JP2004109904A - 熱線遮断体 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた熱線吸収性及び可視光透過性を有しつつ、窓等の透光性部材の多様な構成に対応できる汎用性の高い熱線遮断体を提供する。
【解決手段】窓70は、リン酸基含有化合物及び銅イオンを含む熱線カット層2、並びに金属酸化物粒子が分散された熱線カット層4が透光性を有する板状部材1上に設けられた窓材100と、透光性を有する窓材200とが一定の間隔を有して配置されたものであり、両者の間には空間Kが画成されている。また、窓材100が屋外の空間Poutに面するように、且つ、窓材200が屋内の空間Pinに面するように設置されている。
【選択図】 図7
【解決手段】窓70は、リン酸基含有化合物及び銅イオンを含む熱線カット層2、並びに金属酸化物粒子が分散された熱線カット層4が透光性を有する板状部材1上に設けられた窓材100と、透光性を有する窓材200とが一定の間隔を有して配置されたものであり、両者の間には空間Kが画成されている。また、窓材100が屋外の空間Poutに面するように、且つ、窓材200が屋内の空間Pinに面するように設置されている。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可視領域の波長を有する光(可視光)に対する透過特性を有し、且つ、近赤外線領域の波長を有する光(近赤外光)及び赤外線領域の波長を有する光(赤外光)に対する非透過特性を有する熱線遮断体に関する。
【0002】
【従来の技術】
家屋や車両等には、太陽光等の自然光その他の外光を取り入れる窓材及び屋根材等が広く用いられているが、室内に入射する太陽光には、可視光だけでなく、紫外線領域の光(紫外光)や近赤外光及び赤外光(併せて熱線)が含まれている。紫外光は人体(皮膚)に対して有害な影響を及ぼし、且つ、塗料や塗装或いはゴム製品やプラスチック製品等の劣化を引き起こす一方、熱線は室内の不要な温度上昇によって冷房空調効果を損なうといった問題がある。
【0003】
従来、可視光に対する透過特性を有し、且つ、熱線を遮断する部材として、透明性材料よりなる基層と透明性材料よりなる上層との間に、樹脂成分と銅イオン及び/又は酸化インジウム等から成る粒子状金属酸化物とを含む中間層が形成された熱線吸収性複合体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−211220号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる従来の複合体は、樹脂成分を必須とする中間層を含む三層構造の積層体であり、種々の用途に対する部材構成の汎用性が必ずしも十分ではなく、ガラス材やプラスチック材(樹脂)といった透光性部材を用いた窓材の形態の多様化に十分に対応できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、優れた熱線吸収性及び可視光透過性を有しつつ、窓等の透光性部材の多様な構成に対応できる汎用性の高い熱線遮断体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明による熱線遮断体は、透光性を有する基層と、銅イオンを含む第1の透光層とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成を有する熱線遮断体は、第1の透光層に含まれる銅イオンが発現する優れた可視光透過特性と、近赤外光(例えば、波長約700〜1200nm)及び赤外光(例えば、波長約1200〜1700nm)を含む熱線に対する優れた吸収特性とを合わせ持つと共に、窓材等の透光性部材の母材である基層との任意の組み合せによって、種々の用途やそれに合わせた種々の部材構成へ対応させることが平易となる。
【0009】
また、第1の透光層がリン酸基含有化合物を含むものであると好ましく、さらに、第1の透光層が金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されて成るものであるとより好ましい。
【0010】
第1の透光層に含まれる銅イオンは、リン酸基含有化合物への配位によって溶解状態で存在し、太陽光等の外光のうち熱線成分を吸収することにより特に近赤外光が有効且つ十分に遮断される。これに加え、金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散された第1の透光層に外光が入射すると、熱線成分が粉体や粒体の表面で主として散乱・反射され、それが繰り返されてやがて減衰・消滅する。これにより、場合によっては銅イオンによって吸収されない赤外光の遮断が補償される。
【0011】
さらに、第1の透光層が基層の少なくとも一方の面上に積層されて成るとより好ましい。
【0012】
このようにすれば、透光性部材の基層上に直接第1の透光層が形成され、従来のように中間層としなくとも、母材たる単一の基層と一体化させて種々の形態に適用させることができる。
【0013】
或いは、金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されて成る第2の透光層を備えるようにしてもよい。
【0014】
こうすれば、特に近赤外光の吸収によって熱線を遮断する特性に優れる第1の透光層と、特に赤外光の反射・散乱による減衰によって熱線を遮断する特性に優れる第2の透光層といった互いに機能原理の異なる複数の透光層を基層に対して独立に用いることができ、必要に応じて組み合わせることが簡便となる。
【0015】
この場合、第2の透光層が基層の少なくとも一方の面上に積層されて成ると好ましい。
【0016】
このようにすれば、透光性部材の基層上に直接第2の透光層が形成され、従来のように中間層としなくとも、母材たる単一の基層と一体化させて種々の形態に適用させることができる。
【0017】
さらに、波長1200〜1700nmの光に対する反射能を有する反射層を備えてもよい。
【0018】
こうすれば、金属酸化物から成る粉体又は粒体を分散させた層を形成することなく、或いは、かかる層(第2の透光層等)と併用することにより、特に赤外光の散乱・反射による熱線の遮断が可能となる。
【0019】
具体的には、基層を複数有するものであったり、複数の基層が一定の間隔で配置されて成るものであると有用である。この場合、基層が例えば板ガラスであれば、熱線遮断体を合わせガラス窓や複層ガラス窓用の透光性部材として用いることができる。
【0020】
また、複層ガラス材等として用いることができる後者の場合、当該熱線遮断体が一方の面に太陽光が入射するものであるときに、複数の基層のうち太陽光が入射する基層に第1の透光層、又は第1及び第2の透光層が設けられて成ると好適である。
【0021】
こうすれば、熱線遮断体を構成する複数の基層のうち、第1の透光層、又は第1及び第2の透光層が設けられた一の基層に太陽光が入射すると、主として第1の透光層が熱線を吸収するので、当該基層が熱線のエネルギーによって加熱される。これに対し、他の基層には熱線成分が十分に排除された光が入射し、透過するので、他の基層は一の基層に比して温度上昇が抑えられる。また、基層間は一定の間隔を有して配置されているので、直接的な熱伝導による温度上昇も防止される。このような熱線遮断体を例えば建物や車両の窓材として用いれば、室内側の基層の温度上昇が抑えられるので、熱線遮断体である窓自体が熱源となることが防止され、室温の上昇が抑止される。これは、特に、夏場の冷房空調時に有利である。
【0022】
一方、当該熱線遮断体が一方の面に太陽光が入射するものであるときに、前記複数の基層のうち該太陽光が出射される基層に前記第1の透光層、又は、第1及び第2の透光層が設けられて成るものであっても好適である。
【0023】
こうすれば、先に述べたのと逆に、例えば室内側に配置され得る基層に第1の基層、又は第1及び第2の透光層が設けられた状態となるので、太陽光の熱線成分がこの室内側の一の基層で吸収され、そのエネルギーによって加熱される。また、冬場で室内が暖房空調されている場合、熱源からの熱線もその一の基層で吸収され、更に加熱される。この熱は、一定間隔をおいて配置された他の基層へ直接的に熱伝導されないので、室内側へ放射等され、室外等へ放散されることが防止される。
