JP4777068B2 - 合わせガラス用赤外線吸収性組成物および合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物 - Google Patents
合わせガラス用赤外線吸収性組成物および合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物 Download PDFInfo
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Description
【0001】
本発明は、合わせガラスにおける赤外線吸収層の形成に用いられる、2価の銅イオンの有する赤外線吸収特性を利用した赤外線吸収性組成物および赤外線吸収性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋などの建築物における採光窓のための窓材、自動車、航空機、船舶などの乗物のための窓材、あるいは温室構築用の透光性材料などにおいては、赤外線が透過することによる内部または室内の温度上昇を抑制するために、それ自体が、抑制された赤外線透過性を有することが要請される場合がある。
例えば、自動車の窓材として赤外線透過性の低いものを用いれば、太陽光が直射される場合にも車内が高温となることが防止され、家屋の窓材として赤外線透過性の低いものを用いれば、高い冷房効果が得られる。
【0003】
このような目的を達成するものとして、2価の銅イオンが近赤外領域の波長の光を高い効率で吸収する特性を利用して、透光性樹脂材料中に2価のイオン性銅化合物を含有させてなる赤外線吸収性樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−211220号公報
【0005】
しかしながら、透光性樹脂中にイオン性銅化合物を含有させてなる赤外線吸収性樹脂層を有する窓材についてその耐光性を調べたところ、当該窓材においては、長時間にわたって紫外線が照射されると、当該赤外線吸収性樹脂層に多数の微小な黒い斑点が生じた状態となる黒化現象が生ずることが判明した。
このような黒化現象が生じた窓材では、その可視光線透過率が低下し、そのために当該窓材を通しての視認性が低下し、自動車の窓材の場合には事故の原因ともなる。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、2価のイオン性銅化合物よりなる赤外線吸収剤を含有してなり、紫外線によって黒化現象を生ずることが防止または抑制され、長期間にわたって優れた赤外線吸収特性が安定に維持される合わせガラス用赤外線吸収性組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、2価のイオン性銅化合物よりなる赤外線吸収剤を含有してなり、紫外線によって黒化現象を生ずることが防止または抑制され、長期間にわたって優れた可視光線透過性および赤外線吸収特性が安定に維持される合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の合わせガラス用赤外線吸収性組成物は、2価のイオン性銅化合物よりなる赤外線吸収剤と、この赤外線吸収剤による黒化現象を防止する金属塩化合物よりなる黒化防止剤とを含有してなり、
赤外線吸収剤を構成する2価のイオン性銅化合物が、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスホン酸エステル化合物およびホスフィン酸化合物から選ばれたリン化合物によるリン含有銅化合物であり、
黒化防止剤を構成する金属塩化合物が、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウムまたはマンガンによる有機酸または無機酸の金属塩化合物であり、
黒化防止剤の割合が赤外線吸収剤における2価の銅イオンに対して0.01〜50質量%であり、
合わせガラスにおける赤外線吸収層の形成に用いられることを特徴とする。
【0008】
上記の合わせガラス用赤外線吸収性組成物においては、リン化合物は、アルキルリン酸エステルであることが好ましい。
【0009】
上記の合わせガラス用赤外線吸収性組成物においては、アルキルリン酸エステルは、アルキル基の炭素数が4〜18の化合物であることが好ましい。
【0010】
本発明の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物は、樹脂成分中に、2価のイオン性銅化合物よりなる赤外線吸収剤と、この赤外線吸収剤による黒化現象を防止する金属塩化合物よりなる黒化防止剤とが含有されてなり、
赤外線吸収剤を構成する2価のイオン性銅化合物が、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスホン酸エステル化合物およびホスフィン酸化合物から選ばれたリン化合物によるリン含有銅化合物であり、
黒化防止剤を構成する金属塩化合物が、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウムまたはマンガンによる有機酸または無機酸の金属塩化合物であり、
赤外線吸収剤の割合が樹脂成分100質量部に対して0.1〜45質量部であり、黒化防止剤の割合が赤外線吸収剤における2価の銅イオンに対して0.01〜50質量%であり、
合わせガラスにおける赤外線吸収層の形成に用いられることことを特徴とする。
【0011】
上記の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物においては、樹脂成分がアセタール構造を有する樹脂を含有することが好ましい。
【0012】
上記の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物においては、特に樹脂成分がポリビニルアセタール樹脂を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物においては、リン化合物は、アルキルリン酸エステルであることが好ましい。
【0014】
