JP5382165B2 - ボールねじ - Google Patents

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本発明は、ボールねじに関する。
電動射出成形機などで使用されるボールねじは、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道溝の間に配置されたボールと、を備えている。
このようなボールねじのボールは、ねじ軸の回転運動に伴ってねじ溝を転動するため、ねじ軸に付着した塵埃や摩耗粉などの異物がナット内に入り込むと、ナット内に入り込んだ異物によってボールの転がり運動が阻害され、焼付きなどの損傷が生じることがある。そこで、ナット内への異物の侵入等を防ぐために、ナットの軸方向両端にリング状のシールが配置されている。
下記の特許文献1には、ボールねじのシールとして、ナットに固定される縁部を備えた本体(円板状のシール本体)と、ねじ軸の外周面および螺旋溝に弾性変形状態で接触するリップ部(シール片の環状円筒部)と、を有し、リップ部のねじ軸と接触する先端部の断面を円弧状にしたものが記載されている。
特許第3616452号公報
ボールねじは、通常、予圧を付与してボールと軌道溝との軸方向での隙間をゼロにしてあるが、シールのリップ部の、ねじ軸(ねじ軸の外周面および螺旋溝)に対する締めつけ力が大きい(シールのねじ軸に対するしめしろが大きい)と、リップ部のねじ軸との接触面の潤滑状態が不良になり易く、リップ部が早期に摩耗してシール性能が低下するという問題点がある。
本発明の課題は、シールのリップ部のねじ軸との接触面の潤滑状態を良好にして、ボールねじのシール性能を向上させることである。
上記課題を解決するために、本発明は、内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道溝の間に配置されたボールと、ナットの軸方向両端に配置されたリング状のシールを備えたボールねじであって、前記シールは、ナットの内周面に内嵌される縁部を備えた本体と、ねじ軸の外周面および螺旋溝に弾性変形状態で接触するリップ部と、を有し、前記縁部は、円板状の本体の外周部が板面に対して垂直に曲げられた部分であって前記本体の円板部と前記縁部との間に傾斜状の屈曲部を有し、この屈曲部の傾斜面、止め部材を当接させて前記止め部材をナットに固定することで、シールがナットに固定され、前記止め部材は、前記シールの本体より剛性が低いものであることを特徴とするボールねじを提供する。
このボールねじは、シールのナットに対する固定が、シールの本体の屈曲部に、ナットに固定された止め部材を当接させることで行われている。そのため、ナットに対するシールの固定位置がシールおよびナットの円周方向で調整できる。よって、円周方向で微妙に位置調整しながらシールをナットに固定することで、最適な位置関係とすることができるため、高いシール性を得ることができる。
本発明のボールねじによれば、円周方向で微妙に位置調整しながらシールをナットに固定することで、最適な位置関係とすることができるため、シール性能が向上する。
本発明の実施形態に相当するボールねじの外形を示す図である。 図1のボールねじにおいて、外向きフランジを一部破断した図である。 図1のボールねじのシールの正面図である。 理想状態でのシールのねじ軸との接触状態を説明する図である。 ナットがねじ軸に対して相対的に右側に移動している状態でのシールのねじ軸との接触状態を説明する図である。 ナットがねじ軸に対して相対的に左側に移動している状態でのシールのねじ軸との接触状態を説明する図である。 ねじ軸の螺旋溝の断面形状が、ゴシックアーク状であって二つの円弧が半径Rの円弧で滑らかに連結され、半径Rとシール先端部の断面円弧の半径rとの関係がr<Rの例(a)と、ゴシックアーク状であって二つの円弧が尖った状態で連結されている例(b)を示す図である。 ねじ軸の螺旋溝の断面形状が、ゴシックアーク状であって二つの円弧が半径Rの円弧で滑らかに連結されている例であって、半径Rとシール先端部の断面円弧の半径rとの関係がr>Rの場合(a)と、r<Rの場合(b)を示す図である。 本発明が適用できる図1とは異なるボールねじの外形を示す図である。 ナットのフランジ側に対するシールの固定方法であって、図2とは異なる例を示す図である。 ナットのフランジとは反対側に対するシールの固定方法であって、図2とは異なる例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、この実施形態のボールねじの外形を示す図である。
