JP4926699B2 - 可溶化剤及びこれを含有する組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、可溶化剤及びこれを含有する組成物に関する。
従来、近赤外線又はこれよりも長い波長域の光線を高い効率で遮断等させる性能を有し、しかも、可視光線の透過率が大きく、十分な耐熱性や表面硬度を容易に得ることができる熱線吸収性複合体が知られている。この赤外線吸収複合体は、例えば、合わせガラス等の光学部材として使用される。また、この合わせガラスは、2枚のガラス間に赤外線吸収組成物からなる中間層が形成されたものである。この赤外線吸収組成物は樹脂成分及び赤外線吸収成分から構成されており、赤外線吸収成分としては、銅イオンと、リン酸エステル又はホスホン酸エステルからなるリン化合物とを含有する(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−211220
ところで、近年、合わせガラス等の光学部材の需要の高まりとともに、可視光線の透光率(透光性)の更なる向上が求められている。このため、合わせガラスを構成する中間層の材料についても、透光性に一層優れた組成物の開発が望まれている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、銅を含むリン化合物の樹脂への溶解性又は分散性を付与することが可能な可溶化剤及びこれを含有する組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者は、銅を含むリン化合物を含有する組成物の分光特性について鋭意研究を重ねた結果、特定構造を有する化合物を含有せしめることで銅を含むリン化合物の溶解性又は分散性が高められ、優れた透光性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の可溶化剤は、オキシアルキレン単位を有する主鎖を備える下記一般式(100)で表される化合物からなることを特徴とする。
Figure 0004926699
[式中、R111は水素原子又はb価の有機基、R112は炭素数2〜4のアルキレン基、R113は水素原子、アルキル基、アリール基又はアシル基を示し、aは1〜50の整数であり、bは1〜4の整数である。]
本発明の可溶化剤によれば、銅を含むリン化合物の樹脂への溶解性又は分散性を付与することができる。このため、かかる可溶化剤と、銅を含むリン化合物と、樹脂とを含有する組成物においては、従来に比して格段に優れた透光性を有することができる。
ここで、可溶化剤を構成する化合物は、オキシアルキレン単位を有する主鎖を備えるものであり、側鎖のみにオキシアルキレン単位を有するものは含まれない。また、本発明における化合物の「主鎖」とは、当該化合物を構成する分子鎖のなかで最長の分子鎖を意味し、当該化合物が重合体である場合には当該重合体の重合方向に延びる分子鎖を意味する。
上記本発明の可溶化剤としては、bが1であるものが好ましい。なかでも、bが1であり、且つ、R111とR113とが同一の基であるものが好ましい。
また、上記本発明の可溶化剤としては、R113が下記一般式(101)で表される基であり、aが4〜50の整数であるものが好ましい。
Figure 0004926699
[式中、R114はアルキル基である。]
さらに、可溶化剤としては、R113が水素原子であり、R112が炭素数3又は4のアルキレン基であるものも好ましい。かかる可溶化剤を含む中間膜は十分に透光性に優れるものとなる。
また、可溶化剤としては、R113が(メタ)アクリロイル基であるものも好ましい。このような可溶化剤を含む中間膜は、優れた透光性のみならず優れた耐湿性を具備するものとなる。
さらに、可溶化剤は、R112がエチレン基であり、aが2〜14の整数であるものであってもよい。すなわち、可溶化剤は、オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を有し、且つその繰り返し数が2〜14であることが好ましい。このような構成の可溶化剤と、銅を含有するリン化合物と、樹脂とを含有する組成物においては、長期間保管しても濁り等を生ずることがないため、長期間にわたって優れた透光性を維持することができる。
さらにまた、可溶化剤としては、R112がエチレン基であり、前記aが9〜23の整数であるものも好ましい。すなわち、可溶化剤は、オキシアルキレン単位としてオキシエチレン単位を有し、且つその繰り返し数が9〜23であるものであってもよい。このような構成の可溶化剤と、銅を含有するリン化合物と、樹脂とを含有する組成物においては、優れた耐光性を有することができる。
本発明はまた、上記本発明の可溶化剤と、銅を含むリン化合物と、樹脂と、を含有する組成物を提供する。
このような組成物は、銅を含有するリン化合物の樹脂への溶解性又は分散性を付与することが可能な可溶化剤を含有することで、優れた透光性を有するものとなる。また、当該組成物は、銅を含有するため、近赤外光(例えば、波長約700〜1200nm)を含む熱線(以下、「赤外線」という)に対して優れた吸収特性を発現することができる。
また、本発明者らの知見によれば、従来の銅を含むリン化合物と、樹脂とを含有する樹脂組成物においては、銅を含むリン化合物の種類によっては、これを樹脂中に均一に溶解又は分散させることが困難となる場合があった。これに対し、本発明の組成物においては、可溶化剤によって、銅を含むリン化合物に、樹脂に対する充分な溶解性又は分散性を付与することができ、これにより樹脂との相溶性が高められている。その結果、本発明の組成物は、従来に比して格段に優れた透光性を発現することができる。
本発明によれば、銅を含むリン化合物の樹脂への溶解性又は分散性を付与することが可能な可溶化剤を提供することができる。また、かかる可溶化剤と、銅を含むリン化合物と、樹脂とを含む組成物の提供が可能になる。
本発明による光学部材の一例を模式的に示す断面図である。 可溶化剤とヘーズとの相関の一例を示す図である。
符号の説明
1…板状基材、2…赤外線吸収組成物層、10…窓材。
以下、本発明の好適な実施形態に関し詳細に説明する。
先ず、可溶化剤について説明する。可溶化剤は、オキシアルキレン単位を有する主鎖を備える化合物からなるものである。当該化合物は、これを構成する主鎖にオキシアルキレン単位を有していれば、オキシアルキレン単位以外の構造単位を備えていてもよい。オキシアルキレン単位以外の構造単位としては、オキシアルキレン単位と結合可能な基であってもよく、例えば、ウレタン基、ウレア基、カーボネート基、エステル基、アミド基等が挙げられる。また、当該化合物の主鎖に結合する末端基としては、水素原子、一価の炭化水素基が挙げられ、一価の炭化水素基としては、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数2〜30のアシル基、炭素数6〜30のアリール基若しくはアラルキル基が好ましい。なお、上述のアルキル基は、当該アルキル基を構成する炭素原子に結合した少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は芳香環で置換されていてもよい。
オキシアルキレン単位としては、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位、オキシテトラメチレン単位、オキシペンチレン単位、オキシへキシレン単位等が挙げられる。これらの中でも、銅を含む化合物の樹脂への溶解性又は分散性の向上の点から、炭素数が2〜4のオキシアルキレン単位が好ましく、例えば、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシブチレン単位、オキシテトラメチレン単位が挙げられる。なお、オキシプロピレン単位としては、プロピレン基の2級炭素が酸素原子に結合していてもよく、1級炭素が酸素原子に結合していてもよい。
また、オキシアルキレン単位は、単一種類(例えば、オキシエチレン単位)又は複数種類(例えば、オキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位)のオキシアルキレン単位から構成されていてもよく、後者の場合はブロック共重合したものでもランダム共重合したものでもよい。
