JP5391593B2 - 不燃性化粧板 - Google Patents

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Description

本発明は、不燃性化粧板に関する。
従来から、化粧材と、不燃性基材、せっこうボード、火山性ガラス質複層板などを用いた基板とを貼り合わせた化粧板は、建築物の天井、壁材をはじめとする内外装用建材や家具などの様々な用途に使用されている。なかでも、このような基材とプラスチックフィルム、化粧単板などの化粧材との間に金属箔を挿入した防火性を有する化粧材が多く開発され、不燃認定を受けるべく種々の試みがなされている。
例えば、火山性ガラス質複層板を基材に用い、これに無機系シーラー、あるいはウレタン系シーラーを設けた上に表面化粧紙を貼着した防火性能を有する化粧板や、火山性ガラス質複層板などの無機質板を基材として、これに湿気硬化型ウレタンシーラーなどの目止めシーラーを施した後、接着剤層を介して化粧層を設けた無機質不燃板が開示されている(例えば、特許文献1及び2)。しかし、これらの化粧板、不燃板は、溶剤系のウレタン系シーラーが用いられるため、作業者や環境への負荷が高くなってしまうといった問題があった。さらに、このような不燃板は、基材にシーラーを塗布した後、オフラインで化粧シートを貼着させて製造することが一般的であるが、基材を堆積した場合に(積圧荷重5N/cm2程度)、シーラー剤が染み出ること、シーラー剤が十分に硬化していないこと、に起因した基材のブロッキングを生じるといった問題もあった。
特許文献1及び2で用いられる火山性ガラス質複層板は、防火性能や、搬送時及び施工時に発生する不具合(欠けや割れなど)が少ないといった点で優れた基材であり、不燃性化粧板の基材としての利用が期待されている。しかし、当該基材を用いた不燃性化粧板は、不燃性、作業員や環境への低い負荷、シーラー剤を塗布した基材を堆積してもブロッキングを生じることがない優れた作業性、剥離強度、及び意匠性、といった性能を全て高いレベルで有するには至っておらず、さらなる開発が望まれていた。
特開2002−355910号公報 特開2001−301084号公報
本発明は、このような状況の下で、不燃性を有し、作業員や環境への負荷が低く、優れた作業性、剥離強度、及び意匠性を有する不燃性化粧板を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、難燃性基材上にシーラー層と接着剤層と化粧シート層とを順に積層した化粧板であって、該シーラー層の形成に特定のシーラー剤を用いることで、前記課題を解決しうることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、難燃性基材上に、シーラー層、接着剤層、及び化粧シート層が順に積層された不燃性化粧板であって、難燃性基材が、火山性ガラス質複層板上に、少なくとも輻射シート層と紙質層とが順に積層されてなるものであり、シーラー層が、水溶性樹脂及び/又は平均粒径0.06μm以下の水性エマルション系樹脂を含有するシーラー剤を硬化してなるものである不燃性化粧板に関する。
本発明によれば、不燃性を有し、作業員や環境への負荷が低く、優れた作業性、剥離強度、及び意匠性を有する不燃性化粧板を提供することができる。
本発明の不燃性化粧板の典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の好ましい不燃性化粧板1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、本発明の不燃性化粧板1は、火山性ガラス質複層板21に、輻射シート層22、及び紙質層23が順に積層された難燃性基材2上に、水溶性樹脂及び/又は平均粒径0.06μm以下の水性エマルション系樹脂を含有するシーラー剤からなるシーラー層3、接着剤層4、及び化粧シート層5が順に積層されたものである。
[不燃性]
本発明の不燃性化粧板が有する不燃性は、人的災害などの発生を抑制する見地から望まれるものである。ここで、「不燃性」とは、ISO5660−1の規定に基づき、不燃材料の規定に適合するものであり、具体的には、本発明の不燃性化粧板1に対して、ISO5660−1に準拠したコーンカロリ燃焼試験により、前記不燃性化粧板1の時間に対する総発熱量及び時間に対する発熱速度を求めた際に、(i)加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、(ii)加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、かつ(iii)加熱開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと、である。
[難燃性基材2]
難燃性基材2は、火山性ガラス質複層板21(JIS A5440「不燃火山性ガラス質複層板」に準拠)に、少なくとも輻射シート層22、及び紙質層23が順に積層された難燃性の基材である。
(火山性ガラス質複層板21)
火山性ガラス質複層板21としては、JIS A5440「不燃火山性ガラス質複層板」に準拠するものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、市販される「ダイライトFA(商品名)」:大建工業株式会社製、「オーマル(商品名)」:岩倉化学工業株式会社製などを例示することができる。
(輻射シート層22)
輻射シート層22は、本発明の不燃性化粧板に、不燃性を付与するとともに、適度な強度を付与することで、反りを防止し、寸法安定性を高める目的で、設けられる層である。
輻射シート層22の形成に用いられる輻射シートとしては、例えば金属箔、黒鉛シートなどが好ましく挙げられる。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、銅箔、銀箔、鉄箔、ステンレス鋼箔などが挙げられ、なかでも、加工が容易であり、かつ腐食しにくいという観点から、アルミニウム箔、銅箔、及びステンレス鋼箔が好ましく、アルミニウム箔がより好ましい。黒鉛シートとしては、合成黒鉛を高倍率に膨張させた膨張黒鉛を加圧によりシート状に成形して得られる膨張黒鉛シートなどが好ましく挙げられる。これらの金属箔や黒鉛シートは、入手が容易な市販のものを使用することができ、例えば黒鉛シートとしては、「PERMA−FOIL(商品名)」:(東洋炭素株式会社製)が挙げられる。
