JP5660253B2 - 臭素イオンを含む環境での耐食性に優れたチタン合金 - Google Patents
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Description
本発明は、チタン合金に関し、特に、耐食性(臭素イオンを含む環境における耐隙間腐食性および耐酸性等)、ならびに経済性に優れたチタン合金に関する。
チタンは、軽くて強いという特性が活かされて、航空機分野等で積極的に活用されている。また、チタンは、優れた耐食性を有することから、化学工業設備用材料、火力・原子力発電設備用材料、さらには、海水淡水化設備材料等の用途に広範囲に使用されるようになってきている。
しかしながら、チタンが高い耐食性を発現できる環境は、酸化性酸(硝酸)環境や、海水等の中性塩化物環境に限られており、高温塩化物環境下での耐隙間腐食性や、塩酸等の非酸化性酸液中における耐食性(以下、特に断りのない場合は、これらの耐食性を総称して、単に、「耐食性」という)が十分ではない。この問題を解決するために、チタンに白金族元素を含有させたチタン合金(以下、「白金族元素含有チタン合金」という。)が提案され、規格化されて、様々な用途に使用されている。
具体的には、ソーダ工業の分野においては、電解に使用される陽極電極は、100℃以上の高温で塩酸を含む20〜30%の高濃度の塩水中で使用される。当該陽極電極において、隙間腐食が問題となる部位に、白金族元素含有チタン合金が使用されている。
Ni精錬工業の分野においては、反応容器は、スラリーを含む100℃を超える高温で高濃度の硫酸溶液にさらされる。当該反応容器の材料として、白金族元素含有チタン合金が使用されている。
熱交換機の分野では、製塩分野で用いられる伝熱管は、高温高濃度の塩水にさらされ、焼却炉排ガスの熱交換に用いられる伝熱管は、塩素、NOx、およびSOxを含む排ガスにさらされる。これらの伝熱管には、白金族元素含有チタン合金が使用されている。
石油化学工業の分野では、石油精製時に用いられる脱硫装置の反応容器等は、高温の硫化水素にさらされる。このような反応容器等には、白金族元素含有チタン合金が使用されている。
また、白金族元素含有チタン合金を、その優れた耐食性を活かして、燃料電池用セパレータ材へ適用することが検討されている。
Ti−0.15Pd合金であるGr.7(「Gr.」(Grade)は、いずれもASTM規格による。以下、同様。)は、前述した用途で耐食性が得られるように開発されたチタン合金である。このチタン合金に含有されるPdは、水素過電圧を低下させ、自然電位を不動態域に維持することができる。すなわち、腐食によりこの合金から溶出したPdが合金の表面に再び析出し堆積することによって、この合金の水素過電圧が低下し、自然電位が不動態域に維持されるので、この合金は、優れた耐食性を示す。
しかしながら、Gr.7に含まれるPdは、非常に高価である(たとえば、2012年12月13日付け日本経済新聞朝刊によれば、1905円/g)ため、その使用分野は限られていた。
この問題を解決するため、下記特許文献1に開示されるように、Pdの含有率を0.03〜0.1質量%と、Gr.7に比較して低減させながら、優れた耐隙間腐食性を有するチタン合金(Gr.17)が提案され、実用化されている。
下記特許文献2には、耐食性の低下を抑制しつつ安価に製造しうるチタン合金として、白金族元素の1種以上を合計で0.01〜0.12質量%含有し、Al、Cr、Zr、Nb、Si、SnおよびMnの1種以上を合計で5質量%以下含有するチタン合金が開示されている。当該チタン合金の開発時の用途においては、Pdが0.01〜0.12質量%の範囲内で、十分な耐食性が得られる。しかしながら、近年のさらなる特性向上が要求される用途に対しては、特にPdの含有率が0.05質量%未満の場合は、耐食性が十分ではなくなってきている。また、開発時の用途においても、さらなるコストダウンの要求が強くなってきている。
しかしながら、下記非特許文献1によれば、Ti−Pd合金において、第3の元素としてCo、NiまたはVを添加することにより、耐隙間腐食性が向上するものの、十分な耐隙間腐食性を得るという観点では、Pdの含有率は0.05質量%以上が必要であるとされている。
低コスト化については、白金族元素のうち最も安価なRuを積極的に活用した材料が開発されてきた。下記特許文献3に、0.005〜0.2質量%のRuを添加したチタン合金が示されている。この文献に実施例として示されているように、十分な耐隙間腐食性を得るためには、このチタン合金のRu添加量を0.05質量%以上とする必要があった。
下記特許文献4には、さらなる耐食性向上を目的としてRuおよびNiを複合添加した系の材料が開示されている。この材料は、耐隙間腐食性のみならず、硫酸や塩酸などの非酸化性酸を含有する環境で優れた耐食性を有する。下記特許文献4に示された組成範囲内の合金であるTi−0.06Ru−0.5Niは、Gr.13として規格化されて、耐食チタン合金として実用化されている。しかしながら、Niを添加したことで、チタン合金中にTi2Ni化合物が析出し、この化合物析出に起因して、このチタン合金は伸び等の加工性がGr.17と比較して劣るという問題点があった。