オキシアルキレン単位の繰り返し数としては、銅を含む化合物の樹脂への溶解性又は分散性の向上の点から、1〜50が好ましい。また、かかる繰り返し数は、長期保管性の向上の点から2〜14がより好ましく、耐光性向上の点から9〜23がより好ましい。さらに、かかる繰り返し数が9〜14であると、優れた長期保管性及び耐光性の双方を兼ね備えることができる。
好適な可溶化剤は、下記一般式(100)で表される化合物からなるものである。
Figure 0004926699
[式中、R111は水素原子又はb価の有機基、R112は炭素数2〜4のアルキレン基、R113は水素原子、アルキル基、アリール基又はアシル基を示し、aは1〜50の整数であり、bは1〜4の整数である。]
なかでも、上記一般式(100)で表される化合物としては、bが1であるものが好ましい。このような化合物は、下記一般式(1)で表すことができる。
Figure 0004926699
ここで、上記一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数が2〜20アシル基、炭素数が1〜25の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数が6〜30のアリール基若しくはアラルキル基を示し、アルキル基を構成する炭素原子に結合した少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は芳香環で置換されていてもよい。Aは炭素数が2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜50を示す。アシル基の炭素数は、好ましくは2〜15、更に好ましくは2〜10である。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜20、更に好ましくは1〜15である。アリール基又はアラルキル基の炭素数は、好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜20である。Aで示されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは2〜3、更に好ましくは2である。nは、好ましくは1〜40、更に好ましくは1〜30である。
上記一般式(1)において、R、Rで表されるアシル基としてはジカルボン酸から誘導される2価の酸基も含まれ、例えば、2−エチルブタノイル基、(メタ)アクリロイル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ヘキサノイル基、ヘプタンジオイル基、オキサリル基、マロニル基、バルミトリル基、ステアロイル基、オレオイル基、2−エチルヘキサノイル基が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリロイル基、2−エチルヘキサノイル基が好ましい。また、R、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ノニル基、ラウリル基、ステアリル基、オレイル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、ラウリル基、ステアリル基、オレイル基が好ましい。またさらに、R、Rで表されるアリール基若しくはアラルキル基としては、フェニル基、4−ノニルフェニル基が好ましい。さらに、Aで表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、テトラメチレン基が好適である。このような基を採用することで、銅を含むリン化合物の樹脂への溶解性及び分散性を顕著に向上させることができる。
上記一般式(100)で表される化合物としては、bが1であり、且つ、R111とR113とが同一の基であるものがより好ましい。かかる構造を有する好適な化合物は、下記の3つに分類することができる。
すなわち、第1に、R113が下記一般式(101)で表される化合物であり、aが4〜50の整数であるものが挙げられる。なお、下記式(101)中、R114はアルキル基である。
Figure 0004926699
かかる化合物としては、例えば、下記一般式(5)で表される化合物が挙げられる。下記一般式(5)中、nは4〜50の整数である。
Figure 0004926699
第2に、R113が(メタ)アクリロイル基であるものが挙げられる。このような化合物としては、下記一般式(2)〜(4)で表される化合物が挙げられる。なお、括弧で囲まれた「メタ」の意味は、アクリル酸若しくはその誘導体、及び、メタクリル酸若しくはその誘導体の両方を記載する必要があるときに、記載を簡潔にするため便宜上使用されている記載方法であり、本明細書においても採用したものである(以下同様)。
Figure 0004926699
第3に、R113が水素原子であり、R112が炭素数3又は4のアルキレン基であるものが挙げられる。このような化合物としては、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。
(組成物)
次に、組成物について説明する。当該組成物は、上述した可溶化剤と、銅を含むリン化合物と、樹脂とを含有するものである。当該組成物は、可溶化剤を含有するため、銅を含むリン化合物の樹脂に対する溶解性及び分散性が高められている。このため、かかる組成物は、極めて高い透光性を発現することができ、しかも赤外線吸収性能も有することから、視感度補正、測光、近赤外光カット、熱線吸収、輝度調整等の各種用途に用いることが可能である。したがって、かかる組成物は、後述する光学部材の光学材料として好適に使用することができる。
銅を含むリン化合物としては、銅イオンとリン化合物とがイオン結合及び/又は配位結合を形成しているものが好ましい。銅イオンを含有することで、d軌道の電子遷移によって近赤外光が選択的に吸収され、優れた赤外線吸収特性を発現することができる。かかる化合物は、例えば、銅塩と、リン化合物とを混合して適宜の溶剤中で反応させることにより得ることが可能である。
なお、銅イオンに対するリン化合物に含まれる水酸基の合計量の割合(OH基/Cu)は、モル比で好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4であり、更に好ましくは1.5〜2.5である。かかる比率が1未満となると、赤外線吸収性能や透光性が不十分となる傾向があり、一方、かかる比率が6を超えると、銅イオンとの配位結合及び/又はイオン結合に関与しない水酸基の割合が過大となるため、吸湿性が比較的大きくなる傾向にある。
銅塩としては、酢酸銅、酢酸銅一水和物、蟻酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅等の有機酸の銅塩無水物や水和物、或いは水酸化銅、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩の無水物や水和物が挙げられる。これらの中では、酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅、水酸化銅、塩基性炭酸銅が好適である。
また、本実施形態に係る組成物には、銅イオン以外の金属イオンを含有していてもよい。他の金属イオンとしては、希土類金属、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、ストロンチウム、鉄、マンガン、マグネシウム、ニッケル、クロム、インジウム、チタン、アンチモン、スズ等の金属によるイオンが挙げられる。希土類金属としては、ネオジム、プラセオジム及びホルミウム等を例示することができる。かかる希土類金属は、希土類イオンのf軌道の電子遷移によって特定波長光(波長580nm近傍や波長520nm近傍)に対する吸収特性に優れており、これらの波長域は人間の眼球の視細胞が有する最大応答波長と合致することから、上述の組成物に防眩性を付与することができる。