このような輻射シートとしては、輻射率が60%以上であるものが好ましく、不燃性の付与の観点から70%以上であることがより好ましい。ここで、輻射率は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、測定温度25℃、測定波長領域2.5〜14μmにおいて、理想黒体と試料の全放射エネルギーの測定値から算出した値である。
輻射シートの厚みは、加工性、及び施工性の観点から、0.01〜2.0mmが好ましく、0.01〜0.5mmがより好ましく、金属箔の場合は0.025mm(25μm)前後のものがさらに好ましい。
(紙質層23)
紙質層23は、火山性ガラス質複層板21表面の凹凸を吸収して、化粧シート層の浮きを防止し、該化粧シート層との接着性を向上させて、光沢を有する輻射シートを用いた場合は、その光沢を隠蔽するために、設けられる層である。従って、紙質層23は、不燃性化粧板1の化粧シート層5側からみて、輻射シート層22よりも上に積層されることを要するものである。
紙質層23に用いられるものとしては、通常基材として用いられる紙類であれば、制限なく使用することができる。基材として用いられる各種の紙類としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙などが使用できる。これらの紙類は、紙基材の繊維間又は他層と紙類との層間強度の向上、あるいはケバ立ち防止のため、さらにアクリル系樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂などの樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものであってもよい。例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙などである。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反など、建材分野で使われることの多い各種紙類が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙などを用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維などの無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成樹脂繊維が挙げられる。
紙質層23の厚さは、難燃性基材2の厚さが後述する範囲内にあれば特に制限はないが、秤量が5〜200g/m2程度、好ましくは10〜150g/m2の範囲であり、10〜50g/m2の範囲がより好ましい。
(接着剤)
火山性ガラス質複層板21、輻射シート層22、及び紙質層23の接着に用いられる接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)接着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂接着剤、酢酸ビニル−アクリル系共重合体接着剤などの酢酸ビニル系接着剤;水性ウレタン系接着剤、水性ビニルウレタン系接着剤、変性ウレタン系接着剤、ウレタン変性ビニル系接着剤などのウレタン系接着剤;スチレン−ブタジエンラテックス系接着剤、水性高分子イソシアネート系接着剤、及びアクリル系粘着剤などの接着剤が挙げられる。なかでも、水性の接着剤が好ましく、水性ウレタン系接着剤がより好ましい。
接着剤の塗布量は、1〜10g/m2(固形分基準)程度であり、2〜6g/m2(固形分基準)が好ましく、2〜4g/m2(固形分基準)がより好ましい。
(難燃性基材の作製方法)
難燃性基材2は、例えば、火山性ガラス質複層板に接着剤を塗布し、輻射シートを貼り合わせて、さらに接着剤を塗布し、薄様紙を貼り合わせて、常温下において1〜10日間放置することで得られる。難燃性基材2としては、上記のようにして火山性ガラス質複層板21、輻射シート層22、及び紙質層23を貼りつけて作製したものを用いてもよいし、市販のもの(例えば、「ダイライトFTL(商品名)」:大建工業株式会社製など)を用いることもできる。
難燃性基材2の厚みは、材質にもよるが、通常2〜15mmであり、総発熱量、搬送性及び施工性の観点から、好ましくは2〜10mmである。該難燃性基材2を構成する火山性ガラス質複層板21、輻射シート22、及び紙質層23に用いられる各種紙類の厚みは、合計して上記の範囲になるように適宜選択すればよい。
なお、本発明に用いられる難燃性基材2は、さらに紙質層が積層されていてもよく、例えば、火山性ガラス質複層板に、紙質層、輻射シート層、及び紙質層が順に積層されたものであってもよい。
[シーラー層3]
本発明の不燃性化粧板1には、難燃性基材2の表面を平滑にして均質な塗面を得る、いわゆる目止めのため、及び上記した紙質層の紙質強化により不燃性化粧板に優れた剥離強度を付与するために、シーラー層3が、難燃性基材2と接着剤層4との間に設けられる。
シーラー層3の形成には、水溶性樹脂及び/又は平均粒径0.06μm以下の水性エマルション系樹脂を含有するシーラー剤が用いられる。
(水溶性樹脂)
水溶性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂;ウレタン系樹脂;アクリルポリオールとイソシアネートとによるアクリルウレタン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル酸系樹脂;エチレンオキシド系樹脂;メラミン系樹脂;ジアリルフタレート系樹脂;ポリN−ビニルピロリドン系樹脂;ポリアミド系樹脂;アミノ系樹脂;フェノール系樹脂;アクリルアミド系樹脂;ヌクレオチド、ペプチド、多糖類などの水溶性天然高分子などが挙げられる。また、これらの樹脂は、単独で、あるいは混合して用いてもよい。これらの樹脂のうち、優れた作業性及び剥離強度を得る観点から、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。
