以下、本発明の樹脂組成物及び光学部材の実施形態に関し詳細に説明する。
(樹脂組成物)
先ず、樹脂組成物について説明する。樹脂組成物は、希土類金属イオンと、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステルと、ポリビニルアセタール樹脂と、を含有するものである。
希土類金属イオンとしては、ランタノイドイオン、すなわち、ランタンイオン、セリウムイオン、プラセオジムイオン、ネオジムイオン、プロメチウムイオン、サマリウムイオン、ユーロピウムイオン、ガドリニウムイオン、テルビウムイオン、ジスプロシウムイオン、ホルミウムイオン、エルビウムイオン、ツリウムイオン、イッテルビウムイオン、ルテチウムイオン等を例示することができる。そして、これらの希土類金属イオンは、それぞれの金属イオンを含む金属化合物を供給源とすることができる。
このような金属化合物(以下、「希土類金属塩」という。)としては、例えば、希土類金属との有機酸塩、希土類金属との無機塩の無水物又は水和物、希土類金属の酸化物、希土類金属の水酸化物等のヒドロオキシ塩やヒドロオクソ錯塩が挙げられる。また、ネオジム−2,4−ペンタンジオネート、ネオジムトリフルオロペンタンジオネートといった化合物も例示可能である。なお、上述した有機酸塩を構成する有機酸としては、例えば、酢酸、安息香酸、シュウ酸、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、無機酸塩を構成する無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸、水酸化物が例示できる。これらの中では、入手が容易であり、かつ、樹脂組成物の製造時に副生する酸成分の除去の容易さから、希土類金属の酢酸塩が好ましい。
このような希土類金属イオンを含有する樹脂組成物は、可視光の防眩性に優れた光学部材を形成でき、また、医療用或いは加工用レーザで用いられるレーザ光(波長約520nm)からの眼の防護性に優れた光学部材を形成することが可能である。さらに、これら希土類金属のイオンは、希土類金属イオンの中でも、蛍光を高効率で発光したり、レーザ発光したりするので、これら希土類金属イオンを含む樹脂組成物は、優れた光増幅機能を発現することが可能となる。
また、上述した希土類金属イオンの中では、ネオジム、プラセオジム及びホルミウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属のイオンが好ましい。ネオジム、プラセオジム及びホルミウムのイオンは、波長580nm近傍や波長520nm近傍の光の吸収特性に優れており、これらの波長域は人間の眼球の視細胞が有する最大応答波長と合致することから、防眩性により一層優れた樹脂組成物を得ることができる。
また、希土類金属イオンは、単独で又は2種以上混合して使用することができる。希土類金属イオンの含有割合は樹脂組成物の全質量基準で0.02〜25質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02〜20質量%、更に好ましくは0.02〜15質量%である。希土類金属イオンの含有割合が0.02質量%未満であると、後述する光学部材の厚さによっては特定の波長光に対する吸収特性が充分に得られ難く、防眩性が不充分となる場合がある。一方、この含有割合が25質量%を超えると、樹脂組成物中に希土類金属イオンを均一に溶解又は分散させ難い傾向にある。
さらに、上述した樹脂組成物は、希土類金属イオン以外の他の金属イオンを含有していてもよい。他の金属イオンとしては、例えば、銅イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、マグネシウムイオン、ニッケルイオンが挙げられる。これらの他の金属イオンは、希土類金属イオンと同様に金属化合物を供給源とすることができる。これら他の金属イオンのうち、特に銅イオンは、近赤外領域の光(近赤外光)に対する良好な吸収特性を有している。このような銅イオンが樹脂組成物の一成分として含まれると、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステルのリン酸基が配位結合及び/又はイオン結合により銅イオンにも結合し、銅イオンはそれら成分に囲まれた状態で樹脂組成物に溶解又は分散される。そして、この銅イオンのd軌道の電子遷移によって近赤外光が選択的に吸収されるので、このような銅イオンを含む樹脂組成物は、優れた近赤外光吸収性を有する。よって、目的に応じて銅イオンを導入することにより、希土類金属イオンに特有の波長の可視光吸収特性と近赤外光吸収特性を併せ持つ樹脂組成物を得ることができる。
これら他の金属イオンの含有量としては、例えば、全金属イオン量(希土類金属イオンと他の金属イオンとの合計量)の50質量%未満、好ましくは30質量%以内とすると好適である。この場合、希土類金属イオンの全金属イオンに対する割合は50質量%以上となり、防眩性に充分に優れた樹脂組成物を得ることが可能になる。また、他の金属イオンを混合することにより、それら他の金属イオンに特徴的な波長光をも吸収できる樹脂組成物が形成される。
次に、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステルについて説明する。アルキルリン酸エステル化合物としては、下記一般式(1a)及び/又は下記一般式(1b)で表されるアルキルリン酸エステル化合物が好適であり、下記一般式(1a)で表されるリン酸ジエステル成分と、下記一般式(1b)で表されるリン酸モノエステル成分とを、それぞれ単独で又は各成分を混合して使用することができる。
上記一般式中、R1は炭素数が4〜18のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数5〜18であり、更に好ましくは炭素数6〜16であり、特に好ましくは炭素数6〜12である。炭素数が4未満又は18を超えると、リン酸エステル化合物の樹脂への溶解性及び分散性が低下して樹脂組成物の透光性が不充分となる場合がある。なお、上記一般式(1b)中、複数存在するR1は同一であっても異なっていてもよい。
上記アルキル基としては、直鎖状、分枝状、環状のアルキル基が挙げられる。これらのうち、直鎖状、分枝状のものが好ましく、例えば、2−エチルヘキシル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が好適である。また、アルケニルリン酸エステル化合物は、上記アルキル基に代えて、アルケニル基を含む不飽和結合を有する基が置換した1価の炭化水素基を有するものである。このようなアルケニル基としては、例えば、オレイル基が挙げられる。アルケニル基の炭素数は、4〜18であると好ましい。このようなアルキル基又はアルケニル基を採用することにより、リン酸エステル化合物の樹脂への溶解性及び分散性が格段に向上することから、より一層透光性に優れる樹脂組成物を得ることができる。
アルキルリン酸エステル化合物の具体例としては、下記式(2a)〜(6a)、(8a)で表されるアルキルリン酸モノエステル化合物と、下記式(2b)〜(6b)、(8b)で表されるアルキルリン酸ジエステル化合物が挙げられる。
また、アルケニルリン酸エステル化合物としては、下記式(9a)で表されるリン酸モノエステル化合物と下記式(9b)で表されるリン酸ジエステル化合物と挙げられる。
なお、上述したアルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物は、市販の化合物を使用しても良く、また、下記の(i)〜(iii)の方法により製造してもよい。
(i)無溶媒又は適宜の有機溶剤(例えばトルエン、キシレン等)中で、特定のアルコール(例えば、R1OH、以下同じ)と、五酸化リンとを反応させる方法である。特定のアルコールと五酸化リンとの反応条件は、反応温度が0〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間が1〜24時間、好ましくは4〜9時間である。この方法においては、例えば、特定のアルコール及び五酸化リンをモル比で3:1となる割合で用いることにより、リン酸モノエステル成分と、リン酸ジエステル成分との割合が略1:1の混合物が得られる。
(ii)無溶媒又は適宜の有機溶剤(例えばトルエン、キシレン等)中で、特定のアルコールとオキシハロゲン化リンとを反応させ、得られる生成物に水を添加して加水分解する方法である。オキシハロゲン化リンとしては、例えば、オキシ塩化リンが好適に用いられる。そして、特定のアルコールとオキシハロゲン化リンとの反応条件は、反応温度が0〜110℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間が1〜20時間、好ましくは2〜8時間である。また、この方法においては、例えば、特定のアルコール及びオキシハロゲン化リンをモル比で1:1となる割合で用いることにより、アルキルリン酸モノエステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物を得ることができる。