【0024】
より具体的には、リン酸基含有化合物が、リン酸エステル化合物、ホスホン酸エステル化合物、及びホスフィン酸エステル化合物のうち少なくともいずれか一種であると、銅イオンの配位による溶解を容易ならしめることができるので好ましい。
【0025】
さらに、銅イオンの配位による溶解を一層容易ならしめ、耐環境性を高めると共に可視光透過特性を一層向上させる観点より、リン酸基含有化合物が、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5);
【0026】
【化3】
で表されるものであることが望ましい。
【0027】
ここで、式中、R1〜R8は、炭素数が1〜30である分岐状、直鎖状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基、又はエステル基を示し、少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基、又はエステル基で置換されていても置換されていなくてもよく、且つ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
なお、上記( )で囲まれた「メタ」の意味は、アクリル酸若しくはその誘導体、及び、メタクリル酸若しくはその誘導体の両方を記載する必要があるときに、記載を簡潔にするため便宜上使用されている記載方法であり、本明細書においても採用したものである(以下同様)。
【0029】
さらにまた、リン酸基含有化合物は、式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)における基R1〜R8が、下記式(6)〜(16);
【0030】
【化4】
で表されるものであると更に一層好ましい。
【0031】
ここで、式(6)〜(16)中、R11〜R17は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が6〜20のアリール基又はアラルキル基を示し、芳香環を構成する炭素原子に結合した少なくとも一つの水素原子が、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよく、R21〜R25は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基を示す(ただし、R23、R24、及びR25が全て水素原子の場合を除く)。
【0032】
また、R31及びR32は炭素数が1〜6のアルキレン基を示し、R41は炭素数が1〜10のアルキレン基を示し、R51及びR52は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、R61は水素原子又はメチル基を示し、mは1〜6の整数を示し、kは0〜5の整数を示し、pは2〜97の整数を示し、rは1〜10の整数を示す。
【0033】
さらに、R71、R72及びR73は、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が2〜20であり且つ不飽和結合を少なくとも一つ有する基、フェニル基、又は、少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、若しくは、炭素数が2〜20であり且つ不飽和結合を少なくとも一つ有する基で置換されたフェニル基を示し、vは1〜5の整数を示し、wは1〜3の整数を示し、xは1〜4の整数を示し、R71、R72及びR73は互いに、又は、v、w若しくはxが2以上のときにそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0034】
またさらに、R74は、水素原子又はメチル基を示し、R75は、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はフェニル基を示し、R76は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキレン基を示し、yは0〜4の整数を示し、zは1〜5の整数を示し、y+zは1〜5の整数を示す。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による熱線遮断体の好適な実施形態について説明する。
【0036】
〈熱線遮断体の構成例〉
図1〜6は、それぞれ本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す窓材10(熱線遮断体)は、透光性を有する板ガラスやプラスチック板等の板状部材1(基層)上にリン酸基含有化合物及び銅イオンを含む熱線カット層2(第1の透光層)が設けられたものであり、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。このような構成の窓材10は、板状部材1上の一方面にフィルム状の熱線カット層2をコーティングしたり、液状又は粘着性を有するゾル・ゲル状の熱線カット層2を塗布したり、一定の厚さを有する板状に成形加工した熱線カット層2と板状部材1とを貼合せしめたり、といった方法で形成することができる。なお、熱線カット層2を構成する成分の詳細については後述する。
【0037】
また、図2に示す窓材20は、板状部材1上に、例えば紫外線吸収剤、赤外光を含む光の反射能を有する金属薄膜等の機能層3(反射層)、熱線カット層2、機能層3、及び板状部材1が積層されたものであり、合わせガラス窓に好適な一態様である。このような構成の窓材20において熱線カット層2を板状部材1と一体化させるには、機能層3等の中間層を介在させること以外は、窓材10を形成するのと同様に行うことができる。なお、板状部材1、熱線カット層2、及び機能層3を積層する順番は、任意且つ所望に決定することができる。
【0038】
さらに、図3に示す窓材30は、板状部材1の一方面に熱線カット層2が設けられ、且つ、他方面に、金属酸化物から成る粉体又は粒体が透光性樹脂や透明ガラス等の中に分散されて成る熱線カット層4(第2の透光層)が設けられたものであり、窓材10と同様に、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。
【0039】
またさらに、図4に示す窓材40は、熱線カット層2上に熱線カット層4が設けられたこと以外は、図1に示す窓材10と同様に構成されたものであり、窓材10と同様に、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。なお、熱線カット層2,4を積層する順番としては、いずれが板状部材1に接するようにしてもよい。
【0040】
さらにまた、図5に示す窓材50は、板状部材1上に、熱線カット層2、機能層3、熱線カット層4、及び板状部材1が積層されたものであり、合わせガラス窓に好適な一態様である。板状部材1、熱線カット層2,4、及び機能層3を積層して一体化させるには、上述した窓材20を形成するのと同様に行うことができる。なお、板状部材1、熱線カット層2,4、及び機能層3を積層する順番は、任意且つ所望に決定することができる。
【0041】
また、図6に示す窓材60は、板状部材1上に、熱線カット層2,4、及び板状部材1が積層されたものであり、合わせガラス窓に好適な一態様である。各層1,2,4を積層して一体化させるには、上述した窓材20を形成するのと同様に行うことができる。
【0042】
〈熱線カット層〉
上述したように熱線カット層2は、銅イオンとリン酸基含有化合物とを含むものである。この銅イオンを供給するための銅塩の具体例としては、酢酸銅、酢酸銅一水和物、蟻酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅等の有機酸の銅塩無水物、水和物若しくは水化物、或いは、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩の無水物、水和物若しくは水化物、又は、水酸化銅が挙げられる。これらのなかでは、酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅、水酸化銅、塩基性炭酸銅が好ましく用いられる。
【0043】