ウレタン系樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン系樹脂、1液硬化型(湿気硬化型)ウレタン系樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂などが挙げられる。アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−スチレン共重合体などが挙げられる。
水溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、5〜90℃が好ましく、10〜90℃がより好ましい。水溶性樹脂のガラス転移温度(Tg)が上記範囲内にあれば、シーラー剤を塗付した難燃性基材を堆積してもブロッキングが生じないなどの作業性の向上が図れ、また、良好なシーラー層を得ることができる。
また、水溶性樹脂は、上記したような樹脂を主剤とし、イソシアネート化合物などの硬化剤を添加する2液硬化型であることが好ましい。水溶性樹脂が2液硬化型のものであれば、不燃性化粧板の剥離強度を向上させることができる。好ましい2液硬化型の水溶性樹脂としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
(水性エマルション系樹脂)
水性エマルション系樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、セラック系樹脂、カゼイン系樹脂、及びこれらの混合樹脂、ならびにこれらに架橋成分を導入したものなどが挙げられる。なかでも、優れた作業性及び剥離強度を得る観点から、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂が好ましく、酢酸ビニル系樹脂のなかでもエチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。また、水系エマルション系樹脂も、不燃性化粧板の剥離強度を向上させる観点から2液硬化型であることが好ましい。
上記した水性エマルション系樹脂の最低造膜温度(MFT)は、0〜90℃が好ましく、0〜80℃がより好ましい。水性エマルション系樹脂の最低造膜温度(MFT)が上記範囲内にあれば、シーラー剤を塗付した難燃性基材を堆積してもブロッキングが生じないなどの作業性の向上が図れ、また、良好なシーラー層を得ることができる。
本発明においては、水性エマルション系樹脂の平均粒径は0.06μm以下であることを要し、0.05μm以下であることが好ましい。水系エマルション系樹脂の平均粒径が上記の範囲内にあれば、水系エマルション系樹脂が、紙質層に十分浸透するため、紙質強化を有効に図ることができ、本発明の不燃性化粧板の剥離強度を向上させることが可能となる。なお、水系エマルション系樹脂の平均粒径は、レーザ解析/散乱式粒度分布測定装置を用いて、屈折率1.20で測定した体積基準のメジアン径のことをいう。レーザ解析/散乱式粒度分布測定装置としては、例えば「LA−920(型番)」(株式会社堀場製作所製)などが挙げられる。
本発明において、水性エマルション系樹脂は、水、必要に応じて有機系媒体中に分散させた水性エマルション系樹脂組成物として用いられる。上記の平均粒径を有する水性エマルション系樹脂は一様分散系を形成するので、本発明における水性エマルション系樹脂組成物は、可溶化系に近い形態を有するものである。
水性エマルション系樹脂組成物中の水性エマルション系樹脂の含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。含有量が上記範囲内にあれば、樹脂成分が沈降しにくくなり保存安定性が良好となり、また粘度が高くなりすぎることがないので取り扱いが容易となる。
本発明で用いられる水性エマルション系樹脂組成物は、水性エマルション系樹脂を構成するモノマーを水及び必要に応じて用いられる有機系媒体中に分散し、必要に応じて各種添加剤を加えて、例えば乳化重合、懸濁重合、溶液重合、バルク重合、無乳化重合などの公知の方法を用いて重合することにより得られる。また、上記の重合においては、モノマーと重合開始剤とを混合し、乳化装置を用いて乳化したのちに、重合してもよい。乳化装置としては、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、(超)高圧ホモジナイザーなどが挙げられる。
本発明においては、水溶性樹脂及び/又は所定の水性エマルション系樹脂からなるシーラー剤の塗布量は、0.5〜25g/m2(固形物換算)であることが好ましい。0.5g/m2以上であれば、接着剤層4の難燃性基材2への浸透を防止すると共に、接着剤層4との密着性を向上するという効果を好適に奏することができる。25g/m2以下であれば、効率よく効果を得ることができるので、経済的であり、また、防火性能の点でも好ましい。
また、シーラー剤の塗布時の粘度は、1〜700mPasであることが好ましく、5〜100mPasであることがより好ましい。シーラー剤の塗布時の粘度が上記範囲内にあれば、塗布性及び紙質層への浸透性が良好となる。
上記のようなシーラー剤を紙質層23上に塗布するシーラー層3の形成において、シーラー剤は、通常、紙質層23を構成する紙類中にその一部が含浸するが、全部が含浸することもある。従って、本発明におけるシーラー層3の態様としては、シーラー層3の一部は紙質層23中に形成する態様のほか、シーラー層3の全部が紙質層23中に形成する態様も含むものとする。
水系のシーラー剤は、紙質層の内部まで樹脂が浸透しないなどの理由により、紙質強化には不十分であることが一般的である。しかし、本発明は、水溶性樹脂及び/又は所定の水性エマルション系樹脂を用いることで、水系のシーラー剤であるにもかかわらず、十分な紙質強化を図ることができ、不燃性化粧板の剥離強度を向上させうることを見出した。
[接着剤層4]
接着剤層4は、シーラー層3を設けた難燃性基材2と化粧シート層5とを接着するために設けられる層である。接着剤層4の形成に用いられる接着剤としては、特に制限はなく、例えば、難燃性基材に用いられる接着剤や、エマルション系接着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。なかでも、エマルション系接着剤、及びホットメルト接着剤は、有機溶剤が不要であることから、環境への負荷が低い接着剤であり好ましい。