(iii)無溶媒又は適宜の有機溶剤(例えば、ヘキサン、ヘプタン等)中で、特定のアルコールと三ハロゲン化リンとを反応させることにより、ホスホン酸エステル化合物を合成し、その後、得られたホスホン酸エステル化合物を酸化する方法である。三ハロゲン化リンとしては、例えば三塩化リンが好適に用いられる。そして、特定のアルコールと三ハロゲン化リンとの反応条件は、反応温度が0〜90℃、好ましくは40〜75℃であり、反応時間が1〜10時間、好ましくは2〜5時間である。上記ホスホン酸エステル化合物を酸化する手段としては、ホスホン酸エステル化合物に例えば塩素ガス等のハロゲンを反応させることにより、ホスホロハロリデート化合物を合成し、このホスホロハロリデート化合物を加水分解する手段を利用することができる。ここで、ホスホン酸エステル化合物とハロゲンとの反応温度は0〜40℃が好ましく、特に好ましくは5〜25℃である。また、ホスホン酸エステル化合物を酸化する前に、このホスホン酸エステル化合物を蒸留して精製してもよい。この方法においては、例えば、特定のアルコール及び三ハロゲン化リンをモル比で3:1となる割合で用いることにより、アルキルリン酸ジエステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物を高い純度で得ることができる。
また、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物としては、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分とをモル比で70:30〜0:100の割合で含有することが好ましく、より好ましくは70:30〜10:90であり、更に好ましくは70:30〜30:70である。
なお、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物が複数成分を含む場合には、このような混合物は、上記R1が同一の基であるリン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分(例えば、上記一般式(5a)及び(5b)で表される化合物)とから構成されていてもよく、また、R1がそれぞれ異種の基であるリン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分(例えば、上記一般式(5a)及び(6b)で表される化合物)とから構成されていてもよい。さらに、R1がそれぞれ同一及び異種の基であるリン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分(例えば、上記一般式(5a)及び(5b)、並びに上記一般式(6a)及び(6b)で表される化合物)とで構成されていてもよい。
具体的に例示したアルキルリン酸エステル化合物の中では、上記式(5a)及び/又は(5b)で表されるアルキルリン酸エステル化合物が好ましく、上記式(5b)で表されるリン酸ジエステル成分のみからなるアルキルリン酸エステル化合物、及び上記式(5a)で表されるリン酸モノエステル成分と上記式(5b)で表されるリン酸ジエステル成分とをモル比で50:50の割合で含有するアルキルリン酸エステル化合物が特に好ましい。
また、本実施形態に係る樹脂組成物は、上述のように希土類金属イオンとアルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物とを含有するものであるが、上述したアルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物と希土類金属化合物とを反応させて得られるアルキルリン酸エステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸エステル希土類金属化合物を含有させても良い。
希土類金属化合物としては、前述した希土類金属塩を用いることができる。また、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステルと希土類金属塩との反応は、適宜の条件下で両者を接触させることにより行われる。
具体的には、(イ)アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステルと希土類金属塩とを混合して、両者を反応させる方法、(ロ)適宜の有機溶剤中においてアルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物と希土類金属塩とを反応させる方法、(ハ)アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物が有機溶剤中に含有されてなる有機溶剤層と、希土類金属塩が溶解又は分散されてなる水層とを接触させることにより、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物と希土類金属塩とを反応させる方法、等が挙げられる。なお、上記反応条件は、反応温度0〜250℃、好ましくは40〜180℃で、反応時間0.5〜30時間、好ましくは1〜10時間である。また、上記有機溶媒としては、例えば、トルエン等の芳香族化合物、メチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類が例示される。
また、希土類金属塩として酸塩を用いた場合には、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステルと希土類金属塩との反応において、希土類金属塩から陰イオンである酸成分が遊離される。このような酸成分は、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステルをポリビニルアセタール樹脂に溶解又は分散せしめて樹脂組成物とするときに、該樹脂組成物の耐湿性及び熱安定性を低下させる原因となり得るため、必要に応じて除去することが好ましい。上記(イ)又は(ロ)の方法によりアルキルリン酸エステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸エステル希土類金属化合物を製造する場合には、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物と希土類金属塩とを反応させた後、生成した酸成分((ロ)の方法においては生成された酸成分及び有機溶剤)を蒸留によって除去することができる。
さらに、上記(ハ)の方法によってアルキルリン酸エステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物を製造する場合には、酸成分を除去する好ましい方法として、水に不溶又は難溶の有機溶剤にリン酸エステル化合物が含有されてなる有機溶剤相に、アルカリを添加することによって中和した後、この有機溶剤相と希土類金属塩が溶解又は分散された水相とを接触させることより、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物と希土類金属塩とを反応させ、その後、有機溶剤相と水相とを分離する方法がある。
ここで、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。この方法によれば、銅塩から遊離される酸成分とアルカリとによって水溶性の塩が形成され、この塩が水相に移行するとともに、生成されるアルキルリン酸エステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物は有機溶剤相に移行するため、この水層と有機溶剤層とを分離することにより、酸成分が除去される。
上記(イ)〜(ハ)の方法で得られたアルキルリン酸エステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸エステル希土類金属化合物の好適な具体例としては、例えば、下記一般式(7a)で表されるリン酸モノエステル成分由来のアルキルリン酸エステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸エステル希土類金属化合物、或いは、下記一般式(7b)で表されるリン酸ジエステル成分由来のアルキルリン酸エステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸エステル希土類金属化合物が挙げられる。ここで、アルキルリン酸エステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸エステル希土類金属化合物は、単独もしくは2種類以上を組み合わせたアルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物と希土類金属塩とを反応させて得られたものであってもよい。従って、例えば、下記一般式(7b)において、希土類金属イオンMに結合した3つのリン酸残基は、互いに同一のものでも異なるものであってもよい。