また、熱線カット層2には、銅イオン以外の金属イオン(以下、「他の金属イオン」という)が含有されていてもよいこのような他の金属イオンとしては、特に限定されず、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は、遷移金属等のイオンが挙げられ、より具体的には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、マンガン、マグネシウム、ニッケル等のイオンを列挙できる。
【0044】
また、リン酸基含有化合物としては、上記式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)で表されるものが好ましく、これらは単独で用いても二種以上組み合わせて用いてもよい。より好ましくは、式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)における基R1〜R8が上記式(6)〜(16)で表されるものであることが望ましい。
【0045】
式(1)で表されるホスホン酸モノエステル化合物の例としては、下記式(17)−a〜eで表される化合物等が挙げられる。
【0046】
【化5】
【0047】
また、式(2)で表されるホスフィン酸化合物の例としては、下記式(18)−a〜fで表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化6】
【0049】
また、式(3)又は(4)で表されるリン酸エステル化合物の例としては、下記式(19)、式(20)−a1〜n2、式(21)−a1〜l2、式(22)−a1〜s2で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
【0058】
【化15】
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
【化19】
【0063】
【化20】
【0064】
【化21】
【0065】
【化22】
【0066】
【化23】
【0067】
【化24】
【0068】
【化25】
【0069】
【化26】
【0070】
また、式(5)で表されるホスホン酸化合物としては、下記式(23)−a〜mで表される化合物が挙げられ、さらに、式(5)におけるR8が上記式(7)〜(16)で表されるものでもよい。
【0071】
【化27】
【0072】
このようなリン酸基含有化合物と銅イオンとを含む熱線カット層2を形成する方法としては、例えば、本出願人による特開2002−69305号公報に記載の光学材料を形成する方法を適用することができる。
【0073】
また、熱線カット層2は、銅イオンを含むと共に、金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されていてもよい。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、硫化亜鉛、無水アンチモン酸亜鉛、スズドープド酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープド酸化スズ(ATO)等が挙げられ、粒子径が好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下の粉体又は粒体として分散されていると好適である。
【0074】
また、前述の如く、熱線カット層4は、透光性樹脂や透明ガラス等の中に金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されて成るものであり、この金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、硫化亜鉛、無水アンチモン酸亜鉛、スズドープド酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープド酸化スズ(ATO)等が挙げられ、熱線カット層4においても、粒子径が好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下の粉体又は粒体として分散されていると好適である。また、透光性樹脂としては、上記の特開2002−69305号公報に記載されているアクリル系樹脂等を好ましく用いることができる。
【0075】
このような構成を有する窓材10〜60によれば、太陽光等の熱線成分を含む光が入射すると、熱線カット層2が発現する熱線吸収能によって、その熱線成分、主として700〜1700nmの波長領域の光が吸収され、特に近赤外光領域(波長700〜1200nm程度)の熱線が十分に遮断される。一般に、この波長領域の熱線(近赤外線)は、肌が焼きつくようなジリジリとした刺激的な暑さを感じさせる傾向にあるが、窓材10〜60を透過する光は主として可視光線であって、かかる熱線成分を含まないので、室内や屋内の温度上昇を十分に抑えることができる。
【0076】
殊に、太陽光は、巨視的に見ると可視光成分に単一ピークを有する連続波長スペクトルを有しており、赤外光に比して近赤外光が多い熱線成分は含んでいる。したがって、近赤外光の吸収特性に優れる熱線カット層2を備える窓材10〜60の使用は熱線の遮断に極めて有効である。また、熱線カット層2は、熱線を自ら吸収することにより、熱線を外部に反射するものではない。よって、室外や屋外に熱線を放射しないので、照り返しひいてはいわゆるヒートアイランド現象の発生を防止することに寄与する。
【0077】
さらに、熱線カット層2中に上述した金属酸化物粒子が分散されている場合、及び、熱線カット層4を備える窓材30〜60を用いた場合には、銅イオンによって十分に赤外線成分が十分に吸収されないときでも、そのような赤外線が金属酸化物粒子で繰り返し散乱・反射されて減衰し、やがて消失する。よって、熱線の遮断能を更に向上させることができる。
【0078】
そして、窓材10〜60、特に窓材10,30,40はその積層構成が極めて簡易であり、合わせガラス構造を有する窓材20,50,60もそれらの異本的な構成は窓材10,30,40と同様であるため、種々の形態や構成が求められる窓の多様化に対応し易く、汎用性を向上させることができる。
【0079】
次に、図7〜9は、それぞれ本発明による熱線遮断体の他の形態例を模式的に示す断面図であり、各図における窓70,80,90(熱線遮断体)は、いずれも複層ガラス窓として二層ガラス窓に用いられるものである。また、図7〜9は、各窓70,80,90が家屋や車両の窓として設置された状態を示すものである。
【0080】
窓70,80は、窓材100(熱線遮断体),200が一定の間隔を有して配置されたものであり、窓90は、窓材100,100が一定の間隔を有して配置されたものであり、それぞれ各窓材の間に空間Kが画成されている。窓材100としては、例えば図1〜図6に示す各窓材10〜60、或いはそれらを適宜組み合わせて一体化した合わせガラスが挙げられる。一方、窓材200としては、一般に用いられる板ガラス等が用いられる。窓70は、窓材100が屋外の空間Poutに面するように、且つ、窓材200が屋内の空間Pinに面するようにして設置されている。これとは逆に、窓80は、窓材200が空間Poutに面するように、且つ、窓材100が空間Pinに面するように設置されている。他方、窓90は、両空間Pout,Pinのそれぞれに窓材100が面するようにされている。
【0081】
このように構成された窓70によれば、太陽光等の熱線成分を含む外光Soutが屋外の空間Poutから窓材100に入射すると、外光Soutに含まれる熱線成分が窓材100に備わる熱線カット層2又は熱線カット層2,4によって遮断されると共に、外光Soutに含まれる可視光線が空間K及び窓材200を通過して屋内の空間Pinに入射する。これにより、屋内の温度上昇を十分に抑制できる。
【0082】
このとき、窓材100は、吸収した熱線のエネルギーによって加熱され、その温度が上昇する。これにより、窓材100は熱源となり得るが、窓材100,200間に空間Kが介在するので、窓材100から窓材200への熱伝導が妨げられ、その結果、窓材100の熱が屋内の空間Pinに伝達することが防止される。よって、屋内が冷房空調されているような場合にも屋内の温度上昇を一層防止することができる。
【0083】