これらの問題に加え、Ti−Pd合金を、電解のための陽極の用途へ適用するとき、安価な原料(食塩水)を使用する場合には、原料に臭素が含まれ、この臭素(臭素イオン)に起因して、通常の食塩水を使用する場合には起こりえないと考えられていた隙間腐食が発生する場合があった。また例えば化学プラントなどにおいても臭素(臭素イオン)に起因した腐食が発生する場合があった。このため、臭素イオンを含む環境下でも優れた耐食性を示すチタン合金が求められていた。
ここで特許文献5および特許文献6には、白金族、希土類元素および遷移元素を複合添加した材料が開示されている。しかし、これらはいずれも超高真空容器用あるいは超高真空容器用のチタン合金である。これら特許文献5および特許文献6において、白金族および希土類元素を添加する理由は、超高真空中で、素材内部に固溶するガス成分が真空側に拡散して放出される現象を抑える効果を得るためである。白金族は水素を、希土類元素は酸素をチタン合金中にトラップする作用を有するとされている。また、これら特許文献5、6では白金族と希土類に加えてCo,Fe,Cr,Ni,Mn,Cuの遷移元素を必須元素としている。遷移元素は白金族によって真空容器表面に吸着させた原子状水素を固定させる役割を有するとされている。しかしながら、これら特許文献5、6はいずれも耐食性を考慮したものではなく、臭素イオンを含む環境下での耐食性については言及されていない。
幸 英昭、外1名、「耐隙間腐食性に優れた低合金チタンSMI−ACE」、材料学会腐食防食部門委員会、2001年9月12日
滝 千博、「耐食性チタン合金TICOREXの特性と使用例」、新日鉄技報、2001年、第375号、第73〜77頁
岡田 達弘、「臭化物溶液中におけるチタンの孔食電位」、DENKI KAGAKU、1981年、第49号、No. 9、第584〜588頁
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、耐食性、特に臭素イオンを含む環境に対する耐食性に優れたチタン合金を得ることを目的とする。
さらに、白金族元素のうち高価なPdを含有させず、Pdに比して安価なRuを含有させることで、従来よりも安価なチタン合金を実現した。
本発明者らは、上記目的を達成するために、(i) Ti−Pd合金において耐食性が発現する機構を明確にし、耐食性の向上にとって好ましい表面状態を促進する元素を含有させることについて検討した。また、Ti−Ru合金の場合においても、耐食性を向上させることについて検討した。(ii) ならびに、低い白金族元素の含有率で、従来と同等以上の耐食性、および臭素イオンが存在する環境下での優れた耐食性を得ることについて検討した。
図1は、Ti−Pd合金およびTi−Pd−Co合金の耐食性発現機構を説明するための模式図である。Ti−Pd合金およびTi−Pd−Co合金の表面は、溶液に浸漬する前の初期状態では活性である。沸騰塩酸等の酸溶液に浸漬すると、表面のTiおよびPd、またはTi、PdおよびCoが溶解し、溶解したPd、またはPdおよびCoが表面に析出し、濃化する。これにより、当該チタン合金全体の水素過電圧が下がる。このため、このチタン合金は不動態域の電位に保たれ、優れた耐食性を示す。
本発明者らは、Ti−Ru合金に関して調査したところ、Ti−Pdと同様のメカニズムによってTi−Ru合金の耐食性が確保されることを確認した。しかしながら、同一添加量のPdとRuとで、他の条件を同じにして比較すると、耐食性を向上させる効果はPdの方が大きい。同じ耐食性を得るためには、より多くのRuを添加する必要があることが明らかとなった。
上記特許文献4、および上記非特許文献2には、RuおよびNiを複合添加して、チタン母材にTi2Ni1-xRux(Ti2NiのNiの一部をRuが置換した化合物)を多量に析出させることで、多くのRuを添加することなく高耐食性が得られることが開示されている。しかしながらNiを多量に添加したチタン合金は伸び等の加工性が劣るという問題がある。
本発明者らは、Ti−Ru合金を酸溶液に浸漬した後、Ruを速やかに、かつ均一に表面に析出させ、濃化させることができるように、溶液浸漬後の初期に生じる合金母材の溶解を促進する新たな添加元素を探索した。Ti−Ru合金に、このような新たな添加元素を含有させることによって、合金母材が、酸溶液への浸漬後に活性態域で早期に溶解すれば、当該合金の表面近傍の溶液中のRuイオン濃度を高めて、当該合金の表面に、速やかに、当該合金を不動態域の電位にするのに十分な量のRuが析出して濃化すると考えられる。以下、このような量のRuが合金表面に析出することを、「Ru析出濃化」という。合金のRuの含有率が低くても、Ru析出濃化が生じれば、Ti−Ru合金の水素過電圧が速やかに低下し、当該Ti−Ru合金を、より貴で安定な電位(不動態域の電位)に至らせることができる。
Ru含有率が低いTi−Ru合金では、このような新たな添加元素を含有させることによって、初期の活性状態において合金母材の溶解が速やかに生じれば、このような添加元素を含有させない場合と比較して、表面近傍のRuイオン濃度およびTiイオン濃度が高くなり、Ru析出濃化が生じる。そのため、合金の水素過電圧が速やかに低下し、不動態域の電位に維持できると考えられる。
一方、Ruの含有率が高いTi−Ru合金であって、この新たな添加元素を含有させたものでは、使用環境で当該合金の表面に疵等の損傷が発生した場合、損傷によって発生した新鮮面におけるRu析出濃化が、従来のチタン合金の場合以上に速やかに進行し、合金の水素過電圧が不動態域に達し、損傷が修復されると考えられる。そのため、損傷を起点とした腐食が進行し難いという効果が期待できる。