リン化合物としては、下記一般式(6)で表されるホスホン酸モノエステル化合物、下記一般式(7)で表されるホスフィン酸化合物、下記一般式(8)又は(9)で表されるリン酸エステル化合物、下記一般式(10)で表されるホスホン酸化合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いても二種以上組み合わせて用いてもよい。
Figure 0004926699
ここで、上記式中、R〜R10は、それぞれ独立に、炭素数が1〜30である分岐状、直鎖状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基又は(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基を示し、少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基、又はエステル基で置換されていてもよい。
上記式(6)、(7)、(8)、(9)、又は(10)におけるR〜R10としては、下記一般式(11)〜(21)で表される基が好ましい。
Figure 0004926699
また、上記式(11)〜(21)中、R11〜R17は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が6〜20のアリール基又はアラルキル基を示し、芳香環を構成する炭素原子に結合した少なくとも一つの水素原子が、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよく、R21〜R25は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基を示す(ただし、R23、R24、及びR25が全て水素原子の場合を除く)。
また、R31及びR32は炭素数が1〜6のアルキレン基を示し、R41は炭素数が1〜10のアルキレン基を示し、R51及びR52は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、R61は水素原子又はメチル基を示し、mは1〜6の整数を示し、kは0〜5の整数を示し、pは2〜97の整数を示し、rは1〜10の整数を示す。
さらに、R71、R72及びR73は、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が2〜20であり且つ不飽和結合を少なくとも一つ有する基、フェニル基、又は、少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、若しくは、炭素数が2〜20であり且つ不飽和結合を少なくとも一つ有する基で置換されたフェニル基を示し、vは1〜5の整数を示し、wは1〜3の整数を示し、xは1〜4の整数を示し、R71、R72及びR73は互いに、又は、v、w若しくはxが2以上のときにそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
またさらに、R74は、水素原子又はメチル基を示し、R75は、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はフェニル基を示し、R76は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキレン基を示し、yは0〜4の整数を示し、zは1〜5の整数を示し、y+zは1〜5の整数を示す。
上記一般式(6)で表されるホスホン酸モノエステル化合物におけるR及びRの好適な組み合わせを表1に示す。
Figure 0004926699
また、上記一般式(7)で表されるホスフィン酸化合物におけるR及びRの好適な組み合わせを表2に示す。
Figure 0004926699
また、上記一般式(8)で表されるリン酸エステル化合物におけるR及びRの好適な組み合わせを表3〜15に示す。また、上記一般式(9)で表されるリン酸エステル化合物における好適なRとしては、Rで例示した基を挙げることができる。
Figure 0004926699
Figure 0004926699
Figure 0004926699
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Figure 0004926699
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Figure 0004926699
Figure 0004926699
Figure 0004926699
Figure 0004926699
また、上記一般式(10)で表されるホスホン酸化合物における好適なR10を表16に示す。
Figure 0004926699
樹脂としては、透明性に優れるものが用いられ、例えば、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びその部分鹸化物等が挙げられる。これらの合成樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、ガラス又はプラスチック等の透光性材料に対して高い接着性を有するポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体及びその部分鹸化物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、上述した銅を含むリン化合物の溶解性又は分散性の改善による透光性の向上効果が充分に得られる点で、ポリビニルアセタール樹脂がより好ましい。なお、ポリビニルアセタール樹脂とは、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させてアセタール化した樹脂をいい、一部をアセタール化したもの及び大部分(完全を含む)をアセタール化したものの双方が含まれる。このようなポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂(ビニロン)、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられる。
なかでも、ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が好適に用いられる。ポリビニルブチラール樹脂が用いられることにより、得られる中間膜の透明性、耐候性、ガラスに対する接着性等が優れたものとなる。
ポリビニルアセタール樹脂は、必要な物性に応じて、適当な組み合わせにてブレンドされたものであってもよく、アセタール化時にアルデヒドを組み合わせてアセタール化することにより得られるポリビニルアセタール樹脂であってもよい。ポリビニルアセタール樹脂の分子量、分子量分布及びアセタール化度は特に限定されないが、アセタール化度は、40〜85%であると好ましく、そのより好ましい下限は60%、上限は75%である。
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドによりアセタール化することにより得ることができる。ポリビニルアルコール樹脂は、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られるものであり、鹸化度80〜99.8モル%のポリビニルアルコール樹脂が一般的に用いられる。ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度は好ましい下限は200、上限は3000である。平均重合度が200未満であると、得られる合わせガラスの耐貫通性が低下する傾向にある。一方、3000を超えると、樹脂膜の成形性が悪くなり、しかも樹脂膜の剛性が大きくなり過ぎ、加工性が悪くなる傾向にある。かかる観点から、平均重合度のより好ましい下限は500であり、上限は2000である。なお、ポリビニルアルコール樹脂の粘度平均重合度、及び鹸化度は、例えば、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定することができる。
アルデヒドとしては特に限定されず、例えば、炭素数が1〜10のアルデヒド等が挙げられ、より具沐的には、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルテヒド、n−へキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−へキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が好ましい。特に、炭素数が4のブチルアルデヒドが好ましい。