エマルション系接着剤に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などを挙げることができ、これらを用いた公知のエマルション系接着剤を、用途に応じて適宜選択して使用すればよい。
接着剤は、水酸化アルミニウムを含有することができる。該水酸化アルミニウムは、本発明の不燃性化粧板に不燃性を付与するものであり、難燃性付与剤として添加される。
水酸化アルミニウムの平均粒径は2〜15μmが好ましい。この範囲内であれば、接着剤のチキソ性が適当となるので塗工適性が良好となり、接着剤中の水酸化アルミニウムの安定性も良好となる。ここで、水酸化マグネシウムの平均粒径は、レーザ錯乱法における粒度分布測定法によって求められる体積基準の値であって、より具体的にはレーザ錯乱式粒度分布計にて測定した値として求めることができる。
また、接着剤中の水酸化アルミニウムの含有量は、不燃性の付与及び接着剤の塗工適性、接着性ならびに安定性の観点から、接着剤に用いられる樹脂100質量部に対して、20〜80質量部が好ましく、40〜80質量部がより好ましく、40〜65質量部がさらに好ましい。
接着剤層4は、上記した接着剤を、ダイコート、グラビアコート、バーコート、スプレーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式より塗布して形成することができる。当該接着剤の塗布量は、25〜80g/m2(固形分基準)が好ましく、30〜60g/m2(固形分基準)がより好ましい。この範囲内であれば、接着性能を良好に保つことができ、表面特性、及び化粧板の表面の平滑性が向上する。
このようにして形成された接着剤層4の厚みは、通常20〜65μm程度であり、25〜50μmがより好ましい。
[化粧シート層5]
化粧シート層5は、本発明の不燃性化粧板1に意匠性を付与するために設けられる。化粧シート層5に用いられる化粧シートとしては、通常化粧板に用いられる樹脂シートなどを基材とするものを制限なく用いることが可能であり、樹脂シートを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;アクリル変性ウレタン系樹脂、ポリエステル変性ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体変性ウレタン系樹脂などのウレタン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂などの酢酸ビニル系樹脂などを挙げることができ、これらのうち1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
また、化粧シートとしては、上記の樹脂からなる着色樹脂シートと透明樹脂シートとを模様を挟んで得られるダブリングシートを用いることもできる。この場合、着色樹脂シート、及び透明樹脂シートに用いられる樹脂は同じでも異なっていてもよく、ポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができ、樹脂の組合せとしては、ポリエチレン−ポリエチレン、ポリエチレン−ポリプロピレン、あるいはポリプロピレン−ポリプロピレンの組合せが好ましい。
ダブリングシートは、例えば上記樹脂からなる樹脂シートAの表面にコロナ放電処理などを施してプライマー層を設け、該樹脂シートAにベタ層及び/又は絵柄層を印刷形成した後に、上記樹脂からなる樹脂シートBを押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーションなどの方法により接着・圧着させて得られる。また、樹脂シートBは、表面にエンボス加工を施してもよく、エンボス加工が施されたダブリングシートは、ダブリングエンボスシートと呼ばれる。なお、樹脂シートAは、一般に着色樹脂シートが用いられるが、無着色シートであってもよい。
上記の樹脂のなかでは、安価な点からポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂が好ましく、また、意匠性の観点からダブリングシートが好ましい。
化粧シートの厚みは、30〜200μmが好ましく、100〜160μmがより好ましい。
化粧シート層に用いられる化粧シートの作製は、上記のような化粧シートを構成する樹脂、酸化チタン、シリカなどの無機顔料や有機顔料、必要に応じて加えられる水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウム、及びその他の添加剤からなる樹脂組成物を、ロールミル、一軸押出機、二軸押出機、ニーダーなどを用いて、混合、混練、溶融混練などを行ない、Tダイによりシート化する(溶融押出法)などの公知の方法により行えばよい。また、上記のような化粧シートを構成する樹脂を含む市販の化粧シートを用いてもよい。
[汚れ防止層6]
汚れ防止層6は、図2に示されるように、難燃性基材2のシーラー層、接着剤層、化粧シート層などの層を設ける面の他方の面に、裏面接着剤層7を介して、必要に応じて設けられる層である。汚れ防止層6としては、化粧板に通常用いられる紙製、樹脂製及びこれらを貼り合わせて得られるシート、汚れ防止用として用いられるシート、電離放射線硬化性樹脂組成物などの樹脂組成物を塗布して硬化してなる層などを制限なく適用することができるが、なかでも防湿シートが好ましい。汚れ防止層6に防湿シートを適用することで、後加工ラインでの作業、運搬作業あるいは現場施工時における難燃性基材に用いられる火山性ガラス質複層板に起因する白い粉などによる汚れ(ハンドリング汚れ)や粉こぼれなどを防止しつつ、反りの発生を低減することも可能となる。
(防湿シート)
