以下、本発明の実施の形態によるスクロール式流体機械を、無給油式の空気圧縮機に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は空気圧縮機の駆動源を構成する電動モータで、該電動モータ1は、外部からの給電により出力軸2を回転駆動し、これによって後述する圧縮機本体3の圧縮運転を行うものである。
3は電動モータ1により駆動されるスクロール式の圧縮機本体を示し、該圧縮機本体3は、その外枠を構成するケーシング4と、後述の駆動軸6、旋回スクロール8、固定スクロール11およびボールカップリング装置15とを含んで構成されている。そして、圧縮機本体3のケーシング4は、後述の固定スクロール11と共に本発明の構成要件である固定側部材を構成するものである。
この場合、ケーシング4は、例えばアルミニウム等の金属材料を用いて形成され、軸方向一側が開口した有底筒状体として形成されている。そして、ケーシング4は、その軸方向(軸線O1−O1)に角筒形状をなして延びた筒部4Aと、該筒部4Aの軸方向他側に設けられた底部4Bと、該底部4Bの中央側に一体に設けられ筒部4Aよりも小径な段付き筒状体として形成された軸受取付部4Cとにより大略構成されている。
また、ケーシング4の底部4Bには、図3に示すように軸受取付部4Cの径方向外側で後述の旋回スクロール8と軸方向で対向する位置に、後述するボールカップリング装置15用の第1,第2の支持部材取付部5A,5B等が設けられ、該第1,第2の支持部材取付部5A,5Bは円形状の凹部(有底穴)としてそれぞれ形成されている。そして、第1,第2の支持部材取付部5A,5Bは、例えばケーシング4の周方向に間隔をもって夫々3個設けられるものである。
ここで、第1,第2の支持部材取付部5A,5Bは、ケーシング4の径方向に互いに離間して配置され、第1の支持部材取付部5Aには、図3〜図6に示す如く後述するボールカップリング機構16のスラスト支持部材17が嵌合して取付けられる。また、第1の支持部材取付部5Aの径方向外側に位置する第2の支持部材取付部5Bには、後述するボールカップリング機構23の自転抑え用支持部材24が嵌合して取付けられている。
また、第1の支持部材取付部5Aの周壁側には、図5に示すように小径の凹溝からなる一対の廻止め溝5A1 ,5A1 が形成され、該各廻止め溝5A1 には、後述するスラスト支持部材17の廻止め突起17Bが係合するものである。一方、第2の支持部材取付部5Bは、第1の支持部材取付部5Aよりも大径の有底穴として形成され、第2の支持部材取付部5Bの周壁側には、後述の自転抑え用支持部材24との間に弾性リング29が隙間なく締代をもって装着されている。
6は軸線O1−O1を中心として回転する駆動軸で、該駆動軸6は、ケーシング4の軸受取付部4Cに軸受等を介して回転可能に支持されている。そして、駆動軸6は、図1に示すように軸継手6Aを用いて電動モータ1の出力軸2に着脱可能に連結され、出力軸2と一体に回転するものである。
また、駆動軸6の軸方向一側には筒状のクランク部6Bが設けられ、該筒状のクランク部6Bは、駆動軸6の軸線O1−O1に対して予め決められた寸法ε1 (図3参照)だけ偏心して形成されている。そして、クランク部6B内には、後述する旋回スクロール8の連結軸部8Cおよび旋回軸受9が取付けられている。また、駆動軸6の外周側には、旋回スクロール8の旋回動作を安定させるためにバランスウェイト6C等が設けられている。
7はケーシング4の内,外を冷却する冷却手段としての冷却ファンで、該冷却ファン7は、駆動軸6の外周側に位置して駆動軸6の軸方向他側に取付けられた遠心ファン等により構成されている。そして、冷却ファン7はファンケーシング7A内に収容されると共に、該ファンケーシング7Aの内部はケーシング4の外周側に取付けられたダクト7Bに連通している。これにより、冷却ファン7は、ファンケーシング7Aおよびダクト7Bを通じて、ケーシング4内に位置する旋回軸受9等に向けて冷却風を供給する。
8はケーシング4内に位置して駆動軸6に旋回可能に設けられた旋回スクロールで、該旋回スクロール8は、軸線O2−O2を中心として円板状の金属板8A(以下鏡板8Aと記載する)と、該鏡板8Aの表面から渦巻状に立設されたラップ部8Bと、鏡板8Aの背面(裏面)側中央に突設され、旋回軸受9を介して駆動軸6のクランク部6Bに回転可能に取付けられた連結軸部8Cとにより構成されている。そして、旋回スクロール8は、後述の固定スクロール11に対向してケーシング4内に設けられている。
ここで、旋回スクロール8の連結軸部8Cは、その中心(軸線O2−O2)が後述する固定スクロール11の中心(軸線O1−O1)に対して予め決められた寸法ε1 (図3参照)分だけ径方向に偏心して形成されている。そして、旋回スクロール8は、電動モータ1により駆動軸6が軸線O1−O1の周囲で回転されるときに、図3に示す寸法ε1 分の旋回半径をもって旋回運動を行なうものである。
また、旋回スクロール8には、鏡板8Aの背面側でケーシング4側の支持部材取付部5A,5Bと軸方向で対向する位置に、後述するボールカップリング装置15用の第1,第2の支持部材取付部10A,10B等が設けられ、該第1,第2の支持部材取付部10A,10Bは、円形状の凹部(有底穴)としてそれぞれ形成されている。
そして、第1,第2の支持部材取付部10A,10Bは、旋回スクロール8の径方向に互いに離間して配置され、第1の支持部材取付部10Aには、図3〜図6に示す如く後述するボールカップリング機構16のスラスト支持部材18が嵌合して取付けられる。また、第1の支持部材取付部10Aの径方向外側に位置する第2の支持部材取付部10Bには、後述するボールカップリング機構23の自転抑え用支持部材25が嵌合して取付けられている。
11はケーシング4と共に圧縮機本体3の固定側部材を構成する固定スクロールで、該固定スクロール11は、旋回スクロール8と対向した状態でケーシング4の開口側に固定され、これにより、ケーシング4の筒部4Aを軸方向の一側から閉塞するものである。
そして、固定スクロール11は、駆動軸6と同軸に配置された円板状の鏡板11Aと、該鏡板11Aの表面から渦巻状に立設されたラップ部11Bと、該ラップ部11Bを取囲んで鏡板11Aの外周側に一体に設けられ、ケーシング4の開口端側に衝合して取付けられた環状のフランジ部11C等とにより構成されている。また、鏡板11Aの裏面側には複数の放熱フィン11Dが立設されている。
12,12,…は旋回スクロール8と固定スクロール11との間に画成された流体室としての複数の圧縮室で、該各圧縮室12は、旋回スクロール8が旋回運動するときに2つのラップ部8B,11B間で圧縮性のある流体としての空気を圧縮するものである。
即ち、スクロール式の圧縮機本体3は、駆動軸6が回転駆動されると、旋回スクロール8が後述のボールカップリング装置15により自転を規制された状態で公転し、固定スクロール11に対して寸法ε1 の旋回半径をもった旋回運動を行う。これにより、圧縮機本体3は、後述の吸込口13から外周側の圧縮室12に吸込んだ空気を各圧縮室12内で順次圧縮しつつ、中心側に向けて移送するものである。
13は固定スクロール11の外周側に複数個設けられた吸込口(図1、図3中に点線で1個のみ図示)で、該各吸込口13は、外周側の圧縮室12にそれぞれ連通し、これらの圧縮室12内に外部の空気を吸込サイレンサ(図示せず)を介して吸込ませるものである。
14は固定スクロール11の中心側に設けられた吐出口で、該吐出口14は、中心側の圧縮室12に連通している。そして、吐出口14は、各圧縮室12内で外周側から中心側に移動するに従って順次高圧となるように圧縮された圧縮空気を中心側の圧縮室12から外部に向けて吐出するものである。
15はケーシング4の底部4Bと旋回スクロール8の背面側との間に設けられたボールカップリング装置で、該ボールカップリング装置15は、旋回スクロール8からの軸線O1−O1(軸方向)に沿ったスラスト荷重を支持する第1のボールカップリング機構16と、該第1のボールカップリング機構16から離間して設けられ旋回スクロール8の自転を防止する第2のボールカップリング機構23とにより構成されている。
