赤外光吸収層22と反射層23との間に、両者の接着力を向上させ得る層を更に設けることが挙げられる。こうすることで、反射層23と近赤外光吸収層22との接着性を改善することが可能となる。
このように接着力を向上させる手段としては、例えば、合わせガラス20のように近赤外光吸収層22と反射層23とが隣り合っている場合には、両層の間に、近赤外光吸収層22よりも高いアセタール度を有するポリビニルアセタールからなる層(特開平7−187726号公報、特開平8−337446号公報)を設ける方法が挙げられる。また、反射層とこれと隣接する層との間に、所定の割合のアセトキシ基を有するPVBからなる層(特開平8−337445号公報)や、所定のシリコーンオイルからなる層(特開平7−314609号広報)等を形成する方法も採用できる。
なお、反射層は、合わせガラスにおいて、必ずしも上述した例のように透光性基板と近赤外光吸収層との間に設けられている必要はなく、例えば、透光性基板の間に複数の樹脂からなる層が形成されている場合は、これらの層の間に設けられた形態であってもよい。
図3は、透光性基板間に設けられた複数の層間に反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。合わせガラス30は、透光性基板31、近赤外光吸収層32、反射層33、樹脂層34、近赤外光吸収層32、透光性基板31をこの順に備える構造を有している。かかる合わせガラス30において、透光性基板31、近赤外光吸収層32及び反射層33としては、上述した合わせガラス20と同様のものが適用できる。また、樹脂層34としては、公知の樹脂材料からなるものが適用でき、このような樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等が挙げられる。なお、このような構造の合わせガラス30においては、近赤外光吸収層32は少なくとも一層設けられていればよいため、例えば、上述した近赤外光吸収層32のうちの一層は、近赤外光吸収特性を有しない樹脂材料からなる層であってもよい。
このように、近赤外光吸収層(中間膜)に加えて更に反射層を設けることで、両層の効果によって、合わせガラスに対して更に優れた近赤外光遮断特性を付与することができる。また、上述したような、反射層と近赤外光吸収層との接着性を改善する方法を採用すれば、このような近赤外光遮断特性に加え、優れた強度を有する合わせガラスを得ることも可能となる。
なお、上述した赤外光を反射する反射層としては、特表平09−506837号公報、特表2000−506082号公報、特表2000−506084号公報、特表2004−525403号公報、特表2003−515754号公報、特開2002−231038号公報、特表2004−503402号公報等で示されるような、光の干渉を利用して特定波長を反射する高分子多層フィルムを用いてもよい。また、上記図1〜図3に示した構造を有する合わせガラス等には、上記構成に加え、太陽光が入射する側(例えば最外層)に、上述した紫外線吸収剤を含有する層や、紫外線吸収剤と光安定剤とを含有する層を更に設けてもよい。
上述した構成を有する合わせガラス等の積層体においては、太陽光等の熱線成分を含む光が入射すると、中間膜である近赤外光吸収層が発現する近赤外光吸収特性によって、近赤外光領域(波長700〜1200nm程度)の熱線が遮断される。一般に、この波長領域の光線は、肌が焼きつくようなジリジリとした刺激的な暑さを感じさせる傾向にあるが、上述した積層体を透過する光線は、このような近赤外光が遮断されているため主として可視光線となる。よって、かかる積層体を窓材等に用いれば、可視光を効率良く取り込みつつ、室内や屋内の温度上昇を抑えることができる。
また、この積層体における近赤外光吸収層は、銅イオンに加えて希土類金属イオンをも含有するものである。希土類金属イオンは、上述の如く、近赤外光吸収層に含有されると、人の目が眩しさを感じる波長領域(例えば580nm付近)の光を吸収する特性を有するようになり、これにより、積層体に防眩性を付与することができる。よって、実施形態の積層体によれば、可視光を効率良く取り込みつつ、眩しさを低減することも可能となる。
このように、本発明の積層体(合わせガラス)は、優れた近赤外光遮断性能及び防眩性を有していることから、太陽光等の自然光その他の外光を取り入れるための建材(建築物の部材に限定されない)、例えば、自動車、船舶、航空機又は電車(鉄道)車両の窓材、アーケード等の通路の天蓋材、カーテン、カーポートやガレージの天蓋、サンルームの窓又は壁材、ショーウィンドウやショーケースの窓材、テント又はその窓材、ブラインド、定置住宅や仮設住宅等の屋根材や天窓その他窓材、道路標識等の塗装面の被覆材、パラソル等の日除け具材、その他熱線の遮断が必要とされる種々の部材に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[リン含有金属化合物の調製]
[リン含有金属化合物の調製]