また、合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物においては、アルキルリン酸エステルは、アルキル基の炭素数が4〜18の化合物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2価の銅イオンによる優れた赤外線吸収特性が発揮されると共に、金属塩化合物よりなる黒化防止剤が含有されることにより、長時間にわたって紫外線が照射されたときにも黒化現象が生ずることが防止され、従って長期間にわたって優れた赤外線吸収特性が安定に維持される合わせガラス用赤外線吸収性組成物が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、2価の銅イオンによる優れた赤外線吸収特性が発揮されると共に、金属塩化合物よりなる黒化防止剤が含有されることにより、長時間にわたって紫外線が照射されたときにも黒化現象が生ずることが防止され、従って長期間にわたって優れた可視光線透過性および赤外線吸収特性が安定に維持される合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物が提供される。
そして、上記の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物を用いることにより、長時間にわたって紫外線が照射されたときにも黒化現象が生ずることが防止され、従って長期間にわたって優れた可視光線透過性および赤外線吸収特性が安定に維持される合わせガラスが提供される。
具体的には、上記のような好適な光学特性を有する、赤外線吸収性樹脂成形体、赤外線吸収性シートおよび赤外線吸収性フィルムを提供することができ、また、上記のような好適な光学特性を有する赤外線吸収性薄膜を形成するためのコーティング組成物を提供することができる。
【0017】
また、上記の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物によれば、合わせガラス用中間膜を得ることができ、上記のような好適な光学特性を有する合わせガラスおよび窓材を提供することができる。更に、上記の赤外線吸収性樹脂成形体、赤外線吸収性シートおよび赤外線吸収性フィルムなどの材料を用いて赤外線吸収性複合体を構成することができる。このような複合体によれば、上記のような好適な光学特性を有する材料が得られ、この材料は、例えば建築用材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。
【図2】反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。
【図3】透光性基板間に設けられた複数の層間に反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。
【図4】実施例4に係る試料4の紫外線照射後の写真である。
【図5】参照例1に係る参照試料1の紫外線照射後の写真である。
【符号の説明】
【0019】
1 一対の透光性基板
2 中間膜
10 合わせガラス
20 合わせガラス
21 透光性基板
22 赤外線吸収層
23 反射層
30 合わせガラス
31 透光性基板
32 赤外線吸収層
33 反射層
34 樹脂層
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の赤外線吸収性組成物は、2価のイオン性銅化合物と、金属塩化合物よりなる黒化防止剤とにより構成されるものであり、本発明の赤外線吸収性樹脂組成物は、この赤外線吸収性組成物が、適宜の樹脂よりなる樹脂成分中に、例えば溶解または分散された状態で含有されてなるものである。
本発明においては、2価のイオン性銅化合物よりなる赤外線吸収剤が存在する場において、金属塩化合物よりなる黒化防止剤が当該赤外線吸収剤と共存することにより、紫外線によって生ずる当該赤外線吸収剤の化学的な変化による黒化現象の発生が防止され、その結果、当該赤外線吸収剤による赤外線吸収効果を長期間にわたって安定に発揮させることができる。
また、赤外線吸収剤による黒化現象の発生が抑制されることにより、赤外線吸収性樹脂組成物においては、その可視光線透過性が大幅に低下するようなことがなく、従って、長期間にわたって優れた可視光線透過性が得られる。
以下、本発明を、その通常の実施形態である赤外線吸収性樹脂組成物について、具体的に説明する。
【0021】
〔赤外線吸収剤〕
本発明における赤外線吸収剤は、2価のイオン性銅化合物よりなるものであって2価の銅イオンに特有の光学特性を発現するが、特にリン化合物が共存する系において、2価の銅イオンは概略波長700〜1000nmにわたる赤外線領域において顕著な光吸収特性を発揮する。しかも、リン化合物が共存することにより、イオン性銅化合物の樹脂に対する溶解性または分散性が向上したものとなる。
【0022】
本発明の組成物において、銅イオンの供給源としては銅塩を用いることができる。この銅塩としては、特に限定されることなくいずれのものをも用いることができ、その具体例としては、酢酸銅、蟻酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅などの有機酸の銅塩の無水物、水和物若しくは水化物、或いは、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅などの無機酸の銅塩の無水物、水和物若しくは水化物、または、水酸化銅、酸化銅を挙げることができる。これらのなかでは、酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅、水酸化銅、塩基性炭酸銅が好ましく用いられる。なお、銅イオン源であるこれらの銅塩は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
〔リン含有銅化合物〕
本発明における赤外線吸収剤において、2価のイオン性銅化合物はリン含有銅化合物であることが好ましい。このリン含有銅化合物を得るためにリン化合物が用いられる。このリン化合物は、具体的には、下記式(A)で表される1価の基または式(B)で表される2価の基を有する化合物をいう。これらのリン化合物を用いることにより、最終的に得られる赤外線吸収性樹脂組成物は、赤外線吸収特性が吸収波長域の点で好ましいものとなると共に、イオン性銅化合物の樹脂に対する溶解性または分散性を向上したものとすることができる。