このボールねじは、ナット1とねじ軸2とボール3とシール4とリターンチューブ5を備えている。ナット1の内周面に螺旋溝11が形成されている。ねじ軸2の外周面に螺旋溝21が形成されている。ボール3は、ナット1の螺旋溝11とねじ軸2の螺旋溝21で形成される軌道溝の間に配置されている。シール4はリング状で、ナット1の内部の軸方向両端に配置されている。リターンチューブ5は、ボール3を軌道溝の終点から始点まで外部を経由して戻すためのものであり、この例ではサーキット数が3であるため3個設けてある。また、図示されていないが、ナット1には、各サーキットに1カ所の給脂穴が形成され、軸方向両端部に排出穴が形成されている。
ナット1の軸方向一端に外向きフランジ6が形成されている。図2は、この外向きフランジ6を一部破断した図である。この図に示すように、外向きフランジ6には、径方向に貫通するねじ穴61が周方向に複数個形成され、このねじ穴61に螺合するねじ17により、シール4がナット1の軸方向一端に固定されている。ナット1の軸方向他端にも同様のねじ穴が形成されて、このねじ穴に螺合するねじにより、シール4がナット6の軸方向他端に固定されている。
図3はシール4の正面図である。シール4は本体41とゴム成形体42とからなる。シール4の本体41は、ナット6の内周面13(軸方向一端側では、外向きフランジ6の内周面62)に固定される縁部41aを備えている。この例の縁部41aは、円板状の本体41の外周部が板面に対して垂直に曲げられた形状である。ゴム成形体42は、ねじ軸2の外周面22および螺旋溝21に弾性変形状態で接触するリップ部42aを有する。リップ部42aの先端部は断面が円弧状に形成されている。
図4は、理想状態でのシール4のねじ軸2との接触状態を説明する図である。
理想状態とは、図4(a)に示すように、ナット1の螺旋溝11とねじ軸2の螺旋溝21で形成される軌道溝をなす円の中心と、この軌道溝内に配置されたボール3の中心が一致している状態を指す。
この実施形態では、ナット1の螺旋溝11とねじ軸2の螺旋溝21の断面が円弧状に形成され、この軌道溝とボール3との間に、シール4のねじ軸2に対する「しめしろ」よりも小さい寸法(例えば、しめしろの20%以下の寸法)の隙間を設けてある。すなわち、軌道溝をなす円の直径A1より「しめしろよりも小さい寸法」の分だけ小さい直径A2のボール3が組み込まれている。また、リップ部42aを含むゴム成形体42の硬さはデュロメ−タA50〜90であり、シール4のねじ軸2に対する「しめしろ」はボール3の直径A2の10%以下である。
この理想状態で、ねじ軸2の同一断面円の各位置での、シール4のリップ部42aとねじ軸2の螺旋溝21および外周面22との接触状態は、図4(a)〜(d)のようになっている。破線はリップ部42aの設計形状を示す。
図5は、ナット1がねじ軸2に対して相対的に右側に移動している状態を示す。この場合、ボール3がナット1の螺旋溝11とねじ軸2の螺旋溝21に接触して、ボール3と両螺旋溝11,21との間に軸方向の力がかかる。この力の向きは右側であり、これに伴って、図4(a)で設計形状より右側に傾き、螺旋溝21の中心Cより右側に配置されていたリップ部42aは、図5(a)で設計形状より左側に傾き、先端がほぼ中心線Cに一致した状態となる。すなわち、シール4のリップ部42aとねじ軸2との軸方向での接触位置が変化する。同様に、図4(b)〜(d)に示す、ねじ軸2の同一断面円の各位置での、シール4のリップ部42aとねじ軸2の螺旋溝21および外周面22との接触状態は、図5(b)〜(d)のように変化する。
このように、図4(a)〜(d)の状態から図5(a)〜(d)の状態になる間に、リップ部42aの先端が、軸方向でねじ軸2の螺旋溝21および外周面22を摺動する。これに伴って、ナット1の内部に封入された潤滑剤がリップ部42aの異なる位置に付着する。
図6は、ナット1がねじ軸2に対して相対的に左側に移動している状態を示す。この場合、ボール3がナット1の螺旋溝11とねじ軸2の螺旋溝21に接触して、ボール3と両螺旋溝11,21との間に軸方向の力がかかる。この力の向きは左側であり、これに伴って、図4(a)で設計形状より右側に傾き、先端が螺旋溝21の中心Cより距離L4だけ右側に配置されていたリップ部42aは、図6(a)で先端が螺旋溝21の中心Cより距離L6(<L4)だけ右側に配置される。すなわち、図4(a)と図6(a)で、シール4のリップ部42とねじ軸2との軸方向での接触位置が変化する。