また、ボールカップリング装置15は、図2に示す如く1個の第1のボールカップリング機構16および1個の第2のボールカップリング機構23を1組として、例えば合計3組設けられている。そして、これら3組のボールカップリング装置15は、図2に示す如く軸受取付部4Cの外周側に配設され、駆動軸6を中心として周方向にほぼ等間隔(約120度間隔)で離間している。
16はスラスト荷重を支持する第1のボールカップリング機構で、該第1のボールカップリング機構16は、図4に示す如くケーシング4と旋回スクロール8とに互いに対向して設けられた一対のスラスト支持部材17,18と、該スラスト支持部材17,18間に挟んだ状態で設けられ両者間でスラスト荷重を受承する球形の荷重支持用ボール19と、後述の弾性パッド22とを含んで構成されている。そして、スラスト支持部材17,18は、スラスト荷重を受承するために荷重支持用ボール19を介して対面したボール支持面17A,18Aを有している。
ここで、荷重支持用ボール19は、例えば鋼球等の高い剛性をもった材料からなる直径D1の球体として形成されている。そして、荷重支持用ボール19は、スラスト支持部材17,18のボール支持面17A,18A(後述のガイド溝20,21)間に挟んだ状態で配置され、旋回スクロール8の鏡板8A等に付加されるスラスト荷重を、スラスト支持部材17,18と一緒にケーシング4の底部4B(支持部材取付部5A)側で受承するものである。
また、ケーシング4側のスラスト支持部材17(以下、第1のスラスト支持部材17という)は、例えば耐摩耗性の高い剛性材料により円板状の板体として形成され、その外周側には廻止め手段としての廻止め突起17B,17Bが設けられている。そして、第1のスラスト支持部材17は、ケーシング4の第1の支持部材取付部5Aに嵌合して取付けられ、このときに廻止め突起17Bが支持部材取付部5Aの廻止め溝5A1 に廻止め状態で係合する。
これにより、第1のスラスト支持部材17は、第1の支持部材取付部5A内で廻止めされて回転方向の動きが規制される。しかし、第1の支持部材取付部5A内のスラスト支持部材17は、後述の弾性パッド22が圧縮方向に弾性変形するときに、これに伴ってスラスト荷重の作用方向(図3中の軸線O1−O1に沿った軸方向)に変位可能となっている。
一方、旋回スクロール8側のスラスト支持部材18(以下、第2のスラスト支持部材18という)は、例えば第1のスラスト支持部材17と同様の材料により円板状の板体として形成されている。そして、第2のスラスト支持部材18は、第1のスラスト支持部材17と軸方向で対向した位置で、旋回スクロール8の第1の支持部材取付部10A内に嵌合して取付けられている。
この場合、第1,第2のスラスト支持部材17,18のうちいずれか一方が、後述する理由により軸方向に変位可能であればよい。このため、第2のスラスト支持部材18には、例えば第1のスラスト支持部材17と同様の廻止め突起17Bを設ける必要はない。そして、第2のスラスト支持部材18は、例えば圧入、接着等の固定手段により旋回スクロール8の支持部材取付部10A内に抜止め、廻止め状態で固定しておけばよい。
また、スラスト支持部材17,18のボール支持面17A,18Aには、円環状溝からなるガイド溝20,21がそれぞれ形成され、このガイド溝20,21は、荷重支持用ボール19の円軌跡に沿って設けられている。即ち、ガイド溝20,21は、旋回スクロール8の旋回動作に伴って荷重支持用ボール19が予め決められた円軌跡に沿って転動するのを補償し、荷重支持用ボール19を転動可能にガイドするものである。
このため、ガイド溝20,21は、図4に示すように荷重支持用ボール19がスラスト荷重の作用方向(図3中の軸線O1−O1に沿った軸方向)の両側で滑らかに転がり接触するように、接触箇所の断面形状が円弧状に形成されている。このとき、ガイド溝20,21の断面の曲率半径は、荷重支持用ボール19の半径(直径D1の半分)よりも大きな値に設定されている。これにより、ガイド溝20,21は、スラスト支持部材17,18と荷重支持用ボール19との接触応力を低減する機能を有している。
また、ガイド溝20,21は、その溝深さが荷重支持用ボール19の半径(直径D1の半分)よりも十分に小さくなるように浅く形成され、荷重支持用ボール19のうちスラスト荷重の作用方向(軸方向の両側)以外の箇所とはほとんど接触することはない。このため、旋回スクロール8に対して自転方向の力(自転力)が作用したとしても、このときの自転力は、後述の第2のボールカップリング機構23で実質的に受承され、第1のボールカップリング機構16には自転力が実質的に作用しない構成となっている。
22は第1のボールカップリング機構16に設けられた弾性部材を構成する弾性パッドで、該弾性パッド22は、ケーシング4の支持部材取付部5Aと第1のスラスト支持部材17との間に挟んだ状態で設けられ、荷重支持用ボール19をスラスト荷重の方向で弾性支持するものである。即ち、弾性パッド22は、ケーシング4の支持部材取付部5Aと第1のスラスト支持部材17との間で圧縮方向に弾性変形することにより、荷重支持用ボール19に対して後述の如き余分な負荷が作用するのを防ぐものである。
なお、弾性パッド22の弾性力fは、その弾性係数をK、後述の自転防止用ボール26の外周面と第1,第2の自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25Aの凹窪面27,28の底面27B,28Bとの隙間寸法δ1 ,δ2とした場合、および旋回スクロール8が受承する最大スラスト力Fに対して、下記の数1式を満たすように設定されている。
さらに、荷重支持用ボール19の弾性係数をK1、スラスト支持部材17,18の弾性係数をK2、ケーシング4および旋回スクロール8の弾性係数をK3、弾性パッド22の弾性係数をK4とした場合、夫々の弾性係数の関係は、下記の数2式を満たすような材料にて形成されている。例えば、荷重支持用ボール19およびスラスト支持部材17,18には軸受鋼等、ケーシング4および旋回スクロール8にはアルミ材等、弾性パッド22には樹脂等を用いる。
23は旋回スクロール8の自転を防止する第2のボールカップリング機構で、該第2のボールカップリング機構23は、ケーシング4と旋回スクロール8とに互いに対向して設けられた一対の自転抑え用支持部材24,25と、該自転抑え用支持部材24,25間に挟んだ状態で設けられ旋回スクロール8の自転を防止する荷重支持用ボール19と、後述の弾性リング29とを含んで構成されている。そして、自転抑え用支持部材24,25は、旋回スクロール8の自転防止を行うために自転防止用ボール26を介して対面したボール支持面24A,25Aを有している。
ここで、ケーシング4側の自転抑え用支持部材24(以下、第1の自転抑え用支持部材24という)は、例えば耐摩耗性の高い剛性材料により円板状の厚板体として形成され、その外周側には後述の弾性リング29が隙間なく締代をもって装着されている。そして、第1の自転抑え用支持部材24は、ケーシング4の第2の支持部材取付部5Bに嵌合して取付けられ、このときに第2の支持部材取付部5Bと自転抑え用支持部材24の外周との間には、後述の弾性リング29が弾性変形可能に介在される。
また、第1の自転抑え用支持部材24には、その底面側に小径の廻止め穴24Bが形成され、該廻止め穴24B内には後述のピン30が係合する。これによって、第1の自転抑え用支持部材24は、第2の支持部材取付部5B内で廻止めされて回転方向の動きが規制される。しかし、第2の支持部材取付部5B内の自転抑え用支持部材24は、旋回スクロール8に働く自転方向の力で後述の弾性リング29が弾性変形するときに、これに伴って第2の支持部材取付部5B内で径方向に変位可能となっている。
一方、旋回スクロール8側の自転抑え用支持部材25(以下、第2の自転抑え用支持部材25という)は、例えば第1の自転抑え用支持部材24と同様の材料により円板状の厚板体として形成されている。そして、第2の自転抑え用支持部材25は、第1の自転抑え用支持部材24と軸方向で対向した位置で、旋回スクロール8の第2の支持部材取付部10B内に嵌合して取付けられている。