非特許文献3に示されるように、臭素を含む環境下では、純チタンに孔
食や隙間腐食が発生する。隙間腐食は、Ti−Pd系チタン合金では、発生しないと考えられてきたが、臭素イオンを含む塩化物環境では発生することがある。本発明者らは、この問題に対して種々の検討をおこなったところ、Ruを表面に濃化させることにより、臭素に起因する腐食に対する耐性が向上することを見出した。
食や隙間腐食が発生する。隙間腐食は、Ti−Pd系チタン合金では、発生しないと考えられてきたが、臭素イオンを含む塩化物環境では発生することがある。本発明者らは、この問題に対して種々の検討をおこなったところ、Ruを表面に濃化させることにより、臭素に起因する腐食に対する耐性が向上することを見出した。
本発明者らは、以上のような推論および知見をもとに、合金を溶液に浸漬した後の初期に生じる合金母材の溶解を促進する元素、すなわちTi−Ru合金表面へのRu析出濃化を促進する元素(上述の「新たな添加元素」)を探索する実験を進めた。
その結果、本発明者らは、希土類元素がこのような元素に該当することを見出し、さらに、Ruおよび希土類元素とともに、Ni、Co、Mo、Cr、VおよびWからなる群から選択される1種以上を含有させた場合、相乗効果によって、臭素に起因する腐食に対する耐性がさらに向上することを見出した。なお、Ruについて説明したが、Pdなどのその他の白金族元素についても、同様に臭素に起因する腐食に対する耐性が向上すると考えられる。
希土類元素は、それ自体が合金の耐食性を向上させる効果を有するものではない。この点で、希土類元素は、上記特許文献2〜4、および上記非特許文献1に開示された添加元素とは、作用が異なる。
また特許文献5、6の合金の用途および元素の作用は、本発明と異なる。すなわち特許文献5、6の両発明における、希土類元素の作用について以下に比較形式で記載する(含有量は重量%)。
特許文献5、6:チタン合金は、大きな酸素固溶度を有する。高真空用途で使用する際に、固溶酸素が合金中を拡散して、真空雰囲気にガス状態で放出されることを抑える目的で、酸素を酸化物として固定するために希土類元素を添加する。この効果を得るために0.02%が希土類元素の下限値である。また、0.5%を超えて添加すると析出する酸化物のため延性が低下する。そのため希土類元素の上限値を0.5%と定めている。
本発明;白金族元素を含有するチタン合金は、塩化物水溶液環境に浸漬された場合に、活性態域で溶解が発生し、表面に白金族元素が析出濃化し合金全体が不働態域の電位に移行(電位貴化)する。希土類元素は、この電位貴化の時間を短縮、白金族元素の表面濃化度を高める作用を有する。この効果を得るためには、希土類元素がチタン合金の固溶範囲であることが望ましい。効果を得るための下限は0.001%であり、上限は0.1%である。0.1%を超えるとチタンと希土類の化合物が生成し、耐食性を劣化させてしまう可能性があるためである。
特許文献5、6における希土類元素の役割は、チタン合金に固溶する酸素と反応させ酸化物を生成させることである。これに対し、本発明では、湿食環境でチタン合金表面への白金族元素濃化促進にあり、作用は全く異なる。また、本発明では望ましい希土類元素成分が、固溶範囲内であり、特許文献5、6と比較して少ない希土類含有量である。
本発明は、この知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(7)のチタン合金を要旨としている。
(1) 臭素イオンを含む環境で使用されるチタン合金であって、 質量%で、白金族元素:0.01〜0.10%、希土類元素:0.001〜0.02%未満、O:0〜0.1質量%未満を含有し、残部がTiおよび不純物からなる、チタン合金。
(2) Tiの一部に替えて、Ni、Co、Mo、V、CrおよびWからなる群から選択される1種以上を含有し、Niの含有率が0.12質量%以下であり、Coの含有率が0.18質量%以下であり、Moの含有率が0.11質量%以下であり、Vの含有率が0.19質量%以下であり、Crの含有率が0.18質量%以下であり、Wの含有率が0.14質量%以下である、(1)に記載のチタン合金。
(3)
質量%で、白金族元素:0.01〜0.05%を含有する、(1)または(2)に記載のチタン合金。
質量%で、白金族元素:0.01〜0.05%を含有する、(1)または(2)に記載のチタン合金。
(4)
前記白金族元素がRuである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のチタン合金。
前記白金族元素がRuである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のチタン合金。
(5) 前記希土類元素がYである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のチタン合金。
(6) Oの含有率が0.05質量%未満である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のチタン合金。
(7)
化学プラント装置に用いられる、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のチタン合金。
化学プラント装置に用いられる、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のチタン合金。