(式中、R
1はそれぞれ独立に炭素数が4〜18であるアルキル基又は炭素数が4〜18であるアルケニル基を示し、Mは希土類金属イオンを示す。)
上記一般式(7a)で表されるアルキルリン酸モノエステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸モノエステル希土類金属化合物、及び、上記一般式(7b)で表されるアルキルリン酸ジエステル希土類金属化合物又はアルケニルリン酸ジエステル希土類金属化合物(以下、「リン酸エステル希土類化合物」という)におけるR1としては、上記一般式(1a)及び(1b)で表されるアルキルリン酸エステル化合物におけるR1と同一の置換基を、好適な置換基として挙げることができる。
また、リン酸エステル希土類金属化合物は、単独で又は2種以上混合して使用することができる。なお、リン酸エステル希土類金属化合物が単独成分からなる場合には、上記一般式(7b)で表されるリン酸エステル希土類金属化合物が好ましく、一方、リン酸エステル希土類金属化合物が複数成分からなる場合には、上記一般式(7a)で表されるリン酸エステル希土類金属化合物と上記一般式(7b)で表されるリン酸エステル希土類金属化合物とを50:50の割合(モル比)で含有するものが好ましい。
このようなリン酸エステル希土類金属化合物の含有割合は、樹脂組成物の用途又は使用目的によって異なるが、樹脂組成物の全質量基準で0.1〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜70質量%であり、更に好ましくは0.1〜60質量%である。このような含有割合とすることにより、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物や希土類金属イオンの沈殿を生ずることなく均一に溶解又は分散することができる。
また、希土類イオンに対するアルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物に含まれる水酸基の合計量の割合(OH基/希土類イオン)が、モル比で0.5〜8であることが好ましく、より好ましくは0.5〜6であり、更に好ましくは0.8〜4である。OH基の比率が0.5未満となると、アルキルリン酸エステル化合物又はアルケニルリン酸エステル化合物を樹脂中に分散させることが困難となり、また、特定波長に対する吸収性能や透光性が不充分となる傾向がある。一方、OH基の比率が8を超えると、希土類イオンとの配位結合及び/又はイオン結合に関与しない水酸基の割合が過大となるため、このような組成割合の組成物は、吸湿性が比較的大きくなる傾向にある。
次に、樹脂組成物の樹脂成分であるポリビニルアセタール樹脂について説明する。ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドによって一部又は大部分をアセタール化することにより得ることができる。ポリアセタール樹脂のなかでも、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルプチラール樹脂を用いることにより、得られる中間膜の透明性、耐候性、ガラスに対する接着性等が優れたものとなる。なお、ポリビニルアセタール樹脂は、必要な物性に応じて、適当な組み合わせにてブレンドされたものであってもよく、アセタール化時にアルデヒドを組み合わせてアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂であってもよい。このようなポリビニルアセタール樹脂の分子量、分子量分布及びアセタール化度は特に限定されないが、例えば、アセタール化度は、40〜85%であると好ましく、より好ましい下限値は60%であり、より好ましい上限値は75%である。
ポリビニルアセタール樹脂の製造に用いるポリビニルアルコール樹脂は、例えば、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られるものであり、鹸化度が80〜99.8モル%であるものが好ましい。ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度の好ましい下限値は200であり、上限値は3000である。粘度平均重合度が200未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下する傾向にある。一方、3000を超えると、樹脂膜の成形性が悪くなるほか、樹脂膜の剛性が大きくなり過ぎ、加工性が悪くなる傾向にある。これらの不都合をより低減する観点から、粘度平均重合度のより好ましい下限値は500であり、上限値は2000である。なお、ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度及び鹸化度は、例えば、JISK 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定することができる。
アセタール化に用いられるアルデヒドとしては、例えば、炭素数1〜10のアルデヒド等が挙げられ、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−エチルブチルアルテヒド、n−バレルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等を挙げることができ、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、炭素数が4のブチルアルデヒドが好ましい。このようにして得られるポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、500〜3,000であることが好ましく、より好ましい平均重合度は1,000〜2,500である。
好適なポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコールをホルムアルデヒドで一部又は大部分をアセタール化したポリビニルホルマール樹脂(ビニロン)、ポリビニルアルコールを炭素数が4であるn−ブチルアルデヒドで一部又は大部分をアセタール化したポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。さらに、樹脂組成物を後述する合わせガラス用中間膜を用いる場合、これらの樹脂の中でポリビニルブチラール樹脂が、ガラス、プラスチック等の透光性材料に対して高い接着性を有することから、好適に使用される。なお、ポリビニルアセタール樹脂の含有割合は、上述した希土類金属イオン、アルキルリン酸エステル化合物及び後述する任意成分の合計質量を樹脂組成物の全質量からを除いた残部である。
樹脂組成物には任意成分として、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系又はサリチル酸系の紫外線吸収剤、その他の抗酸化剤、安定剤等を更に含有させることができる。さらに、必要に応じて、押出機中での熱による変質を防止するための酸化防止剤、調色のための染料及び顔料、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤等の添加剤等が添加されていても良い。
紫外線吸収剤としては、ベンゾエート系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートが挙げられ、サリシレート系化合物としては、フェニルサリシレートやp−t−ブチルフェニルサリシレートが挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−5−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシエチルベンゾフェノン、4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタリミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメトキシベンゾイル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートやオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが挙げられ、シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドや2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドが挙げられる。また、トリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールが挙げられる。