この場合、自転防止用ボール26が旋回スクロール8の自転方向にガタ付くのを抑えるためには、第1,第2の自転抑え用支持部材24,25のうちいずれか一方に後述の弾性リング29を設ければよい。このため、第2の自転抑え用支持部材25には、例えば第1の自転抑え用支持部材24と同様の廻止め穴24B等を形成する必要はない。そして、第2の自転抑え用支持部材25は、例えば圧入、接着等の固定手段により旋回スクロール8の支持部材取付部10B内に抜止め、廻止め状態で固定しておけばよい。
また、第1,第2の自転抑え用支持部材24,25には、そのボール支持面24A,25Aに円錐(円錐台)形状をなす凹窪面27,28が設けられている。ここで、この凹窪面27,28は、スラスト荷重の作用方向(軸方向)に対して予め決められた角度だけ傾斜したテーパ状の周壁からなる傾斜面27A,28Aと、円形の底面27B,28Bとにより構成され、傾斜面27A,28Aは、底面27B,28Bの位置から凹窪面27,28の開口側に向けてテーパ状に拡開して形成されている。
そして、凹窪面27,28の傾斜面27A,28Aには、スラスト荷重の方向から斜めに傾いた方向(例えば、図4中の仮想線A−Aに沿った方向)の両側で自転防止用ボール26が転がり接触し、この接触箇所は、その断面が直線状に形成されている。このため、自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)は、自転防止用ボール26を挟んだ状態でスラスト荷重の方向と直交する方向、即ち旋回スクロール8の自転方向(径方向や周方向)の力を受承することができ、旋回スクロール8の自転防止機能を発揮するものである。
そして、凹窪面27,28の傾斜面27A,28Aは、旋回スクロール8の旋回動作に伴って自転防止用ボール26を予め決められた円軌跡に沿ってガイドする。このとき、自転防止用ボール26は、例えば傾斜面27A,28Aと転がり接触する箇所が球(ボール26)の自転軸と直交した赤道位置に該当するものである。
また、自転防止用ボール26は、荷重支持用ボール19と同様に例えば鋼球等の高い剛性をもった材料からなる球体によって形成されている。また、自転防止用ボール26の直径D2は、例えば荷重支持用ボール19の直径D1と同じ寸法(D2=D1)に形成されている。
但し、自転防止用ボール26の直径D2は、凹窪面27,28の底面27B,28B間の離間寸法Tよりも小さい寸法(D2 <T)に形成されている。これにより、自転防止用ボール26の外周面(球面)は、凹窪面27,28の底面27B,28Bから寸法δ1 ,δ2 (微小隙間)だけ離間した位置に配置される。しかも、凹窪面27,28の傾斜面27A,28Aには、例えば図4中の仮想線A−Aに沿った方向で自転防止用ボール26が転がり接触し、仮想線A−Aの方向とは、スラスト荷重の方向(図3中の軸線O1−O1)に対して斜めに大きく傾いた方向(例えば、60度以上で90度未満となる角度範囲内で傾いた方向)である。
この結果、第2のボールカップリング機構23は、旋回スクロール8からの自転方向の力を有効に受承することができ、旋回スクロール8からのスラスト荷重が第2のボールカップリング機構23(自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28A)に作用することはほとんどなくなる。そして、このときのスラスト荷重は、第2のボールカップリング機構23よりも第1のボールカップリング機構16によって有効に受承できるものである。
29は第2のボールカップリング機構23に設けられた弾性部材としての弾性リングで、該弾性リング29は、比較的硬質な弾性樹脂材料等により短尺な筒状体として形成され、例えばケーシング4、旋回スクロール8等の金属部材に比較しても大なる変形代で径方向に弾性変形するものである。そして、弾性リング29は、自転抑え用支持部材24を介して自転防止用ボール26を径方向で変位可能に弾性支持する機能を有している。
ここで、弾性リング29は、第2の支持部材取付部5Bと自転抑え用支持部材24の外周との間に配設され、自転抑え用支持部材24の外周を全周にわたって取囲んでいる。そして、弾性リング29は、例えば各構成部品の寸法公差を緩和する等の理由により、自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25間で旋回スクロール8の自転方向にガタ付いたりしても、これを弾性力(弾性復元力)によって抑えるものである。
即ち、弾性リング29は、第2の支持部材取付部5B内で自転抑え用支持部材24が径方向に相対変位するのを、弾性リング29自体の弾性変形によって許し、かつ自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)間で円滑に転動(転がり接触)するのを補償するものである。
この場合、第2のボールカップリング機構23は、旋回スクロール8が旋回運動するときに自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25間で寸法ε2 の軌道半径(図6参照)をもって転動する。即ち、自転防止用ボール26は、図6に示す凹窪面27,28の傾斜面27A,28Aに転がり接触するときに寸法ε2 の軌道半径をもって自転抑え用支持部材24,25間を転動する。一方、旋回スクロール8の旋回半径は、図3に示す寸法ε1 によって決められる。
そして、第2のボールカップリング機構23では、自転防止用ボール26の軌道半径(寸法ε2 )を下記の数3式に示す如く旋回スクロール8の旋回半径(寸法ε1 )よりも予め小さくなるように設定している。これにより、弾性リング29は、下記の数4式に示すように旋回スクロール8の旋回半径(寸法ε1 )と前記自転防止用ボールの軌道半径(寸法ε2 )との差分Δεに相当する寸法だけ径方向に弾性変形するものである。
30は第2のボールカップリング機構23に設けられた他の廻止め手段としてのピンで、該ピン30は、図4に示すように基端側が支持部材取付部5Bの底面側に植設等の手段で固定され、その先端側が自転抑え用支持部材24の廻止め穴24B内に向けて突出している。そして、ピン30は、自転抑え用支持部材24の廻止め穴24Bに係合することにより、第1の自転抑え用支持部材24を支持部材取付部5B内で廻止め状態に保持するものである。
なお、第1,第2のボールカップリング機構16,23には、各ボール19,26の周囲から取囲むようにグリスカバー(図示せず)を設ける構成としてもよい。これにより、潤滑剤としてのグリスをボール19,26の周囲に容易に保持することができる。また、グリスカバーは、1組のボールカップリング装置15の全体を取囲む構成としてもよい。
本実施の形態によるスクロール式の空気圧縮機は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
まず、電動モータ1に外部から給電して出力軸2により駆動軸6を軸線O1−O1を中心として回転駆動すると、旋回スクロール8は、例えば3組のボールカップリング装置15によって自転が規制された状態で所定の旋回半径(図3中の寸法ε1 )をもって旋回動作を行う。
これにより、固定スクロール11のラップ部11Bと旋回スクロール8のラップ部8Bとの間に画成された各圧縮室12は、外径側から内径側に向けて連続的に縮小される。そして、これらの圧縮室12のうち外径側の圧縮室12は、固定スクロール11の外周側に設けた吸込口13から空気を吸込み、この空気を各圧縮室12内で連続的に圧縮しつつ、内径側の圧縮室12から吐出口14を介して圧縮空気が外部に向けて吐出される。
また、このような圧縮運転時には、各圧縮室12内で圧縮された空気の圧力が旋回スクロール8の鏡板8Aにスラスト荷重となって作用する。しかし、ケーシング4の底部4Bと旋回スクロール8の背面側との間には、例えば3組のボールカップリング装置15を配置し、これらのボールカップリング装置15は、第1のボールカップリング機構16と第2のボールカップリング機構23とに分離して構成している。