このリン化合物としては、下記式(1)および式(2)で表されるリン酸エステル化合物、式(3)で表されるホスホン酸化合物、式(4)で表されるホスホン酸エステル化合物、並びに、式(5)で表されるホスフィン酸化合物を挙げることができる。
【0024】
【化1】
【0025】
各式において、R1およびR2は、同一または異なり、炭素数1〜30のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基またはエステル基を示し、これらの基は、その少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基またはエステル基で置換されたものであってもよい。
【0026】
リン酸エステル化合物の具体例としては、例えばモノメチルフォスフェート、ジメチルフォスフェート、モノエチルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、モノイソプロピルフォスフェート、ジイソプロピルフォスフェート、モノn−ブチルフォスフェート、ジn−ブチルフォスフェート、モノブトキシエチルフォスフェート、ジブトキシエチルフォスフェート、モノ(2−エチルヘキシル)フォスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)フォスフェート、モノn−デシルフォスフェート、ジn−デシルフォスフェート、モノイソデシルフォスフェート、ジイソデシルフォスフェート、モノオレイルフォスフェート、ジオレイルフォスフェート、モノイソステアリルフォスフェート、ジイソステアリルフォスフェート、モノフェニルフォスフェート、ジフェニルフォスフェートなどを挙げることができる。
ホスホン酸エステル化合物の具体例としては、モノメチルメチルホスホネート、モノエチルエチルホスホネート、モノブチルブチルホスホネート、モノ(2−エチルヘキシル)2−エチルヘキシルホスホネートなどを挙げることができる。
【0027】
本発明において、リン化合物としては、特に上記式(1)におけるR1または上記式(2)におけるR1およびR2がアルキル基であるアルキルリン酸エステルを用いることが好ましく、更に、この場合におけるアルキル基は炭素数が4〜18であるものが好ましく、炭素数が6〜18であるものが一層好ましい。特に、ジ−および/またはモノ(2−エチルヘキシル)フォスフェート、ジ−および/またはモノオレイルフォスフェートが好ましい。
本発明において、リン化合物は、1種のみでなく、2種以上を組み合せて用いることもできる。
赤外線吸収性樹脂組成物における赤外線吸収剤の含有割合は、樹脂成分100質量部に対して0.1〜45質量部、好ましくは1〜35質量部、特に好ましくは2〜25質量部とされる。
また、リン化合物の含有割合は、赤外線吸収剤における2価の銅イオン1モルに対して1〜10モルとされることが好ましい。
【0028】
〔黒化防止剤〕
本発明においては、赤外線吸収剤と共に、金属塩化合物よりなる黒化防止剤が樹脂成分中に溶解または分散されて含有される。この黒化防止剤は、赤外線吸収剤が長期間にわたって紫外線の照射を受けた場合に、マトリックスである樹脂成分中に多数の微小な黒い斑点が生じた状態となる黒化現象の発生を防止あるいは抑制するものである。
【0029】
本発明において、黒化防止剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属から選ばれた少なくとも1種の金属による金属塩化合物が用いられ、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウムまたはマンガンによる金属塩化合物が用いられる。
この金属塩化合物は、用いる樹脂成分に対する親和性が高くて安定した溶解性あるいは分散性を有するものであることが好ましく、各種の有機酸の金属塩化合物または無機酸の金属塩化合物であることが好ましい。ここに、有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、ソルビン酸、チオ炭酸、スルホン酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、ラウリン酸、乳酸、安息香酸、その他を挙げることができ、無機酸としては、炭酸、重炭酸、チオシアン酸、ホウ酸、硫酸、リン酸、その他を挙げることができる。
【0030】
黒化防止剤として用いられる金属塩化合物の好適な具体例としては、例えば、酢酸リチウム(LiOCOCH3)、酢酸ナトリウム(NaOCOCH3)、安息香酸ナトリウム(NaOCOC6H5)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、酢酸カリウム(KOCOCH3)、安息香酸カリウム(KOCOC6H5)、炭酸カリウム(K2CO3)、重炭酸カリウム(KHCO3)、酢酸セシウム(CsOCOCH3)、酢酸カルシウム(Ca(OCOCH3)2)、酢酸マグネシウム(Mg(OCOCH3)2)、酢酸マンガン(MnOCOCH3)、それらの無水物並びに水和物、その他を挙げることができる。
【0031】
本発明において、黒化防止剤の含有割合は、赤外線吸収剤における2価の銅イオンに対して0.01〜200質量%、好ましくは0.01〜100質量%、特に好ましくは0.1〜50質量%とされる。
また、黒化防止剤は、樹脂成分100質量部に対して0.001〜5.0質量部で含有されることが好ましい。
黒化防止剤の含有割合が過大であると、得られる樹脂組成物が濁ってクリアー性が低下する場合があり、一方、含有割合が過小であると、黒化現象を防止する効果が実際に奏されない場合がある。
【0032】
〔樹脂成分〕
本発明の赤外線吸収性樹脂組成物において、樹脂成分は、2価のイオン性銅化合物と黒化防止剤とよりなる赤外線吸収性組成物が溶解または分散される媒体としてのマトリックスを形成するものであり、具体的な樹脂の種類は、そのようなマトリックスとして機能することのできるものであれば、特に制限されるものではない。