また、可溶化剤と銅を含むリン化合物との含有比率(質量比)は、好ましくは95/5〜10/90(前者/後者、以下同様)、より好ましくは90/10〜20/80、更に好ましくは85/15〜30/70である。かかる含有比率が10/90未満であると、銅を含むリン化合物に対して充分な溶解性又は分散性を付与することが困難となる場合があり、一方、かかる含有比率が95/5を超えると、含有量に見合うだけの溶解性又は分散性の向上効果が得られず経済的に不利となるおそれがある。
また、上述した組成物が樹脂を含む樹脂組成物である場合、樹脂組成物に占める可溶化剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは3〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%である。可溶化剤の含有量が1質量%未満であると、銅を含むリン化合物が樹脂に溶解、分散し難くなる場合があり、一方、かかる含有量が60質量%を超えると、可溶化剤がブリードアウトするおそれがある。また、樹脂組成物に占める銅を含むリン化合物の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5〜45質量%、より好ましくは1〜35質量%、更に好ましくは2〜30質量%である。銅を含むリン化合物の含有量が0.5質量%未満であると、赤外線吸収性能が不十分となる場合があり、一方、かかる含有量が45質量%を超えると、銅を含むリン化合物を樹脂中に均一に溶解性又は分散性させることが困難となる傾向がある。
また、上記組成物には、上述した成分以外の成分が含まれていてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、接着力調整剤が挙げられる。接着力調整剤としては、例えば、有機酸や無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、変性シリコーンオイル等が挙げられる。有機酸としては特に限定されず、例えば、オクタン酸、ヘキサン酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸等が挙げられる。無機酸としては特に限定されず、例えば、塩酸、硝酸等が挙げられる。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩としては特に限定されず、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のなかでも、炭素数2〜16の有機酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が好ましく、炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩又はマグネシウム塩がより好ましい。
炭素数2〜16のカルボン酸のカリウム塩又はマグネシウム塩としては、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2−エチルブタン酸マグネシウム、2−エチルブタン酸カリウム、2−エチルへキサン酸マグネシウム、2−エチルへキサン酸カリウム等が好適である。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が供用されてもよい。
有機酸や無機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の配合量の好ましい下限は、樹脂100重量部に対して0.001重量部であり、上限は0.5重量部である。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の配合量が0.001重量部未満であると、高湿度雰囲気下で周辺部の接着力が低下することがある。一方、0.5重量部を超えると、膜の透明性が失われることがある。この配合量のより好ましい下限は0.01重量部であり、上限は0.2重量部である。
変性シリコーンオイルとしては、例えば、エポキシ変性シリコーンオイル、エーテル変性シリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、これらの変性シリコーンオイルは、一般にポリシロキサンに、変性させるべき化合物を反応させることにより得ることができる。
変性シリコーンオイルの分子量の好ましい下限は800であり、上限は5000である。変性シリコーンオイルの分子量が800未満であると、表面への局在化が不充分となり十分な接着力向上効果が得られない場合がある。一方、5000を超えると、樹脂との相溶性が低下し、膜表面にブリードアウトしてガラスとの接着力を低下させる場合がある。かかる観点から、この分子量のより好ましい下限は1500であり、上限は4000である。
また、変性シリコーンオイルの配合量の好ましい下限は、樹脂100重量部に対して0.01重量部であり、上限は0.2重量部である。この配合量が0.01重量部未満であると、吸湿による白化を防止する効果が不充分となることがある。一方、0.2重量部を超えると、樹脂との柏溶性が低下し、膜表面にブリードアウトして樹脂とガラスとの接着力が低下することがある。このような観点から、変性シリコーンオイルの配合量のより好ましい下限は0.03重量部であり、上限は0.1重量部である。
上述した組成物は、合わせガラスの中間膜として用いる際の特性向上を目的として、上述した成分以外の成分を更に含有していてもよい。
このような他の成分としては、まず、紫外光吸収剤が挙げられる。紫外光吸収剤としては、ベンゾエート系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
より具体的には、ベンゾエート系化合物としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートが挙げられ、サリシレート系化合物としては、フェニルサリシレートやp−t−ブチルフェニルサリシレートが挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン−5,5’−ジスルホン酸ナトリウム、2,2’−ジヒドロキシ−5−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロイルオキシエチルベンゾフェノン、4−ベンゾイルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタリミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメトキシベンゾイル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ドデシル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートやオクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートが挙げられ、シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドや2−エトキシ−5−t−ブチル−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリドが挙げられる。また、トリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールが挙げられる。
さらに、組成物は、光に対する安定性を更に向上させるための光安定剤を含有することもできる。特に、上述した紫外光吸収剤とこの光安定剤を併用すると、光に対する安定性が極めて良好となる傾向にある。光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)や、Ni系化合物を適用可能である。