(調製例1)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合がモル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)6.95gと、をトルエン10gに加えて、透明な溶液を得た。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して、リン含有金属化合物である2−エチルヘキシルリン酸ネオジム化合物(以下、「2EHPNd」という)12gを得た。
酢酸ネオジム・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合がモル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)6.95gと、をトルエン10gに加えて、透明な溶液を得た。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して、リン含有金属化合物である2−エチルヘキシルリン酸ネオジム化合物(以下、「2EHPNd」という)12gを得た。
(調製例2)
リン化合物として、リン酸−2−エチルヘキシル(モノエステル体及びジエステル体の等モル混合物、東京化成社製)を用い、その5gをトルエン10gに溶解した。得られた溶液に酢酸銅1水和物2.37gを加え、この溶液を還流しながら酢酸を除去した。その後、反応溶液からトルエンを留去して、リン含有金属化合物である2−エチルヘキシルリン酸銅化合物(以下、「2EHPCu」という)6.04gを得た。
リン化合物として、リン酸−2−エチルヘキシル(モノエステル体及びジエステル体の等モル混合物、東京化成社製)を用い、その5gをトルエン10gに溶解した。得られた溶液に酢酸銅1水和物2.37gを加え、この溶液を還流しながら酢酸を除去した。その後、反応溶液からトルエンを留去して、リン含有金属化合物である2−エチルヘキシルリン酸銅化合物(以下、「2EHPCu」という)6.04gを得た。
(調製例3)
酢酸マンガン・四水和物3gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合がモル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)4.35gと、をトルエン10gに加えて、透明な溶液を得た。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して、リン含有金属化合物である2−エチルヘキシルリン酸マンガン化合物(以下、「2EHPMn」という)7.35gを得た。
酢酸マンガン・四水和物3gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合がモル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)4.35gと、をトルエン10gに加えて、透明な溶液を得た。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して、リン含有金属化合物である2−エチルヘキシルリン酸マンガン化合物(以下、「2EHPMn」という)7.35gを得た。
(調製例4)
酢酸カリウム3gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合がモル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)5.43gと、をトルエン10gに加えて、透明な溶液を得た。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して、リン含有金属化合物である2−エチルヘキシルリン酸カリウム化合物(以下、「2EHPK」という)8.43gを得た。
[特性評価用サンプルの作製]
酢酸カリウム3gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合がモル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)5.43gと、をトルエン10gに加えて、透明な溶液を得た。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して、リン含有金属化合物である2−エチルヘキシルリン酸カリウム化合物(以下、「2EHPK」という)8.43gを得た。
[特性評価用サンプルの作製]
(実施例1〜3、比較例1〜6、参考例1及び2)
<近赤外光吸収材料の調製>