一方、窓80によれば、太陽光等の熱線成分を含む外光Sout(図8において図示せず)が屋外の空間Poutから窓材200に入射すると、熱線成分を殆どそのまま含んだ状態で窓材200及び空間Kを透過し、窓材100へ入射する。窓材100へ達した外光Soutに含まれる熱線成分は、窓材100に備わる熱線カット層2又は熱線カット層2,4によって遮断されると共に、外光Soutに含まれる可視光線が屋内の空間Pinに入射する。
【0084】
このとき、窓材100は、吸収した熱線のエネルギーによって加熱され、その温度が上昇する。これにより、窓材100が熱源となり得、窓材100,200間に空間Kが介在するので、窓材100から窓材200への熱伝導が妨げられる。その結果、窓材100の熱が屋外の空間Poutに伝達して放散してしまうことが防止される。よって、屋内が暖房空調されているような場合に屋内の温度低下を防止することができる。また、屋内に暖房器具等の熱源があり熱線Sinが放射されているようなときには、屋外へ向けて出射された熱線Sinが、窓材100によって吸収される。したがって、窓材100に更に熱が印加されるので、屋内の暖房効果を一層高めることができる。
【0085】
このような窓70,80を用途や時期によって、すなわち、夏場の冷房効果を特に高めたい場所に窓70を用いる一方、冬場の暖房効果を特に高めたい場所に窓80を用いるといった使用が可能となり、エネルギー消費量を低減できると共に快適な空間を創生できる。他方、窓90によれば、上述した窓70,80が奏する効果が期待できる。この場合、外光Soutの熱線成分の熱エネルギーを屋内の空間Pinに面した窓材100に付与する効果は低下するものの、単一種類の窓90により、夏・冬の季節を問わず、上述したエネルギー消費量の低減効果を得ることができる。
【0086】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、板状部材1は平板形状に限らず、例えば曲面を有していてもよく、屈曲していてもよい。また、一定間隔で配置された窓材100,200を三枚以上有する複層窓としてもよい。
【0087】
さらに、板状部材1、熱線カット層2,4、及び機能層3の組み合せは任意であり、図示のものに限定されない。それらの中では、例えば、窓材20,50,60から成る単層窓、それらを窓材100として用いる複層の窓70,80,90、窓材100として窓材10,40を用い且つ空間Pout,Pinに板状部材1が面するように配置された窓70,80,90、及び、三層以上の複層窓の両端層以外の層に窓材10〜60を用いた構成は、熱線カット層2が外気との接触から妨げられるので、不都合な程に劣化が懸念されるときに有用である。
【0088】
【実施例】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
〈実施例1〉
板状部材1として、厚さ3mmのPMMAから成る樹脂板を用意し、この一方の面に、銅イオンが1質量%の割合で含まれ且つ式(21)−g2で表されるリン酸基含有化合物を含むフィルムを貼合して、熱線遮断体としての窓材10を得た。
【0090】
〈実施例2〉
銅イオンが1質量%の割合で含まれ且つ式(21)−g1及び式(21)−g2で表されるリン酸基含有化合物の等モル混合物を含むフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱線遮断体としての窓材10を得た。
【0091】
〈比較例1〜7〉
市販されている種々の窓用板材を準備し、それぞれ、
透明アクリル板(三菱レーヨン製;アクリライトL)、
有機吸収色素入り樹脂板A(日本ポリエステル製;エポカーボシート)、
有機吸収色素入り樹脂板B(日本カーリット製;CIR入りPCフィルム)、
無機酸化物分散樹脂板D(帝人製;レフテル)、
青板ガラス(日本板硝子製;ソーダガラス(3mm厚))、
熱線吸収ガラスE(日本板硝子製;ブルーペーン)、
熱線反射ガラスF(日本板硝子製;レフライトS)、
を比較例1〜7の窓材として選定した。
【0092】
〈分光透過率測定〉
実施例1及び2並びに比較例1〜7の窓材について、分光光度計「U−4000」((株)日立製作所製)を用いて、分光透過率測定を行った。図10は、実施例1及び2並びに比較例1〜5の窓材に対する分光透過スペクトルの測定結果の一例を示すグラフである。図中、曲線L1〜L7は、それぞれ実施例1及び2、並びに、比較例1〜5の窓材の分光透過スペクトルを示す。
【0093】
また、表1に、実施例1及び2並びに比較例1〜7の窓材の可視光透過率、太陽光反射率、日射透過率、及び太陽光吸収率をまとめて示す。表中、「可視光透過率」は、波長380〜780nmの領域における透過率の平均値を示し、「反射率」は、波長380〜780nmの領域における反射率の平均値を示し、「日射透過率」は、JIS−R3106に準拠して、340〜1800nmの範囲で計算した日射透過率を示し、「太陽光吸収率」は、「可視光透過率」と「日射透過率」との差を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の熱線遮断体によれば、優れた熱線吸収性及び可視光透過性を有しつつ、窓等の透光性部材の多様な構成に対応させることが簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明による熱線遮断体の他の形態例を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明による熱線遮断体の他の形態例を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明による熱線遮断体の他の形態例を模式的に示す断面図である。
【図10】実施例1及び2並びに比較例1〜5の窓材に対する分光透過スペクトルの測定結果の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1…板状部材(基層)、2…熱線カット層(第1の透光層)、3…機能層、4…熱線カット層(第2の透光層)、10,20,30,40,50,60,100…窓材(熱線遮断体)、70,80,90…窓(熱線遮断体)、Pin…屋内の空間、Pout…屋外の空間、Sin…熱線、Sout…外光。
【発明の属する技術分野】
本発明は、可視領域の波長を有する光(可視光)に対する透過特性を有し、且つ、近赤外線領域の波長を有する光(近赤外光)及び赤外線領域の波長を有する光(赤外光)に対する非透過特性を有する熱線遮断体に関する。
【0002】
【従来の技術】
家屋や車両等には、太陽光等の自然光その他の外光を取り入れる窓材及び屋根材等が広く用いられているが、室内に入射する太陽光には、可視光だけでなく、紫外線領域の光(紫外光)や近赤外光及び赤外光(併せて熱線)が含まれている。紫外光は人体(皮膚)に対して有害な影響を及ぼし、且つ、塗料や塗装或いはゴム製品やプラスチック製品等の劣化を引き起こす一方、熱線は室内の不要な温度上昇によって冷房空調効果を損なうといった問題がある。
【0003】
従来、可視光に対する透過特性を有し、且つ、熱線を遮断する部材として、透明性材料よりなる基層と透明性材料よりなる上層との間に、樹脂成分と銅イオン及び/又は酸化インジウム等から成る粒子状金属酸化物とを含む中間層が形成された熱線吸収性複合体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−211220号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる従来の複合体は、樹脂成分を必須とする中間層を含む三層構造の積層体であり、種々の用途に対する部材構成の汎用性が必ずしも十分ではなく、ガラス材やプラスチック材(樹脂)といった透光性部材を用いた窓材の形態の多様化に十分に対応できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、優れた熱線吸収性及び可視光透過性を有しつつ、窓等の透光性部材の多様な構成に対応できる汎用性の高い熱線遮断体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明による熱線遮断体は、透光性を有する基層と、銅イオンを含む第1の透光層とを備えることを特徴とする。
【0008】
