JP5390934B2 - チタン合金材および構造部材ならびに放射性廃棄物用容器 - Google Patents
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Description
通常、大気環境での建材としてチタン合金を用いた場合には、顕著な孔食や隙間腐食などの問題はないものの、腐食による表面変色が景観上の問題点として取り上げられる場合があり、硫酸酸性に曝される工業地帯等での酸性雨環境への対応としても、低コストでのさらなる耐食性向上が求められている。
このような構成によれば、硫酸環境、高温中性塩化物環境、あるいはフッ化物を含有する高温中性塩化物環境等の非酸化性環境における耐食性に優れたチタン合金材を使用するため、非酸化性環境における耐食性に優れた構造部材となる。
このような構成によれば、硫酸環境、高温中性塩化物環境、あるいはフッ化物を含有する高温中性塩化物環境等の非酸化性環境における耐食性に優れたチタン合金材を使用するため、放射性廃棄物による厳しい腐食環境においても適応することができる放射性廃棄物用容器となる。
本発明に係るチタン合金材は、Ru:0.005〜0.10質量%、Pd:0.005〜0.10質量%、Ni:0.01〜2.0質量%、Cr:0.01〜2.0質量%、V:0.01〜2.0質量%を含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなる。
チタン合金材は、さらに、Al、Si、および、Feから選ばれる少なくとも1種を所定量含有してもよいし、これらに加え、さらに、Os、Rh、Ir、および、Ptから選ばれる少なくとも1種を所定量含有してもよい。
以下、成分の限定理由について説明する。
Ruは、非酸化性環境において、チタンの電位を貴化し、チタン合金表面にチタン酸化物を主体とする安定な不働態皮膜を形成するのに有効な添加元素である。このような効果を発揮させるためには、0.005質量%以上含有させることが必要である。一方、Ru含有量が0.10質量%を超えると、このような効果が飽和し、Ruは高価な元素であることから、コストの点で好ましくない。したがって、Ru含有量は、0.005〜0.10質量%とする。なお、Ru含有量は、0.008質量%以上が好ましく、0.010質量%以上がより好ましい。また、0.095質量%以下が好ましく、0.090質量%以下がより好ましい。
Pdは、非酸化性環境において、チタンの電位を貴化し、チタン合金表面にチタン酸化物を主体とする安定な不働態皮膜を形成するのに有効な添加元素であり、特にRuと共存させることにより、その効果は顕著となる。このようなPdの効果を発揮させるためには、0.005質量%以上含有させることが必要である。一方、Pd含有量が0.10質量%を超えると、このような効果が飽和し、Pdは高価な元素であることから、コストの点で好ましくない。したがって、Pd含有量は、0.005〜0.10質量%とする。なお、Pd含有量は、0.008質量%以上が好ましく、0.010質量%以上がより好ましい。また、0.095質量%以下が好ましく、0.090質量%以下がより好ましい。
Niは、CrおよびVとの共存により、非酸化性環境においてRuおよびPdの表面濃縮を促進する元素である。また、Niは非酸化性環境においてチタン合金表面に安定な酸化物を形成する元素であり、さらに、フッ化物を含む環境では、チタン合金表面に安定な複合フッ化物の保護皮膜を形成して、耐食性向上に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.01質量%以上含有させることが必要である。しかしながら、添加量が過剰になると、溶接性や熱間加工性が劣化することから、Ni含有量は、2.0質量%以下とする。したがって、Ni含有量は、0.01〜2.0質量%とする。なお、Ni含有量は、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、1.95質量%以下が好ましく、1.90質量%以下がより好ましい。
Crは、NiおよびVとの共存により、非酸化性環境においてRuおよびPdの表面濃縮を促進する元素である。さらに、フッ化物を含む環境では、チタン合金表面に安定な複合フッ化物の保護皮膜を形成して、耐食性向上に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.01質量%以上含有させることが必要である。しかしながら、添加量が過剰になると、溶接性や熱間加工性が劣化することから、Cr含有量は、2.0質量%以下とする。したがって、Cr含有量は、0.01〜2.0質量%とする。なお、Cr含有量は、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、1.95質量%以下が好ましく、1.90質量%以下がより好ましい。
Vは、NiおよびCrとの共存により、非酸化性環境においてRuおよびPdの表面濃縮を促進する元素である。さらに、フッ化物を含む環境では、チタン合金表面に安定な複合フッ化物の保護皮膜を形成して、耐食性向上に寄与する元素である。こうした効果を発揮させるためには、0.01質量%以上含有させることが必要である。しかしながら、添加量が過剰になると、溶接性や熱間加工性が劣化することから、V含有量は、2.0質量%以下とする。したがって、V含有量は、0.01〜2.0質量%とする。なお、V含有量は、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、1.95質量%以下が好ましく、1.90質量%以下がより好ましい。
Al、SiおよびFeは、塩酸や硫酸に対する耐食性には有効な元素ではないが、微量添加することで、フッ化物に対する耐食性向上に有効となる元素であり、強度向上にも有効となる元素である。このような効果を発揮させるためには、それぞれ0.005質量%以上含有させることが必要である。しかし、過度に添加した場合には、酸性環境での耐食性を大きく劣化させることに加えて、加工性も大きく劣化させるため、これらの含有量は、2.0質量%を上限とする。したがって、Al、SiおよびFeを添加する場合には、それぞれ0.005〜2.0質量%とする。なお、Al、SiおよびFe含有量は、それぞれ0.008質量%以上が好ましく、0.010質量%以上がより好ましい。また、それぞれ1.95質量%以下が好ましく、1.90質量%以下がより好ましい。