そして、第1,第2のボールカップリング機構16,23のうち第1のボールカップリング機構16は、旋回スクロール8の鏡板8Aに付加されるスラスト荷重を第1,第2のスラスト支持部材17,18と荷重支持用ボール19との間で受承することができる。これにより、第1のボールカップリング機構16は、旋回スクロール8がケーシング4の軸方向に変位(位置ずれ)したり、固定スクロール11に対し斜めに傾いたりするのを防ぎ、旋回スクロール8の旋回動作を安定させることができる。
一方、第2のボールカップリング機構23は、旋回スクロール8に働く自転方向の力を第1,第2の自転抑え用支持部材24,25と自転防止用ボール26との間で受承することができる。これにより、旋回スクロール8の慣性モーメントが大きい大型のスクロール式流体機械であっても、第2のボールカップリング機構23により旋回スクロール8に働く自転力を受止めて拘束することができ、旋回スクロール8の自転方向の挙動を安定させ、自転防止効果を高めることができる。
また、第1,第2のボールカップリング機構16,23からなるボールカップリング装置15は、第1のボールカップリング機構16によるスラスト荷重の支持(受承)機能と、第2のボールカップリング機構23による自転防止機能とを互いに分離することができる。これにより、第1のボールカップリング機構16は、スラスト荷重の大,小のみに基づいて設計仕様を決めることが可能となり、第2のボールカップリング機構23は、自転力の大,小のみに基づいて設計仕様を決めることができる。
しかも、第2のボールカップリング機構23には、第2の支持部材取付部5Bと自転抑え用支持部材24の外周との間に位置して自転防止用ボール26を径方向で弾性支持する弾性リング29を設ける構成としている。そして、第2のボールカップリング機構23は、自転防止用ボール26の軌道半径(寸法ε2 )を、旋回スクロール8の旋回半径(寸法ε1 )よりも小さくなるように設定(ε1 >ε2 )し、弾性リング29は、旋回スクロール8の旋回半径と自転防止用ボール26の軌道半径との差分Δε(Δε=ε1 −ε2 )に相当する寸法だけ径方向に弾性変形する構成としている。
このため、第2のボールカップリング機構23の構成部品(例えば、自転抑え用支持部材24,25および自転防止用ボール26)等の寸法公差を緩和することができる。そして、自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25間で旋回スクロール8の自転方向にガタ付いたりするのを、第2の支持部材取付部5Bと自転抑え用支持部材24との間で弾性変形する弾性リング29の弾性復元力によって抑えることができる。
即ち、弾性リング29は、第2の支持部材取付部5B内で自転抑え用支持部材24が径方向に相対変位するのを、弾性変形することによって許すことができ、自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)間で円滑に転動(転がり接触)するのを補償することができる。
かくして、本実施の形態によれば、第2のボールカップリング機構23の各構成部品を、高精度に加工することなく製作できる。そして、その寸法公差等を緩和して形成しても、自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25間で旋回スクロール8の自転方向にガタ付いたりするのを弾性リング29により防止することができる。これにより、第2のボールカップリング機構23は、旋回スクロール8の自転方向の挙動を安定させ、旋回スクロール8を円滑に旋回運動させることができる。
しかも、第2のボールカップリング機構23に設けた弾性リング29は、自転防止用ボール26を径方向で弾性支持するため、自転抑え用支持部材24,25と自転防止用ボール26との間のガタ付きを吸収することができ、ガタ付きによる悪影響が第1のボールカップリング機構16に及ぶのを未然に防ぐことができる。この結果、荷重支持用ボール19が転動するボール支持面17A,18Aに対して滑るのを防ぎ、摩耗、損傷等の発生を防止することができる。
また、第2のボールカップリング機構23の自転防止用ボール26は、自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28Aに対し、例えば図4中の仮想線A−Aに沿った方向の両側で転がり接触する。このため、自転防止用ボール26と傾斜面27A,28Aとの間に作用する荷重は、スラスト荷重の方向(図3中の軸線O1−O1)に沿った方向の軸方向の荷重成分と、これに対して垂直な径方向の荷重成分とに分解することができる。
そして、図4中の仮想線A−Aは、前述の如くスラスト荷重の方向に対して斜めに大きく傾いた方向となっているので、前記径方向の荷重成分は軸方向の荷重成分に比較して、より大きな荷重として作用する。しかし、この場合に径方向の荷重成分は、弾性リング29が支持部材取付部5Bと自転抑え用支持部材24との間で弾性変形することにより吸収でき、径方向の荷重成分が第1のボールカップリング機構16にまで影響を与えるのを防ぐことができる。
一方、前記軸方向の荷重成分が第1のボールカップリング機構16に影響を及ぼす可能性はある。しかし、第2のボールカップリング機構23による軸方向の荷重成分に対しては、第1のボールカップリング機構16に設けた弾性パッド22により吸収して、荷重支持用ボール19に余分な負荷が作用するのを防ぐことができる。
即ち、ケーシング4の支持部材取付部5Aと第1のスラスト支持部材17との間に挟んだ状態で設けた弾性パッド22は、荷重支持用ボール19をスラスト荷重の方向(図3中の軸線O1−O1に沿った方向)で弾性支持することにより、前記軸方向の荷重成分が余分な負荷となって、例えばスラスト支持部材17と荷重支持用ボール19との間に作用するのを抑えることができる。
従って、本実施の形態によれば、旋回スクロール8のスラスト荷重の支持と自転防止との2つの機能を兼用した場合(例えば、従来技術の場合)に比較して、第1,第2のボールカップリング機構16,23の寸法公差等を緩めることができ、スラスト支持部材17,18のボール支持面17A,18Aと自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25Aとを、ボール19,26に対する転動面として比較的単純な形状に形成することができる。
これにより、スラスト支持部材17,18のボール支持面17A,18Aと自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25Aとを、特別に高精度な加工を用いることなく、比較的に容易に加工することができ、製品の歩留りを向上できると共に、製造コストおよび管理コストを低減することができる。
また、第2のボールカップリング機構23は、自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28Aに対し仮想線A−A(図4参照)に沿った方向で転がり接触するため、旋回スクロール8からの自転方向の力を有効に受承することができ、旋回スクロール8からのスラスト荷重が第2のボールカップリング機構23(自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28A)に作用するのを小さく抑えることができる。そして、このときのスラスト荷重を、第2のボールカップリング機構23よりも第1のボールカップリング機構16によって有効に受承することができる。
また、第1のボールカップリング機構16は、スラスト支持部材17,18のガイド溝20,21(溝深さ)を荷重支持用ボール19の半径(直径D1の半分)よりも十分に小さくなるように浅く形成し、荷重支持用ボール19のうちスラスト荷重の作用方向(軸方向の両側)以外の箇所ではほとんど接触することはない。このため、旋回スクロール8に対して自転方向の力(自転力)が作用したとしても、このときの自転力を第2のボールカップリング機構23で実質的に受承でき、第1のボールカップリング機構16に自転力が作用するのを抑えることができる。