【0033】
樹脂成分として用いられる樹脂材料は、透光性を有することが好ましく、更に特定の実用上の有用性を有することが好ましい。例えば、成形性、膜形成能、接着性、熱または光による硬化性などの固有の特性を有する樹脂を樹脂材料として用いることができ、それにより、当該樹脂材料の特性を利用した応用製品を得ることができる。
【0034】
樹脂材料の具体例としては、ポリビニルアセタール樹脂などのアセタール構造を有する樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、その他を挙げることができる。
本発明において、好ましい樹脂はその用途にもよって異なるが、例えば透光性を利用する応用製品のためにはアクリル系樹脂などが用いられ、接着性を利用する場合にはポリビニルアセタール樹脂が好適に用いられる。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドによってアセタール化することにより得ることができる。
アセタール化に用いられるアルデヒドとしては、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒドなどを挙げることができ、これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
接着性を要する中間膜としては、炭素数が4であるn−ブチルアルデヒドでアセタール化されて得られるポリビニルブチラール樹脂が好適である。
【0035】
〔可塑剤〕
本発明の赤外線吸収性樹脂組成物には、樹脂との相溶性に優れた可塑剤が含有される場合がある。ここに可塑剤としては、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤およびグリコール系可塑剤を挙げることができ、具体例としては、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(3GH)、ジヘキシルアジペート(DHA)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、テトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート(4GO)、トリエチレングリコールジヘプタノエート(3G7)などを挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
〔添加剤〕
本発明の赤外線吸収性樹脂組成物には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、紫外線吸収剤、抗酸化剤、その他を挙げることができる。可視光線吸収剤を添加することが好ましい場合もある。
【0037】
〔応用製品〕
上記の赤外線吸収性樹脂組成物は、その樹脂成分を構成する樹脂材料の種類により、当該樹脂材料が有する物理的または化学的な特性を利用して、種々の実用上有用な製品または部材の材料または素材として用いることができる。この応用製品は、長時間にわたって紫外線が照射されたときにも黒化現象が生ずることが防止され、従って長期間にわたって優れた可視光線透過性および赤外線吸収特性が安定に維持されるものである。
具体的には、樹脂成分として成形可能なものを用いることにより、赤外線吸収性樹脂成形体を提供することができ、樹脂成分として成膜可能なものを用いることにより、赤外線吸収性シートまたは赤外線吸収性フィルムが提供される。
【0038】
一方、上記の赤外線吸収性樹脂組成物を適宜の溶剤中に溶解または分散させることにより得られる溶液または分散体は、赤外線吸収性薄膜を形成するためのコーティング組成物として有用である。
溶剤としては、樹脂成分の種類によっても異なるが、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素化合物類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸ブチルセロソルブなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ブチルセロソルブなどのエーテル類、その他を挙げることができる。
【0039】
また、本発明の赤外線吸収性樹脂組成物によるシートまたはフィルムは、合わせガラス用中間膜として有用であり、当該中間膜を用いて2枚の透明ガラス板などの透光性基板を貼り合わせることによって合わせガラスが得られ、この合わせガラスは、自動車などの乗物または家屋などの建築物の窓を形成するための窓材として有用である。
【0040】
例えば、樹脂成分としてポリビニルブチラール樹脂を用いた本発明の赤外線吸収性樹脂組成物により形成されたシート体は、接着用中間膜として有用であり、これを用いることにより、自動車や建築物において窓材として好適に用いられる合わせガラスを製造することができる。
具体的には、ポリビニルブチラール樹脂材料と、2価のイオン性銅化合物またはリン含有銅化合物よりなる赤外線吸収剤と、黒化防止剤と、必要な添加剤とを適宜の割合で混合し、混練および成形してシート体を作成し、このシート体を2枚の透明ガラス板に挟み込んでサンドイッチ状の積層体とし、これを加熱処理することにより、当該シート体によって2枚の透明ガラス板が接着されてなる合わせガラスを製造することができる。
【0040】
以下、図1を参照して、好適な合わせガラスについて説明する。
図1は、合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。図1に示される合わせガラス10は、一対の透光性基板1と、この一対の透光性基板1に挟持された中間膜2とを備えるものである。中間膜2は、上記の赤外線吸収性樹脂組成物からなる赤外線吸収層である。
【0042】
透光性基板1を構成する材料としては、可視光透過性を有するものであれば特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜の材料が用いられる。具体的には、硬度、耐熱性、耐薬品性、耐久性などの観点から、ガラスまたはプラスチックが用いられる。ガラスとしては、無機ガラス、有機ガラスなどが挙げられ、プラスチックとしては、例えばポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、その他を挙げることができる。2枚の透光性基板1は、同じ種類の材料であってもよいが、異なる種類の材料であってもよい。