本発明のチタン合金は、優れた耐食性、特に臭素イオンを含む環境における耐食性を有する。また、安価な白金族元素であるRuを使用すれば、チタン合金の原料コストが低くなる。白金族元素の含有率が高い(たとえば、0.05質量%より高い)場合は、表面疵等により不動態皮膜が除去される損傷が発生した場合に、この損傷を起点とした腐食が進行しにくくなる。
Tiの一部に替えて、Ni、Co、Mo、Cr、VおよびWからなる群から選択される1種以上を含有する場合は、臭素を含む高濃度塩化物環境に対しても耐性が得られる。
O含有率が0.05質量%未満である場合は、良好な加工性が得られる。
希土類元素のうちYは安価である。希土類元素がYである場合、原料コストが低減される。
上述のように、本発明のチタン合金は、質量%で、白金族元素:0.01〜0.10%、希土類元素:0.001〜0.02%未満、O:0〜0.1質量%未満を含有し、残部がTiおよび不純物からなる。以下、本発明について詳細に説明する。
1.白金族元素 白金族元素は、チタン合金の水素過電圧を低下させ、自然電位を不動態域に維持する効果を有し、耐食性を有するチタン合金に必須の成分である。本発明のチタン合金では、これらの白金族元素のうち例えばRuを含有させる。Ruは、他の白金族元素に比して安価で経済性を確保する観点で好ましい元素である。2012年1月の市況価格で、RuはPdの約1/6である。
メカニズムは明らかではないが、本発明者らの検討結果によれば、チタン合金を白金族元素および希土類元素の複合添加したものとすることにより、臭素イオンを含む環境下でも、このチタン合金の腐食を抑制する効果が得られる。本発明において、白金族元素の含有率は、0.01〜0.10質量%とする。白金族元素の含有率が0.01質量%未満の場合には、チタン合金の耐食性が不十分となり、高温で高濃度の塩化物水溶液中で腐食が発生するおそれがある。一方、白金族元素の含有率を0.10質量%より高くしても、耐食性の向上が期待できないばかりか、原料コストが増大するとともに、加工性が劣る。
加工性と耐食性とのバランスを考慮すると、Ru等のβ安定化作用を有する白金族元素の含有率は、たとえば、0.01〜0.05質量%とすることが好ましい。本発明のチタン合金では、この範囲の白金族元素の含有率でも、白金族元素の含有率が0.05質量%よりも高い従来のチタン合金と同等の耐食性を有するからである。ただし、このチタン合金に、疵等によって不動態皮膜が除去される損傷が発生した場合、Ti−Ru合金を例に上述した通り、チタン合金のRu含有率が高いほど、疵等によって生じた新鮮面におけるRuの析出濃化が速やかに進行する。そのため、Ru含有率が高いほど、疵等の発生した部位の電位が速やかに不動態域に達して表面修復(不動態皮膜の修復)がなされるので、当該損傷を起点とした腐食が発生しにくい。本発明のチタン合金は、Ru含有率が0.05質量%より高い場合は、不動態皮膜の損傷が生じうる厳しい使用環境の用途に適している。
2.希土類元素2−1.希土類元素を含有させる理由 本発明者らは、高温で高濃度の塩化物水溶液環境で溶解しやすい種々の元素を、Ti−0.04質量%Ru合金に、微量含有させることを検討した。このような元素を含有させたチタン合金を塩化物水溶液に浸漬して、活性態域で溶解させた。そして、このチタン合金の表面へのRuの析出濃化を促進させることによって合金全体を不動態域の電位に移行させる効果が得られるか否かについて調査した。その結果、この効果が認められた元素は、希土類元素であった。
さらに調査を進めたところ、Ru含有チタン合金におけるRu含有率は、0.04質量%の場合に限らず、0.01〜0.05質量%の範囲で、そして、0.05質量%よりも高い場合においても、同様の効果が得られることがわかった。すなわち、Ru含有率が0.01〜0.10質量%の範囲のチタン合金に、希土類元素を含有させることにより、このチタン合金は、腐食環境にさらされてすぐに、TiおよびRuを速やかに溶解させること、すなわち、チタン合金の表面近傍の溶液中のRuイオン濃度を速やかに高くする(Ruの析出濃化が生じる)ことができることがわかった。希土類元素を含有させたRu含有チタン合金は、希土類元素を含有しないRu含有チタン合金と比較して、Ruを表面に析出させる効率が得やすく、チタン合金全体の溶解量(腐食量)が少なくてもRuを効率よく析出させることができ、耐食性に優れる。なお、Ruについて説明したが、Pdなどのその他の白金族元素についても、同様に臭素に起因する腐食に対する耐性が向上すると考えられる。
希土類元素には、Sc、Y、軽希土類元素(La〜Eu)および重希土類元素(Gd〜Lu)がある。本発明者らが検討した結果、いずれの希土類元素を用いても、上述の効果が認められた。また、希土類元素として1種類の元素のみを含有させる必要はなく、分離精製前の混合希土類元素(ミッシュメタル、以下「Mm」ともいう。)や、ジジム合金(NdおよびPrからなる合金)のような希土類元素の混合物や化合物を用いた場合でも、上述の効果が認められた。
以上のことを考慮すると、希土類元素のうち入手が容易で比較的安価なLa、Ce、Nd、Pr、Sm、Mm、ジジム合金、Y(特に、Y)を用いることが、経済性の面から好ましい。Mmおよびジジム合金は、市中で入手できるものであれば、いかなる希土類元素構成比のものでも、本発明に使用可能である。