このように、旋回スクロール8に対して作用する自転力に対しては、第1のボールカップリング機構16に比べて、第2のボールカップリング機構23が受ける自転力の方が大きくなる構成とすることにより、第2のボールカップリング機構23によって旋回スクロール8の自転力を安定して支持することができると共に、第1のボールカップリング機構16に作用する自転力の影響を低減することができる。
また、旋回スクロール8に対して作用するスラスト荷重に対しては、第2のボールカップリング機構23に比べて、第1のボールカップリング機構16が支持する荷重の方が大きくなる構成とすることにより、第1のボールカップリング機構16によって確実にスラスト荷重を支持することができると共に、第2のボールカップリング機構23に作用するスラスト荷重の影響を小さく抑えることができる。
また、圧縮運転時におけるケーシング4と旋回スクロール8との温度差、熱膨張差等によって生じる問題も、弾性リング29の弾性変形により吸収することができ、第2のボールカップリング機構23による自転防止機能を安定させると共に、第1のボールカップリング機構16によるスラスト荷重の支持機能も安定させることができ、装置の信頼性を高めることができる。
一方、第1,第2のボールカップリング機構16,23からなるボールカップリング装置15は、第1,第2のボールカップリング機構16,23毎にグリス等の潤滑剤を保持することができる。このため、従来技術のように、ボールカップリング装置の全体を密閉した場合に比べて、潤滑剤を容易に保持することができる。
また、ボールカップリング装置15を第1,第2のボールカップリング機構16,23に分離して構成し、荷重支持用ボール19をスラスト支持部材17,18間で転がり接触させ、自転防止用ボール26は自転抑え用支持部材24,25間で転がり接触する構成としている。このため、例えばオルダム継手のように、ガイドとスライダとを滑り接触させて旋回スクロールの自転を防止する機構等に比べて、動力損失を大幅に低減することができる。
また、第1,第2のボールカップリング機構16,23を1組として、これらの3組を旋回スクロール8の外周側で周方向に間隔をもって配置する構成としている。このため、3組のボールカップリング機構16,23を用いて旋回スクロール8を3箇所で安定して支持することができ、旋回スクロール8がスラスト方向および自転方向(周方向)にガタ付くことがなくなる。また、3組のボールカップリング装置15を周方向に間隔をもって配置したから、隣合う2組のボールカップリング装置15の間を通って冷却風を旋回軸受9等に供給でき、冷却効果を高めることができる。
また、一対のスラスト支持部材17,18のボール支持面17A,18Aにはガイド溝20,21を設けているので、該ガイド溝20,21に対して荷重支持用ボール19をスラスト荷重の方向に沿った両側で転がり接触させることにより、スラスト荷重を円滑に支持することができる。また、ガイド溝20,21は、断面が円弧状をなす浅底の円環状溝として形成することにより、断面を直線状に形成した場合に比べて、荷重支持用ボール19がガイド溝20,21に接触したときの接触応力を低減することができ、第1のボールカップリング機構16の寿命を延ばすことができる。
さらに、第1,第2のボールカップリング機構16,23を旋回スクロール8の径方向で互いに離間した位置に配置したから、例えば第1,第2のボールカップリング機構16,23を周方向に離間した位置に配置した場合に比べて、周方向により多くの第1,第2のボールカップリング機構16,23を配置することができる。これにより、1個当りの第1,第2のボールカップリング機構16,23に作用するスラスト荷重、自転力を低減することができ、各ボールカップリング機構16,23の寿命を延ばすことができる。
次に、図7は本発明の第2の実施の形態を示し、第2の実施の形態の特徴は、第2のボールカップリング機構に設ける弾性部材を有底筒状体として形成し、一方のスラスト支持部材を径方向外側と軸方向一側(背面側)とから弾性支持する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、40A,40Bは本実施の形態で採用した第1,第2の支持部材取付部で、該第1,第2の支持部材取付部40A,40Bは、第1の実施の形態で述べた第1,第2の支持部材取付部5A,5Bとほぼ同様に構成され、ケーシング4の底部4Bに設けられた円形状の凹部(有底穴)として形成されている。そして、第1の支持部材取付部40Aの周壁側には、小径の凹溝からなる一対の廻止め溝40A1 ,40A1 が形成されている。
ここで、第1の支持部材取付部40Aには、第1の実施の形態と同様に第1のボールカップリング機構16のスラスト支持部材17が嵌合して取付けられる。そして、このスラスト支持部材17は、各廻止め突起17Bが支持部材取付部40Aの廻止め溝40A1 に係合し、第1の支持部材取付部40A内で廻止めされるものである。
一方、第2の支持部材取付部40Bは、第1の支持部材取付部40Aよりも大径の有底穴として形成され、第2の支持部材取付部40B内には、後述する第2のボールカップリング機構42の自転抑え用支持部材24が弾性筒体43と一緒に嵌合して取付けられている。
41は本実施の形態で採用したボールカップリング装置を示し、該ボールカップリング装置41は、第1の実施の形態で述べたボールカップリング装置15と同様に構成され、第1のボールカップリング機構16と第2のボールカップリング機構42とを備えている。そして、第2のボールカップリング機構42は、後述の弾性筒体43を除いて第1の実施の形態で述べた第2のボールカップリング機構23と同様に構成されるものである。
即ち、第2のボールカップリング機構42は、第1の実施の形態で述べた第2のボールカップリング機構23と同様に、自転抑え用支持部材24,25と自転防止用ボール26とを有し、自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25Aは、テーパ状の周壁として形成された傾斜面27A,28Aと、円形の底面27B,28Bとからなる円錐(円錐台)形状の凹窪面27,28により構成されている。
43は第2のボールカップリング機構42に設けられた弾性部材としての弾性筒体で、該弾性筒体43は、例えば第1の実施の形態で述べた弾性リング29と同様な弾性樹脂材料等により有底筒状体として形成され、自転抑え用支持部材24を介して自転防止用ボール26を径方向と軸方向とで弾性的に変位可能に支持するものである。
ここで、弾性筒体43は、第2の支持部材取付部40Bと自転抑え用支持部材24の外周との間に配設され自転抑え用支持部材24の外周を全周にわたって取囲む筒部43Aと、自転抑え用支持部材24の背面と支持部材取付部40Bの底面との間に配設された環状の底部43Bとにより構成されている。
そして、弾性筒体43は、第1の実施の形態で述べた弾性リング29と同様に自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25間で旋回スクロール8の自転方向にガタ付いたりしても、これを弾性復元力等によって抑える。しかも、弾性筒体43は、筒部43Aに加えて底部43Bを有することにより、第2の支持部材取付部40B内で自転抑え用支持部材24が径方向と軸方向とに相対変位するのを、筒部43Aと底部43Bとの弾性変形によって許し、かつ自転防止用ボール26が自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)間で円滑に転動するのを補償するものである。