また、樹脂組成物に添加し得る安定剤としては、光安定剤が挙げられる。特に、上述した紫外光吸収剤とこの光安定剤を併用すると、光に対する安定性が極めて良好となる傾向にある。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や、Ni系化合物を適用可能である。
より具体的には、HALSとしては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケード、1−[2−[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]、ジメチルサシネートポリマ−with−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
また、Ni系化合物の光安定剤としては、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル(II)、ニッケルジブチルジチオカーボネート、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−ブチルアミン−ニッケル(II)等が挙げられる。
またさらに、樹脂組成物には、種々の可塑剤を含有させることもできる。中間膜用の可塑剤として一椴的に用いられている公知の可塑剤が挙げられ、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機系可塑剤;有機リン酸系、有機亜リン酸系等のリン酸系可塑剤等が好適に用いられる。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよく、樹脂の種類に応じて相溶性等を考慮して使い分けることが好ましい。
一塩基性有機酸エステルとしては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリプロピレングリコール等のグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)又はデシル酸等の一塩基性有機酸との反応によって得られるグリコール系エステル等が挙げられる。より具体的には、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2エチルブチレート(3GH)、ジヘキシルアジペート(DHA)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジヘプタノエート(3G7)等が例示できる。なかでも、3GO、3GH又は3G7が好ましい。
多塩基性有機酸エステルとしては特に限定されず、例えば、アジピン酸、セバシン酸又はアゼライン酸等の多塩基性有機酸と、炭素数4〜8の直鎖状又は分枝状アルコールとの反応によって得られるエステル等が挙げられ、なかでも、ジブチルセバシン酸エステル、ジオクチルアゼライン酸エステル、ジブチルカルビトールアジピン酸エステル等が好適に用いられる。
その他、有機酸系エステルの可塑剤として、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸系可塑剤、ジブチルセバケート、ブチルリシノレート、メチルアセチルリシノレート、ブチルサクシネート等の脂肪酸系可塑剤、ブチルフタリルブチルグリコレート、ポリエチレングリコール等のグリコール系可塑剤等が挙げられる。
有機リン酸系可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフェート、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル等が挙げられる。
樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂材料100質量部に対して、1〜120質量部とすることが好ましく、1〜100質量部とすることがより好ましく、2〜80質量部とすることが更に好ましい。可塑剤の含有量が、樹脂材料100質量部に対して1質量部未満であると、希土類金属イオンやリン含有化合物の溶解性が低下して透光性が不十分となる場合がある。一方、100質量部を超えると基材である樹脂材料が柔軟になり過ぎ、例えば合わせガラスにおける中間膜としての使用が困難となる傾向にある。
また、樹脂組成物には、必要に応じて、接着力調整剤が含有されていてもよい。また、これらの接着力調整剤は、当該樹脂組成物からなる中間膜の表面に塗布されていてもよい。接着力調整剤としては、例えば、有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、変成シリコーンオイル等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、オクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸等が挙げられる。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のなかでも、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が好ましく、より好ましくは、炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩及びマグネシウム塩である。
炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩及びマグネシウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルへキサン酸マグネシウム、2−エチルへキサン酸カリウム等が好適である。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が供用されてもよい。
有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の配合量の好ましい下限値は、樹脂100重量部に対して0.001重量部であり、上限値は0.5重量部である。この配合量が0.001重量部未満であると、高湿度雰囲気下で周辺部の接着力が低下することがある。0.5重量部を超えると、膜の透明性が低下する場合がある。これらの不都合を防止する観点から、有機酸又は無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の配合量のより好ましい下限値は0.01重量部であり、上限値は0.2重量部である。
また、変成シリコーンオイルとしては特に限定されず、例えば、エポキシ変成シリコーンオイル、エーテル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、これらの変性シリコーンオイルは、一般にポリシロキサンに、変性させるべき化合物を反応させることによって得ることができる。
変性シリコーンオイルの分子量の好ましい下限値は800であり、上限値は5000である。この分子量が800未満であると、表面への局在化が不充分なことがある。一方、5000を超えると、樹脂との相溶性が低下し、膜表面にブリードアウトしてガラスとの接着力が低下することがある。これらを防止する観点から、変性シリコーンオイルの分子量のより好ましい下限値は1500であり、より好ましい上限値は4000である。
変性シリコーンオイルを添加する場合、その配合量の好ましい下限値は、樹脂100重量部に対して0.01重量部であり、上限値は0.2重量部である。この配合量が0.01重量部未満であると、吸湿による白化を防止する効果が不充分となることがある。また、0.2重量部を超えると、樹脂との柏溶性が低下し、変性シリコーンオイルが膜表面にブリードアウトして樹脂とガラスとの接着力が低下する場合がある。これらの観点から、変性シリコーンオイルの分子量のより好ましい下限値は0.03重量部であり、より好ましい上限値は0.1重量部である。
(光学部材)
光学部材は、上述した樹脂組成物を用いてなるものであり、以下の3種類の形態が好適である。
第1の形態:上述した樹脂組成物で形成されるもの。
第2の形態:ガラス又はプラスチック等の透光性材料からなる透明基板に、上述した樹脂組成物が貼合されたもの。
第3の形態:ガラス又はプラスチック等の透光性材料からなる透明基板に、上述した樹脂組成物よりなる層が形成されたもの。
第1の形態の光学部材としては、例えば、板状(円状を含む)のレンズ、シート、フィルムが挙げられる。ここで、シートとは、上記樹脂組成物を溶融させて、例えば押出成形により250μm以上の厚さを有する薄板状に成形したものをいう。また、フィルムとは、上記樹脂組成物を溶融させて、例えば延伸成形により厚さ5〜250μmの薄い膜状にしたものをいう。また、シート又はフィルムを製造する手段としては、溶融押出成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、溶液キャスト法等が好適に使用される。さらに、板状のレンズは、射出成形法、溶融押出成形法等により成形可能である。