2−2.希土類元素の含有率 本発明のチタン合金における希土類元素含有率の範囲は、0.001〜0.02質量%未満である。希土類元素の含有率が0.001質量%以上であれば、Ti−白金族元素合金の活性態域で、Tiと、白金族元素と、希土類元素とを、同時に塩化物水溶液中に溶解させ、合金表面への白金族元素の析出を促進させる効果が十分に得られる。
希土類元素の含有率の上限を0.02質量%未満としたのは、この含有率より多く希土類元素を含有させても効果が飽和するばかりか、希土類元素を含有させないときには生成しない化合物が、Ti合金内に生成する可能性があるからである。この化合物は、塩化物水溶液中では優先的に溶解して、Ti−白金族元素合金にピット状の腐食を生じさせる。そのため、この化合物が生成したTi−白金族元素合金は、希土類元素を含有させない場合と比較して耐食性が劣る。
Ti−白金族元素合金における希土類元素の含有率は、状態図等に示されるα−Tiの固溶限以下であることが好ましい。たとえば、Yのα−Tiにおける固溶限は、0.02質量%(0.01at%)である。そのため、Yを含有させる場合は、Yの含有率は0.02質量%未満であることが好ましい。また、Laのα−Tiにおける固溶限は、上記非特許文献4によれば、2.84質量%(1at%)と非常に大きい。しかしながら、Laを含有させる場合も、経済性を確保する観点から、Laの含有率は0.02質量%未満とする。
3.O(酸素) 本発明のチタン合金は、0.1質量%未満のOを含有する。Oの含有率を0.1質量%未満とするのは、耐食性に加えて良好な加工性を確保するためである。Tiは大きな酸素固溶度を有し、高強度が要求される用途には、意図して固溶酸素濃度の高いTi(JIS2種〜4種チタン)が使われる。しかしながら、酸素の固溶は、高強度化に対しては有効であるが、一方で、加工性を悪化させることもある。このため、耐食性、および経済性に加えて、加工性を考慮して、O含有率の上限値は0.1質量%とする。高い強度を必要としない用途、または加工性が重視される用途に適用する場合には、O含有率を0.05質量%未満とすることが好ましい。
4.Ni、Co、Mo、V、Cr、およびW 本発明のチタン合金では、Tiの一部に替えて、Ni、Co、Mo、V、Cr、およびWの1種以上を含有させてもよい。この場合、白金族元素、および希土類元素による効果と相まって、臭素イオンを含む環境下におけるチタン合金の耐食性を向上させることができる。
これら1種以上の元素を含有させる場合、その含有率は、Ni:1.0質量%以下、Co:1.0質量%以下、Mo:0.5質量%以下、V:0.5質量%以下、Cr:0.5質量%以下、W:0.5質量%以下とする。
5.不純物元素 チタン合金における不純物元素としては、原料、溶解電極、および環境から混入するFe、O、C、HおよびN、ならびにスクラップを原料とする場合に混入するAl、Zr、Nb、Si、Sn、MnおよびCuが挙げられる。これらの不純物元素は、本発明の効果を著しく阻害しない量であれば混入しても問題ない。本発明の効果を著しく阻害しない量とは、具体的には、Fe:0.3質量%以下、O:0.1質量%未満、C:0.18質量%以下、H:0.015質量%以下、N:0.03質量%以下、Al:0.3質量%以下、Zr:0.2質量%以下、Nb:0.2質量%以下、Si:0.02質量%以下、Sn:0.2質量%以下、Mn:0.01質量%以下、Cu:0.1質量%以下であり、これら元素の合計は0.6質量%以下である。
本発明のチタン合金の耐隙間腐食性、および加工性(曲げ性、および伸び)を確認するため、以下の試験を実施して、その結果を評価した。
1.試験方法1−1.試料 表1に、試験に用いた試料、およびその組成(Ti以外の元素に関しては分析値であり、Tiはその残部(bal.)としている)を示す。
試験に用いる試料として、従来の材料である比較材(試料番号1〜4)、本発明例(請求項1に対応する試料番号5〜8、および請求項2に対応する試料番号12〜18)、ならびに従来の材料ではないが本発明範囲外の例(以下、単に「本発明範囲外の例」という;試料番号9〜12)のチタン合金を、板材の試料として用意した。比較材1〜3は、市中で入手したものであり、これら以外の試料(比較材4を含む)は、ラボ試作したものである。比較材4は、上記特許文献3に開示されている「耐隙間腐食性および曲げ加工性に優れる」とされるTi−Ru合金の組成を採用したものである。
1−1−1.試料の組成 比較材1はGr.7、比較材2はGr.17、比較材3はGr.13である。比較材1〜4は、いずれも希土類元素を含有しない合金である。
以下、本発明例、および本発明範囲外の例の試料の特徴について、説明する。 本発明例1、4:Ru含有率を0.05質量%未満とし、かつ酸素含有率を0.05質量%未満としている。 本発明例2:Ru含有率を0.05質量%未満とし、かつ酸素含有率を0.05質量%以上としている。 本発明例3:Ru含有率を0.05質量%以上とし、かつ酸素含有率を0.05質量%未満としている。 本発明例5:Niを含有する。 本発明例6:Coを含有する。 本発明例7:Crを含有する。 本発明例8:Moを含有する。 本発明例9:Wを含有する。 本発明例10:Vを含有
する。 本発明例11:Cr、Co、Mo、W、およびVを含有する。 本発明例1〜11は希土類元素含有率が0.02%未満である。 本発明範囲外の例1:O含有率が0.10質量%を超える点で、本発明の範囲を外れている。 本発明範囲外の例2:Ru含有率が0.01質量%未満である点で、本発明の範囲を外れている。 本発明範囲外の例3:希土類元素含有率が0.02質量%以上である点で、本発明の範囲を外れている。