このような構成を有する熱線遮断体は、第1の透光層に含まれる銅イオンが発現する優れた可視光透過特性と、近赤外光(例えば、波長約700〜1200nm)及び赤外光(例えば、波長約1200〜1700nm)を含む熱線に対する優れた吸収特性とを合わせ持つと共に、窓材等の透光性部材の母材である基層との任意の組み合せによって、種々の用途やそれに合わせた種々の部材構成へ対応させることが平易となる。
【0009】
また、第1の透光層がリン酸基含有化合物を含むものであると好ましく、さらに、第1の透光層が金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されて成るものであるとより好ましい。
【0010】
第1の透光層に含まれる銅イオンは、リン酸基含有化合物への配位によって溶解状態で存在し、太陽光等の外光のうち熱線成分を吸収することにより特に近赤外光が有効且つ十分に遮断される。これに加え、金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散された第1の透光層に外光が入射すると、熱線成分が粉体や粒体の表面で主として散乱・反射され、それが繰り返されてやがて減衰・消滅する。これにより、場合によっては銅イオンによって吸収されない赤外光の遮断が補償される。
【0011】
さらに、第1の透光層が基層の少なくとも一方の面上に積層されて成るとより好ましい。
【0012】
このようにすれば、透光性部材の基層上に直接第1の透光層が形成され、従来のように中間層としなくとも、母材たる単一の基層と一体化させて種々の形態に適用させることができる。
【0013】
或いは、金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されて成る第2の透光層を備えるようにしてもよい。
【0014】
こうすれば、特に近赤外光の吸収によって熱線を遮断する特性に優れる第1の透光層と、特に赤外光の反射・散乱による減衰によって熱線を遮断する特性に優れる第2の透光層といった互いに機能原理の異なる複数の透光層を基層に対して独立に用いることができ、必要に応じて組み合わせることが簡便となる。
【0015】
この場合、第2の透光層が基層の少なくとも一方の面上に積層されて成ると好ましい。
【0016】
このようにすれば、透光性部材の基層上に直接第2の透光層が形成され、従来のように中間層としなくとも、母材たる単一の基層と一体化させて種々の形態に適用させることができる。
【0017】
さらに、波長1200〜1700nmの光に対する反射能を有する反射層を備えてもよい。
【0018】
こうすれば、金属酸化物から成る粉体又は粒体を分散させた層を形成することなく、或いは、かかる層(第2の透光層等)と併用することにより、特に赤外光の散乱・反射による熱線の遮断が可能となる。
【0019】
具体的には、基層を複数有するものであったり、複数の基層が一定の間隔で配置されて成るものであると有用である。この場合、基層が例えば板ガラスであれば、熱線遮断体を合わせガラス窓や複層ガラス窓用の透光性部材として用いることができる。
【0020】
また、複層ガラス材等として用いることができる後者の場合、当該熱線遮断体が一方の面に太陽光が入射するものであるときに、複数の基層のうち太陽光が入射する基層に第1の透光層、又は第1及び第2の透光層が設けられて成ると好適である。
【0021】
こうすれば、熱線遮断体を構成する複数の基層のうち、第1の透光層、又は第1及び第2の透光層が設けられた一の基層に太陽光が入射すると、主として第1の透光層が熱線を吸収するので、当該基層が熱線のエネルギーによって加熱される。これに対し、他の基層には熱線成分が十分に排除された光が入射し、透過するので、他の基層は一の基層に比して温度上昇が抑えられる。また、基層間は一定の間隔を有して配置されているので、直接的な熱伝導による温度上昇も防止される。このような熱線遮断体を例えば建物や車両の窓材として用いれば、室内側の基層の温度上昇が抑えられるので、熱線遮断体である窓自体が熱源となることが防止され、室温の上昇が抑止される。これは、特に、夏場の冷房空調時に有利である。
【0022】
一方、当該熱線遮断体が一方の面に太陽光が入射するものであるときに、前記複数の基層のうち該太陽光が出射される基層に前記第1の透光層、又は、第1及び第2の透光層が設けられて成るものであっても好適である。
【0023】
こうすれば、先に述べたのと逆に、例えば室内側に配置され得る基層に第1の基層、又は第1及び第2の透光層が設けられた状態となるので、太陽光の熱線成分がこの室内側の一の基層で吸収され、そのエネルギーによって加熱される。また、冬場で室内が暖房空調されている場合、熱源からの熱線もその一の基層で吸収され、更に加熱される。この熱は、一定間隔をおいて配置された他の基層へ直接的に熱伝導されないので、室内側へ放射等され、室外等へ放散されることが防止される。
【0024】
より具体的には、リン酸基含有化合物が、リン酸エステル化合物、ホスホン酸エステル化合物、及びホスフィン酸エステル化合物のうち少なくともいずれか一種であると、銅イオンの配位による溶解を容易ならしめることができるので好ましい。
【0025】
さらに、銅イオンの配位による溶解を一層容易ならしめ、耐環境性を高めると共に可視光透過特性を一層向上させる観点より、リン酸基含有化合物が、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5);
【0026】
【化3】
で表されるものであることが望ましい。
【0027】
ここで、式中、R1〜R8は、炭素数が1〜30である分岐状、直鎖状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリル基、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基、又はエステル基を示し、少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、オキシアルキル基、ポリオキシアルキル基、オキシアリール基、ポリオキシアリール基、アシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキル基、又はエステル基で置換されていても置換されていなくてもよく、且つ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
なお、上記( )で囲まれた「メタ」の意味は、アクリル酸若しくはその誘導体、及び、メタクリル酸若しくはその誘導体の両方を記載する必要があるときに、記載を簡潔にするため便宜上使用されている記載方法であり、本明細書においても採用したものである(以下同様)。
【0029】
さらにまた、リン酸基含有化合物は、式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)における基R1〜R8が、下記式(6)〜(16);
【0030】
【化4】
で表されるものであると更に一層好ましい。
【0031】
ここで、式(6)〜(16)中、R11〜R17は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が6〜20のアリール基又はアラルキル基を示し、芳香環を構成する炭素原子に結合した少なくとも一つの水素原子が、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよく、R21〜R25は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基を示す(ただし、R23、R24、及びR25が全て水素原子の場合を除く)。
【0032】
また、R31及びR32は炭素数が1〜6のアルキレン基を示し、R41は炭素数が1〜10のアルキレン基を示し、R51及びR52は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、R61は水素原子又はメチル基を示し、mは1〜6の整数を示し、kは0〜5の整数を示し、pは2〜97の整数を示し、rは1〜10の整数を示す。
【0033】