第2の形態の光学部材としては、例えば、上述したシート又はフィルムを合わせガラス用中間膜として使用し、この合わせガラス用中間膜と、ガラス、プラスチック等からなる透光性材料とを貼り合せたものが挙げられる。シート又はフィルムからなる合わせガラス用中間膜と、透光性材料とを接着させる手段としては、プレス法、マルチロール法、減圧法などの加圧又は減圧により接着する手段、オートクレーブ等を用いて加熱することにより接着させる手段又はこれらの組み合わせによる手段を用いることができる。
なお、合わせガラス用中間膜は、その厚みが0.001〜10mm、特に0.01〜5mmであることが好ましい。合わせガラス用中間膜の厚みが0.001mm未満の場合には、特定の波長光に対する吸収性が高い中間膜を得ることが困難となって、防眩性が不充分なものとなることがある。一方、合わせガラス用中間膜の厚みが10mmを超える場合には、可視光線の透過率が高い中間膜を得ることが困難となって、透光性が低いものとなることがある。
第3の形態の光学部材としては、例えば、コーティングが挙げられる。ここで、コーティングとは、上記樹脂組成物を適宜の溶剤に溶解又は分散させた溶液又は分散液を、必要な面に塗布し溶剤を蒸発させて、その面の一部又は全部に形成される薄膜、被覆物又は薄層をいう。また、薄膜等が形成された面の平坦性等を高める目的で、例えば、レベリング剤、消泡剤としての各種の界面活性剤等の溶解補助剤を溶液又は分散液に添加してもよい。
かかる第1〜3の形態の光学部材は、希土類金属イオンを含有することに起因して特定の波長光を吸収可能になることから優れた防眩性を有するようになり、また、樹脂組成物中における希土類金属イオンの溶解性及び分散性が良好であることから透光性にも優れるようになる。さらに、優れた耐光性が得られるようになるほか、加熱や長期保存による透光性の低下も大幅に少ないものとなる。また、樹脂成分としてポリビニルアセタール樹脂、特にポリビニルブチラール樹脂を含有すると、透光性材料との接着性に優れるようになる。さらにまた、ポリビニルアセタール樹脂は熱可塑性を有することから、成形加工を簡易に行うことができる。
また、合わせガラスの製造方法として、接着性を有する熱可塑性樹脂からなる中間膜を2枚のガラス板の間に挿入し、得られた積層体を予備圧着して各層間に残存する空気を排除した後、本圧着して積層体を完全に密着させる方法が採られることがある。この場合に用いられる中間膜は、保存時に中間膜同士が合着し塊状となる、いわゆるブロッキング現象が生じないこと、ガラスと中間膜とを重ね合わせる際の作業性が良好であること、および予備圧着工程における脱気性が良好であることが要求される。予備圧着時の脱気性は合わせガラスの品質を左右し、脱気が不十分であると得られた合わせガラスの透明性が悪くなったり、促進試験を行うと気泡が生じたりすることがある。
上記のような中間膜の総合性能は、素材である熱可塑性樹脂の種類や粘弾性等の物性によって左右されるが、これらの物性を固定して考えると、中間膜の表面形状がその総合性能を決定する大きな要因となる。特に、エンボスと呼ばれる多数の微細な凹凸を中間膜の表面に形成すると効果が得られ、エンボスが表面に形成された中間膜が従来より使用されている。そのエンボスの形態としては、例えば、多数の凸部とこれらの凸部に対する多数の凹部とからなる各種凸凹模様、多数の凸条とこれらの凸条に対する多数の凹溝とからなる各種の凸凹模様、粗さ、配置、大きさ等の種々の形状因子に関し多様な値を有するエンボス形状がある。このようなエンボスとしては、例えば、特開平6−198809号公報に記載されているような凸部の大きさを変え、その大きさ、配置を規定したもの、特開平9−40444号公報に記載されているような表面の粗さを20〜50μmとしたもの、特開平9−295839号公報に記載されているような凸条が交差するように配置されたもの、特開2003−48762号公報に記載されているような主凸部の上に更に小さな凸部が形成されているもの、等が挙げられる。また、このような、エンボス形状を施す方法としては、特表2003−528749号公報に、樹脂成形時に発生するメルトフラクチャーを利用する方法が記載されており、特表2002−505211号公報、特表平9−502755号公報に、架橋PVB粒子や造核剤を用いる方法が記載されている。
さらに、各種用途において、合わせガラスに対して遮音性が要求される場合がある。一般に遮音性能は、周波数の変化に応じた透過損失量として示される。この透過損失量は、JIS A4708では、500Hz以上において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で規定されている。しかし、ガラス板の遮音性能は、2000Hzを中心とする周波数領域ではコインシデンス効果により著しく低下する。ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射した時、ガラス板の剛性と慣性によって、ガラス板状を横波が伝播してこの横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。一般的な合わせガラスでは、2000Hzを中心とする周波数領域において、かかるコインシデンス効果による遮音性能の低下が避けられず、この点の改善が求められることがある。
一方、人間の聴覚は、等ラウドネス曲線から、1000〜6000Hzの範囲では他の周波数領域に比べ非常に良い感度を示すことが知られている。従って、コインシデンス効果による上記遮音性能の落ち込みを解消することは、防音性能を高める上で重要であることがわかる。従って、合わせガラスの遮音性能を高めるには、上記コインシデンス効果による遮音性能の低下を緩和し、コインシデンス効果によって生じる透過損失の極小部(以下、この極小部の透過損失量をTL値という。)の低下を防ぐ必要がある。
合わせガラスに遮音性を付与する方法としては、合わせガラスの質量を増大させる方法、ガラスを複合化する方法、ガラス面積を細分化する方法、ガラス板支持手段を改善する方法などがある。
また、遮音性能が中間膜の動的粘弾性により左右され、特に貯蔵弾性率と損失弾性率との比である損失正接に影響されることが知られている。このため、この値を制御すれば合わせガラスの遮音性能を高めることができる。制御手段としては、例えば、特定の重合度を有する樹脂膜を用いる方法、特開平4−2317443号公報に記載されているような、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール部分の構造を規定する方法、特開2001−220183号公報に記載されているような、樹脂中の可塑剤量を規定する方法、等が挙げられる。さらに、異なる2種以上の樹脂を組み合わせることにより広い温度範囲にわたって合わせガラスの遮音性能を高めることもできる。例えば、特開2001−206742号公報に記載されているような複数種の樹脂をブレンドする方法、特開2001−206741号公報、特開2001−226152号公報に記載されているような複数種の樹脂を積層する方法、特開2001−192243号公報に記載されているような中間膜中の可塑剤量に偏向を持たせる方法、等が挙げられる。
更に合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、遮熱機能を有する金属や金属酸化物微粒子を中間膜中に含有させる方法や、これらの材料を含む層を合わせガラスの積層構造の任意の位置に挿入する方法等が挙げられる。具体的には、例えば、特開2001−206743号公報、特開2001−261383号公報、特開2001−302289号公報等に記載されている方法が例示できる。酸化物微粒子としては錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等が挙げられる。また、中間膜の透光性を上げるためには、酸化物微粒子の粒径を規定する方法(特許271589号公報、特開2002−293583号公報)や、分散性を高める方法等を用いてもよい。微粒子の分散性を上げるためには、機械的に分散させる、分散剤を用いる等の既知の微粒子分散技術を用いることが出来る。また、金属や金属酸化物微粒子だけではなく、特開平7−157344号公報、特許第319271号公報に記載されているような有機系の遮熱機能を有する染料・顔料を用いる方法も挙げられる。有機系の染料・顔料としては、フタロシアニン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、シアニン系、ナフタロシアニン系、ピロール系、イモニウム系、ジチオール系、メルカプトナフトール系等が挙げられる。
合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、遮熱機能を有するガラスを用いて合わせガラスを作成する方法が挙げられる。例えば、特開2001−151539号公報に記載されているようなFe等の遷移金属を含有するガラス(例えば、グリーンガラス等)を使用する方法や、特開2001−261384号公報、特開2001−226148号公報に記載されているような金属、金属酸化物を積層したガラス板を使用する方法等が挙げられる。