する。 本発明例11:Cr、Co、Mo、W、およびVを含有する。 本発明例1〜11は希土類元素含有率が0.02%未満である。 本発明範囲外の例1:O含有率が0.10質量%を超える点で、本発明の範囲を外れている。 本発明範囲外の例2:Ru含有率が0.01質量%未満である点で、本発明の範囲を外れている。 本発明範囲外の例3:希土類元素含有率が0.02質量%以上である点で、本発明の範囲を外れている。
1−1−2.試料の作製に用いた原料 チタン合金の作製に用いた原料は、市販の工業用純Tiスポンジ(JIS1種)、キシダ化学株式会社製ルテニウム(Ru)粉末(純度99.9質量%)、キシダ化学株式会社製削状イットリウム(Y)(純度99.9質量%)、および塊状のMm(混合希土類元素)とした。Mmにおける希土類元素割合は、La:28.6質量%、Ce:48.8質量%、Pr:6.4質量%、Nd:16.2質量%であった。
1−1−3.試料の作製方法 作製する試料毎に所定の割合で上記原料を計量し、アーク溶解炉によりアルゴン雰囲気中で溶解(融解)して5個のインゴット(インゴット1個あたりの重量は80g)を作製し、その後、これらの5個のインゴットを全て併せて再溶解して、厚さ15mmの角形インゴットを作製した。この角形インゴットを、均質化のために再溶解して再び厚さ15mmの角型インゴットを作製した。すなわち、合計3回の溶解を行った。
いずれの角型インゴットも微量のPdや希土類元素を含有しているので、各元素の偏析を低減して、合金中の元素を均質化するために、以下の条件で、熱処理をした。 雰囲気:真空(<10-3Torr) 温度:1100℃ 時間:24時間
熱処理を施した角型インゴットを、以下の条件で圧延して、厚さ2.5mmの板材とした。 β相域熱間圧延:加熱温度を1000℃とし、厚さを15mmから9mmへと低減するように圧延。 α+β相域熱間圧延:β相域熱間圧延を行った後の板材に対して、加熱温度を875℃とし、厚さを9mmから2.5mmへと低減するように圧延。
圧延により得られた板材に対して、歪み除去のため、真空中で750℃、30分間の焼鈍を施した。 得られた熱延板から、機械加工により、下記の試験に用いる試験片を得た。
1−2.耐隙間腐食試験 得られた試験片を用いて、耐隙間腐食試験を行った。
1−2−1.耐隙間腐食試験用試験片 図2は、耐隙間腐食試験用試験片の模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。同図に示すように、この試験片は、厚さが2mmであり、幅および長さが30mmである。この試験片の中央には、直径7mmの穴が形成されている。また、この試験片の一方表面(おもて面)には、粒度600番のエメリー紙による研磨を施してある。
図3は、耐隙間腐食試験に供する際の試験片の状態を示す模式図である。試験片1は、その両面から、ポリ3フッ化エチレンからなるクレビス(スペーサ)2で挟んだ。クレビス2の中央には、試験片1の穴に対応して、穴が形成されている。クレビス2の一方表面には、複数の溝が形成されており、この溝が形成された面を、試験片1に接触させた。この溝により、試験片1とクレビス2との間に隙間が形成される。
試験片1の穴、およびクレビス2の穴に、ボルト3を挿通し、ボルト3にナット4を嵌めて、試験片1、およびクレビス2を締め付けた。ボルト3、およびナット4は、純Ti製のボルトおよびナットを、大気中でバーナー加熱して表面を酸化させたものである。締め付け時のトルクは、40kgf・cmとした。
1−2−2.臭素イオンを実質的に含まない環境での耐隙間腐食試験 図3に示す上述の状態の試験片を用いて、ASTM G78で規定されたマルチクレビス試験に準拠した耐隙間腐食試験を実施した。具体的には、250g/LのNaCl水溶液(pH=2;pHは塩酸で調整)に試験片を浸漬し、オートクレーブ装置を使用して、当該水溶液が150℃で空気飽和の液体の状態を保つようにして試験を行った。試験時間は、500時間とした。
試験後、試験片において隙間腐食が発生した部分の数を数え、試験による試験片の重量の増減量(試験後の試験片の重量から試験前の試験片の重量を差し引いた値)の測定を行った。試験前の試験片1個あたりの重量は、約7gであった。
1−2−3.臭素イオンを含む環境での耐隙間腐食試験 上記「臭素イオンを実質的に含まない環境での耐隙間腐食試験」を行うために用いるNaCl水溶液に、臭化ナトリウム試薬を添加して、臭素イオン濃度を0.01モル/Lとした水溶液を腐食試験に用いた以外は、「臭素イオンを実質的に含まない環境での耐隙間腐食試験」と同様の条件による試験、および評価を行った。
1−3.加工性の調査 材料の加工性は、曲げ試験と引張試験とによって評価した。試験条件は、以下のとおりである。
1−3−1.曲げ試験 試験片は、厚さが2.0mm〜2.5mmの板材を、圧延で0.5mmまで展伸し、焼鈍したものから、JIS Z 2204に準拠した大きさおよび形状(幅が20mmで、長さが60mmのサイズ)の素片を切り出し、その素片の表面を、♯600のエメリー紙で圧延方向と直角方向に研磨したものとした。
曲げ試験は、JIS Z 2248に準拠した方法により行い、T方向密着曲げ性を評価した。