より具体的には、HALSとしては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケード、1−[2−[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(Mixed 2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、Mixed {2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ポリ[(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノール]、ジメチルサシネートポリマ−with−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル等が挙げられる。
また、Ni系の光安定剤としては、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミン−ニッケル(II)、ニッケルジブチルジチオカーボネート、[2,2’−チオ−ビス(4−t−オクチルフェノレート)]−ブチルアミン−ニッケル(II)等が挙げられる。
また、組成物には、必要に応じて、押出機中での熱による変質を防止するための酸化防止剤、調色のための染料及び顔料、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤等の添加剤が添加されていても良い。さらに、組成物は、上述した可溶化剤に加えて、樹脂組成物の可塑剤として通常用いられる化合物を更に含有していてもよい。このような可塑剤を更に含む組成物は、更に透光性に優れる合わせガラス用の中間膜を形成し得る。
(光学部材)
光学部材は、上述した組成物からなる光学材料を用いてなるものであり、以下の3種類の形態が好適である。
第1の形態:光学材料で形成されるもの。
第2の形態:ガラス又はプラスチック等の透光性材料からなる透明基板に、光学材料が貼合されたもの。
第3の形態:ガラス又はプラスチック等の透光性材料からなる透明基板に、光学材料からなる層が形成されたもの。
第1の形態の光学部材としては、例えば、シート、フィルムが挙げられる。ここで、シートとは、250μm以上の厚さを有する薄板状にしたものをいう。また、フィルムとは、厚さ5〜250μmの薄い膜状にしたものをいう。また、シート又はフィルムを製造する手段としては、例えば、溶融押出成形法、延伸成形法、カレンダー成形法、プレス成形法、溶液キャスト法等が好適に使用される。ただし、これらの方法に限定されない。
第2の形態の光学部材としては、例えば、上述したシート又はフィルムを、例えば合わせガラスの中間膜として使用し、この合わせガラス用中間膜と、ガラス、プラスチック等からなる透光性材料とを貼り合せたものが挙げられる。シート又はフィルムからなる合わせガラス用中間膜と、透光性材料とを接着させる手段としては、プレス法、マルチロール法、減圧法などの加圧又は減圧により接着する手段、オートクレーブ等を用いて加熱することにより接着させる手段又はこれらの組み合わせによる手段を用いることができる。
なお、合わせガラス用中間膜は、その厚みが0.001〜10mm、特に0.01〜5mmであることが好ましい。合わせガラス用中間膜の厚みが0.001mm未満の場合には、特定の波長光に対する吸収性が高い中間膜を得ることが困難となって、赤外線吸収性能が不充分なものとなることがある。一方、合わせガラス用中間膜の厚みが10mmを超える場合には、可視光線の透過率が高い中間膜を得ることが困難となって、透明性が低いものとなることがある。
第3の形態の光学部材としては、例えば、コーティングが挙げられる。ここで、コーティングとは、上述した組成物又は樹脂組成物を適宜の溶剤に溶解又は分散させた溶液又は分散液を、必要な面に塗布し溶剤を蒸発させて、その面の一部又は全部に形成される薄膜、被覆物又は薄層をいう。また、薄膜等が形成された面の平坦性等を高める目的で、例えば、レベリング剤、消泡剤としての各種の界面活性剤等の溶解補助剤を溶液又は分散液に添加してもよい。
かかる第1〜3の形態の光学部材は、可溶化剤を含有することで銅を含有するリン化合物の溶解性又は分散性が良好になることから透光性に優れるとともに、銅を含有することで優れた赤外線吸収性を有することができる。また、樹脂成分としてポリビニルアセタール樹脂、特にポリビニルブチラール樹脂を用いた場合には、可溶化剤によって銅を含有するリン化合物を樹脂中に均一に溶解又は分散させることが可能になるため、優れた透光性を有することができ、また、透光性材料との接着性にも優れるようになる。さらに、ポリビニルアセタール樹脂は熱可塑性を有することから、成形加工を簡易に行うことができる。
また、合わせガラスの製造方法として、接着性を有する熱可塑性樹脂からなる中間膜を2枚のガラス板の間に挿入し、得られた積層体を予備圧着して各層間に残存する空気を排除した後、本圧着して積層体を完全に密着させる方法が採られることがある。この場合に用いられる中間膜は、保存時に中間膜同士が合着し塊状となる、いわゆるブロッキング現象が生じないこと、ガラスと中間膜とを重ね合わせる際の作業性が良好であること、および予備圧着工程における脱気性が良好であることが要求される。予備圧着時の脱気性は合わせガラスの品質を左右し、脱気が不十分であると得られた合わせガラスの透明性が悪くなったり、促進試験を行うと気泡が生じたりすることがある。
上記のような中間膜の総合性能は、素材である熱可塑性樹脂の種類や粘弾性等の物性によって左右されるが、これらを固定して考えると、中間膜の表面形状がその総合性能を決定する大きな要因となる。特に、エンボスと呼ばれる多数の微細な凹凸を中間膜の表面に形成することが従来より行われている。エンボスの形態としては、例えば、多数の凸部とこれらの凸部に対する多数の凹部とからなる各種凸凹模様、多数の凸条とこれらの凸条に対する多数の凹溝とからなる各種の凸凹模様、粗さ、配置、大きさ等の種々の形状因子に関し多様な値を有するエンボス形状がある。
このようなエンボスを形成する方法としては、例えば、特開平6−198809号公報に記載されるように凸部の大きさを変え、その大きさ、配置を規定する方法、特開平9−40444号公報に記載されるように表面の粗さを20〜50μmとする方法、特開平9−295839号公報に記載されるように凸条が交差するように配置する方法、特開2003−48762号公報に記載されるように主凸部の上に更に小さな凸部を形成する方法等が挙げられる。また、エンボス形状を施す方法として、特表2003−528749には、樹脂成形時に発生するメルトフラクチャーを利用する方法、特表2002−505211、特表平9−502755には架橋PVB粒子や造核剤を用いる方法等が提案されている。
さらに、各種用途において、合わせガラスに対して遮音性が要求される場合がある。一般に遮音性能は、周波数の変化に応じた透過損失量として示され、その透過損失量は、JIS A 4708では、500Hz以上において遮音等級に応じてそれぞれ一定値で規定されている。しかし、ガラス板の遮音性能は、2000Hzを中心とする周波数領域ではコインシデンス効果により著しく低下する。
ここで、コインシデンス効果とは、ガラス板に音波が入射した時、ガラス板の剛性と慣性によって、ガラス板状を横波が伝播してこの横波と入射音とが共鳴し、その結果、音の透過が起こる現象をいう。一般的な合わせガラスでは、2000Hzを中心とする周波数領域において、かかるコインシデンス効果による遮音性能の低下が避けられず、この点の改善が求められることがある。
一方、人間の聴覚は、等ラウドネス曲線から、1000〜6000Hzの範囲では、他の周波数領域に比べ非常に良い感度を示すことが知られている。従って、コインシデンス効果による上記遮音性能の落ち込みを解消することは、防音性能を高める上で重要であることがわかる。従って、合わせガラスの遮音性能を高めるには、上記コインシデンス効果による遮音性能の低下を緩和し、コインシデンス効果によって生じる透過損失の極小部(以下、この極小部の透過損失量をTL値という。)の低下を防ぐ必要がある。
合わせガラスに遮音性を付与する方法としては、合わせガラスの質量を増大させる方法、ガラスを複合化する方法、ガラス面積を細分化する方法、ガラス板支持手段を改善する方法などが提案されている。