なお、弾性筒体43の筒部43Aと底部43Bとは、必ずしも一体に形成する必要はなく、筒部43Aと底部43Bとを別部材として形成してもよい。また、自転抑え用支持部材24と支持部材取付部40Bとの間には、図4に示す第1の実施の形態と同様に廻止め手段としてのピン30(図7中では図示せず)を設け、自転抑え用支持部材24を支持部材取付部40B内で廻止め状態に保持する構成としてもよいものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、自転抑え用支持部材24と第2の支持部材取付部40Bとの間に弾性筒体43を設けることにより、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかも、本実施の形態では、弾性筒体43を筒部43Aと底部43Bとにより構成している。
このため、第2の支持部材取付部40B内で自転抑え用支持部材24が径方向と軸方向とに相対変位するのを、筒部43Aによって許すことができ、第2の支持部材取付部40B内で自転抑え用支持部材24が軸方向に相対変位するのを、底部43Bの弾性的な圧縮変形等によって許すことができる。
次に、図8は本発明の第3の実施の形態を示し、第3の実施の形態の特徴は、自転防止用ボールの外周に弾性部材としての弾性被膜を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、50A,50Bは本実施の形態で採用した第1,第2の支持部材取付部で、該第1,第2の支持部材取付部50A,50Bは、第1の実施の形態で述べた第1,第2の支持部材取付部5A,5Bとほぼ同様に形成されている。そして、第1の支持部材取付部50Aの周壁側には、小径の凹溝からなる一対の廻止め溝50A1 ,50A1 が形成されている。
ここで、第1の支持部材取付部50Aには、第1の実施の形態と同様に第1のボールカップリング機構16のスラスト支持部材17が嵌合して取付けられる。そして、このスラスト支持部材17は、各廻止め突起17Bが支持部材取付部50Aの廻止め溝50A1 に係合し、第1の支持部材取付部50A内で廻止めされるものである。
一方、第2の支持部材取付部50Bは、第1の支持部材取付部50Aよりも大径の有底穴として形成され、第2の支持部材取付部50B内には、後述する第2のボールカップリング機構42の自転抑え用支持部材24が直接的に嵌合して取付けられている。これにより、自転抑え用支持部材24は、支持部材取付部50B内に廻止め、抜止め状態で固定されるものである。
51は本実施の形態で採用したボールカップリング装置を示し、該ボールカップリング装置51は、第1の実施の形態で述べたボールカップリング装置15と同様に構成され、第1のボールカップリング機構16と第2のボールカップリング機構52とを備えている。そして、第2のボールカップリング機構52は、第1の実施の形態で述べた第2のボールカップリング機構23とほぼ同様に構成されている。
即ち、第2のボールカップリング機構52は、第1の実施の形態で述べた第2のボールカップリング機構23と同様の自転抑え用支持部材24,25を有し、自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25Aは、テーパ状の周壁として形成された傾斜面27A,28Aと、円形の底面27B,28Bとからなる円錐(円錐台)形状の凹窪面27,28により構成されている。しかし、第2のボールカップリング機構52は、後述の自転防止用ボール53に弾性被膜54を設けている点で第1の実施の形態とは異なるものである。
53は第2のボールカップリング機構52の一部を構成する自転防止用ボールで、該自転防止用ボール53は、第1の実施の形態で述べた自転防止用ボール26とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の自転防止用ボール53には、後述の弾性被膜54が所要の膜厚をもって設けられている。
54は本実施の形態で採用した弾性部材としての弾性被膜で、該弾性被膜54は、例えば第1の実施の形態で述べた弾性リング29と同様な弾性樹脂材料等を用いて形成され、自転防止用ボール53を外側から被覆している。そして、この弾性被膜54は、自転防止用ボール53と一緒に自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A間に挟んで配置され、ボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)に接触するものである。
即ち、弾性被膜54は、自転防止用ボール53の外周を全周にわたって取囲むことにより、自転抑え用支持部材24,25間で自転防止用ボール53を径方向等に変位可能に弾性支持するものである。そして、弾性被膜54は、自転防止用ボール53が自転抑え用支持部材24,25間で旋回スクロール8の自転方向にガタ付いたりするのを抑え、かつ自転防止用ボール53が自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)間で円滑に転動するのを補償するものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、弾性部材としての弾性被膜54により自転防止用ボール53を外側から被覆する構成としている。このため、自転抑え用支持部材24,25間での自転防止用ボール53のガタ付き等を、弾性被膜54により直に吸収することができる。
次に、図9は本発明の第4の実施の形態を示し、第4の実施の形態の特徴は、自転抑え用支持部材のボール支持面に弾性部材を設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第3の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、61は本実施の形態で採用したボールカップリング装置を示し、該ボールカップリング装置61は、第3の実施の形態で述べたボールカップリング装置51と同様に構成され、第1のボールカップリング機構16と第2のボールカップリング機構62とを備えている。
そして、第2のボールカップリング機構62は、自転抑え用支持部材24,25を有し、自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25Aは、傾斜面27A,28Aと底面27B,28Bとからなる凹窪面27,28により構成されている。しかし、第2のボールカップリング機構62は、凹窪面27,28の傾斜面27A,28Aに後述の弾性被膜64,65を設けている点で第3の実施の形態とは異なるものである。
63は第2のボールカップリング機構62の一部を構成する自転防止用ボールで、該自転防止用ボール63は、第1の実施の形態で述べた自転防止用ボール26とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の自転防止用ボール63は、後述の弾性被膜64,65を介して自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28Aに当接(接触)する点で前記実施の形態とは異なっている。
64,65は本実施の形態で採用した弾性部材としての弾性被膜で、該弾性被膜64,65は、例えば第1の実施の形態で述べた弾性リング29と同様な弾性樹脂材料等を用いて形成され、一方の弾性被膜64は、前記凹窪面27の傾斜面27Aを全周にわたって被覆している。また、他方の弾性被膜65は、前記凹窪面28の傾斜面28Aを全周にわたって被覆している。
そして、この場合の自転防止用ボール63は、自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A間に挟んで配置され、ボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)に対しては弾性被膜64,65を介して転がり接触するように当接するものである。