汚れ防止層6に用いられる防湿シートとしては、高密度ポリエチレン樹脂の押出コート層の両面に紙層を貼着した3層構造のものが好ましく挙げられる(以下、防湿シートAという。)。ここで、高密度ポリエチレン樹脂とは密度0.941g/m3以上のポリエチレン樹脂のことをいい、低密度ポリエチレン樹脂とは密度0.910〜0.925g/m3のポリエチレン樹脂のことをいう。防湿シートAに用いられる紙層としては、秤量20〜50g/m2の建材用プリント用紙、純白紙などにラテックスや合成樹脂を含浸したもの、あるいは、合成樹脂を混抄させて層間強度を強化した薄葉紙(いわゆる紙間強化紙)などが好ましく使用される。秤量が20〜50g/m2であれば、柔軟すぎないので、貼合せ加工時に皺が起こりにくく、紙層からの剥がれ及び湿気が浸透しにくいので不具合が生じにくくなる。また、難燃性基材2側の紙層には、レーヨン不織布などの化繊紙と一般に呼ばれる化学繊維紙を用いることにより、その層間、あるいは高密度ポリエチレンとの界面の強度を強くすることも可能である。
また、防湿性を有する高密度ポリエチレン樹脂の押出コート層は、防湿性として、透湿度30g/m2・24hr以下、好ましくは透湿度15g/m2・24hr以下の性能を有することが望ましく、その厚みとしては、防湿シートとしての剛性、及び紙層との貼着作業性、材料コストの点から15〜30μm程度が好ましい。ここで、ポリエチレン樹脂を同一厚みで貼着した場合に、高密度ポリエチレン樹脂(密度0.942g/m3)と低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/m3)とを対比すると、その透湿度は、例えば、15μmの時、それぞれ20g/m2・24hr、35g/m2・24hrであり、また30μmの時には10g/m2・24hr、20g/m2・24hrである。すなわち、高密度ポリエチレン樹脂の高防湿性能が発揮されるか、または低密度ポリエチレン樹脂と同等の防湿性能でよい場合には、薄膜化できるので、安価な防湿シートが作製可能となる。
防湿シートAの作製方法としては、紙層と高密度ポリエチレン樹脂のフイルムとを接着剤を使うか、あるいは熱などで貼合せる方法、2枚の紙層にエクストルージョンラミネート法により高密度ポリエチレン樹脂の層を溶融押出しと同時にラミネートする方法などが挙げられるが、紙層/高密度ポリエチレン樹脂/紙層といった3層構造にするときには、エクストルージョンラミネート法により一度に3つの層を貼合せる方法が、工程が少なくて済むので最適な方法である。
また、防湿シートとしては、合成樹脂製基材と蒸着層とからなるもの(以下、防湿シートBという。)も好ましく用いられる。防湿シートBに用いられる合成樹脂製基材としては、上記した化粧シート5の樹脂シートを形成する樹脂が用いられるシートなどが挙げられる。当該シートの厚さは、5〜50μmが好ましく、9〜30μmがより好ましく、9〜25μmがさらに好ましい。
蒸着層としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる無機物の蒸着層、あるいは酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物の薄膜からなる無機酸化物蒸着層が好ましく挙げられる。この蒸着層は、真空蒸着法、プラズマ活性化化学反応蒸着法などの周知の蒸着法で、上記した合成樹脂製基材層の少なくとも一方の面に薄膜形成される。また、蒸着層の上には、防湿シートの防湿性を向上させる目的で、ポリビニルアルコールあるいはポリビニルアルコールに酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物を添加した組成物をロールコート法、グラビアコート法などの周知の塗布方法でポリビニルアルコール層あるいは当該組成物層を塗布形成することができる。
防湿シートBは、難燃性基材2との接着性を向上させる目的で、接着用プライマー層を有することができる。プライマー層を形成する樹脂としては、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂などが挙げられ、これらの樹脂は単独で又は複数を混合して用いることができる。接着用プライマー層は、上記した樹脂をロールコート法やグラビア印刷法などの塗布方法により塗布することで、形成される。
上記した以外の接着用プライマー層に用いられる樹脂としては、アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体(I)と、イソシアネート(II)とからなる樹脂が特に好ましく挙げられる。上記共重合体(I)のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分(A)、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール成分(B)、及びジイソシアネート成分(C)を配合して反応させてプレポリマーとし、該プレポリマーにジアミンなどの鎖延長剤(D)を添加して鎖延長することにより得られる。この反応により、得られるアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体(I)は、ポリエステルウレタンが形成されるとともに、アクリル重合体成分が分子中に導入されて、末端に水酸基を有するアクリル−ポリエステルウレタン共重合体である。このようにして得られるアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体(I)の末端の水酸基が、イソシアネート(II)と反応して硬化することで、接着用プライマー層が形成する。
[製造方法]
本発明の不燃性化粧板は、例えば以下の製造方法によって製造されるが、これによって制限されるものではない。
図1に示される本発明の不燃性化粧板1は以下のように製造される。まず、火山性ガラス質複層板に、接着剤を10〜80g/m2(固形分基準)程度の塗布量で、スプレー、スプレッダー、バーコーターなどの塗布装置を用いて塗布した上に、輻射シートを貼り合わせて、さらに接着剤を塗布し、紙質層23を形成する薄葉紙などの紙類を貼り合わせて、常温下において1〜10日間放置して、難燃性基材を得る。
得られた難燃性基材上に、シーラー剤を塗布してシーラー層を形成し、常法により硬化させて製膜すればよい。なお、シーラー剤の塗布は、スプレー、スプレッダー、バーコーターなどの一般に用いられる塗布装置を用いて行うことができる。また、シーラー剤の硬化条件は、使用するシーラー剤により異なるので、シーラー層が製膜すれば特に制限はないが、不燃性化粧板の製造工程において、生産性を向上させるためにシーラー剤を塗布した難燃性基材を堆積して次の接着剤の塗布工程に備える場合、シーラー剤の硬化条件は、通常80〜120℃で5秒〜10分程度であり、汎用的な装置を用い、かつシーラー剤の硬化にかかるエネルギーを低減させる観点から、90〜110℃で15秒〜5分間が好ましい。なお、不燃性化粧板の製造工程において、シーラー剤を塗布した難燃性基材を堆積しない場合には、シーラー剤の硬化は、常温で1〜10日間の条件で行うこともできる。