さらに、R71、R72及びR73は、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が2〜20であり且つ不飽和結合を少なくとも一つ有する基、フェニル基、又は、少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、若しくは、炭素数が2〜20であり且つ不飽和結合を少なくとも一つ有する基で置換されたフェニル基を示し、vは1〜5の整数を示し、wは1〜3の整数を示し、xは1〜4の整数を示し、R71、R72及びR73は互いに、又は、v、w若しくはxが2以上のときにそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0034】
またさらに、R74は、水素原子又はメチル基を示し、R75は、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はフェニル基を示し、R76は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキレン基を示し、yは0〜4の整数を示し、zは1〜5の整数を示し、y+zは1〜5の整数を示す。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による熱線遮断体の好適な実施形態について説明する。
【0036】
〈熱線遮断体の構成例〉
図1〜6は、それぞれ本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す窓材10(熱線遮断体)は、透光性を有する板ガラスやプラスチック板等の板状部材1(基層)上にリン酸基含有化合物及び銅イオンを含む熱線カット層2(第1の透光層)が設けられたものであり、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。このような構成の窓材10は、板状部材1上の一方面にフィルム状の熱線カット層2をコーティングしたり、液状又は粘着性を有するゾル・ゲル状の熱線カット層2を塗布したり、一定の厚さを有する板状に成形加工した熱線カット層2と板状部材1とを貼合せしめたり、といった方法で形成することができる。なお、熱線カット層2を構成する成分の詳細については後述する。
【0037】
また、図2に示す窓材20は、板状部材1上に、例えば紫外線吸収剤、赤外光を含む光の反射能を有する金属薄膜等の機能層3(反射層)、熱線カット層2、機能層3、及び板状部材1が積層されたものであり、合わせガラス窓に好適な一態様である。このような構成の窓材20において熱線カット層2を板状部材1と一体化させるには、機能層3等の中間層を介在させること以外は、窓材10を形成するのと同様に行うことができる。なお、板状部材1、熱線カット層2、及び機能層3を積層する順番は、任意且つ所望に決定することができる。
【0038】
さらに、図3に示す窓材30は、板状部材1の一方面に熱線カット層2が設けられ、且つ、他方面に、金属酸化物から成る粉体又は粒体が透光性樹脂や透明ガラス等の中に分散されて成る熱線カット層4(第2の透光層)が設けられたものであり、窓材10と同様に、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。
【0039】
またさらに、図4に示す窓材40は、熱線カット層2上に熱線カット層4が設けられたこと以外は、図1に示す窓材10と同様に構成されたものであり、窓材10と同様に、単層ガラス窓又はその母材、合わせガラス窓の単層、複層ガラス窓の一層等に好適に用いることができる。なお、熱線カット層2,4を積層する順番としては、いずれが板状部材1に接するようにしてもよい。
【0040】
さらにまた、図5に示す窓材50は、板状部材1上に、熱線カット層2、機能層3、熱線カット層4、及び板状部材1が積層されたものであり、合わせガラス窓に好適な一態様である。板状部材1、熱線カット層2,4、及び機能層3を積層して一体化させるには、上述した窓材20を形成するのと同様に行うことができる。なお、板状部材1、熱線カット層2,4、及び機能層3を積層する順番は、任意且つ所望に決定することができる。
【0041】
また、図6に示す窓材60は、板状部材1上に、熱線カット層2,4、及び板状部材1が積層されたものであり、合わせガラス窓に好適な一態様である。各層1,2,4を積層して一体化させるには、上述した窓材20を形成するのと同様に行うことができる。
【0042】
〈熱線カット層〉
上述したように熱線カット層2は、銅イオンとリン酸基含有化合物とを含むものである。この銅イオンを供給するための銅塩の具体例としては、酢酸銅、酢酸銅一水和物、蟻酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅等の有機酸の銅塩無水物、水和物若しくは水化物、或いは、塩化銅、硫酸銅、硝酸銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩の無水物、水和物若しくは水化物、又は、水酸化銅が挙げられる。これらのなかでは、酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅、水酸化銅、塩基性炭酸銅が好ましく用いられる。
【0043】
また、熱線カット層2には、銅イオン以外の金属イオン(以下、「他の金属イオン」という)が含有されていてもよいこのような他の金属イオンとしては、特に限定されず、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は、遷移金属等のイオンが挙げられ、より具体的には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、マンガン、マグネシウム、ニッケル等のイオンを列挙できる。
【0044】
また、リン酸基含有化合物としては、上記式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)で表されるものが好ましく、これらは単独で用いても二種以上組み合わせて用いてもよい。より好ましくは、式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)における基R1〜R8が上記式(6)〜(16)で表されるものであることが望ましい。
【0045】
式(1)で表されるホスホン酸モノエステル化合物の例としては、下記式(17)−a〜eで表される化合物等が挙げられる。
【0046】
【化5】
【0047】
また、式(2)で表されるホスフィン酸化合物の例としては、下記式(18)−a〜fで表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化6】
【0049】
また、式(3)又は(4)で表されるリン酸エステル化合物の例としては、下記式(19)、式(20)−a1〜n2、式(21)−a1〜l2、式(22)−a1〜s2で表される化合物が挙げられる。
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
【化9】
【0053】
【化10】
【0054】
【化11】
【0055】
【化12】
【0056】
【化13】
【0057】
【化14】
【0058】
【化15】
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
【化18】
【0062】
【化19】
【0063】
【化20】
【0064】
【化21】
【0065】
【化22】
【0066】
【化23】
【0067】
【化24】
【0068】
【化25】
【0069】
【化26】
【0070】
また、式(5)で表されるホスホン酸化合物としては、下記式(23)−a〜mで表される化合物が挙げられ、さらに、式(5)におけるR8が上記式(7)〜(16)で表されるものでもよい。
【0071】
【化27】
【0072】
このようなリン酸基含有化合物と銅イオンとを含む熱線カット層2を形成する方法としては、例えば、本出願人による特開2002−69305号公報に記載の光学材料を形成する方法を適用することができる。
【0073】
また、熱線カット層2は、銅イオンを含むと共に、金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されていてもよい。金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、硫化亜鉛、無水アンチモン酸亜鉛、スズドープド酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープド酸化スズ(ATO)等が挙げられ、粒子径が好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下の粉体又は粒体として分散されていると好適である。