また、遮音性能が中間膜の動的粘弾性により左右され、特に貯蔵弾性率と損失弾性率との比である損失正接に影響されることがあるため、この値を制御すれば合わせガラスの遮音性能を高めることができる。
制御手段としては、例えば、特定の重合度を有する樹脂膜を用いる方法、特開平4−2317443号公報に記載されるようなポリビニルアセタール樹脂のアセタール部分の構造を規定する方法、特開2001−220183号公報に記載されるような樹脂中の可塑剤量を規定する方法、等が挙げられる。さらに、異なる2種以上の樹脂を組み合わせることにより広い温度範囲にわたって合わせガラスの遮音性能を高めることができる。例えば、特開2001−206742号公報に記載されるような複数種の樹脂をブレンドする方法、特開2001−206741号公報、特開2001−226152号公報に記載されるような複数種の樹脂を積層する方法、特開2001−192243号公報に記載されるような中間膜中の可塑剤量に偏向を持たせる方法、等が挙げられる。
更に合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、遮熱機能を有する金属又は金属酸化物微粒子を中間膜中に含有させるか、或いは、これらを含む層を合わせガラスの積層構造中に導入する方法が挙げられる。例えば、特開2001−206743号公報、特開2001−261383号公報、特開2001−302289号公報等に記載の方法が挙げられる。酸化物微粒子としては錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)等が挙げられる。また、中間膜の透光性を上げるために、酸化物微粒子の粒径を小さくする(特許271589号公報、特開2002−293583号公報)ことや、分散性を高めること等を行ってもよい。微粒子の分散性を上げるためには、機械的に分散させる、分散剤を用いる等の既知の微粒子分散技術を用いることが出来る。また、金属又は金属酸化物微粒子だけではなく、特開平7−157344号公報、特許第319271号公報に記載されるような有機系の遮熱機能を有する染料・顔料を用いる方法も挙げられる。有機系の遮熱機能を有する染料・顔料としては、フタロシアニン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、シアニン系、ナフタロシアニン系、ピロール系、イモニウム系、ジチオール系、メルカプトナフトール系等が挙げられる。
合わせガラスの遮熱性を高める方法としては、遮熱機能を有するガラスを用いて合わせガラスを作成する方法も挙げられる。例えば、特開2001−151539号公報に記載されるようなFe等の遷移金属含有ガラス(例えば、グリーンガラス)を使用する方法、特開2001−261384号公報、特開2001−226148号公報に記載されるような、金属、金属酸化物を積層(多層コーティング)したガラス板を使用する方法等が挙げられる。
また、合わせガラスは、上述したような赤外光を吸収する特性を有する中間膜以外に、更なる赤外光遮断特性の向上を目的として、赤外光を反射する特性を有する層(赤外光反射層)を更に備えていてもよい。このような赤外光反射層は、合わせガラスを構成する積層構造の任意の位置に導入することができる。
赤外光反射層としては、金属や金属酸化物から構成される透明な層が適用できる。具体的には、例えば、金、銀、銅、錫、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、ケイ素、クロム、チタン、インジウム、アンチモン等の金属単体、合金、混合物又は酸化物からなる層が例示できる。このような赤外光反射層は、当該層を形成させるべき層上に、金属や金属酸化物を蒸着することにより形成可能である。
また、赤外光反射層としては、特表平09−506837、特表2000−506082、特表2000−506084、特表2004−525403、特表2003−515754、特開2002−231038、特表2004−503402等で示されるような、光の干渉を利用して特定波長を反射する高分子多層フィルムを用いることも出来る。
ところで、合わせガラスに上述した赤外光反射層を導入すると、赤外光吸収層とこれに隣接する層との接着性が変化して、これらの剥離が生じ易くなることがある。こうなると、例えば、基板と中間膜等との間に赤外光反射層を形成した場合などにおいては、合わせガラスが破損したときに基板の剥離・飛散が生じ易くなり、安全性の点で問題が生じることになる。そこで、このような接着性の変化を避けるために、赤外光反射層と、当該反射層に隣接する層との接着力を調整するための手段を適宜採用することが好ましい。
この接着力を調整する手段としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。すなわち、例えば、赤外光反射層とこれと隣接する層(中間膜等)との間に、赤外光吸収層よりも高いアセタール度を有するポリビニルアセタールからなる層(特開平7−187726号公報、特開平8−337446号公報)を設ける方法が挙げられる。その他、赤外光反射層とこれに隣接する層の間に、所定の割合のアセトキシ基を有するPVBからなる層(特開平8−337445号公報)を設ける方法、又は、所定のシリコーンオイルからなる層(特開平7−314609号広報)を設ける方法等が挙げられる。
このように、合わせガラスにおいては、赤外光を吸収する中間膜に加えて赤外光反射層を設けることで、両層の効果により、合わせガラスに対して更に優れた赤外光遮断特性を付与することができる。また、上述したような赤外光吸収層との接着性を調整する方法を採用すれば、一層優れた強度を有する合わせガラスを得ることも可能となる。
また、中間膜としての性能を高めるために、以下に例示するような方法を用いることもできる。耐貫通性を向上させる方法としては、例えば、特公平6−25005号公報に記載されるように樹脂基材としてα-オレフィン変性ポリビニルアセタールを使用する方法、特開平10−25390号公報に記載されるように樹脂の重合度、可塑剤添加量を規定する方法、特開平11−147736号公報に記載されるように中間膜の厚み偏差を低減させる方法、等が挙げられる。
中間膜とガラスとの接着性、密着性を改良する方法としては、例えば、特許2624779号公報に記載されるように樹脂を放射線グラフト不飽和化する方法、特開平11−322378号公報に記載されるようにシリコーンオイルを添加する方法、特開2000−1238586号公報に記載されるようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属を添加する方法、特開2002−505210号公報に記載されるように表面エネルギー改変剤を添加する方法、等が挙げられる。
耐久性試験時における白化防止方法としては、例えば、特開2000−72495号公報に記載されるように分子中に疎水性の大きな炭化水素基を有するシリコーンオイルを添加する方法、特開2000−128586号公報に記載されるようにアルカリ金属又はアルカリ土類金属添加量を規定する方法、特開2001−139352号公報に記載されるようにオキシアルキレングリコール含有量を規定する方法、特開2001−163640号公報に記載されるように規定された特性をもつ樹脂を使用する方法、特開平6−211548号公報に記載されるようにシランカップリング材シールする方法、等が挙げられる。
紫外線吸収性を向上させる方法としては、特公平4−29697号公報、特開平10−194796号公報、特開2000−128587号公報に記載されるように紫外線吸収剤を添加する方法が挙げられる。帯電防止方法としては、特開2001−240425号公報に記載されるようにカルボン酸アルカリ金属塩を添加する方法、特開2001−261384号公報に記載されるようにオキシアルキレン化合物を添加する方法、等が挙げられる。調色方法としては、特開平9−183638号公報に記載されるように染料を添加する方法が挙げられる。
また、透光性に優れる光学部材とするためには、光学部材のヘーズが50%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましく、25%以下であることが更に好ましい。かかるヘーズが50%を超えると、透光性(可視光線の透過率)が不充分となる傾向がある。