このようにしてシーラー層を製膜した後、該シーラー層上に、又は化粧シートに接着剤を塗布して接着剤層を形成し、常法により乾燥・硬化させる。当該乾燥を行った後、基材と化粧シートとを貼り合わせて、室温下で1〜10日放置して、本発明の不燃性化粧板を得る。
また、上記したように、難燃性基材2の、シーラー層3、接着剤層4、化粧シート層5などを設けた面の他方の面に、裏面接着剤層7を介して、必要に応じて防湿シートを貼付けることができる。防湿シートと難燃性基材2との貼付けのために設けられる裏面接着剤層7に用いられる接着剤としては、上記した接着剤層4に用いられるような接着剤を用いることができ、なかでもエマルション系接着剤が、火気に対して安全で、臭気もなく価格的にも安価なため好ましく用いられる。この接着剤は、上記したような通常の塗布装置を用いて、塗布した後、難燃性基材と防湿シートとを貼着することができる。防湿シートが上記した防湿シートAのような3層構造を有するものである場合には、難燃性基材からの水分の吸放出が高密度ポリエチレン樹脂層によって防止されるとともに、高密度ポリエチレン樹脂層の表裏面に紙層が存在することで難燃性基材への接着剤による接着強度が良好となるため、一般的なラミネータ装置により、特に簡単に貼着することが可能である。
得られた不燃性化粧板は、建築物の天井、壁材などの内外装用建材や、家具などの様々な用途に用いることができる。特に、本発明の不燃材化粧板が有する不燃性をいかして、流し台、ガスコンロなどのキッチン周辺建材や、その他の建築基準法上、不燃性を要請される建築物の各所に好適に用いることができる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた化粧板について、以下の方法で評価した。
(1)総発熱量の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板について、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメーター試験機を用いて、加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m2)を求めた。総発熱量が8MJ/m2以下であれば、合格である。
(2)最大発熱速度の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板について、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメーター試験機を用いて、加熱開始後20分間の最大発熱速度として、200kW/m2を超える時間を秒単位で求めた。10秒以上継続して200kW/m2を超えなければ合格である。
(3)基材の亀裂の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板について、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメーター試験機を用いて、加熱開始後20分間の試験終了後の基材の亀裂や穴の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○ 裏面まで貫通する亀裂や穴は全くなかった
× 裏面まで貫通する亀裂や穴が多数あった
(4)紙質層の接着性の評価(紙質強化の評価)
難燃性基材にシーラー剤を塗布した直後に、該シーラー剤を塗布した面に一辺2.5cm幅の正方形に切り取ったセロファンテープ(ニチバン(株)製のセロファン粘着テープ「セロテープ(登録商標)」)を貼着させ、その後、強制的に剥離した。剥離した後の剥離面を目視で観察し、剥離面を25等分したうちの、何個分の面積の紙質層が剥離したかを評価した。
(5)ブロッキングの評価
シーラー剤を塗布した難燃性基材を100℃で30秒間乾燥させた後、順に堆積し、最大5N/m2の荷重の下、20℃で10時間保管した。10時間経過後、ブロッキングの状態を目視にて確認した。
(6)剥離強度の測定
各実施例及び比較例で製造した化粧板について、テンシロン引張試験機(オリエンテック製)を用いて、200mm/min、180°で剥がした際の剥離強度を測定した。
(7)外観の評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板の表面を目視し、以下の基準で評価した。
○ 凹凸や膨れが全くなく、平滑である
△ 凹凸や膨れが若干存在するが、実用上問題ない
× 凹凸、膨れ又は柚子肌が著しい
(8)反りの評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板を1m角に切断したサンプルについて、下記の放置条件で放置して、放置前と放置後の反りを測定し、反りの変化率を下記の式で算出し、下記の基準で評価した。
反りの変化率(%)=[(放置後の反りの一番高い箇所の高さ)−(放置前の反りの一番高い箇所の高さ)]/(サンプルの一辺の長さ)×100
放置条件:「40℃30%×10時間⇒23℃50%×14時間⇒40℃90%×10時間⇒23℃50%×14時間」を1サイクルとして、4サイクル実施
○ 反り変化率<0.2%
△ 0.2%≦反り変化率<0.3%
× 0.3%≦反り変化率
(9)ハンドリング汚れ防止評価
各実施例及び比較例で製造した化粧板の表裏を手で支えた際に、化粧板に起因する粉付着の度合いを下記の基準で評価した。
○ 粉の付着は全くなかった
△ 粉は若干付着するが、後加工ラインでの適性、現場施工性には問題なかった
× 粉の付着が著しく、後加工ラインにおける粉こぼれが懸念される
実施例1