ポリビニルブチラール(PVB、エスレックBM−1(重合度750)、積水化学(株)製)、可塑剤(3GO(トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサネート)、アクロス社製)、調製例1〜4のいずれかで得られたリン含有化合物を、表1に示す組成にしたがって配合し、実施例1〜3、比較例1〜6、参考例1及び2の近赤外光吸収材料を調製した。なお、PVBと3GOの比率は、質量比でPVB:3GO=7:2となるようにした。また、表1中、近赤外光吸収材料に含まれる金属イオンの含有率(金属含有率、単位:質量%)も併せて示した。
<近赤外光吸収材料の調製>
ポリビニルブチラール(PVB、エスレックBM−1(重合度750)、積水化学(株)製)、可塑剤(3GO(トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサネート)、アクロス社製)、調製例1〜4のいずれかで得られたリン含有化合物を、表1に示す組成にしたがって配合し、実施例1〜3、比較例1〜6、参考例1及び2の近赤外光吸収材料を調製した。なお、PVBと3GOの比率は、質量比でPVB:3GO=7:2となるようにした。また、表1中、近赤外光吸収材料に含まれる金属イオンの含有率(金属含有率、単位:質量%)も併せて示した。
<合わせガラスの作製>
得られた各近赤外光吸収材料を、プレス機(WF−50、神藤金属工業社製)により、85℃で数回プレスした後、更に120℃で数回プレスして、厚さ0.8mmのシート状成形体を得た。このシート状成形体を、縦26mm、横76mm、厚さ1mmの一対のスライドガラスで挟み、積層体を得た。そして、この積層体を、オートクレーブ中で温度130℃、圧力1.2MPaの条件で圧着することにより、スライドガラスからなる一対の透光性基材間にシート状成形体からなる中間膜を備える構造の合わせガラス(特性評価用サンプル)を得た。
得られた各近赤外光吸収材料を、プレス機(WF−50、神藤金属工業社製)により、85℃で数回プレスした後、更に120℃で数回プレスして、厚さ0.8mmのシート状成形体を得た。このシート状成形体を、縦26mm、横76mm、厚さ1mmの一対のスライドガラスで挟み、積層体を得た。そして、この積層体を、オートクレーブ中で温度130℃、圧力1.2MPaの条件で圧着することにより、スライドガラスからなる一対の透光性基材間にシート状成形体からなる中間膜を備える構造の合わせガラス(特性評価用サンプル)を得た。
(比較例7)
まず、リン酸メタクリロイルオキシエチル(モノ:ジ=50:50)(以下、「P−2M」という)1.3g、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート1.2g、メチルメタクリレート(以下、「MMA」という)2.8g、フェノキシエチルメタクリレート0.6gを混合した。この混合物に、無水安息香酸を添加し、80℃で攪拌混合して十分に溶解させ、無水安息香酸銅が上記混合物中に溶解されてなる単量体混合物を得た。
まず、リン酸メタクリロイルオキシエチル(モノ:ジ=50:50)(以下、「P−2M」という)1.3g、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート1.2g、メチルメタクリレート(以下、「MMA」という)2.8g、フェノキシエチルメタクリレート0.6gを混合した。この混合物に、無水安息香酸を添加し、80℃で攪拌混合して十分に溶解させ、無水安息香酸銅が上記混合物中に溶解されてなる単量体混合物を得た。
また、これと並行して、P−2Mの4.3g、ポリメチルメタクリレート4.8g、MMAの0.9gを混合した。この混合物に、酢酸ネオジム1水和物4.0gを添加し、80℃で攪拌混合して十分に溶解させ、酢酸ネオジム1水和物が上記混合物中に溶解されてなる単量体混合物を得た。
以上のように調製された2種類の単量体混合物を全量混ぜ合わせ、これにt−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)の0.32gを添加し、これをガラスモールドに注入し、55℃で16時間、70℃で8時間、及び、100℃で2時間の順に加熱して注型重合を行い、銅塩とネオジム塩が含有された共重合体からなる厚さ1.6mmのシート状成形物(特性評価用サンプル)を得た。
[特性評価]
[特性評価]
(光線透過率の測定)
実施例1〜3、比較例1、2及び7、並びに、参考例1及び2で得られた特性評価用サンプルについて、分光光度計(U−4000、(株)日立製作所製)を用いて、分光測定を行った。図4は、実施例1〜3、比較例1、2及び7、並びに、参考例1及び2の特性評価用サンプルで得られた分光スペクトルを示す図である。なお、図4中、E1〜E3はそれぞれ実施例1〜3で得られた分光スペクトル、C1、C2及びC7はそれぞれ比較例1、2及び7で得られた分光スペクトル、R1及びR2はそれぞれ参考例1及び2で得られた分光スペクトルを示す。