1−3−2.引張試験 上述の耐隙間腐食試験用の試験片1であって、耐隙間腐食試験に供していないものから、圧延長手方向と平行に、板厚2mmのASTMハーフサイズの試験片を、各試料につき2本切り出した。切り出した試験片について、島津製作所製のオートグラフ引張試験機を用いて、引張試験を行った。引張速度は、耐力までは0.5%/分とし、それ以降は5mm/分とした。2本の試験片に関して測定された破断伸びの平均値を、その試料のL方向の伸びとした。
2.試験結果2−1.耐隙間腐食性 耐隙間腐食性試験の結果を、表2に示す。表2において、臭素イオンを実質的に含まない環境での耐隙間腐食試験の結果は、「250g/L-NaCl pH=2 150℃」と記した欄に記載した。臭素イオンを含む環境での耐隙間腐食試験の結果は、「250g/L-NaCl Br0.01mol/L pH=2 150℃」と記した欄に記載した。
表2の「腐食発生率」に関して、分母の「40」は、クレビス2の溝により試験片1とクレビス2との間に形成された隙間の数である。分子の数は、試験片1の表面において当該隙間に対応する部分のうち腐食が発生した部分の数である。
上記「臭素イオンを実質的に含まない環境」での試験の結果は、以下のとおりである。 40個の隙間について全く腐食が発生しなかった試料は、本発明例の全て(本発明例1〜4および5〜11)、比較材1〜3、ならびに本発明範囲外の例1、3であった。これらの試料は、隙間に対応する部分以外の部分に酸化着色が認められ、この酸化によるわずかな重量増が認められた。
隙間腐食が認められた試料は、比較材4(上記特許文献3に記載された材料)、および本発明範囲外の例2(Ru含有率が本発明の範囲におけるものより低い材料)であった。これらの試料に関しては、試験片において隙間に対応する部分に、白色の腐食生成物が認められ、40mgを超える腐食減量が生じた。
上記「臭素イオンを含む環境」での試験の結果は、以下のとおりである。 40個の隙間について、全く腐食が発生しなかった試料は、本発明例の全て(本発明例1〜4および5〜11)、ならびに本発明範囲外の例1、3であった。これらの試料は、隙間に対応する部分以外の部分に酸化着色が認められ、この酸化によるわずかな重量増が認められた。
隙間腐食が認められた試料は、比較材1〜4、および本発明範囲外の例2であった。これらの試料のうち、比較材4、および本発明範囲外の例2で、腐食減量が特に大きい。
本発明例は、臭素イオンを実質的に含まない塩化物環境、および臭素イオンを含む塩化物環境のいずれに対しても、優れた耐食性(耐隙間腐食性)を示すことがわかる。
2−2.加工性 表3に、曲げ試験(密着曲げ)、および引張試験の結果を示す。
表3において、「T方向密着曲げ」の欄に記載した記号の意味は、以下のとおりである。 ○:割れが発生しなかった。 △:いずれかの試験片に微細割れが認められた。 ×:いずれかの試験片に割れが認められた。
比較材1および3については、T方向密着曲げで割れが発生し、L方向伸びは小さい。すなわち、比較材1および3の加工性は低い。比較材2については、T方向密着曲げで割れ発生が認められず、L方向伸びはJIS1種材と同等の大きな値を示す。比較材4については、L方向伸びは、JIS1種材と同等の大きな値を示すものの、T方向密着曲げで、試験片の表面に微細な割れが認められた。
本発明例1、3、4および8についは、T方向密着曲げで割れ発生は認められず、L方向伸びは50%以上となりJIS1種チタンと同等であった。一方、本発明例2、5、6、7、9、10および11については、L方向伸びは50%未満と、他の本発明例と比較して低く、T方向密着曲げで、表面に微細な割れが発生した。このように、本発明例2、5、6、7、9、10および11は、本発明例1、3、4および8に比して、加工性が劣る。本発明例8は、本発明例1、3および4に比して、L方向伸びは、やや劣る。
本発明範囲外の例1については、L方向伸びが乏しく、T方向密着曲げで割れが発生した。本発明範囲外の例2は、T方向密着曲げ、およびL方向伸びのいずれの結果も、良好であった。本発明範囲外の例3については、L方向伸びは大きいものの、T方向密着曲げで割れが発生した。
加工性は、概ね、O含有率が低く、Ni、Cr、Co、Mo、W、およびVの含有率が低いほど良くなる傾向がある。本発明例2に比して本発明例1、3および4良好な加工性を有するのは、本発明例1、3および4のO含有率が、0.05質量%未満であるのに対して、本発明例2のO含有率は、0.05質量%以上(ただし、0.1質量%未満であり、本発明の範囲内である)であることに対応しているものと考えられる。本発明例5〜11において加工性が本発明1、3および4と比較して劣るのは、本発明例5〜11がNi、Cr、Co、Mo、W、またはVを含有するからであると考えられる。
本発明範囲外の例3の希土類元素含有率は、本発明における希土類元素含有率の範囲(0.01〜0.10質量%)を超えており、この試料には、希土類を含有する化合物が生成していた。本発明範囲外の例3のT方向密着曲げで発生した割れは、この化合物が起点となったものと推定される。
3.総合評価 上記試験結果と経済性とを考慮して、各試料の総合評価を行った。 表4に、試料に含まれる白金族元素の割合に基づいて、原料費に占める白金族元素のコストを算出した結果を示す。算出にあたって、白金族元素の地金価格は、Pdが1905円/g、Ruが300円/gとした。