厚さ3mmの火山性ガラス質複層板(商品名:ダイライト、大建工業株式会社製)に、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(「CVC(商品名)」:コニシ株式会社製)50g/m2(固形分基準)の塗布量で塗布した上に、厚さ25μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)を貼り合わせて、該アルミニウム箔上にドライラミ用接着剤(「タケラック(商品名)」:三井化学ポリウレタン株式会社製)を4g/m2(固形分基準,有機分量:4g/m2)の塗布量で塗布し、一般紙(秤量:23g/m2,有機分量:23g/m2)を貼り合わせて、常温下において7日間放置して、難燃性基材を得た。アルミニウム箔上の有機分量は、27g/m2であった。ここで、有機分量とは、不燃性化粧板の製造にあたって用いた材料に含まれる有機分(有機化合物)、例えば接着剤に用いられる樹脂成分、化粧シート層に用いられる化粧シートなどの合計質量のことをいう。
得られた難燃性基材に、水溶性アクリル系樹脂(「SA−95(商品名)」:中央理化工業株式会社製,Tg:30℃)と硬化剤(「EX−8(商品名)」:中央理化工業株式会社製,エポキシ系樹脂)とを100:10(質量比)で配合し、これに水55質量部を加えて希釈して得られたシーラー剤を、スプレーコートで5g/m2(固形分基準,有機分量:5g/m2)の塗布量で塗布し、100℃で30秒間乾燥を行った。なお、このシーラー剤の粘度は10mPas(20℃)であった。
別途準備した厚み120μmのポリオレフィン系化粧シート(秤量:135g/m2,有機分量:110g/m2,「WSシリーズ(商品名)」:大日本印刷株式会社製)に、水酸化アルミニウムを含有するエチレン−酢酸ビニル系接着剤(「CVC(商品名)」:コニシ株式会社製,水酸化アルミニウム含有量:11g/m2,有機分量:29g/m2)を80g/m2の塗布量で塗布して接着剤層を形成した。得られた難燃性基材(シーラー層を設けた側)と化粧シートとを貼り合わせて、室温下(20℃)で7日間放置して、不燃性化粧板を得た。得られた不燃性化粧板のアルミニウム箔上の有機分量は、171g/m2だった。また、得られた不燃性化粧板の評価結果を第1表に示す。
実施例2〜5
実施例1において、シーラー剤を、第1表に示す樹脂及び配合比のものにした以外は、実施例1と同様にして、不燃性化粧板を作製した。得られた不燃性化粧板の評価結果を第1表に示す。
比較例1
実施例1において、シーラー剤を使用しない以外は、実施例1と同様にして不燃性化粧板を作製した。得られた不燃性化粧板の評価結果を第2表に示す。
比較例2〜9
実施例1において、シーラー剤を第2表−1及び2に示す樹脂及び配合比のものにした以外は、実施例1と同様にして不燃性化粧板を作製した。得られた不燃性化粧板の評価結果を第2表−1及び2に示す。
Figure 0005391593
*1,「SA−95(商品名)」:中央理化工業株式会社製
*2,アクリル系樹脂とアクリルエマルション系樹脂との混合物(「HW−770(商品名)」:昭和高分子株式会社製)
*3,使用量はアクリル系樹脂とアクリルエマルション系樹脂との合計量である。
*4,「スーパーフレックス870(商品名)」:第一工業製薬株式会社製
*5,有機分量は、難燃性基材のシーラー層3、接着剤層4、化粧シート層5などを設けた側の合計である。
Figure 0005391593
*1,「AD18(商品名)」:昭和高分子株式会社製
*2,「AD92(商品名)」:昭和高分子株式会社製
*3,「SH−502(商品名)」:昭和高分子株式会社製
*4,有機分量は、難燃性基材のシーラー層3、接着剤層4、化粧シート層5などを設けた側の合計である。
Figure 0005391593
*1,「FX420(商品名)」:中央理化工業株式会社製
*2,「スーパーフレックス150(商品名)」:第一工業製薬株式会社製
*3,「ES90S(商品名)」:中央理化工業株式会社製
*4,「MDI(商品名)」:日本ポリウレタン株式会社製
*5,「TXシーラー(商品名)」:中国塗料株式会社製
*6,有機分量は、難燃性基材のシーラー層3、接着剤層4、化粧シート層5などを設けた側の合計である。
製造例1(防湿シートAの作製)
秤量30g/m2の紙間強化紙(「FIX−30(商品名)」:三興製紙(株)製)にTダイ押出機から20μmの厚さに密度0.94g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂を押出コーティングし、同時にもう一枚の秤量30g/m2の紙間強化紙(三興製紙(株)製、FIX−30)をラミネートして、チルロールで冷却して紙層が2層構造となる防湿シートを作製した。
製造例2(防湿シートB1の作製)
一方の面にシリカ蒸着層を設けた二軸延伸PETフィルム(「ルミラー(商品名)」:東レ株式会社製,厚さ:12μm)の蒸着層面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を3g/m2(固形分基準)で塗布・乾燥し、該塗布面にTダイ押出機でポリエチレンを15μm厚さに加熱溶融押出しして積層体(PET/蒸着層/ポリエチレン)を作製した。この積層体の両表出面にコロナ放電処理を施した後、主剤としてウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷で、各々5g/m2(固形物基準)で塗布して、接着用プライマー層を両面に形成した防湿シートB1を作製した。
製造例3(防湿シートB2の作製)
一方の面にシリカ蒸着層を設けた二軸延伸PETフィルム(「ルミラー(商品名)」:東レ株式会社製,厚さ:12μm)の蒸着層面に、ポリビニルアルコール溶液を乾燥後に0.2g/m2となるようにグラビア印刷で塗布した後、他方の面にコロナ放電処理を施して、ポリビニルアルコール溶液の塗布面とコロナ放電処理面とに、主剤としてウレタン樹脂//硝化綿系樹脂に硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷で、各々2g/m2(固形物基準)で塗布して、接着用プライマー層を両面に形成した防湿シートBを作製した。
実施例6
実施例1と同様にして得られた不燃性化粧板のシーラー層などを設けた面の他方の面に、変性エチレン−酢酸ビニル系エマルション接着剤(「BA10L(商品名)」:中央理化工業株式会社製)を100g/m2(湿基準)で塗布して、40℃で1分間乾燥させて半乾燥状態とした後、製造例1で得られた防湿シートAと貼り合わせて、汚れ防止層を有する不燃性化粧板を作製した。得られた不燃性化粧板の評価結果を第3−1表に示す。