即ち、弾性被膜64,65は、自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28Aを全周にわたって被覆することにより、自転抑え用支持部材24,25間で自転防止用ボール63を径方向等で変位可能に弾性支持するものである。そして、弾性被膜64,65は、自転防止用ボール63が自転抑え用支持部材24,25間で旋回スクロール8の自転方向にガタ付いたりするのを抑え、かつ自転防止用ボール63が自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)間で円滑に転動するのを補償するものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第3の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28Aを弾性被膜64,65で全周にわたって被覆することにより、自転抑え用支持部材24,25間で自転防止用ボール63を径方向等で変位可能に弾性支持することができる。
なお、前記第4の実施の形態では、自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28Aに弾性被膜64,65を設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば自転抑え用支持部材24,25の傾斜面27A,28Aのうち、いずれか一方の傾斜面(ボール支持面)に弾性被膜を設ければよく、他方の傾斜面には弾性被膜を必ずしも設ける必要はない。そして、この場合でも、前記第4の実施の形態とほぼ同様な効果を得ることができるものである。
次に、図10は本発明の第5の実施の形態を示し、第5の実施の形態の特徴は、自転防止用ボール自体を球形の弾性部材により構成したことにある。なお、本実施の形態では、前述した第3の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、71は本実施の形態で採用したボールカップリング装置を示し、該ボールカップリング装置71は、第3の実施の形態で述べたボールカップリング装置51と同様に構成され、第1のボールカップリング機構16と第2のボールカップリング機構72とを備えている。
そして、第2のボールカップリング機構72は、自転抑え用支持部材24,25を有し、自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25Aは、傾斜面27A,28Aと底面27B,28Bとからなる凹窪面27,28により構成されている。しかし、第2のボールカップリング機構72は、後述の自転防止用ボール73を球形の弾性体として形成している点で第3の実施の形態とは異なるものである。
73は第2のボールカップリング機構72の一部を構成する自転防止用ボールで、該自転防止用ボール73は、第1の実施の形態で述べた自転防止用ボール26とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の自転防止用ボール73は、例えば第1の実施の形態で述べた弾性リング29と同様な弾性樹脂材料等を用いて、球形の弾性部材(弾性体)として形成されている点で前記各実施の形態とは異なっている。
そして、この場合の自転防止用ボール73は、自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A間に挟んで配置され、ボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)に対して、径方向等で変位可能に弾性支持されるものである。これにより、自転防止用ボール73は、自転抑え用支持部材24,25間で旋回スクロール8の自転方向にガタ付いたりするのが抑えられ、かつ自転抑え用支持部材24,25のボール支持面24A,25A(傾斜面27A,28A)間では円滑に転動するものである。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、自転防止用ボール73自体を球形の弾性体として形成することにより、例えば弾性部材を別部材として形成する必要がなくなり、部品点数を削減して組立時の作業性等を向上することができる。
次に、図11および図12は本発明の第6の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、第1のボールカップリング機構は、旋回スクロールの周方向に間隔をもって3箇所に配置し、第2のボールカップリング機構は、旋回スクロールの中心位置を通る直線上を除いた位置で旋回スクロールの周方向に間隔をもって2箇所に配置する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図中、81は本実施の形態で採用したボールカップリング装置を示し、該ボールカップリング装置81は、第1の実施の形態で述べたボールカップリング装置15とほぼ同様に構成され、後述する第1のボールカップリング機構84と第2のボールカップリング機構85とを有している。しかし、この場合のボールカップリング装置81は、第1のボールカップリング機構84を合計3個備え、第2のボールカップリング機構85を合計2個備えている点で異なるものである。
ここで、ケーシング4の底部4Bには、第1の実施の形態で述べた第1,第2の支持部材取付部5A,5Bとほぼ同様に第1,第2の支持部材取付部82A,82Bが円形状の凹部(有底穴)としてそれぞれ形成されている。しかし、第1の支持部材取付部82Aは、図11に示す如くケーシング4の周方向に離間して3個設けられ、第2の支持部材取付部82Bは、例えば約120度の間隔をもってケーシング4の周方向に2個設けられている。
そして、第1の支持部材取付部82Aには、図12に示す如く後述するボールカップリング機構84のスラスト支持部材17が嵌合して取付けられる。また、第1の支持部材取付部82Aの周壁側には、小径の凹溝からなる一対の廻止め溝82A1 ,82A1 が形成され、該各廻止め溝82A1 には、スラスト支持部材17の廻止め突起17Bが係合している。
一方、第2の支持部材取付部82Bは、第1の支持部材取付部82Aよりも大径の有底穴として形成され、第2の支持部材取付部82Bの周壁側には、後述するボールカップリング機構85の自転抑え用支持部材24との間に弾性リング29が隙間なく締代をもって装着されている。
83A,83Bは旋回スクロール8の背面側に設けられた第1,第2の支持部材取付部で、該第1,第2の支持部材取付部83A,83Bは、第1の実施の形態で述べた旋回スクロール8側の支持部材取付部10A,10Bとほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の支持部材取付部83A,83Bは、前述したケーシング4側の支持部材取付部82A,82Bと軸方向で対向する位置に配置されている点で、第1の実施の形態とは異なるものである。
そして、第1の支持部材取付部83Aには、図12に示す如く後述するボールカップリング機構84のスラスト支持部材18が嵌合して取付けられる。また、第1の支持部材取付部83Aから離間して位置する第2の支持部材取付部83Bには、後述するボールカップリング機構85の自転抑え用支持部材25が嵌合して取付けられるものである。
84はスラスト荷重を支持するために本実施の形態で採用した第1のボールカップリング機構で、該第1のボールカップリング機構84は、第1の実施の形態で述べた第1のボールカップリング機構16とほぼ同様に構成され、一対のスラスト支持部材17,18と荷重支持用ボール19と弾性パッド22とを含んで構成されている。
しかし、本実施の形態による第1のボールカップリング機構84は、図11に示すようにケーシング4の軸受取付部4Cの外周側に合計3個設けられ、軸受取付部4Cを中心とした周方向にほぼ等間隔(約120度間隔)で離間して配置されている。
85は旋回スクロール8の自転を防止する第2のボールカップリング機構で、該第2のボールカップリング機構85は、第1の実施の形態による第2のボールカップリング機構23とほぼ同様に構成され、一対の自転抑え用支持部材24,25、自転防止用ボール26および弾性リング29等を備えている。