かかる構造の合わせガラス10は、例えば、一組の透光性基板の間に、赤外線吸収性樹脂組成物からなるシート状成形物を挟み、これを予備圧着して各層間に残存した空気を除去した後、本圧着してこれらを密着させる方法によって製造することができる。
【0043】
なお、このような製造方法により合わせガラス10を製造する場合、中間膜2に、その保管時においてシート同士が合着して塊状となる、いわゆるブロッキング現象が生じていないことや、予備圧着における脱気性が良好であることが要求される。これらの要求を満たしている場合、透光性基材1とシートとを重ね合わせる際の作業性が良好となるほか、例えば脱気が不十分であるために生じた気泡等による透光性の低下を防ぐことができる。このような合わせガラス10には、近赤外領域の光を遮断する特性のほか、透光性、すなわち可視光領域の光を透過する特性に優れることが求められる。このように優れた透光性を得るためには、上述したように、透光性基板1と中間膜2との間に極力気泡を有していないことが好ましい。
気泡を低減する手段の一つとして、表面にエンボスと呼ばれる多数の微小な凹凸を有している中間膜2を用いる方法が知られている。このようなエンボスが施された中間膜2によれば、上述した予備圧着工程等における脱気性が極めて良好となる。その結果、合わせガラス10は、気泡による透光性の低下が少ないものとなる。
【0044】
このようなエンボスの形態としては、例えば、多数の凸部とこれらの凸部に対する多数の凹部とからなる各種凸凹模様、多数の凸条とこれらの凸条に対する多数の凹溝とからなる各種の凸凹模様、粗さ、配置、大きさ等の種々の形状因子に関し多様な値を有するエンボス形状がある。これらのエンボスとしては、例えば、特開平6−198809号公報に記載された、凸部の大きさを変え、その大きさ、配置を規定したもの、特開平9−40444号公報に記載された、表面の粗さを20〜50μmとしたもの、特開平9−295839号公報に記載された、凸条が交差するように配置されたもの、或いは、特開2003−48762号公報に記載された、主凸部の上に更に小さな凸部を形成されたものが挙げられる。
【0045】
また、近年合わせガラスに求められる他の特性として、遮音性がある。遮音性が優れる合わせガラスによれば、例えば、窓材に用いた場合に、周囲の騒音等の影響を低減できるようになり、更に室内環境を向上させ得る。一般に、遮音性能は、周波数の変化に応じた透過損失量として示され、その透過損失量は、JISA4708によれば500Hz以上において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で規定されている。ところが、合わせガラスの透光性基板として一般的に用いられるガラス板の遮音性能は、2000Hzを中心とする周波数領域ではコインシデンス効果により著しく低下する傾向にある。ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射したときに、ガラス板の剛性と慣性によって、ガラス板状を横波が伝播してこの横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。よって、一般的な合わせガラスでは、2000Hzを中心とする周波数領域において、かかるコインシデンス効果による遮音性能の低下を避け難く、この点の改善が求められている。
【0046】
これに関し、人間の聴覚は、等ラウドネス曲線から、1000〜6000Hzの範囲では他の周波数領域に比べ非常に良い感度を示すことが知られている。従って、コインシデンス効果による上記遮音性能の落ち込みを解消することは、防音性能を高める上で重要となる。このような観点から、合わせガラスの遮音性能を高めるには、上記コインシデンス効果による遮音性能の低下を緩和し、コインシデンス効果によって生じる透過損失の極小部の低下を防ぐ必要がある。
【0047】
合わせガラスに遮音性を付与する方法としては、合わせガラスの質量を増大させる方法、透光性基板となるべきガラスを複合化する方法、このガラス面積を細分化する方法、ガラス板支持手段を改善する方法などがある。また、遮音性能は、中間膜の動的粘弾性により左右され、特に貯蔵弾性率と損失弾性率との比である損失正接に影響されることがあることから、この値を制御することによっても合わせガラスの遮音性能を高めることができる。
【0048】
後者のように損失正接の値を制御する手段としては、例えば、特定の重合度を有する樹脂膜を用いる方法、特開平4−2317443号公報に記載されるような樹脂の構造を規定する方法、特開2001−220183号公報に記載されるような樹脂中の可塑剤量を規定する方法等が挙げられる。また、異なる2種以上の樹脂を組み合わせて中間膜を形成することによっても、広い温度範囲にわたって合わせガラスの遮音性能を高め得ることが知られている。例えば、特開2001−206742号公報に記載された、複数種の樹脂をブレンドする方法、特開2001−206741号公報、特開2001−226152号公報に記載された、複数種の樹脂を積層する方法、特開2001−192243号公報に記載された、中間膜中の可塑剤量に偏向を持たせる方法等が挙げられる。これらの技術を採用し、樹脂構造の改質、可塑剤の添加、2種以上の樹脂の組み合わせ等といった手段を適宜組み合わせて実施することで、中間膜を形成すべき樹脂材料の損失正接の値、すなわち遮音性を制御することが可能となる。
【0049】
さらに、合わせガラスは、上述したような赤外線を遮断すること以外の気候による遮熱性を更に有していると好ましい。このように合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、中間膜中に、遮熱機能を有する酸化物微粒子を更に含有させる方法が挙げられる。このような方法としては、例えば、特開2001−206743号公報、特開2001−261383号公報、特開2001−302289号公報などに記載された方法を適用できる。