【0074】
また、前述の如く、熱線カット層4は、透光性樹脂や透明ガラス等の中に金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されて成るものであり、この金属酸化物としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、硫化亜鉛、無水アンチモン酸亜鉛、スズドープド酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープド酸化スズ(ATO)等が挙げられ、熱線カット層4においても、粒子径が好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下の粉体又は粒体として分散されていると好適である。また、透光性樹脂としては、上記の特開2002−69305号公報に記載されているアクリル系樹脂等を好ましく用いることができる。
【0075】
このような構成を有する窓材10〜60によれば、太陽光等の熱線成分を含む光が入射すると、熱線カット層2が発現する熱線吸収能によって、その熱線成分、主として700〜1700nmの波長領域の光が吸収され、特に近赤外光領域(波長700〜1200nm程度)の熱線が十分に遮断される。一般に、この波長領域の熱線(近赤外線)は、肌が焼きつくようなジリジリとした刺激的な暑さを感じさせる傾向にあるが、窓材10〜60を透過する光は主として可視光線であって、かかる熱線成分を含まないので、室内や屋内の温度上昇を十分に抑えることができる。
【0076】
殊に、太陽光は、巨視的に見ると可視光成分に単一ピークを有する連続波長スペクトルを有しており、赤外光に比して近赤外光が多い熱線成分は含んでいる。したがって、近赤外光の吸収特性に優れる熱線カット層2を備える窓材10〜60の使用は熱線の遮断に極めて有効である。また、熱線カット層2は、熱線を自ら吸収することにより、熱線を外部に反射するものではない。よって、室外や屋外に熱線を放射しないので、照り返しひいてはいわゆるヒートアイランド現象の発生を防止することに寄与する。
【0077】
さらに、熱線カット層2中に上述した金属酸化物粒子が分散されている場合、及び、熱線カット層4を備える窓材30〜60を用いた場合には、銅イオンによって十分に赤外線成分が十分に吸収されないときでも、そのような赤外線が金属酸化物粒子で繰り返し散乱・反射されて減衰し、やがて消失する。よって、熱線の遮断能を更に向上させることができる。
【0078】
そして、窓材10〜60、特に窓材10,30,40はその積層構成が極めて簡易であり、合わせガラス構造を有する窓材20,50,60もそれらの異本的な構成は窓材10,30,40と同様であるため、種々の形態や構成が求められる窓の多様化に対応し易く、汎用性を向上させることができる。
【0079】
次に、図7〜9は、それぞれ本発明による熱線遮断体の他の形態例を模式的に示す断面図であり、各図における窓70,80,90(熱線遮断体)は、いずれも複層ガラス窓として二層ガラス窓に用いられるものである。また、図7〜9は、各窓70,80,90が家屋や車両の窓として設置された状態を示すものである。
【0080】
窓70,80は、窓材100(熱線遮断体),200が一定の間隔を有して配置されたものであり、窓90は、窓材100,100が一定の間隔を有して配置されたものであり、それぞれ各窓材の間に空間Kが画成されている。窓材100としては、例えば図1〜図6に示す各窓材10〜60、或いはそれらを適宜組み合わせて一体化した合わせガラスが挙げられる。一方、窓材200としては、一般に用いられる板ガラス等が用いられる。窓70は、窓材100が屋外の空間Poutに面するように、且つ、窓材200が屋内の空間Pinに面するようにして設置されている。これとは逆に、窓80は、窓材200が空間Poutに面するように、且つ、窓材100が空間Pinに面するように設置されている。他方、窓90は、両空間Pout,Pinのそれぞれに窓材100が面するようにされている。
【0081】
このように構成された窓70によれば、太陽光等の熱線成分を含む外光Soutが屋外の空間Poutから窓材100に入射すると、外光Soutに含まれる熱線成分が窓材100に備わる熱線カット層2又は熱線カット層2,4によって遮断されると共に、外光Soutに含まれる可視光線が空間K及び窓材200を通過して屋内の空間Pinに入射する。これにより、屋内の温度上昇を十分に抑制できる。
【0082】
このとき、窓材100は、吸収した熱線のエネルギーによって加熱され、その温度が上昇する。これにより、窓材100は熱源となり得るが、窓材100,200間に空間Kが介在するので、窓材100から窓材200への熱伝導が妨げられ、その結果、窓材100の熱が屋内の空間Pinに伝達することが防止される。よって、屋内が冷房空調されているような場合にも屋内の温度上昇を一層防止することができる。
【0083】
一方、窓80によれば、太陽光等の熱線成分を含む外光Sout(図8において図示せず)が屋外の空間Poutから窓材200に入射すると、熱線成分を殆どそのまま含んだ状態で窓材200及び空間Kを透過し、窓材100へ入射する。窓材100へ達した外光Soutに含まれる熱線成分は、窓材100に備わる熱線カット層2又は熱線カット層2,4によって遮断されると共に、外光Soutに含まれる可視光線が屋内の空間Pinに入射する。
【0084】
このとき、窓材100は、吸収した熱線のエネルギーによって加熱され、その温度が上昇する。これにより、窓材100が熱源となり得、窓材100,200間に空間Kが介在するので、窓材100から窓材200への熱伝導が妨げられる。その結果、窓材100の熱が屋外の空間Poutに伝達して放散してしまうことが防止される。よって、屋内が暖房空調されているような場合に屋内の温度低下を防止することができる。また、屋内に暖房器具等の熱源があり熱線Sinが放射されているようなときには、屋外へ向けて出射された熱線Sinが、窓材100によって吸収される。したがって、窓材100に更に熱が印加されるので、屋内の暖房効果を一層高めることができる。
【0085】
このような窓70,80を用途や時期によって、すなわち、夏場の冷房効果を特に高めたい場所に窓70を用いる一方、冬場の暖房効果を特に高めたい場所に窓80を用いるといった使用が可能となり、エネルギー消費量を低減できると共に快適な空間を創生できる。他方、窓90によれば、上述した窓70,80が奏する効果が期待できる。この場合、外光Soutの熱線成分の熱エネルギーを屋内の空間Pinに面した窓材100に付与する効果は低下するものの、単一種類の窓90により、夏・冬の季節を問わず、上述したエネルギー消費量の低減効果を得ることができる。
【0086】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、板状部材1は平板形状に限らず、例えば曲面を有していてもよく、屈曲していてもよい。また、一定間隔で配置された窓材100,200を三枚以上有する複層窓としてもよい。
【0087】
さらに、板状部材1、熱線カット層2,4、及び機能層3の組み合せは任意であり、図示のものに限定されない。それらの中では、例えば、窓材20,50,60から成る単層窓、それらを窓材100として用いる複層の窓70,80,90、窓材100として窓材10,40を用い且つ空間Pout,Pinに板状部材1が面するように配置された窓70,80,90、及び、三層以上の複層窓の両端層以外の層に窓材10〜60を用いた構成は、熱線カット層2が外気との接触から妨げられるので、不都合な程に劣化が懸念されるときに有用である。
【0088】
【実施例】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
〈実施例1〉
板状部材1として、厚さ3mmのPMMAから成る樹脂板を用意し、この一方の面に、銅イオンが1質量%の割合で含まれ且つ式(21)−g2で表されるリン酸基含有化合物を含むフィルムを貼合して、熱線遮断体としての窓材10を得た。