図1は、本実施形態による光学部材の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す光学部材は窓材10である。窓材10は、ガラスやプラスチック等の透光性材料からなる板状基材1上に、赤外線吸収組成物層2が設けられたものである。この赤外線樹脂組成物層2は、上述した樹脂組成物からなる光学材料で構成されている。
板状基材1を構成する材料としては、可視光透過性を有する透光性材料であれば、特に限定されるものではなく、窓材の用途に応じて適宜選択可能である。硬度、耐熱性、耐薬品性、耐久性等の観点から、上述のようにガラス又はプラスチックが好適に使用される。ガラスとしては、無機ガラス又は有機ガラス等が挙げられる。プラスチックとしては、例えばポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ノルボルネン樹脂等が例示できる。なお、板状基材1が複数存在する場合には、それぞれ同じ種類の材料で構成されていてもよく、或いは互いに異なる材料で構成されていてもよい。
また、赤外線吸収組成物層2は、上述した樹脂組成物をヘンシェルミキサー等の混合機により混合する手段、ロール混練機、或いは混練押出機等により混練混合する手段を用いることで形成することができる。また、各成分を適宜の有機溶剤に分散させ、この分散液から有機溶剤を除去する手段を用いることもできる。
このような構成を有する窓材10によれば、太陽光等の熱線成分を含む光が入射すると、赤外線吸収組成物層2が発現する熱線吸収能によって、その熱線成分の中で、特に近赤外光領域(波長700〜1200nm程度)の熱線が遮断される。一般に、この波長領域の熱線(近赤外線)は、肌が焼きつくようなジリジリとした刺激的な暑さを感じさせる傾向にあるが、窓材10を透過する光は主として可視光線であって、かかる熱線成分を含まないので、室内や屋内の温度上昇を抑えることができる。
殊に、太陽光は、巨視的に見ると可視光成分に単一ピークを有する連続波長スペクトルを有しており、赤外光に比して近赤外光が多い熱線成分は含んでいる。したがって、近赤外光の吸収特性に優れる赤外線吸収組成物層2を備える窓材10の使用は熱線の遮断に有効である。また、赤外線吸収組成物層2は、熱線を自ら吸収することにより、熱線を外部に反射するものではない。よって、室外や屋外に熱線を放射しないので、照り返しひいてはいわゆるヒートアイランド現象の発生を防止することに寄与する。
したがって、太陽光等の自然光その他の外光を取り入れるための建材(建築物の部材に限定されない)、例えば、自動車、船舶、航空機又は電車(鉄道)車両の窓材、アーケード等の通路の天蓋材、カーテン、カーポートやガレージの天蓋、サンルームの窓又は壁材、ショーウィンドウやショーケースの窓材、テント又はその窓材、ブラインド、定置住宅や仮設住宅等の屋根材や天窓その他窓材、道路標識等の塗装面の被覆材、パラソル等の日除け具材、その他熱線の遮断が必要とされる種々の部材に適用可能である。
さらに、赤外線吸収組成物層2中に上述した金属酸化物粒子が分散されている場合には、赤外線成分が金属酸化物粒子で繰り返し散乱・反射されて減衰し、やがて消失することができる。よって、熱線の遮断能を更に向上させることができる。
なお、窓材10は、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。このような構成の窓材10は、板状基材1上の主面の一方に樹脂組成物を塗布(例えば、コーティング)して形成することができる。また、板状基材1上の主面の一方に上述したシート、フィルムを貼り合せて形成することも可能である。
また、図1に示す窓材10は、板状基材1の主面の一方に赤外線吸収組成物層2が設けられているが、更に板状基材1の主面の他方にも赤外線吸収組成物層2が設けられていてもよい。またさらに、窓材10において、赤外線吸収組成物層2上に、更に赤外線吸収組成物層2が積層されていてもよい。このような構成の窓材は、上述の窓材10と同様に、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。
さらに、板状基材1上に赤外線吸収組成物層2、及び板状基材1を順次積層し一体化した窓材、板状基材1上に赤外線吸収組成物層2、赤外線吸収組成物層2、及び板状基材1を順次積層し一体化した窓材、板状部材1上に赤外線吸収組成物層2、板状部材1、及び赤外線吸収組成物層2を順次積層し一体化した窓材等が挙げられ、これらの窓材は合わせガラス窓に好適な態様である。また、このような態様の窓材においては、赤外線吸収組成物層2が2枚の板状基材1の中間膜(例えば、合わせガラス中間膜)として機能している。
また、上述した赤外線吸収組成物層2には、上述したリン化合物と希土類イオンとを含む防眩組成物を含有していても良い。このような構成を有する窓材とすることにより、優れた赤外線吸収性及び透光性に加え、優れた防眩性を有することができる。
さらに、窓材は、上述したリン化合物と希土類イオンとを含む防眩組成物からなる層を有していてもよい。例えば、板状部材1上に赤外線吸収組成物層2、及び防眩組成物層を順次積層した窓材、板状部材1上に防眩組成物層、及び赤外線吸収組成物層2を順次積層した窓材、板状部材1上に赤外線吸収組成物層2、防眩組成物層、及び赤外線吸収組成物層2を順次積層した窓材としてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[銅を含むリン化合物の調製]
(調製例1)
モノ(2−エチルヘキシル)ホスフェートとジ(2−エチルヘキシル)ホスフェートとの割合が50:50(モル比)の混合物(東京化成社製)5.0gをトルエンに15gに溶解させた溶液に酢酸銅一水和物2.37gを加え、この溶液を加熱還流しながら酢酸を溜去した。更に、得られた反応溶液からトルエンを溜去して、銅を含むリン酸エステル化合物6.04gを得た。
(調製例2)
トリエチレングリコールモノn−ブチルエーテル200gをトルエン200gに溶解し氷冷した。次いで、フラスコ内の温度を5℃に保ちながら、五酸化ニリン45.9gを添加した。一定攪拌後、100℃に加熱し得られた反応溶液の溶媒を減圧下で溜去してn−ブトキシトリエチレングリコールリン酸エステル245gを得た。得られたリン酸エステルは、モノエステル成分とジエステル成分とがモル比で50:50であった。
次いで、得られたn−ブトキシトリエチレングリコールリン酸エステル150gをトルエン450gに溶解させた溶液に酢酸銅一水和物57.5gを加え、この溶液を加熱還流しながら酢酸を溜去した。更に、得られた反応溶液からトルエンを溜去して、銅を含むリン酸エステル化合物159gを得た。
(調製例3)
2−エチルヘキシル−2−エチルヘキシルホスホネート10.0gをトルエンに15gに溶解させた溶液に酢酸銅一水和物3.29gを加え、この溶液を加熱還流しながら酢酸を溜去した。更に、得られた反応溶液からトルエンを溜去して、銅を含むホスホン酸エステル化合物11.2gを得た。
(実施例1)
調製例1で得られた銅を含むリン化合物1.2gと、酢酸カリウム0.02gと、可溶化剤であるポリエチレングリコール#400ジメタクリレート(NKエステル9G、新中村化学工業製)2.4gと、ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBH−3、積水化学社製)8.4gとを混合して樹脂組成物を得た。
(シート及びこれを用いた合わせガラスの作製)
次いで、得られた樹脂組成物をプレス機(WF−50、神藤金属工業製)により85℃で数回プレスし、更に120℃で数回プレスを行い混錬成形して厚さ1.0mmの均一な面を有するシートを作製した。
次いで、上述のようにして得られたシートを2枚のスライドガラス(縦76mm×横26mm×厚さ1.1mm)の間に挟み込み、オートクレーブにより温度130℃、圧力1.2MPaの条件で30分間の圧着処理を行うことにより、合わせガラスを作製した。
(実施例2)
可溶化剤としてポリエチレングリコール#600ジメタクリレート(NKエステル14G、新中村化学工業製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例3)