【0050】
遮熱性を高め得る酸化物微粒子としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等が挙げられる。また、このように酸化物微粒子が含有された中間膜は、透光性が低下しやすい傾向にあることから、酸化物微粒子の粒径を小さくしたり(特開2002−293583号公報)、分散性を高めたりして、透光性を良好に維持するための方法を適用してもよい。後者のように酸化物微粒子の分散性を高めるための方法としては、当該微粒子を機械的に分散させることや、分散剤を用いること等の公知の微粒子分散技術が適用できる。
【0051】
なお、合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、上述した酸化物微粒子を含有させる方法以外に、例えば、有機系の遮熱機能を有する染料を含有させる方法や、遮熱性能を有する透光性基板を用いる方法も挙げられる。前者の有機系の遮熱機能を有する染料を含有させる方法としては、特開平7−157344号公報、特許第319271号公報に記載された方法が挙げられる。また、後者のような遮熱性能を有する透光性基板としては、例えば、特開2001−151539号公報に記載されているようなFe含有ガラス(例えば、グリーンガラス等)、特開2001−261384号公報、特開2001−226148号公報に記載されているような金属、金属酸化物を積層したガラス板が挙げられる。
【0052】
このように、上述の合わせガラス10は、中間膜2に含まれる赤外線吸収剤が近赤外領域の光を吸収することによって、熱線である赤外線を遮断する特性を発揮するものであるが、更なる赤外線遮断特性の向上を目的として、赤外線吸収層に加えて、赤外線を反射する特性を有する反射層を更に有していてもよい。
【0053】
図2は、反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。この合わせガラス20は、透光性基板21、赤外線吸収層22、反射層23および透光性基板21をこの順に備える構造を有している。透光性基板21および赤外線吸収層22は、上述した合わせガラス10におけるのと同様のものが適用できる。
【0054】
反射層23としては、金属や金属酸化物から構成される層が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、ケイ素、クロム、チタン、インジウム、アンチモン等の金属単体、合金、混合物または酸化物が例示できる。
このような反射層23を有する合わせガラス20は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、透光性基板21の一面に反射層23を設けたものを準備する。ここで、透光性基板21上に反射層23を形成する方法としては、金属や金属酸化物を透光性基板21上に蒸着する方法等が挙げられる。次に、赤外線吸収層22となるべきシートの一方の面側に、反射層23が形成された透光性基板21をその反射層23が接するように配置するとともに、他方の面側に透光性基板21のみを配置する。そして、これらを圧着することによって、合わせガラス20を得ることができる。
【0055】
ところで、このように透光性基板21と赤外線吸収層22との間に反射層23を形成すると、反射層23と赤外線吸収層22との接着性が低下してしまう場合がある。こうなると、例えば合わせガラス20が破損した場合に透光性基板21が剥離・飛散し易くなり、安全性の点で問題が生じることとなる。かかる問題を避ける観点からは、例えば、赤外線吸収層22と反射層23との間に、両者の接着力を向上させ得る層を更に設けることが好ましい。このように構成することにより、反射層23と赤外線吸収層22との接着性を改善することが可能となる。このように接着力を向上させる手段としては、例えば、赤外線吸収層22に含まれる樹脂成分がポリビニルアセタールである場合、赤外線吸収層22よりも高いアセタール度を有するポリビニルアセタールからなる層(特開平7−187726号公報、特開平8−337446号公報参照)、所定の割合のアセトキシ基を有するPVBからなる層(特開平8−337445号公報参照)、所定のシリコーンオイルからなる層(特開平7−314609号広報参照)等を形成する方法が採用できる。
【0056】
なお、反射層は、合わせガラスにおいて、必ずしも上述したように透光性基板と赤外線吸収層との間に設けられている必要はなく、例えば、透光性基板の間に複数の樹脂からなる層が形成されている場合は、これらの層の間に設けられた形態であってもよい。
【0057】
図3は、透光性基板間に設けられた複数の層間に反射層を有する合わせガラスの断面構造の一例を模式的に示す図である。この合わせガラス30は、透光性基板31、赤外線吸収層32、反射層33、樹脂層34、赤外線吸収層32、透光性基板31をこの順に備える構造を有している。かかる合わせガラス30において、透光性基板31、赤外線吸収層32及び反射層33としては、上述したのと同様のものが適用できる。また、樹脂層34としては、公知の樹脂材料からなるものが適用でき、このような樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等が挙げられる。なお、このような構造の合わせガラス30においては、赤外線吸収層32は少なくとも一層設けられていればよいため、例えば、上述した赤外線吸収層32のうちの一層は、赤外線吸収特性を有しない樹脂材料からなる層であってもよい。
このように、赤外線吸収層に加えて更に反射層を設ける構成によれば、両層の効果により、合わせガラスに対して更に優れた赤外線遮断特性を付与することができる。また、上述したような、反射層と赤外線吸収層との接着性を改善する方法を採用すれば、このような赤外線遮断特性に加え、優れた強度を有する合わせガラスを得ることも可能となる。
【0058】