実施例1〜3、比較例1、2及び7、並びに、参考例1及び2で得られた特性評価用サンプルについて、分光光度計(U−4000、(株)日立製作所製)を用いて、分光測定を行った。図4は、実施例1〜3、比較例1、2及び7、並びに、参考例1及び2の特性評価用サンプルで得られた分光スペクトルを示す図である。なお、図4中、E1〜E3はそれぞれ実施例1〜3で得られた分光スペクトル、C1、C2及びC7はそれぞれ比較例1、2及び7で得られた分光スペクトル、R1及びR2はそれぞれ参考例1及び2で得られた分光スペクトルを示す。
(初期ヘーズの測定)
実施例1及び3、並びに比較例2〜6で得られた特性評価用サンプルの作製直後のヘーズ(初期ヘーズ)を測定した。なお、ヘーズの測定は、JIS K 7136に準拠する方法により実施した。得られた結果をまとめて表2に示す。
実施例1及び3、並びに比較例2〜6で得られた特性評価用サンプルの作製直後のヘーズ(初期ヘーズ)を測定した。なお、ヘーズの測定は、JIS K 7136に準拠する方法により実施した。得られた結果をまとめて表2に示す。
(安定性の評価)
実施例1及び比較例2の合わせガラスについて、作製直後と、作製してから1ヶ月経過した後のヘーズをそれぞれ測定した。なお、ヘーズの測定は、JISK 7136に準拠する方法により実施した。得られたヘーズの値と、1ヶ月経過後のヘーズの値から作製直後のヘーズの値を引いた値(Δヘーズ)をまとめて表3に示す。
実施例1及び比較例2の合わせガラスについて、作製直後と、作製してから1ヶ月経過した後のヘーズをそれぞれ測定した。なお、ヘーズの測定は、JISK 7136に準拠する方法により実施した。得られたヘーズの値と、1ヶ月経過後のヘーズの値から作製直後のヘーズの値を引いた値(Δヘーズ)をまとめて表3に示す。
図4より、PVB、銅イオン及びネオジムイオンの全てを含む近赤外光吸収材料を用いて得られた実施例1〜3の合わせガラスは、近赤外光吸収性及び可視光透過性に優れ、且つ、防眩性を付与するのに良好な領域(535nm付近及び580nm付近)の光を遮断する特性にも優れることが確認された。
また、実施例1の合わせガラスによる近赤外光領域の透過率(図4中、E1のスペクトル)は、銅イオンのみを用いた比較例1の合わせガラスによる透過率(図4中、C1のスペクトル)に、ネオジムイオンのみを用いた参考例2の合わせガラスによる透過率(図4中、R2のスペクトル)を加えた場合よりも小さかった。このことから、銅イオンとネオジムイオンとを組み合わせて含有すると、個々の単独の特性から予想されるよりも大きな近赤外光吸収性を発現し得ることが確認された。
さらに、樹脂成分としてアクリル系の樹脂を用いた比較例7のシート状成形物(特性評価用サンプル)は、可視光領域の光(380nmから500nm、600nmから780nm付近)を多く遮断してしまうことが確認された。
さらにまた、表2より、銅イオンに加えて、希土類金属イオン以外の金属イオン(Mnイオン又はKイオン)を含む近赤外光吸収材料を用いた比較例3〜6の合わせガラスは、初期ヘーズが不都合なほどに低く、可視光透過性に劣ることから、合わせガラス等の光学材料としての適用が困難であることが判明した。
さらに、表3より、PVB及びネオジムイオンを含み、且つ、2EHPCuを1g配合した近赤外光吸収材料を用いた実施例1の合わせガラスは、ネオジムイオンを含まず、且つ2EHPCuを2g配合した近赤外光吸収材料を用いた比較例2の合わせガラスと比較して、所定期間経過後のヘーズの変化が少なかったことから、安定性の点で著しく優れていることが確認された。
Claims (6)
- ポリビニルアセタール、銅イオン、及び、希土類金属イオンを含有することを特徴とする近赤外光吸収材料。
- ホスフィン酸化合物、ホスホン酸化合物、ホスホン酸モノエステル化合物、リン酸モノエステル化合物及びリン酸ジエステル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物を更に含有することを特徴とする請求項1記載の近赤外光吸収材料。
- 前記希土類金属イオンとして、ネオジムイオン及び/又はプラセオジムイオンを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の近赤外光吸収材料。
- 前記銅イオンを、0.1〜5質量%含有し、且つ、前記希土類金属イオンを、0.5〜10質量%含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の近赤外光吸収材料。
- 前記リン化合物は、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル化合物であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の近赤外光吸収材料。
- 透光性基板と、
前記透光性基板上に設けられた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の近赤外光吸収材料からなる近赤外光吸収層と、
を備えることを特徴とする積層体。
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