実施例7〜10
実施例2〜5で得られた不燃性化粧板のシーラー剤などを設けた面の他方の面に、実施例6と同様にして防湿シートAを貼り合わせて、各々実施例7〜10の汚れ防止層を有する不燃性化粧板を作製した。得られた不燃性化粧板の評価結果を第3−1表に示す。
実施例11
実施例1と同様にして得られた不燃性化粧板のシーラー層などを設けた面の他方の面に、変性エチレン−酢酸ビニル系エマルション接着剤(「BA10L(商品名)」:中央理化工業株式会社製)を100g/m2(湿基準)で塗布して、40℃で1分間乾燥させて半乾燥状態とした後、製造例2で得られた防湿シートB1と貼り合わせて、汚れ防止層を有する不燃性化粧板を作製した。得られた不燃性化粧板の評価結果を第3−2表に示す。
実施例12
実施例1と同様にして得られた不燃性化粧板のシーラー層などを設けた面の他方の面に、変性エチレン−酢酸ビニル系エマルション接着剤(「BA10L(商品名)」:中央理化工業株式会社製)を100g/m2(湿基準)で塗布して、40℃で1分間乾燥させて半乾燥状態とした後、製造例3で得られた防湿シートB2と貼り合わせて、汚れ防止層を有する不燃性化粧板を作製した。得られた不燃性化粧板の評価結果を第3−2表に示す。
実施例13
実施例1と同様にして得られた不燃性化粧板のシーラー層などを設けた面の他方の面に、変性エチレン−酢酸ビニル系エマルション接着剤(「BA10L(商品名)」:中央理化工業株式会社製)を100g/m2(湿基準)で塗布して、40℃で1分間乾燥させて半乾燥状態とした後、秤量30g/m2の紙間強化紙(「FIX−30(商品名)」:三興製紙(株)製)と貼り合わせて、汚れ防止層を有する不燃性化粧板を作製した。得られた不燃性化粧板の評価結果を第3−2表に示す。
Figure 0005391593
*1,「SA−95(商品名)」:中央理化工業株式会社製
*2,アクリル系樹脂とアクリルエマルション系樹脂との混合物(「HW−770(商品名)」:昭和高分子株式会社製)
*3,使用量はアクリル系樹脂とアクリルエマルション系樹脂との合計量である。
*4,「スーパーフレックス870(商品名)」:第一工業製薬株式会社製
*5,有機分量は、難燃性基材のシーラー層3、接着剤層4、化粧シート層5などを設けた側の合計である。
Figure 0005391593
*1,「SA−95(商品名)」:中央理化工業株式会社製
*2,有機分量は、難燃性基材のシーラー層3、接着剤層4、化粧シート層5などを設けた側の合計である。
実施例で得られた不燃性化粧板は、不燃性を有し、紙質強度、ブロッキング、剥離強度及び外観の全ての点で、優れた性能を示した。特に、汚れ防止層として防湿シートを設けた実施例6〜13の不燃性化粧板は、反りの評価及びハンドリング汚れ防止評価においても優れた性能を示した。
一方、エマルション系樹脂の平均粒径が所定の範囲外にある比較例2〜7で得られた化粧板は、紙質強度および剥離強度の点で十分な性能が得られなかった。シーラー剤が常温で液体状態である比較例8で得られた化粧板は、シーラー層が十分に製膜しなかったため、ブロッキングの点で十分な性能が得られなかった。また、水溶性樹脂を用いていない比較例9で得られた化粧板は、紙質強度の点で十分な性能が得られず、作製した化粧板は溶剤臭が残った。
本発明によれば、不燃性を有し、作業員や環境への負荷が低く、優れた作業性、剥離強度、及び意匠性を有する不燃性化粧板を得ることができる。
本発明の不燃性化粧板の断面を示す模式図である。 本発明の不燃性化粧板の断面を示す模式図である。
符号の説明
1.不燃性化粧板
2.難燃性基材
21.火山性ガラス質複層板
22.輻射シート層
23.紙質層
3.シーラー層
4.接着剤層
5.化粧シート層
6.汚れ防止層
7.裏面接着剤層

Claims (8)

  1. 難燃性基材の一方の面に、シーラー層、接着剤層、及び化粧シート層が順に積層された不燃性化粧板であって、難燃性基材が、火山性ガラス質複層板上に、少なくとも輻射シート層と紙質層とが順に積層され、かつ該紙質層と接着剤層との間にシーラー層が積層されてなるものであり、シーラー層が水溶性樹脂及び/又は平均粒径0.06μm以下の水性エマルション系樹脂を含有するシーラー剤を硬化してなるものであり、該接着剤層が平均粒径2〜15μmの水酸化アルミニウムを含むものであり、該水溶性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも一種の2液硬化型の樹脂であり、該水性エマルション系樹脂が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、及び酢酸ビニル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の2液硬化型の樹脂である不燃性化粧板。
  2. 難燃性基材の他方の面に、汚れ防止層を有する請求項1に記載の不燃性化粧板。
  3. 汚れ防止層が、防湿シートからなるものである請求項2に記載の不燃性化粧板。
  4. 下記の剥離強度測定方法による剥離強度が、15N/25mm以上である請求項1〜3のいずれかに記載の不燃性化粧板。
    剥離強度測定方法:
    不燃性化粧板について、テンシロン引張試験機を用いて、100mm/min、180°で剥がした際の剥離強度を測定する。
  5. 酢酸ビニル系樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の不燃性化粧板。
  6. 輻射シート層が、アルミニウム箔で形成されるものである請求項1〜5のいずれかに記載の不燃性化粧板。
  7. 接着剤層を形成する接着剤中の水酸化アルミニウムの含有量が、該接着剤に用いられる樹脂100質量部に対して20〜80質量部である請求項1〜6のいずれかに記載の不燃性化粧板。
  8. 化粧シート層に用いられる化粧シートの基材が、樹脂シートである請求項1〜7のいずれかに記載の不燃性化粧板。
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