上述した構成を有する合わせガラス等の積層体においては、太陽光等の熱線成分を含む光が入射すると、中間膜である赤外線吸収層が発現する赤外線吸収特性によって、近赤外領域(波長700〜1200nm程度)の熱線が遮断される。一般に、この波長領域の光は、肌が焼きつくようなジリジリとした刺激的な暑さを感じさせる傾向にあるが、上述した積層体を透過する光は、このような近赤外線が遮断されているため主として可視光線となる。よって、かかる積層体を窓材等に用いれば、可視光を効率良く取り込みつつ、室内や屋内の温度上昇を抑えることができる。
【0059】
このように、本発明の赤外線吸収性樹脂組成物によって得られる上記のような積層体である合わせガラスは、優れた赤外線遮断性能を有していることから、太陽光等の自然光その他の外光を取り入れるための各種の建材(建築物の部材に限定されるものではない。)、例えば、自動車、船舶、航空機又は電車(鉄道)車両の窓材、アーケード等の通路の天蓋材、カーテン、カーポートやガレージの天蓋、サンルームの窓又は壁材、ショーウィンドウやショーケースの窓材、テント又はその窓材、ブラインド、定置住宅や仮設住宅等の屋根材や天窓その他窓材、道路標識等の塗装面の被覆材、パラソル等の日除け具材、その他熱線の遮断が必要とされる種々の部材に好適に用いることができる。
【0060】
また、本発明の赤外線吸収性樹脂組成物の樹脂成分がアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの成形性樹脂である場合には、適宜の成形法を利用して成形することにより、成形品を得ることができる。この成形品は、それが透光性板材であれば、そのまま採光窓の窓材として有用であり、また、高い可視光線透過性を有するものであれば、光学フィルターやレンズなどの光学部材として有用な成形品を提供することができる。
【0061】
更に、本発明の赤外線吸収性樹脂組成物によって形成される赤外線吸収性シートまたはフィルムは、温室を構成するための透光性シート材として有用であり、本発明の赤外線吸収性樹脂組成物を含有してなるコーティング組成物によれば、これを基体に塗布し乾燥することにより、赤外線吸収性薄膜を当該基体の表面に形成することができる。
【0062】
本発明の赤外線吸収性樹脂組成物によれば、透光性基材層に積層された赤外線吸収性透光層を形成することにより赤外線吸収性複合体が得られ、この複合体によれば、当該赤外線吸収性透光層が赤外線吸収性樹脂組成物よりなるものであることにより、例えば、長期間にわたって優れた可視光線透過性および赤外線吸収特性が安定に維持される建築用材料として有用である。
【0063】
更に、上記の赤外線吸収性樹脂による成形体、赤外線吸収性シート、赤外線吸収性フィルム、赤外線吸収性複合体などは、単独で例えば光学材料として用いることができるが、それのみでなく、種々の目的あるいは用途に応じて、適宜、他の光学部品や透光性材料と組み合せて用いることができ、これにより、赤外線吸収性を含む光学特性を有する光学的組合せ体を得ることができ、あるいは赤外線吸収性を含む光学特性を利用する光学的システムを構築することができる。
【0064】
本発明の赤外線吸収性組成物または赤外線吸収性樹脂組成物の調製あるいは本発明の応用製品を製造する場合においては、必要に応じて適宜の溶剤を用いることができ、その具体例は上記したとおりである。
【0065】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0066】
〔実施例1〕
(1)銅イオン含有化合物の製造
モノ(2−エチルヘキシル)フォスフェートとジ(2−エチルヘキシル)フォスフェートとの等モル混合物よりなるリン化合物(東京化成社製)5.00gをトルエン15gに溶解させた溶液に酢酸銅一水和物2.37gを加え、この溶液を還流しながら酢酸を除去し、更に、得られた反応溶液からトルエンを留去して、リン酸エステル銅化合物である2−エチルヘキシルリン酸エステル銅錯体6.04gを得た。
【0067】
(2)赤外線吸収性樹脂組成物シート体の作製
樹脂材料としてポリビニルブチラール樹脂「エスレックBM−1」(積水化学社製)、赤外線吸収剤として上記(1)で得られた2−エチルヘキシルリン酸エステル銅錯体、黒化防止剤として酢酸リチウム2水和物、並びに、可塑剤としてビス(2−エチルヘキサン酸)トリエチレングリコールを準備した。
そして、赤外線吸収剤1.2gと黒化防止剤0.02gとを可塑剤2.4gに溶解したものに樹脂材料8.4gを混合し、プレス機「WF−50」(神藤金属工業社製)により85℃で3回プレス処理し、更に120℃で3回プレス処理して混練成形し、厚さ1mmの赤外線吸収性樹脂組成物シート体を作製した。
【0068】
(3)合わせガラスの製造
上記(2)で得られた赤外線吸収性樹脂組成物シート体を、縦26mm、横76mm、厚さ1mmの2枚のスライドガラス板の間に挟み込み、この積層体に対し、オートクレーブにより、温度130℃、圧力1.2MPaの条件で30分間の圧着処理を行うことにより、合わせガラスを作製した。これを「試料1」とする。
【0069】
〔実施例2〜8〕
黒化防止剤として、酢酸リチウム2水和物に代えて、重炭酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸マグネシウムおよび酢酸マンガン4水和物の各々を用いたこと以外は実施例1と同様にして、合計7種の合わせガラスを作製した。これらを、それぞれ「試料2」〜「試料8」とする。
【0070】
〔実施例9〕
(1)銅イオン含有化合物の製造
モノオレイルフォスフェートとジオレイルフォスフェートとの等モル混合物よりなるリン化合物(東京化成社製)63.1gをトルエン180gに溶解させた溶液に酢酸銅一水和物20.0gを加え、この溶液を還流しながら酢酸を除去し、更に、得られた反応溶液からトルエンを留去して、リン酸エステル銅化合物であるオレイルリン酸エステル銅錯体80.4gを得た。
【0071】
(2)合わせガラスの製造
黒化防止剤が酢酸カリウムである実施例4において、赤外線吸収剤として上記(1)で得られたオレイルリン酸エステル銅錯体を用いたこと以外は、実施例4と同様にして赤外線吸収性樹脂組成物シート体を作製し、更にこれを用いて実施例1と同様にして合わせガラスを作製した。これを「試料9」とする。
【0072】
〔実施例10および11〕
(1)合わせガラスの製造