【0090】
〈実施例2〉
銅イオンが1質量%の割合で含まれ且つ式(21)−g1及び式(21)−g2で表されるリン酸基含有化合物の等モル混合物を含むフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして熱線遮断体としての窓材10を得た。
【0091】
〈比較例1〜7〉
市販されている種々の窓用板材を準備し、それぞれ、
透明アクリル板(三菱レーヨン製;アクリライトL)、
有機吸収色素入り樹脂板A(日本ポリエステル製;エポカーボシート)、
有機吸収色素入り樹脂板B(日本カーリット製;CIR入りPCフィルム)、
無機酸化物分散樹脂板D(帝人製;レフテル)、
青板ガラス(日本板硝子製;ソーダガラス(3mm厚))、
熱線吸収ガラスE(日本板硝子製;ブルーペーン)、
熱線反射ガラスF(日本板硝子製;レフライトS)、
を比較例1〜7の窓材として選定した。
【0092】
〈分光透過率測定〉
実施例1及び2並びに比較例1〜7の窓材について、分光光度計「U−4000」((株)日立製作所製)を用いて、分光透過率測定を行った。図10は、実施例1及び2並びに比較例1〜5の窓材に対する分光透過スペクトルの測定結果の一例を示すグラフである。図中、曲線L1〜L7は、それぞれ実施例1及び2、並びに、比較例1〜5の窓材の分光透過スペクトルを示す。
【0093】
また、表1に、実施例1及び2並びに比較例1〜7の窓材の可視光透過率、太陽光反射率、日射透過率、及び太陽光吸収率をまとめて示す。表中、「可視光透過率」は、波長380〜780nmの領域における透過率の平均値を示し、「反射率」は、波長380〜780nmの領域における反射率の平均値を示し、「日射透過率」は、JIS−R3106に準拠して、340〜1800nmの範囲で計算した日射透過率を示し、「太陽光吸収率」は、「可視光透過率」と「日射透過率」との差を示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の熱線遮断体によれば、優れた熱線吸収性及び可視光透過性を有しつつ、窓等の透光性部材の多様な構成に対応させることが簡易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明による熱線遮断体の形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明による熱線遮断体の他の形態例を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明による熱線遮断体の他の形態例を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明による熱線遮断体の他の形態例を模式的に示す断面図である。
【図10】実施例1及び2並びに比較例1〜5の窓材に対する分光透過スペクトルの測定結果の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
1…板状部材(基層)、2…熱線カット層(第1の透光層)、3…機能層、4…熱線カット層(第2の透光層)、10,20,30,40,50,60,100…窓材(熱線遮断体)、70,80,90…窓(熱線遮断体)、Pin…屋内の空間、Pout…屋外の空間、Sin…熱線、Sout…外光。
Claims (14)
- 透光性を有する基層と、銅イオンを含む第1の透光層と、を備える熱線遮断体。
- 前記第1の透光層が、リン酸基含有化合物を含むものである請求項1記載の熱線遮断体。
- 前記第1の透光層が、金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されて成るものである請求項1又は2に記載の熱線遮断体。
- 前記第1の透光層が前記基層の少なくとも一方の面上に積層されて成る請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱線遮断体。
- 金属酸化物から成る粉体又は粒体が分散されて成る第2の透光層を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱線遮断体。
- 前記第2の透光層が前記基層の少なくとも一方の面上に積層されて成る請求項5記載の熱線遮断体。
- 波長1200〜1700nmの光に対する反射能を有する反射層を備える請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱線遮断体。
- 前記基層を複数有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱線遮断体。
- 前記複数の基層が一定の間隔で配置されて成る請求項8記載の熱線遮断体。
- 当該熱線遮断体が一方の面に太陽光が入射するものであるときに、前記複数の基層のうち該太陽光が入射する基層に前記第1の透光層、又は第1及び第2の透光層が設けられて成る、請求項8又は9に記載の熱線遮断体。
- 当該熱線遮断体が一方の面に太陽光が入射するものであるときに、前記複数の基層のうち該太陽光が出射される基層に前記第1の透光層、又は、第1及び第2の透光層が設けられて成る、請求項8又は9に記載の熱線遮断体。
- 前記リン酸基含有化合物は、リン酸エステル化合物、ホスホン酸エステル化合物、及びホスフィン酸エステル化合物のうち少なくともいずれか一種である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の熱線遮断体。
- 前記リン酸基含有化合物は、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5);
で表されるものである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱線遮断体。 - 前記リン酸基含有化合物は、前記式(1)、(2)、(3)、(4)、又は(5)における基R1〜R8が、下記式(6)〜(16);
R11〜R17は炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が6〜20のアリール基又はアラルキル基を示し、芳香環を構成する炭素原子に結合した少なくとも一つの水素原子が、炭素数1〜6のアルキル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよく、;
R21〜R25は水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基を示し(ただし、R23、R24、及びR25が全て水素原子の場合を除く);
R31及びR32は炭素数が1〜6のアルキレン基を示し;
R41は炭素数が1〜10のアルキレン基を示し;
R51及びR52は炭素数が1〜20のアルキル基を示し;
R61は水素原子又はメチル基を示し;
mは1〜6の整数を示し、kは0〜5の整数を示し、pは2〜97の整数を示し、rは1〜10の整数を示し;
R71、R72及びR73は、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、炭素数が2〜20であり且つ不飽和結合を少なくとも一つ有する基、フェニル基、又は、少なくとも一つの水素原子が、ハロゲン原子、炭素数が1〜10のアルキル基、若しくは、炭素数が2〜20であり且つ不飽和結合を少なくとも一つ有する基で置換されたフェニル基を示し;
vは1〜5の整数を示し、wは1〜3の整数を示し、xは1〜4の整数を示し;R71、R72及びR73は互いに、又は、v、w若しくはxが2以上のときにそれぞれ同一でも異なっていてもよく;
R74は、水素原子又はメチル基を示し;
R75は、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、又はフェニル基を示し;
R76は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキレン基を示し、yは0〜4の整数を示し、zは1〜5の整数を示し、y+zは1〜5の整数を示す。]、
で表されるものである、請求項13記載の熱線遮断体。
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