また、中間膜としての性能を高めるために、以下に例示するような方法を用いることも出来る。耐貫通性を向上させる方法としては、例えば、特公平6−25005号公報に記載されるように樹脂基材としてα-オレフィン変性ポリビニルアセタールを使用する方法、特開平10−25390号公報に記載されるように樹脂の重合度、可塑剤添加量を規定する方法、特開平11−147736号公報に記載されるように中間膜の厚み偏差を低減させる方法、等が挙げられる。
中間膜とガラスとの接着性、密着性を改良する方法としては、例えば、特許2624779号公報に記載されるように樹脂を放射線グラフト不飽和化する方法、特開平11−322378号公報に記載されるようにシリコーンオイルを添加する方法、特開2000−1238586号公報に記載されるようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を添加する方法、特開2002−505210号公報に記載されるように表面エネルギー改変剤を添加する方法、等が挙げられる。
耐久性試験時における白化防止方法としては、例えば、特開2000−72495号公報に記載されるように分子中に疎水性の大きな炭化水素基を有するシリコーンオイルを添加する方法、特開2000−128586号公報に記載されるようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属添加量を規定する方法、特開2001−139352号公報に記載されるようにオキシアルキレングリコール含有量を規定する方法、特開2001−163640号公報に記載されるように規定された特性をもつ樹脂を使用する方法、特開平6−211548号公報に記載されるようにシランカップリング材シールする方法、等が挙げられる。
紫外線吸収性を向上させる方法としては、特公平4−29697号公報、特開平10−194796号公報、特開2000−128587号公報に記載されるように紫外線吸収剤を添加する方法が挙げられる。帯電防止方法としては、特開2001−240425号公報に記載されるようにカルボン酸アルカリ金属塩を添加する方法、特開2001−261384号公報に記載されるようにオキシアルキレン化合物を添加する方法、等が挙げられる。調色方法としては、特開平9−183638号公報に記載されるように染料を添加する方法が挙げられる。
また、透光性に優れる光学部材とするためには、光学部材のヘーズが30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。かかるヘーズが30%を超えると、可視光線の透過率が不充分となって透光性が低くなる傾向がある。
さらに、合わせガラスは、上述したような近赤外光領域の光線を吸収する特性を有する中間膜のみならず、更なる近赤外光遮断特性の向上を目的として、近赤外光を反射する特性を有する層(赤外反射層)を更に備えるものであってもよい。このような赤外反射層は、合わせガラスの任意の位置に導入することができる。
赤外反射層としては、金属や金属酸化物から構成される透明な層が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、ケイ素、クロム、チタン、インジウム、アンチモン等の金属単体、合金、混合物又は酸化物が例示できる。このような赤外反射層は、例えば、当該層を形成すべき面上に、例えば、金属や金属酸化物を蒸着することによって形成することが可能である。また、赤外反射層としては、特表平09−506837、特表2000−506082、特表2000−506084、特表2004−525403、特表2003−515754、特開2002−231038、特表2004−503402等に示されるような、光の干渉を利用して特定波長を反射する高分子多層フィルムを適用してもよい。
ここで、上述したように赤外反射層を形成した場合は、この赤外反射層とこれに隣接する層との接着性が低下してしまうことがある。例えば、透光性基板と中間膜との間に赤外反射層を導入した場合には、赤外反射層と中間膜との接着性が低下し、合わせガラスが破損した場合に、透光性基板が剥離・飛散し易くなる傾向にある。このため、安全性の点で問題が生じることになる。
そこで、このような接着性の低下を避けるために、赤外反射層と、これと隣接する層との接着性を調整する手段を採ることができる。具体的には、透光性基板と中間膜との間に赤外反射層を形成する場合には、これらの間に、中間膜よりも高いアセタール度を有するポリビニルアセタールからなる層(特開平7−187726号公報、特開平8−337446号公報)を設ける方法等を採用することができる。その他、赤外反射層と、これと隣接する層との間に、所定の割合のアセトキシ基を有するPVBからなる層(特開平8−337445号公報)を設ける方法や、所定のシリコーンオイルからなる層(特開平7−314609号広報)を設ける方法等も挙げられる。
このように、合わせガラスにおいては、近赤外光吸収性を有する中間膜に加えて、近赤外光反射性を有する反射層を更に設けることで、両層の効果により、合わせガラスに対して極めて優れた近赤外光遮断特性を付与することができる。また、上述したような、赤外反射層と中間膜(赤外吸収層)との接着性を改善する方法を採用すれば、近赤外光遮断特性に加え、より優れた強度を有する合わせガラスを得ることも可能となる。
図1は、本実施形態による光学部材の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す光学部材は窓材10である。窓材10は、ガラスやプラスチック等の透光性材料からなる板状基材1上に、上述した樹脂組成物からなる層(以下、「防眩組成物層」という)2が設けられたものであり、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。このような構成の窓材10は、板状基材1上の主面の一方に樹脂組成物を塗布(例えば、コーティング)して形成することができる。また、板状基材1上の主面の一方に上述したシート、フィルムを貼り合せて形成することも可能である。
また、図1に示す窓材10は、板状基材1の主面の一方に防眩組成物層2が設けられているが、更に板状基材1の主面の他方にも防眩組成物層2が設けられていてもよい。またさらに、窓材10において、防眩組成物層2上に、更に防眩組成物層2が積層されていてもよい。このような構成の窓材は、上述の窓材10と同様に、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。
さらに、板状基材1上に防眩組成物層2、及び板状基材1を順次積層させて一体化した窓材、板状基材1上に防眩組成物層2、防眩組成物層2、及び板状基材1を順次積層させて一体化した窓材、板状部材1上に防眩組成物層2、板状部材1、及び防眩組成物層2を順次積層させて一体化した窓材等が挙げられ、これらの窓材は合わせガラス窓に好適な態様である。また、このような態様の窓材においては、防眩組成物層2が2枚の板状基材1の中間膜(例えば、合わせガラス中間膜)として機能している。
また、上述した防眩組成物層2には、リン酸エステル化合物と金属イオンとを含む赤外線吸収組成物を含有していても良い。このような構成を有する窓材とすることにより、特定波長に対する吸収特性に加え、赤外線を吸収する機能をも有することができる。
さらに、板状部材1上に防眩組成物層2、及び赤外線吸収組成物層を順次積層させた窓材、板状部材1上に赤外線吸収組成物層、及び防眩組成物層2を順次積層させた窓材、板状部材1上に防眩組成物層2、赤外線吸収組成物層、及び防眩組成物層2を順次積層させた窓材としてもよい。
このような赤外線吸収組成物層を備える窓材10は、その近赤外光吸収性から熱線吸収材としての機能を発揮するものであり、熱線の遮断が必要とされる種々の部材に適用できる。その用途としては、例えば、太陽光等の自然光その他の外光を取り入れる窓材及び屋根材(住宅、店舗その他の建築物又は建造物、自動車その他の移動運搬機器やそれらの収容場所、通行路等に用いられる透光性部材)、屋内外の日焼けを目的とする部材一般等が挙げられる。
また、太陽光等の外光には、人体(皮膚)に対して有害な影響を及ぼし、且つ、塗料や塗装或いはゴム製品やプラスチック製品等の劣化を引き起こす紫外線が含まれているが、このような窓材10は熱線吸収のみならず、入射光の波長成分のうち紫外光を遮断する性能を有しているために、建材等に好適に用いることができる。しかも、この窓材10は、可視光に対して高い透過特性を有している。
板状基材1を構成する材料としては、可視光透過性を有する透光性材料であれば、特に限定されるものではなく、窓材の用途に応じて適宜選択可能である。硬度、耐熱性、耐薬品性、耐久性等の観点から、上述のようにガラス又はプラスチックが好適に使用される。ガラスとしては、無機ガラス又は有機ガラス等が挙げられる。プラスチックとしては、例えばポリカーボネイト、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂等が例示できる。なお、板状基材1が複数存在する場合には、それぞれ同じ種類の材料で構成されていてもよく、或いは互いに異なる材料で構成されていてもよい。