表4において、「白金族元素コスト」は、チタン合金1kgに占める白金族元素のコスト(円)であり、「白金族元素相対コスト」は、比較材1の白金族元素コストを100としたときの各試料の白金族元素のコスト比である。上記地金価格を前提とすると、本発明例の白金族元素のコストは、いずれも、比較材1の白金族元素のコストの1/10以下であり、比較材2の白金族元素のコストと比較しても、1/4以下である。
表5に、比較材と本発明例とを総合評価した結果
を示す。
を示す。
表5において、各評価項目について、○(優れている)、△(やや劣っている)、および×(劣っている)の3段階で評価をしている。
上述のように、加工性に関して、本発明はやや劣る場合(本発明例2等)があり、加工性は、O含有率が0.05質量%以上の場合や、Ni、Cr、Co、Mo、W、またはVを含有する場合に悪くなるものと考えられる。したがって、加工性が重視される用途に用いる場合は、本発明のチタン合金は、O含有率が0.05質量%未満、かつNi、Cr、Co、Mo、W、およびVを実質的に含有しないものとする。
加工性以外の項目に関しては、本発明は、すべて優れている。
これに対して、比較材は、いずれかの評価項目に関して、劣っており、特に、臭素イオンを含む環境での耐隙間腐食性に関しては、いずれの比較材も、実質的に使用可能なレベルではない。
2.1 実施例2に用いたチタン合金組成 最適な希土類含有量の明確にし、白金族種のうちRuが優れた耐臭素腐食性を有することを確認するために以下の確認実験を行った。実施例2に用いたチタン合金の組成を表6に示す。実施例1に示した試料の作製方法に従い表6に示す組成の合金を得た。
比較材5、6は希土類元素が0.001%未満で、いずれも本発明の範囲外である。表6に示した材料から、機械加工により図2のすきま腐食試験用のチタン合金板を得て、その試験片を用いて図3に示す隙間腐食試験片を構成した。なお締め付け付け時のトルクは、40kgf・cmとした。この隙間腐食試験片を1−2−3に示した臭素イオンを含む環境での隙間腐食試験に供した。
500時間の隙間腐食試験の結果、得られた状況を表7に示す。希土類を含有しない比較材5は多数の隙間腐食が認められ、325mgの腐食減量が認められた。また、希土類が不十分である比較材6も隙間腐食が認められ、32mgの腐食減量が認められた。臭化物イオンを含む環境で望ましい希土類含有量は200ppm以下と考えられる。希土類含有量が本発明範囲内である本発明例12〜15は、いずれも隙間腐食が無く、腐食減量も小さかった。
次に、Ru含有量の異なる本発明16〜19の材料の隙間腐食試験片を1−2−3に示した臭素イオンを含む環境での隙間腐食試験に供した。また、材料のプレス成形性を調査する、JISZ2247に規定されたエリクセン試験を実施した。
試験には、板厚2mmで90mm×90mmの板材を準備し、板材に直径20mmの鋼球を押し込み、裏面に達する割れが生じたときのパンチのストロークをエリクセン値とした。なお潤滑はグラファイトグリスを用い、5mm/分の速度で成形試験を行った。結果を表8に示す。
本発明16〜18はいずれも隙間腐食発生が認められず、臭化物イオンを含む溶液環境下で優れた耐食性を示す。なお、成形性を示すエリクセン値は、Ruの含有量が0.05%を超えるとやや低下した。一方、Ru含有率が高くなると腐食減量が少なくなる傾向が見られた。優れた耐食性と成形性を両立するには、Ru;0.01〜0.05%の範囲が好ましい。
以上の実験事実より、本発明範囲の中でも、希土類元素の含有量が0.001〜0.02%未満の範囲ではより優れた耐食性が得られることが判明した。またRu含有量0.01〜0.05%の間では優れた成形性も担保できる。
本発明のチタン合金は、臭素イオンを含む環境での耐腐食性が必要とされる環境(特に、高温で高濃度の塩化物環境)において使用される設備、および機器類へ適用できる。
Claims (7)
- 臭素イオンを含む環境で使用されるチタン合金であって、 質量%で、白金族元素:0.01〜0.10%、希土類元素:0.001〜0.02%未満、O:0〜0.1質量%未満を含有し、残部がTiおよび不純物からなる、チタン合金。
- Tiの一部に替えて、Ni、Co、Mo、V、CrおよびWからなる群から選択される1種以上を含有し、Niの含有率が0.12質量%以下であり、Coの含有率が0.18質量%以下であり、Moの含有率が0.11質量%以下であり、Vの含有率が0.19質量%以下であり、Crの含有率が0.18質量%以下であり、Wの含有率が0.14質量%以下である、請求項1に記載のチタン合金。
- 質量%で、白金族元素:0.01〜0.05%を含有する、請求項1または2に記載のチタン合金。
- 前記白金族元素がRuである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のチタン合金。
- 前記希土類元素がYである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のチタン合金。
- Oの含有率が0.05質量%未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のチタン合金。
- 化学プラント装置に用いられる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のチタン合金。
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