Os、Rh、IrおよびPtは、チタンの電位を貴化して安定な不働態皮膜形成を促進し、耐食性向上に寄与する元素である。このような効果を発揮させるためには、それぞれ0.005質量%以上含有させることが必要である。しかし、過度に添加した場合には、加工性を大きく劣化させるため、これらの含有量は、0.10質量%を上限とする。したがって、Os、Rh、IrおよびPtを添加する場合には、それぞれ0.005〜0.10質量%とする。なお、Os、Rh、IrおよびPt含有量は、それぞれ0.008質量%以上が好ましく、0.010質量%以上がより好ましい。また、Os、Rh、IrおよびPt含有量は、それぞれ0.095質量%以下が好ましく、0.090質量%以下がより好ましい。
チタン合金材の成分は前記の通りであり、残部はTiおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物は、チタン合金材の諸特性を害さない範囲で許容できる。例えば、Nは、0.03質量%程度まで、Cは、0.08質量%程度まで、Hは、0.02質量%程度まで、Oは、0.3質量%程度までであれば、これらの元素の含有は問題なく、本発明の耐食性向上効果も得られる。
次に、本発明に係るチタン合金材の製造方法の一例について説明する。
まず、各種金属および合金を溶解し、前記組成を有するチタン合金鋳塊を作製する。得られた鋳塊を加熱温度950〜1050℃にて鍛造した後、800〜900℃で熱間圧延を行い、所定の板厚とする。次いで、700〜900℃で10〜60分間の焼鈍を施した後、冷間圧延により所定厚さのチタン合材を作製する。
本発明に係る構造部材は、前記記載のチタン合金材を用いたものである。
前記のとおり、本発明のチタン合金材は、硫酸環境、高温中性塩化物環境、あるいはフッ化物を含有する高温中性塩化物環境等の非酸化性環境における耐食性に優れるため、このような環境に曝される、石油精製や石油化学プラント、海洋構造物、建材等の部材として使用することができる。例えば、火力・原子力発電所の復水器や海水淡水化プラントの伝熱管等に使用することができる。
本発明に係る放射性廃棄物用容器は、前記記載のチタン合金材を用いたものである。
前記のとおり、核燃料製造施設、原子力発電所、核燃料再処理施設等の原子力関連施設から発生する放射性廃棄物を輸送または処分するための容器においては、放射性廃棄物の発熱により、容器の金属表面温度が高温になり、腐食促進因子である塩化物やフッ化物等が濃縮した高濃度溶液が形成され、厳しい腐食環境になる。
そこで、本発明のチタン合金材を用いることで、このような厳しい腐食環境においても適応することができる放射性廃棄物用容器とすることができる。
真空アーク溶解炉を用いて、溶解原料の各種金属および合金を合計で約500g溶解し、種々のチタン合金鋳塊を作製した。化学組成は表1に示す通りである(残部はTiおよび不可避的不純物)。得られた鋳塊を加熱温度1000℃にて鍛造した後、870℃で熱間圧延を行い、板厚5mmとした。次いで、750℃で20分間の焼鈍を施した後、冷間圧延により厚さ3mmのチタン合金板素材を作製した。得られたチタン合金板素材から、縦50mm×横30mm×厚さ2mmのテストピースA(図1(a)、TP−A)、および、縦30mm×横30mm×厚さ2mmのテストピースB(図1(b)、TP−B)を切り出した。
腐食環境として、(1)硫酸水溶液、(2)塩水、(3)フッ化物を含有する塩水、の3種の非酸化性溶液中での耐食性評価を実施した。腐食環境(1)については、沸騰5%H2SO4水溶液中での浸漬腐食試験を行い、浸漬試験前後の質量変化から求めた腐食減量により評価した。浸漬時間は72時間である。まず、容量1Lの丸底フラスコに試験溶液を入れて、マントルヒーターにより加熱し、沸騰させた。溶液が沸騰した後、PTFE製の糸を用いて、供試材としてテストピースA(TP−A)を吊るして浸漬させた。このとき、フラスコには冷却管を設置して、溶液の蒸発を防いだ。試験溶液の比液量は、試験片(供試材)1個につき、1Lである。本試験には、表1に示したNo.1〜40のチタン合金材を、それぞれ5枚づつ供試し、腐食減量は5枚の平均値を算出した。なお、試験後の質量は、浸漬後のテストピースAを水洗およびアセトン洗浄し、乾燥させた後に測定した。
No.35は、純チタンのため、耐食性に劣った。
No.36〜No.40のチタン合金は、No.35の純チタンと比較すれば耐食性は向上しているが、塩水中での隙間腐食の発生が認められ、腐食減量の低減も十分ではなかった。
No.36およびNo.37は、それぞれRuおよびPdの含有量が下限値未満のため、チタンの電位がそれほど貴化せず、安定な不働態皮膜生成が不十分であり、耐食性に劣った。
B テストピース(TP−B)
C 隙間腐食試験片
Claims (5)
- Ru:0.005〜0.10質量%、Pd:0.005〜0.10質量%、Ni:0.01〜2.0質量%、Cr:0.01〜2.0質量%、V:0.01〜2.0質量%を含有し、残部がTiおよび不可避的不純物からなることを特徴とするチタン合金材。
- さらに、Al:0.005〜2.0質量%、Si:0.005〜2.0質量%、および、Fe:0.005〜2.0質量%から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のチタン合金材。
- さらに、Os:0.005〜0.10質量%、Rh:0.005〜0.10質量%、Ir:0.005〜0.10質量%、および、Pt:0.005〜0.10質量%から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチタン合金材。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のチタン合金材を用いたことを特徴とする構造部材。
- 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のチタン合金材を用いたことを特徴とする放射性廃棄物用容器。
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