また、防眩組成物層2として上述した樹脂組成物を使用する場合には、ヘンシェルミキサー等の混合機により混合する手段、ロール混練機、或いは混練押出機等により混練混合する手段を用いることができる。また、各成分を適宜の有機溶剤に分散させ、この分散液から有機溶剤を除去する手段を用いることができる。
なお、上記実施形態においては、光学部材が窓材である場合について詳細に説明した。この窓材以外にも、上述した樹脂組成物が防眩性及び透光性に加えて成形加工性に優れることから、防眩性眼鏡レンズ(サングラス)、防眩性フィルター、画面カバー、防眩性ディスプレイフィルター、色純度補正フィルター、色調補正フィルター、照明器具の輝度調節フィルター等の光学フィルター、光通信機能デバイス、ファラデー素子、光増幅素子、波長変換素子等を構成するものとして極めて有用である。また、これらを備えて成る機器としては、カラーディスプレイ(カラー画像表示装置)、カラー撮像カメラ(カラー画像撮像装置)、照明灯(照明器具)、レーザ、通信用光増幅器、通信用光アイソレーター、光スイッチ等を例示することができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(希土類金属イオンとアルキルリン酸エステルとの組成物の調製)
(調製例1)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合がモル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)6.95gと、をトルエン10gに加えたところ、透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してネオジムイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物12gを得た。
(調製例2)
酢酸プラセオジム二水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)13.54gとをトルエン10gに加えたところ、透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してプラセオジムイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物19gを得た。
(調製例3)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、2−エチルヘキシルリン酸ジエステル化合物(東京化成製、リン酸ジエステル成分100%)13.3gとをトルエン10gに加えたところ、透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してネオジムイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物19gを得た。
(調製例4)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で50:50のラウリルリン酸エステル化合物(城北化学製)14.46gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してネオジムイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物20gを得た。
(調製例5)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で50:50のオレイルリン酸エステル化合物(東京化成製)11.83gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してネオジムイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物14.69gを得た。
(調製例6)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で50:50のステアリルリン酸エステル化合物(城北化学製)11.90gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してネオジムイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物15.31gを得た。
(調製例7)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で50:50のn−ブチルリン酸エステル化合物(東京化成製)4.58gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してネオジムイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物7.28gを得た。
(比較調製例1)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で61.6:33.6のメトキシプロピルリン酸エステル化合物(城北化学製)4.77gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してネオジムイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物10gを得た。
(比較調製例2)
酢酸銅・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)8.9gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して銅イオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物10.8gを得た。
(比較調製例3)
酢酸鉄・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)2.45gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して鉄イオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物6.4gを得た。
(比較調製例4)
酢酸ニッケル・一水和物5gと、リン酸モノエステル成分とリン酸ジエステル成分との割合が、モル比で50:50の2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)3.5gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去してニッケルイオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物7.2gを得た。
(比較調製例5)
酢酸銅・一水和物5gと、リン酸ジエステル成分のみを含む2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(東京化成製)16.6gと、をトルエン10gに加えたところ、半透明な溶液が得られた。この溶液を用いて脱酢酸還流を行った後、トルエンを留去して銅イオンとリン酸エステル化合物とを含む組成物21.0gを得た。
(実施例1)
(樹脂組成物の合成)
調製例1で得られた組成物1gを可塑剤(3GO(トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサネート)、アクロス社製)2gへ溶解させ、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBH3、積水化学(株)製)7.0gと共に85℃で混合して樹脂組成物を得た。
(シート及びこれを用いた合わせガラスの作製)
次いで、得られた樹脂組成物を、85℃に調製されたプレス機(WF−50、神藤金属工業製)により数回プレスした後、120℃に調整されたプレス機で数回プレスを行って混錬成形し、厚さ1.0mmの均一な面を有するシートを作製した。そして、希土類金属イオン及びリン酸エステル化合物のポリビニルブチラール樹脂への溶解性を試験するために、得られたシートの外観を目視観察して以下の基準で評価を行った。評価結果を表1に示す。
評価基準;
○:全く曇りが見られず、透光性が維持されている。
×:透光性が維持されていない。
次いで、上述のようにして得られたシートをスライドガラス(76mm×26mm×1.1mm)2枚の間に挟み、得られた積層体をオートクレーブにより温度130℃、圧力1.2MPaで30分保持しながら真空プレスを行い、合わせガラスを作製した。
(実施例2)