黒化防止剤が酢酸カリウムである実施例4において、黒化防止剤の量を0.002gおよび0.00002gに変更したこと以外は、実施例4と同様にして2種の赤外線吸収性樹脂組成物シート体を作製し、更にこれらの各々を用いて実施例1と同様にして2種の合わせガラスを作製した。これらを「試料10」および「試料11」とする。
【0073】
〔参照例1〕
黒化防止剤を用いないこと以外は実施例1と同様にして参照用の合わせガラスを作製した。これを「参照試料1」とする。
【0074】
〔比較例1〕
黒化防止剤に代えて下記式(6)で表される紫外線吸収剤「バイオソーブ90」(共同薬品社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較用の合わせガラスを作製した。これを「比較試料1」とする。
【0075】
【化2】
【0076】
〔実験例〕
上記の試料1〜試料11、参照試料1および比較試料1の各々に対して、消費電力7.5kWのキセノンアーク放電灯を装着したキセノンウェザーメーター「アトラスC135」(東洋精機製作所製)を用いて紫外線を含む光の照射をエネルギーが0.85W/m2となる条件で100時間にわたって行った。
そして、紫外線照射後の各試料について、黒化現象の発生の有無を肉眼で観察したところ、試料1〜試料11には黒化現象の発生は認められなかった。図4は、紫外線照射後の試料4の写真である。
一方、参照試料1では、多数の微小な黒い粒子状の斑点が生じていて黒化現象の発生が明瞭に認められた。図5は、紫外線照射後の参照試料1の写真である。また、比較試料1では、試料のクリアー性が低下していることが認められた。
表1に、各試料について紫外線照射前と照射後に測定した可視光線透過率、並びに、紫外線の照射による可視光線透過率の変化の幅を示す。この測定は、分光スペクトル測定器「U−4000」日立製作所(株)製)を用い、日本工業規格(JIS)R3106に従って行った。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果から、本発明に係る試料1〜試料11によれば、金属塩化合物よりなる黒化防止剤が含有されていることにより、長時間にわたって紫外線が照射されたときにも黒化現象が生ずることが防止され、紫外線の照射による可視光線透過率の変化は5%未満であって、優れた可視光線透過性が安定に維持されていることが理解される。
これに対し、参照試料1では、黒化防止剤が含有されていないために、紫外線の照射によって当該試料に黒化現象が発生し、それにより、可視光線透過率が12%も低下していることが理解される。
また、比較試料1では、紫外線吸収剤が含有されていることにより、黒化現象の発生が抑制される効果が認められるが、可視光線透過率の低下を抑制する効果は小さいものであることが理解される。
Claims (8)
- 2価のイオン性銅化合物よりなる赤外線吸収剤と、この赤外線吸収剤による黒化現象を防止する金属塩化合物よりなる黒化防止剤とを含有してなり、
赤外線吸収剤を構成する2価のイオン性銅化合物が、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスホン酸エステル化合物およびホスフィン酸化合物から選ばれたリン化合物によるリン含有銅化合物であり、
黒化防止剤を構成する金属塩化合物が、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウムまたはマンガンによる有機酸または無機酸の金属塩化合物であり、
黒化防止剤の割合が赤外線吸収剤における2価の銅イオンに対して0.01〜50質量%であり、
合わせガラスにおける赤外線吸収層の形成に用いられることを特徴とする合わせガラス用赤外線吸収性組成物。 - リン化合物が、アルキルリン酸エステルであることを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス用赤外線吸収性組成物。
- アルキルリン酸エステルは、アルキル基の炭素数が4〜18の化合物であることを特徴とする請求項2に記載の合わせガラス用赤外線吸収性組成物。
- 樹脂成分中に、2価のイオン性銅化合物よりなる赤外線吸収剤と、この赤外線吸収剤による黒化現象を防止する金属塩化合物よりなる黒化防止剤とが含有されてなり、
赤外線吸収剤を構成する2価のイオン性銅化合物が、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスホン酸エステル化合物およびホスフィン酸化合物から選ばれたリン化合物によるリン含有銅化合物であり、
黒化防止剤を構成する金属塩化合物が、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウムまたはマンガンによる有機酸または無機酸の金属塩化合物であり、
赤外線吸収剤の割合が樹脂成分100質量部に対して0.1〜45質量部であり、黒化防止剤の割合が赤外線吸収剤における2価の銅イオンに対して0.01〜50質量%であり、
合わせガラスにおける赤外線吸収層の形成に用いられることを特徴とする合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物。 - 赤外線吸収性樹脂組成物における樹脂成分が、アセタール構造を有する樹脂を含有することを特徴とする請求項4に記載の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物。
- 赤外線吸収性樹脂組成物における樹脂成分が、ポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする請求項4に記載の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物。
- リン化合物が、アルキルリン酸エステルであることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物。
- アルキルリン酸エステルは、アルキル基の炭素数が4〜18の化合物であることを特徴とする請求項7に記載の合わせガラス用赤外線吸収性樹脂組成物。
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