同様に、図4(b)〜(d)に示す、ねじ軸2の同一断面円の各位置での、シール4のリップ部42aとねじ軸2の螺旋溝21および外周面22との接触状態は、図6(b)〜(d)のように変化する。
このように、図4(a)〜(d)の状態から図6(a)〜(d)の状態になる間に、リップ部42aの先端が、軸方向でねじ軸2の螺旋溝21および外周面22を摺動する。これに伴って、ナット1の内部に封入された潤滑剤がリップ部42aの異なる位置に付着する。
したがって、ナットが軸方向で往復運動する際に、シールのリップ部とねじ軸との軸方向での接触位置が、図4の状態を挟んで図5の状態と図6の状態の範囲で変化するため、この範囲のリップ部の接触位置にナットの内部に封入された潤滑剤が付着する。これにより、リップ部の先端にまで潤滑剤が行き渡るため、シールのリップ部のねじ軸との接触面における潤滑状態が良好になる。その結果、リップ部が摩耗し難くなるため、ボールねじのシール性能が向上する。
図7(a)は、ねじ軸2の螺旋溝21Aの断面形状が、半径が同じ(ボールの半径より大きく直径より小さい)で中心が異なる二つの円弧が連結された形状(ゴシックアーク状)であって、二つの円弧が半径Rの円弧で滑らかに連結されている例を示す。また、リップ部42aの先端部の断面が半径r(<R)の円弧状に形成されている。
このように、半径Rと半径rの関係がr<Rの場合には、シールのリップ部42aとねじ軸の螺旋溝21Aとの間に隙間が生じない。そのため、図7(b)に示すような、ねじ軸2の螺旋溝21Bの断面形状が、ゴシックアーク状であって、両円弧が尖った状態で連結されているものと比較して、シールのリップ部とねじ軸との接触状態が良好となる。
図8(a)は、ゴシックアーク状の螺旋溝21Cの形成を砥石や砥石ドレッサーで行うことで、溝底部が円弧状に形成された場合を示すが、この場合には半径Rと半径rの関係がr>Rとなり、シールのリップ部42aの先端部とねじ軸2の螺旋溝21Aとの間に隙間が生じる。
図8(b)は、シールのリップ部42aの断面形状が図7(a)と異なる例を示すが、この例でも、ねじ軸2の螺旋溝21Dの断面形状がゴシックアーク状であって、二つの円弧が半径Rの円弧で滑らかに連結されている。また、リップ部42aの先端部の断面が半径r(<R)の円弧状に形成されている。この例でも、シールのリップ部42aとねじ軸の螺旋溝21Dとの間に隙間が生じないため、シールのリップ部とねじ軸との接触状態が良好となる。
なお、螺旋溝の断面形状が図7(b)および図8(a)に示す形状であっても、軌道溝とボールとの隙間をシールのねじ軸に対するしめしろより小さく設定することにより、リップの先端が弾性変形するため、シールのリップ部とねじ軸との接触状態は保持できる。これに対して、図7(a)および図8(b)の形状の場合には、軌道溝とボールとの隙間をシールのねじ軸に対するしめしろより小さく設定しなくても、シールのリップ部とねじ軸との接触状態が保持できる。
また、本発明が適用できるボールねじのタイプとしては、図1に示すリターンチューブ方式だけでなく、図9に示すようにナットの外部に循環部材が露出しないタイプ(コマ方式など)などがあり、本発明は各種タイプのボールねじに適用できる。
さらに、軌道溝とボールとの隙間をシールのねじ軸に対するしめしろより小さくするためには、螺旋溝の断面形状をゴシックアーク状とすることが有利である。
図10および図11には、シール4のナット1に対する固定方法が図2とは異なる例が示してある。
図10は、ナット1のフランジ6側に対するシール4の固定方法を示している。図10(a)は、ナット1をフランジ6側から見た図である。図10(b)はナット1のフランジ6側にシール4が固定された状態を示す部分破断断面図である。図10(a)では、フランジ6の内周面62をなす円と、ナット1の螺旋溝11間の内周面12をなす円が見えている。
シール4の縁部41aが嵌合されるフランジ6の内周面62より、径方向で外側であって、軸方向で端部側となる位置に、周方向に等間隔で4個の略円形の凹部63が形成されている。各凹部63をなす円は、フランジ6の内周面62側で円弧が一部欠けている。各凹部63内には、各凹部63をなす円と同心で、雌ねじ64が形成されている。各雌ねじ64に座金(止め部材)7を介してボルト8が螺合されるため、各凹部63の深さはボルト8の頭部81と座金7の厚さの合計寸法より少し大きな寸法で形成されている。また、座金7の外径は、凹部63をなす円の直径より僅かに小さく、凹部63に配置された座金7がフランジ6の内周面62よりナット1の径方向中心側に突出する寸法に形成されている。