調製例2で得られた組成物1gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例3)
調製例1で得られた組成物0.5g及び調製例2で得られた組成物0.5gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法によりシートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例4)
調製例1で得られた組成物2gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例5)
調製例1で得られた組成物5gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例6)
調製例1で得られた組成物10gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例7)
調製例3で得られた組成物1gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例8)
調製例4で得られた組成物1gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例9)
実施例1で得られたシートをグリーンガラス(76mm×26mm×2mm)の間に挟んだこと以外は、実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。
(実施例10)
調整例1で得られた組成物1g、可塑剤(3GO)2g、錫ドープ酸化インジウム(ITO、平均粒子径80nm以下)0.023gを溶解させた状態で、ポリビニルブチラール樹脂7.0gに加え、85℃で混合して樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法によりシートを得、当該シートの外観を目視観察した。次いで、実施例9と同様のグリーガラスを用い、このグリーンガラスの間にITOを含有させたシートを挟んで実施例1と同様の方法により合わせガラスを得た。
(実施例11)
調製例5で得られた組成物0.1gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例12)
調製例6で得られた組成物0.1gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(実施例13)
調整例7で得られた組成物0.1gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(比較例1)
酢酸ネオジム・一水和物5gと、可塑剤(3GO(トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサネート)、アクロス社製)2gと、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBH3、積水化学(株)製)7.0gとを85℃で混合して樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(比較例2)
比較調製例1で得られた組成物1gを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得、当該シートの外観を目視観察した後、合わせガラスを得た。
(比較例3)
比較調製例2で得られた組成物1gを、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBH3、積水化学(株)製)9.0gと共に85℃で混合して樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得た後、合わせガラスを得た。
(比較例4)
比較調製例3で得られた組成物1gを、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBL1、積水化学(株)製)9.0gと共に85℃で混合して樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得た後、合わせガラスを得た。
(比較例5)
比較調製例4で得られた組成物1gを、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBL1、積水化学(株)製)9.0gと共に85℃で混合して樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得た後、合わせガラスを得た。
(比較例6)
比較調製例5で得られた組成物1gを、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBH3、積水化学(株)製)9.0gと共に85℃で混合して樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを得た後、合わせガラスを得た。
(ヘーズ試験)
実施例1〜13及び比較例1〜2の樹脂組成物を用いて作製した合わせガラスについて、JIS K0101に準拠して23℃におけるヘーズを濁度計(製品名NDH−1001DP、日本電色工業製)を用いて測定した。測定結果を表1に示す。また、希土類金属イオンと2−エチルヘキシルリン酸エステル化合物(リン酸モノエステル成分:リン酸ジエステル成分(モル比)=50:50)とを含む組成物の含有量とヘーズとの関係を図2に示す。
(分光透過率測定)
実施例1〜13及び比較例1〜2で得られた合わせガラスについて、分光光度計(U−4000、(株)日立製作所製)を用いて、分光測定を行った。実施例1〜13及び比較例1〜2で得られた合わせガラスの300〜800nmにおける分光透過率を表1に示す。また、実施例1〜3及び比較例1の合わせガラスの分光スペクトルを図3に示し、実施例4〜6の合わせガラスの分光スペクトルを図4に示し、実施例7〜8の合わせガラスの分光スペクトルを図5に示す。なお、図3〜5において、実施例1〜8の合わせガラスの分光スペクトルをそれぞれE1〜8とし、比較例1の合わせガラスの分光スペクトルをC1として表示する。さらに、実施例9で得られた合わせガラスの300〜2300nmにおける分光スペクトルを図6に示し、実施例10で得られた合わせガラスの300〜2300nmにおける分光スペクトルを図7に示す。
(耐光性試験)
実施例1、2、11及び12、並びに比較例3〜5の樹脂組成物を用いて作製した合わせガラスについて、耐光性試験を行った。すなわち、まず、製造直後の各合わせガラスについて、分光光度計(U−4000、(株)日立製作所製)を用いて、分光測定を行い、JIS R3106に準拠する分光透過率(T0(%))を測定した。次いで、これらの合わせガラスに対し、キセノンウェザーメーター(アトラスC135、東洋精機製作所社製;光源:キセノンランプ、自動照射強度:0.78W/m2、ブラックパネル温度:63℃)を用いて、100時間紫外線照射を行った。それから、紫外線照射後の各合わせガラスについて、上記と同様にして可視光における分光透過率(T1(%))を測定した。
そして、紫外線照射前後における合わせガラスの透過率の変化(ΔT(%))を算出し、これに基づいて耐光性を評価した。なお、ΔTの値が小さいほど合わせガラスの透光性変化が小さいことから、耐光性が高いことを示している。得られた結果をまとめて表2に示した。
(耐熱性試験)
実施例1、2、7、11及び12、並びに比較例6の樹脂組成物を用いて作製した合わせガラスについて、耐熱性試験を行った。すなわち、まず、製造直後の各合わせガラスについて、濁り度計(NDH−1001DP、日本電色工業社製)を用いてヘーズ(H0(%))の評価を行った(JISK 7136に準拠する方法)。次いで、これらの合わせガラスを、80℃で30秒時間加熱した。それから、加熱後の各合わせガラスについて、上記と同様にしてヘーズ(H1(%))を測定した。
そして、加熱前後における合わせガラスのヘーズの変化(ΔH(%))を算出し、これに基づいて耐熱性を評価した。なお、ΔHの値が小さいほど、加熱によるヘーズの変化が小さいことから、耐熱性が高いことを示している。得られた結果をまとめて表3に示す。
(長期保存安定性試験)
実施例1及び2、並びに比較例3の樹脂組成物を用いて作製した合わせガラスについて、長期保存安定性試験を行った。すなわち、すなわち、まず、製造直後の各合わせガラスについて、濁り度計(NDH−1001DP、日本電色工業社製)を用いてヘーズ(H0(%))の評価を行った(JISK 7136に準拠する方法)。次いで、これらの合わせガラスを、大気中で40日間保存した。それから、各合わせガラスについて、上記と同様にしてヘーズ(H1(%))を測定した。
そして、長期保存前後における合わせガラスのヘーズの変化(ΔH(%))を算出し、これに基づいて長期保存安定性を評価した。なお、ΔHの値が小さいほど、溶媒の影響によるヘーズの変化が小さいことから、安定性が高いことを示している。得られた結果をまとめて表4に示す。