可溶化剤としてジエチレングリコールジメタクリレート(NKエステル2G、新中村化学工業製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例4)
可溶化剤としてトリエチレングリコールジメタクリレート(NKエステル3G、新中村化学工業製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例5)
可溶化剤としてポリエチレングリコール#200ジメタクリレート(NKエステル4G、新中村化学工業製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例6)
可溶化剤としてポリエチレングリコール#1000ジメタクリレート(NKエステル23G、新中村化学工業製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例7)
可溶化剤としてトリプロピレングリコールプロピルエーテルを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例8)
銅を含むリン化合物として調製例2で得られた化合物、可溶化剤としてトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサネート)(アクロス社製)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例9)
銅を含むリン化合物として調製例2で得られた化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例10)
銅を含むリン化合物として調製例2で得られた化合物、可溶化剤としてポリエチレングリコール#600ジメタクリレート、をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例11)
樹脂として実施例1と異なるポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−1、積水化学社製)、可溶化剤として1,3−ブチレングリコールジメタクリレートを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例12)
銅を含むリン化合物として調製例3で得られた化合物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例13)
可溶化剤として、ポリエチレングリコール♯400ジイソブチレートを用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例14)
可溶化剤として、ポリプロピレングリコール♯400を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例15)
可溶化剤として、テトラエチレンオキシド♯650を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(実施例16)
可溶化剤として、トリエチレングリコールジ−2エチルブチレート(3GH)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(比較例1)
実施例1と異なるポリビニルブチラール樹脂(エスレックBM−1)、可溶化剤としてアジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)(東京化成製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(比較例2)
可溶化剤として1,9−ノナンジオールジメタクリレートを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物を得た。次いで、実施例1と同様の方法により、シートを作製した後、合わせガラスを得た。
(保管試験)
実施例1〜16及び比較例1〜2で得られた各合わせガラスについて、JIS K 7136に準拠して23℃におけるヘーズを濁度計(NDH−1001DP、日本電色工業製)を用いて測定した。次いで、各合わせガラスを恒温恒湿器(GST−20、ロバート社製)に入れ、温度23℃、湿度30%の条件で保管し、2週間保管後の各合わせガラスのヘーズを上述と同様の方法により測定した。測定結果を表17に示す。
(耐光性試験)
実施例1〜16及び比較例1〜2で得られた各合わせガラスについて、JIS K 3106に準拠して可視光透過率を分光光度計(U−4000、日立製作所製)を用いて測定し、また、上述の保管試験と同様の方法によりヘーズを測定した。可視光透過率及びヘーズ測定後、各合わせガラスをキセノンウェザーメーター(アトラスC135、東洋精機製作所製)を用いて100時間紫外線を含む光を照射し、耐光性試験を行った。耐光性試験後の各合わせガラスの可視光透過率及びヘーズを同様の方法により測定した。測定結果を表17に示す。なお、耐光性試験におけるキセノンウェザーメーターの装置条件は以下の通りである。
光源:キセノンランプ、
自動照射強度:0.83W/m
ブラックパネル温度:63℃。
(耐湿性試験)
実施例1〜16及び比較例1〜2の各合わせガラスについて、ヘーズを上記と同様にして測定した後、それぞれ60℃、90%RHの条件に336時間放置する高湿処理を行った。そして、処理後の各合わせガラスのヘーズを再び測定した。高湿処理前後のヘーズの変化(Δヘーズ)に基づき、各合わせガラスの耐湿性を評価した。なお、耐湿性の評価においては、Δヘーズの絶対値が20以下であったものを耐湿性に優れるものとして○とし、20を超えたものを耐湿性に劣るものとして×とした。得られた結果を表17に示す。
Figure 0004926699
また、実施例1〜6で得られた各合わせガラスの保管試験及び耐光性試験の結果に基づいて得られた、可溶化剤の主鎖を構成するオキシエチレン単位の繰り返し数と、ヘーズとの相関を図2に示す。なお、図2中、Aは保管試験後の結果を示し、Bは耐光性試験後の結果を示す。

Claims (7)

  1. オキシアルキレン単位を有する主鎖を備える下記一般式(100)で表される化合物からなる、銅を含むリン化合物を樹脂に溶解又は分散させるための可溶化剤と、
    銅を含むリン化合物と、
    ポリビニルアセタール樹脂と、を含有し、
    前記可溶化剤の含有量は、前記ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、1〜60質量%であり、
    前記可溶化剤と前記リンを含む銅化合物との含有比率(質量比)は、95/5〜10/90(前記可溶化剤/前記リンを含む銅化合物)である、ことを特徴とする組成物。
    Figure 0004926699
    [式中、R111 はb価の有機基、R112は炭素数2〜4のアルキレン基、R113 はアルキル基又はアシル基を示し、aは1〜50の整数であり、bは1〜4の整数である。]
  2. 前記一般式(100)における前記bが1であることを特徴とする請求項1記載の組成物
  3. 前記一般式(100)における前記bが1であり、且つ、前記R111と前記R113とが同一の基であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物
  4. 前記一般式(100)における前記R113が下記一般式(101)で表される基であり、前記aが4〜50の整数であることを特徴とする請求項2又は3記載の組成物
    Figure 0004926699
    [式中、R114はアルキル基である。]
  5. 前記一般式(100)における前記R113が(メタ)アクリロイル基であることを特徴とする請求項2又は3記載の組成物
  6. 前記一般式(100)における前記R112がエチレン基であり、前記aが2〜14の整数であることを特徴とする請求項2又は3記載の組成物
  7. 前記一般式(100)における前記R112がエチレン基であり、前記aが9〜23の整数であることを特徴とする請求項2又は3記載の組成物
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