シール4をナット1のフランジ6側に取り付ける際には、先ず、シール4の本体41の縁部41aをフランジ6の内周面62に内嵌する。次に、各凹部63内に、座金7の穴に軸部82を通したボルト8を入れて、軸部82を雌ねじ64に螺合する。これに伴って、座金7のナット1の径方向中心側の先端部71が、シール4の屈曲部41bに当って変形する。図10(b)はこの状態を示し、先端部71の変形前の状態を2点鎖線で示してある。すなわち、この例では、シール4の屈曲部41bに、ナット1のフランジ6側に固定された座金(止め部材)7を当接させることで、シール4がナット1のフランジ6側に固定されている。
なお、座金7は、シール4の本体41より剛性が低いものにする。具体的には、シール4の本体41の材料として、座金7の材料よりもヤング率が高いものを使用したり、同じ材料の場合は厚さを変えたりする。例えば、座金7とシール4の本体41を同じステンレス鋼で形成した場合には、シール4の本体41を絞り加工により形成して、板厚を座金7の厚さの1.5〜2倍程度とする。これにより、ボルト8を締め込んだ時に、実質的に座金7のみが弾性変形または塑性変形して、シール4の本体41の変形量を無視できる程度に抑えることができる。
したがって、この例では、ナット1のフランジ6側に対するシール4の固定位置がシール4およびナット1の円周方向で調整できる。よって、円周方向で微妙に位置調整しながらシール4をナット1に固定することで、最適な位置関係とすることができるため、高いシール性を得ることができる。また、図2の固定方法と比較して、フランジ6の厚さ方向に深いねじ穴61を設ける必要がないため、加工が容易になる利点もある。
図11は、ナット1のフランジ6とは反対側の軸方向端部に対するシール4の固定方法を示している。
この例では、ナット1の軸方向端部の、シール4の取り付け部となる内周面13の位置を貫通する雌ねじ14を、周方向4カ所に形成し、この雌ねじ14に螺合する止めねじ(止め部材)9を用いて、シール4をナット1に固定している。止めねじ9は、雌ねじ14に螺合する軸部91と、先端の円錐状部分92とからなる。
シール4をナット1の内周面13に取り付ける際には、先ず、シール4の本体の縁部41aをナット1の内周面13に内嵌する。次に、各雌ねじ14に止めねじ9の軸部91を螺合する。これに伴って、止めねじ9の円錐状部分92がシール4の屈曲部41bに当たる。すなわち、この例では、シール4の屈曲部41bに、ナット1に固定された止めねじ(止め部材)9を当接させることで、シール4がナット1に固定されている。
したがって、この例では、ナット1に対するシール4の固定位置がシール4およびナット1の円周方向で調整できる。よって、円周方向で微妙に位置調整しながらシール4をナット1に固定することで、最適な位置関係とすることができるため、高いシール性を得ることができる。
1 ナット
11 ナットの螺旋溝
12 ナットの螺旋溝間の内周面
13 ナットのシール取り付け部となる内周面
14 雌ねじ
17 ねじ
2 ねじ軸
21 ねじ軸の螺旋溝
21A〜21D ねじ軸の螺旋溝
3 ボール
4 シール
41 本体
41a 縁部
42 ゴム成形体
42a リップ部
5 リターンチューブ
6 外向きフランジ
61 ねじ穴
62 外向きフランジの内周面
63 凹部
64 雌ねじ
7 座金(止め部材)
8 ボルト
81 ボルトの頭部
82 ボルトの軸部
9 止めねじ(止め部材)
91 止めねじの軸部
92 止めねじの先端の円錐状部分
A1 軌道溝をなす円の直径
A2 ボールの直径
C ねじ軸の螺旋溝の中心

Claims (1)

  1. 内周面に螺旋溝が形成されたナットと、外周面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、ナットの螺旋溝とねじ軸の螺旋溝で形成される軌道溝の間に配置されたボールと、ナットの軸方向両端に配置されたリング状のシールを備えたボールねじであって、
    前記シールは、ナットの内周面に内嵌される縁部を備えた本体と、ねじ軸の外周面および螺旋溝に弾性変形状態で接触するリップ部と、を有し、
    前記縁部は、円板状の本体の外周部が板面に対して垂直に曲げられた部分であって
    前記本体の円板部と前記縁部との間に傾斜状の屈曲部を有し、この屈曲部の傾斜面、止め部材を当接させて前記止め部材をナットに固定することで、シールがナットに固定され
    前記止め部材は、前記シールの本体より剛性が低いものであることを特徴とするボールねじ。
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