しかし、本実施の形態による第2のボールカップリング機構85は、ケーシング4の軸受取付部4Cの外周側に合計2個設けられ、軸受取付部4Cを中心とした周方向に一定の角度(例えば、90〜170度分)だけ離間して配置されている。即ち、合計2個の第2のボールカップリング機構85,85は、旋回スクロール8の中心(例えば、図3中に示す軸線O2 −O2 )を通る直線上を除いた位置に配置され、2個の第2のボールカップリング機構85,85と旋回スクロール8の中心位置とが一直線上に並ぶことのない配置となっている。
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、第1のボールカップリング機構84は旋回スクロール8の周方向に間隔をもって3箇所に配置し、第2のボールカップリング機構85は旋回スクロール8の周方向に間隔をもって2箇所に配置する構成としている。
これにより、荷重支持用ボール19と自転防止用ボール26とを必要最小限の個数とした状態で、第1のボールカップリング機構84によるスラスト荷重の支持と、第2のボールカップリング機構85による自転防止とを実現でき、部品点数を確実に削減することができる。
また、例えば第2のボールカップリング機構を旋回スクロール8の中心位置を挟んで径方向の反対側に2個配置した場合には、2個の第2のボールカップリング機構と旋回スクロール8の中心位置とが一直線に並ぶことになる。そして、この場合には前記直線と直交する方向の自転トルク(自転力)は、これら2個の第2のボールカップリング機構では支持できなくなる。
これに対し、本実施の形態では、2個の第2のボールカップリング機構85は、旋回スクロール8の中心位置を通る直線上を除いた位置で旋回スクロール8の周方向に間隔をもって2箇所に配置した。このため、全ての方向の自転トルクを2個の第2のボールカップリング機構85を用いて受承、支持することができ、旋回スクロール8の自転防止を効率的に行うことができる。
なお、前記第1の実施の形態では、第1のボールカップリング機構16のスラスト支持部材17に廻止め突起17Bを設け、支持部材取付部5A内でスラスト支持部材17を廻止め状態に保持する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばキー等の廻止め手段を用いてスラスト支持部材を廻止めする構成としてもよい。また、スラスト支持部材の外形状を、例えば四角形、楕円形等の非円形な形状に形成して廻止めを行う構成としてもよい。そして、この点は第2〜第6の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、第2のボールカップリング機構23の自転抑え用支持部材24をピン30により、支持部材取付部5B内で廻止め状態に保持する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばキー等の廻止め手段を用いて自転抑え用支持部材を廻止めする構成としてもよい。また、自転抑え用支持部材の外形状を、例えば四角形、楕円形等の非円形な形状に形成して廻止めを行う構成としてもよい。そして、この点は第2〜第6の実施の形態についても同様である。
一方、前記第1の実施の形態では、第1,第2のボールカップリング機構16,23を旋回スクロール8の径方向で互いに離間した位置に配置する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1のボールカップリング機構と第2のボールカップリング機構とを、旋回スクロールの周方向に離間した位置に配置する構成としてもよい。そして、この点は第2〜第5の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、荷重支持用ボール19と自転防止用ボール26とを互いに等しい直径(D1 =D2 )に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1のボールカップリング機構の荷重支持用ボールを、第2のボールカップリング機構の自転防止用ボールよりも大きい直径の球で構成してもよい。そして、この場合には、一対のスラスト支持部材と荷重支持用ボールとの接触面積を増加させて接触応力を低減することができ、第1のボールカップリング機構の寿命を延ばすことができる。
また、第2のボールカップリング機構の自転防止用ボールを、第1のボールカップリング機構の荷重支持用ボールよりも小さい直径の球で構成する場合には、例えば1個の第1のボールカップリング機構の周囲に複数個の第2のボールカップリング機構を設ける構成としてもよいものである。
一方、前記第1の実施の形態では、旋回スクロール8の背面側とケーシング4との間に第1,第2のボールカップリング機構16,23を設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1のボールカップリング機構は旋回スクロールとケーシングとの間に配置し、第2のボールカップリング機構は旋回スクロールと固定スクロールとの間に配置する構成としてもよい。そして、この場合には、第1,第2のボールカップリング機構を旋回スクロールの前,後(ケーシングの軸方向)に離間して配置することができるから、旋回スクロール等の径方向寸法を小さくすることができ、装置全体を小型化することができる。
また、前記第3の実施の形態では、スラスト支持部材17,18と自転抑え用支持部材24,25とを、それぞれの取付対象となるケーシング4、旋回スクロール8とは別部材に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばスラスト支持部材と自転抑え用支持部材とを、それぞれの取付対象となるケーシング、旋回スクロールと一体に形成する構成としてもよい。そして、このような変更は、例えば第4,第5の実施の形態にも同様に適用することができる。
また、前記第1の実施の形態では、ボールカップリング装置15を周方向に間隔をもって3箇所に独立して配置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばボールカップリング装置(第1,第2のボールカップリング機構)を周方向に間隔をもって4箇所、または5箇所以上に独立して配置する構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
また、前記第1の実施の形態では、ボールカップリング装置15(第1,第2のボールカップリング機構16,23)はケーシング4と旋回スクロール8との間に設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば旋回スクロールと固定スクロールとが接近する方向に向けてスラスト荷重が作用するときには、固定側部材(固定スクロール)と旋回スクロールとの間にボールカップリング装置を設ける構成としてもよい。この構成は、他の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
また、前記各実施の形態において、第1のボールカップリング機構16に弾性部材を構成する弾性パッド22を設ける構成としたが、熱による歪み(特にスラスト方向)が少ない旋回スクロールの鏡板8Aを用い、第1のボールカップリング機構16を3箇所に配置した場合は、旋回スクロール4から受承するスラスト力を3点で支持できるので弾性パッド22を設けなくとも良い。なお、第1のボールカップリング機構16を4箇所以上に配置した場合は、弾性パッド22によりスラスト方向のガタツキ等を防止することが可能となる。
また、前記各実施の形態において、弾性被膜を設ける方法として、ゴム系の原材料に硫黄などを加えて、架橋反応の一種である加硫処理を利用してもよい。加硫処理により、弾性被膜の弾性や強度を確保することができる。
また、前記各実施の形態では、スクロール式の空気圧縮機を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば真空ポンプ、冷媒圧縮機等にもスクロール式流体機械として広く適用できるものである。